【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、ポリスチレンおよび親水性添加剤の特定の混合物を含む以下の組成物Zが前記の要求に関して改善された特性を示すことを見出した。
【0010】
本発明の対象は、固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンの親水性を高めるための成分A、成分Bおよび成分Pを含む組成物Zの使用方法であり、
ここで成分Aは、スルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルベンゼンおよび/またはスルホン酸オレフィンであり、
成分Bは、ポリエチレングリコールであり、
成分Pは、ポリスチレンおよび/またはそのアロイである。
【0011】
本発明によれば、ポリスチレンの親水性を高めるが意味するところは、ポリマー表面と水間の低い静的接触角を得るために本発明による特定の添加剤により修飾されたポリスチレン材料を提供することであり、さらに、純粋なポリスチレンを比較して高い水吸収能力を有する添加剤を含有したポリスチレンを提供することである。
【0012】
発明のさらなる対象は、前記にように、固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンの吸収性物品の製造のための組成物Zの使用方法であり、ここで吸収される材料は水性液体である。
【0013】
組成物Zは、好ましくは、上記ように、マスターバッチMBもしくは化合物である。
【0014】
吸収物品としては、フィルム、シートまたは容器であることが好ましく、例えば、食品トレイ、であり、これは、肉、魚、野菜またはフルーツなどの水を含有する食品と接触する。
【0015】
吸収される材料としては、水、血液、もしくは汁が好ましい。
【0016】
本発明のさらなる対象としては、上記の組成物Zを含む固体非発泡もしくは発泡ポリスチレン物品であり、ここで当該物品は、肉、魚、野菜またはフルーツなどの水を含有する食品と接触し、フィルム、シートまたは容器であることが好ましく、例えば、食品トレイである。
【0017】
本発明の目的においては、親水性固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンは、5°〜84°、好ましくは30°〜83°、特に40°〜82°もっとも好ましくは50〜81°の静的接触角により特徴付けられる。
【0018】
本発明のさらなる対象は、上記の成分A、BおよびPの混合物の押出加工、混練、加圧または射出成形による固体非発泡もしくは発泡ポリスチレンの親水性を高めるための方法である。
【0019】
好ましくは、成分Aは1、2、3または4の、より好ましくは1または2の、さらにより好ましくは1のスルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルベンゼンまたはスルホン酸オレフィンを含む。
【0020】
好ましいスルホン酸アルキルは、アンモニウムまたはアルキル金属スルホン酸アルキル、より好ましくはアルカリ金属C
6−C
22−スルホン酸アルキル、特に、アルカリ金属C
10−C
18−スルホン酸アルキル、最も好ましくは、アルカリ金属C
12−C
18−スルホン酸アルキルである。アルカリ金属は、好ましくはリチウム、ナトリウムまたはカリウム、最も好ましくはナトリウムである。アンモニウムは、NH
4+またはモノ、ジ、トリもしくはテトラアルキル化されたアンモニウムであり、ここで、アルキル基は好ましくはC
1−C
4−アルキル基であり、任意に水酸基で置換される。アルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えば直鎖もしくは二級スルホン酸アルキルである。
【0021】
スルホン酸アルキルの例としては、ヘキシルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、エイコシルスルホン酸ナトリウム、ドコシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸リチウム、ヘキサデシルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、エイコシルスルホン酸カリウム、およびドコシルスルホン酸カリウムが挙げられる。
【0022】
好ましいスルホン酸アルキルベンゼンとしては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはカリウムである。
【0023】
好ましいスルホン酸オレフィンとしてはα−スルホン酸オレフィンであり、特に、12〜18の炭素原子を有するものである。
【0024】
好ましくは、成分Bは1、2、3または4の、より好ましくは1または2の、さらにより好ましくは1のポリエチレングリコールである。
【0025】
好ましいポリエチレングリコールとしては、100g/mol〜8,000,000g/mol、好ましくは150g/mol〜1,000,000g/mol、より好ましくは160g/mol〜100,000g/mol、特に180g/mol〜35,000g/mol、より特に200g/mol〜20,000g/molのモル質量分布Mnを有するポリエチレングリコールである。
【0026】
好ましいポリエチレングリコールとしては、pH値が5〜7であるポリエチレングリコールである。
【0027】
好ましいポリエチレングリコールとしては、20℃の粘度(50%水性溶液中)が50〜14,000mPa
*sのポリエチレングリコールであり、20℃の粘度(1%水性溶液中)が4000〜15,000mPa
*sのポリエチレングリコールであり、20℃の粘度(2%水性溶液中)が400〜800mPa
*sのポリエチレングリコールであり、そして、20℃の粘度(5%水性溶液中)が30〜50mPa
*sのポリエチレングリコールである。
【0028】
好ましいポリエチレングリコールとしては、ヒドロキシル価が1〜800mgKOH/g、より好ましくは3〜700mgKOH/g、さらにより好ましくは4〜650mgKOH/g、特に5〜620mgKOH/g、特に30〜610mgKOH/gまたは特に530〜600mgKOH/gのポリエチレングリコールである。
【0029】
好ましいポリエチレングリコールとしては、二つの遊離水酸末端基を有する直鎖ポリエチレングリコールである。
【0030】
好ましくは、成分Pは1、2、3または4の、より好ましくは1または2の、さらにより好ましくは1のポリスチレンである。
【0031】
ポリスチレンとしては、スチレンホモポリマー、アルキルスチレンホモポリマー、好ましくはC
1−C
4−アルキルスチレンホモポリマー、例えば、α−メチルスチレンホモポリマー;スチレンコポリマー、特に、高衝撃性ポリスチレン(HIPS)とすることができる。高衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、一般に、スチレンおよび任意に一か二以上の重合可能なビニルモノマーのグラフト混合物を重合することにより、好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ゴム状スチレン−ジエンコポリマー、アクリルゴム、ニトリルゴムおよびオレフィンゴム、例えば、プロピレンジエンモノマーゴム(PDM)およびプロピレンゴム(PR)から選択されるコポリマーを含有するゴム状ポリマートランクの存在中、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ハロスチレン、ビニルアルキルベンゼン、例えば、ビニルトルエン、ビニルキシレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸の低級アルキルエステルの混合物を重合することにより製造される。高衝撃性ポリスチレン中において、ゴム状ポリマートランクは、通常、グラフトポリマーの総質量に対して、5〜80質量%、好ましくは5〜50質量%で構成する。
【0032】
さらに、スチレン−ブタジエンスチレン(SBS)コポリマーおよび合成ブチルゴム(SBR)を使用することもできる。
【0033】
上記スチレンポリマーの混合物もしくはアロイも使用できる。
【0034】
成分Pの好ましい密度は、1.0〜1.1g/cm
3、より好ましくは1.02〜1.06g/cm
3、さらにより好ましくは1.03〜1.05g/cm
3である。
【0035】
好ましいポリスチレンとしては、ISO1133による200℃/5kgにおけるMFRが0.1〜300g/cm
3、より好ましくは1〜200g/cm
3、さらにより好ましくは5〜100g/cm
3、特に10〜50g/cm
3、さらに特に15〜35g/cm
3、特に20〜25g/cm
3であるポリスチレンである。
【0036】
有利には、組成物Zは、成分Zの総質量をベースとして、成分AおよびBを合計で0.06〜90質量%含み、好ましくはZは、成分AおよびBを合計で0.5〜80質量%含み、より好ましくは、Zは、成分AおよびBを合計で1.0〜70質量%含み、さらにより好ましくは、Zは、成分AおよびBを合計で1.25〜50質量%を含み、特に、Zは、成分AおよびBを合計で1.5〜25質量%を含む。
【0037】
組成物Zは、好ましくは、成分Aおよび成分Bを、成分Bに対する成分Aの質量比で0.1〜10.0、好ましくは0.2〜5.0、より好ましくは0.3〜1.0、さらにより好ましくは0.4〜0.8、特に、0.5〜0.6で含む。
【0038】
組成物Zは、有利には、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
0.2〜30質量%の成分A、
0.4〜60質量%の成分B、
10〜99.4質量%の成分Pを含む。
【0039】
組成物ZがマスターバッチMBである場合、Zは、有利には、各ケースにおいて、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
1.5〜30質量%の成分A、
3〜60質量%の成分B、
10〜95.5質量%の成分P;
を含み、
好ましくは、組成物Zは、マスターバッチMBとして、
3〜25質量%の成分A、
6〜50質量%の成分B、
25〜91質量%の成分P;
を含み、
より好ましくは、組成物Zは、マスターバッチMBとして、
6〜20質量%の成分A、
12〜40質量%の成分B、
40〜82質量%の成分P;
を含み、
さらにより好ましくは、組成物Zは、マスターバッチMBとして、
12〜18.3質量%の成分A、
24〜36.7質量%の成分B、
45〜64質量%の成分P;
を含み、
特に、組成物Zは、マスターバッチMBとして、
15〜16.7質量%の成分A、
30〜33.3質量%の成分B、
50〜55質量%の成分P;
を含む。
【0040】
組成物Zが化合物である場合、Zは、有利には、各ケースにおいて、質量%は組成物Zの総質量をベースとして、
0.0167〜1.47質量%の成分A、
0.0333〜2.93質量%の成分B、
95.6〜99.95質量%の成分P;
好ましくは、組成物Zは、化合物として
0.07〜1質量%の成分A、
0.14〜2質量%の成分B、
97〜99.79質量%の成分P;
を含み、
より好ましくは、組成物Zは化合物ACとして、
0.25〜0.75質量%の成分A、
0.5〜1.5質量%の成分B、
97.75〜99.25質量%の成分P;
を含み、
さらに、より好ましくは、組成物Zは化合物ACとして、
0.3〜0.7質量%の成分A、
0.6〜1.4質量%の成分B、
97.9〜99.1質量%の成分P;
を含み、
特に、組成物Zは化合物として、
0.4〜0.5質量%の成分A、
0.8〜1.0質量%の成分B、
98.5〜98.8質量%の成分P;
を含む。
【0041】
好ましくは、組成物Zはさらなる以下の物質を含むことができる、
−着色剤、着色剤として使用できる有機および無機染料および顔料とともに;有機顔料として、好ましくはアゾもしくはジアゾ顔料、コートされたアゾもしくはジアゾ顔料、または多環式の顔料;好ましい多環式の顔料としては、好ましくは、ジケトピロロピロール、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ジオキセタン、アントラキノン、チオインジゴ、ジアリールもしくはキノフタロン顔料であり;無機顔料としては、好ましくは、酸化金属、混合酸化物、硫酸アルミニウム、クロム酸塩、金属粉末、パール効果顔料(ミカ)、蛍光顔料、酸化チタン、カドニウム−リード顔料、酸化鉄、カーボンブラック、ケイ酸塩、ニッケルチタン、コバルト顔料、または顔料に適した酸化クロムであり;
−分散剤、好ましい分散剤としては、C
10−C
30アルコールの極性酸エステルである;
−フィラー、例えば、シリカ、ゼオライト、ケイ酸塩、例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、白墨、タルク;
−助剤、好ましくは金属せっけん、発泡剤、核形成剤、過酸化物;
−アルキルアミン、エトキシ化アルキルアミン、グリセリルエステル、またはそれらの混合物8ブレンド);
−UV吸収剤および立体障害アミン光安定剤(HALS)、スリップ剤、かぶり防止剤、抗凝縮剤、および/または懸濁安定剤、難燃剤;高酸化剤、または他の慣用のプラスチック添加剤、イオン液体;
またはこれらの混合物。
【0042】
これらのさらなる物質は、有利には、組成物Zの総質量をベースとして、0〜60質量%、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.1〜30質量%、さらにより好ましくは1〜20質量%、特に2〜10質量%存在する。ポリスチレンが発泡ポリスチレンの場合、好ましいさらなる物質としては、タルクなどの核形成剤および/または化学発泡剤である。
【0043】
組成物Zは、成分A、BおよびP、および任意にさらなる物質のいくつかをお互いに物理的に混合することにより製造することができる。成分の混合は1つのステップまたは複数のステップで行うことができる。物理的混合のための混合装置としては、プラスチック工業における慣用の混合層値を使用することができ、好ましくは、押出機、ニーダー、加圧機、射出成形機およびブレンドミキサーから成る群から選択される装置である。組成物ZがマスターバッチMBである場合、混合装置は、好ましくは押出機、ニーダーおよび/またはブレンドミキサーである。組成物Zが組成物である場合、混合装置は、好ましくは、押出機、加圧機および射出成形機、特に好ましくは押出機である。
【0044】
混合は、連続的に若しくはバッチ式で行い、好ましくは押出または混練、特に好ましくは押出によるマスターバッチMBの場合、特に好ましくは連続的であり、そして、好ましくは押出または射出成形または加圧、特に好ましくは押出による化合物の場合特に好ましくはバッチ式で行う。
【0045】
混合は、好ましくは、80〜260℃、より好ましくは120〜250℃、さらにより好ましくは150〜230℃、180〜220℃の温度で行われる。混合時間は好ましくは5秒〜10時間である。連続的混合の場合、混合時間は、好ましくは5秒〜1時間、より好ましくは10秒〜15分である。
【0046】
バッチ式混合の場合、混合時間は、好ましくは1分〜10時間、より好ましくは2分〜8時間、特に2分〜5時間、特に2分〜1時間、特に好ましくは2〜15分である。
【0047】
化合物の場合、成分A、BおよびPは好ましくは、マスターバッチMBの形態でポリスチレンPと共に混合される。さらに物理的混合のために、ペレット化されたポリスチレンとのマスターバッチMBの前混合が使用されることが好ましい。
【0048】
組成物Zは、マスターバッチMBの形態および化合物の形態の両方において、驚くべきことに、低い静的接触角により特徴付けられる。
【0049】
食品トレイなどの発泡ポリスチレン物品の製造のためには、好ましくはタルクなどの核形成剤おまたは化学発泡剤の存在下、発泡剤とともにポリスチレンが押出される。発泡剤としては物理的発泡剤、例えば、気体状態のCO
2、N
2、イソペンタン、ヒドロフルオロカーボン、または、プロセス中に融解されたポリマー中で文化しCO
2またはN
2、などの気体を放出する化学的発泡剤であってもよい。両方のプロセスにおいて、押出機のバレル中の圧力下において気体は完全にポリマー溶融物中に分散若しくは溶解している必要がある。溶融物がダイを通して押出機から出るときにおいて、圧力が落ちて、そして気体が溶融物を拡張し、ポリマー中に気泡構造が形成される。いわゆる直接ガス化押出により製造された発泡押出ポリスチレン物品は、15kg/m
3〜500kg/m
3の発泡密度を達成する。