(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動機と、前記電動機を収容するハウジングと、前記電動機の回転軸に取り付けられたインペラと、前記インペラから吐出された風を前記ハウジング内の風路に導くディフューザと、前記インペラおよび前記ディフューザを外方から覆うファンケーシングと、を備え、
前記ファンケーシングの内面には、前記ディフューザのディフューザ翼の先端部に対向して当該先端部が当接する弾性部材が設けられており、
前記弾性部材は、一体成形にて前記ファンケーシングに形成され、
前記ファンケーシングには、前記弾性部材が設けられる部位に前記ファンケーシングの内面と外面とを連通する連通孔が設けられており、
前記弾性部材は、前記連通孔を通じて、前記ファンケーシングの外面側の開口縁全体に回り込む形態で設けられて前記ファンケーシングの外面側に露出する縁部を有しており、前記縁部のある面とは反対側の面に前記ディフューザ翼の先端部が当接することを特徴とする電動送風機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、電動送風機において、「前、後」を言うときは、
図2に示す方向を基準としている。
図1に示すように、電気掃除機1は、掃除機本体2と、ホース3と、手元操作SW等が設けられた操作管4と、継手管としての延長管5と、第1、第2の吸込具6、7とを備えて構成されている。
掃除機本体2の内部には、
図2に示すように、吸引力を発生させる電動送風機10や、集塵室2cに配置され、電動送風機10の吸引力で吸い込まれた塵埃を捕集する紙パック8(捕集部材)、さらには、紙パック8で塵埃を取り除かれた空気が通過するフィルター9等が配置されている。
【0013】
電動送風機10は、掃除機本体2の電動送風機室2aに防振ゴム2bを介して収容される。電動送風機10は、
図3に示すように、電動機20と、送風機30とを備える。
【0014】
〔電動機〕
電動機20は、ハウジング21およびエンドブラケット22からなる外ケース23と、この外ケース23に軸受21a、22aを介して回転可能に支持された回転軸24と、この回転軸24に固定された電機子25と、この電機子25の周りに配置された固定子26とを主として備えている。電機子25の前後には、電機子巻線25a、25bが巻装されている。
そして、電動機20は、ブラシ27とこれに接触するように回転軸24に設けられたコンミテータ28との整流作用によって電力の供給を受け、連続的なトルクを発生して回転するようになっている。
【0015】
また、固定子26は、外周が角形の固定子鉄心に固定子巻線を巻装して構成され、ハウジング21内に嵌着されている。固定子26を嵌着したハウジング21内には、その内周壁と固定子26との間に、軸方向の通風路R1が形成されている。
さらに、固定子26と電機子25との間にも、軸方向の通風路R2が形成されている。この通風路R2には、ハウジング21の後方(流れ方向下流側)へ導かれた空気の一部が通流するようになっている。
なお、回転軸24の先端には、送風機30を構成しているインペラ31が固定されている。
【0016】
ハウジング21は、カップ状を呈しており、その開口縁に、径方向外側に向けて延びるフランジ部21bを有している。ハウジング21の開口には、これを横切るようにエンドブラケット22が掛け渡されて配置され、フランジ部21bに対して図示しないねじ止め等により固定されている。
【0017】
エンドブラケット22は、剛性を有する金属等の材料からなり、その後面中央部には、軸受22aを収容する凹部22bが形成されている。エンドブラケット22は、この凹部22bに収容した軸受22aを介して回転軸24の前端側を支持している。
【0018】
〔送風機〕
送風機30は、
図3に示すように、電動機20の回転軸24に直結されたインペラ31と、このインペラ31の外周側に固定設置されるディフューザ32(静翼)と、このディフューザ32に対して仕切板33を挟んで対面に配置されるリターンガイド34と、を備え、これらがファンケーシング40内に収められた構成となっている。
【0019】
インペラ31は、遠心力を利用する遠心型羽根車であり、高速回転になるとインペラ31内で圧力上昇が大きくなり、吸込部40aから空気を吸い込む。吸い込まれた空気は、インペラ31を通じて外周側に高速の空気流となって吐出される。
【0020】
ディフューザ32は、インペラ31の外周側を囲い、インペラ31から外周方向に吐出された空気流を外周方向に導くディフューザ流路32aを形成している。
リターンガイド34は、ディフューザ流路32aを流れて来た空気流を電動機20に導くリターン流路34bを形成している。
【0021】
〔ファンケーシング〕
ファンケーシング40は、インペラ31およびディフューザ32を外方から覆っており、平面視円形状の上板41(
図4(a)参照)と、上板41の周縁部に連続して軸方向に延在する円環状の側板42(
図3参照)とを備えている。上板41の周縁部の内面41bには、
図5(a)に示すように、弾性部材50が設けられている。
【0022】
上板41の前端部には、
図3に示すように、吸込部40aが形成されている。吸込部40aとインペラ31の吸込口は連通している。
上板41の周縁部には、
図4(a)に示すように、周方向に略等間隔で、複数の連通孔44が形成されている。各連通孔44は、上板41の内面と外面とを連通しており、連通孔44内には、
図5(c)に示すように、弾性部材50を成形する際にゲートブッシュGが挿入される。
これにより、インサート成形を行う際にゲートブッシュGをファンケーシング40の位置決め用ピンとしても共用することで、金型構造を単純化するとともにファンケーシング40においても余計な位置決めを追加する必要がないため、単純な構造とすることができる。
【0023】
また、上板41の周縁部の内面41bには、
図6(a)に示すように、複数の突起部43が形成されている。突起部43は、
図4(c)(e),
図6(b)に示すように、ブリッジ状に突出形成されており、内面41bから傾斜状に立ち上がる一対の傾斜部43a,43aと、一対の傾斜部43a,43aに連続する平らな底部43bとを備えている。このような突起部43は、ファンケーシング40の製造時にプレス加工やパンチ加工等によってファンケーシング40に一体に形成される。各突起部43は、
図4(a)に示すように、隣合う連通孔44同士の間に1つまたは2つ配置される。なお、突起部43の配置は金型に合わせて適宜設定することができる。例えば、ウエルドラインの生じにくい位置に配置することが好ましい。
【0024】
各突起部43は、
図4(b)(d)に示すように、上板41の内面41bに設けられる弾性部材50に全体が埋設され、
図5(a)に示すように、ファンケーシング40の後面から見たときに、弾性部材50の表面(対向面)50aに各突起部43が露出しないようになっている。各突起部43の内側には、
図4(b)(d)に示すように、凹部43cが形成されており、この凹部43cにも弾性部材50が流入ている。凹部43cに流入した弾性部材50は、上板41の外面に略面一とされた状態で露出している。
【0025】
弾性部材50は、
図5(a)(b)に示すように、円環板状を呈しており、上板41の周縁部の内面41bに設けられている。弾性部材50は、ゴムやエラストマー等の弾性材料からなり、ファンケーシング40に一体成形されている。本実施形態では、インサート成形により弾性部材50を成形している。
【0026】
弾性部材50は、
図3に示すように、ディフューザ32のディフューザ翼32bの先端部(前端部)に対向して配置されている。弾性部材50の表面50a(
図5(a)参照)には、ディフューザ翼32bの先端部が当接される。これによって、ディフューザ翼32bの先端部が弾性部材50に密着し、ファンケーシング40とディフューザ32との気密性が保持されている。
【0027】
本実施形態では、
図7(a)(b)に示すように、ディフューザ翼32bの先端部(前端部)に糸リブ32cを設けている。糸リブ32cは、
図7(b)に示すように、断面略三角形状を呈している。これによって、
図8に示すように、ディフューザ翼32bの先端部が弾性部材50の表面50aに当接すると、対向面50aに糸リブ32cが食い込み、弾性部材50とディフューザ翼32bとの密着性(気密性)が好適に保たれる。
【0028】
弾性部材50は、
図5(c)に示すように、連通孔44を通じて上板41の外面側の開口縁44aに回り込む形態で設けられており、上板41の外面側に露出する縁部51を有している。縁部51は、
図4(a)に示すように、リング状を呈している。縁部51には、金型で押さえる部分の逃げとして外縁部に直線状部が形成されている。
【0029】
なお、
図5(c)に示すように、弾性部材50の周縁部50bと側板42の内面との間には、間隙45が形成されている。この間隙45は、金型挿入用のスペースとして機能する。これによって、成形時に前後方向から上板41を好適に保持することが可能であり、弾性部材50にバリ等が生じにくい。また、成形によって側板42の径にバラツキが生じていたとしても、金型着脱時に金型が側板42に引っ掛かる等の不具合を回避することができる。したがって、金型を確実に着脱することができる。
【0030】
ハウジング21にファンケーシング40を組み付ける際は、インペラ31およびディフューザ32をファンケーシング40で覆うようにして、ファンケーシング40をハウジング21の開口に被せ、カシメ等によってファンケーシング40をハウジング21に固定する。そうすると、ファンケーシング40の内側において、ディフューザ翼32bの先端部に弾性部材50の表面(対向面)50aが当接し、ファンケーシング40とディフューザ32との気密性が保持される状態となる。
【0031】
以上説明した本実施形態によれば、弾性部材50をファンケーシング40に一体成形したので、ファンケーシング40をディフューザ32に装着するだけで気密性に優れたディフューザ流路32aを形成することができる。
したがって、ファンケーシング40とディフューザ32との気密性を確保することができるとともに、容易に組み立てることができる電動送風機10および電気掃除機1が得られる。
【0032】
また、弾性部材50は、連通孔44を通じて、ファンケーシング40の外面側の開口縁44aに回り込む形態で設けられており、開口縁44aに縁部51が位置しているので、ファンケーシング40から弾性部材50が抜け落ちない。
【0033】
また、隣合う開口縁44aの間には、弾性部材50に埋設される突起部43が設けられているので、成形後の収縮による弾性部材50の変形を好適に抑制することができる。
また、突起部43には、凹部43cが設けられており、凹部43c内に弾性部材50が流入し、弾性部材50が突起部43に絡めて成形されるので(弾性部材50が突起部43に保持されるので)、成形後の収縮による弾性部材50の変形をより好適に抑制することができる。
【0034】
前記実施形態では、突起部43をブリッジ状(両持ち形状)のものとしたが、これに限られることはなく、片持ち形状等、任意の形状(形態)とすることができる。また、突起部43は平面視で半円形状等、任意の形状に形成してもよい。また、例えば、単なる突起を設け、その突起に切り込み部を形成することによって、その切込み部に弾性部材50が流入するように構成してもよい。
【0035】
また、弾性部材50の縁部51は、リング状を呈するものに限られることはなく、連通孔44の開口縁44aの一部に弾性部材50が回り込む形態であってもよい。
【0036】
また、ディフューザ翼32bに糸リブ32cを設けたが、糸リブ32cは必ずしも設けなくてもよい。また、糸リブ32cは、断面略三角形状のものに限られることはなく、矩形状、半円形状等、種々の形状のものを採用することができる。