特許第6267142号(P6267142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267142
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】空調システム、建物及びデータセンター
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20180115BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20180115BHJP
   F24F 11/76 20180101ALI20180115BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20180115BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20180115BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20180115BHJP
   F24F 6/02 20060101ALI20180115BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20180115BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20180115BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180115BHJP
   F24F 110/00 20180101ALN20180115BHJP
   F24F 130/00 20180101ALN20180115BHJP
【FI】
   F24F3/14
   F24F11/02 F
   F24F5/00 101Z
   F24F11/02 K
   F24F6/02 Z
   F24F7/06 B
   G06F1/20 C
   G06F1/20 D
   H05K7/20 U
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-43237(P2015-43237)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-161272(P2016-161272A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年2月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500257300
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 巌
(72)【発明者】
【氏名】冨山 隆司
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山中 敦
(72)【発明者】
【氏名】皆川 真一朗
(72)【発明者】
【氏名】治部 晴巳
(72)【発明者】
【氏名】柏 和幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉人
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−063224(JP,A)
【文献】 特開2003−266092(JP,A)
【文献】 特開2002−168485(JP,A)
【文献】 特開2002−243220(JP,A)
【文献】 特開2012−125734(JP,A)
【文献】 実開平05−009545(JP,U)
【文献】 特開平06−074402(JP,A)
【文献】 特開2001−241736(JP,A)
【文献】 特開2003−161499(JP,A)
【文献】 特開平09−236290(JP,A)
【文献】 特開2010−071512(JP,A)
【文献】 特開2001−074331(JP,A)
【文献】 特開2002−061896(JP,A)
【文献】 特開2007−303711(JP,A)
【文献】 特開2012−184864(JP,A)
【文献】 特開2014−009867(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/068767(WO,A1)
【文献】 実開平03−067939(JP,U)
【文献】 実開昭52−154069(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/14
F24F 5/00
F24F 6/02
F24F 7/06
F24F 11/02
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の物品が収納された収納室の温度を調整する空調システムにおいて、
冷媒を循環させることで前記収納室の室温を調整する温度調整装置と、
前記収納室から排出される空気に対して加湿し、当該加湿された空気を前記収納室に送る加湿装置と、を備え
前記加湿装置は、第一加湿部と、前記第一加湿部が正常でない場合に動作する第二加湿部と、を備え
前記第一加湿部は、前記収納室から排出された空気を、貯留された水中に送ることで加湿し、
前記第二加湿部は、前記収納室から排出された空気を、流れる水に沿うように送ることで加湿することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
請求項に記載の空調システムにおいて、
前記冷媒を冷やす冷却装置と、
前記収納室に対して外気を取り込む換気装置と、
前記温度調整装置、前記冷却装置及び前記換気装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、一日を第一の時間帯と、前記第一の時間帯よりも外気温が低くなる第二の時間帯とに分類し、前記第一の時間帯では前記換気装置及び前記冷却装置を停止させた状態で前記温度調整装置を駆動させて前記収納室の室温を調整し、前記第二の時間帯では前記温度調整装置を停止させた状態で前記換気装置を駆動させ前記収納室に対して外気を取り込むとともに、前記冷却装置を駆動させ前記冷媒を冷やすことを特徴とする空調システム。
【請求項3】
物品が収納された収納室と、
冷媒を循環させることで前記収納室の室温を調整する温度調整装置と、
前記収納室から排出される空気に対して加湿し、当該加湿された空気を前記収納室に送る加湿装置と、を備え、
前記加湿装置は、第一加湿部と、前記第一加湿部が正常でない場合に動作する第二加湿部と、を備え
前記第一加湿部は、前記収納室から排出された空気を、貯留された水中に送ることで加湿し、
前記第二加湿部は、前記収納室から排出された空気を、流れる水に沿うように送ることで加湿することを特徴とする建物。
【請求項4】
サーバ装置が収納されたサーバ室と、
冷媒を循環させることで前記サーバ室の室温を調整する温度調整装置と、
前記サーバ室から排出される空気に対して加湿し、当該加湿された空気を前記サーバ室に送る加湿装置と、を備え、
前記加湿装置は、第一加湿部と、前記第一加湿部が正常でない場合に動作する第二加湿部と、を備え
前記第一加湿部は、前記サーバ室から排出された空気を、貯留された水中に送ることで加湿し、
前記第二加湿部は、前記サーバ室から排出された空気を、流れる水に沿うように送ることで加湿することを特徴とするデータセンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム、建物及びデータセンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数のサーバ装置が設置されたデータセンター等の建物においては、サーバ装置を安定して稼働させるため、当該サーバ装置が設置されたサーバ室内の温度を均一に保つ空調システムが設けられている(例えば特許文献1参照)。このような空調システムでは、サーバ室内の空気を建物内で循環させながら当該空気の温度を調整して、サーバ室に供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−190494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サーバ装置はほぼ一定の温度下に常に置いておく必要があるだけでなく、湿度もほぼ一定にしておかなければならない。一般的な加湿装置をサーバ室内に設けることも考えられるが、より効率的な運用を可能とする加湿装置の設置が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、室内の温度及び湿度をそれぞれ所定範囲内で安定させるための効率的な加湿環境を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、
建物内の物品が収納された収納室の温度を調整する空調システムにおいて、
冷媒を循環させることで前記収納室の室温を調整する温度調整装置と、
前記収納室から排出される空気に対して加湿し、当該加湿された空気を前記収納室に送る加湿装置と、を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の空調システムにおいて、
前記加湿装置は、前記収納室から排出された空気を、貯留された水中に送ることで加湿する第一加湿部を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の空調システムにおいて、
前記加湿装置は、前記収納室から排出された空気を、流れる水に沿うように送ることで加湿する第二加湿部を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空調システムにおいて、
前記冷媒を冷やす冷却装置と、
前記収納室に対して外気を取り込む換気装置と、
前記温度調整装置、前記冷却装置及び前記換気装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、一日を第一の時間帯と、前記第一の時間帯よりも外気温が低くなる第二の時間帯とに分類し、前記第一の時間帯では前記換気装置及び前記冷却装置を停止させた状態で前記温度調整装置を駆動させて前記収納室の室温を調整し、前記第二の時間帯では前記温度調整装置を停止させた状態で前記換気装置を駆動させ前記収納室に対して外気を取り込むとともに、前記冷却装置を駆動させ前記冷媒を冷やすことを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の発明に係る建物は、
物品が収納された収納室と、
冷媒を循環させることで前記収納室の室温を調整する温度調整装置と、
前記収納室から排出される空気に対して加湿し、当該加湿された空気を前記収納室に送る加湿装置と、を備えることを特徴としている。
【0011】
請求項6記載の発明に係るデータセンターは、
サーバ装置が収納されたサーバ室と、
冷媒を循環させることで前記サーバ室の室温を調整する温度調整装置と、
前記サーバ室から排出される空気に対して加湿し、当該加湿された空気を前記サーバ室に送る加湿装置と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、室内の温度及び湿度をそれぞれ所定範囲内で安定させるための効率的な加湿環境を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係るデータセンターの概略構成を示す説明図である。
図2】本実施形態に係る空調システムの主制御構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る第二加湿部の概略構成を示す説明図である。
図4】本実施形態に係る第二加湿部の二階部分における配置例を示す平面図である。
図5】本実施形態に係る第一加湿部の平面的なレイアウトを示す模式図である。
図6】本実施形態に係る換気装置の概略構成を示す模式図である。
図7】本実施形態に係る温度調整処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。以下、図面を参照しながら、この発明の一実施形態について詳しく説明する。
【0015】
[1.データセンターの構成の説明]
まず、本実施形態に係る建物としてのデータセンター100の構成について説明する。図1は、データセンター100の概略構成を示す説明図である。図2は、データセンター100に備わる空調システム1の主制御構成を示すブロック図である。図1に示すようにデータセンター100は、例えば地下一階、地上3階の建物である。地下一階部分101には、冷媒としての水を貯留する冷水槽102と、加湿用の水を貯留する加湿用水槽103とが設けられている。一階部分111には、後述する冷却装置2の冷凍機21が設置されている。
【0016】
二階部分112には、複数のサーバ装置31が収納されたサーバ室3と、サーバ室3内に対して外気を取り込む換気装置4とが設けられている。換気装置4は、二階部分112の外壁近傍に配置されている。三階部分113は、サーバ室3と連通していて、当該サーバ室3の空気を取り込むことで、サーバ装置31から発生した熱を排熱する排熱エリアとなっている。屋上部分114には、冷却装置2の冷却塔22が設置されている。
【0017】
また、空調システム1には、図1及び図2に示すように、サーバ室3から排出される空気に対して加湿し、当該加湿した空気をサーバ室3に送る加湿装置5が設けられている。加湿装置5には、第一加湿部6と、第二加湿部7とが設けられている。
【0018】
第一加湿部6は、サーバ室3から排出された空気を排熱エリアから取り込み、当該空気を加湿用水槽103に送ることで加湿するようになっている。具体的に、第一加湿部6には、排熱エリアから加湿用水槽103まで配された第一配管61と、排熱エリアの空気を第一配管61を介して加湿用水槽103まで送るポンプ62と、加湿用水槽103からサーバ室3まで配された第二配管63と、加湿用水槽103の空気を第二配管63を介してサーバ室3まで送るダンパ64とが設けられている。
【0019】
第一配管61の加湿用水槽103側の端部は、加湿用水槽103の水中に配置されている。他方、第二配管63の加湿用水槽103側の端部は、加湿用水槽103の水面よりも上に配置されている。第一配管61を通った空気は、加湿用水槽103の水中を通過することで加湿されて水上に浮き上がり、第二配管63を通過することによってサーバ室3まで送られることになる。
【0020】
図3は、第二加湿部7の概略構成を示す説明図である。図3に示すように、第二加湿部7の内部には、第一室71と、第一室に隣接する第二室72とが設けられている。
【0021】
第一室71は上下方向に沿う空間を有しており、その上端部には第一室71から外部への空気の流量を調整するための第一ダンパ73が設置されている。また第一室71の上部側面には、排熱エリアから第一室71への空気の流量を調整するための第二ダンパ74が設置されている。第一室71の下部には開口75が設けられており、これにより第一室71と第二室72とが連通している。
【0022】
第二室72は、上下方向に沿う空間を有しており、その上部側面には、サーバ室3に空気を送るためのファン部76が設けられている。また、第二室72内の天井部には、水を噴霧して第二室72内に供給する給水部77が設けられている。給水部77の下方には、給水部77から噴霧された水の流路78が形成されている。
【0023】
流路78は、例えば親水性を有する複数の板材79により形成されている。複数の板材79は上下方向に蛇腹状となるように配置されている。各板材79の上端部は壁面に当接していて、下端部は、隣り合う板材79の上端部から離間して配置されている。これにより、給水部77から供給された水滴は、最も上の板材79から、順次下方の板材79に落下しながら、全ての板材79の表面に沿って流れ落ちていく(図3中、矢印Y1参照)。
【0024】
また、ファン部76が駆動すると、第一室71内の空気は、開口75を介して第二室72に移動して、各板材79がなす隙間を通りながらファン部76に到達し(図3中、矢印Y2参照)、サーバ室3に送られる。この際、流路78を流れる水に空気が晒されるために、空気が加湿される。
【0025】
図4は、第二加湿部7の二階部分112における配置例を示す平面図である。第一室71及び第二室72は、二階部分112の各角部に配置されており、第一室71の方が第二室72よりも外側に配置されている。
【0026】
図5は、第一加湿部6の平面的なレイアウトを示す模式図である。なおこの図5においては第二加湿部7の全体的なレイアウトを上方から見た図であり、全ての階層の構成を含んで示している。第一加湿部6の第一配管61は、一端部が第一室71に設けられ、他端部が加湿用水槽103に設けられており、第一室71を介して排熱エリアに連通している。第一配管61の途中位置にはポンプ62が設けられている。第一加湿部6の第二配管63は、加湿用水槽103から延びてサーバ室3内に配されている。第二配管63におけるサーバ室3内に配された部分には、複数のダンパ64が所定の間隔を空けて設けられている。
【0027】
なお、第二加湿部7の給水部77は、一端部が第二室72に設けられ、他端部が加湿用水槽103に設けられた配管771と、配管771の途中位置に設けられたポンプ772とが設けられている。つまり、給水部77から第二室72に給水される水は加湿用水槽103から供給される。
【0028】
また、空調システム1には、冷水槽102に貯留された水を循環させることでサーバ室3の室温を調整する温度調整装置8が設けられている。温度調整装置8には、サーバ室3内に配置された冷却コイル81と、冷水槽102から冷却コイル81まで配された第三配管82と、冷却コイル81から冷水槽102まで配された第四配管83と、冷水槽102の水が第三配管82、冷却コイル81及び第四配管83という順でこれらを通過し、冷水槽102まで循環するように、冷水槽102の水を吸引するポンプ84とが設けられている。冷水槽102の水が冷却コイル81に到達すると、冷却コイル81の周囲の空気が冷やされる。この冷やされた空気を用いることで、サーバ室3の室温を一定温度に保つことができる。
【0029】
第三配管82の吸水口と、第四配管83の排水口とは、冷水槽102で離れた位置に配置されている。循環後に暖まった水が第四配管83から排水されたとしても、すぐさま第三配管82に吸水されないために、冷却コイル81には排水の影響の少ない水が送られることになる。
【0030】
空調システム1に備わる冷却装置2は、冷凍サイクルにより冷水槽102内の水を冷やすものであり、冷凍機21及び冷却塔22を備えている。冷凍機21には、冷水槽102の水を吸水するための第五配管23と、冷水槽102に排水するための第六配管24とが取り付けられている。第五配管23の吸水口は第四配管83の排水口近傍に配置されている。第六配管24の排水口は第三配管82の吸水口近傍に配置されている。冷却装置2は、第五配管23から取り込んだ水を所定温度に冷却して、第六配管24から冷水槽102に排水するようになっている。
【0031】
また、冷凍機21には、冷却塔22まで配された第七配管25及び第八配管26が設けられており、この第七配管25及び第八配管26を介して、冷凍機21内の冷却水を冷却塔22まで循環させることで、一時的に温まった冷却水を冷却塔22で冷やして冷凍機21へ循環できるようになっている。
【0032】
図1及び図4に示すように空調システム1に備わる換気装置4は、二階部分112の外壁近傍に配置されている。図6は、換気装置4の概略構成を示す模式図である。図6に示すように、換気装置4は、外気の流路を開閉するためのシャッター部41と、流路を通過するように外気をサーバ室3内に送風するファン部42と、流路を覆うように配置され、通気性を有する微細メッシュネット43とを備えている。
【0033】
具体的にシャッター部41は、二階部分112の外壁に設けられた開口に対して取り付けられており、この開口を開閉することで外気の流路を開閉するようになっている。なお、シャッター部41とは閉塞時に完全に外気の通過を遮蔽するものであり、例えば重量シャッターなどが挙げられる。
【0034】
ファン部42は、複数のファン421を備えており、これらがシャッター部41よりも内側に配置されている。複数のファン421が駆動することによって外気を室内へと送る気流が発生する。
【0035】
微細メッシュネット43は、シャッター部41とファン部42との間に配置されている。微細メッシュネット43の各孔径は0.2〜0.6mmが好ましく、さらには0.25〜0.5mmであることが好ましい。この微細メッシュネット43を外気が通過することで、通過後の空気の流れが面方向で均一化されることになる。さらに、虫や埃の侵入も防止することができる。
【0036】
また、図2に示すように、空調システム1には、当該空調システム1に設けられた各駆動部を制御する制御装置9が設けられている。具体的には、制御装置9は、第一加湿部6のポンプ62及びダンパ64と、第二加湿部7の第一ダンパ73、第二ダンパ74、ファン部76及び給水部77と、換気装置4のシャッター部41及びファン部42と、温度調整装置8のポンプ84と、冷却装置2の冷凍機21及び冷却塔22とに電気的に接続されていて、これらを統括的に制御するようになっている。
【0037】
制御装置9は、一日を第一の時間帯(昼間)と、第一の時間帯よりも外気温が低くなる第二の時間帯(夜間)とに分類し、第一の時間帯では換気装置4及び冷却装置2を停止させた状態で温度調整装置8を駆動させてサーバ室3の室温を調整する。他方、第二の時間帯では、制御装置9は、温度調整装置8を停止させた状態で換気装置4を駆動させサーバ室3に対して外気を取り込むとともに、冷却装置2を駆動させ冷水槽102内の水を冷やすようになっている。
【0038】
なお第一の時間帯と、第二の時間帯との区別は上述したように単に時間で区切っても良いし、外気温が所定温度よりも高い温度となる時間帯を第一の時間帯とし、外気温が所定温度以下となる時間帯を第二の時間帯としてもよい。この所定温度とは、サーバ装置31を安定して稼働させるための温度の上限値である。
【0039】
[2.動作の説明]
次に、制御装置9によるデータセンター100の温度調整処理の具体例について説明する。図7は温度調整処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
図7に示すように、温度調整処理が開始されると、制御装置9は、第一加湿部6が正常であるか否かを判断し(ステップS1)、正常であると判断した場合にはステップS2に移行し、正常でないと判断した場合にはステップS3に移行する。
【0041】
ステップS2では、制御装置9は第一加湿部6を駆動させる。具体的には制御装置9は、ポンプ62を駆動させて排熱エリアの空気を第一室71を介して加湿用水槽103まで送るとともに、ダンパ64を開放させて加湿用水槽103の空気をサーバ室3に送る。このように送られた空気は、加湿用水槽103の水中を通過することで加湿されてサーバ室3まで送られることになる。
【0042】
なお、このとき制御装置9は、第二加湿部7の第一ダンパ73及び第二ダンパ74を制御して、排熱エリアから第二ダンパ74、第一室71、第一配管61を介して加湿用水槽103まで送られる空気の量と、排熱エリアから第二ダンパ74、第一室71及び第一ダンパ73を通って外部へと排出される空気の量とが最適となるようにしている。
【0043】
ステップS3では、制御装置9は第二加湿部7を駆動させる。具体的には制御装置9は、第一ダンパ73を開状態、第二ダンパ74を開状態としてから、給水部77及びファン部76を駆動させる。このときにおいても、制御装置9は、第二加湿部7の第一ダンパ73及び第二ダンパ74を制御して、排熱エリアから第二ダンパ74を介して第一室71まで送られる空気の量と、排熱エリアから第二ダンパ74、第一室71及び第一ダンパ73を通って外部へと排出される空気の量とが最適となるようにしている。
【0044】
給水部77が駆動すると、水が最も上の板材79に供給されて、順次下方の板材79に落下しながら、全ての板材79の表面に沿って流れ落ちる。また、ファン部76が駆動すると、第二ダンパ74を介して排熱エリアから第一室71に供給された空気は、開口75を介して第二室72に移動して、各板材79がなす隙間を通りながらファン部76に到達し、サーバ室3に送られる。この際、流路78を流れる水に空気が晒されるために、空気が加湿される。
【0045】
次いで、制御装置9は、現在の時間帯が第一の時間帯であるか第二の時間帯であるかを判断し(ステップS4)、第一の時間帯である場合はステップS5に移行し、第二の時間帯である場合はステップS8に移行する。
【0046】
ステップS5では、制御装置9は換気装置4を停止させる。具体的には制御装置9は、シャッター部41を閉状態として、ファン部42を停止させる。これにより、サーバ室3内に外気が進入しない状態となる。
【0047】
ステップS6では、制御装置9は冷却装置2を停止させる。具体的には制御装置9は、冷凍機21及び冷却塔22を待機状態とする。これにより、冷凍機21及び冷却塔22の消費電力が大幅に低下する。
【0048】
ステップS7では、制御装置9は温度調整装置8を駆動させることでサーバ室3の室温を調整する。具体的には制御装置9は、ポンプ84を駆動させて、冷水槽102の水を第三配管82、冷却コイル81及び第四配管83という順で通過させ、冷水槽102まで循環させる。冷水槽102の水が冷却コイル81に到達すると、冷却コイル81の周囲の空気が冷やされる。この冷やされた空気を用いることで、サーバ室3の室温を一定温度に保つことができる。
【0049】
ステップS8では、制御装置9は温度調整装置8を停止させる。具体的には制御装置9はポンプ84を停止させて、冷水槽102の水の循環を停止させる。
【0050】
ステップS9では、制御装置9は冷却装置2を駆動させる。具体的には制御装置9は冷凍機21及び冷却塔22を駆動させることによって、冷水槽102の水を冷却する。第二の時間帯である夜間帯においては、電気料金が昼間よりも安く設定されているために安価な電力を用いて冷水槽102の水を冷却することができる。
【0051】
ステップS10では、制御装置9は換気装置4を駆動させることでサーバ室3の室温を調整する。具体的には制御装置9は、シャッター部41を開状態として、ファン部42を駆動させる。これにより、サーバ室3内に外気が進入し室温が所定温度以下となる。
【0052】
ステップS7及びステップS10後においては、処理はステップS4に移行するために、第一の時間帯の処理(ステップS5,S6,S7)と、第二の時間帯の処理(ステップS8,S9,S10)とが繰り返されながら継続されることになる。
【0053】
[3.効果]
以上のように、本実施形態によれば、第一の時間帯では換気装置4及び冷却装置2を停止させた状態で温度調整装置8を駆動させてサーバ室3の室温を調整するため、消費電力が冷却装置2よりも小さい温度調整装置8を稼働させるだけで、冷水槽102に貯留された水(冷媒)を用いてサーバ室3の室温を調整することができる。
【0054】
他方、第二の時間帯では、温度調整装置8を停止させた状態で換気装置4を駆動させてサーバ室3に対して外気を取り込むことで、サーバ室3の室温を所定温度以下にすることができる。また、第二の時間帯では、冷却装置2を駆動させて冷水槽102の水を冷やしている。この第二の時間帯は、電気料金が昼間よりも安く設定されている夜間帯であるため、安価な電力を用いて冷水槽102の水を冷却することができる。
【0055】
これらのことから、一日のうち電力使用量のピークを迎える時間帯(第一の時間帯)の消費電力を抑えつつも、一日全体で安定した温度調整が可能となる。したがって、消費電力の面からの社会貢献を図ることができる。
【0056】
また、換気装置4には、外気の流路を開閉するためのシャッター部41が備えられているので、シャッター部41を開閉させるだけで大量の外気を取り込んだり閉塞したりすることができる。また、通気性を有する微細メッシュネット43が外気の流路を閉塞するように配置されているので、微細メッシュネット43を外気が通過することで、通過後の空気の流れを面方向で均一化させることができる。さらに、虫や埃の侵入も防止することができる。
【0057】
また、加湿装置5がサーバ室3から排出される空気に対して加湿しているので、サーバ室3で暖まって飽和水蒸気量の大きくなった空気に対して加湿することができ、より多くの水蒸気を空気中に含ませることができる。そして、加湿された空気は、再度サーバ室3内に送られるため、サーバ室3内の空気を循環させつつ、湿度を安定させることができる。このように、温度調整装置8と加湿装置5とが設けられていることで、サーバ室3内の温度及び湿度をそれぞれ所定範囲内で安定させるための効率的な加湿環境を実現することができる。
【0058】
また、加湿装置5には、サーバ室3から排出された空気を、貯留された水中に送ることで加湿する第一加湿部6が備えられているので、単に水中に空気を送るだけで簡単に加湿することができる。
【0059】
また、加湿装置5は、サーバ室3から排出された空気を、流れる水に沿うように送ることで加湿する第二加湿部7が備えられているので、流れる水に沿うように空気を送るだけで簡単に加湿することができる。
【0060】
さらに加湿系統が2系統備えられているため、一方が不具合を生じたとしても他方を用いれば加湿状態を維持することができ、長期にわたった運用が可能となる。
【0061】
[4.その他]
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、サーバ室3を備えるデータセンター100を建物の一例として説明したが、温度管理の必要な物品が収納された収納室を備えた建物であっても上述した構成を適用することも可能である。
【0062】
また、上記実施形態の第二加湿部7では、サーバ室3から排出された空気を、流れる水に逆流するように送ることで加湿している場合を例示して説明したが、前記空気を流れる水に順流するように送ることで加湿することも可能である。いずれにしろ流れる水に沿うように空気を送るだけで簡単に加湿することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 空調システム
2 冷却装置
3 サーバ室(収納室)
4 換気装置
5 加湿装置
6 第一加湿部
7 第二加湿部
8 温度調整装置
9 制御装置
21 冷凍機
22 冷却塔
31 サーバ装置
41 シャッター部
42 ファン部
43 微細メッシュネット
100 データセンター(建物)
102 冷水槽
103 加湿用水槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7