(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)多官能エポキシ樹脂(但し、フェノキシ樹脂を除く)、(B)フェノール系硬化剤及び/又は活性エステル系硬化剤、(C)フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリスルホン樹脂から選択される熱可塑性樹脂、(D)無機充填材、並びに(E)テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、及びブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネートから選ばれる1種以上の4級ホスホニウム系硬化促進剤を含有する樹脂組成物。
成分(A)と成分(B)の不揮発分の合計質量に対する成分(E)の質量の比率が100:0.05〜100:2となる範囲で成分(E)を含む、請求項1記載の樹脂組成物。
成分(A)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂から選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
樹脂組成物の硬化物とその表面に形成された導体層との間のピール強度が3.9N/cm〜19.6N/cmであり、樹脂組成物の硬化物の表面粗さが30nm〜400nmである請求項1〜12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、(A)多官能エポキシ樹脂、(B)フェノール系硬化剤及び/又は活性エステル系硬化剤、(C)熱可塑性樹脂、(D)無機充填材、(E)特定の硬化促進剤を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
【0009】
[(A)多官能エポキシ樹脂]
本発明における成分(A)多官能エポキシ樹脂は、本発明の効果を奏すれば特に限定さないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
エポキシ樹脂は2種以上を併用してもよいが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有するのが好ましい。樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。またさらに、1分子中に2以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状の芳香族系エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂、および1分子中に3以上エポキシ基を有し、温度20℃で固体状の芳香族系エポキシ樹脂を含有する態様が好ましい。なお、本発明でいう芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環構造を有するエポキシ樹脂を意味する。
【0011】
また、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂を併用する場合、その配合割合(液状:固形)は質量比で1:0.1〜1:2の範囲が好ましい。かかる範囲を超えて液状エポキシ樹脂の割合が多すぎると、樹脂組成物の粘着性が高くなり、接着フィルムの形態で使用する場合に、真空ラミネート時の脱気性が低下しボイドが発生しやすくなる傾向にある。また真空ラミネート時に保護フィルムや支持フィルムの剥離性の低下や、硬化後の耐熱性が低下する傾向にある。また、樹脂組成物の硬化物において十分な破断強度が得られにくい傾向にある。一方、かかる範囲を超えて固形エポキシ樹脂の割合が多すぎると、接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られず、取り扱い性が低下する、ラミネートの際の十分な流動性が得られにくいなどの傾向がある。
【0012】
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、エポキシ樹脂の含有量は10〜50質量%であるのが好ましく、より好ましくは20〜45質量%であり、とりわけ好ましくは25〜42質量%である。エポキシ樹脂(A)の含有量がこの範囲から外れると、樹脂組成物の硬化性が低下する傾向にある。
【0013】
[(B)フェノール系硬化剤及び/又は活性エステル系硬化剤]
本発明における成分(B)のフェノール系硬化剤及び/又は活性エステル系硬化剤は、本発明の効果を奏すれば特に限定されないが、各々単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。特に硬化物の機械特性の観点から、フェノール系硬化剤が好ましい。
【0014】
フェノール系硬化剤は、フェノール骨格又はナフトール骨格を含む化合物であり、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものをいう。フェノール系硬化剤としては、耐熱性、耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤やノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。市販品としては、例えば、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成社製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、LA7052、LA7054(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。活性エステル系硬化剤はフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものをいう。活性エステル系硬化剤としては、EXB−9460(大日本インキ化学工業(株)製)、DC808、YLH1030(ジャパンエポキシレジン(株)製)が挙げられる。
【0015】
本発明において、樹脂組成物中のフェノール系硬化剤及び/又は活性エステル系硬化剤の含有量は、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と硬化剤の反応基の合計数の比率が1:0.3〜1:2となる量にするのが好ましく、さらには1:0.4〜1:1.5となる量にするのがより好ましい。なお樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基(活性水酸基、活性エステル基)の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。硬化剤の含有量がかかる好ましい範囲を外れると、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性が不十分となるなどの傾向がある。
【0016】
[(C)熱可塑性樹脂]
本発明における成分(C)熱可塑性樹脂は、本発明の効果を奏すれば特に限定されないが、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、特にフェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1〜20質量%の範囲であるのが好ましく、5〜15質量%の範囲であるのがより好ましい。含有量が少なすぎると、硬化物の可撓性が低下する傾向にあり、含有量が多すぎると、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、ラミネート性が低下し、回路上の配線パターンへの埋め込みなどが困難になる傾向にある。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は8000〜70000の範囲であるのが好ましく、さらに好ましくは10000〜60000、さらに好ましくは20000〜60000である。分子量が小さすぎると導体層のピール強度が低下する傾向にあり、分子量が大きすぎると、粗度が大きくなりやすい、熱膨張率が大きくなりやすいなどの傾向となる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0017】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。フェノキシ樹脂の末端はフェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製1256、4250(ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン製YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン製YX6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)や、その他東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YL7553、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482等が挙げられる。
【0018】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)社製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。これら各種熱可塑性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
[(D)の無機充填材]
本発明における成分(D)無機充填材は、本発明の効果を奏すれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、これらの中でも無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが特に好適である。シリカとしては球状のものが好ましい。無機充填材は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
無機充填材の平均粒径は1μm以下であるのが好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.7μm以下がとりわけ好ましい。平均粒径が1μmを超える場合、メッキにより形成される導体層のピール強度が低下する傾向にある。なお、無機充填材の平均粒径が小さくなりすぎると、樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下する傾向にあるため、平均粒径は0.05μm以上であるのが好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0021】
無機充填材は、耐湿性、分散性等の向上のため、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートのチタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていてもよい。
【0022】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、株式会社堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0023】
無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対して、10〜70質量%の範囲であるのが好ましく、15〜65質量%の範囲であるのがより好ましく、20〜60質量%であるのが更に好ましい。無機充填剤の含有量が少なすぎると、熱膨張率が上昇する傾向にあり、含有量が多すぎると、絶縁樹脂シートの可撓性が低下する傾向にある。
【0024】
[4級ホスホニウム系硬化促進剤]
本発明における成分(E)4級ホスホニウム系硬化促進剤は、本発明の効果を奏すれば特に限定されないが、ここで、4級とは、アルキル基、アラルキル基、アリール基から選ばれる官能基を示す。具体的には、4級ホスホニウムチオシアネート、4級ホスホニウム長鎖脂肪酸塩が挙げられる。特に、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネートが好ましい。成分(A)と成分(B)の不揮発分の合計質量に対する成分(E)の含有量(質量%)の下限値は、0.05が好ましく、0.07がより好ましく、0.09が更に好ましく、0.11が更に一層好ましく、0.13が殊更好ましく、0.15が特に好ましい。成分(A)と成分(B)の不揮発分の合計質量に対する成分(E)の含有量(質量%)の上限値は、2が好ましく、1がより好ましく、0.8が更に好ましく、0.7が更に一層好ましく、0.6が殊更好ましく、0.5が特に好ましい。成分(E)の比率が0.05未満では、目的とする低粗度の効果が得られ難い傾向となり、2を超えるとピール強度が低下する傾向となる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分を含み、該樹脂組成物を硬化して得られる絶縁層表面の粗度が低くても、高いピール強度を有する導体層が形成可能な樹脂組成物を提供することができる。
【0026】
本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分を含有する樹脂組成物の硬化物のピール強度は、後述する<メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物の硬化物のピール強度(kgf/cm)の上限値は、0.8が好ましく、0.9がより好ましく、1.0が更に好ましく、1.1が更に一層好ましく、1.2が殊更好ましく、2が特に好ましい。本発明の樹脂組成物の硬化物のピール強度(kgf/cm)の下限値は、0.4が好ましく、0.5がより好ましく、0.6が更に好ましい。
【0028】
本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分を含有する樹脂組成物の硬化物の表面粗さは、後述する<粗化後の表面粗さ(Ra値)の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物の硬化物の表面粗さ(nm)の上限値は、700が好ましく、500がより好ましく、400が更に好ましく、300が更に一層好ましく、200が殊更好ましく、170が特に好ましい。本発明の樹脂組成物の硬化物の表面粗さ(nm)の下限値は、150が好ましく、120がより好ましく、90が更に好ましく、70が更に一層好ましく、50が殊更好ましく、30が特に好ましい。
【0030】
[ゴム粒子]
本発明の樹脂組成物は、硬化物の機械強度を高める、応力緩和効果等の目的で固体状のゴム粒子を含有することができる。ゴム粒子は、樹脂組成物を調製する際の有機溶媒にも溶解せず、エポキシ樹脂等の樹脂組成物中の成分とも相溶せず、樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス層は例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N、(ガンツ化成(株)商品名)、メタブレンKW−4426(三菱レイヨン(株)商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.5μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
【0031】
配合するゴム粒子の平均粒径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜0.6μmの範囲がより好ましい。本発明におけるゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することが出来る。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、FPRA−1000(大塚電子(株)社製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0032】
ゴム粒子を配合する場合の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、2〜5質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0033】
[その他の熱硬化性樹脂]
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて本発明の効果が発揮される範囲でマレイミド化合物、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂などのその他の熱硬化性樹脂を配合することもできる。このような熱硬化性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。マレイミド樹脂としてはBMI1000、BMI2000、BMI3000、BMI4000、BMI5100(大和化成工業(株)製)、BMI、BMI−70、BMI−80(ケイ・アイ化成(株)製)、ANILIX−MI(三井化学ファイン(株)製)、ビスアリルナジイミド化合物としてはBANI−M、BANI−X(丸善石油化学工業(株)製)ビニルベンジル樹脂としてはV5000(昭和高分子(株)製)、ビニルベンジルエーテル樹脂としてはV1000X、V1100X(昭和高分子(株)製)が挙げられる。
【0034】
[難燃剤]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲で難燃剤を含有しても良い。難燃剤は2種以上を混合して用いてもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のホスフィン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX310等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB100、SPE100等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)社製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0035】
[樹脂添加剤]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲で、上述した以外の他の各種樹脂添加剤を任意で含有しても良い。樹脂添加剤としては、例えばシリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、シランカップリング剤、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。また、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z−CN、C11Z−CNS、C11Z−A、2MZ−OK、2MA−OK、2PHZ(四国化成工業(株)商品名)等のイミダゾール化合物;ノバキュア(旭化成工業(株)商品名)、フジキュア(富士化成工業(株)商品名)等のアミンアダクト化合物;1、8−ジアザビシクロ(5、4、0)ウンデセン−7(以下DBUと略称する)系テトラフェニルボレート塩等の3級アミン化合物;等のアミン系硬化促進剤などが挙げられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合する方法などが挙げられる。
【0037】
本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、支持体上に塗布し樹脂組成物層を形成させて接着フィルムとするか、または繊維からなるシート状繊維基材中に該樹脂組成物を含浸させてプリプレグとすることが好ましい。本発明の樹脂組成物はワニス状態で回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には、一般に、接着フィルムまたはプリプレグ等のシート状積層材料の形態として絶縁層形成に用いられるのが好ましい。
【0038】
[接着フィルム]
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体上に、この樹脂ワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0039】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種を使用しても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有割合は10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。乾燥条件は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることができる。
【0041】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、導体層の厚さ以上とするのが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。樹脂組成物層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0042】
本発明における支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、とくにPETが好ましい。支持体として銅箔、アルミニウム箔等の金属箔を使用し、金属箔付接着フィルムとすることもできる。保護フィルムは、同様のプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。また支持体及び保護フィルムはマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。また、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあってもよい。
【0043】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmの範囲が好ましく、25〜50μmの範囲で用いられるのがより好ましい。また保護フィルムの厚さも特に制限されないが、1〜40μmの範囲が好ましく、10〜30μmの範囲で用いられるのがより好ましい。
【0044】
本発明における支持体は、内層回路基板等にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持体を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができ、また硬化後の絶縁層の表面平滑性を向上させることができる。硬化後に剥離する場合、支持体には予め離型処理が施されるのが好ましい。なお、支持体上に形成される樹脂組成物層は、層の面積が支持体の面積より小さくなるように形成するのが好ましい。また接着フィルムは、ロール状に巻き取って、保存、貯蔵することができる。
【0045】
[接着フィルムを用いた多層プリント配線板等の製造方法]
次に、本発明の接着フィルムを用いて本発明の多層プリント配線板等の回路基板を製造する方法について説明する。樹脂組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、樹脂組成物層を内層回路基板に直接接するように、内層回路基板の片面又は両面にラミネートする。本発明の接着フィルムにおいては真空ラミネート法により減圧下で内層回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び内層回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0046】
本発明における内層回路基板とは、主として、ガラスエポキシ、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層および導体層が形成されるべき中間製造物も本発明における内層回路基板に含まれる。内層回路基板において、導体回路層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の内層回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0047】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)とし、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。
【0048】
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0049】
また、減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことも可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。
【0050】
プレス条件として、減圧度は1×10−2MPa以下が好ましく、1×10−3MPa以下がより好ましい。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cm2の範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が1〜40kgf/cm2の範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は30〜120分で行うのが好ましい。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0051】
このように接着フィルムを内層回路基板にラミネートした後、支持体を剥離する場合は剥離し、樹脂組成物を熱硬化することにより内層回路基板に絶縁層を形成することができる。加熱硬化の条件は150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分である。
【0052】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次に内層回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行いビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけがもっとも一般的な方法である。
【0053】
次いで、絶縁層表面に粗化処理を行う。本発明における粗化処理は、酸化剤を使用した湿式粗化方法で行うのが好ましい。酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルトアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を用いて粗化を行うのが好ましい。
【0054】
絶縁層表面を粗化処理した粗化面の粗さは、微細配線を形成する上で、Ra値で0.05〜0.5μmであるのが好ましい。なお、Ra値とは、表面粗さを表す数値の一種であり、算術平均粗さと呼ばれるものであって、具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。例えば、ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値により求めることができる。
【0055】
次に、粗化処理により凸凹のアンカーが形成された樹脂組成物層表面に、無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。なお導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。導体層のピール強度は、0.6kgf/cm以上であるのが好ましい。
【0056】
また、導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
【0057】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を繊維からなるシート状繊維基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱により半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状繊維基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。
【0058】
繊維からなるシート状繊維基材としては、例えばガラスクロスやアラミド繊維等、プリプレグ用繊維として常用されているものを用いることができる。
【0059】
ホットメルト法は、樹脂を有機溶剤に溶解することなく、樹脂を樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコーターにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様、樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスにシート状繊維基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0060】
[プリプレグを用いた多層プリント配線板等の製造方法]
次に本発明のプリプレグを用いて本発明の多層プリント配線板等の回路基板を製造する方法について説明する。内層回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートを挟み加圧・加熱条件下でプレス積層する。圧力は好ましくは5〜40kgf/cm
2(49×10
4〜392×10
4N/m
2)、温度は好ましくは120〜200℃で20〜100分の範囲で成型するのが好ましい。また接着フィルムと同様に真空ラミネート法により内層回路基板にラミネートした後、加熱硬化することによっても製造可能である。その後、前述の方法と同様、酸化剤により硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をメッキにより形成することで、多層プリント配線板等の回路基板を製造することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明をいかなる意味においても制限するものではない。なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0062】
(実施例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)35部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000H」)35部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954」不揮発分30質量%のメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)とシクロヘキサノンの1:1溶液)40部とをMEK10部、シクロヘキサノン3部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」不揮発分60質量%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)45部、4級ホスホニウム系硬化促進剤である(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート(北興化学工業(株)製、「TPTP−SCN」不揮発分10質量%のジメチルホルムアミド(以下「DMF」と略称する。)溶液)2部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)70部、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスをポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下「PET」と略称する。)上に、乾燥後の樹脂厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥した(残留溶媒量約2質量%)。次いで樹脂組成物の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリット(slit)し、これより507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0063】
(実施例2)
実施例1の4級ホスホニウム系硬化促進剤である(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート(北興化学工業(株)製、「TPTP−SCN」不揮発分10質量%のDMF溶液)2部を、同じく4級ホスホニウム系硬化促進剤であるテトラフェニルホスホニウムチオシアネート(北興化学工業(株)製、「TPP−SCN」不揮発分5質量%のDMF溶液)4部に変更する以外は、全く同様にして接着フィルムを得た。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0064】
(実施例3)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)18部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)20部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)6部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7553」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)12部とをMEK8部、シクロヘキサノン8部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」不揮発分60質量%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)13部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「EXB−9460」不揮発分65質量%のトルエン溶液、活性エステル当量223)20部、4級ホスホニウム系硬化促進剤であるテトラブチルホスホニウムデカン酸塩(北興化学工業(株)製、「TBP−DA」)0.2部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)75部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」不揮発分15質量%のエタノールとトルエンの1:1溶液)18部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0065】
(実施例4)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」)25部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬(株)製「NC3000L」)25部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量162、DIC(株)製「HP−4700」)6部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量38000、ジャパンエポキシレジン(株)製「YL7553」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)12部とをMEK5部、シクロヘキサノン5部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」不揮発分60質量%のMEK溶液、フェノール性水酸基当量124)36部、4級ホスホニウム系硬化促進剤であるブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート(北興化学工業(株)製、「TPPB−SCN」不揮発分10質量%のDMF溶液)2部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アミノシラン処理付「SOC2」アドマテックス社製)190部、ポリビニルブチラール樹脂溶液(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」不揮発分15質量%のエタノールとトルエンの1:1溶液)12部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0066】
(比較例1)
実施例1の4級ホスホニウム系硬化促進剤を加えないこと以外は、全く同様にして接着フィルムを得た。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0067】
(比較例2)
実施例1の4級ホスホニウム系硬化促進剤である(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート(北興化学工業(株)製、「TPTP−SCN」不揮発分10質量%のDMF溶液)2部を、同じく4級ホスホニウム系硬化促進剤であるDBU系テトラフェニルボレート塩(サンアプロ株式会社製、「U−CAT 5002」不揮発分10質量%のMEK溶液)2部に変更する以外は、全く同様にして接着フィルムを得た。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0068】
(比較例3)
実施例3の4級ホスホニウム系硬化促進剤であるテトラブチルホスホニウムデカン酸塩(北興化学工業(株)製、「TBP−DA」)0.2部を、同じく4級ホスホニウム系硬化促進剤であるトリフェニルホスフィントリフェニルボラン(北興化学工業(株)製、「TPP−S」不揮発分10質量%のDMF溶液)2部に変更する以外は、全く同様にして接着フィルムを得た。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0069】
(比較例4)
実施例1の4級ホスホニウム系硬化促進剤である(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート(北興化学工業(株)製、「TPTP−SCN」不揮発分10質量%のDMF溶液)2部を、同じく4級ホスホニウム系硬化促進剤であるテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(北興化学工業(株)製、「TPP−K」)0.2部に変更する以外は、全く同様にして接着フィルムを得た。次に、かかる樹脂ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0070】
<ピール強度およびRa値測定用サンプルの調製>
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES]の両面をメック(株)製CZ8100に浸漬して銅表面の粗化処理をおこなった。
【0071】
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500(名機(株)製商品名)を用いて、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0072】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化し絶縁層を形成した。
【0073】
(4)粗化処理
絶縁層を形成した内層回路基板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で5分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。この基板を用いて粗化処理後の絶縁層表面の表面粗さ(Ra値)の測定を行った。
【0074】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
絶縁層表面に回路を形成するために、内層回路基板を、PdCl
2を含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、30±5μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。この回路基板についてメッキ導体層のピール強度の測定を行った。
【0075】
<メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価>
回路基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの切込みをカッターを用いていれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重を測定した。荷重が0.75kgf/cm以上の場合を「◎」とし、0.75kgf/cm未満0.62kgf/cm以上の場合を「○」とし、0.62kgf/cm未満0.40kgf/cm以上の場合を「△」とし、0.40kgf/cm未満の場合を「×」として評価した。
【0076】
<粗化後の表面粗さ(Ra値)の測定及び評価>
非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値を測定した。そして10点の平均の表面粗さを求めることによりRa値とした。Ra値が500nm以上の場合を「××」とし、500nm未満420nm以上の場合を「×」とし、420nm未満380nm以上の場合を「△」とし、380nm未満300nm以上の場合を「○」とし、300nm未満200nm以上の場合を「◎」とし、200nm未満の場合を「◎◎」として評価した。
【0077】
実施例及び比較例で得られたワニスを使用した評価サンプルのメッキ導体層のピール強度及び粗化後の表面粗さ(Ra値)の結果について下記の表1に記載した。表1から明らかなように、実施例の樹脂組成物においては、絶縁層の表面粗度が低いにも関わらず、高いピール強度を有する導体層が形成されている。このように本発明においては、低い表面粗さが達成されるので、微細配線化に有利なことがわかる。4級ホスホニウム系硬化促進剤を添加していない比較例1では、同等のピール強度を得るための粗度が増大している。比較例2は、アミン系硬化剤を使用しているが、やはり粗度が増大する結果となった。比較例3、4では、硬化促進剤として同様のトリフェニルホスフィン系硬化促進剤を用いているが、実施例と比較し、低粗度かつ高ピールの両立は達成されなかった。
【0078】
【表1】