(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266979
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】異常を監視する装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20180115BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-532441(P2013-532441)
(86)(22)【出願日】2012年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2012005597
(87)【国際公開番号】WO2013035307
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-194424(P2011-194424)
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509339821
【氏名又は名称】アトナープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100164415
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友美
【審査官】
伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−018831(JP,A)
【文献】
特表2008−508693(JP,A)
【文献】
特開2011−094975(JP,A)
【文献】
特許第4039868(JP,B2)
【文献】
米国特許第9285341(US,B2)
【文献】
欧州特許出願公開第2755011(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01N 27/62
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖または半閉鎖された空間に配置された複数の部品または製品を有するシステムの異常を監視する装置であって、
前記空間に配置された監視対象の前記複数の部品または製品の各々は、サンプリングされたガスに含まれる化学物質をイオン化してその移動を測定または検出するセンサーにより検出されたときのスペクトルが異なる複数のマーカー用の化学物質であって、特定の異なる要因により前記複数のマーカー用の化学物質を大気中にそれぞれ放出する複数種類のカプセルを含み、前記複数種類のカプセルの中の、破壊される要因が同一のカプセルが、前記異なる複数のマーカー用の化学物質を含み、さらに、
当該装置は、前記マーカー用の化学物質を特定するスペクトル、前記監視対象の部品、製品または前記特定の要因と前記マーカー用の化学物質との関連を示す情報を含むデータベースと、
前記空間の内部の空気をサンプリングするサンプリングポンプと、
前記サンプリングポンプによりサンプリングされた空気に含まれる前記マーカー用の化学物質を特定するスペクトルを検出するセンサーと、
前記データベースを参照して前記センサーにより検出された前記マーカー用の化学物質に関連付けられた部品、製品または要因を識別し、異常状態の種類および発生場所を含む情報を出力するユニットとを有する装置。
【請求項2】
請求項1において、前記複数種類のカプセルは、それぞれ所定の耐圧性、耐熱性、耐光性、耐候性または耐薬品性を備えている、装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置と、
複数の部品または製品であって、各々が、前記装置のセンサーにより検出されたときのスペクトルが異なる複数のマーカー用の化学物質であって、特定の要因により前記複数のマーカー用の化学物質をそれぞれ放出する複数種類のカプセルを含む複数の部品または製品とを有する監視システム。
【請求項4】
請求項3において、前記複数の部品または製品の各々は、前記複数種類のカプセルの少なくとも1つの種類を含む塗料、樹脂または部品を含む、監視システム。
【請求項5】
閉鎖または半閉鎖された空間に配置された複数の部品または製品を有するシステムの異常を監視する装置の制御方法であって、
前記空間に配置された監視対象の前記複数の部品または製品の各々は、サンプリングされたガスに含まれる化学物質をイオン化してその移動を測定または検出するセンサーにより検出されたときのスペクトルが異なる複数のマーカー用の化学物質であって、特定の異なる要因により前記複数のマーカー用の化学物質を大気中にそれぞれ放出する複数種類のカプセルを含み、前記複数種類のカプセルの中の、破壊される要因が同一のカプセルが、前記異なる複数のマーカー用の化学物質を含み、さらに、前記装置は、前記マーカー用の化学物質を特定するスペクトル、前記監視対象の部品、製品または前記特定の要因と前記マーカー用の化学物質との関連を示す情報を含むデータベースと、前記空間の内部の空気をサンプリングするサンプリングポンプと、前記サンプリングポンプによりサンプリングされた空気に含まれる前記マーカー用の化学物質を特定するスペクトルを検出するセンサーを有し、
当該制御方法は、前記データベースを参照して前記センサーにより検出された前記サンプリングポンプによりサンプリングされた空気に含まれる前記マーカー用の化学物質に関連付けられた部品、製品または要因を識別し、異常状態の種類および発生場所を判断することを有する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン移動度センサーで検出可能なマーカー物質を利用した監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国特開2009−187227号公報には、注意喚起の作用が強く、かつ安全性の高い臭気発生警報装置および異常事態報知方法を提供することが記載されている。この文献の臭気発生警報装置は、臭気物容器と、駆動部と、検知器と、制御部である回路部とを含んで構成される。臭気物容器は、臭気物質を収容する。空気中における臭気物質の、人間が匂いの強さに耐えられなくなる濃度は、臭気物質の最大無作用濃度よりも低い。駆動部は、臭気物容器から臭気物質を放出する。検知器は、異常事態の発生を検知し、検知信号を出力する。制御部は、検知器からの検知信号が入力され、検知信号に応じて駆動部に臭気物質を放出させる。
【0003】
日本国特表2008−508693号公報(国際公開WO2006/013396)には、物質毎のイオン移動度の差に起因する物理的現象を測定する装置が開示されている。この文献には、特に、複数の電極を有する少なくとも1つのイオンチャネルの形状のイオンフィルタを有するイオン移動度分光計について記載されている。このイオン移動度分光計は、導電層に印加される時間変化する電位により、充填剤はイオン種を選択的に入れることができる。電位は、駆動電界成分および横電界成分を有し、好ましい実施形態において、電極のそれぞれは、駆動電界および横電界の両方の成分を生成するのに関与する。この装置は、ドリフトガスフローがなくても用いることができる。
【発明の開示】
【0004】
日本国特開2009−187227号公報に記載の臭気発生警報装置は、異常事態のときに人間が匂いの強さに耐えられなくなる濃度で臭気物質を放出することにより異常事態の発生を人間に知らせる。臭気の種類を増やしても人間が感知できる程度では、どこでどのような異常が発生したか知らせることは難しい。また、複数の臭気を放出できたとしても、複数の異常が同時発生したときに、どのような異常が発生したのかを判断することも難しい。
【0005】
本発明の一態様は、閉鎖または半閉鎖された空間に配置された複数の部品または製品を有するシステムの異常を監視する装置である。この空間に配置された監視対象の複数の部品または製品の各々は、サンプリングされたガスに含まれる化学物質をイオン化してその移動を測定または検出するセンサーにより検出されたときのスペクトルが異なる複数のマーカー用の化学物質であって、特定の
異なる要因により複数のマーカー用の化学物質を大気中にそれぞれ放出する複数種類のカプセル(マイクロカプセル)を含む。
複数種類のカプセルの中の、破壊される要因が同一のカプセルは、異なる複数のマーカー用の化学物質を含む。また、監視する装置は、マーカー用の化学物質を特定するスペクトル、監視対象の部品、製品または特定の要因とマーカー用の化学物質との関連を示す情報を含むデータベースと、空間の内部の空気をサンプリングするサンプリングポンプと、サンプリングポンプによりサンプリングされた空気に含まれるマーカー用の化学物質を特定するスペクトルを検出するセンサーと、データベースを参照してセンサーにより検出されたマーカー用の化学物質に関連付けられた部品、製品または要因を識別し、異常状態の種類および発生場所を含む情報を出力するユニットとを有する。カプセル(マイクロカプセル)は、たとえば、所定の耐圧性を備えており、所定の圧力以上の圧力が加わると破壊されるものである。カプセルは、さらに、所定の耐熱性、耐光性、耐候性または耐薬品性を備えているものであってもよい。
【0006】
このシステムにおいて監視要因は、カプセルの材質、強度などを選定することにより自由に設定できる。また、放出されるマーカー用の化学物質は、監視要因により変えたり、監視対象の部品または製品により変えることができる。したがって、監視要因の識別、監視対象の部品または製品の識別(具体的な個体の識別、設置された場所の識別などを含む)は、
検出されたマーカー用の化学物質をデータベースを参照することで可能となる。
【0007】
本発明の他の態様の1つは、
上記の装置と、複数の部品または製品であって、各々が、装置のセンサーにより検出されたときのスペクトルが異なる複数のマーカー用の化学物質であって、特定の要因により複数のマーカー用の化学物質をそれぞれ放出する複数種類のカプセルを含む複数の部品または製品とを有する監視システムであ
る。
【0008】
これらのカプセルは製品に含有させて提供してもよく、半製品、たとえば、塗料、樹脂、あるいは部材に含有させて提供してもよい。
【0009】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、閉鎖または半閉鎖された空間に配置された複数の部品または製品を有するシステムの異常(不具合)を監視する装置の制御方法である。空間に配置された監視対象の複数の部品または製品の各々は、サンプリングされたガスに含まれる化学物質をイオン化してその移動を測定または検出するセンサーにより検出されたときのスペクトルが異なる複数のマーカー用の化学物質であって、特定の
異なる要因により複数のマーカー用の化学物質を大気中にそれぞれ放出する複数種類のカプセルを含み、
複数種類のカプセルの中の、破壊される要因が同一のカプセルは、異なる複数のマーカー用の化学物質を含み、さらに、監視する装置は、マーカー用の化学物質を特定するスペクトル、監視対象の部品、製品または特定の要因とマーカー用の化学物質との関連を示す情報を含むデータベースと、空間の内部の空気をサンプリングするサンプリングポンプと、サンプリングポンプによりサンプリングされた空気に含まれるマーカー用の化学物質を特定するスペクトルを検出するセンサーを有する。そして、制御方法は、データベースを参照してセンサーにより検出されたサンプリングポンプによりサンプリングされた空気に含まれるマーカー用の化学物質に関連付けられた部品、製品または要因を識別し、異常状態の種類および発生場所を判断することを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】圧力を検出する微粒子を含む層を拡大して示す図。
【
図4】監視システムにより異常を監視するプロセスを示すフローチャート。
【
図6】温度を検出する微粒子を含む塗料を拡大して示す図。
【0011】
図1に、イオン移動度センサー用の信号を発生する微粒子を用いた監視システムの概要を示している。この監視システム10は、閉鎖または半閉鎖された空間1に配置、設置あるいは組み立てられている監視対象物11のダメージの有無を監視するものである。この例では、監視対象物11は配管であり、配管の壁12に微粒子を含む監視層13が形成されている。また、監視システム10は、異常時に監視対象の配管11から放出される化学物質(分子、化合物、組成物などを含む)を検出する監視ユニット50を有する。
【0012】
監視ユニット(監視装置、モニター)50は、空間1の内部の空気をサンプリングするサンプリングポンプ51と、サンプリングされたガスに含まれる化学物質を測定または検出するイオン移動度センサー55と、検出結果を無線LANなどの手段を通じて出力する通信ユニット57とを含む。監視ユニット50は、異常事態の情報80を、たとえば、基地局61を介してインターネット62に接続されたホスト、たとえば、パーソナルコンピュータ63に送信する。
【0013】
監視ユニット50は、データベース58と、データベース58に格納された情報に基づいて異常事態を判断する制御ユニット(プロセッサ)59とを含んでいてもよい。データベース58は、モニタリングする化学物質を特定する情報と、モニタリングする部品、製品または要因と化学物質との関連を示す情報とを含む。データベース58および異常事態を判断する機能59は、ホスト63に含んでいてもよい。
【0014】
図2に監視対象の配管11の断面を示している。
図3に、微粒子30を含む監視層13を拡大して示している。信号発生用の微粒子30は、大きさが0.1μm〜5mm程度のマイクロカプセル35と、マイクロカプセル35に封入されたマーカー物質(化学物質)31とを含む。マイクロカプセル35に内包されたマーカー物質31は、イオン移動度センサー55に検出される多数の化学物質のいずれかであり、マーカー物質31がイオン移動度センサー55により検出されたときのスペクトルがデータベース58などに登録されているものである。
【0015】
イオン移動度センサー55としては、たとえば、FAIMS(FAIMS、Field Asymmetric waveform Ion Mobility Spectrometry、フィールド非対称質量分析計、またはDIMS、Differential Ion Mobility Spectrometry)を採用できる。他のタイプのイオン移動度センサーであってもよい。FAIMSの測定対象(検出対象)となる化学物質はイオン化できる化合物、組成物、分子であり、イオン移動度が化学物質毎にユニークである性質を利用して、バッファガス中を移動させながら、差動型電圧(DV、Dispersion Voltage、Vd電圧、電界電圧、交流電圧、以降ではVf)と補償電圧(CV、Compensation Voltage、補償電圧、直流電圧、以降ではVc)とを印加する。検出目標のイオン化された化学物質は、VfおよびVcの値が適切に制御されれば、検出器まで到達して電流値として検出される。
【0016】
マイクロカプセル35は、破壊温度・圧力領域が重複しないよう設計された材質および/または壁膜を有する複数種類のマイクロカプセルのいずれかである。マイクロカプセル35の製造方法はいくつかあるが、たとえば、界面重合法、in situ法マイクロカプセルがあり、それらにより製造されるマイクロカプセルの代表的なものとして、多価イソシアネートを用いたポリウレタンカプセルと、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂カプセルがある。ポリウレタンからなるカプセルの場合、多価イソシアネートとポリヒドロキシ化合物の両者を同時に油相中に溶解しておき、これを保護コロイド水溶液中に乳化分散し、さらに昇温して反応を起こさせてカプセル壁を形成させる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂からなるカプセルの場合、水に可溶性のメラミン−ホルムアルデヒドプレポリマーを用いる。染料前駆体を溶解したオイルを保護コロイド水溶液中に乳化分散したO/Wエマルジョンに、このプレポリマー水溶液を加えて弱酸性領域(pH3〜6)で加熱攪拌すると、O/W界面に高分子が沈着してマイクロカプセルが得られる。保護コロイドとしては、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の重縮合反応を促進する酸触媒としての機能を有するもの(例えば、スチレンスルホン酸系ポリマー、スチレンと無水マレイン酸の共重合体、エチレンと無水マレイン酸の共重合体、アラビアゴム、ポリアクリル酸等)を用いることができる。
【0017】
マイクロカプセルの材料および製造方法は上記に限定されない。使用前の保管もしくは輸送中に生じる加圧あるいは加熱条件下では破壊されず内容物を十分に保持できるマイクロカプセルであって、所定条件での加熱・加圧に供されると破壊され、内包している化学物質31を放出し得るマイクロカプセルであれば、特に限定されることはなく、公知の様々な材料および製造方法により製造されたカプセルを用いることができる。
【0018】
信号発生用の微粒子30は、マイクロカプセル35が所定の条件で破壊、損傷、溶解、消滅すると、マイクロカプセル35に内包されていた所定の化学物質31を放出する。したがって、破壊される要因により化学物質31の種類を変え、監視ユニット50が、大気に放出された化学物質31を検出することにより、マイクロカプセル35が破壊された要因を識別できる。
【0019】
さらに、破壊される要因が同一のマイクロカプセル35であって、異なる種類の化学物質31を含む微粒子30を用意し、種類の異なる化学物質31を含む微粒子30を異なる部材、機器あるいは異なる場所にセットすることも可能である。この場合は、監視ユニット50が、大気に放出された化学物質31を検出することにより、破壊された部材、機器あるいは場所、および破壊された要因を識別(特定)することが可能となる。
【0020】
監視対象の配管11の監視層13は、微粒子30を含む樹脂を含むものであってもよく、微粒子30を含む部材であってもよい。配管11に過大な圧力が加えられたり、衝撃が加えられて配管11の壁12にクラック19が発生すると、監視層13の微粒子30に過大な圧力が加わる。マイクロカプセル35の耐圧以上の圧力が微粒子30に加わると、マイクロカプセル35が破壊または損傷し、内包(埋包、包含)されていた化学物質31が放出される。監視ユニット50は、放出された化学物質31を検出すると、検出対象の配管11が損傷したことを識別し、異常事態の発生を含む情報80をコンピュータ63に送信する。
【0021】
監視対象の配管11の異なる場所、あるいは厚さ方向の場所が異なる第2の監視層に、異なる化学物質31が内包された微粒子30が含まれていると、監視ユニット50は、微粒子30から放出された化学物質31を検出することにより、クラック19の発生した場所、および/またはクラック19の深さに関する情報を得ることができる。したがって、監視ユニット50は、異常事態の要因だけではなく、異常事態の発生場所、異常事態による損傷の程度も含めた情報80をコンピュータ63に提供できる。
【0022】
図4に、監視システム10により異常事態を監視するプロセスをフローチャートにより示している。ステップ81において、監視ユニット50のイオン移動度センサー55がマーカー用の化学物質(化合物、マーカー物質)31を検出すると、ステップ82において、制御ユニット59は、データベース58を参照して、監視対象の部品、製品または要因の内の、検出されたマーカー用の化学物質31に関連付けされた部品、製品または要因を識別する。そして、ステップ83において、アラームを出力したり、異常事態の発生のみならず、異常事態の種類、発生場所、異常事態の程度などを含む情報80をホスト63に出力する。監視システム10の監視対象または要因によっては、監視ユニット50が、監視対象の部品または製品を含む装置やシステムの稼働を強制的に停止させるなどの適当な処理を行ってもよく、情報80を受信したホスト63が、そのような処理を行ってもよい。
【0023】
図5に、監視システムの異なる例を示している。この監視システム10も、閉鎖空間1に配置された監視対象の配管11と、監視ユニット50とを有する。監視対象の配管11には、複数種類の材料(半製品)、たとえば、塗料71〜77が塗られている。それぞれの塗料71〜77には、溶融温度の異なるマクロカプセル35に、それぞれ異なる種類の化学物質31が包含された微粒子30が含まれている。
【0024】
図6に、例として塗料75が溶けた状態を示している。塗料71〜77は耐熱性の異なる塗料であることが望ましい。塗料75は、配管11の周囲の温度が所定の温度に達すると溶け、さらに、マイクロカプセル35も溶解する。したがって、マイクロカプセル35に内包されていた化学物質31が放出され、監視ユニット50が放出された化学物質31を識別することにより、配管11の周囲あるいは内部の温度を知ることができる。さらに、同一の耐熱性を備えたマイクロカプセル35を含む微粒子30であって、異なる化学物質31がマイクロカプセル35に内包された微粒子30を用意し、配管11の異なる場所に塗布すれば、配管11に沿って配管11が到達した温度と、その温度に到達した場所とを監視ユニット50は知ることができる。したがって、監視ユニット50は、異常事態だけではなく、異常事態の発生場所、発生内容も含めた情報80をコンピュータ63に送信できる。
【0025】
このように、信号発生用の微粒子30は、マイクロカプセル35の特性と、マイクロカプセル35に内包される化学物質31との組み合わせにより、微粒子30が設置された環境に関する情報に加え、微粒子30が設置された場所および機器・部材などを特定する信号(情報)を、化学物質31を介して監視ユニット50に供給できる。したがって、監視対象の物品、場所などが視覚的に監視ユニット50から見えなかったり、測定機器が入らなかったり、測定機器が装着できないような物品あるいは場所であっても、化学物質31により異常事態の信号を監視ユニット50は取得できる。
【0026】
信号発生用のマイクロカプセル35は、所定の耐圧性、耐熱性を備えたものに限定されない。耐候性、耐光性、耐薬品性などを備えたマクロカプセル35を提供することが可能であり、さまざまな条件の発生を微粒子30と、イオン移動度センサー55を備えた監視ユニット50との組み合わせにより検出できる。
【0027】
イオン移動度センサー55を備えた監視ユニット50は、固定されたものに限定されず、移動型、たとえば、移動端末であってもよい。信号発生用の微粒子30を採用することにより、異常事態の発生を積極的に、また、適格に監視ユニット50に伝達することが可能である。また、機器の損傷だけではなく、何らの事態により発生した破片、ごみ、異物などであっても、信号発生用の微粒子30が含まれていれば、その破片などから放出される化学物質31を検出することにより、破片の存在を容易に検出することができる。したがって、食料品に異物が混入したりする事態の発生を未然に防止できる。