特許第6267102号(P6267102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267102
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20180115BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01L29/78 652N
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 652P
   H01L29/78 658F
   H01L29/06 301G
   H01L29/06 301V
   H01L29/06 301M
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-249818(P2014-249818)
(22)【出願日】2014年12月10日
(65)【公開番号】特開2016-111287(P2016-111287A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 順
(72)【発明者】
【氏名】小野木 淳士
(72)【発明者】
【氏名】青井 佐智子
(72)【発明者】
【氏名】宮原 真一朗
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−138137(JP,A)
【文献】 特開2005−217202(JP,A)
【文献】 特開2010−161395(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0038121(US,A1)
【文献】 特開2014−56912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/06
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成された被覆絶縁膜とを備え、
前記半導体基板は、第1部分と、前記第1部分より厚みが薄い第2部分とを備え、前記第1部分と前記第2部分が隣り合う部分に段差部が形成されており、
前記段差部の側面と前記第2部分の上面との間の角部に角部材が形成されており、
前記角部材の上面が、前記段差部の側面より前記第2部分側に向かうにしたがって下方に下がっており、
前記被覆絶縁膜が、前記第1部分から前記第2部分に亘って延びており、前記角部材を覆っており、
前記半導体基板と前記角部材の間に形成された分離絶縁膜を更に備え、
前記角部材が導電性を有しており、
前記角部に近接した範囲の前記分離絶縁膜の厚みが、前記角部から離反した範囲の前記分離絶縁膜の厚みより厚い、半導体装置。
【請求項2】
前記角部材の前記上面が、前記第1部分の上面より下方に位置している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記角部材の前記上面が、上方に凸に湾曲している、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、前記段差部の側面に露出する第1導電型の第1領域と、前記第2部
分の上面に露出する第1導電型の第2領域と、前記第1領域と前記第2領域の間に形成された第2導電型の第3領域とを備え、
前記角部材は、前記分離絶縁膜を介して、少なくとも前記第1領域および前記第2領域の双方に対向している、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1部分にはトレンチが形成されており、
前記トレンチの内部にゲート電極が配置されており、
前記角部材と前記ゲート電極が同じ材料により形成されている、請求項1からのいずれかの一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1部分と、前記第1部分より厚みが薄い第2部分と、前記第1部分と前記第2部分が隣り合う部分に形成されている段差部とを備えている半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成された被覆絶縁膜とを備えている半導体装置の製造方法であり、
前記半導体基板の上面に分離絶縁膜を形成する工程と、
前記段差部の側面と前記第2部分の上面との間の角部に、上面が前記段差部の側面より前記第2部分側に向かうにしたがって下方に下がる角部材を形成する工程と、
前記半導体基板の前記第1部分から前記第2部分に亘って延びる被覆絶縁膜を形成し、前記被覆絶縁膜によって前記角部材を覆う工程とを備え
前記角部材を形成する工程では、前記分離絶縁膜の上に導電性を有する角部材を形成し、
前記分離絶縁膜を形成する工程が、
前記半導体基板の上面に分離絶縁膜材料を堆積する工程と、
前記角部に近接した範囲の前記分離絶縁膜の厚みが、前記角部から離反した範囲の前記分離絶縁膜の厚みより厚くなるように前記分離絶縁膜材料をエッチングする工程とを備える半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記角部材を形成する工程が、
前記半導体基板の上に角部材材料を堆積する工程と、
堆積した前記角部材材料をエッチングする工程とを備え、
前記角部材材料をエッチングする工程で、前記角部に前記角部材材料を残存させることによって前記角部材が形成される、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
第1部分にトレンチが形成されている半導体装置の製造方法であり、
前記分離絶縁膜を形成する工程が、前記半導体基板の上面に分離絶縁膜材料を堆積する工程と、堆積した前記分離絶縁膜材料をエッチングする工程とを備え、
前記角部材を形成する工程が、前記分離絶縁膜の上面に角部材材料を堆積する工程と、堆積した前記角部材材料をエッチングする工程とを備え、
前記分離絶縁膜材料を堆積する工程で、前記トレンチの内面に前記分離絶縁膜材料が堆積し、
前記分離絶縁膜材料をエッチングする工程で、前記トレンチの内面に前記分離絶縁膜材料が残存することによりゲート絶縁膜が形成され、
前記角部材材料を堆積する工程で、前記トレンチの内部に前記角部材材料が堆積し、
前記角部材材料をエッチングする工程で、前記トレンチの内部に前記角部材材料が残存することによりゲート電極が形成される、請求項6または7に記載の半導体装置の製
造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、半導体装置が開示されている。特許文献1の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板の上に形成された被覆絶縁膜を備えている。半導体基板は、第1部分と、第1部分より厚みが薄い第2部分を備えており、第1部分と第2部分は隣り合っている。被覆絶縁膜は、第1部分から第2部分にわたって延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−009502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の半導体装置では、被覆絶縁膜にボイドが発生することがあった。例えば、半導体装置に電流が流れたときに半導体基板が発熱し、半導体基板の上の被覆絶縁膜の温度が高くなり、被覆絶縁膜が高温になることによりボイドが発生することがあった。また、半導体装置の作動中だけでなく、半導体基板の上に被覆絶縁膜を形成するときに、被覆絶縁膜の内部に応力が生じてひび割れが発生することがあった。特に、厚みが異なる第1部分と第2部分が隣り合う部分では、周囲の部分に比べて、半導体基板の上の被覆絶縁膜にボイドやひび割れが発生しやすくなっていた。そのため、ボイドやひび割れにより被覆絶縁膜の耐圧が低下するという問題があった。そこで本明細書は、被覆絶縁膜の耐圧低下を抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する半導体装置は、半導体素子が形成された半導体基板と、半導体基板の上に形成された被覆絶縁膜とを備えている。半導体基板は、第1部分と、第1部分より厚みが薄い第2部分とを備えている。第1部分と第2部分が隣り合う部分に段差部が形成されている。段差部の側面と第2部分の上面の間の角部に角部材が形成されている。角部材の上面は、段差部の側面より第2部分側に向かうにしたがって下方に下がってゆく。被覆絶縁膜は、第1部分から第2部分にわたって延びており、角部材を覆っている。
【0006】
この半導体装置では、角部材の存在により、角部材を覆う被覆絶縁膜の曲がりが緩やかになっている。このような構成によれば、半導体基板が発熱することで被覆絶縁膜の温度が高くなっても、角部における被覆絶縁膜にボイドが発生することを抑制できる。また、被覆絶縁膜の曲りが緩やかなので、角部における被覆絶縁膜の内部に発生する応力を低減することができ、被覆絶縁膜にひび割れが発生することを抑制できる。よって、被覆絶縁膜にボイドやひび割れが発生することを抑制でき、被覆絶縁膜の耐圧低下を抑制できる。
【0007】
本明細書に開示する半導体装置の製造方法は、第1部分と、第1部分より厚みが薄い第2部分とを備え、第1部分と第2部分が隣り合う部分に段差部が形成されている半導体基板の段差部の側面と第2部分の上面の間の角部に角部材を形成する工程であって、角部材の上面が段差部の側面より第2部分側に向かうにしたがって下方に下がってゆくように角部材を形成する工程を備えている。半導体基板の上に第1部分から第2部分にわたって延びる被覆絶縁膜を形成し、被覆絶縁膜により角部材を覆う工程を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】半導体装置の上面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3図2の要部IIIの拡大図である。
図4】半導体装置の製造方法を説明する図である(1)。
図5】半導体装置の製造方法を説明する図である(2)。
図6】半導体装置の製造方法を説明する図である(3)。
図7】半導体装置の製造方法を説明する図である(4)。
図8】半導体装置の製造方法を説明する図である(5)。
図9】半導体装置の製造方法を説明する図である(6)。
図10】半導体装置の製造方法を説明する図である(7)。
図11】半導体装置の製造方法を説明する図である(7)。
図12】他の実施例に係る半導体装置の要部の拡大図である。
図13】他の実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図14】更に他の実施例に係る半導体装置の要部の拡大図である。
図15】更に他の実施例に係る半導体装置の要部の拡大図である。
図16】更に他の実施例に係る半導体装置の要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施例)
以下、実施例について添付図面を参照して説明する。図1に示すように、第1実施例に係る半導体装置1は、矩形状の半導体基板2を備えている。半導体基板2は、炭化ケイ素(SiC)により形成されている。他の例では、半導体基板2は、シリコン(Si)や窒化ガリウム(GaN)等により形成されていてもよい。半導体基板2の内部には、半導体素子が形成されている。
【0010】
半導体基板2には、素子領域3および周辺領域4が形成されている。素子領域3は、周辺領域4より内側に形成されている。素子領域3には、半導体素子が形成されている。本実施例では、素子領域3に縦型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が形成されている。周辺領域4は、素子領域3より外側に形成されている。周辺領域4には、耐圧構造が形成されている。図1では、図の見易さを考慮して、素子領域3内にトレンチ70のみを示し、周辺領域4内にフィールドリミティングリング80のみを示している。
【0011】
図2に示すように、半導体装置1は、半導体基板2、表面電極6および裏面電極7を備えている。また、半導体装置1は、分離絶縁膜32、角部材50および被覆絶縁膜31を備えている。
【0012】
半導体基板2は、第1部分10および第2部分20を備えている。第1部分10に素子領域3が形成されている。第2部分20に周辺領域4が形成されている。第1部分10の厚みは、第2部分20の厚みより厚い(第2部分20の厚みは、第1部分10の厚みより薄い。)。第1部分10と第2部分20は、隣り合って形成されている。第1部分10と第2部分20が隣り合う部分に段差部90が形成されている。
【0013】
段差部90は、第1部分10と第2部分20の厚みの違いにより形成されている。第1部分10の上面11の位置が第2部分20の上面21の位置より上にあり、両者の上面の位置の違いにより段差部90が形成されている。段差部90は、第1部分10の上面11の一部、第1部分10の側面12、および、第2部分20の上面21の一部を含んでいる。以下では、第1部分10の側面12を、段差部90の側面92という場合がある。段差部90の側面92と第2部分20の上面21の間には、角部40が形成されている。
【0014】
半導体基板2の第1部分10には複数のトレンチ70が形成されている。また、第1部分10には、ソース領域61、ベース領域62、ドリフト領域65、ドレイン領域63、および、フローティング領域67が形成されている。
【0015】
トレンチ70は、第1部分10の上面11に形成された凹部である。トレンチ70は、半導体基板2の深さ方向(z方向)に延びている。トレンチ70は、第1部分10の上面11からソース領域61およびベース領域62を貫通してドリフト領域65に達する深さまで延びている。
【0016】
トレンチ70の内面にはゲート絶縁膜71が形成されている。トレンチ70の内部にはゲート電極72が配置されている。ゲート絶縁膜71は、トレンチ70の内面に酸化膜が堆積することにより形成されている。ゲート絶縁膜71としては、例えばシリコン酸化膜(SiO2)を用いることができる。ゲート電極72は、ゲート絶縁膜71より内側に充填されている。ゲート電極72は、ゲート絶縁膜71により、半導体基板2から絶縁されている。ゲート電極72は、例えばアルミニウムやポリシリコンから形成されている。ゲート電極72の上には層間絶縁膜73が配置されている。
【0017】
ソース領域61は、n型の領域である。ソース領域61は、不純物濃度が高い。ソース領域61は、半導体基板2の表層部に形成されている。ソース領域61は、第1部分10の上面11に露出する範囲に島状に形成されている。ソース領域61は、ゲート絶縁膜71に接している。ソース領域61は、表面電極6に接している。ソース領域61は、表面電極6に対してオーミック接続され、表面電極6に導通している。
【0018】
ベース領域62は、p型の領域である。ベース領域62は、ソース領域61の周囲に形成されている。ベース領域62は、ソース領域61の横および下に形成されている。ベース領域62は、ゲート絶縁膜71に接している。また、ベース領域62は、段差部90の側面92に露出する範囲に形成されている。ベース領域62は、ベースコンタクト領域121および低濃度ベース領域122を備えている。ベースコンタクト領域121は、不純物濃度が高い。低濃度ベース領域122の不純物濃度は、ベースコンタクト領域121の不純物濃度より低い。
【0019】
ベースコンタクト領域121は、半導体基板2の表層部に形成されている。ベースコンタクト領域121は、第1部分10の上面11に露出する範囲に島状に形成されている。ベースコンタクト領域121は、表面電極6に接している。ベースコンタクト領域121は、表面電極6に対してオーミック接続され、表面電極6に導通している。
【0020】
低濃度ベース領域122は、ソース領域61およびベースコンタクト領域121の下に形成されている。低濃度ベース領域122によってソース領域61がドリフト領域65から分離されている。
【0021】
ドリフト領域65は、n型の領域である。ドリフト領域65は、不純物濃度が低い。ドリフト領域65は、ベース領域62の下に形成されている。ドリフト領域65は、ゲート絶縁膜71に接している。
【0022】
ドレイン領域63は、n型の領域である。ドレイン領域63は、不純物濃度が高い。ドレイン領域63は、ドリフト領域65の下に形成されている。ドレイン領域63は、半導体基板2の裏面に露出する範囲に形成されている。ドレイン領域63は、裏面電極7に接している。ドレイン領域63は、裏面電極7に対してオーミック接続され、裏面電極7に導通している。
【0023】
フローティング領域67は、p型の領域である。フローティング領域67は、トレンチ70の底部の周囲に形成されている。フローティング領域67は、トレンチ70の底部に接している。フローティング領域67の周囲には、ドリフト領域65が形成されている。フローティング領域67は、ドリフト領域65に囲まれている。フローティング領域67は、ドリフト領域65によってベース領域62から分離されている。複数のフローティング領域67は、ドリフト領域65によって互いに分離されている。
【0024】
半導体基板2の第2部分20には、複数のフィールドリミティングリング80、および、周辺ドリフト領域82が形成されている。
【0025】
複数のフィールドリミティングリング80(以下、「フィールドリミティングリング」を「FLR」(Field Limiting Ring)と称する。)は、間隔をあけて形成されている。FLR80は、p型の領域である。FLR80は、不純物濃度が高い。FLR80は、第2部分20の上面21に露出する範囲に形成されている。
【0026】
複数のFLR80のうち、第1部分10に最も近いFLR80を符号「80a」で示し、それ以外のFLR80を符号「80b」で示す。第1部分10に最も近いFLR80aは、角部40の下に形成されている。FLR80aとベース領域62の間にはドリフト領域65が形成されている。FLR80aは、ドリフト領域65によりベース領域62から分離されている。
【0027】
周辺ドリフト領域82は、FLR80の周囲に形成されている。周辺ドリフト領域82は、複数のFLR80の間とその下方に形成されており、複数のFLR80を分離している。
【0028】
表面電極6は、半導体基板2の第1部分10の上面11に形成されている。表面電極6は、層間絶縁膜73によりゲート電極72から絶縁されている。裏面電極7は、半導体基板2の第1部分10および第2部分20の裏面に形成されている。表面電極6および裏面電極7は、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属から形成されている。
【0029】
分離絶縁膜32は、角部40において、段差部90の側面92と第2部分20の上面21を覆っている。分離絶縁膜32は、角部材50と半導体基板2の間に形成されており、角部材50を半導体基板2から分離している。分離絶縁膜32としては、シリコン酸化膜(SiO2)を用いることができる。分離絶縁膜32は、ゲート絶縁膜71と同じ材料により形成されている。分離絶縁膜32は、酸化膜を堆積させることにより形成できる。
【0030】
角部材50は、分離絶縁膜32の上に形成されている。角部材50は、角部40に配置されている。角部材50は、導電性を有している。角部材50の材料としては、例えばポリシリコンを用いることができる。角部材50は、ゲート電極72と同じ材料により形成されている。他の例では、角部材50は金属により形成されていてもよい。
【0031】
角部材50は、上面51を備えている。本実施例では、角部材50の上面51は凸状の湾曲面として形成されている。角部材50の上面51は、段差部90側から第2部分20側に向かって下方に傾斜している。よって、角部材50の上面51は、段差部90の側面92より第2部分20側に向かうにしたがって連続的に下方に下がってゆく。角部材50の高さは、第1部分10の上面11と第2部分20の上面21の高さの差(段差)より低い。角部材50の上面51は、第1部分10の上面11よりも下方に位置している。湾曲した上面51は、被覆絶縁膜31に覆われている。
【0032】
角部材50は、分離絶縁膜32を介して段差部90の側面92に対向している。すなわち、角部材50は、分離絶縁膜32を介してベース領域62に対向している。また、角部材50は、分離絶縁膜32を介して第2部分20の上面21に対向している。角部材50は、分離絶縁膜32を介して第1部分10に最も近いFLR80aに対向している。
【0033】
被覆絶縁膜31は、第2部分20の上面21を覆っている。また、被覆絶縁膜31の一部は、近傍の第1部分10の上面11を覆っている。すなわち、被覆絶縁膜31は、半導体基板2の第1部分10から第2部分20に亘って延びている。被覆絶縁膜31は、段差部90の側面92を覆っている。また、被覆絶縁膜31は、角部材50の湾曲した上面51を覆っている。被覆絶縁膜31と分離絶縁膜32により角部材50の全体が覆われている。被覆絶縁膜31の厚みは、分離絶縁膜32の厚みより厚い。被覆絶縁膜31としては、シリコン酸化膜(SiO2)を用いることができる。被覆絶縁膜31は、酸化膜を堆積させることにより形成できる。
【0034】
上記の構成を備える半導体装置1を使用するときは、表面電極6と裏面電極7の間に裏面電極7がプラスとなる電圧を印加する。また、ゲート電極72にオン電位(チャネルが形成されるのに必要な電位以上の電位)を印加する。ゲート電極72にオン電位を印加すると、ゲート絶縁膜71に接する範囲の低濃度ベース領域122にチャネルが形成される。これにより、MOSFETがオンになる。そうすると、電子が、表面電極6から、ソース領域61、低濃度ベース領域122に形成されたチャネル、ドリフト領域65、及び、ドレイン領域63を介して、裏面電極7に流れる。また、ホールが、裏面電極7から、ドレイン領域63、ドリフト領域65、低濃度ベース領域122、及び、ベースコンタクト領域121を介して、表面電極6に流れる。よって、裏面電極7から表面電極6に電流が流れる。
【0035】
半導体装置1に電流が流れると、半導体基板2が発熱し、半導体基板2の上に形成された分離絶縁膜32および被覆絶縁膜31が高温になる。上記の半導体装置1によれば、半導体基板2の段差部90の側面92と第2部分20の上面21の間に角部40が形成されており、角部40に配置された角部材50を被覆絶縁膜31が覆っている。これにより、被覆絶縁膜31が角部40に直接接触する場合に比べて、被覆絶縁膜31の曲りが緩やかになっている。特に、半導体装置1では、角部材50が凸状に湾曲した上面51を有しているので、角部材50を覆う被覆絶縁膜31の曲がりがより緩やかである。このように被覆絶縁膜31の曲りが緩やかだと、角部40近傍の被覆絶縁膜31が高温になっても、その被覆絶縁膜中に気泡が成長しにくい。したがって、角部40において被覆絶縁膜31にボイドが発生することを抑制できる。また、角部40における被覆絶縁膜31の曲がりが緩やかなので、半導体基板2の発熱時に被覆絶縁膜31の内部に発生する応力が緩和される。これにより、被覆絶縁膜31にひび割れが発生することを抑制できる。よって、被覆絶縁膜31の耐圧低下を抑制できる。なお、分離絶縁膜32は急峻に屈曲しているが、その厚みが薄いことから過大応力が発生することがない。
【0036】
また、上記の半導体装置1では、導電性の角部材50が分離絶縁膜32を介してベース領域62およびFLR80にそれぞれ対向している。MOSFETをオフさせると、角部材50がベース領域62とFLR80の中間の電位になり、角部40における電界が緩和される。その結果、角部40における分離絶縁膜32の耐圧を高めることができる。また、上記の半導体装置1では、角部材50とゲート電極72が同じ材料により形成されている。このため、後に詳述するように、角部材50とゲート電極72を併せて形成できる。
【0037】
次に、上記の構成を備える半導体装置1の製造方法について説明する。半導体装置1は、ドリフト領域65及び周辺ドリフト領域82と略同じn型不純物を有するn型の半導体基板2から製造される。まず、図4に示すように半導体基板2を加工する。すなわち、半導体基板2が厚い第1部分10と薄い第2部分20を有するように加工する。また、半導体基板2に、トレンチ70、ソース領域61、ベース領域62、フローティング領域67、FLR80を形成する。これらの加工は、公知の技術を用いることができるので、詳細な説明を省略する。
【0038】
次に、図5に示すように、半導体基板2の上面に分離絶縁膜材料301を堆積させる工程を行う。半導体基板2は、上記のように、第1部分10と、第1部分10より厚みが薄い第2部分20とを備え、第1部分10と第2部分20が隣り合う部分に段差部90が形成されている。分離絶縁膜材料301は、半導体基板2の第1部分10の上面11および第2部分20の上面21に堆積する。また、分離絶縁膜材料301は、段差部90の側面92にも堆積する。また、分離絶縁膜材料301は、段差部90の側面92と第2部分20の上面21の間の角部40にも堆積する。また、分離絶縁膜材料301は、トレンチ70の内面にも堆積する。分離絶縁膜材料301としては、例えばSiO2を用いることができる。
【0039】
次に、図6に示すように、半導体基板2の上面に堆積した分離絶縁膜材料301をエッチングする工程を行う。分離絶縁膜材料301をエッチングするときは、半導体基板2の上面に分離絶縁膜材料301の一部が残存するようにエッチングする。また、トレンチ70の内面に分離絶縁膜材料301の一部が残存するようにエッチングする。トレンチ70の内面に残存した分離絶縁膜材料301によりゲート絶縁膜71が形成される。
【0040】
次に、図7に示すように、分離絶縁膜材料301の上面に角部材材料302を堆積させる工程を行う。角部材材料302は、半導体基板2の第1部分10および第2部分20において、分離絶縁膜材料301の上に堆積する。角部材材料302は、段差部90の側面92と第2部分20の上面21の間の角部40にも堆積する。また、角部材材料302は、トレンチ70の内部にも堆積する。角部材材料302は、ゲート絶縁膜71の表面に堆積する。このようにして、半導体基板2の上に角部材材料302を堆積させる。角部材材料302としては、ポリシリコンを用いることができる。
【0041】
次に、図8に示すように、角部材材料302をエッチングする工程を行う。角部材材料302をエッチングするときは、角部40に角部材材料302の一部が残存するようにエッチングする。また、トレンチ70の内部に角部材材料302の一部が残存するようにエッチングする。角部40に角部材材料302が残存することにより、角部40に角部材50が形成される。また、トレンチ70の内部に角部材材料302が残存することにより、トレンチ70の内部にゲート電極72が形成される。このようにして、角部材50およびゲート電極72を形成する。角部材50は、その上面51が段差部90の側面92より第2部分20側に向かうにしたがって下方に下がってゆくように形成される。また、角部材50と半導体基板2の間の分離絶縁膜材料301が、分離絶縁膜32となる。
【0042】
次に、図9に示すように、分離絶縁膜材料301および角部材50の上に被覆絶縁膜材料303を堆積させる工程を行う。被覆絶縁膜材料303は、角部材50を覆う。被覆絶縁膜材料303としては、例えばSiO2を用いることができる。被覆絶縁膜材料303と分離絶縁膜材料301が接触している箇所では、これらの2つの絶縁膜材料が一体化する。このように一体化した絶縁膜材料によって、被覆絶縁膜31が形成される。被覆絶縁膜31は、第1部分10から第2部分20にわたって延び、角部材50を覆う。
【0043】
次に、図10に示すように、被覆絶縁膜31の不要な部分をエッチングする工程を行う。エッチングにより、ゲート電極72の上に形成された被覆絶縁膜31が除去され、ゲート電極72の上面が露出する。また、第1部分10の一部の上に形成された被覆絶縁膜31および分離絶縁膜32が除去され、第1部分10の上面の一部が露出する。
【0044】
次に、図11に示すように、露出したゲート電極72の上に層間絶縁膜73を形成する。また、露出した第1部分10の上面に表面電極6を形成する。次に、半導体基板2の裏面側にドレイン領域63を形成する。また、半導体基板2の裏面に裏面電極7を形成する。このようにして、図1に示す半導体装置1が製造される。
【0045】
上記の製造方法によれば、角部40に角部材50が形成されるので、被覆絶縁膜31を形成するときに、被覆絶縁膜31が角部材50を覆い、角部40における被覆絶縁膜31の曲がりが緩やかになる。これにより、被覆絶縁膜31の内部に発生する応力を低減することができ、被覆絶縁膜31にひび割れが発生することを抑制できる。また、分離絶縁膜32を形成する工程を利用して、ゲート絶縁膜71を形成することができる。また、角部材50を形成する工程を利用して、ゲート電極72を形成することができる。
【0046】
(対応関係)
上記の実施例では、ベース領域62が、「第1領域」の一例であり、第1部分10に最も近いフィールドリミティングリング80aが、「第2領域」の一例であり、ドリフト領域65が、「第3領域」の一例である。
【0047】
以上、一実施例について説明したが、具体的な態様は上記実施例に限定されるものではない。以下の説明において、上述の説明における構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
(第2実施例)
第2実施例では、図12に示すように、角部40に近接する範囲Aにおける分離絶縁膜32の厚みが、角部40から離反した範囲Bにおける分離絶縁膜32の厚みより厚い。この場合、角部材50は、角部40側に、凹状の湾曲面54を備えている。湾曲面54は、角部40における分離絶縁膜32を覆っている。この半導体装置1を製造するときは、図13に示すように、分離絶縁膜材料301をエッチングするときに、角部40に近接する範囲Aに残存する分離絶縁膜材料301が角部40から離反した範囲Bに残存する分離絶縁膜材料301より多くなるようにエッチングする。例えば、エッチングレートを調整することにより、分離絶縁膜材料301が角部40に多く残存する結果を得ることができる。通常のエッチング手法によると、分離絶縁膜材料301をエッチングしたときに、自然に角部40に近接する範囲Aに分離絶縁膜材料301が多く残存する結果となる。
【0049】
第2実施例に係る半導体装置1によれば、角部40における分離絶縁膜32の厚みが厚いので、角部40における分離絶縁膜32の耐圧を高めることができる。
【0050】
(第3実施例)
第3実施例では、図14に示すように、角部材50の上面51が、階段状に形成されている。角部材50の上面51には、複数の段差がある。これにより、角部材50の上面51は、段差部90の側面92より第2部分20側に向かうにしたがって段階的に下方に下がってゆく。
【0051】
(第4実施例)
第4実施例では、図15に示すように、角部材50の上面51が、斜面として形成されている。これにより、角部材50の上面51は、段差部90の側面92より第2部分20側に向かうにしたがって連続的に下方に下がってゆく。
【0052】
(第5実施例)
第5実施例では、図16に示すように、角部材50が延在部55を備えていてもよい。延在部55は、段差部90の側面92および上面11に沿って延びている。延在部55を備えることにより、角部材50の上面51の一部が、第1部分10の上面11よりも上方に位置していている。したがって、角部材50の上面51には、段差部90の側面92より第2部分20側に向かうにしたがって段階的に下方に下がってゆく部分と、連続的に下方に下がってゆく部分がある。延在部55は、被覆絶縁膜31に覆われている。延在部55は、分離絶縁膜32を介して、第1部分10に形成されたベース領域62に対向している。延在部55は、は表面電極6に接続されていてもよい(図示省略)。
【0053】
また、上記の実施例では、周辺領域4に形成された耐圧構造は、複数のFLR80が形成されたFLR構造であったが、この構成に限定されるものではない。他の実施例では、耐圧構造がRESURF構造であってもよい。
【0054】
また、上記の実施例では、角部材50が導電性を有していたが、この構成に限定されるものではない。他の実施例では、角部材50が絶縁性の材料から形成されていてもよい。
【0055】
また、上記の実施例では、半導体素子の一例としてMOSFETについて説明したが、この構成に限定されるものではない。他の実施形態では、半導体素子がIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0056】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0057】
以下に本明細書が開示する技術要素の一例について説明する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものである。
【0058】
半導体装置において、角部材の上面が、第1部分の上面より下方に位置していることが好ましい。また、角部材の上面が、上方に凸状に湾曲していることが好ましい。
【0059】
半導体基板と角部材の間に形成された分離絶縁膜を更に備えていてもよい。角部材が導電性を有していてもよい。
【0060】
角部に近接する範囲における分離絶縁膜の厚みが、角部から離間した範囲における分離絶縁膜の厚みより厚くてもよい。
【0061】
半導体基板は、段差部の側面に露出する第1導電型の第1領域と、第2部分の上面に露出する第1導電型の第2領域と、第1領域と第2領域の間に形成された第2導電型の第3領域と、を備えていてもよい。角部材は、分離絶縁膜を介して、少なくとも第1領域および第2領域の双方に対向していてもよい。
【0062】
第1部分にはトレンチが形成されていてもよい。トレンチの内部にゲート電極が配置されていてもよい。角部材とゲート電極が同じ材料により形成されていることが好ましい。
【0063】
半導体装置の製造方法において、角部材を形成する工程が、半導体基板の上に角部材材料を堆積する工程と、堆積した角部材材料をエッチングする工程とを備えていてもよい。角部材材料をエッチングする工程において、角部に角部材材料を残存させることによって角部材が形成されてもよい。
【0064】
角部材を形成する工程より前に、半導体基板の上面に分離絶縁膜を形成する工程を備えていてもよい。角部材を形成する工程では、分離絶縁膜の上に導電性を有する角部材を形成してもよい。
【0065】
分離絶縁膜を形成する工程が、半導体基板の上面に分離絶縁膜材料を堆積する工程を備えていてもよい。また、分離絶縁膜を形成する工程は、角部近接した範囲の分離絶縁膜の厚みが、角部から離反した範囲の分離絶縁膜の厚みより厚くなるように分離絶縁膜材料をエッチングする工程を備えていてもよい。
【0066】
第1部分にトレンチが形成されていてもよい。また、分離絶縁膜を形成する工程が、半導体基板の上面に分離絶縁膜材料を堆積する工程と、堆積した分離絶縁膜材料をエッチングする工程とを備えていてもよい。また、角部材を形成する工程が、分離絶縁膜の上面に角部材材料を堆積する工程と、堆積した角部材材料をエッチングする工程とを備えていてもよい。分離絶縁膜材料を堆積する工程で、トレンチの内面に分離絶縁膜材料が堆積し、分離絶縁膜材料をエッチングする工程で、トレンチの内面に分離絶縁膜材料が残存することによりゲート絶縁膜が形成されてもよい。また、角部材材料を堆積する工程で、トレンチの内部に角部材材料が堆積し、角部材材料をエッチングする工程で、トレンチの内部に角部材材料が残存することによりゲート電極が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 :半導体装置
2 :半導体基板
3 :素子領域
4 :周辺領域
6 :表面電極
7 :裏面電極
10 :第1部分
20 :第2部分
31 :被覆絶縁膜
32 :分離絶縁膜
40 :角部
50 :角部材
51 :上面
54 :湾曲面
55 :延在部
61 :ソース領域
62 :ベース領域
63 :ドレイン領域
65 :ドリフト領域
67 :フローティング領域
70 :トレンチ
71 :ゲート絶縁膜
72 :ゲート電極
73 :層間絶縁膜
80 :フィールドリミティングリング
82 :周辺ドリフト領域
90 :段差部
121 :ベースコンタクト領域
122 :低濃度ベース領域
301 :分離絶縁膜材料
302 :角部材材料
303 :被覆絶縁膜材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16