(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の各実施形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0019】
<第1実施形態>
本第1実施形態は、鉱山においてショベルやホイールローダ等の積込機が積み込んだ土砂や鉱石を搬送し、運転手が搭乗することなく自律走行する無人ダンプ(無人車両に相当する)と、これら無人ダンプの干渉を回避するために交通管制を行う交通管制サーバと、を無線通信回線で接続した車両管理システムに係り、特に少ない通信量で必要な運行密度を保ちつつ、複数のダンプトラックを干渉なく走行させるための構成に特徴がある。以下、本発明の第1実施形態に係る車両管理システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0020】
まず、
図1に基づいて、第1実施形態に係る車両管理システムの概略構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両管理システムの構成を示す概略図である。
図1に示す車両管理システム1は、鉱山などの採石場で、土砂や鉱石の積込作業を行うショベル10a,10bから積み込まれた土砂や鉱石等の積荷を搬送するための鉱山用のダンプトラックである無人ダンプ20a,20bと、採石場の近傍または遠隔の管制局である管制センタ30に設置された交通管制サーバ31とを、無線通信回線40を介して互いに通信接続して構成された交通管理システムである。
【0021】
各無人ダンプ20a,20bは、鉱山内で予め設定された搬送路60に沿ってショベル10a,10b及び図示しない放土場の間を往復し、積荷を搬送する。鉱山内には、複数の無線基地局41a〜41cが設置される。そして、これらの無線基地局41a〜41cを経由して、無線通信の電波が送受信される。
【0022】
ショベル10a,10bおよび無人ダンプ20a、20bは、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation System)の少なくとも3つの航法衛星50a〜50cから測位電波を受信して自車両の位置を取得するための位置算出装置29(
図4参照。)を備える。GNSSとして、例えばGPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、GALILEOを用いてもよい。無人ダンプ20a,20bは、実際には2台以上存在し、それぞれの無人ダンプ20a,20b,・・・が交通管制サーバ31と無線で通信を行い、その構成は同じであるため、以下ではショベル10aおよび無人ダンプ20aを例に挙げて説明する。
【0023】
ショベル10aは、超大型の油圧ショベルであって、走行体11と、この走行体11上に旋回可能に設けた旋回体12と、運転室13と、旋回体12の前部中央に設けたフロント作業機14とを備えている。フロント作業機14は、旋回体12に対し俯仰動可能に設けられたブーム15と、ブーム15の先端に回動可能に設けられたアーム16と、アーム16の先端に取り付けられたバケット17とを含む。ショベル10aにおける見通しの良い場所、例えば運転室13の上部には、無線通信回線40に接続するためのアンテナ18が設置されている。
【0024】
図3は、車両管理システム1にて運行管理する無人ダンプ20aの構成を示す斜視図である。無人ダンプ20aは、
図1および
図3に示すように、本体を形成するフレーム21と、前輪22および後輪23と、フレーム21の後方部分に設けられたヒンジピン(図示せず)を回動中心として上下方向に回動可能な荷台24と、荷台24を上下方向に回動させる左右一対のホイストシリンダ(図示せず)と、を含む。また、無人ダンプ20aは、見通しの良い場所、例えば無人ダンプ20aの前輪22および後輪23よりも上側に取り付けられたデッキ280の前方に、無線通信回線40に接続するためのアンテナ25が設置されている。また、無人ダンプ20aのホイストシリンダには、荷台24に積載した積荷の荷重を検出するための圧力センサ(図示せず)が設けられている。
【0025】
無人ダンプ20aは、交通管制サーバ31からの指示に従って自律走行するための車載端末装置としてのダンプ端末装置26を搭載する。交通管制サーバ31は、無線通信回線40に接続するためのアンテナ32に接続され、このアンテナ32および無線基地局41a〜40cを経由してダンプ端末装置26のそれぞれと通信する。
【0026】
図2は、
図1中の搬送路60を詳述した図であり、無人ダンプ20aが走行する露天掘り鉱山現場の構成例を示す。鉱山現場には、ショベル10aによる掘削現場61が設けられている。ショベル10aは、掘削現場61で掘った表土や鉱石を無人ダンプ20aに積み込む。よって、掘削現場61は、積込位置を含む。
【0027】
また、鉱山現場には、表土を展開する放土場62が設けられている。無人ダンプ20aが掘削現場61から搬送した表土等は、放土場62で放土され、層状あるいは放射状に展開される。さらに、鉱山現場には、鉱石を破砕処理するクラッシャ(図示せず)等が設置された放土場63が設けられている。クラッシャが破砕した鉱石は、ベルトコンベアなどにより貨車による積み出し場あるいは処理設備等へ搬送される。無人ダンプ20aは、掘削現場61で表土や鉱石を積込む。無人ダンプ20aは、搬送路60を走行して、積み込んだ表土や鉱石を放土場62,63へ搬送する。
【0028】
掘削現場61において、ショベル10aが表土を掘削している場合に、無人ダンプ20aは、掘削現場61と放土場62との間を往復する。掘削現場61において、ショベルが鉱石を掘削している場合に、無人ダンプ20aは、掘削現場61と放土場63との間を往復する。このため、搬送路60は、掘削現場61および放土場62を結ぶ搬送路と、掘削現場61および放土場63を結ぶ搬送路60とを含んでいる。また、搬送路60上には、鉱山の地形等に応じたカーブ区間67が設けられている。
【0029】
また、搬送路60上には、各無人ダンプ20a〜20cの進行方向が異なる二つの走行経路64が設けられている。各走行経路64は、上り車線および下り車線を構成する。無人ダンプ20aは、搬送路60上を一般の道路等と同じように、例えば右側通行で走行する。走行経路64は、地図上で設定された座標値として与えられる。具体的には、交通管制サーバ31と各無人ダンプ20a〜20cとのそれぞれに、同一の地図情報を格納する。この地図情報は、地図上にある地点、すなわちノード65と、このノード65の座標値とを含む。走行経路64は、複数のノード65、および隣接するノード65を接続する区間としてのサブリンク66にて複数に分割されて定義される。
【0030】
次に、上記第1実施形態に係る交通管制サーバ31、無人ダンプ20aおよびダンプ端末装置26それぞれのハードウェア構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、車両管理システム1のハードウェア構成図である。
【0031】
図4に示すように、交通管制サーバ31は、サーバ側制御装置311、サーバ側入力装置312、サーバ側表示装置313、サーバ側通信装置314、通信バス315、マスタ地図情報データベース(以下データベースを「DB」と略記する)316、および走行許可区間情報DB317を含む。
【0032】
サーバ側制御装置311は、交通管制サーバ31の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)等の演算・制御装置のほか、交通管制サーバ31で実行されるプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、およびCPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含むハードウェアを用いて構成される。また、サーバ側制御装置311は、交通管制サーバ31で実行される機能を実現するための集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)を用いて構成してもよい。
【0033】
サーバ側入力装置312は、マウスまたはキーボード等の入力装置にて構成され、無人ダンプ20aの状態表示や、無人ダンプ20aへのマニュアル指示を入力するためのユーザインタフェースとして機能する。
【0034】
サーバ側表示装置313は、液晶モニタ等にて構成され、交通管制サーバ31を操作等するオペレータに対して情報を表示して提供するインターフェースとして機能する。
【0035】
サーバ側通信装置314は、有線/無線ネットワークとの通信接続を行う装置にて構成される通信部である。サーバ側通信装置314は、有線通信回線33を介してアンテナ32に接続され、無線通信回線40を介して無線基地局41a〜41cに接続される。
【0036】
通信バス315は、交通管制サーバ31の各構成要素、すなわちサーバ側制御装置311、サーバ側入力装置312、サーバ側表示装置313、サーバ側通信装置314、通信バス315、マスタ地図情報DB316および走行許可区間情報DB317のそれぞれを互いに電気的に接続する。
【0037】
マスタ地図情報DB316は、HDD等の情報を固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、搬送路60上の各ノード65の位置情報(座標値)と、各ノード65を連結するサブリンク66とで定義された地図情報(走行経路情報)を記憶する。ここで、マスタ地図情報DB316には、鉱山の地形情報や、各ノード65の絶対座標(測位電波を基に算出される3次元実座標)を含んでもよい。各ノード65には、そのノード65を固有に識別する位置識別情報、すなわちノードIDが付与される。
【0038】
走行許可区間情報DB317は、HDD等の情報を固定的に記憶する記憶装置を用いて構成され、各無人ダンプ20aを固有に識別する車両識別情報と、各無人ダンプ20aに割り当てられた走行許可区間を示す位置情報と、各無人ダンプ20aの現在位置における実際の走行速度に関する実速度情報と、走行経路64を複数に分割した区間に関する区間情報と、これら区間毎に応じて予め定めた制限速度(走行速度)に関する制限速度情報とを含む走行許可区間情報を記憶する。
【0039】
マスタ地図情報DB316および走行許可区間情報DB317は、地図情報および走行許可区間情報を記憶する記憶部だけを備え、これらマスタ地図情報DB316および走行許可区間情報DB317の更新・検索処理をサーバ側制御装置311で行ってもよいし、これらマスタ地図情報DB316および走行許可区間情報DB317のそれぞれに、情報の更新・検索処理を行うエンジンを搭載したものでもよい。
【0040】
一方、無人ダンプ20aは、電気駆動式のダンプトラックであって、ダンプ端末装置26のほか、ダンプ端末装置26の指示を受けて無人ダンプ20aの加減速やステアリングを制御する車両制御装置27、外界センサ装置28、および位置検出装置29を備える。
【0041】
ダンプ端末装置26は、無線基地局41a〜41cを経由して交通管制サーバ31に無線通信接続される。また、ダンプ端末装置26は、端末側制御装置261、端末側入力装置262、端末側表示装置263、端末側通信装置264、通信バス265、および端末側地図情報DB266を含んで構成される。
【0042】
端末側制御装置261、端末側入力装置262、端末側表示装置263、端末側通信装置264、通信バス265および端末側地図情報DB266のそれぞれは、サーバ側制御装置311、サーバ側入力装置312、サーバ側表示装置313、サーバ側通信装置314、通信バス315およびマスタ地図情報DB316のそれぞれと同一の構成であるため、重複説明を省略する。端末側地図情報DB266は、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報と同じ地図情報を格納している。
【0043】
車両制御装置27は、リターダブレーキ271、サービスブレーキ272、ステアリング制御装置273および加速制御装置274を含む。車両制御装置27は、ダンプ端末装置26に電気的に接続され、交通管制サーバ31からの指示に従って無人ダンプ20−1を自律走行させる。
【0044】
リターダブレーキ271は、通常制動時に使用するブレーキである。リターダブレーキ271は、電気駆動エンジンを構成する電動機を発電機として作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回生電力を生成し、これを抵抗器に印加して熱エネルギーとして消費させることで制動力を得る。
【0045】
サービスブレーキ272は、緊急制動時に使用するブレーキであり、機械ブレーキにて構成される。サービスブレーキ272の頻回の使用は、機械ブレーキの構成部品、例えばブレーキパッドやディスクの摩耗を招く。従って、本実施形態では、緊急度に合わせてリターダブレーキ271とサービスブレーキ272とを使い分ける。
【0046】
ステアリング制御装置273は、無人ダンプ20aのステアリング角度を調整する。加速制御装置274は、無人ダンプ20aの加速、減速の調整を行う。
【0047】
外界センサ装置28は、
図3に示すように、無人ダンプ20aのデッキ280の両側部にそれぞれ取り付けられたレーザレーダセンサ281,282と、無人ダンプ20aのデッキ280より下方の前側中心部に取り付けられたミリ波レーダセンサ283とを備える。レーザレーダセンサ281,282は、無人ダンプ20aが走行する走行経路64の路肩位置を検出する。ミリ波レーダセンサ283は、無人ダンプ20aの走行方向前方の障害物を検出する。これらレーザレーダセンサ281,282およびミリ波レーダセンサ283による外界センサ装置28の検知結果は、ダンプ端末装置26の端末側制御装置261に出力され、通常時は走行経路64から離脱しないように走行位置の監視や加減速に用いられ、緊急時には緊急回避行動に必要な制動動作に用いられる。
【0048】
なお、走行経路64の路肩を検出する手段としては、必ずしもレーザレーダセンサ281,282である必要はなく、カメラを用いた画像処理にて路肩を検出してもよい。この場合において、カメラは、無人ダンプ20aの側方を見おろすように設置する。また、走行方向前方の障害物を検出する手段としては、必ずしもミリ波レーダセンサ283である必要はなく、ステレオカメラにて検出してもよい。この場合に、ステレオカメラは、無人ダンプ20aの前方に向けて設置された複数台のカメラとなる。また、ミリ波レーダセンサ283は、
図3に示すデッキ280よりもさらに上方とし、路面を見下ろすように設置してもよい。
【0049】
位置算出装置29は、航法衛星50a〜50cからの測位電波に基づいて自車両の現在位置(自己位置)を算出する。算出された自車両の現在位置は、ダンプ端末装置26から交通管制サーバ31へ送信される。
【0050】
次に、上記第1実施形態に係る交通管制サーバ31およびダンプ端末装置26の機能構成について、
図5を参照して説明する。
図5は、交通管制サーバ31およびダンプ端末装置26の主な機能を示すブロック図である。
【0051】
図5に示すように、交通管制サーバ31のサーバ側制御装置311は、配車管理部311a、走行許可区間設定部311b、サーバ側通信制御部311d、および通信インターフェース(以下「通信I/F」と略記する)311eを備える。
【0052】
配車管理部311aは、無人ダンプ20aの目的地を設定し、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報を参照して現在位置から目的地に至る走行経路64を決定する。配車管理部311aの処理例としては、例えば無人ダンプ20aが駐機場にいる場合、積込位置を含む積込場の入口を目的として設定する。そして、配車管理部311aは、駐機場から積込上の入口に至るまでの走行経路64を設定する。なお、配車管理部311aは、走行経路64の設定に際し、積込位置の移動に伴って動的に走行経路64を設定してもよい。さらに、配車管理部311aは、無人ダンプ20aが積込位置に入る場合には積載物の内容によって放土場62,63のいずれかを目的地として設定し、この目的地に至るまでの走行経路64を設定する。
【0053】
走行許可区間設定部311bは、例えば無人ダンプ20aに対し、マスタ地図情報DB316に格納された地図情報を参照し、決定された走行経路64上のノード65間として規定されるサブリンク66毎に走行許可の付与または解除を行い、少なくとも1つ以上のサブリンク66を含む区間(一部の区間)を、無人ダンプ20aの走行を許可する走行許可区間として設定し、この設定した走行許可区間の走行経路64中の位置を示す走行許可区間情報を生成する。特に、走行許可区間設定部311bは、運行管理する複数の無人ダンプ20a〜20cに対して重複なく、これら複数の無人ダンプ20a〜20cに対し、走行経路64上の部分区間を走行許可区間として設定する。
【0054】
走行許可区間設定部311bは、走行許可区間情報DB317に格納された走行許可区間情報に対し、新たに生成した走行許可区間情報を上書きして更新する。走行許可区間情報には、走行許可区間の最前端のノード65である前方境界点のノードID、及び最後端のノード65である後方境界点のノードIDを含む位置情報が含まれる。走行許可区間設定部311bは、ダンプ端末装置26から新たな走行許可区間の設定を要求する区間要求情報を受信した場合に、この区間要求情報の受信に応じて走行許可区間の設定処理を行う。走行許可区間設定部311bは、新たな走行許可区間を設定した際にはその走行許可区間の走行許可区間情報を生成し、この走行許可区間情報の生成ができない場合には走行不許可を示す応答情報を生成する。
【0055】
サーバ側通信制御部311dは、ダンプ端末装置26との間の無線通信制御を行う。具体的に、サーバ側通信制御部311dは、無人ダンプ20aの制動を指示する制動指示情報と、走行許可区間情報または応答情報とのそれぞれをダンプ端末装置26に送信する。サーバ側通信制御部311dは、ダンプ端末装置26から、無人ダンプ20aからの走行区間要求に関する区間要求情報、無人ダンプ20aの位置算出装置29が算出した自車両の位置を示す無人ダンプ位置情報、および無人ダンプ20aの実速度情報を受信する。実速度情報は、位置情報の変化量を基に走行方向および速さ(スカラ量)を含む速度(ベクトル)を示す情報として構成してもよいし、無人ダンプ20aに搭載したジャイロセンサ等の車体の向きを検出するセンサの出力結果と車輪の回転数から求めた速さとを組み合わせた情報として構成してもよい。
【0056】
通信I/F311eは、USB(Universal Serial Bus)規格の接続端子等、サーバ側通信装置314と通信接続をするためのハードウェアにて構成される。
【0057】
ダンプ端末装置26の端末側制御装置261は、自律走行制御部261a、端末側通信制御部261b、通信I/F261c、および要求情報処理部261dを備える。
【0058】
自律走行制御部261aは、位置算出装置29から自車両の現在位置を取得し、端末側地図情報DB266の地図情報を参照して、走行許可区間情報に含まれる走行許可区間に従って自車両を走行させるための制御を車両制御装置27に対して行う。自律走行制御部261aは、外界センサ装置28の検知結果に基づいて前方障害物の有無を判定し、障害物との干渉、衝突の回避動作の有無も判定し、必要に応じ無人ダンプ20aを制動制御する。
【0059】
自律走行制御部261aは、交通管制サーバ31からの指示に従って、車両制御装置27に対する駆動制御を行い、減速動作、通常停止動作、または緊急停止動作を行い、無人ダンプ20a〜20c同士の干渉を避けるように走行制御する。また、自律走行制御部261aは、端末側地図情報DB266に記憶されている制限速度情報を参照しながら、走行経路64上の各サブリンク66を、これらサブリンク66毎に定めたられた制限速度以内の適切な速度で走行する。
【0060】
端末側通信制御部261bは、交通管制サーバ31との間で行う無線通信の制御を行う。端末側通信制御部261bは、区間要求情報の送信と、走行許可区間情報または応答情報、制動指示情報の受信とを行う。通信I/F261cは、USB規格の接続端子等であり、端末側通信装置264と通信接続をするためのハードウェアにて構成される。
【0061】
要求情報処理部261dは、端末側地図情報DB266に格納された地図情報、および位置算出装置29が算出した現在位置を基に、無人ダンプ20aが区間要求情報を送信する地点に到達したかを判断し、要求地点に到達すると区間要求情報を生成して端末側通信制御部261bを介して交通管制サーバ31へ区間要求情報を送信する。
【0062】
交通管制サーバ31が備える配車管理部311a、走行許可区間設定部311bおよびサーバ側通信制御部311dは、これらの機能を実現するプログラムが
図4に示すサーバ側制御装置311(ハードウェア)にて実行されて実現する。同様に、ダンプ端末装置26に備えられる自律走行制御部261a、端末側通信制御部261b、及び要求情報処理部261dは、これらの機能を実現するプログラムが
図4に示す端末側制御装置261(ハードウェア)にて実行されて実現する。
【0063】
次に、上記第1実施形態の走行管理システム1における自律走行制御部261aの動作について、
図6を参照して説明する。
図6は、車両管理システム1による走行許可区間設定処理を示す図で、(a)は目的地要求情報の送信、(b)は目的地経路情報の受信、(c)は区間要求情報の送信および走行許可区間情報の受信である。
【0064】
無人ダンプ20aが掘削現場61で表土や鉱石の積み込みを完了した状態、または放土場62,63での放土が完了した状態において、無人ダンプ20aは、
図6(a)に示すように、管制センタ30の交通管制サーバ31に対し、無人ダンプ20aの目的地を要求する目的地要求情報を送信する。本目的地要求情報は、無人ダンプ20aに搭載された自律走行制御部261aにて、航法衛星50a〜50cからの測位電波に基づいて位置算出装置29にて検出した自己位置から、現在における無人ダンプ20aの走行位置を判断し、端末側通信制御部261b、通信I/F261cおよび端末側通信装置264を介して発信される。また、本目的地要求情報は、端末側通信装置264から発信された後、無線基地局41a〜41cを介し、管制センタ30のアンテナ32からサーバ側通信装置314へ受信され、サーバ側制御装置311の配車管理部311aへ送られる。
【0065】
配車管理部311aは、送られてきた目的地要求情報に該当する無人ダンプ20a以外の他の無地ダンプ20b,20cの、例えば走行位置、走行速度、走行方向等の走行状況を考慮して、無人ダンプ20aの目的地71(例えば、
図2中の掘削現場61、放土場62,63等に相当する。)と、この目的地71へ至るまでの経路72を決定し、この決定した目的地へ至るまでの経路72に関する目的地経路情報をサーバ側通信制御部311dへ送信する。サーバ側通信制御部311dは、
図6(b)に示すように、受信した目的地経路情報を、この目的地経路情報を決定した無人ダンプ20aに該当する車両識別情報とともに、通信I/F311e、サーバ側通信装置314およびアンテナ32を介して発信する。発信された目的地経路情報は、無線基地局40a〜40cを介して、本目的地経路情報とともに発信された車両識別情報に該当する無人ダンプ20aの端末側通信装置264に送信され、この端末側通信装置264から通信I/F311e、端末側通信制御部261bを介して自律走行制御部261aに出力される。
【0066】
すると、自律走行制御部261aは、無人ダンプ20aの走行許可区間を要求する区間要求情報を送信する。本区間要求情報は、端末側通信装置264から発信され、無線基地局40a〜40cを介して、管制センタ30のアンテナ32から走行許可区間設定部311bへ送られる。走行許可区間設定部311bは、
図6(c)に示すように、後述する処理に基づいて走行許可区間73を設定し、この設定した走行許可区間の位置を示す走行許可区間情報を、サーバ側通信制御部311dへ送信する。サーバ側通信制御部311dは、受信した走行許可区間情報を、走行許可区間を設定した無人ダンプ20aに該当する車両識別情報とともに、アンテナ32から発信する。発信された走行許可区間情報は、本走行許可区間情報とともに発信された車両識別情報に該当する無人ダンプ20aの端末側通信装置264に受信され、自律走行制御部261aに送られる。自律走行制御部261aは、送られてきた走行許可区間情報中の走行許可区間に亘った無人ダンプ20aの走行を許可し、車両制御装置27を制御して、その走行許可区間中のサブリンク66毎に設定された制限速度以下の速度で、無人ダンプ20aの走行を開始させる。
【0067】
ここで、走行経路64上のどのサブリンク66を、どの無人ダンプ20a〜20cに対して走行許可を与えているかに関する走行許可区間設定情報は、交通管制サーバ31のマスタ地図情報DB316に記憶させて管理されており、走行許可区間設定部311bは、マスタ地図情報DB316に記憶させた走行許可区間設定情報を参照しつつ、無人ダンプ20a〜20cからの走行許可要求に対して走行許可区間の設定を行う。
【0068】
一方、無人ダンプ20a〜20cは、管制センタ30の交通管制サーバ31から受信した走行許可区間情報を、端末側地図情報DB266に記憶させ、この走行許可区間情報を受信した無人ダンプ20a〜20cが、どのノード65まで走行可能かを自律走行制御部261aにて判断する。走行許可区間の設定状況については、走行経路64中のサブリンク66毎に設定された区間IDで対応をとる形式とし、交通管制サーバ31側は走行許可区間設定部311bのメモリ部(図示せず)に、各無人ダンプ20a〜20c側は自律走行制御部261aのメモリ部(図示せず)に走行許可区間情報を一時的に記憶させ、マスタ地図情報DB316や端末側地図情報DB266に記憶させない方式としてもよい。
【0069】
次に、
図7を参照して、交通管制サーバ31による走行許可設定処理について説明する。
図7は、車両管理システム1による各サブリンク66が等間隔な場合の走行許可区間設定処理にて定められる種々の区間を示す図で、(a)は各無人ダンプ20a,20bに対して設定された走行許可区間、(b)は無人ダンプ20aに対して新たに設定された走行許可区間、(c)は解放区間である。交通管制サーバ31は、排他的に走行許可区間を設定するので走行許可区間処理の説明は、無人ダンプ20a,20b同士の干渉を回避するための処理の説明も兼ねる。
【0070】
図7(a)に示す無人ダンプ20a,20bは、矢印A方向に向かって走行中のダンプトラックである。走行許可区間73aは、無人ダンプ20aに対して設定された走行許可区間である。走行許可区間73bは、無人ダンプ20bに対して設定された走行許可区間である。D1は、無人ダンプ20aの現在位置から走行許可区間73aの前方境界点(終端)までの走行経路64に沿った距離を示す走行許可残存距離である。D2は、区間要求情報の送信を開始する走行許可要求開始距離である。
【0071】
走行許可要求開始距離D2は、無人ダンプ20aが停止可能な距離よりも長い距離であり、例えば停止可能距離に所定のオフセット距離を加えた距離として定義される。これは、現在の走行許可区間内で停止させるためである。無人ダンプ20aの停止可能な距離は、例えば無人ダンプ20aの積荷を含めた質量(m)、無人ダンプ20aの現在の速度(v)、および無人ダンプ20aの制動力(f)から、L=mv
2/2fの式から算出される距離(L)に、所定の安全率を掛けた値として設定する。
【0072】
オフセット距離の値は、例えば無線通信にかかる時間や無線通信の障害の発生度合いなどを考慮して設定する。無人ダンプ20aの速度は、無人ダンプ20aの現在速度を前輪22または後輪23の回転数等から測定したものでもよく、また、無人ダンプ20aの現在の走行位置に対し、その走行位置が含まれるサブリンク66におけるマスタ地図情報DB316および端末側地図情報DB266に格納された地図情報に設定されているサブリンク66毎の制限速度(最大許容速度)を用いてもよい。
【0073】
無人ダンプ20aの走行許可残存距離D1が走行許可要求開始距離D2以下となったとき、無人ダンプ20aは、交通管制サーバ31に対して区間要求情報を送信する。区間要求情報は無人ダンプ20aの現在位置情報を含む。
【0074】
走行許可区間設定部311bは、無人ダンプ20aから区間要求情報を受信すると、送られてきた区間要求情報に含まれる位置情報に基づいて無人ダンプ20aの存在する区間(隣接するノード65間の走行経路64上のサブリンク66に相当する)を特定する。そして、無人ダンプ20aの進行方向前方に向かって、無人ダンプ20aが走行している区間の終端より前方の所定の区間までに亘る区間、すなわち区間数を走行許可区間として設定する。この走行許可区間は、無人ダンプ20b等の他の車両に許可が与えられている区間が存在する場合、その手前の区間までとなる。
【0075】
図7(b)に示す例では、無人ダンプ20aの存在する区間は80であり、暫定的な走行許可区間として暫定走行許可区間85を設定する。この暫定走行許可区間85には、区間81〜84が含まれる。ただし、区間83,84は、既に無人ダンプ20bに走行許可区間73bとして与えられている。そこで、無人ダンプ20aに対して新たに設定できる走行許可区間73aの候補は、区間81,82となるが、区間81は、すでに無人ダンプ20aに対して設定されている走行許可区間73aに含まれている。よって、走行許可区間設定部311bは、区間82のみを新たな走行許可区間73aとして設定する。
【0076】
このとき、走行許可区間設定部311bにて無人ダンプ20aに設定される暫定走行許可区間85は、走行許可区間情報DB317に記憶させた走行経路64上の走行許可区間情報およびサブリンク66毎の制限速度情報に基づき、無人ダンプ20aが現在走行している区間80に対して設定された制限速度情報に応じて設定される。具体的には、無人ダンプ20aの位置算出装置29にて検出される走行位置情報が、端末側通信装置264を介してサーバ側通信装置314へ送信されており、この走行位置情報に基づいて無人ダンプ20aの走行位置が算出され、この走行位置を含むサブリンク66に対して設定された制限速度を基準として、無人ダンプ20aに対して設定する暫定走行許可区間85が決定される。
【0077】
走行許可区間設定部311bは、走行許可区間を設定する無人ダンプ20aの走行位置が属する制限速度が高い場合は、無人ダンプ20aに対して設定する暫定走行許可区間85としてのサブリンク66数を多くし、制限速度が低い場合は、暫定走行許可区間85としてのサブリンク66数を少なくする。走行経路64上のサブリンク66毎の制限速度は、各サブリンク66の地形的な変化に対応させ、例えばサブリンク66の路面の走行方向の変化、例えば勾配が大きいほど小さく、
図2に示すように、カーブ区間67の曲率半径が小さいほど小さく、路面状態、例えば砂利道、踏み固められた道、凹凸、やぬかるみ等に基づく摩擦係数が低いほど小さく設定されている。
【0078】
走行許可区間設定部311bは、先行する無人ダンプ20bに対して走行許可を与えたサブリンク66のうち無人ダンプ20bが通過したサブリンク66について、この無人ダンプ20bに対して与えた走行許可を、所定のタイミングで解除する。具体的には、
図7(c)に示すように、走行許可区間設定部311bは、解除対象となるサブリンク83の終端から無人ダンプ20bの位置までの距離D4が、予め定められた走行許可解除距離D3以上となったときに、サブリンク83における無人ダンプ20bに対して与えた走行許可を解除する。解除されたサブリンク83は、後続の無人ダンプ20aの走行許可区間として設定可能になる。
【0079】
走行許可区間設定部311bによる上記処理において、無人ダンプ20aと交通管制サーバ31との通信が発生するのは、無人ダンプ20a,20bが走行許可要求を送信するときと、交通管制サーバ31が走行許可区間を送信するときである。したがって、走行許可区間設定部311bは、無人ダンプ20a,20bに対して設定した走行許可区間の解除、すなわち自車両以外の他の無人ダンプ20b,20aに対して走行許可区間の設定を可能とする解除についても、無人ダンプ20a,20bが走行許可を要求する際に同時に送信する位置情報に基づいて行う。
【0080】
次に、
図8を参照して、走行許可区間設定部311bによる処理にて無人ダンプ20a,20に与える走行許可区間の時間変化を説明する。
図8は、車両管理システム1による各サブリンク66の制限速度に応じて走行許可区間を設定した場合の時間変化を示すグラフである。
図8においては、横軸を時間、縦軸を走行経路64上の位置を表す。ここで、縦軸は、走行経路64を道なりに進んだ位置とし、走行経路64は必ずしも直線とは限らない。区間90,92は、マスタ地図情報DB316や端末側地図情報DB266に格納している地図情報上に設定された、例えば直線領域や、路面状態が良好である制限速度が比較的大きい区間を表す。区間91は、局所的な急カーブや勾配等で制限速度が比較的小さいサブリンク66を表す。94は、サブリンク66毎に設定された制限速度に基づき、その制限速度以内の理想的な速度で無人ダンプ20aが走行した場合の走行経路64上の位置の時間変化である。
【0081】
無人ダンプ20aが走行する時の走行許可区間は、
図8上のブロックB1〜B3で表している。ブロックB1〜B3の縦方向の長さは、走行許可区間の長さを表し、ブロックBの横方向の長さは、その走行許可区間を維持、すなわち走行する時間(走行時間)を表す。ここで、走行経路64上には、本来、サブリンク66の境界を表すノード65が予め定められているが、本説明においては、ノード65は走行経路64上に十分狭い間隔で設定されているものとし、
図8中には示さないものとする。
【0082】
走行許可区間の長さに関わるパラメータとして、走行許可要求開始距離D2をL1、暫定走行許可区間85をL2、走行許可解除距離D3をL3とする。そして、これらパラメータに基づく走行許可区間の変化を説明する。
【0083】
時刻t0において、無人ダンプ20aは、走行許可区間B1内の位置x0にいるものとする。無人ダンプ20aは、サブリンク66毎に予め定められた制限速度に従って走行許可区間B1を走行し、無人ダンプ20aの走行位置が、走行許可区間B1の終端から走行許可要求開始距離L1以下となる位置になったとき、すなわち時刻t1において、交通管制サーバ31に対して無線通信を用いて区間要求情報および自車両位置情報を送信する。
【0084】
走行許可区間設定部311bは、区間要求情報および自車両位置情報の受信に応じ、これら情報を送信した無人ダンプ20aに対し、暫定走行許可区間L2に属する所定数のサブリンク66の走行許可を行うとともに、走行許可解除距離L3未満となったサブリンク66の走行許可を解除する。この走行許可区間設定部311bによる走行許可および走行許可の解除により、時刻t1において無人ダンプ20aに対する走行許可区間がB1からB2へ変化する。この走行許可区間B2を走行する際においても、時刻t2および位置x2において、同様の処理を行い、走行許可区間がB2からB3へ変化する。以上のように無人ダンプ20aの走行に従い、パラメータL1,L2,L3に基づいて走行許可区間は変化する。
【0085】
以上のとおり、無人ダンプ20a,20bと交通管制サーバ31との通信は、走行許可区間の更新時にのみ発生するため、暫定走行許可区間L2が大きく、すなわち暫定走行許可区間L2として設定するサブリンク66数を多く設定するほど、走行許可区間の更新に伴う通信の頻度を少なくできる。ところが同時に、通信を行わない間においては、同じ走行許可区間が維持されるため、走行許可区間として設定された暫定走行許可区間L2が大きすぎると、後続する無人ダンプ20bに対して、すでに設定した走行許可区間の走行許可できず、無人ダンプ20a,20b間の走行間隔が開いてしまう。
【0086】
そこで、必要な走行間隔を維持しつつ2台の無人ダンプ20a,20bが走行可能な最大の暫定走行許可区間L2の決定方法が必要となる。
図9は、車両管理システム1にて無人ダンプ20aの走行許可要求に対し暫定走行許可区間L2を計算する処理を示すフローチャートである。すなわち、
図9は、無人ダンプ20aが交通管制サーバ31に対して走行許可要求を行った際に、走行許可区間設定部311bが暫定走行許可区間L2を計算する際の処理フローである。この処理フローでは、他の無人ダンプ20bが所定の走行間隔、たとえばショベル積込み時間と同じ時間間隔で、自車である無人ダンプ20aに続いて同じ走行経路64を走行していることを想定し、先行車である無人ダンプ20aと、後続車である無人ダンプ20bとが所定の走行間隔以上離れないような最大の暫定走行許可区間L2を決定している。
【0087】
具体的には、無人ダンプ20aが現在位置Xcで走行許可区間を更新した際に、無人ダンプ20bの走行許可区間が無人ダンプ20aの走行許可区間に隣接すると仮定し、走行許可要求開始距離L1および走行許可解除距離L3に基づいて、無人ダンプ20bの走行許可要求開始位置Xr1を推定する(ステップS1、以下、単に「S1」等と示す。)。次に、交通管制サーバ31のマスタ地図情報DB316に記憶された走行経路64に対応させて、走行許可区間情報DB317に記憶された走行経路64上のサブリンク66毎の制限速度に基づき、無人ダンプ20bが位置Xr1から無人ダンプ20aの現在位置Xcに到達するまでの時間ΔT2を推定する(S2)。
【0088】
さらに、無人ダンプ20a,20bの所定の時間間隔Tおよび時間ΔT2に基づき、無人ダンプ20bが走行許可要求を行う時刻trを推定する(S3)。そして、走行許可区間情報DB317に記憶させた走行経路64上のサブリンク66毎の制限速度、および走行許可要求開始距離L1に基づき、時刻trまでに無人ダンプ20aが走行許可要求を行うための暫定走行許可区間L2を決定する(S4)。
【0089】
以上の結果、暫定走行許可区間L2を決定し、無人ダンプ20aに対し走行許可を与えることにより、所定の時間間隔T離れて走行している無人ダンプ20bが次の走行許可要求を行う時刻tPまでに、無人ダンプ20aは次の走行許可要求による通信を行う。このため、走行済みの走行許可区間を最大限解除できる。すなわち、無人ダンプ20bは時刻tPで走行許可要求した際、確実に次の走行許可区間の許可を交通管制サーバ31から取得できる。よって、前方の区間が走行許可されず走行経路64上で待機し、走行間隔が必要以上に開くことを防止することができる。
【0090】
次に、
図10を参照して、前後の無人ダンプ20a,20bの位置と、走行許可区間設定部311bにて設定される走行許可区間との関係について説明する。
図10は、車両管理システム1にて2台の無人ダンプ20a,20bが同一の走行経路64上を続けて走行する際の位置の変化を示したグラフである。ここで、走行経路64は、
図8に示す経路と同一であり、各区間90〜92は制限速度がそれぞれ異なり、それぞれの制限速度をV1〜V3と仮定している。また、区間90の終端位置であって区間91の開始位置をXaとし、区間91の終端位置であって区間92の開始位置をXbとする。
【0091】
また、先行する無人ダンプ20aの現在位置、すなわち走行位置を94とし、後続する無人ダンプ20bの現在位置、すなわち走行位置を95とし、それぞれの無人ダンプ20a,20bの走行許可区間をB,Cで示す。無人ダンプ20a,20bの走行間隔、すなわち無人ダンプ20a,20bが同じ位置を通過する時間間隔はTである。現在時刻をtc1とし、無人ダンプ20aの現在位置をXcとする。無人ダンプ20aの走行位置94、および無人ダンプ20bの走行位置95のうち、実線部分は現在時刻tc1以前に走行した軌跡であり、破線部分は現在時刻tc1後に走行する予定の軌跡である。
【0092】
無人ダンプ20aは、現在位置Xcにおいて、走行許可区間B1の終端から走行許可要求開始距離L1以下となる位置になったとき、すなわち時刻tc1において、交通管制サーバ31に対して区間要求情報を送信する。その後、交通管制サーバ31の走行許可区間設定部311bは、無人ダンプ20aに対する暫定走行許可区間L2を計算する。
【0093】
暫定走行許可区間L2は、無人ダンプ20の走行許可区間を更新するにあたり、無人ダンプ20aの現在位置Xcから走行許可解除距離L3を差し引いた位置より後方の区間の走行許可を解除する。このため、後続する無人ダンプ20bに対しては、走行許可を解除した位置までの走行許可を与えることができる。無人ダンプ20bに対し走行許可を解除した位置までの走行許可がなされた場合、走行許可要求開始距離L1を踏まえると、無人ダンプ20bが追って走行許可要求を行う位置Xr1は、次の式(1)で算出される。
【数1】
【0094】
ここで、無人ダンプ20a,20bの走行間隔を示す時間間隔Tを用い、無人ダンプ20bが無人ダンプ20aの現在位置tc1に到達する時刻tc2は、次の式(2)で算出される。
【数2】
【0095】
さらに、無人ダンプ20bがXr1から無人ダンプ20aの現在位置Xcまで走行する時間ΔT2は、次の式(2)で算出される。
【数3】
【0096】
これら式(2)および式(3)を用い、無人ダンプ20bが走行許可要求位置Xr1に到達する時刻trは、次の式(4)で算出される。
【数4】
【0097】
現在時刻tc1からtrまでの時間ΔT1は、次の式(5)で算出される。
【数5】
【0098】
無人ダンプ20aが時刻tr前に走行許可要求を行うためには、ΔT1以内に次の走行許可区間B2にて走行許可要求を開始する位置Xr2に到達すればよい。位置Xr2は、次の式(6)で算出される。
【数6】
【0099】
ここで、Xr2は、求めるべき暫定走行許可区間L2により、次の式(7)にて算出される。
【数7】
【0100】
よって、これら式(6)および式(7)を用いて、暫定走行許可区間L2が算出される。なお、式(6)は、両辺の差ができるだけ小さいことが望ましい。また、特定の走行経路64を想定して計算しているが、実際の走行経路64ではサブリンク66毎に制限速度が異なり様々な速度パターンが存在する。一般的には、無人ダンプ20aの現在位置Xcに対し、次の式(8)から、暫定走行許可区間L2が決定される。式(8)中のV(x)は、走行経路64上のサブリンク66毎に設定された制限速度である。
【数8】
【0101】
この式(8)を用いた暫定走行許可区間L2の計算方法によれば、後続する無人ダンプ20bが位置Xr1に到達して次の走行許可区間を要求したときに、先行する無人ダンプ20aの走行許可区間がすでに解除されている。このため、無人ダンプ20bに対して走行許可区間を与えることができ、無人ダンプ20bは減速または停止する必要がなく、先行する無人ダンプ20aに対する走行間隔を維持でき、必要以上に走行間隔が開かないようにできる。よって、これら無人ダンプ20a,20bの相互の干渉を防止でき、運行密度を下げずに各無人ダンプ20a,20bを走行させることができる。
【0102】
特に、上記第1実施形態に係る車両管理システム1によれば、走行許可区間設定部311bにより、複数の無人ダンプ20a〜20cに対し、走行経路64上の一部の区間を走行許可区間として設定するに際し、走行許可区間情報DB317に記憶させた走行経路64上の走行許可区間情報、およびサブリンク66毎の制限速度情報に基づいて、所定のサブリンク66内を走行する無人ダンプ20a〜20cに対し、このサブリンク66の制限速度情報に応じ、制限速度が大きい場合は暫定走行許可区間85を大きく設定し、制限速度が低い場合は暫定走行許可区間85を小さく設定する。そして、走行許可区間設定部311bにて設定した暫定走行許可区間85に基づき他の無人ダンプ20a〜20cに対しすでに設定している走行許可区間を除いた区間を走行許可区間として設定し、この走行許可区間に基づく走行許可区間情報を、サーバ側通信装置314から無人ダンプ20aの端末側通信装置264へ送信する。
【0103】
そして、複数の無人ダンプ20a〜20cに対して重複なく設定した各走行許可区間を各無人ダンプ20a〜20cが走行することによって、これら各無人ダンプ20a〜20cの相互の干渉を防止できる。また同時に、設定した走行許可区間内のサブリンク66毎に定めた制限速度情報に基づく走行許可区間の設定により、無人ダンプ20a〜20cの走行間隔が大きくなり過ぎない程度で、好適な走行許可区間を設定することが可能となる。よって、これら無人ダンプ20a,20bの走行間隔が大きくなり過ぎないため、走行許可区間に伴う区間要求情報および走行許可区間情報の送信に伴う端末側通信装置264およびサーバ側通信装置314間の通信量を低減でき、運行密度を下げずに各無人ダンプ20a〜20cを走行させることができる。よって、少ない通信量で必要な運行密度を保ちつつ、複数の無人ダンプ20a〜20cを干渉なく走行させることができる。
【0104】
さらに、各サブリンク66の制限速度は、そのサブリンク66の走行方向の変化(例えば、カーブ曲率)、傾き(例えば、勾配)、路面状態(砂利道、踏み固められた道等の路面状況)によって変化する。そこで、これらサブリンク66毎に設定する制限速度を、これら各サブリンク66における走行方向の変化、傾きおよび路面状態に応じて変化させて設定し、走行許可区間設定部311bにて設定する走行許可区間を制限速度に応じて変化させることにより、走行許可区間が設定される複数の無人ダンプ20a〜20cの走行間隔をより適切に確保することができる。
【0105】
<第2実施形態>
第2実施形態は、走行許可区間内の通過時間である走行時間を一定にする実施形態である。以下、
図11を参照して第2実施形態について説明する。
図11は、本発明の第2実施形態に係る車両管理システム1にて無人ダンプ20a,20bに設定する走行許可区間の時間変化を示すグラフである。すなわち、
図11は、走行許可区間内を無人ダンプ20a,20bが走行する時間が一定となるように、暫定走行許可区間L2を決定した場合の、各無人ダンプ20a,20bの位置と走行許可区間との関係を示す。なお、
図11中、
図10と同じ符号については、その説明を省略する。ΔTは、無人ダンプ20a,20bが一つの走行許可区間内を走行するために必要な所要時間である。
【0106】
無人ダンプ20aが走行許可区間B1内の走行位置x1の走行中に、次の走行許可区間B2を設定するための暫定走行許可区間L2を求める。現在の速度区間において、所要時間ΔTだけ走行したときの位置x2は、次の式(9)にて算出される。
【数9】
【0107】
位置x2においては、走行許可区間B2の終端から走行許可要求距離L1を差し引いた位置に到達した場合に、次の走行許可要求が求められるため、暫定走行許可区間L2は、次の式(10)で算出される。
【数10】
【0108】
なお、現在位置から所定の所要時間ΔTを走行する間に、走行するサブリンク66毎に設定された制限速度が変化する場合には、サブリンク66毎に変化する制限速度を考慮した暫定走行許可区間L2の計算が必要となる。現在位置をx0とし所要時間ΔTだけ走行する間に区間がn個(V1,・・・,Vn)存在する場合に、サブリンク66の境界の位置をxi(i=1,・・・,n−1)とすると、所要時間ΔTだけ走行した時点の位置xTは、次の式(11)で算出される。
【数11】
【0109】
位置xTにおいて、走行許可区間の終端から走行許可要求距離L1手前の位置に到達した場合に、次の走行許可要求が求められる。このため、暫定走行許可区間L2は、次の式(12)で算出される。
【数12】
【0110】
一般的なサブリンク66毎に設定された制限速度の変化に対し、xTは、次の式(13)にて算出される。この場合においても、暫定走行許可区間L2は、式(12)で算出される。
【数13】
【0111】
よって、上記第2実施形態に係る暫定走行許可区間L2の算出方法についても、所要時間ΔTで走行許可区間を更新できるため、無人ダンプ20a,20b間の走行間隔が必要以上に開くといった問題を防止できる。すなわち、走行経路64上を走行する複数の無人ダンプ20a,20bの走行間隔を確保しつつ、これら無人ダンプ20a,20bを所定の時間間隔を介して、走行経路64上の所定の区間を走行させることができる。よって、これら無人ダンプ20a,20bの相互の干渉を防止しつつ、運行密度を下げずに各無人ダンプ20a,20bを走行させることができる。
【0112】
<その他>
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0113】
また、上記各実施形態においては、走行経路64上のサブリンク66毎に設定した制限速度を走行許可区間情報DB317に記憶させ、所定のサブリンク66を走行している無人ダンプ20aからの走行許可要求に対し、その所定のサブリンク66に設定された制限速度に応じて、走行許可区間とする現在の走行位置より前方のサブリンク66数を設定する構成としている。しかしながら、走行許可要求する際の無人ダンプ20aの実速度情報を、区間要求情報とともに無人ダンプ20aから交通管制サーバ31が受信したり、交通管制サーバ31にて算出したりし、その無人ダンプ20aの走行速度に応じて、走行許可区間を設定する構成としてもよい。
【0114】
また、無人ダンプ20aは、大量の土砂や鉱物等を荷台24に積載させるため、空荷時と積載時とでは出力可能な実際の走行速度が変化してしまい、積載状態に応じて実際の走行速度が変化する。例えば、積荷を積載している状態では積荷の重量によって走行速度が低下してしまい、空荷の状態では積荷の重量に伴う走行速度の低下がない。このため、サブリンク66毎に設定した制限速度に加え、無人ダンプ20aの荷台24に積載させる積荷状況に応じて、走行許可区間を補正してもよい。具体的には、空荷状態の無人ダンプ20aは、総重量が小さく、走行速度を高くできるため、走行許可区間をより長く設定し、積載状態の無人ダンプ20aは、積荷を含んだ総重量が大きいため、走行許可区間をより短くする。この場合に、無人ダンプ20aの積載状況は、荷台24を支えるホイストシリンダ等に取り付けた圧力センサ(図示せず)にて検出する構成や、走行経路64上の位置および無人ダンプ20aの走行方向等から算出する構成してもよい。この結果、積荷状態の相違による無人ダンプ20a,20bの走行間隔のばらつきを防止でき、これら無人ダンプ20a〜20cの走行間隔をより適切に確保することができる。
【0115】
さらに、上記第2実施形態では、すべての走行許可区間内の走行時間が一定となるように、各無人ダンプ20a〜20cに設定する走行許可区間を設定したが、走行経路64上の少なくとも一部のサブリンク66の走行時間が一定となるようにしたり、走行経路64上の所定のサブリンク66や所定の地点を予め定めた所定時間後に通過するように走行許可区間を設定してもよい。この結果、所定の区間を通過する無人ダンプ20a〜20cの時間間隔、すなわち走行間隔を一定にでき、これら無人ダンプ20a〜20cを所定の時間間隔を介して所定の区間を走行させることができる。