(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267205
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】リバスティグミンの安定性が改善した医薬品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/27 20060101AFI20180115BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20180115BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
A61K31/27
A61P25/28
A61K9/70 401
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-532962(P2015-532962)
(86)(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公表番号】特表2015-529243(P2015-529243A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】KR2013008426
(87)【国際公開番号】WO2014046472
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0104727
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヨン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウォン−ノ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン−ジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨ−ジン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チュン−ギョ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン−ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘ−ミン
(72)【発明者】
【氏名】シン,セ ビョク
(72)【発明者】
【氏名】キム,フン−テク
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジン フン
【審査官】
伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−051875(JP,A)
【文献】
特表2002−500178(JP,A)
【文献】
特表2009−522288(JP,A)
【文献】
特開2003−246733(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リバスティグミン遊離塩基含有の薬学製剤を含む包装された医薬品において、
前記包装内の酸素含量が10%以下(但し、3.0%以下の場合を除く)であることを特徴とするリバスティグミン含有の医薬品。
【請求項2】
前記医薬品は、薬学製剤としてリバスティグミン遊離塩基含有のパッチを含むことを特
徴とする請求項1に記載のリバスティグミン含有の医薬品。
【請求項3】
リバスティグミン遊離塩基含有の薬学製剤を包装する方法において、
包装内の空気を窒素に置換え、酸素含量を10%以下(但し、3.0%以下の場合を除く)に調整することを特徴とするリバスティグミンの安定性を改善する方法。
【請求項4】
前記方法は、薬学製剤としてリバスティグミン遊離塩基含有のパッチを用いることを特
徴とする請求項3に記載のリバスティグミンの安定性を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバスティグミンの安定性が改善した医薬品に関する。また、本発明は、リバスティグミンの安定性を改善することができる包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)−N−エチル−3−[1−ジメチルアミノ)エチル]−N−メチル−フェニル−カルバメートであるリバスティグミン(rivastigmine)は、アルツハイマー病の治療のために用いられ、中枢神経系においてアセチルコリンエステラーゼを抑制するのに有用である。
【0003】
このようなリバスティグミンは、パッチ剤形として市販されている。パッチ形態の経皮組成物は、イギリス特許第2、203、040号の実施例2に開示されている。このようなパッチは、リバスティグミンを2つの重合体及び可塑剤と混合して粘性組成物を製造した後、前記組成物をホイルに適用して製造される。
【0004】
アメリカ特許第6、335、031号は、リバスティグミンまたはそれの塩を含有する経皮投与組成物に関し、安定化剤を用いることを特徴とする。前記発明によれば、リバスティグミンを含有する経皮投与組成物は、密閉した保管条件でも酸素との酸化反応によって分解されるので、商業的流通に必要な保管期間を確保しにくいと開示している。前記発明は、これを解決するために、トコフェロール(tocopherol)及びそれのエステル、アスコルビン酸(ascorbic acid)、ブチルヒドロキシトルエン(butylhydroxytoluene)、ブチルヒドロキシアニソール(butylhydroxyanisole)、及びプロピルガレート(propyl gallate)のような抗酸化剤を含有するリバスティグミンの経皮投与組成物を開示している。市販中のリバスティグミンの経皮投与製品には、トコフェロールが安定化剤として用いられる。
【0005】
このように、リバスティグミン含有の薬学製剤の安定性を改善しようとする工夫が行われ続けてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、安定性が改善したリバスティグミン含有の医薬品を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、安定性を改善することができるリバスティグミン含有の薬学製剤の包装方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するため、本発明は、リバスティグミン含有の薬学製剤を含む包装された医薬品において、前記包装内の酸素含量が12体積%未満であり、より望ましくは11体積%以下、さらに望ましくは10体積%以下であることを特徴とするリバスティグミン含有の医薬品を提供する。
【0009】
より望ましくは、本発明は、本発明による前記医薬品において、薬学製剤がリバスティグミン遊離塩基含有のパッチであることを特徴とするリバスティグミン含有の医薬品を提供する。
【0010】
また、本発明は、リバスティグミン含有の薬学製剤を包装する方法において、包装内の空気を窒素に置換え、酸素含量を12体積%未満に、より望ましくは11体積%以下に、さらに望ましくは10体積%以下に調整することを特徴とするリバスティグミンの安定性を改善する方法を提供する。
【0011】
より望ましくは、本発明は、本発明による前記方法において、薬学製剤がリバスティグミン遊離塩基含有のパッチであることを特徴とするリバスティグミンの安定性を改善する方法を提供する。
【0012】
本発明者らは、リバスティグミン遊離塩基含有のパッチを包装するための多様な包装方法を研究したところ、包装内の空気を窒素に置換え、酸素含量を12%未満に、望ましくは11%以下に、最も望ましくは10%以下に低下させると、リバスティグミンの安定性が非常に向上することを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、安定性が改善したリバスティグミン含有の医薬品、及びこのような医薬品を製造する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】包装内の酸素含量による分解産物であるImpurity Cの発生量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0016】
<リバスティグミン遊離塩基含有のパッチの製造>
下記の表1に従ってリバスティグミン遊離塩基の薬物粘着層と皮膚粘着層を含むパッチを製造した。
【0018】
具体的に、リバスティグミン遊離塩基、増粘剤、及びアクリル係粘着剤を混合して薬物粘着層溶液を製造した後、シリコーンがコーティングされたポリエステル(PET)フィルムに塗布し、80℃で10分間乾燥した後、支持層としてポリエステルフィルムを覆って薬物粘着層を製造した。前記薬物粘着層とは別途に、シリコーン係粘着剤溶液を、フッ素コーティングのポリエステルフィルムに同一条件で塗布及び乾燥して皮膚粘着層を製造した。薬物粘着層からシリコーンコーティングのポリエステルフィルムを除去して皮膚粘着層に積層し、10cm
2の円形に切り、リバスティグミン遊離塩基を含有するパッチを製造した。
【0019】
<包装中における酸素濃度によるリバスティグミン遊離塩基パッチの安定性の評価>
前記製造したリバスティグミン遊離塩基パッチを、ポリエステル及びアルミニウムの積層された包装材質で包装し、包装内の空気を窒素に置換えていきながら、包装内の残留酸素濃度を測定した。この後、包装された製品を60℃の条件で7日間保管した後、残留酸素濃度によるリバスティグミン遊離塩基の分解産物であるImpurity Cの発生量を測定した。Impurity Cは、酸化によって発生する分解産物であり、化学名は3−アセチルフェニルエチル(メチル)カルバメートである。
【0020】
Impurity Cの発生量測定のための高性能液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography)の分析条件は、以下のとおりである。
注入量(Injection volume):10μl
コラム(Column):RP18−C18、250mm×4.6mm、5μm
検出器(Detector):UV Detector(217nm)
流速(Flow rate):1.0mL/min
維持時間(Run time):30minutes
移動相(mobile phase): 10mM Soldium−1−heptane sulphonate buffer:Acetonitrile(72:28)。
【0021】
その結果を
図1に示した。
図1に示したように、包装内空気中の酸素濃度が増加するほど、リバスティグミン分解産物であるImpurity Cの発生量が増加した。包装内空気中の酸素濃度が10%程度までは、リバスティグミン分解産物であるImpurity Cの発生量に大きい変化がないが、10%を超えると、その発生量が急激に増加した。
【0022】
ICHガイドライン(Quality guidelines Q3B(R2))によれば、完製医薬品において知られた分解産物の限度は、0.5%未満に調節されることが求められている。