特許第6267022号(P6267022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267022
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】メイクアップ化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20180115BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20180115BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20180115BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/44
   A61K8/37
   A61K8/60
   A61K8/86
   A61K8/06
   A61Q1/00
   A61Q1/02
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-53430(P2014-53430)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-174849(P2015-174849A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 恵利子
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225561(JP,A)
【文献】 特開2005−314372(JP,A)
【文献】 特開2010−077097(JP,A)
【文献】 特開2013−091618(JP,A)
【文献】 特開2010−235514(JP,A)
【文献】 山本政嗣,他,ペプチド骨格を有するジェミニ型両親媒性化合物の乳化能,FRAGRANCE JOURNAL,2011年 4月,88-90頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E)を含有する、水中油型乳化メイクアップ化粧料。
(A):デキストリン系樹脂状被膜形成剤としてイソステアリン酸デキストリン0.2〜2質量%
(B):ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩としてジラウロイルグルタミン酸リシン塩0.01〜1質量%
(C):非イオン性界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる一種以上
(D):油剤
(E):水
【請求項2】
ファンデーションである請求項1に記載の水中油型乳化メイクアップ化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
使用感が良好で、耐水・耐皮脂性を有したいわゆる化粧もちに優れ、かつ洗浄が容易なメイクアップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
連続相が水相である水中油型の乳化組成物は、化粧料などの皮膚外用剤に使用するとべたつき感が少なく使用感が良好である。このため、医薬品・医薬部外品・化粧品分野等においてクリーム、ローション剤等の剤形の外用剤として広く利用されている。しかし、水中油型乳化組成物は親水性の界面活性剤を用いた乳化物であることから、汗や水辺などの水の存在下において再乳化する現象が生じ、その結果化粧膜が崩れる(化粧もちが悪い)という問題がある。一方、油中水型乳化組成物は親油性の界面活性剤を用いた乳化物であり、その結果耐水性があるため汗や水による化粧崩れがなく、化粧もち効果には優れる。しかし、皮脂による化粧崩れが問題となる。さらに油中水型乳化組成物は外相が油であることから油性感の強い使用感となるため、近年ではあまり好まれない。
水中油型の乳化組成物において、耐水性を向上させて化粧もちを良好にした技術が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。例えば、特許文献4には、さっぱりとした心地よい感触を持ち、化粧落としが容易であり、皮膚への付着性に優れ、耐水、耐皮脂性を有する、化粧もちに優れた水中油型メイクアップ化粧料の技術が提案されている。しかしながら、この技術を用いた水中油型メイクアップ化粧料は明細書中に記載されているとおり化粧膜を落とす時に油分を10%含むリムーバー(いわゆる油性クレンジング料)が使用されていることから、いわゆるダブル洗顔が必要なメイクアップ化粧料であると推察される。
近年は、化粧行為の簡易化や肌負担感の軽減を目的として、塗布しやすく、油性クレンジング料を用いずに洗顔料だけでメイクアップ化粧料が落とせる製品が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−355532号公報
【特許文献2】特開平08−268877号公報
【特許文献3】特開2001−342255号公報
【特許文献4】特開2005−314372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、塗布しやすく、使用感に優れ、化粧料移りのない(転写抑制機能があり)、化粧もちが良く、洗顔料のみで容易にメイクアップを落とすことができるメイクアップ化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、塗布しやすく心地よい使用感であり、化粧料移りのない特性(転写抑制機能)を有することで化粧もちを向上させ、かつ通常の洗顔料のみで容易にメイク汚れを落とすことができるメイクアップ化粧料の技術開発に取り組み本発明を完成させた。
本発明者は、水中油型のメイクアップ化粧料において、デキストリン系樹脂状被膜形成剤とジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合すると、メイクアップ化粧料の使用感が良好でかつ耐水性、耐皮脂性があり、化粧移りのない特性(転写抑制機能)を有した所謂化粧もちに優れたメイクアップ化粧料が得られることを見出した。さらにこのメイクアップ化粧料は通常使用される洗顔料のみで容易に洗い落とすことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)次の成分(A)〜(E)を含有する、水中油型乳化メイクアップ化粧料。
(A):デキストリン系樹脂状被膜形成剤としてイソステアリン酸デキストリン0.2〜2質量%
(B):ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩としてジラウロイルグルタミン酸リシン塩0.01〜1質量%
(C):非イオン性界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる一種以上
(D):油剤
(E):水
(2)ファンデーションである(1)に記載の水中油型乳化メイクアップ化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明のメイクアップ化粧料は塗布時にゴワついたりなじみが悪かったりせず、使用感が良好であり、化粧膜は耐水性、耐皮脂性があって化粧料に移りのない特性(転写抑制機能)を有した所謂化粧もちに優れた水中油型メイクアップ化粧料が得られる。
本発明のメイクアップ化粧料は通常使用される洗顔料のみで容易に落とすことができ、ダブル洗顔が不要である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、水中油型の乳化メークアップ化粧料であって、(A):デキストリン系樹脂状被膜形成剤、(B):ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩、(C):非イオン性界面活性剤、(D):油剤、(E):水を含む。
以下に、本発明の構成成分について説明する。
(A):デキストリン系樹脂状被膜形成剤
本発明に用いるデキストリン系樹脂状被膜形成剤は、樹脂状の糖脂肪酸エステルである。各種油剤への溶解性が良好で被膜形成が早く皮膚への付着性に優れことからメイクアップ化粧料に配合されている。例えば被膜の形成が早い特性を利用して落ちにくい口紅に配合されたり、付着性に優れる特性を利用してマスカラに配合されたりする。本発明ではデキストリン系樹脂状被膜形成剤としてイソステアリン酸デキストリンを用いることが好ましい。市販品としては、千葉製粉株式会社製のユニフィルマHVY(表示名称;イソステアリン酸デキストリン)を例示できる。
成分(A)のデキストリン系樹脂状被膜形成剤は本発明のメークアップ化粧料中に0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜2質量%配合することが好ましい。5質量%を超えて配合すると、被膜の形成が強すぎてゴワついた感触になる恐れがある。0.1質量%に満たないと化粧もち効果を発揮しない場合がある。
【0009】
(B):ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩
本発明に用いるジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は、両親媒性の特性を持ち、化粧料に使用される。化粧料に配合すると化粧料の保湿性を向上させる。また、化粧料の顔料分散性、乳化安定化性を改善する化合物である。
ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩で乳化した化粧料は、肌への塗布行為で乳化が壊れると水相でミセルを形成するため油分が凝集する性質がある。すなわち、いったん油分が凝集すると再乳化しにくいため、この性質を利用してウォータープルーフの日焼け止め化粧料に配合される。
ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩としては、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩、ジミリストイルグルタミン酸リシン塩、ジステアロイルグルタミン酸リシン塩、ジリノレオイルグルタミン酸リシン塩が例示できる。これらの塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジミリストイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジステアロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジリノレオイルグルタミン酸リシンナトリウムなどを用いることが好ましい。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は、L−リシン塩酸塩とN−脂肪酸アシル−L−グルタミン酸無水物を反応させて合成することができる。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は市販品を用いることも可能である。このような市販品としては旭化成ケミカルズ株式会社製のペリセアL−30:商品名(ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム)を例示できる。ペリセアL−30は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム29%、水71%から成る。ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は、化粧料中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜3質量%の範囲で配合することが好ましい。0.01質量%に満たないと、化粧もちの効果が得にくくなる恐れがある。5質量%を超えて配合するとメイクアップ化粧料を肌に塗布するときに、肌にはじく感じでなじみが悪くなる場合がある。また5質量%を超えて配合すると、メイクアップ化粧料を落とすために洗顔料のみで洗浄したとき、やや落としにくくなる場合がある。特にジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウムが好ましい。
【0010】
(C):非イオン性界面活性剤
本発明のメイクアップ化粧料は、水中油型の乳化化粧料である。エマルション型を水中油型とする為には、親水性の非イオン性界面活性剤の配合が必須である。親水性界面活性剤に加えて、親油性界面活性剤を少量配合するとより好ましい乳化状態となる。
本発明で用いる非イオン性界面活性剤は、使用感を良好にするためグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンに炭素数8〜22の脂肪酸が1〜2個エステル結合したものを用いることができる。具体的には、モノステアリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル等が挙げられる。ステアリン酸グリセリルを用いることが好ましい。市販品としては、株式会社日本エマルジョン製のステアリン酸グリセリル(EMALEX GMS−F)を例示できる。
ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトールに炭素数8〜22の脂肪酸がエステル結合したものを用いることができる。具体的には、ステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン等が挙げられる。ステアリン酸ソルビタンを用いることが好ましい。市販品としては、株式会社花王社製のステアリン酸ソルビタン(レオドールSP−S10V)を例示できる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン脂肪酸エステルにポリオキシエチレン基がエーテル結合した構造を有する。市販品としては、日本サーファクタント工業株式会社製のPOE(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル(NIKKOL TS−10V)、株式会社花王製のPOE(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル(レオドール TW−S120)、日油株式会社製のPOE(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル(ノニオン ST−221)、東邦化学工業株式会社社製のPOE(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル(ソルボン T−60)等)を用いることができる。
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖に炭素数8〜22の脂肪酸がエステル結合したものを用いることができる。市販品としては、三菱化学フーズ株式会社製のリョートーシュガーエステルを例示できる。
【0011】
本発明の乳化組成物を調製する場合には有機概念図法など既知の手段を参考にしながら、油相と水相の状態にあわせた適切な配合を検討することが肝要である。その上で、非イオン界面活性剤の総量を0.5〜5質量%とすることが好ましい。
【0012】
(D):油剤
本発明に使用される油剤は、エステル油、植物油のような油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコ−ン油などが例示できる。
エステル油としては、エチルヘキサン酸セチル、ジイソノナン酸1,3−ブチレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸1,3−ブチレングリコール、ジイソノナン酸ジプロピレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸ジプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソステアリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、イソステアリン酸イソトリデシル等が挙げられる。
油脂類としてはツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、メドゥフォーム油等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
シリコ−ン油として、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン、シクロペンタシロキサン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。
本発明における油剤の配合量は特に限定されないが、5〜30質量%が好ましく、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0013】
(E):水
本発明において水の配合量は特に限定されないが、好ましくは40〜60質量%である。
【0014】
本発明のメイクアップ化粧料には、任意成分として本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられている成分、例えば、水溶性高分子、多価アルコール等の保湿剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、塩類、pH調整剤、防腐剤、抗菌剤、キレート剤、着色剤、顔料などの紛体、香料等を配合することができる。また、セラミド、植物抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0015】
本発明では乳化安定性を目的として水溶性高分子を配合することができる。好ましい水溶性高分子としては、スクレロチウムガム、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。使用感の良好なものとしてカルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムを例示することができる。カルボキシビニルポリマー及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーは塩基性物質によって中和することで増粘剤として使用される。中和する目的で配合する塩基性物質としては、水酸化Na、水酸化K、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルギニンなどが使用可能である。
カルボキシビニルポリマーの市販品としては、NOVEON社製のカーボポール940、カーボポール941、カーボポール981や、株式会社和光純薬工業社製のハイビスワコー104、ハイビスワコー105などが挙げられる。アルキル変性カルボキシビニルポリマーの市販品としては、NOVEON社製のCARBOPOL 1342、CARBOPOL ETD2020、PEMULEN TR−1、PEMULEN TR−2などが挙げられる。キサンタンガムの市販品としては、DSP五協フード&ケミカル株式会社製のエコーガム、香栄工業株式会社製のケルトロールなどが挙げられる。水溶性高分子は、水相を増粘させる目的だけでなく使用感にも影響するので目的に合うものを適宜選択して配合することができる。配合にあたっては、一種又は二種以上を組合わせることができる。水溶性高分子は合計で0.01〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%配合することが好ましい。
保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール(ペンチレングリコール)等の多価アルコールが挙げられる。
塩類としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
pH調製剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
防腐剤としては、フェノキシエタノール、パラベン等が挙げられる。
顔料などの粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、酸化鉄、グンジョウ等が挙げられる。
セラミドとしては、セチルPGヒドロキシエチルパルミタイド、セレブロシド等が挙げられる。
【0016】
本発明のメイクアップ化粧料は、液状、乳液状、クリーム状のファンデーション剤型が特に好ましい。
【0017】
本発明のメイクアップ化粧料は、No.4ローターを備えたTV型粘度計を使用し、25℃、ローター回転速度12rpm、測定開始後30秒後の条件で測定したとき、好ましくは、10000〜100000mPa・sを示す。より好ましくは40000〜60000mPa・sの粘度を示す。
【実施例】
【0018】
以下に実施例、比較例のクリーム状メイクアップ化粧料を用いた試験結果を示し、本発明の特徴と効果をさらに詳細に説明する。
【0019】
メイクアップ化粧料の調製
表1に示す実施例1〜7、比較例1〜6の組成のクリーム状メイクアップ化粧料(乳化タイプ;水中油型ファンデーション)を調製した。
【0020】
(調製方法)
油相(成分A、B、C、D、SIMULGEL NS及び顔料分散物)と水相(成分E、水溶性高分子、pH調整剤、多価アルコール、中和剤)をそれぞれ別に混合し、80〜85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3000rpm、5分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却する。
【0021】
<試験・評価>
得られたクリーム状のメイクアップ化粧料を、「肌への塗布のしやすさ(使用感)」、「移りのなさ(転写抑制機能)」、「洗い流しやすさ」について試験し、評価した。移りのなさについては、塗布した化粧膜そのまま、水の存在下、油の存在下の3つの条件にて試験した。
【0022】
1.肌への塗布のしやすさ(使用感)
実施例、比較例の各メイクアップ化粧料を上腕内側部にとり、塗り伸ばす最中の使用感を、下記の基準により専門パネルが官能評価した。
○:塗布時の使用感がゴワついたりなじみが悪かったりせず良好である
×:塗布時の使用感がゴワつく又は肌にはじく感じでなじみが悪い
【0023】
2.転写抑制(化粧移り)
転写抑制(化粧移り)の試験方法は、「塗布した化粧膜そのまま」、「水の存在下」、「油の存在下」の3つの条件で試験した。
得られたメイクアップ化粧料15mmgを上腕内側部にとり、2×3cmの範囲に塗り伸ばして10分間放置し、化粧膜を形成させた後、3つの条件下(1.化粧膜そのまま、2.水の存在下、3.油の存在下)で移りのなさを夫々試験した。
「化粧膜そのまま」とは、化粧膜に何も滴下しないで10分経過後にティッシュペーパーを押し当てて、ティッシュペーパーにメイクアップ化粧料の色調が転写されるか否かを評価する試験である。
「水の存在下」とは、化粧膜の表面が均一に濡れるまでミスト状にした水を噴霧して10分経過後にティッシュペーパーを押し当てる試験である。水による再乳化による転写の有無を評価するものである。
「油の存在下」とは、化粧膜にスクワランをスポイトで1滴滴下して10分経過後にティッシュペーパーを押し当てる試験である。皮脂による化粧落ちの有無を評価するものである。
目視観察の結果、移りのなさを下記の判断基準で評価する。
○:移りがほとんどない(転写がほとんどない)
△:移りが少しある(転写が少しある)
×:かなり移りがある(かなり転写する)
【0024】
3.メイク汚れの落としやすさ(洗い流しやすさ)
実施例、比較例の各メイクアップ化粧料15mmgを上腕内側部にとり、2×3cmの範囲に塗り伸ばして10分間放置して化粧膜を形成させた後、市販の洗顔パウダー(株式会社ファンケル社製)を洗顔料の使用方法に従って洗浄した場合の、化粧膜(メイク)の洗浄容易性を評価した。
洗願パウダーを使用説明書に従って水で泡立て、この泡を化粧膜上にのせ、次いで手で15回往復させてこすり、さらに流水で10秒間洗い落とした。洗浄後の肌の状態を目視観察した。化粧膜(メイク)の洗浄除去状態を観察して評価した。
判定基準は次のとおりである。
○:化粧膜が完全に落とせた
×:化粧膜が完全に落とせない(あと残り感が強いものも含む)
試験・評価の結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
<試験結果の評価>
表1に示す実施例、比較例の結果から、以下のことがわかった。
実施例1〜7のクリーム状メイクアップ化粧料(ファンデーション)はいずれも塗布時の使用感がゴワついたりなじみが悪かったりせず良好であった。また洗い流しやすさも「化粧膜が完全に落とせた」との評価であった。
また、皮膚に塗布した化粧膜の転写抑制(化粧移り)の試験では、実施例1〜5は、いずれの試験条件でも「移りがほとんどない」との評価結果であった。そして実施例6、7は、「化粧膜そのまま」の試験、「水の存在下」の試験では「△(移りが少しある(転写が少しある))」との評価であった。これは実施例6、7の成分(B)の配合量が0.01%であることに起因するものと考えられる。
以上の結果から実施例1〜7のクリーム状ファンデーションは、使用感に優れ、洗浄しやすく、化粧移りの少ないことから化粧もちに優れていると評価することができる。
【0027】
一方、成分(B)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合していない組成である比較例1と2は、皮膚に塗布した化粧膜の転写抑制(化粧移り)において劣っていた。
比較例3は成分(B)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を配合せず(A)デキストリン系樹脂状被膜形成剤を6質量%と多く配合している組成であるが、「転写抑制(化粧移り)」は成分(A)を増やしたことにより改善したが、肌に塗布する時にゴワついてしまい使用感が良くなかった。
また、成分(B)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩を含み、成分(A)デキストリン系樹脂状被膜形成剤を配合していない組成である比較例4、5は、(B)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩の配合量を0.5%から6%に増加させると、比較例4の転写抑制(化粧移り)は改善するが、使用感は悪化(比較例5)した。また比較例5は洗い流しやすさについても悪化した。
また、比較例6は従来技術で多用されている組成のメイクアップ化粧料の組成である。この組成は成分(A)デキストリン系樹脂状被膜形成剤と成分(B)ジ脂肪酸アシルグルタミン酸リシン塩をともに配合していない。この比較例6、は使用感と洗い流しやすさは良好であったが、化粧移りのなさは、いずれの条件でも不良であった。
【0028】
本発明の構成をとることにより、使用感に優れ、その化粧膜の耐水性・耐皮脂性が良好な化粧もちに優れたメイクアップ化粧料となることが明らかとなった。また本発明のメイクアップ化粧料は通常の洗顔料のみで容易に落とすことができ、油性クレンジング料を使用するダブル洗顔が不要である。
【0029】
以下に、本発明のメイクアップ化粧料の処方例を示す。
処方例1 クリーム状ファンデーション
成分 質量%
(1)イソステアリン酸デキストリン 0.5
(2)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(29%水溶液) 0.5
(3)ステアリン酸グリセリル 0.2
(4)ステアリン酸ソルビタン・ヤシ脂肪酸スクロースの混合物 1.76
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E・O) 1.44
(6)ベヘニルアルコール 0.5
(7)ネオペンタン酸イソステアリル 10
(8)SIMULGEL NS 0.1
(9)SOLAVEIL CT−300−LQ−(WD) 15
(10)着色顔料混合物 7
(11)精製水 適量
(12)カルボマー 0.1
(13)キサンタンガム 0.2
(14)クエン酸ナトリウム 適量
(15)クエン酸 適量
(16)グリセリン 5
(17)1.3−ブチレングリコール 10
(18)水酸化カリウム 適量

(調製方法)
油相(1)〜(10)と水相(11)〜(18)をそれぞれ別に混合し、80〜85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3000rpm、5分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却した。

(評価)
処方例1のクリーム状ファンデーションは塗布時にゴワついたりなじみが悪かったりせず、使用感が良好であり、化粧膜は耐水性、耐皮脂性があって化粧料に移りのない特性(転写抑制機能)を有していた。また、洗顔料のみで容易に落とすことができ、ダブル洗顔が不要であった。
【0030】
処方例2 クリーム状ファンデーション
成分 質量%
(1)イソステアリン酸デキストリン 0.5
(2)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(29%水溶液) 1
(3)ステアリン酸グリセリル 0.2
(4)ステアリン酸ソルビタン・ヤシ脂肪酸スクロースの混合物 1.76
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E・O) 1.44
(6)ベヘニルアルコール 0.5
(7)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
(8)SIMULGEL NS 0.1
(9)SOLAVEIL CT−300−LQ−(WD) 15
(10)着色顔料混合物 7
(11)精製水 適量
(12)カルボマー 0.15
(13)キサンタンガム 0.1
(14)クエン酸ナトリウム 適量
(15)クエン酸 適量
(16)ジグリセリン 3
(17)ジプロピレングリコール 10
(18)水酸化カリウム 適量

(調製方法)
油相(1)〜(10)と水相(11)〜(18)をそれぞれ別に混合し、80〜85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3000rpm、5分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却した。

(評価)
処方例2のクリーム状ファンデーションは塗布時にゴワついたりなじみが悪かったりせず、使用感が良好であり、化粧膜は耐水性、耐皮脂性があって化粧料に移りのない特性(転写抑制機能)を有していた。また、洗顔料のみで容易に落とすことができ、ダブル洗顔が不要であった。
【0031】
処方例3 クリーム状ファンデーション
成分 質量%
(1)イソステアリン酸デキストリン 1
(2)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(29%水溶液) 1
(3)ステアリン酸グリセリル 0.2
(4)ステアリン酸ソルビタン・ヤシ脂肪酸スクロースの混合物 1.76
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E・O) 1.44
(6)ベヘニルアルコール 0.5
(7)スクワラン 10
(8)イソノナン酸イソトリデシル 5
(9)SIMULGEL NS 0.1
(10)SOLAVEIL CT−300−LQ−(WD) 15
(11)着色顔料混合物 7
(12)精製水 適量
(13)カルボマー 0.15
(14)キサンタンガム 0.1
(15)クエン酸ナトリウム 適量
(16)クエン酸 適量
(17)グリセリン 3
(18)ジプロピレングリコール 5
(19)水酸化カリウム 適量

(調製方法)
油相(1)〜(11)と水相(12)〜(19)をそれぞれ別に混合し、80〜85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3000rpm、5分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却した。

(評価)
処方例3のクリーム状ファンデーションは塗布時にゴワついたりなじみが悪かったりせず、使用感が良好であり、化粧膜は耐水性、耐皮脂性があって化粧料に移りのない特性(転写抑制機能)を有していた。また、洗顔料のみで容易に落とすことができ、ダブル洗顔が不要であった。
【0032】
処方例4 クリーム状ファンデーション
成分 質量%
(1)イソステアリン酸デキストリン 1
(2)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(29%水溶液) 1.5
(3)ステアリン酸グリセリル 0.2
(4)ステアリン酸ソルビタン・ヤシ脂肪酸スクロースの混合物 1.76
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E・O) 1.44
(6)ベヘニルアルコール 0.5
(7)ネオペンタン酸イソステアリル 10
(8)SIMULGEL NS 0.1
(9)SOLAVEIL CT−300−LQ−(WD) 15
(10)着色顔料混合物 7
(11)精製水 適量
(12)カルボマー 0.1
(13)キサンタンガム 0.2
(14)クエン酸ナトリウム 適量
(15)クエン酸 適量
(16)グリセリン 5
(17)1.3−ブチレングリコール 10
(18)水酸化カリウム 適量

(調製方法)
油相(1)〜(10)と水相(11)〜(18)をそれぞれ別に混合し、80〜85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3000rpm、5分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却した。

(評価)
処方例4のクリーム状ファンデーションは塗布時にゴワついたりなじみが悪かったりせず、使用感が良好であり、化粧膜は耐水性、耐皮脂性があって化粧料に移りのない特性(転写抑制機能)を有していた。また、洗顔料のみで容易に落とすことができ、ダブル洗顔が不要であった。
【0033】
処方例5 クリーム状ファンデーション
成分 質量%
(1)イソステアリン酸デキストリン 2
(2)ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(29%水溶液) 3
(3)ステアリン酸グリセリル 0.2
(4)ステアリン酸ソルビタン・ヤシ脂肪酸スクロースの混合物 1.76
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E・O) 1.44
(6)ベヘニルアルコール 0.5
(7)ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
(8)SIMULGEL NS 0.1
(9)SOLAVEIL CT−300−LQ−(WD) 15
(10)着色顔料混合物 7
(11)精製水 適量
(12)カルボマー 0.15
(13)キサンタンガム 0.1
(14)クエン酸ナトリウム 適量
(15)クエン酸 適量
(16)ジグリセリン 3
(17)ジプロピレングリコール 10
(18)水酸化カリウム 適量

(調製方法)
油相(1)〜(10)と水相(11)〜(18)をそれぞれ別に混合し、80〜85℃に加熱して、十分に攪拌後、水相を油相へ添加し、ホモミキサーで3000rpm、5分攪拌して乳化し、その後、室温まで攪拌冷却した。

(評価)
処方例5のクリーム状ファンデーションは塗布時にゴワついたりなじみが悪かったりせず、使用感が良好であり、化粧膜は耐水性、耐皮脂性があって化粧料に移りのない特性(転写抑制機能)を有していた。また、洗顔料のみで容易に落とすことができ、ダブル洗顔が不要であった。