特許第6267130号(P6267130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6267130親水性ポリスチレン製品の製造のための組成物
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  • 特許6267130-親水性ポリスチレン製品の製造のための組成物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267130
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】親水性ポリスチレン製品の製造のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/06 20060101AFI20180115BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20180115BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C08L25/06
   C08L71/02
   C08K5/42
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-550647(P2014-550647)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-511968(P2015-511968A)
(43)【公表日】2015年4月23日
(86)【国際出願番号】EP2012005264
(87)【国際公開番号】WO2013102479
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2015年7月21日
(31)【優先権主張番号】12000068.2
(32)【優先日】2012年1月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】398056207
【氏名又は名称】クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】コルディッツ・ピルコ
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−168138(JP,A)
【文献】 特開2001−349021(JP,A)
【文献】 特開2005−171230(JP,A)
【文献】 特開2008−001550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンの親水性を高めるための成分A、成分Bおよび成分Pを含む組成物Zの使用であり、
ここで成分Aは、アルカリ金属C12−C18−スルホン酸アルキルであり、
成分Bは、ポリエチレングリコールであり、
成分Pは、ポリスチレンおよび/またはそのアロイであり、
組成物Zが、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
5〜12.5質量%の成分Aを含む、
前記使用。
【請求項2】
組成物ZがマスターバッチMBである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
組成物Zが成分AおよびBを合計で0.06〜90質量%で含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
成分Aおよび成分Bを、成分Bに対する成分Aの質量比で0.1〜10.0で含む、請求項1〜3のいずれか一つに記載の使用。
【請求項5】
組成物Zが、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
5〜12.5質量%の成分A、
0.4〜60質量%の成分B、
10〜99.4の質量%の成分Pを含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の使用。
【請求項6】
組成物ZがマスターバッチMBであり、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
5〜12.5質量%の成分A、
2.5〜10.0質量%の成分Bを含む、請求項1〜5のいずれか一つに記載の使用。
【請求項7】
組成物ZがマスターバッチMBであり、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
5〜12.5質量%の成分A、
2.5〜10.0質量%の成分B、
85質量%の成分Pを含む、請求項1〜のいずれか一つに記載の使用。
【請求項8】
成分Pが、スチレンホモポリマー、アルキルスチレンホモポリマーまたはスチレンコポリマーである、請求項1〜のいずれか一つに記載の使用。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一つで定義される組成物Zを含む、固体発泡もしくは非発泡ポリスチレン物品であって、物品が水を含有する食品に接触する、前記物品。
【請求項10】
フィルム、シートまたは容器である、請求項に記載の物品。
【請求項11】
食品トレイである、請求項または10に記載の物品。
【請求項12】
成分Pが、スチレンホモポリマー、アルキルスチレンホモポリマーまたはスチレンコポリマーである、請求項9〜11のいずれか一つに記載の物品。
【請求項13】
成分Pが高衝撃性ポリスチレンである、請求項12に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造される固体の非発泡または発泡ポリスチレンフィルム、シートまたは食品トレイの親水性特性を増加させるための、ジョイント押出におけるポリスチレンとの二つの成分の使用方法に関する。第一成分はスルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルベンゼンまたはスルホン酸オレフィンであり、第二成分はポリエチレングリコールであり、二つの成分は組成物の形態としても使用され、組成物はマスターバッチまたは化合物の形態である。
【背景技術】
【0002】
固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンは、肉、魚またはフルーツなどの食品を包装するためのトレイを製造するのに適した材料として、広く利用されている。トレイ中に包装されているこれらの食品は、通常、水分、汁および血液を放出し、それが包装されたトレイの内側を満たす。衛生的な観点および見た目の観点から、好ましくは適切な吸着特性を有するトレイ材料により、早急にこれらの液体を吸収することが強く求められている。
【0003】
プラスチック工業において、通常は、化合物またはマスターバッチの形態で添加剤が使用されている。本発明の目的の範囲において、マスターバッチは、ポリマーおよび添加剤を含む組成物であり、ここで、添加剤は最終用途における濃度よりもより高い濃度で存在し、キャリアポリマーが最終用途のポリマーであってもなくてもよい。マスターバッチ中の添加剤の好ましい濃度は、マスターバッチの全質量をベースとして、0.1〜90質量%の範囲、特に1〜80質量%、特には10〜75質量%である。
【0004】
本発明の目的の範囲において、化合物は、ポリマーおよび添加剤を含む組成物であり、ここで、添加剤は最終用途もしくは最終物品における所望の最終濃度で存在し、かつ、ポリマーは最終用途もしくは最終物品の所望のポリマーであり、化合物は単に、物理的な成形手段により最終用途もしくは最終物品の所望の形態に提供される。
【0005】
親水性添加剤を含み、親水性組成物または物品の製造に使用されるマスターバッチおよび/または化合物は要求される要件を満たす必要がある:組成物は高いローディング、すなわち高い濃度の親水性添加剤を有する必要があり、かつ、最終物品においてポリマー表面と水の間の接触角を所望の角度にセットできるようにする必要がある。さらなる要件としては、最終用途もしくは最終物品のポリマーとの良好な混和性および相溶性である。さらに、発泡ポリスチレン食品トレイ中の水または肉汁の高い吸収性が求められる。水性溶液に対するポリスチレン表面の吸収特性の測定変数としては、ポリスチレン表面の水との表面角(静的接触角)である。表面角が低いほど、吸収特性が高い。
【0006】
欧州特許第2289994号A2には、ポリスチレン発泡トレイ用の吸収剤マスターバッチチップ組成物が開示されており、ここで、マスターバッチチップは有機アニオン性スルホン酸塩、炭酸カルシウムおよびタルクを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2289994号A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、既知の組成物は現在の工業的需要を満足しておらず、特にその吸収特性は十分ではない。低い静的接触角を提供し、例えば、密度、剛性および引裂強度などの成形性および機械的特性を有するポリマー性材料と依然相溶性を有する親水性添加剤を含有するマスターバッチおよび化合物に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、ポリスチレンおよび親水性添加剤の特定の混合物を含む以下の組成物Zが前記の要求に関して改善された特性を示すことを見出した。
【0010】
本発明の対象は、固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンの親水性を高めるための成分A、成分Bおよび成分Pを含む組成物Zの使用方法であり、
ここで成分Aは、スルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルベンゼンおよび/またはスルホン酸オレフィンであり、
成分Bは、ポリエチレングリコールであり、
成分Pは、ポリスチレンおよび/またはそのアロイである。
【0011】
本発明によれば、ポリスチレンの親水性を高めるが意味するところは、ポリマー表面と水間の低い静的接触角を得るために本発明による特定の添加剤により修飾されたポリスチレン材料を提供することであり、さらに、純粋なポリスチレンを比較して高い水吸収能力を有する添加剤を含有したポリスチレンを提供することである。
【0012】
発明のさらなる対象は、前記にように、固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンの吸収性物品の製造のための組成物Zの使用方法であり、ここで吸収される材料は水性液体である。
【0013】
組成物Zは、好ましくは、上記ように、マスターバッチMBもしくは化合物である。
【0014】
吸収物品としては、フィルム、シートまたは容器であることが好ましく、例えば、食品トレイ、であり、これは、肉、魚、野菜またはフルーツなどの水を含有する食品と接触する。
【0015】
吸収される材料としては、水、血液、もしくは汁が好ましい。
【0016】
本発明のさらなる対象としては、上記の組成物Zを含む固体非発泡もしくは発泡ポリスチレン物品であり、ここで当該物品は、肉、魚、野菜またはフルーツなどの水を含有する食品と接触し、フィルム、シートまたは容器であることが好ましく、例えば、食品トレイである。
【0017】
本発明の目的においては、親水性固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンは、5°〜84°、好ましくは30°〜83°、特に40°〜82°もっとも好ましくは50〜81°の静的接触角により特徴付けられる。
【0018】
本発明のさらなる対象は、上記の成分A、BおよびPの混合物の押出加工、混練、加圧または射出成形による固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンの親水性を高めるための方法である。
【0019】
好ましくは、成分Aは1、2、3または4の、より好ましくは1または2の、さらにより好ましくは1のスルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルベンゼンまたはスルホン酸オレフィンを含む。
【0020】
好ましいスルホン酸アルキルは、アンモニウムまたはアルキル金属スルホン酸アルキル、より好ましくはアルカリ金属C−C22−スルホン酸アルキル、特に、アルカリ金属C10−C18−スルホン酸アルキル、最も好ましくは、アルカリ金属C12−C18−スルホン酸アルキルである。アルカリ金属は、好ましくはリチウム、ナトリウムまたはカリウム、最も好ましくはナトリウムである。アンモニウムは、NHまたはモノ、ジ、トリもしくはテトラアルキル化されたアンモニウムであり、ここで、アルキル基は好ましくはC−C−アルキル基であり、任意に水酸基で置換される。アルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えば直鎖もしくは二級スルホン酸アルキルである。
【0021】
スルホン酸アルキルの例としては、ヘキシルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、エイコシルスルホン酸ナトリウム、ドコシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、エイコシルスルホン酸カリウム、およびドコシルスルホン酸カリウムが挙げられる。
【0022】
好ましいスルホン酸アルキルベンゼンとしては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはカリウムである。
【0023】
好ましいスルホン酸オレフィンとしてはα−スルホン酸オレフィンであり、特に、12〜18の炭素原子を有するものである。
【0024】
好ましくは、成分Bは1、2、3または4の、より好ましくは1または2の、さらにより好ましくは1のポリエチレングリコールである。
【0025】
好ましいポリエチレングリコールとしては、100g/mol〜8,000,000g/mol、好ましくは150g/mol〜1,000,000g/mol、より好ましくは160g/mol〜100,000g/mol、特に180g/mol〜35,000g/mol、より特に200g/mol〜20,000g/molのモル質量分布Mnを有するポリエチレングリコールである。
【0026】
好ましいポリエチレングリコールとしては、pH値が5〜7であるポリエチレングリコールである。
【0027】
好ましいポリエチレングリコールとしては、20℃の粘度(50%水性溶液中)が50〜14,000mPasのポリエチレングリコールであり、20℃の粘度(1%水性溶液中)が4000〜15,000mPasのポリエチレングリコールであり、20℃の粘度(2%水性溶液中)が400〜800mPasのポリエチレングリコールであり、そして、20℃の粘度(5%水性溶液中)が30〜50mPasのポリエチレングリコールである。
【0028】
好ましいポリエチレングリコールとしては、ヒドロキシル価が1〜800mgKOH/g、より好ましくは3〜700mgKOH/g、さらにより好ましくは4〜650mgKOH/g、特に5〜620mgKOH/g、特に30〜610mgKOH/gまたは特に530〜600mgKOH/gのポリエチレングリコールである。
【0029】
好ましいポリエチレングリコールとしては、二つの遊離水酸末端基を有する直鎖ポリエチレングリコールである。
【0030】
好ましくは、成分Pは1、2、3または4の、より好ましくは1または2の、さらにより好ましくは1のポリスチレンである。
【0031】
ポリスチレンとしては、スチレンホモポリマー、アルキルスチレンホモポリマー、好ましくはC−C−アルキルスチレンホモポリマー、例えば、α−メチルスチレンホモポリマー;スチレンコポリマー、特に、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)とすることができる。高衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、一般に、スチレンおよび任意に一か二以上の重合可能なビニルモノマーのグラフト混合物を重合することにより、好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ゴム状スチレン−ジエンコポリマー、アクリルゴム、ニトリルゴムおよびオレフィンゴム、例えば、プロピレンジエンモノマーゴム(PDM)およびプロピレンゴム(PR)から選択されるコポリマーを含有するゴム状ポリマートランクの存在中、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ハロスチレン、ビニルアルキルベンゼン、例えば、ビニルトルエン、ビニルキシレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸の低級アルキルエステルの混合物を重合することにより製造される。高衝撃性ポリスチレン中において、ゴム状ポリマートランクは、通常、グラフトポリマーの総質量に対して、5〜80質量%、好ましくは5〜50質量%で構成する。
【0032】
さらに、スチレン−ブタジエンスチレン(SBS)コポリマーおよび合成ブチルゴム(SBR)を使用することもできる。
【0033】
上記スチレンポリマーの混合物もしくはアロイも使用できる。
【0034】
成分Pの好ましい密度は、1.0〜1.1g/cm3、より好ましくは1.02〜1.06g/cm3、さらにより好ましくは1.03〜1.05g/cm3である。
【0035】
好ましいポリスチレンとしては、ISO1133による200℃/5kgにおけるMFRが0.1〜300g/cm3、より好ましくは1〜200g/cm3、さらにより好ましくは5〜100g/cm3、特に10〜50g/cm3、さらに特に15〜35g/cm3、特に20〜25g/cm3であるポリスチレンである。
【0036】
有利には、組成物Zは、成分Zの総質量をベースとして、成分AおよびBを合計で0.06〜90質量%含み、好ましくはZは、成分AおよびBを合計で0.5〜80質量%含み、より好ましくは、Zは、成分AおよびBを合計で1.0〜70質量%含み、さらにより好ましくは、Zは、成分AおよびBを合計で1.25〜50質量%を含み、特に、Zは、成分AおよびBを合計で1.5〜25質量%を含む。
【0037】
組成物Zは、好ましくは、成分Aおよび成分Bを、成分Bに対する成分Aの質量比で0.1〜10.0、好ましくは0.2〜5.0、より好ましくは0.3〜1.0、さらにより好ましくは0.4〜0.8、特に、0.5〜0.6で含む。
【0038】
組成物Zは、有利には、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
0.2〜30質量%の成分A、
0.4〜60質量%の成分B、
10〜99.4質量%の成分Pを含む。
【0039】
組成物ZがマスターバッチMBである場合、Zは、有利には、各ケースにおいて、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
1.5〜30質量%の成分A、
3〜60質量%の成分B、
10〜95.5質量%の成分P;
を含み、
好ましくは、組成物Zは、マスターバッチMBとして、
3〜25質量%の成分A、
6〜50質量%の成分B、
25〜91質量%の成分P;
を含み、
より好ましくは、組成物Zは、マスターバッチMBとして、
6〜20質量%の成分A、
12〜40質量%の成分B、
40〜82質量%の成分P;
を含み、
さらにより好ましくは、組成物Zは、マスターバッチMBとして、
12〜18.3質量%の成分A、
24〜36.7質量%の成分B、
45〜64質量%の成分P;
を含み、
特に、組成物Zは、マスターバッチMBとして、
15〜16.7質量%の成分A、
30〜33.3質量%の成分B、
50〜55質量%の成分P;
を含む。
【0040】
組成物Zが化合物である場合、Zは、有利には、各ケースにおいて、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
0.0167〜1.47質量%の成分A、
0.0333〜2.93質量%の成分B、
95.6〜99.95質量%の成分P;
好ましくは、組成物Zは、化合物として
0.07〜1質量%の成分A、
0.14〜2質量%の成分B、
97〜99.79質量%の成分P;
を含み、
より好ましくは、組成物Zは化合物ACとして、
0.25〜0.75質量%の成分A、
0.5〜1.5質量%の成分B、
97.75〜99.25質量%の成分P;
を含み、
さらに、より好ましくは、組成物Zは化合物ACとして、
0.3〜0.7質量%の成分A、
0.6〜1.4質量%の成分B、
97.9〜99.1質量%の成分P;
を含み、
特に、組成物Zは化合物として、
0.4〜0.5質量%の成分A、
0.8〜1.0質量%の成分B、
98.5〜98.8質量%の成分P;
を含む。
【0041】
好ましくは、組成物Zはさらなる以下の物質を含むことができる、
−着色剤、着色剤として使用できる有機および無機染料および顔料とともに;有機顔料として、好ましくはアゾもしくはジアゾ顔料、コートされたアゾもしくはジアゾ顔料、または多環式の顔料;好ましい多環式の顔料としては、好ましくは、ジケトピロロピロール、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ジオキセタン、アントラキノン、チオインジゴ、ジアリールもしくはキノフタロン顔料であり;無機顔料としては、好ましくは、酸化金属、混合酸化物、硫酸アルミニウム、クロム酸塩、金属粉末、パール効果顔料(ミカ)、蛍光顔料、酸化チタン、カドニウム−リード顔料、酸化鉄、カーボンブラック、ケイ酸塩、ニッケルチタン、コバルト顔料、または顔料に適した酸化クロムであり;
−分散剤、好ましい分散剤としては、C10−C30アルコールの極性酸エステルである;
−フィラー、例えば、シリカ、ゼオライト、ケイ酸塩、例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、白墨、タルク;
−助剤、好ましくは金属せっけん、発泡剤、核形成剤、過酸化物;
−アルキルアミン、エトキシ化アルキルアミン、グリセリルエステル、またはそれらの混合物8ブレンド);
−UV吸収剤および立体障害アミン光安定剤(HALS)、スリップ剤、かぶり防止剤、抗凝縮剤、および/または懸濁安定剤、難燃剤;高酸化剤、または他の慣用のプラスチック添加剤、イオン液体;
またはこれらの混合物。
【0042】
これらのさらなる物質は、有利には、組成物Zの総質量をベースとして、0〜60質量%、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.1〜30質量%、さらにより好ましくは1〜20質量%、特に2〜10質量%存在する。ポリスチレンが発泡ポリスチレンの場合、好ましいさらなる物質としては、タルクなどの核形成剤および/または化学発泡剤である。
【0043】
組成物Zは、成分A、BおよびP、および任意にさらなる物質のいくつかをお互いに物理的に混合することにより製造することができる。成分の混合は1つのステップまたは複数のステップで行うことができる。物理的混合のための混合装置としては、プラスチック工業における慣用の混合層値を使用することができ、好ましくは、押出機、ニーダー、加圧機、射出成形機およびブレンドミキサーから成る群から選択される装置である。組成物ZがマスターバッチMBである場合、混合装置は、好ましくは押出機、ニーダーおよび/またはブレンドミキサーである。組成物Zが組成物である場合、混合装置は、好ましくは、押出機、加圧機および射出成形機、特に好ましくは押出機である。
【0044】
混合は、連続的に若しくはバッチ式で行い、好ましくは押出または混練、特に好ましくは押出によるマスターバッチMBの場合、特に好ましくは連続的であり、そして、好ましくは押出または射出成形または加圧、特に好ましくは押出による化合物の場合特に好ましくはバッチ式で行う。
【0045】
混合は、好ましくは、80〜260℃、より好ましくは120〜250℃、さらにより好ましくは150〜230℃、180〜220℃の温度で行われる。混合時間は好ましくは5秒〜10時間である。連続的混合の場合、混合時間は、好ましくは5秒〜1時間、より好ましくは10秒〜15分である。
【0046】
バッチ式混合の場合、混合時間は、好ましくは1分〜10時間、より好ましくは2分〜8時間、特に2分〜5時間、特に2分〜1時間、特に好ましくは2〜15分である。
【0047】
化合物の場合、成分A、BおよびPは好ましくは、マスターバッチMBの形態でポリスチレンPと共に混合される。さらに物理的混合のために、ペレット化されたポリスチレンとのマスターバッチMBの前混合が使用されることが好ましい。
【0048】
組成物Zは、マスターバッチMBの形態および化合物の形態の両方において、驚くべきことに、低い静的接触角により特徴付けられる。
【0049】
食品トレイなどの発泡ポリスチレン物品の製造のためには、好ましくはタルクなどの核形成剤おまたは化学発泡剤の存在下、発泡剤とともにポリスチレンが押出される。発泡剤としては物理的発泡剤、例えば、気体状態のCO、N、イソペンタン、ヒドロフルオロカーボン、または、プロセス中に融解されたポリマー中で文化しCOまたはN、などの気体を放出する化学的発泡剤であってもよい。両方のプロセスにおいて、押出機のバレル中の圧力下において気体は完全にポリマー溶融物中に分散若しくは溶解している必要がある。溶融物がダイを通して押出機から出るときにおいて、圧力が落ちて、そして気体が溶融物を拡張し、ポリマー中に気泡構造が形成される。いわゆる直接ガス化押出により製造された発泡押出ポリスチレン物品は、15kg/m〜500kg/mの発泡密度を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】静的接触角シータを示す図である
【実施例】
【0051】
試験方法:
モル質量分布Mnの測定は、DIN 55672に従いゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
20℃の粘度の測定はISO 6388に従い1%、2%、5%または50%水性溶液で行った。
密度の測定は、ISO 1183による。
200℃および5kg質量におけるMFRの測定は、ISO 1133による。
引張係数の測定は、ISO 527−1/−2による。
【0052】
静的接触角の測定は、ポリエチレンシートの表面に規定量の蒸留水ドロップを注意深く置くことにより行った。固体/液体の間および液体/蒸気の間に生じた角度を静的接触角シータとした。静止時間5秒の後、写真を撮影し、ドロップのプロフィールを観察し、グラフィック(図1)に示すように3相の頂点により固体とドロップのプロフィールの間に形成される角度を二次元的に測定することでイメージプロセシングソフトウエアにより静的接触角を測定した。
【0053】
材料としては以下のものを使用した:
成分A :ナトリウムC12−C18−スルホン酸アルキル;
成分B1:ヒドロキシル価が28〜39mgKOH/gであり、平均分子量が3,350g/molであるポリエチレングリコール;
成分B2:ヒドロキシル価が530〜600mgKOH/gであり、平均分子量が200g/molであるポリエチレングリコール;
成分D1:統計平均粒径が5.5μmである微粉炭酸カルシウム成分
D2:タルク、mg−シリケート、CAS 14807−96−6、統計平均粒径が6μm;
成分P1:200℃/5kgのMFRが2〜28g/10minであり、引張係数が3000〜3400MPaである汎用のポリスチレンホモポリマー
成分P2:200℃/5kgのMFRが4.0〜6.0g/10minであり、引張係数が1600〜2000MPaである高衝撃性ゴム修飾ポリスチレン
【0054】
以下の例におけるパーセンテージは特に示さない限り混合物または物品の総質量をベースとした質量%であり;部は質量部であり;「比」は比較例である。
【0055】
比較例1
15部の成分B1および85部の成分P1を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB1を得た。
【0056】
比較例2
15部の成分Aおよび85部の成分P1を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB2を得た。
【0057】
例3
5部の成分A、10部の成分B1および85部の成分P1を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB3を得た。
【0058】
例4
5部の成分A、10部の成分B2および85部の成分P1を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB4を得た。
【0059】
例5
12.5部の成分A、2.5部の成分B1、および85部の成分P1を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB5を得た。
【0060】
例6
2.5部の成分A、12.5部の成分B1、および85部の成分P1を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB6を得た。
【0061】
比較例7(欧州特許2289994A2の示唆による)
15部の成分A、15部の成分D1、7.5部の成分D2および62.5部の成分P1を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB7を得た。
【0062】
比較例8(欧州特許2289994A2の示唆による)
21部の成分A、20部の成分D1、5.0部の成分D2および54部の成分P1を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB8を得た。
【0063】
例9
5部の成分A、10部の成分B1、45部の成分P1および40部の成分P2を二軸押出機(押出機の温度:220〜230℃)で均一化した。マスターバッチMB9を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
比較例21
比較例1で製造された10部のマスターバッチMB1を90部の成分P1とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF21を厚さ100μmで得られた。
【0066】
比較例22
比較例2で製造された10部のマスターバッチMB2を90部の成分P1とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF22を厚さ100μmで得られた。
【0067】
例23
例3で製造された10部のマスターバッチMB3を90部の成分P1とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF23を厚さ100μmで得られた。
【0068】
例24
例4で製造された10部のマスターバッチMB4を90部の成分P1とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF24を厚さ100μmで得られた。
【0069】
例25
例5で製造された10部のマスターバッチMB5を90部の成分P1とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF25を厚さ100μmで得られた。
【0070】
例26
例6で製造された10部のマスターバッチMB6を90部の成分P1とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF26を厚さ100μmで得られた。
【0071】
比較例27
比較例7で製造された10部のマスターバッチMB7を90部の成分P1とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF27を厚さ100μmで得られた。
【0072】
比較例28
比較例8で製造された7.14部のマスターバッチMB8を92.86部の成分P1とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF28を厚さ100μmで得られた。
【0073】
例29
例9で製造された10部のマスターバッチMB9を50部の成分P1および40部のP2とフラットフィルム押出機(Collin)において均一化し混合した。回転速度は100rpmで、温度220〜230℃によりフラットフィルムFF29を厚さ100μmで得られた。
【0074】
【表2】
図1