特許第6267034号(P6267034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267034
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】化粧料用皮膚パック粘土シート
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20180115BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20180115BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61Q19/00
   A61K8/73
   A61K8/60
   A61K8/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-68005(P2014-68005)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189707(P2015-189707A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】草川 太郎
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−139448(JP,A)
【文献】 特開平11−322538(JP,A)
【文献】 特開2006−206448(JP,A)
【文献】 特開2001−199833(JP,A)
【文献】 特開2003−081879(JP,A)
【文献】 特開昭57−185208(JP,A)
【文献】 特開2005−053784(JP,A)
【文献】 特開2012−092022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/25
A61K 8/02
A61K 8/60
A61K 8/73
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)を含有し、自立膜であることを特徴とする化粧料用皮膚パック粘土シート。
(A)スメクタイト
(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はキサンタンガム
(C)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド及び/又はヒアルロン酸塩
【請求項2】
全固形分に対する前記スメクタイトの含有率が50wt%以上、99.5wt%以下で
あることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料用皮膚パック粘土シート。
【請求項3】
前記スメクタイトがモンモリロナイトであることを特徴とする、請求項1、または2に
記載の化粧料用皮膚パック粘土シート。
【請求項4】
界面活性剤、油性成分、防腐剤の少なくとも1種を含有しないことを特徴とする、請求
項1〜3のいずれかに記載の化粧料用皮膚パック粘土シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚や毛穴の汚れ、黒ずみ、分泌物、角栓等を吸着除去し、皮膚を清浄にすることのできる化粧料用皮膚パック粘土シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘土鉱物を含むペーストからなるクレイパックが、いわゆる泥パックとして知られている。クレイパックは、ペーストを直接、またはペーストを不織布等の支持基材上に塗布したパックシートを、顔や体の皮膚に密着させてしばらく放置して、皮膚や毛穴の汚れ、黒ずみ、分泌物、角質等を粘土鉱物に吸着させた後に取り除くことで、皮膚を清浄に保つ効果を有する(特許文献1、2)。
クレイパックは、通常、粘土鉱物の分散性を維持するために界面活性剤を含んでいる。また、湿潤状態で保管、使用されるため、防腐剤を含んでいる。そのため、従来のクレイパックは界面活性剤や防腐剤により、皮膚に悪影響を及ぼす可能性がある。また、支持基材上に塗布されたクレイパックは、皮膚から剥がす際の刺激が強いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−322535号公報
【特許文献2】特開2000−256162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、皮膚への刺激が少ない化粧料用皮膚パック粘土シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
1.下記(A)〜(C)を含有する化粧料用皮膚パック粘土シート。
(A)スメクタイト
(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はキサンタンガム
(C)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド及び/又はヒアルロン酸塩
2.全固形分に対する前記スメクタイトの含有率が50wt%以上、99.5wt%以下である1.に記載の化粧料用皮膚パック粘土シート。
3.前記スメクタイトがモンモリロナイトである1.または2.に記載の化粧料用皮膚パック粘土シート。
4.油性成分、界面活性剤、防腐剤の少なくとも1種を含有しない1.〜3.のいずれかに記載の化粧料用皮膚パック粘土シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは、可撓性を有する自立膜であるため取り扱い性に優れ、乾燥したシートであるため保存性に優れる。使用後は剥がすのではなく、洗い流して取り除くため、皮膚への刺激が少ない。全固形分に対するスメクタイトの含有率を50wt%以上とすることができるため、汚れ等を多く吸着することができ、皮膚を清浄にする効果に優れる。油性成分を含有しない化粧料用皮膚パック粘土シートは、発汗するような条件で使用しても粘土シートが皮膚から浮かび上がらないため、毛穴の開いた状態で使用することができる。界面活性剤、防腐剤の少なくとも1種を含有しない化粧料用皮膚パック粘土シートは、これらによる皮膚への悪影響がない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記(A)〜(C)を含有する化粧料用皮膚パック粘土シートに関する。
(A)スメクタイト
(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はキサンタンガム
(C)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド及び/又はヒアルロン酸塩
【0008】
(A)スメクタイトとは、膨潤性を有する粘土鉱物の総称であり、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、スチブンサイト、バーミキュライト、ボルコンスコイト、ソコナイト、マガダイト、ケニアライト等が含まれる。本発明のスメクタイトとしては、特に制限されることなく使用することができるが、これらの中でモンモリロナイトが、吸着性の点から好ましい。また、天然鉱物から精製した天然スメクタイト、水熱反応により合成した合成スメクタイトのどちらも利用することができる。
【0009】
本発明は、上記(A)スメクタイトとともに、(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はキサンタンガムと、(C)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド及び/又はヒアルロン酸塩の両方を用いることを特徴とする。
(A)と(B)のみから粘土パックシートを製造することは可能であるが、さらに(C)成分を配合することにより、皮膚からの洗い流し性を向上させることができ、使用後に容易に取り除くことができる。本発明の粘土シートは、皮膚を強く擦ることなく容易に洗い流すことができるため、取り除く際の皮膚への刺激が非常に小さい。
【0010】
(A)〜(C)成分は、成膜に適した粘度を有する均一な分散液を形成することができる。本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは、(A)〜(C)の各成分を含有する分散液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、フッ素系樹脂フィルム、ガラス板等の基板上に塗布し、乾燥することで製造することができる。製造された粘土シートは可撓性を有した自立膜であるため、基板から剥離して粘土シート単独で取り扱うことができる。ここで、自立膜とは、単独での取り扱いが可能な状態の膜を意味し、支持基材上に形成されている支持膜とは異なるものである。なお、本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは自立膜ではあるが、支持基材上に塗布等で形成した後に、剥離することなく支持基材上に載置された状態で切断、梱包等してもよい。
【0011】
本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートの全固形分に対する(A)スメクタイトの含有率(wt%)は、成膜に適した粘度を有する均一な分散液を得ることができ、成膜された化粧料用皮膚パック粘土シートが可撓性を有した自立膜となるものであれば特に制限されない。スメクタイトが少ないと化粧料用皮膚パック粘土シートの吸着能が低下するため、全固形分のうち、スメクタイトが50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上であることがより好ましく、70wt%以上であることがさらに好ましい。スメクタイトの全固形分に対する含有率は、その成膜性、可撓性の点から99.5wt%以下であることが好ましく、90wt%以下であることがより好ましく、80wt%以下であることがさらに好ましい。
また、(B)カルボキシメチルセルロース及び/又はキサンタンガムと、(C)ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド及び/又はヒアルロン酸塩との重量比は、50:50〜90:10の範囲が好ましい。
【0012】
化粧料用皮膚パック粘土シートの膜厚は、可撓性を有した自立膜となるものであれば特に制限されないが、通常、5〜500μmの範囲であり、好ましくは20〜400μm、より好ましくは50〜200μmの範囲である。5μmより薄いと、スメクタイトの量が十分でなく汚れ等が十分に除去できない。500μmより厚いと、可撓性が低下して割れやすくなり、取り扱い性が低下する。
【0013】
本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは、顔や体の皮膚に貼り付けて、汚れ、黒ずみ、分泌物、角栓等を吸着除去するために使用する。
具体的には、濡らした皮膚の上に、本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートを貼り付けて3〜20分放置する。化粧料用皮膚パック粘土シートは、水分を吸収することで柔らかくなるため、皮膚の凹凸に沿って密着させることができる。皮膚に貼り付けた粘土シートは、水で洗い流すことにより、皮膚から容易に除去することができる。汚れ、黒ずみ、分泌物、角栓等はスメクタイトに吸着され、スメクタイトとともに洗い流されるので、皮膚を清浄にすることができる。
【0014】
本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートには、目的に応じて任意成分として製造を阻害しない範囲で、保湿剤、抗炎症剤、ビタミン類、抗酸化剤、血行促進剤、創傷治癒剤、抗菌性物質、皮膚賦活剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、美白剤等の薬効成分を含有させることができる。
【0015】
薬効成分としては、従来、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料等で使用されていて、水中に溶解、または分散可能なものであれば特に限定されることなく使用することができる。具体的には、アシタバエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オオムギエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クマザサエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、スイカズラエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センブリエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユズエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
【0016】
また、アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、トリメチルグリシン等の保湿剤;スフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質等の油性成分;ε−アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β−グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン等の抗炎症剤;ビタミンA,B2,B6,D,E,パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド等のビタミン類;トコフェロール、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤;γ−オリザノール、ビタミンE誘導体等の血行促進剤;レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤;デオキシリボ核酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜等の生体高分子;アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分;セファランチン、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエステラジオール、塩化カプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ−アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウム、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ヒドロコルチゾン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等も挙げられる。
【0017】
上記薬効成分は、スメクタイトと水溶性高分子の分散液に添加し、基板上に塗布、乾燥することにより、化粧料用皮膚パック粘土シートに含ませることができる。
【0018】
本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは、油性成分、界面活性剤、防腐剤の少なくとも1種を含有しないことが好ましい。2種含有しないことがより好ましく、3種とも含有しないことが最も好ましい。
【0019】
化粧料には油性成分が含有されることが多いが、本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは水分散液から形成されるため、油性成分を用いる必要はない。油性成分を含むクレイパックを使用中に発汗すると、汗と油性成分とは非相溶であるため、汗がクレイパック中の油性成分にはじかれて皮膚とクレイパックとの間に入り込み、クレイパックが浮かび上がってしまう。それに対し、油性成分を含まない本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは、汗が粘土シートにはじかれないため、粘土シートは浮かび上がらない。そのため、発汗して毛穴の開いた皮膚に密着を維持することができるので、汚れ等を効果的に除去することができる。
【0020】
また、本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは乾燥しており、スメクタイトは水中やエマルジョン中に分散していないので、界面活性剤が不要である。界面活性剤は皮膚に刺激を与える可能性があるが、界面活性剤を含まない本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは、皮膚に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0021】
さらに、本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは乾燥した状態で保管されるため、防腐剤を用いなくともよい。防腐剤の中には、メチルパラベンのように皮膚中に蓄積し、細胞の老化を促進させるものもあるが、防腐剤を含まない本発明の化粧料用皮膚パック粘土シートは、皮膚に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0022】
次に、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
下記表1に示す重量部で各成分を配合し、ディスパーで均一分散して、塗工に適した5000〜30000mPa・sの粘度を有する塗工液1〜12を得た。
【0024】
【表1】
【0025】
モンモリロナイト:クニミネ工業株式会社製、商品名:クニピアF
カルボキシメチルセルロース:ダイセルファインケム株式会社製、商品名:CMCダイセル1330
キサンタンガム:CP KELCO社製、商品名:ケルトロールT
ポリオキシエチレン(10)メチルグルコシド:日油株式会社製、商品名:マクビオブライド MG−10E
ヒアルロン酸ナトリウム:キッコーマンバイオケミファ株式会社、商品名:ヒアルロン酸FCH−200
カルボキシビニルポリマー 中和済み:カルボキシビニルモノマー(和光純薬工業株式会社製、商品名:ハイビスワコー105)1部に対して0.3部の水酸化カリウムで中和したもの。
【0026】
塗工液1〜12を、それぞれ表面処理されていないポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラーT60、厚さ100μm)に、アプリケーターを用いて塗工膜厚が1mmとなるように塗布した。これを、80℃で2時間乾燥させて、水分を蒸発させた後、ポリエチレンテレフタレートから剥離して、粘土シート1〜12を得た。
各粘土シート中の各成分の含有率(wt%)を下記表3、4に示す。
【0027】
「評価試験1」可撓性
得られた粘土シートから、2cm×6cmの試験片を切り出した。長辺の両端を把持して180度折り曲げた後、逆側に180度折り曲げた。この操作を5回、計10回折り曲げて、下記評価基準で可撓性を評価した。
◎:10回の折り曲げ後もひび割れなし。
○:3〜9回の折り曲げ後にひび割れ有り。
△:2回の折り曲げ後にひび割れ有り。
×:1回の折り曲げ後にひび割れ有り。
【0028】
「評価試験2」角質除去性
下記表2に示す含有率(wt%)で各成分を混合して、黒色の人工角栓組成物とした。
この人口角栓組成物を、表面にシボを有する5cm×5cm角の白色人工皮革(商品名:ソフトセミリーナ、表面:ポリ塩化ビニール)の表面に均一に塗布した。
水で濡らした人工角栓組成物の塗布膜上に、3cm×3cmの粘土シートを間に空気が入らないように密着させて5分間放置した。
放置後、0.5mlの水を粘土シート上に垂らし、指の腹で1分間撫でるようにして粘土シートを膨潤、または溶解させた。その後、流水を用いて粘土シートを洗い流し、人工角栓組成物の除去具合を以下の基準で評価した。
○:黒色が落ちて白色の人工皮革の色に戻る。
×:人工皮革のシボ溝内に黒色が残る。
【0029】
【表2】
【0030】
トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル:日清オイリオグループ株式会社製、商品名:サラコス334
マイクロクリスタリンワックス:sonneborn社製、商品名:MULTIWAX W−445
ケラチン:東京化成工業株式会社製、商品名:ケラチン
炭:堀江生薬株式会社製、商品名:薬用炭
【0031】
「評価試験3」洗い流し性
水で濡らした前腕部内側の皮膚の上に、3cm×3cmの粘土シートを間に空気が入らないように貼り付けて5分間放置した。
放置後、0.5mlの水を粘土シート上に垂らし、指の腹で1分間撫でるようにして粘土シートを膨潤、または溶解させた。その後、流水を用いて粘土シートを洗い流し、洗い流し性を以下の基準で評価した。
◎:10秒未満で洗い流せる。
○:10秒以上30秒未満で洗い流せる。
△:30秒以上1分未満で洗い流せる。
×:洗い流すのに1分以上かかる。
【0032】
「評価試験4」溶解性
50mlファルコンチューブに純水を満了入れ、3cm×3cmの粘土シートを投入した。投入後すぐに、振とう機(EYELA社製、装置名:MULTI SHAKER MMS)を用い、100rpmの振とう速度で撹拌し、完全に溶解するまでの時間を測定した。測定は、粘土シート1〜4、6〜10で行った。粘土シートのサンプル数は3とした。溶解するまでの時間(分)の相加平均値を溶解時間とした。
粘土シート1〜12は、作成した塗工液1〜12の固形分濃度が異なるため膜厚が異なる。したがって、塗布膜厚である1mmと、塗工液中の固形分の重量比率とを掛けた値を擬似膜厚とし、下記計算式により、溶解性を算出した。溶解性の数値が大きいほど溶解しやすいことを示す。
溶解性=擬似膜厚/溶解時間(分)
擬似膜厚=塗布膜厚(1mm)×塗工液中の固形分の重量比率
評価結果を下記表3、4に示す。なお、実施例5、比較例5、6は測定していない。
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
本発明の実施例1〜6の粘土シートは、可撓性、角質除去性、洗い流し性に優れていた。実施例1、3、及び比較例1〜4から、洗い流し性と溶解性とには、相関関係が認められた。キサンタンガムを含有する実施例2、4、6の粘土シートは洗い流し性に優れていたが、溶解せず膨潤するのみであった。カルボキシメチルセルロースを含有する実施例1、3、5の粘土シートは、溶解することで皮膚から容易に取り除けるが、キサンタンガムを含有する実施例2、4、6の粘土シートは溶解するのではなく、ゲルのまま崩壊して皮膚から容易に取り除けた。実施例2、4、6の粘土シートは溶解しないため、高湿度下や濡れる可能性の高い状況下での使用に適している。例えば、粘土シートが溶解して泥水が目に入ることがないため、入浴中に顔に貼り付けて使用することができる。
【0036】
(C)成分を含まない比較例1〜3の粘土シートは、本発明の粘土シートと同等の角質除去性を有しているが、洗い流し性、可撓性に劣っていた。比較例1、2は、10秒未満で泥が流れ落ち、取り除けたように思えたが、一部皮膚に残留してヌルツキが残り、完全に取り除くには、10秒以上の洗い流しが必要であった。比較例3は、可撓性に優れるものの、洗い流し性に極めて劣り、1分以上洗い流しても十分に除去されなかった。
(C)成分の代わりにカルボキシビニルポリマーを用いた比較例4〜6の粘土シートは、皮膚に強力にこびりつき、1分以上洗い流しても十分に除去できず、皮膚から除去するのが非常に困難であった。さらに、角質除去性も不十分であった。