(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成されている表面電極と、前記半導体基板の裏面に形成されている裏面電極を有し、前記表面電極と前記裏面電極の間をスイッチングする絶縁ゲート型半導体装置を製造する方法であって、
前記絶縁ゲート型半導体装置が、
前記表面電極に接続されている第1導電型の第1領域と、
前記第1領域に接している第2導電型の第2領域と、
前記第2領域によって前記第1領域から分離されている第1導電型の第3領域と、
前記半導体基板の前記表面に形成されており、前記第2領域を貫通して前記第3領域に達する複数のゲートトレンチと、
前記ゲートトレンチ内に配置されているゲート絶縁膜及びゲート電極と、
前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第4領域と、
前記第2領域の外側の領域において前記半導体基板の前記表面に形成されている複数の外周トレンチと、
前記外周トレンチ内に配置されている絶縁層と、
前記外周トレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第5領域、
を有し、
前記方法が、
前記ゲートトレンチを形成する工程と、
前記外周トレンチを形成する工程と、
前記ゲートトレンチの底面に第1の第2導電型不純物を注入し、注入した前記第1の第2導電型不純物を拡散させることで前記第4領域を形成する工程と、
前記外周トレンチの底面に第2の第2導電型不純物を注入し、注入した前記第2の第2導電型不純物を拡散させることで前記第5領域を形成する工程、
を有し、
前記第5領域を形成する工程における前記第2の第2導電型不純物の拡散係数が、前記第4領域を形成する工程における前記第1の第2導電型不純物の拡散係数よりも大きく、
前記第1の第2導電型不純物と前記第2の第2導電型不純物がボロンであり、
前記第4領域を形成する前記工程では、前記ゲートトレンチの底面にボロンとカーボンを注入する、
方法。
半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成されている表面電極と、前記半導体基板の裏面に形成されている裏面電極を有し、前記表面電極と前記裏面電極の間をスイッチングする絶縁ゲート型半導体装置を製造する方法であって、
前記絶縁ゲート型半導体装置が、
前記表面電極に接続されている第1導電型の第1領域と、
前記第1領域に接している第2導電型の第2領域と、
前記第2領域によって前記第1領域から分離されている第1導電型の第3領域と、
前記半導体基板の前記表面に形成されており、前記第2領域を貫通して前記第3領域に達する複数のゲートトレンチと、
前記ゲートトレンチ内に配置されているゲート絶縁膜及びゲート電極と、
前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第4領域と、
前記第2領域の外側の領域において前記半導体基板の前記表面に形成されている複数の外周トレンチと、
前記外周トレンチ内に配置されている絶縁層と、
前記外周トレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第5領域、
を有し、
前記方法が、
前記ゲートトレンチを形成する工程と、
前記外周トレンチを形成する工程と、
前記ゲートトレンチの底面に第1の第2導電型不純物を注入し、注入した前記第1の第2導電型不純物を拡散させることで前記第4領域を形成する工程と、
前記外周トレンチの底面に第2の第2導電型不純物を注入し、注入した前記第2の第2導電型不純物を拡散させることで前記第5領域を形成する工程、
を有し、
前記第5領域を形成する工程における前記第2の第2導電型不純物の拡散係数が、前記第4領域を形成する工程における前記第1の第2導電型不純物の拡散係数よりも大きく、
前記第5領域を形成する前記工程では、前記外周トレンチの底面に、前記第2の第2導電型不純物と、前記第2の第2導電型不純物よりも前記第5領域を形成する工程における拡散係数が小さい第3の第2導電型不純物を注入する、
方法。
前記第5領域を形成する前記工程では、前記外周トレンチの底面を構成する半導体層の少なくとも一部がアモルファス化する濃度で前記第2の第2導電型不純物を注入する、請求項1または2の方法。
半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成されている表面電極と、前記半導体基板の裏面に形成されている裏面電極を有し、前記表面電極と前記裏面電極の間をスイッチングする絶縁ゲート型半導体装置であって、
前記表面電極に接続されている第1導電型の第1領域と、
前記第1領域に接している第2導電型の第2領域と、
前記第2領域によって前記第1領域から分離されている第1導電型の第3領域と、
前記半導体基板の前記表面に形成されており、前記第1領域と前記第2領域を貫通して前記第3領域に達する複数のゲートトレンチと、
前記ゲートトレンチ内に配置されているゲート絶縁膜及びゲート電極と、
前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第4領域と、
前記第2領域と接しない位置において前記半導体基板の前記表面に形成されている複数の外周トレンチと、
前記外周トレンチ内に配置されている絶縁層と、
前記外周トレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第5領域、
を有し、
前記第5領域の幅が、前記第4領域の幅よりも広く、
前記第4領域に、第1の第2導電型不純物が含まれ、
前記第5領域に、第2の第2導電型不純物と、前記第2の第2導電型不純物よりも前記半導体基板内における拡散係数が小さい第3の第2導電型不純物が含まれ、
前記第1の第2導電型不純物の前記半導体基板内における拡散係数が、前記第2の第2導電型不純物の前記半導体基板内における拡散係数よりも小さい、
絶縁ゲート型半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の絶縁ゲート型半導体装置では、素子領域内では、各素子部底面囲繞領域から略同時に空乏層が広がる。したがって、2つの素子部底面囲繞領域に挟まれた部分のドリフト領域は、両側から空乏化が進展するため、容易に空乏化される。これに対し、外周領域内では、素子領域から広がる空乏層が、外周領域内の最初の外周部底面囲繞領域(素子領域に最も近い外周部底面囲繞領域)に到達すると、最初の外周部底面囲繞領域から2番目の外周部底面囲繞領域(素子領域から2番目の外周部底面囲繞領域)に向かって空乏層が伸びる。空乏層が2番目の外周部底面囲繞領域に到達すると、2番目の外周部底面囲繞領域から3番目の外周部底面囲繞領域に向かって空乏層が伸びる。このように、空乏層が各外周部底面囲繞領域を経由して順次広がって行く。このため、2つの外周部底面囲繞領域に挟まれた部分のドリフト領域では、片側からのみ空乏化が進展する。このため、外周領域は空乏化され難い。したがって、外周領域のさらなる高耐圧化が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する製造方法では、半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成されている表面電極と、前記半導体基板の裏面に形成されている裏面電極を有し、前記表面電極と前記裏面電極の間をスイッチングする絶縁ゲート型半導体装置を製造する。前記絶縁ゲート型半導体装置は、前記表面電極に接続されている第1導電型の第1領域と、前記第1領域に接している第2導電型の第2領域と、前記第2領域によって前記第1領域から分離されている第1導電型の第3領域と、前記半導体基板の前記表面に形成されており、前記第2領域を貫通して前記第3領域に達する複数のゲートトレンチと、前記ゲートトレンチ内に配置されているゲート絶縁膜及びゲート電極と、前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第4領域と、前記第2領域の外側の領域において前記半導体基板の前記表面に形成されている複数の外周トレンチと、前記外周トレンチ内に配置されている絶縁層と、前記外周トレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第5領域を有する。この製造方法は、前記ゲートトレンチを形成する工程と、前記外周トレンチを形成する工程と、前記ゲートトレンチの底面に第1p型不純物を注入し、注入した前記第1p型不純物を拡散させることで前記第4領域を形成する工程と、前記外周トレンチの底面に、第2p型不純物を注入し、注入した前記第2p型不純物を拡散させることで前記第5領域を形成する工程を有する。前記第5領域を形成する工程における前記第2p型不純物の拡散係数が、前記第4領域を形成する工程における前記第1p型不純物の拡散係数よりも大きい。
【0006】
なお、ゲートトレンチと外周トレンチは、何れを先に形成してもよい。また、ゲートトレンチの底面への不純物の注入と外周トレンチの底面への不純物の注入は、何れを先に実施してもよい。また、ゲートトレンチの底面に注入した不純物の拡散と、外周トレンチの底面に注入した不純物の拡散は、何れを先に実施してもよいし、これらを同時に実施してもよい。
【0007】
この方法では、第5領域を形成する工程における第2p型不純物の拡散係数が大きい。したがって、第2p型不純物をより広い範囲に拡散させることで、より幅広な第5領域を形成することができる。このため、各第5領域の間の間隔を狭くすることが可能であり、これらの間隔がより容易に空乏化されるようになる。したがって、この方法によれば、外周部における耐圧を向上させることができる。他方、第4領域を形成する工程における第1p型不純物の拡散係数は小さい。したがって、第1p型不純物の拡散範囲が狭くなり、これによって第4領域の幅が狭くなる。このように第4領域の幅を狭くすることで、各第4領域の間の間隔(すなわち、電流経路)を広く確保することができる。これによって、絶縁ゲート型半導体装置のオン電圧を低減することができる。
【0008】
上述した方法においては、前記第1p型不純物が、前記第2p型不純物とは異なる元素であってもよい。
【0009】
また、上述した方法においては、前記第1p型不純物と前記第2p型不純物がボロンであり、前記第4領域を形成する前記工程では、前記ゲートトレンチの底面にボロンとカーボンを注入してもよい。
【0010】
これらのいずれの方法によっても、第5領域を形成する工程における第2p型不純物の拡散係数を、第4領域を形成する工程における第1p型不純物の拡散係数よりも大きくすることができる。
【0011】
また、上述したいずれかの方法において、前記第5領域を形成する前記工程では、前記外周トレンチの底面に、前記第2p型不純物と、前記第2p型不純物よりも前記第4領域を形成する工程における拡散係数が小さい第3p型不純物を注入してもよい。
【0012】
また、上述したいずれかの方法において、前記第5領域を形成する前記工程では、前記外周トレンチの底面を構成する半導体層の少なくとも一部がアモルファス化する濃度で前記第2p型不純物を注入してもよい。
【0013】
また、上述したいずれかの方法において、前記第5領域を形成する前記工程では、前記外周トレンチの底面に1×10
18atoms/cm
3以上の濃度で前記第2p型不純物を注入してもよい。
【0014】
これらのいずれの方法によっても、第5領域のうちの外周トレンチの底面周辺の領域のp型不純物濃度を高くすることができる。これによって、外周トレンチの底面近傍で高い電界が生じることを抑制することができる。
【0015】
上述したいずれかの方法において、前記各第5領域の間の間隔が、前記各第4領域の間の間隔の1/2以下であってもよい。
【0016】
このような構成によれば、外周部よりも素子部で先にアバランシェ降伏が生じるようになる。素子部はアバランシェ耐量が高いので、素子部で先にアバランシェ降伏を生じさせることで絶縁ゲート型半導体装置の耐圧が向上する。
【0017】
また、本明細書は、新たな絶縁ゲート型半導体装置を提案する。この絶縁ゲート型半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成されている表面電極と、前記半導体基板の裏面に形成されている裏面電極を有し、前記表面電極と前記裏面電極の間をスイッチングする。この絶縁ゲート型半導体装置は、前記表面電極に接続されている第1導電型の第1領域と、前記第1領域に接している第2導電型の第2領域と、前記第2領域によって前記第1領域から分離されている第1導電型の第3領域と、前記半導体基板の前記表面に形成されており、前記第1領域と前記第2領域を貫通して前記第3領域に達する複数のゲートトレンチと、前記ゲートトレンチ内に配置されているゲート絶縁膜及びゲート電極と、前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第4領域と、前記第2領域と接しない位置において前記半導体基板の前記表面に形成されている複数の外周トレンチと、前記外周トレンチ内に配置されている絶縁層と、前記外周トレンチの底面に露出する範囲に形成されている第2導電型の第5領域を有する。前記第5領域の幅が、前記第4領域の幅よりも広い。前記第4領域に含まれる第2導電型不純物が、前記第5領域に含まれる第2導電型不純物とは異なる元素であってもよい。前記第4領域に含まれる第2導電型不純物と前記第5領域に含まれる第2導電型不純物がボロンであり、前記第4領域にさらにカーボンが含まれてもよい。前記第5領域に、第1の特定の第2導電型不純物と、前記第1の特定の第2導電型不純物よりも前記半導体基板内における拡散係数が小さい第2の特定の第2導電型不純物が含まれてもよい。前記外周トレンチの底面の少なくとも一部がアモルファス層であってもよい。前記外周トレンチの底面の少なくとも一部が、1×10
18atoms/cm
3以上の濃度で第2導電型不純物を含有してもよい。前記各第5領域の間の間隔が、前記各第4領域の間の間隔の1/2以下であってもよい。このような構成によれば、絶縁ゲート型半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
図1に示す半導体装置10は、SiCからなる半導体基板12を有している。半導体基板12は、セル領域20と外周領域50を有している。セル領域20には、MOSFETが形成されている。外周領域50は、セル領域20と半導体基板12の端面12aとの間の領域である。
【0020】
図2に示すように、半導体基板12の表面には、表面電極14と絶縁層16が形成されている。絶縁層16は、外周領域50内の半導体基板12の表面を覆っている。表面電極14は、セル領域20内において半導体基板12と接している。言い換えると、表面電極14が半導体基板12と接しているコンタクト領域の下側の領域がセル領域20であり、コンタクト領域よりも外周側(端面12a側)の領域が外周領域50である。半導体基板12の裏面には、裏面電極18が形成されている。裏面電極18は、半導体基板12の裏面の略全体を覆っている。
【0021】
セル領域20内には、ソース領域22、ボディコンタクト領域24、ボディ領域26、ドリフト領域28、ドレイン領域30、p型フローティング領域32、ゲートトレンチ34が形成されている。
【0022】
ソース領域22は、高濃度にn型不純物を含むn型領域である。ソース領域22は、半導体基板12の上面に露出する範囲に形成されている。ソース領域22は、表面電極14に対してオーミック接続されている。
【0023】
ボディコンタクト領域24は、高濃度にp型不純物を含むp型領域である。ボディコンタクト領域24は、ソース領域22が形成されていない位置において半導体基板12の上面に露出するように形成されている。ボディコンタクト領域24は、表面電極14に対してオーミック接続されている。
【0024】
ボディ領域26は、低濃度にp型不純物を含むp型領域である。ボディ領域26のp型不純物濃度は、ボディコンタクト領域24のp型不純物濃度よりも低い。ボディ領域26は、ソース領域22及びボディコンタクト領域24の下側に形成されており、これらの領域に接している。
【0025】
ドリフト領域28は、低濃度にn型不純物を含むn型領域である。ドリフト領域28のn型不純物濃度は、ソース領域22のn型不純物濃度よりも低い。ドリフト領域28は、ボディ領域26の下側に形成されている。ドリフト領域28は、ボディ領域26に接しており、ボディ領域26によってソース領域22から分離されている。
【0026】
ドレイン領域30は、高濃度にn型不純物を含むn型領域である。ドレイン領域30のn型不純物濃度は、ドリフト領域28のn型不純物濃度よりも高い。ドレイン領域30は、ドリフト領域28の下側に形成されている。ドレイン領域30は、ドリフト領域28に接しており、ドリフト領域28によってボディ領域26から分離されている。ドレイン領域30は、半導体基板12の下面に露出する範囲に形成されている。ドレイン領域30は、裏面電極18に対してオーミック接続されている。
【0027】
図1、2に示すように、セル領域20内の半導体基板12の上面には、複数のゲートトレンチ34が形成されている。各ゲートトレンチ34は、半導体基板12の表面において、互いに平行に直線状に伸びている。各ゲートトレンチ34は、ソース領域22とボディ領域26を貫通し、ドリフト領域28に達するように形成されている。各ゲートトレンチ34内には、ボトム絶縁層34aと、ゲート絶縁膜34bと、ゲート電極34cが形成されている。ボトム絶縁層34aは、ゲートトレンチ34の底部に形成された厚い絶縁層である。ボトム絶縁層34aの上側のゲートトレンチ34の側面は、ゲート絶縁膜34bによって覆われている。ボトム絶縁層34aの上側のゲートトレンチ34内には、ゲート電極34cが形成されている。ゲート電極34cは、ゲート絶縁膜34bを介して、ソース領域22、ボディ領域26及びドリフト領域28と対向している。ゲート電極34cは、ゲート絶縁膜34b及びボトム絶縁層34aによって、半導体基板12から絶縁されている。ゲート電極34cの上面は、絶縁層34dによって覆われている。絶縁層34dによって、ゲート電極34cは表面電極14から絶縁されている。
【0028】
p型フローティング領域32は、半導体基板12内であって、各ゲートトレンチ34の底面に接する範囲に形成されている。各p型フローティング領域32の周囲は、ドリフト領域28に囲まれている。各p型フローティング領域32は、ドリフト領域28によって、互いに分離されている。
【0029】
外周領域50内の半導体基板12の表面に露出する範囲には、p型の表面領域51が形成されている。表面領域51は、ボディ領域26と略同じ深さまで広がっている。上述したドリフト領域28及びドレイン領域30は、外周領域50まで広がっている。ドリフト領域28とドレイン領域30は、半導体基板12の端面12aまで広がっている。ドリフト領域28は、表面領域51に対して下側から接している。
【0030】
外周領域50内の半導体基板12の上面には、複数の外周トレンチ54が形成されている。各外周トレンチ54は、表面領域51を貫通して、ドリフト領域28に達するように形成されている。各外周トレンチ54内には、絶縁層53が形成されている。
図1に示すように、各外周トレンチ54は、半導体基板12を上側から見たときに、セル領域20の周囲を一巡する環状に形成されている。各外周トレンチ54は、互いに距離を隔てて形成されている。表面領域51は、外周トレンチ54によってボディ領域26(すなわち、表面電極14と導通しているp型領域)から分離されている。また、各表面領域51は、各外周トレンチ54によって互いに分離されている。
【0031】
半導体基板12内であって、各外周トレンチ54の底面に接する範囲には、p型の底面領域56が形成されている。底面領域56は、外周トレンチ54の底面全体を覆うように、外周トレンチ54に沿って形成されている。各底面領域56の周囲は、ドリフト領域28に囲まれている。各底面領域56は、ドリフト領域28によって、互いに分離されている。図示するように、各底面領域56の幅W1は、各p型フローティング領域32の幅W2よりも広い。ここで、底面領域56の幅W1は、外周トレンチ54を横切る方向(すなわち、外周トレンチ54の幅方向)における底面領域56の寸法を意味する。また、p型フローティング領域32の幅W2は、ゲートトレンチ34を横切る方向(すなわち、ゲートトレンチ34の幅方向)におけるp型フローティング領域32の寸法を意味する。
【0032】
次に、半導体装置10の動作について説明する。半導体装置10を動作させる際には、裏面電極18と表面電極14の間に裏面電極18がプラスとなる電圧が印加される。さらに、ゲート電極34cに対してゲートオン電圧が印加されることで、セル領域20内のMOSFETがオンする。すなわち、ゲート電極34cに対向している位置のボディ領域26にチャネルが形成され、表面電極14から、ソース領域22、チャネル、ドリフト領域28、ドレイン領域30を経由して、裏面電極18に向かって電子が流れる。このとき、電子は、2つのp型フローティング領域32の間に位置するドリフト領域28bを通って流れる。半導体装置10では、各p型フローティング領域32の幅W2が狭くなっており、これによってドリフト領域28bの幅W4が広くなっている。このように、電流が流れるドリフト領域28bの幅が広く確保されているので、MOSFETのオン電圧が低い。
【0033】
ゲート電極34cへのゲートオン電圧の印加を停止すると、チャネルが消失し、MOSFETがオフする。MOSFETがオフすると、ボディ領域26とドリフト領域28の境界部のpn接合からドリフト領域28内に空乏層が広がる。空乏層がセル領域20内のp型フローティング領域32に到達すると、p型フローティング領域32からドリフト領域28内にも空乏層が広がる。したがって、2つのp型フローティング領域32の間に位置するドリフト領域28bには、両側のp型フローティング領域32から空乏層が広がる。このように、セル領域20内に空乏層が伸展することで、セル領域20内における高い耐圧が実現される。
【0034】
なお、上述したように、2つのp型フローティング領域32の間に位置するドリフト領域28bの幅W4は広い。しかしながら、上述したように、ドリフト領域28bは両側から空乏化される。このため、ドリフト領域28bの幅W4が広くても、ドリフト領域28bは容易に空乏化される。
【0035】
また、上述したpn接合から伸びる空乏層は、最もセル領域20側に位置する外周トレンチ54の下側の底面領域56aに到達する。すると、底面領域56aから、外周側の底面領域56bに向かって空乏層が伸びる。空乏層が底面領域56bに到達すると、その底面領域56bから、外周側の底面領域56cに向かって空乏層が伸びる。このように、外周領域50内では、空乏層が、各底面領域56を経由して順番に外周側に伸展することで、最も外周側の底面領域56dまで空乏層が伸びる。このように外周領域50内に空乏層が伸展することによって、外周領域50内における高い耐圧が実現される。なお、外周領域50ではこのように空乏層が伸展するため、2つの底面領域56の間に位置するドリフト領域28aは片側(セル領域20側)からのみ空乏化される。しかしながら、ドリフト領域28aの幅W3は狭くなっており、これによって、ドリフト領域28aが確実に空乏化されるようになっている。
【0036】
本実施例では、ドリフト領域28aの幅W3がドリフト領域28bの幅W4の1/2未満である。このため、ドリフト領域28aはドリフト領域28bよりも先に空乏化される。このような構成によれば、半導体装置10に過大な電圧が印加されたときに、セル領域20でアバランシェ降伏を生じさせることができる。すなわち、外周領域50は面積が小さいため電流経路が小さく、アバランシェ降伏が生じたときにアバランシェ電流の密度が高くなり易い。このため、外周領域50はアバランシェ耐量が低い。これに対し、セル領域20は面積が広く電流経路が広いため、アバランシェ降伏が生じてもアバランシェ電流の密度が低くなる。このため、セル領域20は、外周領域50よりもアバランシェ耐量が高い。このため、上記のようにセル領域20でアバランシェ降伏が生じるようにすることで、半導体装置10全体としてのアバランシェ耐量を向上させることができる。
【0037】
次に、半導体装置10の製造方法について説明する。なお、本明細書が開示する製造方法は、p型フローティング領域32及び底面領域56を形成する工程に特徴を有するので、以下ではこれらを形成する工程について主に説明する。本明細書は、実施例1〜4の製造方法を提案する。
【実施例1】
【0038】
実施例1の製造方法では、まず、
図3に示すように、エピタキシャル成長、イオン注入等によって、半導体基板12にソース領域22、ボディコンタクト領域24、ボディ領域26及び表面領域51を形成する。次に、
図4に示すように、半導体基板12の表面に開口を有するマスク60(例えば酸化膜)を形成し、異方性エッチングによって開口内の半導体基板12をエッチングすることによって、ゲートトレンチ34を形成する。このとき、ゲートトレンチ34の側面は、テーパ状に傾斜した形状となる。次に、CVD法や熱酸化法によって、
図5に示すように、ゲートトレンチ34の内面に保護膜66(酸化膜)を形成する。
【0039】
(第1注入工程)
次に、
図6に示すように、半導体基板12に向けてAl(アルミニウム)を照射する。照射されたAlは、ゲートトレンチ34の底面の保護膜66を貫通して、ゲートトレンチ34の底面に注入される。また、保護膜66によって、ゲートトレンチ34の側面にAlが注入されることが防止される。したがって、Alは、ゲートトレンチ34の底面にのみ注入される。その後、マスク60と保護膜66を除去する。
【0040】
次に、
図7に示すように、半導体基板12の表面に開口を有するマスク61(例えば酸化膜)を形成し、異方性エッチングによって開口内の半導体基板12をエッチングすることによって、外周トレンチ54を形成する。このとき、外周トレンチ54の側面は、テーパ状に傾斜した形状となる。次に、CVD法や熱酸化法によって、
図8に示すように、外周トレンチ54の内面に保護膜67(酸化膜)を形成する。
【0041】
(第2注入工程)
次に、
図9に示すように、半導体基板12に向けてB(ボロン)を照射する。照射されたBは、外周トレンチ54の底面の保護膜67を貫通して、外周トレンチ54の底面に注入される。また、保護膜67によって、外周トレンチ54の側面にBが注入されることが防止される。したがって、Bは、外周トレンチ54の底面にのみ注入される。その後、マスク61と保護膜67を除去する。
【0042】
(活性化アニール工程)
次に、1600℃以上の温度で半導体基板12をアニールする。これによって、半導体基板12に注入されたAlとBを活性化させる。これによって、
図10に示すように、ゲートトレンチ34の底面の周囲にp型フローティング領域32を形成するとともに、外周トレンチ54の底面の周囲に底面領域56を形成する。ここで、半導体基板12(すなわち、SiC)の中においては、Bの拡散係数はAlの拡散係数よりも遥かに大きい。このため、活性化アニール工程においては、Bの拡散距離がAlの拡散距離よりも大きくなる。このため、
図10に示すように、底面領域56(すなわち、Bの拡散範囲)のサイズが、p型フローティング領域32(すなわち、Alの拡散範囲)のサイズよりも大きくなる。したがって、底面領域56の幅W1がp型フローティング領域32の幅W2よりも広くなり、2つの底面領域56の間の間隔W3が2つのp型フローティング領域32の間の間隔W4よりも狭くなる。その後、必要な構造(
図1に示すトレンチゲート構造、絶縁層16、表面電極14、ドレイン領域30及び裏面電極18)を形成することで、
図1に示す半導体装置10が完成する。
【0043】
以上に説明したように、実施例1の製造方法では、外周トレンチ54の底面に拡散係数が大きいBを注入して幅W1が広い底面領域56を形成する一方で、ゲートトレンチ34の底面に拡散係数が小さいAlを注入して幅W2が狭いp型フローティング領域32を形成する。このように、底面領域56とp型フローティング領域32とで注入するp型不純物を使い分けることで、底面領域56の幅をp型フローティング領域32の幅よりも広くすることができる。これによって、外周領域50では底面領域56の間の幅W3を狭くして耐圧を向上させるとともに、セル領域20における電流経路の幅W4を広く確保してMOSFETのオン電圧を向上させることができる。
【0044】
なお、外周トレンチ54の間の間隔を狭くすることによっても、底面領域56の間の間隔W3を狭くすることは可能である。しかしながら、外周トレンチ54の加工精度による制限によって、外周トレンチ54の間の間隔を狭くすることには限界がある。これに対し、上述した実施例1の方法によれば、Bの拡散を用いて底面領域56の間の間隔W3を狭くするため、外周トレンチ54の加工精度による制限に関係なく間隔W3を狭くすることが可能である。なお、外周トレンチ54の間の間隔を制限の範囲内でなるべく狭くし、かつ、Bの注入によって底面領域56を形成することで、幅W3をより狭くすることが可能である。
【実施例2】
【0045】
実施例2の製造方法では、上述した第1注入工程が実施例1の製造方法とは異なる。その他の工程は、実施例1の製造方法と等しい。
【0046】
実施例2の第1注入工程では、ゲートトレンチ34の底面にC(炭素)を注入し、次に、ゲートトレンチ34の底面にBを注入する。なお、第1注入工程では、CをBよりも高濃度で注入することが好ましい。また、第1注入工程では、BをCよりも先に注入してもよい。第2注入工程では、実施例1の製造方法と同様に、外周トレンチ54の底面にBを注入する。外周トレンチ54の底面には、Cは注入されない。活性化アニール工程では、実施例1の製造方法と同様にして半導体基板12をアニールし、半導体基板12に注入されたBを拡散させる。ここで、外周トレンチ54の底面に注入されたBは実施例1と同様にして広く拡散する。これに対し、ゲートトレンチ34の底面に注入されたBはそれほど広く拡散しない。これは、Cが注入されたSiC領域では、Bの拡散係数が低くなるためである。このため、
図10に示すように、外周トレンチ54の底面の周囲には幅W1が広い底面領域56が形成され、ゲートトレンチ34の底面の周囲には幅W2が狭いp型フローティング領域32が形成される。
【0047】
なお、実施例2の第1注入工程では、Cが注入される範囲を、Bが注入される範囲よりも広くすることが好ましい。このようにCを注入することで、活性化アニール工程におけるBの拡散をより効果的に抑制することができる。
【0048】
また、実施例2の第2注入工程でも、外周トレンチ54の底面にBとCを注入してもよい。このような構成でも、外周トレンチ54の底面に注入されるCの濃度が、ゲートトレンチ34の底面に注入されるCの濃度よりも低ければ、外周トレンチ54の底面近傍におけるBの拡散距離が、ゲートトレンチ34の底面近傍におけるBの拡散距離よりも長くなる。したがって、底面領域56をp型フローティング領域32よりも幅広に形成することができる。
【実施例3】
【0049】
実施例3の製造方法では、上述した第2注入工程が実施例1の製造方法とは異なる。その他の工程は、実施例1の製造方法と等しい。
【0050】
実施例3の第2注入工程では、外周トレンチ54の底面に、極めて高濃度にBを注入する。具体的には、外周トレンチ54の底面を構成する半導体層の少なくとも一部が、1×10
18atoms/cm
3以上の濃度のBを含有するように、Bを注入する。このように高濃度でBを注入すると、高濃度にBが注入された領域に極めて多くの結晶欠陥が生じる。場合によっては、高濃度にBが注入された領域はアモルファス化する。その結果、高濃度にBが注入された領域では、Bの拡散係数が低くなる。
【0051】
図11は、SiCからなる半導体基板の浅い領域(より詳細には、1000nmよりも浅い領域)にBを注入したときのBの濃度分布を示している。
図11においてグラフAは、Bを注入した直後の濃度分布を示している。また、グラフB〜Eは、対応する温度において30分のアニールを行った後の濃度分布を示している。なお、
図11では、グラフDとグラフEが重なっている。グラフAでは、1000nmよりも浅い領域にのみBが分布している。グラフB〜Eに示すように、熱処理を行うと、Bの分布範囲が深い方向に広がる。これは、SiC中にBが拡散していることを示す。但し、グラフAとグラフB〜Eを比較することで明らかなように、Bの濃度が1×10
18atoms/cm
3以上である領域では、グラフA〜EにおいてBの濃度がそれほど変化しない。これは、1×10
18atoms/cm
3以上の高濃度のBを含有する領域では、Bが拡散し難いことを意味する。1×10
18atoms/cm
3以上の高濃度のBを含有する領域では、欠陥が極めて多いため、Bの拡散係数が小さくなることが分かる。
【0052】
実施例3の製造方法では、第2注入工程で外周トレンチ54の底面に高濃度にBを注入し、その後に活性化アニール工程を実施する。すると、外周トレンチ54の底面近傍の高濃度にBを含有する領域ではBがあまり拡散しないため、外周トレンチ54の底面近傍にBの濃度が高い領域が残る。これによって、
図12に示す高濃度底面領域57が形成される。また、高濃度底面領域57の周囲には、Bが広く拡散することによって、低濃度底面領域58が形成される。なお、より具体的には、高濃度底面領域57は、1×10
18atoms/cm
3以上の濃度のBを含有する領域であり、低濃度底面領域58は、1×10
18atoms/cm
3未満の濃度のBを含有する領域である。なお、高濃度底面領域57は、アモルファス化した領域であってもよい。このように、外周トレンチ54の底面近傍に高濃度底面領域57が形成されていると、外周領域50内に空乏層が伸展する際に、空乏層が外周トレンチ54の底面に到達することが防止される。これによって、外周トレンチ54の底面近傍で高い電界が生じることが抑制される。また、低濃度底面領域58が広く分布することで、底面領域56の幅W1が広くなっており、外周領域50の耐圧向上が図られる。
【実施例4】
【0053】
実施例4の製造方法では、上述した第2注入工程が実施例1の製造方法とは異なる。その他の工程は、実施例1の製造方法と等しい。
【0054】
実施例4の第2注入工程では、外周トレンチ54の底面にBを注入し、次に、外周トレンチ54の底面にAlを注入する。なお、Alを先に注入し、Bを後で注入してもよい。活性化アニール工程では、実施例1の製造方法と同様にして半導体基板12をアニールし、半導体基板12に注入されたp型不純物(すなわち、BとAl)を拡散させる。ここで、外周トレンチ54の底面近傍では、Bが底面からその周囲に広く拡散するのに対し、Alは拡散し難いので底面の近傍に留まる。このため、
図12に示すように、外周トレンチ54の底面の周囲にp型不純物濃度が高い高濃度底面領域57が形成され、その高濃度底面領域57の周囲にp型不純物濃度が低い低濃度底面領域58が形成される。実施例4においては、高濃度底面領域57はAlが多く存在する領域であり、低濃度底面領域58はBが多く存在する領域である。したがって、実施例4の製造方法によって製造された半導体装置10でも、外周領域50に空乏層が伸展する際に、空乏層が外周トレンチ54の底面に到達することが防止される。これによって、外周トレンチ54の底面近傍で高い電界が生じることが抑制される。
【0055】
以上に説明したように、実施例1〜4の製造方法では、活性化アニール工程におけるp型不純物の拡散距離が、ゲートトレンチ34の底面に注入されたp型不純物よりも外周トレンチ54の底面に注入されたp型不純物で長くなるように、p型不純物やp型不純物と共に注入する元素が選択される。これによって、底面領域56をp型フローティング領域32よりも幅広に形成することが実現される。なお、上述した実施例1〜4において、Alに代えて、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)をp型不純物として使用してもよい。Ga、Inは、SiC中における拡散距離が短いので、Alと同様に用いることができる。また、Al、Ga、Inの拡散距離は、BとCを注入した場合のBの拡散距離よりも短い。したがって、第1注入工程においてAl、GaまたはInをゲートトレンチ34の底面に注入し、第2注入工程において外周トレンチ54の底面にCとBを注入してもよい。また、実施例3、4の第2注入工程を、実施例2に適用してもよい。
【0056】
なお、上述した実施例では、SiC製の半導体基板を用いたが、その他の半導体基板を用いてもよい。但し、SiC製の半導体基板では、Bの拡散係数が、その他のp型不純物の拡散係数よりも極端に大きい。したがって、SiC製の半導体基板に実施例を適用することで、p型フローティング領域32の幅を最小限にするとともに、底面領域56の幅を十分に広くすることができる。
【0057】
また、上述した実施例では、MOSFETの製造方法について説明したが、IGBT等のその他の絶縁ゲート型半導体装置の製造工程に上述した技術を適用してもよい。
【0058】
また、上述した実施例では、ゲートトレンチ34の下端にp型フローティング領域32が形成されていたが、p型フローティング領域32に代えて、所定の電位に接続されているp型領域が形成されていてもよい。
【0059】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。