【実施例】
【0020】
本発明は、一例として
図1(a)・(c)に示すように、予め下穴(予備孔)Hを貫通状態に開孔して成るナットブランクWに対し転造タップ10を回転圧入し、下穴Hの内壁面にメネジを塑性形成する転造タッピングに関するものである(いわゆる盛上げタップ)。具体的には、一例として
図1(d)に示すように、メネジの形成加工中、転造タップ10の先端側(圧入方向の反対側)からナットブランクWの下穴H内に液体クーラント(潤滑油)Cを供給するものであり、この液体クーラントCは、その後、転造タップ10内を通過し、転造タップ10の外周側(加工開始部)に到達させるものであり、これが本発明の大きな特徴である。これにより加工中、加工開始部に生じる大きな摩擦熱の発生が抑えられ、また転造タップ10の加工開始部を集中的に冷却でき、メネジの形成加工が円滑に行えるものである。
【0021】
また、液体クーラントCの供給ルートを上記のように構成することから、転造タップ10としては、一例として
図1(b)に示すように、比較的短寸のロッド状を成すタップ本体11と、タップ本体11の外周側に形成される螺旋状の転造山12と、タップ先端からタップ奥部に向かって形成される行き止まり状の給液スペース13と、この給液スペース13から外周側の転造山12に向けて貫通形成される供給孔14と、供給孔14の出口端に連通状態に形成される導流溝15とを具えて成る。
ここで供給孔14は、例えば上記
図1(b)では、タップ本体11の中心から放射状に広がる流路として四本形成される。また導流溝15は、タップ本体11の軸方向に沿って転造山12を分断するように八個所形成されており、供給孔14に連通する導流溝15と、連通しない導流溝15とが、タップ本体11の外周部において交互に位置するように形成される。これによりナットブランクWの下穴Hから転造タップ10の先端側に供給される液体クーラントCは、転造タップ10内を給液スペース13、供給孔14の順で通過・貫通し、転造タップ10外周部の導流溝15に到達し、転造加工(塑性加工)が施されているタップ先端(これを本明細書では「加工開始部」とも称する)に至り、当該部位を集中的に冷却する。
【0022】
次に、上記転造タップ10をナットブランクWに回転圧入し、下穴Hの内壁面にメネジを塑性形成する転造タッピング装置1について説明する。
転造タッピング装置1は、一例として
図2・
図3に示すように、加工対象となるナットブランクWを一定の姿勢(適正姿勢)に保持する加工部治具2を主な構成部材とし、これは転造タッピング装置1の装置本体または加工テーブルとも言える。
なお、本実施例では転造タッピングは、ナットブランクWに開口された下穴Hを上下に向けた姿勢(ナットの両端面を上下に向けた、いわゆる立位姿勢)で行うものとし、またこのため回転する転造タップ10をナットブランクW(下穴H)に圧入する方向も、上方から下方となる。
【0023】
また加工部治具2は、一例として
図3に示すように、順次、供給されるナットブランクWが適正姿勢であるか否かを検出する検査ステージS1と、適正姿勢と判断されたナットブランクWのみに実質的な転造タッピング加工(メネジ形成加工)を施す実加工ステージS2とを具えて成る。
すなわち、本実施例ではナットブランクWの下穴Hは、一例として
図1(c)に示すように、両端面の開口径寸法が異なるように形成されており(つまり下穴Hが途中で段差を有するように形成されており)、実際のメネジ形成加工の際には、回転する転造タップ10を下穴Hの大径側から圧入する(
図1(d)参照)。このため本実施例では、このような検査ステージS1を設け、適正姿勢のナットブランクWのみに実際のメネジ形成加工を施すようにしている。
具体的な検出手法としては、一例として
図4に示すように、検査ステージS1に供給されたナットブランクWの下穴Hに、プローブ51を進入させ(ここでは上方から下方への降下)、その移動ストロークの相違により、適正姿勢のものだけを実加工ステージS2に移送する(非適切姿勢のナットブランクWは排除する)。
【0024】
また加工部治具2(検査ステージS1)の前段には、ナットブランクWを加工部治具2に一つずつ供給するための供給装置7が設けられる。この供給装置7としては、例えば重力滑落を利用した整列搬送装置(いわゆるパーツフィーダ)を適用することが可能である。より詳細には、例えば
図2・
図3に示すように、ナットブランクWを傾斜台(すべり台)71上で複数個、数珠つなぎ状に整列させながら検査ステージS1に搬送する。もちろん最終的に検査ステージS1にナットブランクWを供給する際には、ナットブランクWを一つずつ押し込むものである。
なお、ナットブランクWは、供給装置7(傾斜台71)から検査ステージS1に供給される際、例えば
図5の平面図に示すように、前後するナットブランクWがナットの側面同士を接触させる数珠つなぎ状態(連続した状態)で供給される。また、本実施例では、一例として22個のナットブランクWが傾斜台71上で数珠つなぎ状に並んだ際に始めて先頭のナットブランクW(検査ステージS1の直前に位置するナットブランクW)を検査ステージS1に送り込むように構成される。
すなわち加工部治具2における検査ステージS1の手前側には、供給装置7から移送され
てきたナットブランクWを受け入れるための供給ガイド溝53が形成されており、供給装置7の傾斜台71を滑落してきたナットブランクWは、そのまま供給ガイド溝53に入り込むように案内される。なお、供給ガイド溝53は、検査ステージS1に向かって幾分窄まるように形成され、供給装置7(傾斜台71)からナットブランクWを受け入れ易くしている。
このように先頭のナットブランクWには、その後方に並んだナットブランクWの荷重が作用するため、換言すれば先頭のナットブランクWが、その後ろに付いたナットブランクWの押し込みを常に受けるため、また上記供給ガイド溝53に案内されるため、ナットブランクWは検査ステージS1に供給される間に、下穴Hをほぼ水平とした、いわゆる横倒しになることはないものである。
【0025】
また加工部治具2は、ナットブランクWの一方の端面を支持する端面サポート3を具えるものであり、本実施例では小径側の開口端部を下方から支持する。
また、加工部治具2は、実加工ステージS2において転造タップ10が回転圧入されるナットブランクWを、加工中に回転しないように保持固定する回り止めクランプ4を具える。
この回り止めクランプ4は、一例として
図3・
図5に示すように、ナットブランクWを検査ステージS1から実加工ステージS2に一つずつ個別に押し込むスライドクランプ41と、実加工ステージS2において当該スライドクランプ41と対向的に設けられる固定クランプ42とにより構成され、実加工ステージS2では、これらが共働してナットブランクWを強固に挟持するように構成される。
具体的には、一例として
図5の平面図に示すように、スライドクランプ41と固定クランプ42との挟持部が、ともに「V」字状を成すように構成され、これらによってナットブランクWを対向的に挟み込む(くわえ込む)ものである。
【0026】
なお、このような構成上、ナットブランクWを検査ステージS1から実加工ステージS2に移送する際には、専らスライドクランプ41の作用端(V字部分)にナットブランクWを受け入れながら移送することになるが、スライドクランプ41の作用端がV字状であるため、ナットブランクWのセンター合わせが自動的に行え、これにより実加工ステージS2に移送したナットブランクW(下穴H)の中心を、転造タップ10の中心と合致させ易い構造となっている。特に、ナットブランクWの一部が、一例として
図1(a)に示すように外形円柱状を成す場合には、この部分をスライドクランプ41のV字に収めるようにすると、上記のような芯合わせが行い易いものである。
因みに図中符号33は、スライドクランプ41が、適正姿勢であるナットブランクWを実加工ステージS2まで押し込んで行くスライド案内溝であり、このスライド案内溝33の移送開始部が検査ステージS1、移送終了部が実加工ステージS2となる。
このようにナットブランクWは、検査ステージS1から実加工ステージS2への移送中、単にスライドクランプ41によって押されるだけでなく、上記スライド案内溝33によって両サイドが規制されるため、その移送中、適正姿勢が維持されるものである(横倒れ等しないものである)。
【0027】
次に、検査ステージS1について更に詳細に説明する。
検査ステージS1は、上述したように、当該検査ステージS1に個別に供給されてくるナットブランクWの姿勢が適正であるか否かを検出するステージであり、この検査ステージS1には姿勢検出装置5が設けられる。この姿勢検出装置5は、一例として
図4に示すように、検査ステージS1に供給されたナットブランクWの下穴Hに進入し得るプローブ51を主な構成部材とする。
ここでナットブランクWの適正姿勢について説明すると、一例として
図1(c)に示すように大径開口端を上に向け、小径開口端を下向きにした姿勢が適正姿勢であり、この逆が非適正姿勢である。なお、ナットブランクWは、検査ステージS1に供給される際には、このうちのいずれかの姿勢をとるものであり、横倒しの姿勢で供給されることはない。これは、上述したようにその前段の供給装置7から、下穴Hを上または下に向けた状態(立位姿勢)で供給されるためである。すなわち、前記傾斜台71の両サイドに、例えば立壁等を設けることにより、ナットブランクWを傾斜台71で数珠つなぎ状に並べた際には、下穴Hを上または下に向けた立位姿勢に規制できるものである。逆に言えば、このような構成を採ることによりナットブランクWを供給装置7(傾斜台71)から検査ステージS1に供給する間に、ナットブランクWが倒れないようにするものである。
【0028】
また、プローブ51は、上記
図4に併せ示すように、ナットブランクWの下穴Hに差し込まれる挿入端部が、適正姿勢をとったナットブランクWの下穴H(段差を有した下穴Hの内部空間)に、ほぼ合致するように形成される。このためナットブランクWの下穴Hにプローブ51を進入させた場合(ここでは上から下降)、
図4(a)に示すように当該ナットブランクWが適正姿勢(大径開口端が上、小径開口端が下)であれば、プローブ51は、比較的長い距離移動して、下穴H内にほぼ合致するように収まる。一方、
図4(b)に示すようにナットブランクWが非適正姿勢(大径開口端が下、小径開口端が上)であれば、プローブ51の進入は小径側開口端に阻まれてしまい、距離移動としては短くなる。このように本実施例では、下穴H内に進入するプローブ51の移動距離(ここでは下降ストローク)の相違により、検査ステージS1に供給されたナットブランクWの姿勢を検出するものである。
なお、検査の結果、非適正姿勢であることが判明したナットブランクWは、後段の実加工ステージS2には送らず、加工ラインから排除し、例えば、再度、供給装置7に投入し直すことが好ましい。
因みに、
図5中の符号52は、ナットブランクWが検査ステージS1に供給されたこと(到達したこと)を感知する近接センサであり、この近接センサ52でナットブランクWの供給を検知してから、当該ナットブランクWに自動的にプローブ51を進入させる制御が好ましい。なお、前記スライド案内溝33は、
図5の平面図に併せ示すように、上記供給ガイド溝53に対し、ほぼ直交するように形成され、スライド案内溝33(検査ステージS1)における供給ガイド溝53からの突き当たり壁面に、当該近接センサ52が設けられる。
【0029】
次に、実加工ステージS2について説明する。
実加工ステージS2は、上述したように検査ステージS1から適正姿勢で送られてきたナットブランクWに、実質的に転造タップ10を回転圧入し、転造タップ10の転造山に応じたメネジを塑性形成するステージである(いわゆる盛上げタップ)。
この実加工ステージS2には、上述したように加工中、ナットブランクWが回転しないように固定保持する回り止めクランプ4が構成される。
【0030】
また実加工ステージS2における端面サポート3には、一例として
図6の側面図(側面断面図)に示すように、液体クーラントCの給送路31が形成され、その吐出開口32は、上記実加工ステージS2において回り止めクランプ4によりクランプされたナットブランクWの下穴H(小径側開口)に臨むように開口される。
すなわち、実加工ステージS2においてナットブランクWに転造タップ10を回転圧入する実加工中、この給送路31(吐出開口32)からナットブランクWの下穴H内に液体クーラントCが吐出される。このように液体クーラントCは、転造タップ10の先端側(圧入方向の反対側)から供給され、その後、一例として
図1(d)や
図6の拡大図に示すように、液体クーラントCは、転造タップ10内の給液スペース13、供給孔14を順次、経て転造タップ10外周の導流溝15に達し、この導流溝15を伝って、加工開始部に至り、当該部分を集中的に冷却するものである。
【0031】
なお、転造タップ10を冷却した後の液体クーラントCは、自然に落下するため、加工部治具2の下部に受け皿やタンク等を設けておき、使用後に落下してくる液体クーラントCを、この受け皿やタンク等に回収し、ポンプで循環使用することが可能である。その場合、もちろん使用済み液体クーラントCに含まれ得る異物(埃等)を、極力、除去しながら循環使用するものである。
【0032】
また前記実加工ステージS2においてナットブランクWを支持する端面サポート3は、一例として
図7に示すようにエアシリンダ等により、実加工ステージS2から退去できるように構成され、実加工ステージS2において加工が終了した加工済みナット(ナットブランクW)を下方に落下・排出するように構成される。
なお実加工ステージS2から落下・排出されたナットは、適宜、コンベヤ等で所望の位置まで搬送し、回収される。
【0033】
本発明の転造タッピング装置1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、この装置を適用してナットブランクWにメネジを塑性形成する作動態様について説明しながら
、転造タッピング方法について併せて説明する。
なお、ナットブランクWには、上述したように予め下穴Hが貫通状態に開孔されており、特に本実施例ではナット両端の開口径が異なるように形成されるものである。
(1)ナットブランクの供給(検査ステージへの供給)
下穴Hが開孔されたナットブランクWを、加工部治具2の検査ステージS1に供給するには、上述したように供給装置7が適用され、またこのときのナットブランクWの姿勢は、下穴H(ナットの両端面)を上下に向けた立位姿勢(適正姿勢またはその逆の姿勢)で検査ステージS1に供給(投入)される。
特に本実施例では、ナットブランクWは、供給装置7に設けられた傾斜台71の上に数珠つなぎ状に並べられ、この状態で滑落しながら供給される。またナットブランクWは、当該傾斜台71上において一定数(例えば22個)、数珠つなぎとなってから、検査ステージS1への供給が一つずつ行われるようになっている。すなわち、一例として22個のナットブランクWが数珠つなぎ状になってから、始めて先頭のナットブランクW(検査ステージS1の直前に位置するナットブランクW)が検査ステージS1に送り込まれるように制御される。
【0034】
このようにすることで、先頭のナットブランクWには、その後ろ側に並んだナットブランクWの荷重が作用するため(先頭のナットブランクWが常に後ろからの押し込みを受けるため)、検査ステージS1への供給を待機しているナットブランクWが横倒しになることはなく、下穴H(ナットの両端面)を上下に向けた姿勢が維持される。このため、検査ステージS1ではナットブランクWの姿勢を検査する際、その上下だけを考慮すれば済むものである。
また検査ステージS1へのナットブランクWの供給は、スライドクランプ41の押し込み先端(V字状部分)が実加工ステージS2から検査ステージS1側に戻った時点で開始される(数珠つなぎ状のナットブランクWが全体的に一個分だけ検査ステージS1側に前進する)。逆に言えば、例えば
図6の平面図に示すように、スライドクランプ41がナットブランクWを実加工ステージS2に押し込んでいるとき、もしくはナットブランクWを実加工ステージS2でクランプしているときには、検査ステージS1にスライドクランプ41の本体部分が位置するため、ナットブランクWの供給(供給装置7からの供給)は、遮断(中断)された状態となる。
【0035】
(2)検査ステージでの姿勢検査
以上のようにしてナットブランクWは、一つずつ供給装置7から検査ステージS1に供給される(押し込まれる)。ここでナットブランクWが検査ステージS1に送られて来たことは、例えば検査ステージS1に設けられた近接センサ52で感知される。そして、この感知により、検査ステージS1に位置したナットブランクWに、姿勢検出装置5のプローブ51を自動的に進入させる(下降させる)ものである。
なお、上述したようにナットブランクWに開口される下穴Hは、両端で開口径が異なるものであり、このため本実施例ではこの開口径の差を利用して検査ステージS1に供給されたナットブランクWの姿勢を検査する。すなわち、一例として
図4(a)に示すように、ナットブランクWが適正姿勢(大径開口端が上、小径開口端が下)であれば、プローブ51が下穴H内にほぼ収まるためプローブ51の距離移動としても長くなる。一方、一例として
図4(b)に示すように、ナットブランクWが非適正姿勢(大径開口端が下、小径開口端が上)であれば、プローブ51の進入は小径側開口端に阻まれ、距離移動としても短くなる。このように本実施例では、下穴H内に進入するプローブ51の移動距離(ここでは下降ストローク)の相違により、検査ステージS1に供給されたナットブランクWの姿勢を検出するものである。
そして、この姿勢検査においてOKの判定が得られた適正姿勢のナットブランクWのみを後段の実加工ステージS2に供給する(送り込む)ものである。一方、検査ステージS1でNGの判定が下された非適正姿勢(適正姿勢とは天地が逆)のナットブランクWは、加工ラインから排除される。ただし、加工ラインから排除された非適正姿勢のナットブランクWであっても、下穴H等の形状不良ではないため、再度、供給装置7に戻し、加工に供することが好ましい。
【0036】
(3)検査ステージから実加工ステージへの移送
検査ステージS1において適正姿勢であることが確認されたナットブランクWは、例えば
図5から
図6に示すように、スライドクランプ41の先端部(ここでは平面視V字状)によって押し込まれ、実加工ステージS2に移送(供給)される。また検査ステージS1から実加工ステージS2までは、上述したようにナットブランクWの移送を案内するスライド案内溝33が形成されており、ナットブランクWは両サイドを当該スライド案内溝33によって規制されながら実加工ステージS2まで供給される。
このようにスライド案内溝33による規制やスライドクランプ41の押し込み作用端が平面視V字状であること等から、ナットブランクWは移送中も適正姿勢が維持され、実加工ステージS2に至るものである。つまりナットブランクWは、検査ステージS1から実加工ステージS2への移送中に回転したり、横倒し状態にならないものである。
なお、スライドクランプ41の作用端が平面視V字状であることから、例えば
図1(a)に示すように、当該作用端によって押し込まれる部位(ナットブランクWの被押圧部)が外形円柱状であれば、自動的にナットブランクWのセンター合わせができ、実加工ステージS2における転造タップ10との芯合わせが容易に行える。すなわち実加工ステージS2に送り込んだナットブランクW(下穴H)の中心を、転造タップ10の中心に合致させ易いものである。
【0037】
(4)実加工ステージでのメネジ形成加工(メネジの塑性形成)
実加工ステージS2に移送されたナットブランクWは、一例として
図6の平面図に示すように、当該ナットブランクWを押し込んできたスライドクランプ41と、実加工ステージS2に固定状態に設けられている固定クランプ42とにより挟持され、加工中、回転しないように堅固にクランプされる。すなわち、実加工ステージS2に移送されたナットブランクWは、対向配置されたスライドクランプ41と固定クランプ42とにより構成される回り止めクランプ4によって、加工中、回転しないように強固に保持される。
【0038】
以上のように実加工ステージS2においてナットブランクWを強固にクランプしたら、一例として
図6の側面図(側面断面図)に示すように、ナットブランクWの下穴Hに、転造タップ10を回転させながら圧入する(ここでは転造タップ10を回転させながら下降させる動作)。
なお、転造タップ10による加工は、下穴Hの内壁面にメネジを塑性形成する加工であり(いわゆる盛り上げタップ)、切削ではないため、加工中、切り屑は出ないが、特にタップ先端の加工開始部で多くの熱を発する。そのため、この発熱を抑え(つまり転造タップ10とナットブランクWとの摩擦抵抗を減らし)、塑性加工を円滑に行わせるために加工開始部に液体クーラントCを集中的に供給するものであり、以下、この供給態様について説明する。
【0039】
(5)液体クーラントの供給
実加工ステージS2では、上述したようにナットブランクWを保持する端面サポート3に液体クーラントCの吐出開口32が形成されている。この吐出開口32は、実加工ステージS2においてクランプされたナットブランクWの下穴Hに臨むように開口される。このため吐出開口32から供給(吐出)された液体クーラントCは、一例として
図6の拡大図に示すように、ナットブランクWの小径側(下側)開口から下穴H内に至り、タップ先端の給液スペース13に到達する。その後、この液体クーラントCは、給液スペース13からタップ内部を貫通する供給孔14、導流溝15と順次経由して、タップ外周部の転造山12、つまり加工開始部に至り、当該部位を集中的に冷却する。
このように本発明は、液体クーラントCを、タップ圧入方向の反対側からナットブランクWの下穴Hに供給し、ここから加工中の転造タップ10内を貫通させてタップ外周部に送るようにしており、これにより最も熱を発生する加工開始部を効果的に冷却することができる。また、このため転造タッピング加工が円滑に行え、転造タップ10の工具寿命を長くすることができ(まる一日、転造タップ10を交換せずに使用し続けることも可能)、転造タップ一本当たりの生産数(ナットの生産数)も増加させることができる。
もちろん、液体クーラントCを転造タップ10に供給する際には、上記手法(転造タップ10の内部を通して外周側に至らせる送り方)に加え、転造タップ10の上方側部からナットブランクWに向けて液体クーラントCを掛け流すようにしても構わない。
なお、主に転造タップ10の加工開始部を冷却した液体クーラントCは、回収して循環使用することが可能である。
【0040】
(6)加工済みナットの落下・排出
ナットブランクWの下穴内壁面にメネジを形成し終えたら、今度は、転造タップ10をメネジ形成時とは反対方向に回転させながら、転造タップ10をナットブランクWから引き抜く(ここでは上方に引き上げる)。
その後、一例として
図7に示すように、ナットブランクWを保持していた端面サポート3を実加工ステージS2から退去させ、実加工ステージS2における加工済みナット(ナットブランクW)の保持(下支え)を解除する。
また、このような端面サポート3による下支えを解除することに伴い、回り止めクランプ4については、スライドクランプ41を実加工ステージS2から検査ステージS1側に幾らかスライドさせ(戻し)、加工済みナット(ナットブランクW)のクランプも解除する。
このようにすることで、加工済みナットに作用していた保持力が全て解除され、メネジが形成された加工済みナットは下方に落下し、適宜、コンベヤなどで回収される。
【0041】
(7)スライドクランプの戻り
また、このような加工済みナット(ナットブランクW)の落下後、スライドクランプ41(先端押し込み作用部)を完全に検査ステージS1側に戻すことにより、一例として
図5の平面図に示すように、供給装置7から検査ステージS1にナットブランクWが一個、供給され、以下、上記の加工が繰り返し行われる。