(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267095
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】防爆用安全保持器の積層トランス用のクリップ
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20180115BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20180115BHJP
H01F 27/26 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H01F30/10 T
H01F41/04 B
H01F30/10 D
H01F27/26 Q
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-214989(P2014-214989)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-82181(P2016-82181A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】594066350
【氏名又は名称】株式会社大同工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】大桐 春一
(72)【発明者】
【氏名】大桐 邦夫
【審査官】
岩間 直純
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−055048(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/094841(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/069403(WO,A1)
【文献】
特開平11−111536(JP,A)
【文献】
実開昭63−012817(JP,U)
【文献】
特開平05−159936(JP,A)
【文献】
特開平11−150032(JP,A)
【文献】
米国特許第05724016(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 41/04
H01F 27/26
H01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルパターンを形成したコイル基板を複数枚積層して成る積層基板(1)を一対のコア部材(2)で挟み込み、前記一対のコア部材(2)を更に両端部外側からそれぞれ挟み込んで積層基板(1)及び一対のコア部材(2)を挟持固定するようにした防爆用安全保持器の積層トランス用のクリップ(3)であって、前記クリップ(3)は、弾性を有する帯状の金属板を曲げることにより形成されており、一対のコア部材(2)の側面に配置されると共に、前記コア部材(2)の側面から外方へ膨らむように略くの字状に曲げられたバネ部(3a)と、該バネ部(3a)の両端に連設されて一対のコア部材(2)の両端部外面に形成した凹部(2d)底面にそれぞれ弾性的に係止される一対の係止部(3b)とを備え、前記バネ部(3a)の中間部に、一対の係止部(3b)間の最短距離(L1)を直径とする円の曲率よりも小さい曲率の円弧部を形成し、該円弧部と前記一対の係止部(3b)とを真っ直ぐに伸びる直伸部で連結すると共に前記円弧部を挟む前記直伸部間の曲げ角度を140°〜145°に設定し、更に、前記一対の係止部(3b)をバネ部(3a)の両端にコア部材側へ向くようにそれぞれ略直角状に連設すると共に前記一対の係止部(3b)の先端部をコア部材(2)から離反する方向へ折り曲げたことを特徴とする防爆用安全保持器の積層トランス用のクリップ。
【請求項2】
前記一対の係止部(3b)が前記バネ部(3a)の両端に80°〜90°の角度で連設されていることを特徴とする請求項1に記載の防爆用安全保持器の積層トランス用のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器や電子装置に使用される積層トランスに用いるクリップの改良に係り、特に、クリップの形状を変えることによって弾性力を強くし、積層基板及び一対のコア部材を強固に挟持固定できると共に、一対のコア部材への装着を簡単且つ容易に行えるようにした
防爆用安全保持器の積層トランス用のクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や電子装置の小型化・薄型化に伴い、電子機器や電子装置のプリント配線基板に実装される電子部品も小型化・薄型化が進んでいる。
【0003】
前記電子部品の中でも、電子機器のスイッチング電源等の回路部に使用されるトランスは、使用される部品の中では比較的大型の部品であり、電源部の小型化・薄型化を達成するため、ボビンに巻線を巻き回して構成したトランスに替えて、薄型の積層トランスに置き換わる傾向にある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
前記積層トランスは、複数のコイルパターンを形成したコイル基板を複数枚積層して成る積層基板と、積層基板を上下方向から挟み込む一対のコア部材と、一対のコア部材を更にその外側から挟み込んで積層基板及び一対のコア部材を挟持固定するクリップとから構成されている。
【0005】
ところで、従来の前記クリップ10は、
図8に示す如く、弾性を有する帯状の金属板をコ字状に折り曲げることにより形成されており、両端の折り曲げ部10aを一対のコア部材11の外面にそれぞれ係止させ、両端の折り曲げ部10aで一対のコア部材11を挟み込むことによって、積層基板12及び一対のコア部材11を挟持固定するようになっている。
尚、前記コ字状のクリップとしては、例えば、特開平05-055048号公報(特許文献3)に記載されたものが知られている。
【0006】
しかし、前記クリップ10は、両端部をほぼ直角状に折り曲げているだけであるため、クリップ10全体としての弾性力が比較的弱く、積層トランスに振動等の力が加わると、コア部材11から簡単に外れてしまうと言う問題があった。
【0007】
また、前記クリップ10は、その両端の折り曲げ部10aで一対のコア部材11を挟む際、両端の折り曲げ部10aを指で外方へ押し広げ、この状態で一対のコア部材11を挟み込まなければならず、コア部材11への装着を簡単且つ容易に行えないと言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−162327号公報
【特許文献2】特開平10−189355号公報
【特許文献3】特開平05−055048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、弾性力を強くして積層基板及び一対のコア部材を強固に挟持固定できると共に、一対のコア部材への装着を簡単且つ容易に行えるようにした
防爆用安全保持器の積層トランス用のクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1の発明は、コイルパターンを形成したコイル基板を複数枚積層して成る積層基板を一対のコア部材で挟み込み、前記一対のコア部材を更に
両端部外側から
それぞれ挟み込んで積層基板及び一対のコア部材を挟持固定するようにした
防爆用安全保持器の積層トランス用のクリップであって、前記クリップは、弾性を有する帯状の金属板を曲げることにより形成されており、一対のコア部材の側面に配置されると共に、前記コア部材の側面から外方へ膨らむように略くの字状に曲げられたバネ部と、該バネ部の両端に連設されて一対のコア部材の
両端部外面に形成した凹部底面にそれぞれ弾性的に係止される一対の係止部とを備え
、前記バネ部の中間部に、一対の係止部間の最短距離を直径とする円の曲率よりも小さい曲率の円弧部を形成し、該円弧部と前記一対の係止部とを真っ直ぐに伸びる直伸部で連結すると共に前記円弧部を挟む前記直伸部間の曲げ角度を140°〜145°に設定し、更に、前記一対の係止部をバネ部の両端にコア部材側へ向くようにそれぞれ略直角状に連設すると共に前記一対の係止部の先端部をコア部材から離反する方向へ折り曲げたことことに特徴がある。
【0011】
本発明の第2の発明は、前記第1の発明に於いて、
前記一対の係止部が前記バネ部の両端に80°〜90°の角度で連設されていることに特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクリップは、一対のコア部材の側面に配置されると共に、前記コア部材の側面から外側へ膨らむ略くの字状に曲げられたバネ部と、バネ部の両端に連設されて一対のコア部材の外面にそれぞれ弾性的に係止される一対の係止部とを備えているため、クリップを一対のコア部材に装着したときに、略くの字状に形成したバネ部が弾性変形すると共に、一対の係止部もバネ部に対して弾性変形することになり、クリップ全体としての弾性力が従来のコ字状のクリップに比較して強められ、積層基板及び一対のコア部材を強固に挟持固定することができる。
【0016】
本発明のクリップは、くの字状に形成したバネ部に円弧部を形成し、該円弧部と係止部とを真っ直ぐに伸びる直伸部で連結しているため、クリップを一対のコア部材に装着しても、クリップのバネ部がコア部材の側方へ大きく突出するのを防止することができる。
特に、本発明のクリップは、円弧部を挟む直伸部間の曲げ角度を140°〜145°と大きくしているため、クリップのバネ部がコア部材の側方へ大きく突出するのを確実且つ良好に防止することができる。
【0017】
本発明のクリップは、一対の係止部をバネ部の両端にコア部材側へ向くようにそれぞれ略直角状に連設すると共に前記一対の係止部の先端部をコア部材から離反する方向へ折り曲げているため、一対の係止部間に一対のコア部材の端部を押し込むだけで一対の係止部を一対のコア部材の外面にそれぞれ係止させることができ、一対のコア部材への装着を簡単且つ容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るクリップを用いた積層トランスの拡大平面図である。
【
図4】積層トランスの積層基板を示し、(A)は積層基板の拡大平面図、(B)は積層基板の拡大側面図である。
【
図5】積層トランスのコア部材を示し、(A)は一対のコア部材を対向させた状態の拡大正面図、(B)はコア部材の拡大平面図、(C)は(A)のIII−III矢視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るクリップを示し、(A)はクリップの拡大正面図、(B)はクリップの拡大左側面図、(C)はクリップの拡大右側面図、(D)はクリップの拡大平面図である。
【
図7】積層トランスの組み立て状態を示す説明図であり、(A)は積層基板を一対のコア部材で挟み込んだ状態の拡大断面図、(B)は積層基板及び一対のコア部材を一対のクリップ3で挟持固定した状態の拡大断面図である。
【
図8】従来のクリップを用いた積層トランスの拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜
図7は本発明の実施形態に係るクリップを用いた積層トランスを示し、当該積層トランスは、電子機器や電子装置、例えば、防爆用の安全保持器(バリア)のプリント配線基板に実装されており、複数のコイルパターンを形成したコイル基板を複数枚積層して成る積層基板1と、積層基板1を上下方向から挟み込む一対のコア部材2と、一対のコア部材2を更にその外側から挟み込んで積層基板1及び一対のコア部材2を挟持固定するクリップ3とから構成されている。
【0021】
前記積層基板1は、
図4に示す如く、片面又は両面に複数のコイルパターンを形成したコイル基板を複数枚積層すると共に、コイル基板間に絶縁層を形成したものであり、積層基板1の両端部には、複数の端子4が設けられていると共に、積層基板1の中央部には、円形の開口1aが形成されている。
【0022】
前記一対のコア部材2は、
図5に示す如く、何れもフェライト等の磁性材により同じ大きさ及び同じ形状に形成されており、積層基板1に対して直交姿勢で配置される基部2aと、基部2aの中央部内側面に突出形成されて積層基板1の開口1aに挿入される中央脚部2bと、基部2aの両端部内側面に突出形成されて積層基板1の側面に対向する一対の外側脚部2cとをそれぞれ備えている。
【0023】
また、各コア部材2の基部2aの両端部外面には、後述するクリップ3が弾性的に係止される凹部2dがそれぞれ形成されている。この凹部2d底面には、係止されたクリップ3が簡単に外れないようにコア部材2の幅方向に沿う突条部2eが形成されている。
【0024】
前記クリップ3は、
図6に示す如く、弾性を有する帯状の金属板を曲げ加工することにより形成されており、一対のコア部材2の側面に配置されると共に、一対のコア部材2の側面から外側へ膨らむように略くの字状に曲げられたバネ部3aと、バネ部3aの両端に連設され、一対のコア部材2の外面に形成した凹部2dにそれぞれ挿入されて弾性的に係止される一対の係止部3bとを備えている。
【0025】
また、クリップ3のバネ部3aの中間部には、円弧部が形成されており、該円弧部と前記一対の係止部3bとは、真っ直ぐに伸びる直伸部で連結されている。この円弧部の曲率は、一対の係止部3b間の最短距離L1を直径とする円の曲率よりも小さく設定されていると共に、バネ部3aが広がる方向へ変形したとき大きな弾性力が得られるように設定されている。また、円弧部を挟む直伸部間の曲げ角度は、140°〜145°に設定されていると共に、直伸部と係止部3bとの角度は、80°〜90°に設定されている。
【0026】
更に、一対の係止部3bは、バネ部3aの両端に円弧部の中心側へ向くようにそれぞれ直角状に連設されており、その先端部は外方へ折り曲げられている。この一対の係止部3b間の最短距離L1は、
図7に示す如く、一対のコア部材2を対向状に組み合わせたときに凹部2d間の距離L2よりも短くなるように設定されている。
【0027】
尚、この実施形態においては、クリップ3は、展開時の長さが12.4mm、幅が3mm、厚みが0.3mmのバネ用ステンレス鋼板(SUS304)を折り曲げることにより形成されており、バネ部3aの折り曲げ角度は142°に、バネ部3aの内面側の曲率半径は4mmに、バネ部3aに対する係止部3bの折り曲げ角度は85°に、係止部3bと係止部3b先端との折り曲げ角度は120°にそれぞれ設定されている。
【0028】
而して、前記積層トランスを組み立てるには、先ず、一対のコア部材2の各中央脚部2bを積層基板1の両面から円形の開口1aにそれぞれ挿入し、一対のコア部材2で積層基板1を挟み込む(
図7(A)参照)。
【0029】
次に、一対のコア部材2の一端部にクリップ3を対向させ、クリップ3の一対の係止部3bを各コア部材2の凹部2dにそれぞれ押し込んで行く。そうすると、クリップ3の一対の係止部3bは、弾性変形しつつ凹部2dの突条部2e表面を摺動し、突条部2eを乗り越えた時点で凹部2d底面に係止され、積層基板1及び一対のコア部材2の一端部を挟持固定する(
図7(B)参照)。
【0030】
その後、一対のコア部材2の他端部に別のクリップ3を対向させ、クリップ3の一対の係止部3bを各コア部材2の凹部2dに押し込んで行き、一対の係止部3bを凹部2dにそれぞれ係止させ、積層基板1及び一対のコア部材2の他端部を挟持固定する(
図7(B)参照)。
【0031】
積層基板1及び一対のコア部材2をクリップ3で挟持固定したら、積層基板1と一対のコア部材2とを絶縁性の接着剤5で固着し、その後クリップ3を外す。
尚、クリップ3は、一対のコア部材2に装着したままでも良い。また、接着剤5は、積層基板1と一対のコア部材2の組み立て後に塗布しても良く、或いは、組み立て前に積層基板1と一対のコア部材2に塗布しておいても良い。
【0032】
このようにして、積層トランスは、一対のクリップ3を用いて組み立てられる(
図1参照)。
【0033】
前記各クリップ3は、一対の係止部3bの先端部を外方へ折り曲げているため、一対の係止部3bをコア部材2の凹部2dに押し込んで行くだけで、各係止部3bを一対のコア部材2の凹部2dにそれぞれ係止させることができ、一対のコア部材2への装着を簡単且つ容易に行える。
【0034】
また、一対のコア部材2の両端部へ装着された各クリップ3は、くの字状に形成したバネ部3aが弾性変形していると共に、一対の係止部3bもバネ部3aに対して弾性変形しているため、クリップ3全体としての弾性力が従来のコ字状のクリップ10に比較して強くなり、積層基板1及び一対のコア部材2を強固に挟持固定することができる。
【0035】
また、各クリップ3は、くの字状に形成したバネ部に円弧部を形成し、該円弧部と係止部3bとを真っ直ぐに伸びる直伸部で連結しているため、クリップ3を一対のコア部材2に装着しても、クリップ3のバネ部3aがコア部材2の側方へ大きく突出するのを防止することができる。
特に、各クリップ3は、円弧部を挟む直伸部間の曲げ角度を140°〜145°と大きくしているため、クリップ3のバネ部3aがコア部材2の側方へ大きく突出するのを確実且つ良好に防止することができる。
【0036】
上記の実施形態においては、一対のコア部材2の両端部を一対のクリップ3で挟持固定するようにしたが、他の実施形態においては、一対のコア部材2を一つのクリップ3で挟持固定するようにしても良い。
【0037】
尚、本発明は、上記の実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1は積層基板
1aは円形の開口
2はコア部材
2aは基部
2bは中央脚部
2cは外側脚部
2dは凹部
2eは突条部
3はクリップ
3aはバネ部
3bは係止部
4は端子
5は接着剤
L1は係止部間の最短距離
L2はコア部材の凹部間の距離