【実施例】
【0011】
図1、2に示す実施例のSBD10は、半導体基板12を有している。なお、
図2では、p型領域を斜線ハッチングにより示している。半導体基板12は、SiCにより構成されている。半導体基板12の上面12aには、アノード電極14と絶縁膜30が形成されている。
図2の点線14は、アノード電極14が形成されている範囲(すなわち、半導体基板12とアノード電極14が接触しているコンタクト面15)を示している。アノード電極14は、半導体基板12の上面12aの中央部に形成されている。上面12aのアノード電極14に覆わていない領域(すなわち、点線14の外側の領域:以下、周辺領域13という)は、絶縁膜30によって覆われている。半導体基板12の下面12bには、カソード電極16が形成されている。
【0012】
半導体基板12の内部には、ストライプ状p型コンタクト領域20と、環状p型コンタクト領域22a〜22eと、FLR24と、ドリフト領域26と、カソード領域28が形成されている。なお、以下の説明では、環状p型コンタクト領域22a〜22eをまとめて環状p型コンタクト領域22という場合がある。
【0013】
ストライプ状p型コンタクト領域20と、環状p型コンタクト領域22と、FLR24は、半導体基板12の上面12aに露出する範囲に形成されている。
図2に示すように、ストライプ状p型コンタクト領域20と環状p型コンタクト領域22は、半導体基板12の上面12aのうちのコンタクト面15内に形成されている。ストライプ状p型コンタクト領域20と環状p型コンタクト領域22は、アノード電極14にショットキー接触している。FLR24は、半導体基板12の上面12aのうちのコンタクト面15の外側に形成されている。すなわち、FLR24は、周辺領域13内に形成されている。FLR24の上面は絶縁膜30に覆われている。
図1に示すように、ストライプ状p型コンタクト領域20と、環状p型コンタクト領域22と、FLR24は、半導体基板12の上面12a近傍の表層部にのみ形成されている。
【0014】
図2に示すように、各環状p型コンタクト領域22は、コンタクト面15内を環状に伸びている。各環状p型コンタクト領域22は、角を円弧状に面取りした四角形の形状を有している。各環状p型コンタクト領域22は、直線状に伸びる直線部と、円弧状に伸びるコーナー部を有している。環状p型コンタクト領域22a〜22eは、外周側から内周側に向かって間隔を開けて配置されている。すなわち、環状p型コンタクト領域22eの内周部に環状p型コンタクト領域22dが配置されており、環状p型コンタクト領域22dの内周部に環状p型コンタクト領域22cが配置されており、環状p型コンタクト領域22cの内周部に環状p型コンタクト領域22bが配置されており、環状p型コンタクト領域22bの内周部に環状p型コンタクト領域22aが配置されている。最も外周側の環状p型コンタクト領域22eは、他の環状p型コンタクト領域22eよりも広い幅を有している。環状p型コンタクト領域22eは、その幅の中央よりも内周側の部分がコンタクト面15内に位置しており、その幅の中央よりも外周側の部分がコンタクト面15の外側にはみ出している。環状p型コンタクト領域22a〜22dは、これらの全体がコンタクト面15内に位置している。
【0015】
図3に示すように、環状p型コンタクト領域22a〜22eのコーナー部は、同心の円弧形状を有している。より詳細には、コーナー部の境界線(すなわち、p型領域とn型領域の境界線)のそれぞれが、同心の円弧形状を有している。このため、環状p型コンタクト領域22a〜22eのコーナー部の半径は、外周側のコーナー部ほど大きく、内周側のコーナー部ほど小さい。このような構造のため、環状p型コンタクト領域22a〜22eは、直線部からコーナー部にかけて略一定の幅を有している。また、
図3に示すように、最も内周側の環状p型コンタクト領域22aと最も外周側の環状p型コンタクト領域22eの間の間隔Lrは、最も内周側のコーナー部の半径Rminよりも大きい。
【0016】
図1、2に示すように、ストライプ状p型コンタクト領域20は、最も内周側の環状p型コンタクト領域22aの内周部に形成されている。ストライプ状p型コンタクト領域20の各々は、互いに平行に直線状に伸びている。ストライプ状p型コンタクト領域20は、その両端部において環状p型コンタクト領域22aに接続されている。
【0017】
FLR24は、p型の半導体領域である。FLR24のそれぞれは、周辺領域13に形成されており、アノード電極14の周囲を囲むように環状に伸びている。FLR24は、外周側から内周側に向かって間隔を開けて配置されている。FLR24は、角を円弧状に面取りした四角形の形状を有している。FLR24は、直線状に伸びる直線部と、円弧状に伸びるコーナー部を有している。
図3に示すように、各FLR24のコーナー部は、環状p型コンタクト領域22のコーナー部と同心の円弧形状を有している。このような構造のため、FLR24は、直線部からコーナー部にかけて略一定の幅を有している。
【0018】
図1、2に示すように、SBD10は、5つの環状p型コンタクト領域22a〜22eと、3つのFLR24を有している。すなわち、環状p型コンタクト領域22の数が、FLR24の数よりも多い。
【0019】
ドリフト領域26は、n型の半導体領域である。ドリフト領域26のn型不純物濃度は低く、本実施例では、9.5×10
15atoms/cm
3以下である。ドリフト領域26は、ストライプ状p型コンタクト領域20と、環状p型コンタクト領域22と、FLR24の下側に形成されている。また、ドリフト領域26は、ストライプ状p型コンタクト領域20と、環状p型コンタクト領域22が形成されていない位置において、半導体基板12の上面12a(すなわち、コンタクト面15)まで伸びており、アノード電極14にショットキー接触している。また、周辺領域13では、ドリフト領域26は、FLR24が形成されていない位置において、半導体基板12の上面12aまで伸びている。上述したようにストライプ状p型コンタクト領域20と最も内周側の環状p型コンタクト領域22は接続されている。これらの接続部を除いて、p型領域20、22及び24のそれぞれの間の領域にはドリフト領域26が形成されている。ドリフト領域26によって環状p型コンタクト領域22及びFLR24が互いから分離されている。
【0020】
カソード領域28は、n型の半導体領域である。カソード領域28は、ドリフト領域26のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有している。本実施例では、カソード領域28のn型不純物濃度は、3.0×10
18atoms/cm
3以上である。また、カソード領域28の抵抗率は、15〜25mΩ・cmである。カソード領域28は、ドリフト領域26の下側に形成されている。カソード領域28は、半導体基板12の下面12bに露出する範囲に形成されている。カソード領域28は、カソード電極16に対してオーミック接触している。カソード領域28は、ドリフト領域26によって、ストライプ状p型コンタクト領域20、環状p型コンタクト領域22及びFLR24から分離されている。各p型領域20、22、24とカソード領域28の間には、半導体基板12の厚み方向に間隔Wが設けられている。
【0021】
次に、SBD10の動作について説明する。SBD10に順電圧(すなわち、アノード電極14がカソード電極16よりも高電位となる電圧)を印加すると、アノード電極14とドリフト領域26との間のショットキー界面を通って、ドリフト領域26からアノード電極14に電子が流れる。すなわち、電子が、カソード電極16から、カソード領域28、ドリフト領域26を経由してアノード電極14へ流れる。これによって、SBD10がオンする。また、SBD10では、p型領域20、22には電流は流れない。すなわち、SBD10は、JBSDである。
【0022】
その後、SBD10に逆電圧を印加すると、電子の流れが停止し、SBD10がオフする。また、SBD10がオフするときには、p型領域20、22からその周囲のドリフト領域26に空乏層が広がる。
【0023】
逆電圧が印加されると、コンタクト面15に露出するドリフト領域26は、その両側のp型領域20、22から広がる空乏層によってピンチオフされる。これによって、アノード電極14とドリフト領域26の間のショットキー界面に高い電圧が印加されることが防止される。なお、
図4は、最も内周側の環状p型コンタクト領域22aからその外周部に空乏層が伸びる過程における空乏層の形状を点線38により示している。上記の通り、環状p型コンタクト領域22aには、複数のストライプ状p型コンタクト領域20が接続されている。このため、環状p型コンタクト領域22aのうちのストライプ状p型コンタクト領域20が接続されている接続部40の近傍では、p型領域の比率が高いので、その外周部のドリフト領域26に空乏層が伸びやすい。他方、接続部以外の部分42(以下、非接続部42という)の近傍では、p型領域の比率が低いので、その外周部のドリフト領域26に空乏層が伸び難い。その結果、接続部40近傍では非接続部42近傍よりも空乏層の幅が広くなる。すなわち、空乏層の端部が、凹凸状となる。しかしながら、このように空乏層の端部が凹凸状となっても、環状p型コンタクト領域22aと環状p型コンタクト領域22bの間のドリフト領域26は、環状p型コンタクト領域22aから伸びる空乏層と環状p型コンタクト領域22bから伸びる空乏層によって短時間でピンチオフされる。したがって、凹凸状の空乏層の影響はほとんどなく、環状p型コンタクト領域22aと環状p型コンタクト領域22bの間のドリフト領域26で高い電界が生じることが抑制される。
【0024】
また、上述したように、環状p型コンタクト領域22a〜22eのコーナー部の半径が内周側ほど小さくなっているため、各コーナー部が略一定の幅を有している。このため、各コーナー部の近傍でも、各コーナー部から略均等に空乏層が広がる。このため、各コーナー部の近傍で高い電界が生じることが抑制される。
【0025】
また、周辺領域13では、最も外周側の環状p型コンタクト領域22eからその外周部に空乏層が広がる。空乏層は、複数のFLR24を経由してさらに外周側に広がる。これによって、周辺領域13が空乏化される。このように、周辺領域13では、内周側から外周側に向かって空乏層が伸展していく。仮に、環状p型コンタクト領域22eからその外周部に伸びる空乏層が凹凸状であると、空乏層が凹凸状の端部形状をある程度維持したまま周辺領域13内に広がってゆく。このため、周辺領域13内で局所的に高い電界が発生するおそれがある。しかしながら、本実施例では、最も外周側の環状p型コンタクト領域22eには、他のp型領域が接続されていない。すなわち、環状p型コンタクト領域22eには、環状p型コンタクト領域22aとは異なり、接続部40が形成されていない。したがって、環状p型コンタクト領域22eからその外周部に伸びる空乏層の端部は、凹凸状となっておらず、平坦な形状となっている。このため、周辺領域13でも、高い電界が発生することが防止される。
【0026】
また、最も内周側の環状p型コンタクト領域22aから伸びる空乏層の凹凸が、周辺領域13の電界分布に影響する場合がある。しかしながら、本実施例のSBD10では、環状p型コンタクト領域22aと環状p型コンタクト領域22eの間の間隔Lrが、最も内周側のコーナー部の半径Rminよりも大きい。このように、十分に広い間隔Lrが確保されており、これによって、環状p型コンタクト領域22aから伸びる凹凸状の空乏層が周辺領域13に及ぼす影響が抑制されている。また、実施例のSBD10では、環状p型コンタクト領域22の数がFLR24の数よりも多い。すなわち、環状p型コンタクト領域22aと環状p型コンタクト領域22eの間に多くの環状p型コンタクト領域22b〜22dが形成されている。これによっても、環状p型コンタクト領域22aから伸びる凹凸状の空乏層が周辺領域13に及ぼす影響が抑制されている。したがって、SBD10では、周辺領域13でより電界集中がより生じ難くなっている。
【0027】
以上に説明したように空乏層が広がることで、
図1の点線50に示す範囲内でドリフト領域26が空乏化される。このようにドリフト領域26が空乏化されることによって、SBD10の高い耐圧が実現される。
【0028】
なお、空乏層がカソード領域28(すなわち、n型不純物濃度が高い領域)に到達すると、空乏層の下方向への広がりが停止する。したがって、
図1の間隔Wは、空乏層が最も広く伸展した場合の厚み方向における空乏層の幅である。上述したように、最も外周側の環状p型コンタクト領域22eのコーナー部の半径Rmaxは、間隔Wよりも広い。このように半径Rmaxを大きくすることで、このコーナー部近傍での電界集中をさらに抑制することができる。
【0029】
なお、SBD10を製造する際には、ストライプ状p型コンタクト領域20、環状p型コンタクト領域22、及び、FLR24を一度のp型不純物注入によって形成することができる。この場合、n型半導体基板の表面に、p型領域20、22、24に対応する形状の開口部を有するマスクを形成する。次に、マスクを介してn型半導体基板にp型不純物を注入する。これによって、ストライプ状p型コンタクト領域20と、複数のリング状のp型領域(すなわち、環状p型コンタクト領域22とFLR24)が形成される。次に、ストライプ状p型コンタクト領域20と、リング状のp型領域のうちの内周側の複数個に接触し、リング状のp型領域のうちの外周側の複数個に接触しないように、アノード電極14を形成する。これによって、アノード電極14を、その下部のp型領域とn型領域に対してショットキー接触させる。アノード電極14とショットキー接触したリング状のp型領域は、環状p型コンタクト領域22である。また、アノード電極14と接触しなかったリング状のp型領域は、FLRである。このように、一度のp型不純物の注入によりストライプ状p型コンタクト領域20、環状p型コンタクト領域22、及び、FLR24を形成することができる。
【0030】
なお、上記の実施例では、JBSDについて説明したが、MPSDにおいて同様の構造を採用してもよい。また、上記の実施例では、p型コンタクト領域20、22がアノード電極14にショットキー接触していたが、オーミック接触していてもよい。
【0031】
また、上記の実施例では、最も内周側の環状p型コンタクト領域22aの内周部にストライプ状のp型コンタクト領域20が形成されていた。しかしながら、最も内周側の環状p型コンタクト領域22aの内周部に、
図5に示すように格子状のp型コンタクト領域20が形成されていてもよいし、他の形状のp型コンタクト領域が形成されていてもよい。すなわち、最も内周側の環状p型コンタクト領域22aの内周部に形成されているp型コンタクト領域は、環状p型コンタクト領域22aに接続されている限り、どのような形状であってもよい。
【0032】
上記実施例の構成要素と請求項の構成要素との関係について説明する。実施例のストライプ状p型コンタクト領域20と環状p型コンタクト領域22は、請求項のp型コンタクト領域の一例である。実施例の環状p型コンタクト領域22は、請求項の環状領域の一例である。実施例のストライプ状p型コンタクト領域20は、請求項の内部領域の一例である。実施例の間隔Wは、請求項のp型コンタクト領域と高濃度n型領域の間の間隔の一例である。実施例の半径Rmaxは、請求項の最も外周側のコーナー部の半径の一例である。実施例の間隔Lrは、請求項の最も内周側の前記環状領域と最も外周側の前記環状領域の間の間隔の一例である。実施例の半径Rminは、請求項の最も内周側のコーナー部の半径の一例である。
【0033】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0034】
本明細書が開示する一例の構成では、複数の環状領域のそれぞれが、円弧状に伸びるコーナー部を有している。コーナー部の半径が、内周側のコーナー部ほど小さい。
【0035】
この構成によれば、コーナー部の幅をより均一化することができる。
【0036】
本明細書が開示する一例の構成では、最も内周側の前記環状領域と最も外周側の前記環状領域の間の間隔が、最も内周側の前記コーナー部の半径よりも大きい。
【0037】
本明細書が開示する一例の構成では、半導体基板が、アノード電極の周囲を一巡するように伸びるp型の複数のFLRを有している。環状領域の数が、FLRの数よりも多い。
【0038】
本明細書が開示する一例の構成では、半導体基板が、n型ドリフト領域の下側に形成されており、n型ドリフト領域よりも高いn型不純物濃度を有する高濃度n型領域を有している。p型コンタクト領域が、n型ドリフト領域によって高濃度n型領域から分離されている。最も外周側のコーナー部の半径が、p型コンタクト領域と高濃度n型領域の間の間隔よりも大きい。
【0039】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。