特許第6267047号(P6267047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6267047脱水ケーキの含水率低下装置及び脱水ケーキの含水率低下方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267047
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】脱水ケーキの含水率低下装置及び脱水ケーキの含水率低下方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/12 20060101AFI20180115BHJP
   F26B 17/04 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C02F11/12 ZZAB
   C02F11/12 C
   F26B17/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-91131(P2014-91131)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-208707(P2015-208707A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄住金環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100098213
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】山下 修示
(72)【発明者】
【氏名】森 紀之
(72)【発明者】
【氏名】弘中 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 茂夫
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−101276(JP,A)
【文献】 特開2005−103397(JP,A)
【文献】 特開平07−308698(JP,A)
【文献】 特開2004−293831(JP,A)
【文献】 特表2008−534707(JP,A)
【文献】 特開2005−037096(JP,A)
【文献】 特開2002−147953(JP,A)
【文献】 特開2000−005799(JP,A)
【文献】 特開2006−341168(JP,A)
【文献】 特開平2−227199(JP,A)
【文献】 特開昭59−088388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00− 11/20
F26B 1/00− 25/22
B65G 21/00− 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集沈殿処理の余剰汚泥が脱水機によって脱水された後に前記脱水機から排出されて形成された脱水ケーキを搬送するコンベヤと、
前記コンベヤの少なくとも上方部分を被覆する筒状の風防カバーと、
前記風防カバーの入口端の近傍に設けられた、搬送される脱水ケーキに送風するファンと、を備え、
前記コンベヤは、搬送される前記脱水ケーキの滞留時間が45〜90分となるように構成され、
前記ファンは、前記脱水ケーキへの送風が、室温で、2m/秒以上の風速で、かつ前記風防カバー内を、その入口端から出口端に向かう方向でなされるように構成されるとともに、送風処理の前後における前記脱水ケーキの含水率の低下割合[{(入口端における含水率−出口端における含水率)/(入口端における含水率)}×100]が、15%以上となるように構成されてなることを特徴とする脱水ケーキの含水率低下装置。
【請求項2】
前記脱水ケーキは、厚さが、10〜50mmのペレット状又は塊状である請求項1に記載の脱水ケーキの含水率低下装置。
【請求項3】
前記風防カバーは、前記入口端に、風防カーテンを有し、前記風防カーテンは、コンベヤと接する位置に、脱水ケーキを導入することが可能であるとともに、コンベヤに堆積して山積した脱水ケーキを均一に均して広げるための開口切り欠きを有する請求項1又は2に記載の脱水ケーキの含水率低下装置。
【請求項4】
凝集沈殿処理の余剰汚泥が脱水機によって脱水された後に前記脱水機から排出されて形成された脱水ケーキを、少なくともその上方部分を筒状の風防カバーで被覆されたコンベヤの上に積載して、45〜90分の滞留時間で搬送する工程と、
前記コンベヤの上に積載されて搬送される前記脱水ケーキに対し、前記風防カバーの入口端の近傍に設けられたファンを用いて、室温で、2m/秒以上の風速で、かつ前記風防カバー内を、その入口端から出口端に向かう方向で、送風するとともに、送風処理の前後における前記脱水ケーキの含水率の低下割合[{(入口端における含水率−出口端における含水率)/(入口端における含水率)}×100]が、15%以上となるように送風する工程と、を含むことを特徴とする脱水ケーキの含水率低下方法。
【請求項5】
前記脱水ケーキは、厚さが、10〜50mmのペレット状又は塊状である請求項4に記載の脱水ケーキの含水率低下方法。
【請求項6】
前記風防カバーは、前記入口端に、風防カーテンを有し、前記風防カーテンは、コンベヤと接する位置に、脱水ケーキを導入することが可能であるとともに、コンベヤに堆積して山積した脱水ケーキを均一に均して広げるための開口切り欠きを有する請求項4又は5に記載の脱水ケーキの含水率低下方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水ケーキの含水率低下装置及び脱水ケーキの含水率低下方法に関する。さらに詳しくは、脱水機から排出された脱水ケーキの含水率を簡便にかつ低コストで低下させることが可能な脱水ケーキの含水率低下装置及び脱水ケーキの含水率低下方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凝集沈殿処理では、無機凝集剤等を含んだ汚泥が発生する。産業廃棄物の費用及び容量を減少させるために脱水機により固液分離を行い、含水率を下げることが行われている。このような脱水ケーキの含水率を低下させる方法としては、例えば、波状コンベア装置と、この波状コンベアを覆う乾燥ボックスと、この乾燥ボックス内で気流を生じさせるための送風ファンとを備え、被乾燥物を天日と通風とにより乾燥させる乾燥装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この他に、脱水機によって固液分離を行う際に、無機凝集剤や高分子凝集剤等の薬品の注入量を増加させることで、脱水機での水切れを良くし、脱水ケーキの含水率を低下させる方法、及び蒸気等による加温を用いた乾燥機を用いた方法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3438068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された乾燥装置は、その天日による乾燥部分においては、天気の良し悪しに左右されるため、安定して含水率を低下させることは困難であり、また通風による乾燥部分においては、大規模な波状コンベアと、この波状コンベアで搬送される被乾燥物の全面に風を当てるための複数台の送風ファンとを覆うため、大規模な乾燥ボックスを必要とし、また、天候によっては雨水の流入を防ぐために乾燥装置の天井部を開閉する必要があり、大掛かりで複雑な装置とならざるを得なかった。
【0006】
また、薬品の注入量を増加させる方法は、薬品費の増加が伴うという問題があり、蒸気等による加温を用いた乾燥機を用いた方法は、余剰蒸気がない場合、蒸気生成等によって大幅なコスト増となるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みて、なされたもので、脱水機から排出された脱水ケーキの含水率を、簡便かつ低コストで低下させることが可能な脱水ケーキの含水率低下装置及び脱水ケーキの含水率低下方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、脱水機から排出される脱水ケーキは、運搬や堆積場所への移動のためにコンベヤ等により搬送されるが、そこで、コンベヤでの搬送中に脱水ケーキに対して所定の条件で送風する(エアーを当てる)ことによって、さらに含水率を低下させ、産業廃棄物の費用及び容量の削減(すなわち、電気代等の運転費、運送費等のコストの削減)を実現することが可能なこと、また、コンベヤを所定の条件で運転し、コンベヤ上での滞留時間を長くすることで、効果を増大させることが可能なことを知見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明によって、以下の脱水ケーキの含水率低下装置及び脱水ケーキの含水率低下方法が提供される。
【0009】
[1]凝集沈殿処理の余剰汚泥が脱水機によって脱水された後に前記脱水機から排出されて形成された脱水ケーキを搬送するコンベヤと、前記コンベヤの少なくとも上方部分を被覆する筒状の風防カバーと、前記風防カバーの入口端の近傍に設けられた、搬送される脱水ケーキに送風するファンと、を備え、前記コンベヤは、搬送される前記脱水ケーキの滞留時間が45〜90分となるように構成され、前記ファンは、前記脱水ケーキへの送風が、室温で、2m/秒以上の風速で、かつ前記風防カバー内を、その入口端から出口端に向かう方向でなされるように構成されるとともに、送風処理の前後における前記脱水ケーキの含水率の低下割合[{(入口端における含水率−出口端における含水率)/(入口端における含水率)}×100]が、15%以上となるように構成されてなることを特徴とする脱水ケーキの含水率低下装置。
【0010】
[2]前記脱水ケーキは、厚さが10〜50mmのペレット状又は塊状である前記[1]に記載の脱水ケーキの含水率低下装置。
【0011】
[3]前記風防カバーは、前記入口端に、風防カーテンを有し、前記風防カーテンは、コンベヤと接する位置に、脱水ケーキを導入することが可能であるとともに、コンベヤに堆積して山積した脱水ケーキを均一に均して広げるための開口切り欠きを有する前記[1]又は[2]に記載の脱水ケーキの含水率低下装置。
【0012】
[4]凝集沈殿処理の余剰汚泥が脱水機によって脱水された後に前記脱水機から排出されて形成された脱水ケーキを、少なくともその上方部分を筒状の風防カバーで被覆されたコンベヤの上に積載して、45〜90分の滞留時間で搬送する工程と、前記コンベヤの上に積載されて搬送される前記脱水ケーキに対し、前記風防カバーの入口端の近傍に設けられたファンを用いて、室温で、2m/秒以上の風速で、かつ前記風防カバー内を、その入口端から出口端に向かう方向で、送風するとともに、送風処理の前後における前記脱水ケーキの含水率の低下割合[{(入口端における含水率−出口端における含水率)/(入口端における含水率)}×100]が、15%以上となるように送風する工程と、を含むことを特徴とする脱水ケーキの含水率低下方法。
【0013】
[5]前記脱水ケーキは、厚さが10〜50mmのペレット状又は塊状である前記[4]に記載の脱水ケーキの含水率低下方法。
【0014】
[6]前記風防カバーは、前記入口端に、風防カーテンを有し、前記風防カーテンは、コンベヤと接する位置に、脱水ケーキを導入することが可能であるとともに、コンベヤに堆積して山積した脱水ケーキを均一に均して広げるための開口切り欠きを有する前記[4]又は[5]に記載の脱水ケーキの含水率低下方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、脱水機から排出された脱水ケーキの含水率を簡便にかつ低コストで低下させることが可能な脱水ケーキの含水率低下装置及び脱水ケーキの含水率低下方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る脱水ケーキの含水率低下装置を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態に係る脱水ケーキの含水率低下装置を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る脱水ケーキの含水率低下装置に用いられる風防カバー及び風防カーテンを、風防カバーの入口端側から見た場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.脱水ケーキの含水率低下装置
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る脱水ケーキの含水率低下装置10は、凝集沈殿処理の余剰汚泥が脱水機20によって脱水された後に脱水機20から排出されて形成された脱水ケーキ1を搬送するコンベヤ2と、コンベヤ2の少なくとも上方部分を被覆する筒状の風防カバー3と、風防カバー3の入口端31の近傍に設けられた、搬送される脱水ケーキ1に送風するファン4と、を備え、コンベヤ2は、搬送される脱水ケーキ1の滞留時間が45〜90分となるように構成され、ファン4による脱水ケーキ1への送風は、室温で、2m/秒以上の風速で、かつ風防カバー3内を、その入口端31から出口端32に向かう方向でなされるように構成されるとともに、脱水ケーキ1の含水率が送風処理前に対して、15%以上の割合で低下するように構成されてなるものである。以下、構成要素ごとに説明する。
【0018】
1−1.脱水ケーキ
本実施の形態に用いられる脱水ケーキ1は、凝集沈殿処理の余剰汚泥の脱水処理において、例えば、図1に示す脱水機20によって、含水率が、好ましくは、20〜40質量%となるように脱水されたものである。通常は、厚さが10〜50mmのペレット状又は塊状であるが、これに限定されることはない。10mm未満であると、高い風速に起因して空中に舞い上がることがあり、作業上好ましくなく、また50mmを超えると、含水率の低下が不十分となることがある。図1に示すように、脱水ケーキ1は、脱水機20から、例えば、脱水ケーキ1を所定の形状に形成して排出するように構成されたシュート21を経由して、後述するコンベヤ2上に載置される。
【0019】
1−2.コンベヤ
本実施の形態に用いられるコンベヤ2は、通常、搬送される脱水ケーキ1の滞留時間が45〜90分となるように構成される。例えば、コンベヤ2の長さと搬送速度との関係において、コンベヤ2の長さを相対的に長くするか又は搬送速度を相対的に小さくすることを挙げることができ、また、コンベヤ2を所定時間運転して所定時間停止する所謂断続運転をすることを挙げることができる。例えば、コンベヤ2を、その長さが10m、搬送速度が2.5m/分となるようにそれぞれ設定するとともに、コンベヤ2を、1分間運転して14分間停止する断続運転をすることを挙げることができる。この場合、コンベヤ2の運転時間は、10m÷2.5m/分=4分となり、コンベヤ2の停止時間は、14分×4=56分となる。その結果、脱水ケーキ1の滞留時間は、コンベヤ2の運転時間+停止時間=4分+56分=60分となる。このように構成することによって、コンベヤ上での滞留時間を長くして、脱水ケーキの含水率を有効に低減することができる。コンベヤ2は、後述する風防カバー3の入口端31側から出口端32側に、例えば、0〜20度の傾斜角度、好ましくは5〜15度で上昇するように構成されることが、搬送の面から好ましい。コンベヤ2の形式、駆動能力等については特に制限はない。
【0020】
1−3.風防カバー
本実施の形態においては、前記コンベヤ2の少なくとも上方部分を被覆するように、例えば、風防カバー3が設けられる。その形状は、後述するファン4によって、入口端31側から出口端32側に、すなわち、一方向の効率のよい送風が可能である、例えば、筒状であれは特に制限はないが、円筒状又は角筒状であることが好ましい。なお、断面が略半円、半楕円、半長円、半トラック形状等の円筒状又は断面が略三角形、長方形、正方形、多角形等の角筒状であってもよい。図3においては、断面が略半円の円筒状の場合を示している。また、その材質は、脱水ケーキ1の状態を観察可能な透明又は半透明なプラスチック製であることが好ましいが、特に制限はない。
【0021】
1−4.ファン
本実施の形態に用いられるファン4は、脱水ケーキ1への送風によって、脱水ケーキ1の効率的な含水率の減少を実現するために用いられる。この脱水ケーキ1への送風は、室温で、2m/秒以上、好ましくは、4m/秒以上の風速で、かつ風防カバー3内を、その入口端31から出口端32に向かう方向で、なされるように構成される。なお、風速は、例えば、6m/秒を超えて増大しても、含水率の顕著な減少には繋がらないことが、後述する評価試験によって確認された。また、本実施の形態に用いられるファン4は、送風処理の前後における脱水ケーキ1の含水率の低下割合[{(入口端における含水率−出口端における含水率)/(入口端における含水率)}×100]が、15%以上となるように構成される。15%未満であると、産業廃棄物の費用及び容量の削減(すなわち、電気代等の運転費、運送費等のコストの削減)を実現することが困難になる。ファン4の形式、駆動能力等については特に制限はない。
【0022】
1−5.その他の構成要素
図3に示すように、本実施の形態においては、風防カバー3の入口端31に、風防カーテン5を有することが、風防カバー3の入口端31から出口端32に安定した風速を維持して送風することができるとともに、コンベヤ2上に山積した脱水ケーキ1を均一に均して広げることができる点から好ましい。なお、風防カーテン5は、コンベヤ2と接する位置に、脱水ケーキ1を導入することが可能であるとともに、コンベヤ2に山積した脱水ケーキ1を均一に均して広げるための開口切り欠き51を有することが好ましい。このように、風防カーテン5は、所定の柔軟性と剛性とを有する材質から構成することが好ましく、例えば、「ナイロン」(登録商標)等のポリイミド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル等のポリオレフィン樹脂等のシートを挙げることができる。厚さとしては特に制限はないが、例えば、1〜5mmとすることが好ましく、1.5〜3mmとすることがさらに好ましい。また、開口切り欠き51の形状としても特に制限はないが、例えば、コンベヤ2の幅に応じた長辺を有する長方形とすることが好ましい。長辺は、上述のようにコンベヤの幅と同じ長さにすることが好ましく、また短辺は、脱水ケーキが厚さ10〜50mmのペレット状又は塊状となるように50mm前後とすることが好ましい。具体的には、長辺(コンベヤの幅)×短辺(40〜60mm)とすることを挙げることができる。なお、図1においては、ファン4の脱水ケーキ1への送風が、経済性の面から外気6に基づいて行われることが好ましいことを示し、また、コンベヤの、風防カバー3の出口端32側から排出される脱水ケーキ1は、例えば、脱水ケーキ集積場7に貯留されることを示し、さらに、ファン4による送風は、風防カバー3の入口端31から出口端32に向かう方向、すなわち、送風方向8の方向で行われることを示している。
【0023】
2.脱水ケーキの含水率低下方法
本実施の形態の脱水ケーキの含水率低下方法は、凝集沈殿処理の余剰汚泥が脱水機20によって脱水された後に脱水機20から排出されて形成された脱水ケーキ1を、少なくともその上方部分を筒状の風防カバー3で被覆された、コンベヤの上に積載して、45〜90分の滞留時間で搬送する工程と、コンベヤ2の上に積載されて搬送される脱水ケーキ1に対し、風防カバー3の入口端31の近傍に設けられたファン4を用いて、室温で、2m/秒以上の風速で、かつ風防カバー3内を、その入口端31から出口端32に向かう方向で、送風するとともに、送風処理の前後における脱水ケーキ1の含水率の低下割合[{(入口端における含水率−出口端における含水率)/(入口端における含水率)}×100]が、15%以上となるように送風する工程と、を含むものである。
【0024】
ここで、各工程における各構成要素の、構成及び機能等は、上述の脱水ケーキの含水率低下装置における場合と同様である。また、脱水ケーキ1は、厚さが10〜50mmのペレット状又は塊状であることが好ましいこと、風防カバー3は、その入口端31に、風防カーテン5を有することが好ましいこと、また、脱水ケーキ1の含水率の低下割合[{(入口端における含水率−出口端における含水率)/(入口端における含水率)}×100]が、15%以上となるように構成されることが好ましいこと(15%未満であると、産業廃棄物の費用及び容量の削減(すなわち、電気代等の運転費、運送費等のコストの削減)を実現することが困難になること)も、同様である。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の脱水ケーキの含水率低下装置及び脱水ケーキの含水率低下方法を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって、いかなる制限を受けるものではない。
【0026】
(実施例1)
脱水機で脱水され、そこから排出されて形成された、厚さが30mmで、大きさが50mm×50mmのペレット状で、含水率が28.3質量%の脱水ケーキを、図1〜3に示すように、コンベヤ(長さが10m、幅が600mm、傾斜角度が10.7度、搬送速度が2.5m/分に設定されるとともに、その上方部分は、断面が略半円形の円筒状の風防カバーで被覆されるとともに、風防カバーの入り口端に、厚さが1.5mmで、「ナイロン」(登録商標)製の風防カーテンが設置され、この風防カーテンは、長辺600mm(コンベヤの幅と同じ長さ)×短辺50mmの長方形の開口切り欠きを有するように構成されている)の上に積載し、脱水ケーキを積載したコンベヤを断続運転(1分間運転、14分間停止)することによって、脱水ケーキを60分の滞留時間で搬送した。このコンベヤの上に積載されて搬送される脱水ケーキに対し、風防カバーの入口端の近傍に設けたファンを用いて、室温で、4m/秒の風速で、かつ風防カバー内を、その入口端から出口端に向かう方向で送風した。送風処理後の含水率は、19.2質量%で、送風処理の前後における脱水ケーキの含水率の低下割合[{(入口端における含水率−出口端における含水率)/(入口端における含水率)}×100]は、[(28.3−19.2)/28.3]×100=32(%)であった。ファンの風速、並びに脱水ケーキの滞留時間、含水率及び含水率の低下割合を表1にまとめて示す。
【0027】
(実施例2〜3)
実施例1において、表1に示すように、ファンの風速を、2及び6m/秒に、それぞれ変えたこと以外は、実施例1と同様にした。脱水ケーキの含水率及び含水率の低下割合を表1に示す。
【0028】
(実施例4)
実施例1において、表1に示すように、コンベヤの断続運転を(1分間運転、11分間停止)として脱水ケーキの滞留時間を48分に変えたこと以外は、実施例1と同様にした。脱水ケーキの含水率の低下割合を表1に示す。
【0029】
(実施例5)
実施例1において、表1に示すように、コンベヤの断続運転を(1分間運転、21分間停止)として脱水ケーキの滞留時間を88分に変えたこと以外は、実施例1と同様にした。脱水ケーキの含水率及び含水率の低下割合を表1に示す。
【0030】
(実施例6)
実施例1において、表1に示すように、ファンの風速を8m/秒に変えたこと以外は、実施例1と同様にした。脱水ケーキの含水率及び含水率の低下割合を表1に示す。
【0031】
(比較例1)
実施例1において、表1に示すように、ファンの風速を0.5m/秒に変えたこと以外は、実施例1と同様にした。脱水ケーキの含水率及び含水率の低下割合を表1に示す。
【0032】
(比較例2)
実施例1において、表1に示すように、コンベヤの断続運転を(1分間運転、3分間停止)として脱水ケーキの滞留時間を16分に変えたこと以外は、実施例1と同様にした。脱水ケーキの含水率及び含水率の低下割合を表1に示す。
【0033】
(比較例3)
実施例1において、表1に示すように、コンベヤの大きさを実施例1の場合よりも2倍程度増大させ、かつコンベヤの断続運転を(1分間運転、29分間停止)として脱水ケーキの滞留時間を120分に変えたこと以外は、実施例1と同様にした。脱水ケーキの含水率及び含水率の低下割合を表1に示す。
【0034】
【0035】
表1から以下のことが分かる。すなわち、実施例1〜5の場合、ファンの風速を、2、4、6又は8m/秒に設定するとともに、コンベヤにおける脱水ケーキの滞留時間を規定内の48、60又は88分に設定したため、含水率がそれぞれ16.7〜21.5質量%の範囲に入り(24〜41%の低下割合)、有効に含水率が低減されたことが分かる。なお、実施例6(ファンの風速を8m/秒に設定)の場合は、実施例1の場合よりも若干良好な結果が得られたが、風速を倍と速くしたため、ランニングコストが、実施例1の場合と比較して4倍程度増大した。このことは、ファンの風速を8m/秒まで速くしても、簡便に脱水ケーキの含水率を低下させることができるものの、経済性に見合ったより顕著な効果までは期待できないことを意味している。
【0036】
一方、比較例1の場合、ファンの風速が規定外の0.5m/秒に設定されたため、含水率が24.9質量%(12%の低下割合)となり、含水率の低減が不十分であったことが分かる。また、比較例2の場合、断続運転が1分間運転、3分間停止で、脱水ケーキの滞留時間が規定外の16分に設定されたため、含水率が26.1質量%(8%の低下割合)となり、含水率の低減が不十分であったことが分かる。さらに、比較例3の場合(1分間運転、29分間停止の断続運転で、脱水ケーキの滞留時間が規定外の120分に設定された場合)、実施例5の場合と同様の結果が得られたが、コンベヤの大きさが実施例1の場合よりも2倍程度増大し、好ましくないことが分かる。
【符号の説明】
【0037】
1 脱水ケーキ
2 コンベヤ
3 風防カバー
4 ファン
5 風防カーテン
6 外気
7 脱水ケーキ集積場
8 送風方向
10 脱水ケーキの含水率低下装置
20 脱水機
31 入口端
32 出口端
51 開口切り欠き
図1
図2
図3