(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例によるガスタービン燃焼器は、以下で説明するように、強制対流により部材(燃焼器ライナ)と流体(伝熱媒体)との間の伝熱を促進して、すなわち、部材の表面に沿って伝熱媒体を流れさせ、部材と伝熱媒体との間で熱授受を行って、部材の冷却を促進する。
【0016】
ガスタービンを利用した火力発電の効率向上における課題として、燃焼ガス温度の高温化があり、これに伴い燃焼器ライナの冷却強化が必要となる。同時に、ガスタービン燃焼器の圧力損失の増大は、ガスタービンの効率を低下させる要因となるため、避ける必要がある。このような中で、衝突噴流冷却(インピンジ冷却)において冷却強化のために噴流速度を増加することは、圧力損失の大きな増大要因となる。また、フィン冷却では、フィン数の増加とともに圧力損失が大きくなる傾向がある。一方、リブによる乱流促進は、圧力損失増加が少ないものの、リブ間隔を狭くしても大幅な冷却性能向上が望めないため、リブを増やすことによる冷却促進には限界がある。
【0017】
本発明では、これらの事情を考慮し、圧力損失の増大を抑制しつつ燃焼器ライナの冷却を促進することができ、構造強度、製造工程の簡素性及び長寿命性に優れ、製品信頼性が向上したガスタービン燃焼器を提供する。
【0018】
本発明によるガスタービン燃焼器は、燃焼器ライナと、燃焼器ライナを内部に備えるフロースリーブと、燃焼器ライナとフロースリーブとの間に形成され、圧縮空気(伝熱媒体)が流れる環状流路とを備える。フロースリーブは、フロースリーブの内径を縮小するように変化させる内径変化部を備える。燃焼器ライナは、フロースリーブに向かって突出し、内径変化部により圧縮空気の流れの向きが変化する位置、又はこの位置よりも圧縮空気の流れ方向の上流側の位置に設けられる環状の突起部を備える。
【0019】
本発明によるガスタービン燃焼器は、フロースリーブに内径変化部を備えるので伝熱媒体の流れの向きを変化させ速度を増加させることができ、燃焼器ライナに環状突起部を備えるので熱伝達効果を促進することができるので、簡素な構造と小さな圧力損失で燃焼器ライナの対流冷却(対流伝熱による冷却)を促進することができるとともに、製品信頼性を向上できる。また、内径変化部と環状突起部の設置形状や設置位置を調節することにより、燃焼器ライナの高温部を集中的に冷却し、燃焼器ライナの温度を一定値以下に抑えることができる。また、燃焼器ライナに取り付ける部品数を減少させ溶接部位の数を低減できることから、燃焼器ライナの信頼性向上と、これに伴う長寿命化とが図れる。また、溶接部位の数の低減により、燃焼器ライナの変形も抑制できる。更に、環状突起部の高さ(突出長さ)を一定値以上にすると、燃焼器ライナの座屈強度を向上することができ、製品信頼性の向上に寄与することができる。
【0020】
以下、本発明の実施例によるガスタービン燃焼器について、図面を用いて説明する。なお、本発明の実施例を説明するための図面において、同一の要素には同一の符号を付け、これらの要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、「ガスタービン燃焼器」と「燃焼器ライナ」と「ガスタービン」のことを、それぞれ「燃焼器」と「ライナ」と「タービン」とも称する。
【0021】
図1は、本発明の実施例によるガスタービン燃焼器の断面図であり、ガスタービン燃焼器を備えるガスタービンプラント(ガスタービン発電設備)の概略構成も示す。ガスタービンプラントは、圧縮機1と、ガスタービン燃焼器6と、ガスタービン3と、発電機7を備える。
【0022】
圧縮機1は、空気を圧縮して、高圧の燃焼用空気(圧縮空気2)を生成する。ガスタービン燃焼器6(燃焼器6)は、燃料と圧縮機1から導入された圧縮空気2とを混合して燃焼し、高温の燃焼ガス4を生成する。ガスタービン3(タービン3)は、燃焼器6が生成した燃焼ガス4のエネルギーにより、軸駆動力を得る。発電機7は、タービン3によって駆動され、発電を行う。なお、圧縮機1、タービン3及び発電機7の回転軸は、互いに機械的に連結されている。
【0023】
燃焼器6は、フロースリーブ(外筒)10と、燃焼器ライナ(内筒)8と、燃焼室5と、トランジションピース(尾筒)9と、環状流路11と、プレート12と、複数のバーナ13を備える。
【0024】
フロースリーブ10は、燃焼器ライナ8とトランジションピース9を内部に備える円筒形状の構造体であり、燃焼器6に供給された圧縮空気2の流速や偏流を調節する。燃焼器ライナ8(ライナ8)は、円筒形状の構造体であり、フロースリーブ10から間隔を設けてフロースリーブ10の内側に設置される。燃焼室5は、ライナ8の内部に形成される。トランジションピース9は、筒状の構造体であり、フロースリーブ10から間隔を設けてフロースリーブ10の内側に設置され、ライナ8のタービン3側の開口部に連接され、燃焼室5で生成された燃焼ガス4をタービン3に導く。環状流路11は、トランジションピース9とフロースリーブ10との間、及びライナ8とフロースリーブ10との間に形成され、圧縮機1から燃焼室5に供給される圧縮空気2が流れる。圧縮空気2は、ライナ8を冷却する伝熱媒体の役割も果たす。トランジションピース9は、ライナ8の圧縮空気2の流れ方向の上流側で、ライナ8と接続される。
【0025】
プレート12は、略円板状であり、一端面が燃焼室5に臨んでおり、ライナ8の燃焼ガス4の流れ方向の上流側端部を全面的に塞ぎ、ライナ8の中心軸に略直交するようにフロースリーブ10に設けられる。複数のバーナ13は、プレート12に配置される。
【0026】
以下に述べる実施例では、タービン3の全体構成や燃料ノズルを含む燃焼器6の詳細な作用についての説明は省略する。これらについては、例えば特許文献1を参照されたい。
【実施例1】
【0027】
図2は、本発明の実施例1によるガスタービン燃焼器6の断面図である。燃焼器ライナ8とフロースリーブ10は、ほぼ同軸状の二重円筒構造を形成する。フロースリーブ10の直径は燃焼器ライナ8の直径より大きく、フロースリーブ10と燃焼器ライナ8との間に環状流路11が形成される。伝熱媒体である圧縮空気2は、環状流路11の中を流れる。
【0028】
フロースリーブ10は、フロースリーブ10の内壁に設けられ、燃焼器ライナ8に向かって突出してフロースリーブ10の内径を縮小するように変化させる狭窄部10aを備える。狭窄部10aは、環状流路11を狭める構造体であり、内径変化部10cと内径縮小部10bとを備える。内径変化部10cは、圧縮空気2の流れ方向に進むにしたがって次第に燃焼器ライナ8に近づくようにフロースリーブ10に斜めに接続する面である。内径縮小部10bは、内径変化部10cよりも圧縮空気2の流れ方向の下流側に設けられ、内径変化部10cと接続し、圧縮空気2の流れ方向に沿って延在する面である。以下では、フロースリーブ10と内径変化部10cとが接続する位置を接続位置Aと呼び、内径変化部10cと内径縮小部10bとが接続する位置を接続位置Bと呼ぶ。
【0029】
環状流路11は、圧縮空気2の流れ方向に沿って接続位置Aから接続位置Bに向かうにしたがって、次第に狭くなる。したがって、圧縮空気2は、狭窄部10aによって狭められた環状流路11の中(内径変化部10cと燃焼器ライナ8との間、及び内径縮小部10bと燃焼器ライナ8との間)を流れる。
【0030】
なお、
図2に示すように、狭窄部10aは、下流側内径変化部10dを備えることもできる。下流側内径変化部10dは、圧縮空気2の流れ方向の下流側で内径縮小部10bと接続し、圧縮空気2の流れ方向に進むにしたがって次第に燃焼器ライナ8から遠ざかるようにフロースリーブ10に斜めに接続し、フロースリーブ10の内径を内径縮小部10bから徐々に拡大するように変化させる面である。下流側内径変化部10dを設けると、圧力損失の増大をさらに抑制する効果が得られる。
【0031】
燃焼器ライナ8は、フロースリーブ10に向かって突出する環状の部材である環状突起部20を、燃焼器ライナ8の外壁に備える。環状突起部20は、フロースリーブ10と内径変化部10cとの接続位置Aに対向する位置、すなわち内径変化部10cにより環状流路11が狭くなり圧縮空気2の流れの向きが変化する位置、又はこの位置よりも圧縮空気2の流れ方向の上流側の位置に設ける。環状突起部20は、燃焼器ライナ8の外壁に環状に設けられ、燃焼器ライナ8の形状を保つための補強材としての機能を有する他に、後述するように、ガスタービン燃焼器6の圧力損失の増大を抑制する機能と、燃焼器ライナ8の冷却を促進する機能とを有する。
【0032】
環状突起部20は、以下に述べるライナ8の高温部の付近、又はこの高温部よりも圧縮空気2の流れ方向の上流側に設ける。この高温部の位置やライナ8の壁面の温度が最大となる部分の位置は、燃焼器6の構造で決まり、燃焼試験やシミュレーションにより予め求めることができる。
【0033】
フロースリーブ10と内径変化部10cとの接続位置Aは、環状突起部20の位置に基づいて定めることができる。上述したように、環状突起部20は接続位置Aに対向する位置又はこの位置よりも圧縮空気2の流れ方向の上流側に設けるので、接続位置Aは、環状突起部20に対向するフロースリーブ10の位置又はこの位置よりも圧縮空気2の流れ方向の下流側に設ける。接続位置Aと環状突起部20をこのような位置関係で配置すると、圧力損失の増大を抑制する効果が得られる。
【0034】
一般に、圧縮機1から供給された圧縮空気2がフロースリーブ10とライナ8との間に形成された環状流路11を流れる構造のガスタービン燃焼器では、圧縮空気2は、まず環状流路11を流れることで、対流伝熱によりライナ8を冷却する。その後、圧縮空気2は、バーナ13において燃料と混合され、高温の燃焼ガス4となって燃焼室5を流れる。この際、燃焼ガス4は、対流伝熱によりライナ8を加熱する。燃焼ガス4は、燃料と圧縮空気2の反応速度や燃焼室5内での流速分布等の影響により、燃焼室5内で温度分布を持つ。このため、ライナ8の加熱量に分布が生じて、ライナ8に温度分布が生じる。この結果、ライナ8には、壁面の温度がライナ8の他の壁面の温度より高い高温部が発生する。一方、ライナ8は、用いられる金属材料の耐熱性能に応じて運用時の最高温度に制限があるため、高温部を効率的に冷却する必要がある。
【0035】
また、一般に、圧縮空気2が環状流路11を流れる構造のガスタービン燃焼器では、圧縮空気2が環状流路11からバーナ13、燃焼室5、及びトランジションピース9へと流れる際、圧縮空気2と流路の壁面との摩擦抵抗のほか、流路の拡大、縮小、及び曲折等で発生する流れの剥離渦により、圧力損失を生じる。したがって、ガスタービン3の効率向上のために圧力損失を低減するには、剥離渦の発生を極力減らす必要がある。
【0036】
本実施例によるガスタービン燃焼器6では、上述した狭窄部10a(内径縮小部10bと内径変化部10c)と環状突起部20により、ライナ8の高温部を効率的に冷却することができるとともに剥離渦の発生を減らすことができるので、ライナ8の冷却を促進することができ、圧力損失の増大を抑制することができる。
【0037】
図3A、
図3Bは、本実施例によるガスタービン燃焼器6における、燃焼器ライナ8の冷却を促進する原理を説明する図であり、ガスタービン燃焼器6の中心軸と平行な断面図である。
図3A、
図3Bは、ガスタービン燃焼器6のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示している。圧縮空気2は、環状流路11の中を、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10の壁面に沿って流れる。
図3A、
図3Bを用いて、本実施例によるガスタービン燃焼器6の、ライナ8の冷却を促進する原理を説明する。
【0038】
図3Aは、燃焼器ライナ8が環状突起部20を備えるガスタービン燃焼器のうち、環状流路11の一部を模式的に示す図である。
図3Aに示すガスタービン燃焼器は、フロースリーブ10が内径変化部10cと内径縮小部10bとを備えない。
【0039】
図3Aに示すように、圧縮空気2が環状流路11を流れると、環状突起部20の上流側には上流側剥離渦21が生じ、下流側には下流側剥離渦22aが生じる。上流側剥離渦21は、圧縮空気2の流れに押し込まれるため小さいが、下流側剥離渦22aは、圧縮空気2の流れにより引き伸ばされて大きくなる。下流側剥離渦22aの圧縮空気2の流れ方向の長さは、代表的には、環状突起部20の高さの約6〜8倍である。
【0040】
これに対し、対流伝熱による燃焼器ライナ8の冷却の観点では、剥離渦領域は、滞留領域であるため流速がほぼ0であり、圧縮空気2による冷却効果がほとんどない。しかし、剥離渦の終点C(再付着点C)では、圧縮空気2の流速ベクトル2bに示すように、燃焼器ライナ8の壁面近傍での境界層の厚さがほぼ0になるため、冷却効果が非常に大きくなる。したがって、全体としては、環状突起部20があることで、環状突起部20がない平滑流路に比べて熱伝達率は向上するが、剥離渦の大きさに応じて圧力損失は増大する。
【0041】
図3Bは、燃焼器ライナ8が環状突起部20を備えフロースリーブ10が内径変化部10cと内径縮小部10bとを備えるガスタービン燃焼器6のうち、環状流路11の一部を模式的に示す図である。圧縮空気2が環状流路11を流れると、
図3Bに示すように、
図3Aを用いて説明したように、環状突起部20の上流側には上流側剥離渦21が生じ、下流側には下流側剥離渦22bが生じる。
【0042】
ただし、下流側剥離渦22bは、
図3Aに示した下流側剥離渦22aと比較して、圧縮空気2の流れ方向の長さが縮小する。これは、内径変化部10cにより、圧縮空気2の流速ベクトル2cの向き(すなわち、圧縮空気2の流れの向き)がライナ8に向かう方向に曲げられるため、下流側剥離渦22bの外側の流れの向きもライナ8に向かう方向に曲げられるためである。このとき、環状流路11が狭くなるために圧縮空気2の流速が大きくなり、下流側剥離渦22bの外側の流れの向きを変える効果も大きくなる。
【0043】
これにより、対流伝熱による燃焼器ライナ8の冷却の観点では、冷却効果の小さい剥離渦領域が小さくなり、剥離渦の終点C(再付着点C)での冷却効果は、圧縮空気2の流速の増加による対流冷却の促進効果も合わさり、非常に大きくなる。燃焼器ライナ8は金属材料で構成され熱伝導率も大きいので、下流側剥離渦22bが生じた領域でのライナ8の温度は低下する。さらに、環状突起部20を機械加工などで形成し燃焼器ライナ8と一体構造とすれば、フィン効果で上流側剥離渦21が生じた領域でのライナ8の温度も低下する。
【0044】
したがって、対流伝熱による燃焼器ライナ8の冷却を効率よく行うためには、上述したライナ8の高温部(好ましくは、ライナ8の壁面の温度が最大となる部分)の位置又はこの位置の圧縮空気2の流れ方向の上流側に、下流側剥離渦22bの再付着点C、又は圧縮空気2の流速が増加する位置を配置する必要がある。したがって、環状突起部20は、ライナ8の高温部(好ましくは、ライナ8の壁面の温度が最大となる部分)の位置又はこの位置の圧縮空気2の流れ方向の上流側の位置に配置するのが好ましい。そして、フロースリーブ10と内径変化部10cとの接続位置Aは、環状突起部20の位置に対向するフロースリーブ10の位置又はこの位置よりも圧縮空気2の流れ方向の下流側に設けるのが好ましい。
【0045】
一方、圧力損失は、フロースリーブ10の内径変化部10cの、圧縮空気2の流れ方向の上流側と下流側での剥離渦の発生と、内径縮小部10bでの圧縮空気2の流速の増加に起因する摩擦損失の増加により、
図3Bに示した構造では、
図3Aに示した構造よりも増大する。しかし、下流側剥離渦22bの長さは縮小するため、内径変化部10cを剥離渦の発生を抑制できるような構造にすることで、圧力損失の増大を抑制することができる。具体的には、他の実施例で述べるように、内径変化部10cのフロースリーブ10との接続部の形状や内径変化部10cの内径縮小部10bとの接続部の形状を滑らかな曲線状にしたり、内径変化部10cとフロースリーブ10の内壁とがなす角度αを適切な値に設定したりすることで、内径変化部10cによる剥離渦の発生を極力抑えることができる。
【0046】
また、構造強度の観点からは、環状突起部20の高さ(突出長さ)は、座屈強度が大きくなるので、大きいほど好ましい。下流側剥離渦22bによる対流冷却の促進効果と圧力損失の増大の抑制効果とを考慮した環状突起部20の好ましい高さは、次のように求めることができる。内径変化部10cと内径縮小部10bとの接続位置Bに対向するライナ8の位置を位置Dとし、圧縮空気2の流れ方向の下流側の、環状突起部20の先端部の位置を位置Eとし、内径変化部10cとフロースリーブ10の内壁とがなす角度(劣角の角度)をαとすると、ライナ8の位置Dと環状突起部20の位置Eとを結んだ直線とライナ8の外壁とのなす角度β(劣角の角度)が、角度α以下となるように、環状突起部20の高さを定めるのが好ましい。角度βが角度αと等しいかやや小さくなるように、環状突起部20の高さを定めると、さらに好ましい。
【0047】
フロースリーブ10の狭窄部10a(すなわち、内径変化部10cと内径縮小部10b)の燃焼器ライナ8に向かう突出長さは、環状突起部20の高さに応じて任意に定めることができ、特に限定しない。
【実施例2】
【0048】
図4は、本発明の実施例2によるガスタービン燃焼器のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示す図であり、ガスタービン燃焼器の中心軸と平行な断面図である。以下では、実施例1によるガスタービン燃焼器と異なる点を説明する。
【0049】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、フロースリーブ10の内径変化部10cが、フロースリーブ10と内径縮小部10bとに滑らかに接続されている。すなわち、内径変化部10cのフロースリーブ10との接続部10dと、内径変化部10cの内径縮小部10bとの接続部10eは、滑らかな曲線状をしている。好ましくは、接続部10dと接続部10eの形状は、流線形である。接続部10dと接続部10eが流線形であれば、内径変化部10cによる剥離渦の発生を効果的に抑制することができる。
【0050】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、このような構成により、圧縮空気2が内径変化部10cに沿って流れる際に、剥離渦が発生するのを最小限に抑えることができ、内径変化部10cによる圧力損失の増大を抑制することができる。
【実施例3】
【0051】
図5は、本発明の実施例3によるガスタービン燃焼器のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示す図であり、ガスタービン燃焼器の中心軸と平行な断面図である。以下では、実施例1によるガスタービン燃焼器と異なる点を説明する。
【0052】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、燃焼器ライナ8は、環状突起部20bを外壁に備える。環状突起部20bは、圧縮空気2の流れ方向の上流側の面が曲面である。好ましくは、環状突起部20bのこの曲面の形状は、流線形である。また、この曲面の、燃焼器ライナ8の外壁との接続部は、滑らかな曲線状をしており、燃焼器ライナ8の外壁と滑らかに接続されているのが好ましい。さらに好ましくは、この接続部の形状は、流線形である。
【0053】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、このような構成により、圧縮空気2が環状突起部20bに沿って流れる際に、上流側剥離渦21が発生するのを最小限に抑えることができ、環状突起部20bによる圧力損失の増大を抑制することができる。
【実施例4】
【0054】
図6は、本発明の実施例4によるガスタービン燃焼器のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示す図であり、ガスタービン燃焼器の中心軸と平行な断面図である。以下では、実施例1によるガスタービン燃焼器と異なる点を説明する。
【0055】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、燃焼器ライナ8は、環状突起部20cを外壁に備える。環状突起部20cは、圧縮空気2の流れ方向の下流側の面が曲面である。好ましくは、環状突起部20cのこの曲面の形状は、流線形である。また、この曲面の、燃焼器ライナ8の外壁との接続部は、滑らかな曲線状をしており、燃焼器ライナ8の外壁と滑らかに接続されているのが好ましい。さらに好ましくは、この接続部の形状は、流線形である。
【0056】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、このような構成により、圧縮空気2が環状突起部20cに沿って流れる際に生じる下流側剥離渦22bによる圧力損失の増大を抑制できるとともに、下流側剥離渦22bの再付着によって対流伝熱による冷却を促進する効果を十分に発揮させることができる。したがって、本実施例によるガスタービン燃焼器では、燃焼器ライナの冷却の促進と圧力損失の増大の抑制とを、効果的に両立することができる。
【0057】
なお、実施例3と同様に、環状突起部20cの、圧縮空気2の流れ方向の上流側の面が曲面であってもよい。すなわち、環状突起部20cは、圧縮空気2の流れ方向の上流側と下流側の面がどちらも曲面であってもよい。このような構成にすると、燃焼器ライナの冷却の促進と圧力損失の増大の抑制とを、さらに効果的に両立することができる。
【実施例5】
【0058】
図7は、本発明の実施例5によるガスタービン燃焼器のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示す図であり、ガスタービン燃焼器の中心軸と平行な断面図である。以下では、実施例1によるガスタービン燃焼器と異なる点を説明する。
【0059】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、燃焼器ライナ8は、実施例1によるガスタービン燃焼器が有する環状突起部20を備えず、その代わりに肉厚部23を備える。肉厚部23の、圧縮空気2の流れ方向の下流側の位置は、上記の実施例で示した環状突起部20の、圧縮空気2の流れ方向の下流側の位置と同じである。肉厚部23の、圧縮空気2の流れ方向の上流側の位置は、燃焼器ライナ8とトランジションピース9との接続部である。すなわち、肉厚部23は、環状突起部20が、圧縮空気2の流れ方向の上流側に向かって、燃焼器ライナ8とトランジションピース9との接続部まで、延在したものである。
【0060】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、このような構成により、圧縮空気2が肉厚部23に沿って流れる際に生じる下流側剥離渦22bの滞留領域を小さくして、下流側剥離渦22bの再付着によって対流伝熱による冷却を促進する効果を十分に発揮させることができる。したがって、本実施例によるガスタービン燃焼器では、燃焼器ライナの冷却の促進と圧力損失の増大の抑制とを、効果的に両立することができる。さらに、肉厚部23により、燃焼器ライナ8の座屈強度を向上させ、ガスタービン燃焼器の構造強度を増加させることができる。
【0061】
なお、肉厚部23は、実施例4で示した環状突起部20cと同様に、圧縮空気2の流れ方向において下流側の、燃焼器ライナ8の外壁との接続部が、滑らかな曲線状で、燃焼器ライナ8の外壁と滑らかに接続されてもよい。このような構成にすると、燃焼器ライナの冷却の促進と圧力損失の増大の抑制とを、さらに効果的に両立することができる。
【実施例6】
【0062】
図8は、本発明の実施例6によるガスタービン燃焼器のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示す図であり、ガスタービン燃焼器の中心軸と平行な断面図である。以下では、実施例1によるガスタービン燃焼器と異なる点を説明する。
【0063】
本実施例では、ガスタービン燃焼器において、内径変化部10cとフロースリーブ10の内壁とがなす角度α(劣角の角度)の好ましい角度について説明する。角度αは、以下で説明するように、7度以上が好ましい。
【0064】
環状突起部20により生じた下流側剥離渦22bは、圧縮空気2の流れ方向の代表的な長さが、環状突起部20の高さの約6〜8倍である。下流側剥離渦22bの圧縮空気2の流れ方向の長さが、環状突起部20の高さの8倍であるとすると、環状突起部20と下流側剥離渦22bの再付着点Cとの距離は、環状突起部20の高さの8倍であるので、環状突起部20の先端部の位置Eと再付着点Cとを結んだ直線のライナ8の外壁に対する角度γ(劣角の角度)は、arctan(1/8)、すなわち約7度である。
【0065】
したがって、角度αが角度γ以上、すなわち7度以上であると、内径変化部10cにより、圧縮空気2の、下流側剥離渦22bの外側の流れの向きをライナ8に向かう方向に効果的に曲げることができ、下流側剥離渦22bの、圧縮空気2の流れ方向の長さを効果的に短縮することができる。この結果、下流側剥離渦22bの滞留領域を小さくして、下流側剥離渦22bの再付着によって対流伝熱による冷却を促進する効果を向上することができる。
【0066】
また、下流側剥離渦22bの圧縮空気2の流れ方向の長さが、環状突起部20の高さの6倍であるとすると、角度γは、arctan(1/6)、すなわち約9度である。このため、角度αを9度以上としても、上記の効果が得られる。
【0067】
なお、内径変化部10cとフロースリーブ10の内壁とがなす角度αを大きくするほど、下流側剥離渦22bの、圧縮空気2の流れ方向の長さを短縮する効果は大きくなるが、内径変化部10cによる圧力損失が大きくなる。このため、角度αは、ガスタービン燃焼器に応じて、燃焼器ライナの冷却と圧力損失の増大の抑制とを両立できるような角度に調節するのが望ましい。
【実施例7】
【0068】
図9は、本発明の実施例7によるガスタービン燃焼器のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示す図であり、ガスタービン燃焼器の中心軸と平行な断面図である。以下では、実施例1によるガスタービン燃焼器と異なる点を説明する。
【0069】
本実施例では、ガスタービン燃焼器において、フロースリーブ10の内径変化部10cと内径縮小部10bとの接続位置Bの好ましい位置について説明する。
【0070】
接続位置Bは、圧縮空気2の流れ方向において、下流側剥離渦22bの再付着点Cと同じ位置か再付着点Cよりも下流側の位置であるのが好ましい。環状突起部20の圧縮空気2の流れ方向の下流側において、環状突起部20とライナ8の外壁との接続位置を接続位置Fとし、環状突起部20の先端部の位置Eと下流側剥離渦22bの再付着点Cとを結んだ直線のライナ8の外壁に対する角度(劣角の角度)をγとし、環状突起部20の高さ(突出長さ)をhとすると、位置Fと再付着点Cとの距離は、h/tan(γ)で表される。したがって、接続位置Bは、圧縮空気2の流れ方向において、接続位置Fからh/tan(γ)以上の距離だけ下流側に位置するのが好ましい。すなわち、接続位置Bは、圧縮空気2の流れ方向において、環状突起部20の下流側とライナ8の外壁との接続位置Fからh/tan(γ)以上の距離だけ下流側に位置するのが好ましい。
【0071】
なお、下流側剥離渦22bの再付着点Cの位置は、例えば、次のような方法にしたがって求めることができる。ライナ8の外壁の熱伝達率は、下流側剥離渦22bが存在する部分よりも、下流側剥離渦22bが存在しない部分の方が大きい。すなわち、ライナ8の外壁面の温度は、再付着点Cの位置で急激に変化する。そこで、熱電対等の温度計測装置を用いてライナ8の外壁面の温度を計測し、この温度が急激に下がる位置(または、この温度が極小となる位置)を求め、求めた位置を再付着点Cの位置とする。また、再付着点Cの位置は、レイノルズ数を実機に合わせて可視化試験を行い、粒子画像流速測定法(PIV、particle image velocimetry)等で流速ベクトルを可視化することで、求めることもできる。
【0072】
接続位置Bを上記のような位置に配置すると、内径変化部10cにより、圧縮空気2の、下流側剥離渦22bの外側の流れの向きをライナ8に向かう方向に効果的に曲げることができ、下流側剥離渦22bの、圧縮空気2の流れ方向の長さを効果的に短縮することができる。この結果、下流側剥離渦22bの滞留領域を小さくして、下流側剥離渦22bの再付着によって対流伝熱による冷却を促進する効果を向上することができる。
【0073】
なお、接続位置Bを、圧縮空気2の流れ方向において、環状突起部20から離し過ぎると、内径変化部10cにより下流側剥離渦22bの圧縮空気2の流れ方向の長さを短縮する効果が弱められる。そこで、フロースリーブ10と内径変化部10cとの接続位置Aと、実施例6で示した角度αの好ましい値とを考慮して、接続位置Bを定めるのが望ましい。
【実施例8】
【0074】
図10は、本発明の実施例8によるガスタービン燃焼器のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示す図であり、ガスタービン燃焼器の中心軸と平行な断面図である。以下では、実施例1によるガスタービン燃焼器と異なる点を説明する。
【0075】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、燃焼器ライナ8は、環状突起部20の圧縮空気2の流れ方向の下流側に、複数の乱流促進体30を備える。乱流促進体30は、燃焼器ライナ8の外壁に設けられ、フロースリーブ10に向かって突出するリブである。乱流促進体30の高さ(突出長さ)は、環状突起部20の高さよりも小さく、環状流路11の幅(燃焼器ライナ8とフロースリーブ10との距離)の1/20〜1/50である。乱流促進体30の互いの間隔は、乱流促進体30の高さの10倍前後が最適である。また、乱流促進体30を機械加工などで形成し燃焼器ライナ8と一体構造とすれば、フィン効果による伝熱が促進され、ライナ8の冷却に寄与する。
【0076】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、圧縮空気2の流れ方向において、環状突起部20によって生じる下流側剥離渦22bの再付着点Cより下流側では、下流側剥離渦22bの再付着により破壊された境界層が再発達する前に、乱流促進体30により渦の剥離と再付着を繰り返すことで、対流伝熱による燃焼器ライナ8の冷却を促進することができる。また、乱流促進体30が燃焼器ライナ8と一体構造であれば、下流側剥離渦22bが存在する領域でも、乱流促進体30によるフィン効果で伝熱面積が増大し、燃焼器ライナ8の冷却を促進できる。
【実施例9】
【0077】
図11Aと
図11Bを用いて、本発明の実施例9によるガスタービン燃焼器を説明する。
図11Aと
図11Bは、本発明の実施例9によるガスタービン燃焼器のうち、燃焼器ライナ8とフロースリーブ10で構成された環状流路11の一部を模式的に示す図である。
図11Aは、ガスタービン燃焼器の中心軸と平行な断面図である。
図11Bは、ガスタービン燃焼器の中心軸と直交する断面図であり、圧縮空気2の流れ方向の上流側から内径変化部10cと環状突起部20を見た図である。以下では、実施例1によるガスタービン燃焼器と異なる点を説明する。
【0078】
本実施例によるガスタービン燃焼器では、フロースリーブ10は、圧縮空気2の流れ方向において、内径変化部10cと環状突起部20よりも上流側に、複数の縦渦発生器40を備える。縦渦発生器40は、フロースリーブ10の内壁に設けられ、燃焼器ライナ8に向かって突出し、例えばフロースリーブ10の内壁の表面に溶接又はスポット溶接にて固定される。縦渦発生器40により、圧縮空気2の流れ方向に回転の中心軸を持つ縦渦41が発生する。
【0079】
図11Bに示すように、複数の縦渦発生器40は、隣り合う縦渦発生器40と対になっており、一対の縦渦発生器40(40a、40b)は、互いに近づくように燃焼器ライナ8に向かって突出する。すなわち、一対の縦渦発生器40(40a、40b)は、発生する縦渦41の回転方向が互いに逆向きとなるような角度を持たせて、フロースリーブ10に設置される。
【0080】
このように対にした縦渦発生器40をフロースリーブ10に設置し、発生した隣り合う縦渦41の回転方向が互いに逆向きであると、隣り合う縦渦41同士が互いに作用しあうため、効率よく縦渦41を形成して保持することができる。このため、少ない圧力損失で十分な冷却を行なうことが可能であり、製品信頼性を向上させつつ圧力損失の増大を抑制することができる。
【0081】
縦渦発生器40により生成した縦渦41は、燃焼器ライナ8に設置された環状突起部20による環状流路11の縮減のために渦の半径が縮小して渦度が強化されつつ、内径変化部10cによって進行方向が燃焼器ライナ8に向かうように曲げられる。これにより、燃焼器ライナ8の壁面に近い領域で環状流路11内を撹拌し、圧力損失の上昇を抑えつつ、燃焼器ライナ8の壁面の伝熱を促進することができる。また、環状突起部20によって生じる下流側剥離渦22bの、圧縮空気2の流れ方向の長さを効果的に短縮し、下流側剥離渦22bの再付着によって対流伝熱による冷却を促進する効果を増大することができる。
【0082】
なお、縦渦発生器40の高さ(突出長さ)を、縦渦41が燃焼器ライナ8の外壁に達する程度に大きくすることにより、環状流路11の全体を撹拌する効果と、燃焼器ライナ8側の温度境界層を撹拌する効果とを得ることができ、燃焼器ライナ8の外壁面の伝熱をさらに促進することができるので、より効果的に燃焼器ライナ8の冷却を促進できる。