(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を、本発明の実施の形態を参照して説明する。
【0018】
はじめに、コンクリート改質剤について説明する。
【0019】
コンクリート改質剤は、カルシウムイオンが溶解したアルカリ電解水である。なお、必要に応じて、アルカリ電解水に、所定の溶質が添加されていてもよい。
【0020】
このアルカリ電解水は、pHが11以上であることが好ましい。また、アルカリ電解水のpHの上限は、特に限定されないが、コンクリートに供給した場合、アルカリ骨材反応が起こらない程度、すなわち、コンクリートアルカリ総量の記載(Na
2O換算 3.0kg/m
3以下)となる範囲であればよい。25℃の当該アルカリ電解水100g当たりにおけるカルシウムイオンの溶解度は、例えば、5.0gであり、100gの水(25℃、pH7)に水酸化カルシウムを溶解させた場合におけるカルシウムイオンの溶解度(0.17g)に比べ、高い。また、アルカリ電解水におけるカルシウムイオンの濃度は、10mg/L以上であることが好ましい。
【0021】
後述するように、アルカリ電解水におけるカルシウムイオンの濃度が低濃度(例えば、10mg/L以上1×10
2mg/L未満)の場合には、コンクリート保護剤との反応時間が比較的長いため、アルカリ電解水をひびの奥まで浸透させることができる。この結果、ひびの表層部から奥部まで補修をすることができる。一方、アルカリ電解水におけるカルシウムイオンの濃度が高濃度(例えば、1×10
2mg/L以上)の場合には、コンクリート保護剤との反応時間が比較的短いため、ひびの表層部の補修をすることができる。もちろん、ひびの態様によっては、カルシウムイオンの濃度が低濃度のアルカリ電解水と、カルシウムイオンの濃度が高濃度のアルカリ電解水とを併用してもよい。例えば、初めに低濃度のアルカリ電解水によりひびの奥部の補修をした後に、高濃度のアルカリ電解水によりひびの表層部の補修をしてもよい。
【0022】
次に、コンクリート改質剤の作り方について説明する。
【0023】
まず、
図1に示すように、コンクリート改質剤の製造設備2は、水槽10と、イオン交換膜20と、陽極30と、陰極40と、陽極30及び陰極40に所定の電圧を印可する電源50と、を備える。
【0024】
水槽10には、カルシウム剤が溶けた水道水が貯留する。カルシウム剤としては、例えば、水溶性のカルシウム含有化合物(乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸化オリゴ糖カルシウム等のカルシウム塩)がある。
【0025】
水槽10の内部空間をイオン交換膜20で仕切り、イオン交換膜20で仕切られた2つの空間に、それぞれ陽極30と陰極40とを設ける。その後、電源50を用いて、陽極30と陰極40とに所定の電圧を印加して、電気分解を行う。この電気分解により、陰極40側には、水素が発生するとともに、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水80が生成される。一方、陽極30側には、乳酸を含む酸性水、塩化物イオン、炭酸水素イオンなどが、アルカリ電解水から隔離して生成される。
【0026】
こうして得られた、カルシウムイオンを含むアルカリ電解水は、コンクリート改質剤として利用可能である。このようなアルカリ電解水は、人体にとって有害な物質や、環境汚染物質を含まないため、作業が人体にとって安全かつ簡単に、そして、特別な準備を行うことなく用いることができる。
【0027】
次に、
図2を用いながら、コンクリート改質剤を用いたコンクリートの補修方法100について説明する。
【0028】
コンクリートの補修方法100では、改質剤供給工程110が行われる。改質剤供給工程110では、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水をコンクリート改質剤としてコンクリートに塗布する。なお、改質剤供給工程110では、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水をコンクリート改質剤として、スプレーで吹き付ける等、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水がコンクリートと接触する方法であれば別の方法でもよい。
【0029】
改質剤供給工程110により、コンクリート改質剤が塗布されたコンクリートには、多量の水酸化イオンと、多量のカルシウムイオンとが存在することとなる。
【0030】
ここで、水酸化イオン濃度X
OHに対する塩化物イオン濃度X
Clの割合(=X
Cl/X
OH)が所定の値を超えると、鉄筋の腐食が開始することが知られている。前述のコンクリート改質剤の塗布により、多量の水酸化イオンがコンクリートに供給される結果、コンクリートには多量の水酸化イオンが存在することとなる。このように、多量の水酸化イオンが存在することとなったコンクリート、すなわち、アルカリ性の強さが増したコンクリートに対して、塩化物イオンが侵入した場合、水酸化イオン濃度に対する塩化物イオン濃度の割合が低く抑えられる。したがって、アルカリ性の強さが増したコンクリートは、塩化物イオンが侵入した場合であっても、鉄筋の腐食が開始する限界値を超えにくくなり、結果として、鉄筋の腐食を抑えることができる。
【0031】
また、多量のカルシウムイオンの供給により、その一部は、コンクリート内において、不溶性の結晶として安定して存在することとなる。このような不溶性の結晶は、乾燥によって収縮しないため、この収縮に起因した亀裂がコンクリートに発生しなくなる。したがって、このような不溶性の結晶が存在しているコンクリートにおいては、炭酸ガスや、海水、雨水などといった劣化物質の侵入路が生まれにくい。
【0032】
このように、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水をコンクリート改質剤として、コンクリートへ供給すると、コンクリートの耐久性を向上させることができる。
【0033】
このコンクリート改質剤は、コンクリート保護剤との併用により、コンクリート保護剤の反応の促進剤としても利用できる。
【0034】
次に、
図3を用いながら、コンクリート改質剤を用いたコンクリートの補修方法200について説明する。
【0035】
コンクリートの補修方法200では、前述の改質剤供給工程110と、コンクリート保護剤をコンクリートへ供給する保護剤供給工程120とが行われる。
【0036】
保護剤供給工程120では、コンクリート保護剤をスプレーで吹き付ける等、コンクリート保護剤がコンクリートと接触する方法であれば別の方法でもよい。
【0037】
コンクリート保護剤は、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム)のケイ酸塩を含む。さらに、コンクリート保護剤は、カルシウムイオンを含まないものが望ましい。さらにまた、コンクリート保護剤は、必要に応じて、コロイドシリケートが含まれる。コンクリート保護剤としては、例えば、スーパーシールド(登録商標)(株式会社スーパーシールド製)がある。
【0038】
コンクリートの補修方法200により、コンクリートにおいて、水酸化カルシウムとアルカリ金属ケイ酸塩と水とが反応し、ゲル状のケイ酸カルシウムが生成する。生成したケイ酸カルシウムは、コンクリートの表層部分を緻密にして、外部からの劣化物質の浸入を防ぐことができるため、コンクリートの耐久性を向上させることができる。
【0039】
例えば、劣化状態のコンクリート(例えば、pH11未満のコンクリートや、新設してから約10年以上経過したコンクリート)においては、新設当初に含まれていたカルシウムイオンは、外部からの劣化物質の浸入等によって失われている。このような劣化状態のコンクリートに対し、そのまま、コンクリート保護剤を塗布しても、十分な量のカルシウムイオンが存在しないため、ケイ酸カルシウムが生成しない、または、ケイ酸カルシウムの生成に長時間を要することとなる。
【0040】
そこで、劣化状態のコンクリートに対しては、保護剤供給工程120に先立って、改質剤供給工程110を行う。これにより、当該コンクリートへカルシウムイオンを補充することができる。そして、カルシウムイオンが補充されたコンクリートに対して、コンクリート保護剤を塗布すると、補充されたカルシウムイオンが、ケイ酸カルシウムの生成に寄与する。結果、コンクリート改質剤の塗布により、コンクリートにおけるケイ酸カルシウムが生成しやすくなる。
【0041】
さらに、ケイ酸カルシウムの生成を促進するためには、多量のカルシウムイオンが必要となる。当該コンクリート改質剤は、通常の水酸化カルシウム水溶液よりも、カルシウムイオンの濃度が高いため、コンクリート保護剤との反応が短時間で開始する。
【0042】
例えば、新設コンクリートにケイ酸塩系のコンクリート保護剤を塗布した場合、ケイ酸塩系のコンクリート保護剤の反応(ゲル状のケイ酸カルシウムの生成反応)が起こるまでに、およそ90時間を要する。また、前述のとおり、劣化状態のコンクリートに対しそのままコンクリート保護剤のみを塗布しても、ケイ酸カルシウムが生成しない、または、生成に長時間を要することとなる。
【0043】
一方、当該新設コンクリートに対して、ケイ酸塩系のコンクリート保護剤の塗布に先立って、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水を塗布した場合、ケイ酸塩系のコンクリート保護剤の反応が起こるまで、わずか10秒〜30秒で済む。なお、ケイ酸塩系のコンクリート保護剤の反応時間は、コンクリート改質剤におけるカルシムイオンの濃度や、コンクリート改質剤の塗布量によって調節可能である。
【0044】
したがって、保護剤供給工程120に先立って改質剤供給工程110を行うコンクリートの補修方法200により、コンクリートの補修に要する時間を短縮することができる。そして、コンクリート改質剤の塗布及びコンクリート保護剤の塗布によって生成したゲル状のケイ酸カルシウム(湿潤ゲル)は、液体や気体の出入りを遮断することができる。
【0045】
図4に示すように、コンクリートの補修方法300として、前述の改質剤供給工程110及び保護剤供給工程120の後に、乾燥工程130を行ってもよい。さらに、乾燥工程130の後に、湿潤工程140を行ってもよい。そしてさらに、湿潤工程140の後に乾燥工程150を行ってもよい。
【0046】
乾燥工程130では、湿潤ゲルを乾燥させて乾燥ゲルを得る。乾燥工程130により、湿潤ゲルをコンクリートに定着させることができる。乾燥工程130の具体的な方法として、コンクリート(特に、塗布部分)へ熱風をあてる、或いは、コンクリートを加熱するなどがある。
【0047】
湿潤工程140では、乾燥ゲルに対して水を接触させる。この湿潤工程140により、乾燥ゲルはふたたび流動性を有する湿潤ゲルとなる。湿潤ゲルは、流動性を有するため、後発的に生じた欠陥(ひび等)を充填するといった自己修復機能を有する。そして、欠陥の充填が済んだ後、当該部分に乾燥工程150を行ってもよい。乾燥工程150は、前述の乾燥工程130と同様の方法でよい。
【0048】
現時点でひびが生じていなくとも将来ひびが生じそうな箇所に対し、コンクリートの補修方法200(
図3参照)を行ってもよい。これにより、将来ひびが生じそうな箇所に、予め乾燥ゲルを設けることができる。そして、当該箇所にひびが生じた場合には、
図5に示す自己補修工程400を行ってもよい。自己補修工程400では、湿潤工程140及び乾燥工程150が行われる。自己補修工程400により、予め設けておいた乾燥ゲルを用いて、当該ひびを補修することもできる。もちろん、ひびの補修が、自己補修工程400のみで不十分な場合には、コンクリートの補修方法300を行ってもよいし、自己補修工程400の代わりにコンクリートの補修方法300を行ってもよい。
【0049】
なお、この乾燥工程130に要する時間を短縮するために、塗布されるコンクリート部分や、コンクリート改質剤やコンクリート保護剤を予熱する予熱工程を、保護剤供給工程120の前までに行ってもよい。
【0050】
カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水をコンクリート改質剤として、コンクリート保護剤と併用する工法は、コンクリートのひびを補修する場合にも適している。
【0051】
従来、コンクリート保護剤のみによるコンクリートのひびの補修も行われていたが、補修可能なひびの幅は、およそ0.2mm程度である。一方、当該コンクリート改質剤には、多量のカルシウムイオンが含まれている。このため、当該コンクリート改質剤をコンクリート保護剤と併用することにより、ケイ酸カルシウムの生成を短時間で行うことができる。結果、ケイ酸カルシウムの充填による補修は、幅が2mm程度といった比較的大きなひびに対しても、容易となる。ここで、コンクリート保護剤の供給タイミングは、供給されたコンクリート改質剤がすべてコンクリート内に浸み込んだ後、としてもよいが、時間効率の観点から、コンクリート改質剤の一部がコンクリート内に浸みながらも残りがひびに残っている状態としてもよい。
【0052】
また、従来のコンクリートのひびの補修方法としては、ひび割れ部分を開削して充填剤(モルタル、エポキシ樹脂、ウレタン等)を充填する方法がある。しかしながら、モルタルを充填する場合には、コンクリートとモルタルとの乾燥収縮率の違いにより、コンクリートとモルタルと境界で剥離が発生してしまう。剥離が発生した部分は、海水、雨水、炭酸ガスなどといった劣化物質の侵入経路となる。このため、モルタルを充填する方法の場合、経時によってコンクリートの耐久性が低下してしまう。また、エポキシ樹脂を充填する方法では、水の浸入によって、エポキシ樹脂が接着不良となる恐れがあり、ウレタンを充填する方法の場合、水の浸入によって、ウレタン自体が加水分解してしまう。
【0053】
一方、本発明のコンクリート改質剤は、モルタルの充填工法のような、乾燥収縮率の違いによる剥離は起こらない。また、前述のとおり、コンクリート改質剤は、エポキシ樹脂やウレタンを充填する方法に比べ、外部から浸入した水に対して強い。すなわち、外部からの水の浸入に対しては、湿潤ゲルがその浸入を阻む。また、乾燥ゲルは当該水との接触により湿潤ゲルとなって、その後の水の浸入を阻むことができる。また、前述のとおり、湿潤ゲルは、後発的に生じた欠陥(ひび等)を自己修復することもできる。
【0054】
本発明のコンクリート改質剤は、従来のコンクリートのひびの補修方法に比べて、補修作業が簡便になるばかりでなく、補修したコンクリートに対し非常に高い耐久性を付与することもできる。
【0055】
なお、モルタルを充填する方法において、コンクリートとモルタルとの境界部分に、コンクリート改質剤及びコンクリート保護剤を併用することで、境界における剥離を抑えることも可能である。
【0056】
また、コンクリート改質剤として、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水をコンクリートに塗布するため、コンクリートの表面にカルシウムを含む物質が付着するといった白濁現象が抑えられる。結果、コンクリートの外観を損なうようなこともない。さらに、アルカリ電解水は、通常の水に比べて、コンクリートに対して浸透しやすい。アルカリ電解水の浸透性の高さは、水分子のサイズに比べて、水酸化イオンのイオン半径が小さいことに起因するものと推測される。そして、アルカリ電解水に溶けたカルシウムイオンは、通常の水酸化カルシウム水溶液に含まれるカルシウムイオンに比べ、コンクリートへ浸透しやすい。すなわち、コンクリート改質剤として、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水をコンクリートへ供給することにより、コンクリートの表層のみならず、その内部までへ、多量のカルシウムイオン及び水酸化イオンを供給することができる。
【0057】
ここで、コンクリート表層部分におけるケイ酸カルシウムの生成は、コンクリートの内部へのコンクリート改質剤やコンクリート保護剤の浸透や、コンクリートの内部におけるケイ酸カルシウムの生成を妨げるものではない。すなわち、ケイ酸カルシウムが表層部分に存在している場合であっても、コンクリート改質剤よりも後にコンクリートに塗布されたコンクリート保護剤は、コンクリートの内部まで浸透する。この結果、コンクリートの内部では、先に浸透したコンクリート改質剤と後から浸透したコンクリート保護剤との反応によって、ゲル状のケイ酸カルシウムが生成する。
【0058】
この点については、次のように推測される。コンクリート改質剤、すなわち、カルシウムイオンが溶けたアルカリ電解水は、コンクリート保護剤との親和性が高い。このため、コンクリートに後塗りされたコンクリート保護剤は、表層部分にて生成したケイ酸カルシウムを境に、コンクリート内部に存在するコンクリート改質剤と分離しない。
【0059】
上記実施形態では、コンクリートの補修のために、コンクリートに対して、コンクリート改質剤の塗布とコンクリート保護剤の塗布とをこの順に行ったが、この組み合わせを複数回繰り返してもよい。
【0060】
以下の方法により、実験1〜6を行った。各実験の詳細は、実験1について詳細に行い、実験2〜6について、実験1等と同じ箇所の説明は省略し、異なる部分の説明をする。
【0061】
(実験1)
以下、実験1の手順を説明する。
【0062】
(前準備)
コンクリート改質剤は、次のようにしてつくった。50gの乳酸カルシウム(株式会社武蔵野科学研究所)を、1000mlの水道水(25℃)に溶かした。なお、当該水道水は、表1の採水地点番号5〜7のものを用いた。このようにして得られた水を
図1に示すコンクリート改質剤の製造設備2の水槽10に注ぎ、電気分解を行ない、電気分解によって得られたアルカリ電解水を、コンクリート改質剤とした。ICP発光分光分析法(JIS K0101 No49)に基づき、コンクリート改質剤のCaイオン量を測定したところ、コンクリート改質剤のCaイオン量は、2.5×10
5mg/Lであった。
【0064】
コンクリート保護剤としては、株式会社スーパーシールド社製のスーパーシールド(登録商標)を用いた。
【0065】
カルシウム水溶液は、1.7gの水酸化カルシウム(株式会社丸京石灰社製 特号消石灰)を、1000mlの水道水(25℃)に溶かした。ICP発光分光分析法(JIS K0101 No49)に基づき、カルシウム水溶液のCaイオン量を測定したところ、コンクリート改質剤のCaイオン量は、8.1mg/Lであった
【0066】
散水用水としては、Caイオン含有の水を用いた。ICP発光分光分析法(JIS K0101 No49)に基づき、散水用水のCaイオン量は、6.4mg/Lであった。
【0067】
コンクリート板C(300mm四方、厚み35mm)に荷重を加えて板を2片(試験片CA、試験片CB)に割る。ここで、コンクリート板は、1:3モルタルの配合のコンクリートから形成されたものである。そして、
図6に示すように、試験片CA,CBの断面が向き合うようにして試験片CA,CBを並べ、試験片CA,CBの断面からなるひびH(幅:2mm)を模擬的につくった。
【0068】
次に、計量管T(直径70mm)の中心が当該ひびHの中心に重なるようにして、計量管T(直径70mm)をコンクリート板Cの上に立て、シーリング材で固定した(
図7参照)。その後、計量管Tの内部から露呈したコンクリート板Cの表面に対し、コンクリート改質剤を塗布した。コンクリート改質剤の塗布量は、1m
2あたり、250mlであった。そして、コンクリート改質剤が塗布されたコンクリート板Cの表面に対し、コンクリート保護剤(品名:スーパーシールド 株式会社スーパーシールド製)を塗布した。コンクリート保護剤の塗布量は、1m
2あたり、250mlであった。コンクリート保護剤の塗布の後、24時間、放置した。
【0069】
試験用水として表1の水道水(400ml)を計量管Tの内部空間TXに注ぎ、コンクリート板Cの下面、すなわち、模擬的に形成されたひびHから試験用水の漏れ出す量、及び試験用水の漏れ出しが停止する時間を計測した。そして、計量管Tに注いだ試験用水がなくなる直前においては、計量管Tの内部に400mlの試験用水を注ぎ足した。
【0070】
(実験2)
計量管Tの内部から露呈したコンクリート板Cの表面に対し、カルシウム水溶液を塗布した。その後、カルシウム水溶液が塗布されたコンクリート板Cの表面に対し、コンクリート保護剤を塗布したこと以外は、実験1と同様にして行った。なお、コンクリート保護剤及びカルシウム水溶液の塗布量は、それぞれ、1m
2あたり250mlであった。
【0071】
(実験3)
計量管Tの内部から露呈したコンクリート板Cの表面に対し、コンクリート保護剤を塗布するとともに、コンクリート保護剤が塗布されたコンクリート板Cの表面に対し、散水用水を塗布したこと以外は、実験1と同様にして行った。なお、コンクリート保護剤及び散水用水の塗布量は、それぞれ、1m
2あたり250mlであった。なお、コンクリート保護剤及び散水用水の塗布量は、それぞれ、1m
2あたり250mlであった。
【0072】
実験1〜3の実験結果は、表2の通りである。
【0074】
(実験4)
実験1の後、コンクリート板Cを、テストハンマーでたたき、幅2mmのひび割れを再発生させた。その後、実験1と同様にして、計量管Tの内部空間TXに400mlの試験用水を注ぎ、模擬的に形成されたひびから試験用水の漏れ出す量を計測した。
【0075】
(実験5)
実験2の後、コンクリート板Cを、テストハンマーでたたき、幅2mmのひび割れを再発生させた。その後、実験4と同様にして、計量管Tの内部空間TXに400mlの試験用水を注ぎ、模擬的に形成されたひびから試験用水の漏れ出す量を計測した。
【0076】
(実験6)
実験3の後、コンクリート板を、テストハンマーでたたき、幅2mmのひび割れを再発生させた。その後、実験4と同様にして、計量管Tの内部空間TXに400mlの試験用水を注ぎ、模擬的に形成されたひびから試験用水の漏れ出す量を計測した。
【0077】
実験4〜6の実験結果は、表3の通りである。
【0079】
以上より、本発明のコンクリート改質剤を塗布することにより、幅が比較的大きいひびに対しても、極めて優れた閉塞効果が得られる。また、本発明のコンクリート改質剤を塗布した場合、その塗布後にひびが再発生した場合であっても、極めて優れた自己修復効果を得られることができる。そして、本発明のコンクリート改質剤の塗布による閉塞効果及び自己修復効果は、通常のカルシウム水溶液の塗布によるものに比べ、極めて優れている。
【0080】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0081】
本発明は、例えば、以下の構成を含む。
【0082】
コンクリート構造物の改質剤は、コンクリートの補修用のケイ酸カルシウムを生成するために、当該コンクリート構造物へ供給され、アルカリ金属ケイ酸塩を含むものをコンクリート保護剤と定義した際、前記コンクリート保護剤の供給に先立って前記コンクリート構造物に供給され、前記コンクリート保護剤に含まれる前記アルカリ金属ケイ酸塩と前記カルシウムイオンとが前記ケイ酸カルシウムの生成に寄与することを特徴とする。
前記コンクリート構造物のひびを補修するために前記コンクリート構造物に供給されることが好ましい。
本発明は、カルシウムイオンが溶解したアルカリ電解水を含むコンクリート構造物の改質剤の製造方法であって、水溶性のカルシウム含有化合物と、塩化物イオンまたは炭酸水素イオンとのうち少なくとも一方のイオンとを含む水に対し、電気分解を行う電気分解工程を有することが好ましい。