(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0004】
ネブライザの要素が湿っているか乾燥しているかを判定するための様々な装置が提示されている。いくつかの実施形態では、ネブライザが提示されている。ネブライザは、霧化要素および振動可能要素を有する、ネブライザ要素を備えてもよい。この振動可能要素は、霧化要素に接触している液体をこの霧化要素に霧化させるべく振動するように構成してもよい。ネブライザは、霧化要素に供給される液体を保持するように構成された貯蔵器を備えてもよい。ネブライザは、制御モジュールを備えてもよい。制御モジュールは、霧化周波数での電気信号を出力して、振動可能要素を作動させるように構成してもよい。制御モジュールは、測定周波数範囲にわたって電気信号の周波数を変化させて、振動可能要素を作動させるように構成してもよい。測定周波数範囲は、第1の周波数から第2の周波数までとしてよい。振動可能要素が、第1の周波数から第2の周波数まで変化する電気信号で作動している間、この振動可能要素の一連のインピーダンス値を制御モジュールによって測定してもよい。制御モジュールは、この一連のインピーダンス値を解析して、霧化要素が乾燥しているかを判定してもよい。
【0005】
このようなネブライザの実施形態は、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。液体は薬剤でもよい。制御モジュールは、霧化要素が液体に接触していないと判定される場合に、振動可能要素を作動させるための電気信号の出力を中止するよう、さらに構成してもよい。振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、霧化要素が乾燥しているかを判定するように構成された制御モジュールは、一連のインピーダンス値のインピーダンス値の間での変化量を解析するように構成された制御モジュールを備えてもよい。振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、霧化要素が乾燥しているかを判定するように構成された制御モジュールは、一連のインピーダンス値のうち少なくともいくつかの連
続したインピーダンス値の間の差を示す一連の差分値を計算するように構成された制御モジュールを備えてもよい。振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、霧化要素が乾燥しているかを判定するように構成された制御モジュールは、一連の差分値を使用してインピーダンス比較値を計算するように構成された制御モジュールと、インピーダンス比較値と所定の比較閾値とを比較して、霧化要素が乾燥しているかを判定するように構成された制御モジュールとを備えてもよい。
【0006】
さらに、または別法として、このようなネブライザの実施形態は、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。一連の差分値を使用してインピーダンス比較値を計算するように構成された制御モジュールは、一連の差分値のうち正の差分値それぞれについて、この正の差分値の2乗値をインピーダンス比較値に加算し、一連の差分値のうち負の差分値それぞれについて、この負の差分値の絶対値をインピーダンス比較値に加算するように構成された制御モジュールを備えてもよい。第1の周波数は、第2の周波数より低くてよい。振動可能要素を作動させるための電気信号を出力するように構成された制御モジュールは、第1の周波数と第2の周波数の間の複数の異なる周波数においてネブライザの振動可能要素を作動させるための電気信号を出力するように構成された制御モジュールを備えてもよい。第1の周波数は95kHzでよく、第2の周波数は128kHzでよい。振動可能要素を作動させるための電気信号を出力するように構成された制御モジュールは、第1の周波数から第2の周波数まで200ms未満で掃引される電気信号を含んでもよく、この制御モジュールは、5ms未満のサンプリング間隔で、一連のインピーダンス値についてインピーダンス値を測定するように構成してもよい。ネブライザは、制御モジュールに電力を供給するように構成された電源を備えてもよい。ネブライザは、霧化要素によって霧化される液体を人が吸入することを可能にするように構成されたマウスピースを備えてもよい。ネブライザは、ネブライザ要素と貯蔵器とを連結するように構成されたハウジングを備えてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、ネブライザを備えるシステムが提示されている。このシステムは、第1の周波数範囲を掃引する検査電気信号を用いて、霧化要素が乾燥している間に振動可能要素を作動させるよう構成された検査モジュールを備えてもよく、ここで、第1の周波数および第2の周波数によって規定される測定周波数範囲は、第1の周波数範囲内にあるとともに、この第1の周波数範囲よりもその帯域幅が狭い。検査モジュールはさらに、第1の周波数範囲を掃引する検査電気信号で振動可能要素を作動させている間、この振動可能要素の一連の検査インピーダンス値を測定するように構成されている。検査モジュールはさらに、この一連の検査インピーダンス値に少なくとも部分的に基づいて、第1の周波数および第2の周波数を決定するように構成されている。ネブライザの制御モジュールはさらに、検査モジュールが決定する第1の周波数および第2の周波数の指示値を記憶するように構成してもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、ネブライザの霧化要素が乾燥していることを判定するための方法が提示されている。この方法は、第1の周波数から第2の周波数まで掃引する電気信号で、ネブライザの振動可能要素を作動させるステップを含んでもよい。この方法は、第1の周波数から第2の周波数まで変化する電気信号でネブライザの振動可能要素を作動させている間、ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を測定するステップを含んでもよい。この方法は、ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、ネブライザの霧化要素が乾燥しているかを判定するステップを含んでもよい。
【0009】
このような方法の実施形態は、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。この方法は、霧化要素が液体を霧化させるための霧化周波数でネブライザの振動可能要素を作動させるステップを含んでもよい。液体は薬剤でもよい。この方法は、霧化要素が液体に接触していないと判定される場合に、電気信号での振動可能要素の作動を中止するステップを
含んでもよい。ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、ネブライザの霧化要素が乾燥しているかを判定するステップは、この一連のインピーダンス値のインピーダンス値の間での変化量を解析するステップを含んでもよい。ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、霧化要素が乾燥しているかを判定するステップは、この一連のインピーダンス値のうち少なくともいくつかの連続したインピーダンス値の間の差を示す一連の差分値を計算するステップを含んでもよい。ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、ネブライザの霧化要素が乾燥しているかを判定するステップは、一連の差分値を使用してインピーダンス比較値を計算するステップと、このインピーダンス比較値と所定の比較閾値とを比較して、霧化要素が湿っているか乾燥しているか判定するステップとを含んでもよい。一連の差分値を使用してインピーダンス比較値を計算するステップは、一連の差分値のうち正の差分値それぞれについて、この正の差分値の2乗値をインピーダンス比較値に加算するステップと、一連の差分値のうち負の差分値それぞれについて、この負の差分値の絶対値をインピーダンス比較値に加算するステップとを含んでもよい。第1の周波数は、第2の周波数より低くてよい。第1の周波数から第2の周波数まで掃引する電気信号でネブライザの振動可能要素を作動させるステップは、第1の周波数と第2の周波数の間の複数の異なる周波数における電気信号で、ネブライザの振動可能要素を作動させるステップを含んでもよい。第1の周波数は約95kHzでよく、第2の周波数は約128kHzでよい。
【0010】
このような方法の実施形態は、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。この方法は、電気信号での振動可能要素の作動を中止した後、一定期間待機するステップを含んでもよい。この方法は、この一定期間の後、第1の周波数から第2の周波数まで掃引する電気信号でネブライザの振動可能要素を作動させるステップを含んでもよい。この方法はまた、この一定期間の後、第1の周波数から第2の周波数まで変化する電気信号でネブライザの振動可能要素を作動させている間、ネブライザの振動可能要素の、第2の一連のインピーダンス値を測定するステップを含んでもよい。この方法は、この一定期間の後、ネブライザの振動可能要素の第2の一連のインピーダンス値を解析して、ネブライザの霧化要素が乾燥しているかを判定するステップを含んでもよい。第1の周波数から第2の周波数まで掃引する電気信号でネブライザの振動可能要素を作動させるステップは、200ms未満の間で行われてもよい。一連のインピーダンス値におけるインピーダンス値は、5ms未満のサンプリング間隔で測定してもよい。この方法は、ネブライザの霧化要素を使用して液体が霧化されている間、周期的な間隔で実行してもよい。周期的な間隔のうち連続した周期的な間隔は、2秒未満の隔たりであってもよい。この方法は、第1の周波数範囲を掃引する検査電気信号を用いて振動可能要素を乾燥している間に作動させるステップを含んでもよく、ここで、第1の周波数および第2の周波数によって規定される第2の周波数範囲は、第1の周波数範囲内にあるとともに、この第1の周波数範囲よりもその帯域幅が狭い。この方法は、第1の周波数範囲を掃引する検査電気信号で振動可能要素を作動させている間、ネブライザの振動可能要素の一連の検査インピーダンス値を測定するステップを含んでもよい。この方法は、この一連の検査インピーダンス値に少なくとも部分的に基づいて、第1の周波数および第2の周波数を決定するステップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ネブライザの霧化要素が乾燥していることを判定するための装置が提示されている。この装置は、第1の周波数から第2の周波数まで掃引する電気信号で、ネブライザの振動可能要素を作動させる手段を備えてもよい。この装置は、第1の周波数から第2の周波数まで掃引する電気信号でネブライザの振動可能要素を作動させている間、ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を測定する手段を備えてもよい。この装置は、ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、ネブライザの霧化要素が乾燥しているかを判定する手段を備えてもよい。
【0011】
このような装置の実施形態は、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。この装置は、霧化要素に液体を霧化させるべく霧化周波数でネブライザの振動可能要素を作動させ
る手段を備えてもよい。液体は薬剤でもよい。この装置は、霧化要素が液体に接触していないと判定される場合に、電気信号での振動可能要素の作動を中止する手段を備えてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、ネブライザの霧化要素が乾燥していることを判定するシステムが提示されている。このシステムは制御装置を備えてもよい。この制御装置は、霧化周波数での電気信号でネブライザの振動可能要素を作動させて液体を霧化させるようにするように構成してもよい。この制御装置は、測定周波数範囲にわたって電気信号を変化させて、振動可能要素を作動させるように構成してもよく、ここで、この電気信号は、第1の周波数から第2の周波数まで掃引する。この制御装置は、第1の周波数から第2の周波数まで掃引する電気信号で振動可能要素が作動している間、この振動可能要素の一連のインピーダンス値が測定されるように構成してもよい。制御装置は、この一連のインピーダンス値を解析して、霧化要素が乾燥しているかを判定するように構成してもよい。
【0013】
このようなシステムの実施形態は、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。液体は薬剤でもよい。制御装置は、霧化要素が液体に接触していないと判定される場合に、電気信号が振動可能要素を作動させるのを中止するよう構成してもよい。ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、ネブライザの霧化要素が乾燥しているかを判定するように構成された制御装置は、一連のインピーダンス値のインピーダンス値の間での変化量を解析するように構成された制御装置を備えてもよい。実施形態によっては、患者に薬剤を送達するための方法が提示される。この方法は、マウスピースを画定するハウジングを備え、霧化要素および振動可能要素を有するネブライザを設けるステップを含んでもよい。この方法は、霧化要素に液体薬剤を供給するステップを含んでもよい。この方法は、霧化要素に液体薬剤を霧化させる霧化周波数での電気信号でネブライザの振動可能要素を作動させるステップを含んでもよい。霧化される液体薬剤は、マウスピースを通した吸入に利用可能でもよい。この方法は、第1の周波数から第2の周波数まで掃引する測定周波数範囲にわたって、電気信号を変化させるステップを含んでもよい。この方法は、第1の周波数から第2の周波数まで電気信号を掃引している間に、ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を測定するステップを含んでもよい。この方法は、ネブライザの振動可能要素の一連のインピーダンス値を解析して、霧化要素の液体薬剤が乾燥しているかを判定するステップを含んでもよい。この方法は、霧化要素の液体薬剤が乾燥していると判定することに少なくとも部分的に基づいて、電気信号での振動可能要素の作動を中止するステップを含んでもよい。
【0014】
以下の図面を参照することにより、本発明の本質および利点をさらに理解できるようになる。
(詳細な説明)
ネブライザの要素に液体が存在しない状態でネブライザを作動させると、結果として、ネブライザおよび/またはネブライザの要素が損傷する可能性がある。したがって、ネブライザの要素が乾燥しているときには、この要素を作動させることを回避するのが望ましい場合がある。ネブライザ要素が液体に接触している(ネブライザ要素が湿っている)のか、液体に接触していない(ネブライザ要素が乾燥している)のかを判定するための、様々な実施形態を説明する。
【0015】
本明細書において提示する実施形態は、ネブライザ要素のインピーダンスを測定することを対象とする。ネブライザ要素のインピーダンスは、周期的かつ複数の周波数で測定してもよい。測定されたインピーダンス値を使用して、ネブライザ要素が液体に接触しているかを判定してもよい。一定範囲の周波数にわたってネブライザ要素のインピーダンスを測定することにより、液体がネブライザ要素に接触しているかを判定してもよい。ネブライザ要素のインピーダンスを測定することに加えて、さらにまたは別法として、ネブライ
ザ要素の位相を測定し、それを使用して、ネブライザ要素が液体に接触しているかを判定してもよいことを理解されたい。
【0016】
ネブライザ要素は、液体を振動および/または霧化するネブライザの構成部品を指してもよい。ネブライザ要素は、液体を霧化する霧化要素を備えてもよい。ネブライザ要素は振動可能要素を備えてもよく、これは、作動すると振動(たとえば、膨張および収縮)することができる。霧化周波数で励起されると、振動可能要素によって霧化要素が振動し、液体を霧化することができる。
【0017】
ネブライザ要素(すなわち、より具体的にはネブライザ要素の振動可能要素)は、複数の周波数(「チャープ」とも呼ばれる)にわたる電気信号によって、周期的に作動することができる。この電気信号は、低い周波数から高い周波数までなど、第1の周波数から第2の周波数まで掃引(または段階的に移動)してもよい。電気信号がネブライザ要素を作動させている間、ネブライザ要素(たとえば、振動可能要素)のインピーダンスを測定してもよい。ネブライザ要素のインピーダンスを決定するステップは、複数のインピーダンス測定値を取得するステップを含んでもよい。したがって、チャープがネブライザ要素に加えられている間、複数の、数十、数百、または数千のインピーダンス測定を実行してもよい。これらのインピーダンス測定値を使用して、ネブライザ要素(たとえば、ネブライザ要素の霧化要素)が湿っているか乾燥しているかを判定してもよい。
【0018】
インピーダンス測定値を使用して、ネブライザ要素が湿っているか乾燥しているかを判定するために、インピーダンス測定値に基づいた計算を実行してもよい。周波数範囲にわたって測定されたインピーダンスの大きさにおける増大は、ネブライザが乾燥していることを示しうる。したがって、チャープ期間中に測定されたインピーダンスが、ある閾値の大きさを超えて上昇すると判定される場合、ネブライザ要素は乾燥していると判定することができる。各インピーダンス測定値は、それよりも低い周波数での、その前のインピーダンス測定値と比較してもよい。インピーダンスが上昇する場合、2つのインピーダンス測定値間の差を2乗し、インピーダンス比較値に加算してもよい。インピーダンスが低下する場合、この差の絶対値をインピーダンス比較値に加算してもよい。チャープ期間中に収集される一部または全てのインピーダンス測定値を使用して、このような計算を実行してもよい。インピーダンスが上昇するときは差分値が2乗されるので、インピーダンス値がチャープ期間中に上昇する傾向にあるときは、インピーダンス比較値が大きくなることになる。インピーダンス比較値の一部または全てを使用して、インピーダンス比較値を計算した後、このインピーダンス比較値を所定の比較閾値と比較してもよい。比較閾値とのこの比較を使用して、ネブライザ要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよく、インピーダンス比較値が比較閾値を越えている場合は、ネブライザ要素が乾燥しているとみなしてもよく、インピーダンス比較値が比較閾値を下回っている場合は、ネブライザ要素が湿っているとみなしてもよい。
【0019】
同じチャープを加え(すなわち、同じ周波数範囲にわたって掃引することによって要素を作動させ)、インピーダンスを測定し、インピーダンス比較値を計算し、比較閾値との比較を実行することにより、このような計算を2秒毎に1度など周期的に実行してもよい。これにより、ネブライザ要素が、2秒を超えて乾燥状態で作動することが防止できる。ネブライザ要素が乾燥していると判定される場合、それ以上液体を霧化するためのネブライザ要素が作動しないよう、ネブライザはパワーダウン・モードに入ってもよい。数秒または数分など一定期間の後、別の測定を実行して、ネブライザ要素が依然として乾燥していることを確認してもよい。ネブライザ要素が依然として乾燥している場合、全ての液体が消費されたと判定することができ、ネブライザはパワーダウン・モードを維持してもよい。ネブライザが湿っていると判定される場合(たとえば、乾燥しているとの前の判定が、ネブライザ要素に1つまたは複数の気泡が存在したことによるものであった場合)、ネ
ブライザ要素は、液体を霧化するために作動を再開してもよい。
【0020】
ネブライザ要素が潜在的に意図せずに乾燥状態で作動する様々な状況がある。ネブライザ要素が作動している状態を停止しない場合、このような状況の結果、ネブライザおよび/またはネブライザ要素が損傷することもある。たとえば、液体(アミカシンなどの液体薬剤など)が以前ネブライザ要素に接触していたが、その液体の供給がなくなってしまったなどである。こうした薬剤は、患者への送達のために霧化されるべく、ある特定の用量でネブライザ要素に供給されることがある。用量の最後では、たとえその液剤の全体の用量が霧化されていてもネブライザ要素が意図せずに作動を続けることがあり、したがって、乾燥したネブライザ要素が作動することになる。別の例としては、液体がネブライザ要素に接触することなく、このネブライザ要素が意図せずに作動することもある。これら両方の場合で、乾燥している間に作動することによって、ネブライザおよび/またはその要素が損傷することがある。乾燥したネブライザ要素を識別することが有益になる他の状況も存在する。
【0021】
図1は、ネブライザ100の一実施形態を示している。ネブライザ100は、ネブライザ要素110、薬剤貯蔵器120、ヘッド・スペース130、インターフェース140、およびキャップ150を備えてもよい。ネブライザ要素110は、電気信号が加えられると膨張および収縮する、振動可能要素(たとえば圧電リング)から構成してもよい。振動可能要素は、霧化要素(たとえば、穿孔された膜)に取り付けてもよく、これはネブライザ要素110の一部であってもよい。ネブライザ要素110に加えられる電気信号は、振動可能要素(たとえば圧電リング)だけを通過してもよい。振動可能要素に結合された霧化要素は、振動可能要素のインピーダンスに影響を及ぼすことがある。霧化要素は、穿孔された膜でもよく、多数の孔が貫通していてもよい。電気信号が振動可能要素(たとえば圧電リング)に加えられると、これにより、霧化要素(たとえば穿孔された膜)が移動および/または屈曲(たとえば振動)するようになっていてもよい。液体に接触している間に霧化要素がこのように動くことにより、液体が霧化し、液体粒子のミストを生成できるようにしてもよい。実施形態によっては、ネブライザ要素110の霧化要素は開口プレートを備えてもよい。
【0022】
液体、一般には液体薬剤(その例は、後にこの文書で詳細に述べる)の供給物を、薬剤貯蔵器120に格納してもよい。
図1に示すように、薬剤貯蔵器120には、液体薬剤が部分的にのみ満たされている。ハウジングを使用して、薬剤貯蔵器120とネブライザ要素110とを連結してもよい。ハウジングは、霧化された液体薬剤を吸入する人によって使用されうるマウスピースを画定してもよい。液体薬剤が霧化されるにつれて、薬剤貯蔵器120内に残っている液体薬剤の量は減少する。薬剤貯蔵器120内の液体薬剤の量に応じて、貯蔵器の一部分のみを液体薬剤で満たしてもよい。薬剤貯蔵器120の残りの部分を、空気などのガスで満たしてもよい。この空間を、ヘッド・スペース130と呼んでもよい。インターフェース140は、薬剤貯蔵器120とネブライザ要素110との間で液体薬剤を移動させるように機能してもよい。マウスピース160は、患者の口とネブライザとの間のインターフェースとして機能するように設けられてもよい。ネブライザ要素110は、患者が自分の口に保持するマウスピース160に対して、霧化された液体を送達することができる。
【0023】
ネブライザおよびネブライザに関連する技法は概ね、米国特許第5,164,740号明細書、同第5,938,117号明細書、同第5,586,550号明細書、同第5,758,637号明細書、同第6,014,970号明細書、同第6,085,740号明細書、同第6,235,177号明細書、同第6,615,824号明細書、および同第7,322,349号明細書に記載されており、その開示全体を、あらゆる目的のために参照として援用する。
【0024】
ネブライザ100などのネブライザは、
図2に示すような制御モジュールと接続されてもよい。
図2は、ネブライザ100に連結されたネブライザ制御モジュールの実施形態200の、簡略化されたブロック図を示している。
図2のネブライザ100は、
図1のネブライザ100、または参照明細書に記載されたネブライザなど他の何らかのネブライザを表してもよく、ケーブルでもよいワイヤ230を介して制御モジュール210と接続されてもよい。ワイヤ230は、周波および電圧の変化する電気信号を制御モジュール210がワイヤ230を介してネブライザ100まで伝送することを可能にする。制御モジュール210は、DC電圧および/またはAC電圧を制御モジュール210に供給できる電圧源215に接続されてもよい。
【0025】
制御モジュール210は、様々な構成部品を含んでもよい。制御モジュール210のいくつかの実施形態では、プロセッサ211(たとえば制御装置)、持続的なコンピュータ読取り可能記憶媒体212、および電気信号出力モジュール213が設けられる。プロセッサ211は、汎用プロセッサ、または制御モジュール210で機能するよう特に設計されたプロセッサであってもよい。プロセッサ211は、ソフトウェアまたはファームウェアとして格納された命令を実行するように機能してもよい。このような命令は、持続的なコンピュータ読取り可能記憶媒体212に格納されてもよい。持続的なコンピュータ読取り可能記憶媒体212は、ランダム・アクセス・メモリ、フラッシュ・メモリ、ハード・ドライブ、または命令を格納できる他の何らかの記憶媒体であってもよい。持続的なコンピュータ読取り可能記憶媒体212によって格納された命令は、プロセッサ211によって実行されてもよく、この命令を実行すると、結果として、電気信号出力モジュール213は、周波数および/または電圧が変化する電気信号を生成し、ワイヤ230を介してこの信号がネブライザ100のネブライザ要素に出力される。実施形態によっては、制御モジュール210は、コンピュータ化されてもよく、
図7に提示されたコンピュータ・システムを含んでもよい。
【0026】
電気信号出力モジュール213による電気信号出力は、1つまたは複数の周波数を含んでもよい。たとえば、電気信号出力モジュール213は、複数の周波数にわたって掃引またはステップ移動する(掃引およびステップ移動はまとめて変化と呼んでもよい)電気信号を生成して、ネブライザ要素を作動させてもよい。1つまたは複数の周波数の電気信号を使用してネブライザ要素を作動させている間、ネブライザ要素のインピーダンスを測定してもよい。液体を霧化するために、電気信号出力モジュール213によって、1つまたは複数の特定の周波数での電気信号を出力して、ネブライザ要素を作動させてもよい。実施形態によっては、電気信号出力モジュール213によって、複数の周波数を出力して、ネブライザ要素を作動させてもよい。
【0027】
図3は、湿っているときおよび乾燥しているときの、様々な周波数での、ネブライザ要素の一実施形態のインピーダンスのグラフ300を示している。より具体的には、インピーダンスは、ネブライザ要素の振動可能要素のインピーダンスであってもよい。液体がネブライザ要素の霧化要素に接触しているかどうかは、ネブライザ要素の振動可能要素のインピーダンスに影響を及ぼすことがある。グラフ300に示すように、霧化要素が湿っているか乾燥しているかは、振動可能要素のインピーダンスが様々な周波数で変化する原因となりうる。たとえば、約119kHzでは、ネブライザ要素の振動可能要素のインピーダンスは、湿っているときよりも乾燥しているときの方が高い。100kHz〜125kHzの間では、湿っているときの振動可能要素のインピーダンスは、約900オーム〜200オームまで下降傾向にあり、インピーダンスの著しい上昇はない。しかし、乾燥しているときの振動可能要素のインピーダンスは、同じ周波数範囲において、約150オームまで低下し、119kHz付近で10,000オームを超えて急上昇し、125kHzで約900オームにまで降下する。したがって、霧化要素が乾燥しているときの振動可能要
素のインピーダンスをグラフ化した線は、その周波数範囲の少なくとも一部分にわたって正の傾斜を示すことがあり、その正の傾斜は、霧化要素が湿っているときの振動可能要素のインピーダンスを同一の周波数範囲にわたってグラフ化した線の傾斜よりも、大きな正の傾斜である。よって、ある周波数範囲にわたって振動可能要素のインピーダンスの変化を解析することにより、振動可能要素に連結された霧化要素が湿っているか乾燥しているかを正確に判定することが可能になる。
【0028】
グラフ300で、LF(低周波)インピーダンス範囲は、振動可能要素のインピーダンスが測定される周波数範囲を示しうる。この周波数範囲内では、乾燥している霧化要素は、(周波数範囲の少なくとも一部分において)振動可能要素のインピーダンスの正の傾斜を引き起こす一方、湿っている霧化要素は、振動可能要素のインピーダンスにおいて類似した正の傾斜を示さない。グラフ300には、特定のタイプのネブライザ要素(たとえば、振動可能要素と霧化要素とを組み合わせたもの)のインピーダンス特性を示していることを理解されたい。他のタイプのネブライザ要素は、様々な周波数で作動することに応じて、様々なインピーダンスを示すことがある。他のタイプのネブライザ要素においては、霧化要素が湿っているか乾燥しているかを判定すべく振動可能要素を作動する周波数範囲は、霧化要素が湿っているときと比較して、霧化要素が乾燥しているときの振動可能要素のインピーダンスが著しく異なることが実験的に確定(または計算)された周波数に基づいて選択される。
【0029】
図1のネブライザ100および/または
図2の制御モジュール210を使用して、ネブライザ要素が湿っているか乾燥しているかを判定するための様々な方法を実行してもよい。
図4には、ネブライザの要素が乾燥しているときを判定するための方法400の一実施形態を示している。より具体的には、方法400を使用して、ネブライザ要素の霧化要素が乾燥しているときを判定してもよい。方法400は、
図1のネブライザ100および/または
図2の制御モジュール210を使用するステップを含んでもよい。方法400を実行する手段は、制御モジュール、プロセッサ、電気信号出力モジュール、コンピュータ化装置、ネブライザ、ネブライザ要素(穿孔された膜などの霧化要素、および圧電リングなどの振動可能要素を含んでもよい)、ならびにコンピュータ読取り可能な記憶媒体を備える。
【0030】
ステップ410で、一定範囲の周波数にわたる、制御モジュールが生成する1つまたは複数の電気信号で、ネブライザのネブライザ要素を作動させてもよい。
図3のグラフを作成するために使用されるネブライザ要素など、作動しているときのネブライザ要素の特性が、既に様々な電圧および周波数で解析されている。したがって、どの周波数もしくは周波数範囲、および/または電圧において、湿っているときのネブライザ要素のインピーダンスが、乾燥しているときのネブライザ要素のインピーダンスと著しく異なるかが既に知られている。たとえば、方法400を実行しているときに使用されるネブライザ要素が、
図3を作成するのに使用されるネブライザ要素である場合、このネブライザ要素は、95kHz〜128kHzの(サイズが33kHzに及ぶ)周波数範囲にわたって作動されてもよい。乾燥しているときと比較して湿っているときのネブライザ要素のインピーダンスが著しく異なるので、この周波数範囲が選択されている。95kHz〜128kHzの周波数範囲にわたってネブライザ要素を作動させるために、電気信号を生成する装置は、95kHzで開始し、128kHzまで掃引されてもよい。他の実施形態では、電気信号を生成する装置は、128kHzで開始し、95kHzまで掃引されてもよい。他の実施形態では他の周波数範囲が実現可能であることを理解されたい。一定範囲の周波数にわたってネブライザ要素を作動させるステップは、第1の周波数〜第2の周波数の間の周波数を使用してネブライザ要素を作動させるように、第1の周波数から第2の周波数まで掃引するステップを含んでもよい。実施形態によっては、2つの周波数の間で掃引するのではなく、2つの周波数の間でステップ移動することがある。これは、ネブライザ要素が、第1
の周波数と第2の周波数の間の特定の周波数で、それぞれある一定時間作動することを含んでもよい。サイズが33kHzの周波数範囲での掃引またはステップ移動(まとめて変化と呼んでもよい)は、160msなど一定期間を要することがある。さらに、複数のパルス周波数で一度に、ネブライザ要素を作動させてもよいことを理解されたい。
【0031】
ステップ420で、電気信号が一定範囲の周波数にわたって掃引またはステップ移動することによってネブライザ要素を作動させている間、ネブライザ要素の一連のインピーダンス値を測定してもよい。したがって、一定周波数範囲が掃引されている間、インピーダンス測定値を測定してもよい。1ミリ秒毎に1度など、既定の間隔でインピーダンス測定値を取り込んでもよい。したがって、一定周波数範囲を掃引する期間が160msの場合、160回のインピーダンス測定を実行することができる。同じまたは異なる間隔で、位相を測定してもよい。
【0032】
ステップ430で、ステップ420で測定された一連のインピーダンス値を使用して、ネブライザ要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよい。インピーダンス値を解析するステップは、
図3に示す周波数範囲内のインピーダンス値の中で、正の傾斜が存在するかどうか判定するステップを含んでもよい。このようなグラフを作成することなく、こうした正の傾斜が存在するかどうか判定することが可能である。一連の(連続した)インピーダンス値の中で、一定量の変化を解析して、正の傾斜が存在するかどうか判定してもよい。本明細書において詳細に述べた方法は、インピーダンス値の中で正の傾斜が存在するかどうか判定することに焦点を合わせるが、他の実施形態では、負の傾斜の存在を使用して、ネブライザ要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよい。こうした解析をどのように実行できるのかについてのさらなる詳細を、
図5の方法500に関して詳述する。他のメトリクスを使用して、ネブライザ要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよいことを理解されたい。たとえば、位相変化測定値、絶対インピーダンス測定値、および/または一定の周波数範囲にわたるインピーダンスの変化量以外のメトリクスを使用してもよい。
【0033】
ステップ430に続いて、ネブライザ要素が湿っていると判定された場合、このネブライザ要素を、液体を霧化するのに適した1つまたは複数の周波数で作動させてもよい。方法400が繰り返されるまでの期間において、ネブライザ要素の作動を継続して液体を霧化してもよい。たとえば、1秒、1.6秒、2秒、3秒、もしくは4秒毎に1度、または他の何らかの間隔で、方法400を繰り返してもよい。たとえば、方法400が1.6秒毎に1度繰り返される場合、ネブライザ要素は、乾燥しているときに1.6秒を超えて作動する可能性が低い。乾燥しているときにネブライザ要素を作動させてもよい時間量を低減させると、ネブライザ要素が損傷を受ける可能性を制限することができる。
【0034】
図5は、ネブライザの要素が乾燥しているときを判定するための方法500の一実施形態を示している。より具体的には、方法500を使用して、穿孔された膜などネブライザ要素の霧化要素が乾燥しているときを判定してもよい。方法500は、
図1のネブライザ100および/または
図2の制御モジュール210を使用するステップを含んでもよい。方法500を実行する手段は、制御モジュール、プロセッサ、電気信号出力モジュール、コンピュータ化装置、ネブライザ、ネブライザ要素(振動可能要素および霧化要素を含んでもよい)、ならびにコンピュータ読取り可能な記憶媒体を備える。方法500は、
図4の方法400のより詳細な実施形態を表すことができる。
【0035】
初めに、液体薬剤などの液体をネブライザに供給してもよい。ネブライザの貯蔵器に液体を加えることによって、これを実行してもよい。貯蔵器から液体薬剤を汲みだして、ネブライザ要素の霧化要素に接触させると、この霧化要素が液体で濡れることになる。ステップ510で、1つまたは複数の霧化周波数において、電気信号によって振動可能要素を
作動させてもよい。これにより、霧化要素が振動し、この霧化要素に接触している液体を霧化するようになる。ステップ510は、所定の期間において継続してもよい。たとえば、ステップ510は、約1.6秒間実行された後に、ステップ520に進んでもよい。ステップ510が実行される期間は設定可能であることを理解されたい。霧化要素が乾燥している場合、この霧化要素は、ステップ510における所定の期間が切れるまで作動し続けてもよい。
【0036】
ステップ520で、一定範囲の周波数での電気信号によって振動可能要素を作動させてもよく、この周波数を測定周波数範囲と呼んでもよい。これらの周波数は、制御モジュールが生成してもよい。したがって、ステップ510で振動可能要素を作動させるのに使用される電気信号は、ステップ520の測定周波数範囲に変更してもよい。この測定周波数範囲は霧化周波数を含んでもよく、または、この霧化周波数は測定周波数範囲の外側にあってもよい。したがって、ステップ520(およびステップ510を除く方法500の他のステップ)の間、霧化要素が液体を霧化するための電気信号で振動可能要素を作動させなくてもよい。
図3のグラフを作成するために使用されるネブライザ要素など、作動しているときのネブライザ要素の特性が、既に様々な電圧および周波数で解析されている。したがって、(1つまたは複数の)どの周波数において、霧化要素が湿っているときの振動可能要素のインピーダンスが、霧化要素が乾燥しているときのインピーダンスと著しく異なるかが既に知られている。たとえば、方法400を実行しているときに使用されるネブライザ要素が、
図3を作成するのに使用されるネブライザ要素である場合、このネブライザ要素の振動可能要素は、95kHz〜128kHzの(33kHzに及ぶ)周波数範囲にわたって作動される。乾燥しているときと比較して湿っているときの振動可能要素のインピーダンスが著しく異なるので、この周波数範囲が選択されている。95kHz〜128kHzの周波数範囲にわたってネブライザ要素を作動させるために、電気信号を生成する装置は、95kHzで開始して高い方へ128kHzまで掃引してもよい。他の実施形態では、電気信号を生成する装置は、128kHzで開始して低い方へ95kHzまで掃引してもよい。他の実施形態では(同じまたは異なるネブライザ要素について)、他の周波数範囲が実現可能であることを理解されたい。
【0037】
一定範囲の周波数にわたって振動可能要素を作動させるステップは、第1の周波数〜第2の周波数の間の周波数を使用して振動可能要素を作動させるように、第1の周波数から第2の周波数まで掃引するステップを含んでもよい。実施形態によっては、2つの周波数の間で掃引するのではなく、2つの周波数の間でステップ移動することがある。これは、振動可能要素が、第1の周波数と第2の周波数の間の特定の所定周波数で作動することを含んでもよい。サイズが33kHzの周波数範囲での掃引またはステップ移動は、160msなど一定期間を要することがある。さらに、複数のパルス周波数で一度に、ネブライザ要素を作動させてもよいことを理解されたい。
【0038】
ステップ530で、電気信号が一定範囲の周波数にわたって掃引またはステップ移動することによって振動可能要素を作動させている間、振動可能要素の一連のインピーダンス値を測定してもよい。したがって、そうした周波数範囲を掃引するとともにこれを使用して振動可能要素を作動させている間、振動可能要素のインピーダンス測定値を測定してもよい。1ミリ秒毎に1度など、既定の間隔でインピーダンス測定値を取り込んでもよい。したがって、当該周波数範囲を掃引する期間が160msの場合、160回のインピーダンス測定を実行することができる。他の実施形態では、様々な時間間隔でインピーダンス測定値を取り込んでもよい。同じまたは異なる間隔で、位相を測定してもよい。
【0039】
ステップ540で、インピーダンス測定値間の差を計算してもよい。各差分値は、一連のインピーダンス値のうち2つの連続したインピーダンス値間の差を表してもよく、たとえば、インピーダンス値が1ミリ秒毎に測定される場合がある。2つの連続したインピー
ダンス値間の差は、ミリ秒でのインピーダンスの変化を表すことができる。式1を使用して、差分値を計算してもよい。
ΔΩ(i)=Ω(i)−Ω(i−1) 式1
式1によれば、インピーダンス値(i)から、一連のインピーダンス値内の前のインピーダンス値(i−1)を減算することによって、差分値を得ることができる。したがって、2つの値の間でインピーダンス値が上昇する場合、差分値は正になり、2つの値の間でインピーダンス値が低下する場合、差分値は負になる。他の実施形態では、ステップ530で測定されたインピーダンス値の一部のみを使用して、差分値を求めてもよい。たとえば、一連のインピーダンス値のうち1つおきのインピーダンス値を使用してもよい。
【0040】
ステップ540で計算された差分値を使用して、ステップ550で、インピーダンス比較値を計算してもよい。ステップ540で計算された差分値のうち、その全てまたは一部を使用して、インピーダンス比較値を計算してもよい。閾値と比較するためにインピーダンス比較値を使用して、霧化要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよい。
図3に示すように、ネブライザ要素に加えられる周波数範囲内の正の傾斜は、ネブライザ要素が乾燥していることを示すことができる。したがって、正の傾斜が存在する(すなわち、周波数が高くなるにつれて、測定されたインピーダンス値が上昇する)ときを判定することが望ましい。こうするために、様々な計算を実行してもよい。インピーダンスが上昇しているかどうか判定するために実行してもよい計算には、式2および式3が含まれる。
Ω
COMPARISON=Ω
COMPARISON+(ΔΩ(i))
2 ΔΩ(i)>0の場合 式2
Ω
COMPARISON=Ω
COMPARISON+|ΔΩ(i)| ΔΩ(i)≦0の場合 式3
インピーダンス比較値(Ω
COMPARISON)は、ステップ550では、初めにゼロにセットしてもよく、ステップ540で計算される各差分値について増加する合計値であってもよい。実施形態によっては、ステップ540で計算されるそれぞれ異なる差分値を使用して、単一のインピーダンス比較値を求めてもよく、実施形態によっては、複数の差分値の一部のみを使用してもよい。差分値が正のとき(インピーダンスが上昇すること、または正の傾斜を示す)、この差分値は2乗され、インピーダンス比較値に加算されるが、差分値が負のとき(インピーダンスが低下すること、または負の傾斜を示す)、差の絶対値のみがインピーダンス比較値に加算される。よって、インピーダンスの上昇が存在するときには、最終的なインピーダンス比較値が、周波数範囲の少なくとも一部分において著しく大きくなることが予想されうる。
【0041】
式1〜式3は、霧化要素か湿っているか乾燥しているかを判定すべく閾値と比較するために使用されうるインピーダンス比較値を求める方法の例である。こうしたインピーダンス比較値を求める実現可能な他の方式も可能であることを理解されたい。
【0042】
ステップ560では、ステップ550で求めたインピーダンス比較値を、比較閾値と比較してもよい。この比較閾値は、実験的に求められたものでよい。たとえば、湿った霧化要素用に計算されたインピーダンス比較値よりも大きくなるが、乾燥した霧化要素用に計算されたインピーダンス比較値よりも小さくなる傾向にある比較閾値を選択してもよい。インピーダンス比較値が比較閾値よりも小さい場合、霧化要素は湿っている可能性が高い。インピーダンス比較値が比較閾値よりも大きい場合、霧化要素は乾燥している可能性が高い。
【0043】
ステップ570では、ステップ560の比較により、インピーダンス比較値が閾値よりも大きいことが示される場合、方法500はステップ580に進んでもよい。ステップ580で、振動可能要素は、液体を霧化するための作動が停止されてもよい。これは、霧化要素が乾燥していると考えられるからである。方法500がステップ580に進む場合、
振動可能要素を再び作動させるようユーザが指示するまで、この振動可能要素は作動させなくてもよい。実施形態によっては、一定期間待機するとともに、霧化要素が湿っているか乾燥しているか判定すべくネブライザ要素が再解析されてもよい。これは、霧化要素が乾燥していたという判定が、1つまたは複数の泡が霧化要素上に存在していた(その後、消散したか移動してしまった)ことによるものであったか否かを判定するために実行されうる。続いて、霧化要素が湿っていると判定される場合、方法500はステップ510に戻ってもよい。霧化要素が乾燥していると再び判定される場合、振動可能要素は作動されないままであってよい。ステップ570で、位相測定値など他の測定値を使用して、振動可能要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよい。
【0044】
ステップ570では、ステップ560の比較により、インピーダンス比較値が閾値よりも小さい(たとえば、ネブライザ要素は湿っている可能性が高い)ことが示される場合、方法500はステップ510に戻ってもよい。ステップ510では、方法500の残りのステップを再び実行する前に、振動可能要素を1つまたは複数の周波数において作動させて、霧化要素が液体薬剤などの液体を一定期間霧化してもよい。霧化要素が液体を霧化するようにするか、または霧化要素が湿っているか乾燥しているか判定するかのいずれかのために、霧化要素が乾燥しているとともに振動可能要素がそれ以上作動されないと判定されるまで、方法500の実行が継続されうる。
【0045】
霧化要素が乾燥しているときのインピーダンスの上昇は、ネブライザ要素によって、すなわち同じ型およびモデルのネブライザ要素であっても、変化することが知られている。
図3のグラフを参照すると、グラフ化された振動可能要素のインピーダンスは、上昇するとともに119kHz付近でピークに達する。しかし、他の振動可能要素(同じ製造者が製造してもよく、同じモデルでもよい)は上昇し、および/または異なる周波数でピークに達することがある。方法500では、下記周波数の範囲を包含するのに十分広い周波数範囲が掃引される。すなわち、この周波数の範囲は、ネブライザ要素の霧化要素が乾燥している場合に、ほとんどのネブライザ要素(少なくとも、型とモデルが同じ)が上昇する(かつ、おそらくピークに達する)ことが予想されると考えられる範囲である。霧化要素が湿っているか乾燥しているか判定するために掃引される一連の周波数の帯域幅は、周波数範囲を個々のネブライザ要素に合わせて調整することによって狭めてもよい(したがって、各周波数を掃引する時間を短縮してもよい)。個々のネブライザ要素用に周波数範囲を調整することは、霧化要素が湿っているか乾燥しているか適切に識別するネブライザの能力を検査するのを迅速化するなど、製造の設定に有用となることがある。製造後、各周波数を掃引するのに費やされる時間の短縮に使用するため、調整された周波数範囲をネブライザに記憶してもよい。よって、霧化要素が湿っているか乾燥しているかについての検査よりもむしろ、霧化要素に液体を霧化させるべく、より長い時間を費やして振動可能要素を作動させることができる。
【0046】
図6は、特定のネブライザ要素に周波数範囲を合わせるとともにその調整された周波数範囲を使用してネブライザの要素が乾燥しているときを判定するための方法600の一実施形態を示している。方法600は、
図1のネブライザ100および/または
図2の制御モジュール210を使用するステップを含んでもよい。方法600を実行する手段は、検査モジュール、制御モジュール、プロセッサ、電気信号出力モジュール、コンピュータ化装置、ネブライザ、ネブライザ要素、およびコンピュータ読取り可能な記憶媒体を備える。方法600は、
図4の方法400および/または
図5の方法500のより詳細な実施形態を表すことができる。さらに、方法600の各部分は、検査モジュールによって実行されてもよい。このような検査モジュールは、製造環境に存在していて、検査目的および/または製造後の工程のためにネブライザの機能を検査し、かつ/または調整された周波数範囲を求めてもよい。検査モジュールは、コンピュータ化してもよく、
図2の制御モジュール210などの制御モジュールと同様の、少なくともいくつかの構成要素を含んでもよ
い。検査中、検査モジュールは、通常は制御モジュールによって実行される各機能を、ネブライザおよびネブライザ要素に実行してもよい。したがって、検査モジュールは、制御モジュールとして少なくともいくつかの同じ機能を実行するよう構成してもよい。
【0047】
ステップ605で、第1の周波数範囲にわたって掃引される検査電気信号を使用して、ネブライザ要素の霧化要素が乾燥しているときに、ネブライザ要素の振動可能要素を作動させてもよい。ステップ605は、検査モジュールまたは制御モジュールによって実行されてもよい。振動可能要素のインピーダンスが上昇し、かつ/またはピークに達する周波数範囲が個々のネブライザに対して変化すると考えられるが、第1の周波数範囲は、この第1の周波数範囲内で、振動可能要素のインピーダンスが乾燥しているときに上昇し、かつ/またはピークに達する可能性が高い、十分な帯域幅を有してもよい。たとえば、第1の周波数範囲は、95kHz〜128kHzでありうる。他の何らかの周波数範囲を使用してもよいことを理解されたい。ステップ607では、ネブライザ要素がステップ607の第1の周波数範囲で作動している間、振動可能要素のインピーダンスを測定してもよい。これらのインピーダンス測定値のそれぞれを、少なくとも一時的に格納してもよい。
【0048】
ステップ610では、ステップ607で格納されたインピーダンス測定値を解析して、第1の周波数範囲内で、振動可能要素のインピーダンスが上昇する傾向にある、より狭い帯域幅の第2の周波数範囲を求めてもよい。ステップ610は、検査モジュールまたは制御モジュールによって実行されてもよい。たとえば、
図3を参照すると、第1の周波数範囲が95kHz〜128kHzの場合、第2の周波数範囲は115kHz〜119kHzでもありうる。この範囲115kHz〜119kHzは、方法600が実行されている特定のネブライザ要素において、乾燥した霧化要素の識別での使用のためには上手く機能する。しかしながら、他のネブライザ要素について霧化要素が乾燥しているときを識別するためには、当該他のネブライザ要素の型とモデルが同じ場合であっても、この周波数範囲が上手く機能しないことがある。
【0049】
ステップ615で、第1の周波数範囲よりも帯域幅が狭い第2の周波数範囲を格納してもよい。この第2の周波数範囲は、(たとえば、検査中に使用するための)検査モジュール、および/または(たとえば、製造後の工程など検査後に使用するための)制御モジュールが格納してもよい。(製造および検査の環境を除いた)通常の工程において、そうした帯域幅の狭い周波数範囲を使用する場合、第2の周波数範囲は、制御モジュール210の持続的なコンピュータ読取り可能記憶媒体212など、ネブライザの近くに格納してもよい。ネブライザ要素が湿っているか乾燥しているか検出するためのネブライザ機能の初期検査用にのみ帯域幅の狭い周波数範囲が使用される場合、この狭い周波数範囲はネブライザの外部の装置(たとえば、検査装置)に格納してもよい。
【0050】
ステップ615〜620の間で、液体が供給され、霧化要素と接触してもよい。ステップ620で、1つまたは複数の周波数において、電気信号によって振動可能要素を作動させて、液体を霧化してもよい。ステップ620は、所定の期間において継続してもよい。たとえば、ステップ620は、約1.6秒間実行された後に、ステップ625に進んでもよい。ステップ620が実行される期間は設定可能であることを理解されたい。霧化要素が乾燥している場合、振動可能要素は、ステップ620における所定の期間が切れるまで作動し続けてもよい。
【0051】
ステップ625で、周波数の第2の範囲において、電気信号によって振動可能要素を作動させてもよい。ステップ625は、検査モジュールまたは制御モジュールによって実行されてもよい。これらの周波数は、制御モジュールまたはハードウェアの別個の検査体が生成してもよい。ステップ625で使用される周波数は、ステップ615で使用されて液体を霧化する、1つまたは複数の周波数とは異なっていてもよい。インピーダンス値が上
昇する第2の周波数範囲がステップ610で予め決定されたので、この狭い帯域幅の周波数範囲を使用して、霧化要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよい。第2の周波数範囲にわたって振動可能要素を作動させるため、電気信号を生成する装置は、第2の周波数範囲の下端域で開始するとともに第2の周波数範囲の上端域まで掃引してもよい。他の実施形態では、電気信号を生成する装置は、第2の周波数範囲の上端域で開始するとともに第2の周波数範囲の下端域まで掃引してもよい。
【0052】
周波数の第2の範囲にわたって振動可能要素を作動させるステップは、第1の周波数〜第2の周波数の間の周波数を使用して振動可能要素を作動させるように、第2の周波数範囲の第1の周波数から第2の周波数まで掃引するステップを含んでもよい。実施形態によっては、2つの周波数の間で掃引するのではなく、2つの周波数の間でステップ移動することがある。これは、振動可能要素が、第1の周波数と第2の周波数の間の特定の所定周波数で作動することを含んでもよい。第2の周波数範囲にわたって掃引またはステップ移動すると、第1の周波数範囲にわたって掃引またはステップ移動するよりもかかる時間が短くて済むことがあるが、なぜならば、第2の周波数範囲の帯域幅の方が狭いからである。
【0053】
ステップ630で、電気信号が周波数の第2の範囲にわたって掃引またはステップ移動することによって振動可能要素を作動させている間、振動可能要素の一連のインピーダンス値を測定してもよい。ステップ630は、検査モジュールまたは制御モジュールによって実行されてもよい。一定の周波数範囲を掃引し、これを使用して要素を作動させている間、この要素のインピーダンス測定値を測定してもよい。1ミリ秒毎に1度など、既定の間隔でインピーダンス測定値を取り込んでもよい。したがって、一定周波数範囲を掃引する期間が50msの場合、50回のインピーダンス測定を実行することができる。他の実施形態では、様々な時間間隔でインピーダンス測定値を取り込んでもよい。同じまたは異なる間隔で、位相を測定してもよい。
【0054】
ステップ635で、インピーダンス測定値間の差を計算してもよい。ステップ630は、検査モジュールまたは制御モジュールによって実行されてもよい。たとえば、インピーダンス値が1ミリ秒毎に測定される場合、各差分値は、一連のインピーダンス値のうち2つの連続したインピーダンス値間の差を表してもよい。2つの連続したインピーダンス値間の差は、ミリ秒でのインピーダンスの変化を表してもよい。式1を使用して、方法500に関して詳細に述べた差分値を計算してもよい。
【0055】
ステップ635で計算された差分値を使用して、ステップ640で、インピーダンス比較値を計算してもよい。ステップ640は、検査モジュールまたは制御モジュールによって実行されてもよい。ステップ635で計算された差分値のうち、その全てまたは一部を使用して、インピーダンス比較値を計算してもよい。閾値と比較するためにインピーダンス比較値を使用して、霧化要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよい。
図3に示すように、振動可能要素に加えられる周波数範囲内の正の傾斜は、霧化要素が乾燥していることを示すことができる。したがって、正の傾斜が存在する(すなわち、周波数が高くなるにつれて、測定されたインピーダンス値が上昇する)とき、それを判定するのが望ましいことがある。こうするために、様々な計算を実行してもよい。インピーダンスが上昇しているかどうか判定するために実行してもよい計算には、方法500に関して詳細に述べた式2および式3が含まれる。
【0056】
ステップ645では、ステップ640で求めたインピーダンス比較値を、比較閾値と比較してもよい。ステップ645は、検査モジュールまたは制御モジュールによって実行されてもよい。この比較閾値は、実験的に求められたものでもよい。この閾値は、複数のネブライザ要素について使用されてもよく、または方法600が実行されているネブライザ
要素に特有のものでもよい。たとえば、湿った霧化要素用に計算されたインピーダンス比較値よりも大きくなるが、乾燥した霧化要素用に計算されたインピーダンス比較値よりも小さくなる傾向にある比較閾値を選択してもよい。インピーダンス比較値が比較閾値よりも小さい場合、霧化要素は湿っている可能性が高い。インピーダンス比較値が比較閾値よりも大きい場合、霧化要素は乾燥している可能性が高い。
【0057】
ステップ650では、ステップ645の比較により、インピーダンス比較値が閾値よりも大きいことが示される場合、方法600はステップ655に進んでもよい。ステップ655では、霧化要素が振動しないよう、振動可能要素は作動を停止してもよい。これは、霧化要素が乾燥していると考えられるからである。方法600がステップ655に進む場合、振動可能要素を再び作動させるようユーザが指示するまで、この振動可能要素を作動させなくてもよい。実施形態によっては、一定期間待機するとともに、振動可能要素を再解析して、湿っているか乾燥しているか判定してもよい。これは、霧化要素が乾燥していたという判定が、1つまたは複数の泡が霧化要素上に存在していた(その後、消散したか移動してしまった)ことによるものであったか否かを判定するために実行されうる。続いて、霧化要素が湿っていると判定される場合、方法600はステップ620に戻ってもよい。霧化要素が乾燥していると再び判定される場合、振動可能要素は作動されないままであってよい。
【0058】
ステップ650では、ステップ645の比較により、インピーダンス比較値が閾値よりも小さい(たとえば、ネブライザ要素は湿っている可能性が高い)ことが示される場合、方法600はステップ620に戻ってもよい。ステップ620では、方法600の残りのステップを再び実行する前に、振動可能要素を1つまたは複数の周波数において作動させて、霧化要素によって液体薬剤などの液体を一定期間霧化してもよい。霧化要素が乾燥しているとともに振動可能要素がそれ以上作動されないと判定されるまで、方法600の実行を継続して、液体を霧化させるか、または霧化要素が湿っているか乾燥しているかを判定してもよい。
【0059】
方法600が実行される(また、第2の周波数範囲が確立される)のに続いて、その後この第2の周波数範囲を使用して、霧化要素が湿っているか乾燥しているか判定してもよい。たとえば、この第2の周波数範囲をネブライザ(たとえば、制御モジュール)によって格納して、現場(たとえば、製造検査環境の外側)で使用してもよい。実施形態によっては、製造検査環境の外側では、製造後および検査後の環境で使用されるとき、ネブライザは、方法500に関して述べたような比較的広い周波数範囲を使用するよう戻ってもよい。
【0060】
図7に示すコンピュータ・システムは、先に述べたコンピュータ化装置の一部分として組み込んでもよい。たとえば、コンピュータ・システム700は、本明細書で論じた検査ハードウェアまたは制御モジュールの構成要素のいくつかを表すことができる。
図7には、本明細書に記載の通り、様々な実施形態によって提供される方法の少なくとも各部分を実行することができる、コンピュータ・システム700の一実施形態の概略図を示している。
図7は単に、様々な構成要素の一般化された説明を示しているに過ぎず、その一部または全部を必要に応じて利用してもよいことに留意されたい。したがって、
図7は、比較的別々の方式、または比較的統合化した方式でどのように個々のシステム構成要素を実装してよいのかを広く説明する。
【0061】
コンピュータ・システム700は、バス705を介して電気的に結合されうる(または、必要に応じて別の方法で通信してもよい)ハードウェア構成要素を含んで示されている。ハードウェア構成要素は、限定はされないが1つ以上の汎用プロセッサおよび/または1つ以上の専用プロセッサ(デジタル信号処理チップ、グラフィックス高速化プロセッサ
など)を含む1つ以上のプロセッサ710と、限定はされないがマウス、キーボードなどを含むことができる1つ以上の装置715と、限定はされないが表示装置、プリンタなどを含むことができる1つ以上の出力装置720とを備えてもよい。
【0062】
コンピュータ・システム700はさらに、1つ以上の持続的な記憶装置725を備えても(かつ/またはそれらと通信しても)よく、この記憶装置は、限定はされないがローカルおよび/もしくはネットワークからアクセス可能な記憶装置を備えることができ、かつ/または、限定はされないがディスク・ドライブ、ドライブ・アレイ、光記憶装置、プログラム可能でフラッシュ・アップデートが可能な、ランダム・アクセス・メモリ(「RAM」)および/もしくはリードオンリ・メモリ(「ROM」)などのソリッドステート記憶装置を備えることができる。このような記憶装置は、限定はされないが様々なファイル・システム、データベース構造などを含め、任意の適切なデータ格納を実施するように構成してもよい。
【0063】
コンピュータ・システム700はまた、通信サブシステム730を備えてもよく、このサブシステムは、限定はされないがモデム、ネットワーク・カード(無線もしくは有線)、赤外線通信装置、無線通信装置、および/または(Bluetooth(登録商標)デバイス、802.11デバイス、WiFiデバイス、WiMaxデバイス、セルラー通信機能などの)チップセットなどを備えてもよい。通信サブシステム730は、ネットワーク(一例を挙げるために以下に述べるネットワークなど)、他のコンピュータ・システム、および/または本明細書に記載の他の任意の装置とデータを交換できるようにしてもよい。多くの実施形態において、コンピュータ・システム700はさらに、ワーキング・メモリ735を備えることになり、これは、前述の通りRAMまたはROMデバイスを含むことができる。
【0064】
コンピュータ・システム700はまた、現在ワーキング・メモリ735内に配置されているものとして示したソフトウェア要素を含むことができ、これには、オペレーティングシステム740、デバイス・ドライバ、実行可能なライブラリ、および/または、1つ以上のアプリケーション・プログラム745など他のコードが含まれ、それらは、様々な実施形態が提供するコンピュータ・プログラムを含んでもよく、かつ/または、本明細書に記載の通り、他の実施形態が提供する方法を実装し、かつ/もしくはシステムを構成するように設計してもよい。単に一例として、前述の(1つもしくは複数の)方法に関して説明した1つまたは複数の手順は、コンピュータ(および/もしくはコンピュータ内のプロセッサ)が実行可能なコードならびに/または命令として実施してもよく、次いで、一態様では、こうしたコードおよび/または命令を使用して、汎用コンピュータ(または他の装置)を構成し、かつ/または適合させて、説明した方法に従って、1つまたは複数の動作を実行することができる。
【0065】
1組のこれら命令および/またはコードは、前述の(1つまたは複数の)持続的な記憶装置725など、持続的なコンピュータ読取り可能記憶媒体に格納してもよい。場合によっては、記憶媒体は、コンピュータ・システム700などのコンピュータ・システム内に組み込んでもよい。他の実施形態では、記憶媒体は、コンピュータ・システムから分離していてもよく(たとえば、コンパクト・ディスクなどの取外し可能な媒体)、かつ/またはインストール・パッケージで提供してもよく、したがって、この記憶媒体を使用して、そこに格納された命令/コードを用いて、汎用コンピュータをプログラムし、構成し、かつ/または適合させることができる。これらの命令は、実行可能なコードの形をとってもよく、これはコンピュータ・システム700によって実行可能であり、かつ/またはソース・コードおよび/またはインストール可能なコードの形をとってもよく、これは、(たとえば、一般的に利用可能な様々なコンパイラ、インストール・プログラム、圧縮/伸張ユーティリティなどのうちから任意のものを使用して)コンピュータ・システム700上
でコンパイルおよび/またはインストールされると、実行可能なコードの形をとる。
【0066】
具体的な要求に従って、かなりの変形を加えてもよいことが当業者には明白になろう。たとえば、カスタマイズされたハードウェアを使用してもよく、かつ/または、ハードウェア、ソフトウェア(アプレットなどの高移植性ソフトウェアを含む)、もしくはその両方に、特定の要素を実装してもよい。さらに、ネットワーク入力/出力装置など他のコンピューティング装置への接続を利用してもよい。
【0067】
前述の通り、一態様では、実施形態によっては、コンピュータ・システム(コンピュータ・システム700など)を利用して、本発明の様々な実施形態による方法を実行してもよい。1組の実施形態によれば、こうした方法の手順の一部または全ては、プロセッサ710が、ワーキング・メモリ735内に含まれる1つもしくは複数の命令(オペレーティングシステム740および/もしくはアプリケーション・プログラム745などの他のコードに組み込んでもよい)の1つまたは複数のシーケンスを実行するのに応答して、コンピュータ・システム700によって実行される。このような命令は、(1つもしくは複数の)持続的な記憶装置725のうちの1つまたは複数など、別のコンピュータ読取り可能な媒体から、ワーキング・メモリ735に読み込んでもよい。単に一例として、ワーキング・メモリ735に含まれる一連の命令を実行することにより、(1つまたは複数の)プロセッサ710が、本明細書に記載の方法の1つまたは複数の手順を実行するようになってもよい。
【0068】
本明細書で使用される用語「機械読取り可能な媒体」および「コンピュータ読取り可能な媒体」は、特定のやり方で機械を動作させるデータの提供を担う任意の媒体を指す。コンピュータ・システム700を使用して実行される一実施形態では、様々なコンピュータ読取り可能な媒体は、実行するために(1つまたは複数の)プロセッサ710に命令/コードを提供する働きをしてもよく、これを使用して、こうした命令/コードを格納および/または搬送してもよい。多くの実施形態では、コンピュータ読取り可能な媒体は、物理的および/または有形の記憶媒体である。このような媒体は、不揮発性媒体または揮発性媒体の形をとってもよい。不揮発性媒体には、たとえば、(1つまたは複数の)持続的な記憶装置725など、光ディスクおよび/または磁気ディスクが含まれる。揮発性媒体には、限定はされないが、ワーキング・メモリ735などのダイナミック・メモリが含まれる。
【0069】
物理的および/または有形のコンピュータ読取り可能な媒体の普通の形態には、たとえば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブル・ディスク、ハード・ディスク、磁気テープ、もしくは他の任意の磁気媒体、CD−ROM、他の任意の光媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する他の任意の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH−EPROM、他の任意のメモリ・チップもしくはカートリッジ、または、コンピュータが命令および/もしくはコードを読み取ることのできる他の任意の媒体が含まれる。
【0070】
様々な形態のコンピュータ読取り可能な媒体は、実行するために、1つもしくは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを、(1つまたは複数の)プロセッサ710に搬送する働きをしてもよい。単に一例として、各命令は、初めは遠隔コンピュータの磁気ディスクおよび/または光ディスク上で搬送してもよい。遠隔コンピュータは、そのダイナミック・メモリに命令をロードし、コンピュータ・システム700が受信および/または実行する信号として、この命令を、伝送媒体を介して送信してもよい。
【0071】
通信サブシステム730(および/またはその構成要素)は一般に、信号を受信することになり、次いで、バス705がこの信号(および/または信号によって搬送されるデー
タ、命令など)をワーキング・メモリ735に搬送してもよく、そこから(1つまたは複数の)プロセッサ710が、命令を取得して実行する。ワーキング・メモリ735が受信した命令は、(1つまたは複数の)プロセッサ710が実行する前か後に、場合によっては持続的な記憶装置725に記憶してもよい。
【0072】
多種多様な薬剤、液体、液体薬剤、および液体に溶かした薬剤をエアロゾル化してもよいが、以下に、エアロゾル化してよいものの幅広い例を示す。さらなる例は、米国特許出願第12/341,780号明細書に記載されており、あらゆる目的で、その開示全てを本明細書に援用する。ほぼいかなるアンチグラム陰性、アンチグラム陽性の抗生物質、またはその組合せを使用してもよい。さらに、抗生物質は、広域スペクトル有効性または混合スペクトル有効性を有する抗生物質を含んでもよい。ポリエン物質、具体的にはアンホテリシンBなどの抗真菌薬も、本明細書での使用に適している。アンチグラム陰性の抗生物質またはその塩の例には、限定はされないが、アミノグリコシドまたはその塩が含まれる。アミノグリコシドまたはその塩の例には、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パラマイシン、トブラマイシン、その塩、およびその組合せが含まれる。たとえば、硫酸ゲンタマイシンは、ミクロモノスポラプルプレアの成長によって生成される抗生物質の硫酸塩、またはそうした塩の混合物である。硫酸ゲンタマイシン、USPは、フーチエン(Fujian) フーカン(Fukang)製薬会社(Pharmaceutical Co.,LTD)、福州(Fuzhou)、中国、から入手することができる。アミカシンは通常、硫酸塩として供給され、たとえば、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社(Bristol−Myers Squibb)から入手することができる。アミカシンは、カナマイシンなどの関連物質を含んでもよい。
【0073】
アンチグラム陽性の抗生物質またはその塩の例には、限定はされないが、マクロライドまたはその塩が含まれる。マクロライドまたはその塩の例には、限定はされないが、バンコマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、その塩、およびその組合せが含まれる。たとえば、塩酸バンコマイシンは、バンコマイシンの塩酸塩、アミコラトプシスオリエンタリスのある種の菌株から生成される抗生物質であり、以前はストレプトミセスオリエンタリスと呼ばれていた。塩酸バンコマイシンは、主にバンコマイシンBの1塩酸塩から成る関連物質の混合物である。全てのグリコペプチド系抗生物質と同様に、塩酸バンコマイシンは、中心コアのヘプタペプチドを含む。塩酸バンコマイシン、USPは、アルファーマ(Alpharma)、コペンハーゲン、デンマーク、から入手することができる。
【0074】
実施形態によっては、組成物は、抗生物質、および、1つまたは複数のさらなる活性薬剤を含む。本明細書に記載のさらなる活性薬剤には、薬剤、薬物、または化合物が含まれ、これらは、しばしば有益な何らかの薬理効果を提供する。これには、食品、栄養補助食品、栄養素、薬物、ワクチン、ビタミン、および他の有益な薬剤が含まれる。本明細書では、各用語はさらに、患者に局所作用もしくは全身作用をもたらす、任意の生理学的または薬理学的に活性な物質を含む。本明細書に記載の医薬品処方に組み込むための活性薬剤は、限定はされないが、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血管系、シナプス部位、神経効果器、接合部位、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、オータコイド系、消化器系および排出系、ヒスタミン系、ならびに中枢神経系に作用する薬剤を含む無機化合物または有機化合物でもよい。
【0075】
さらなる活性薬剤の例には、限定はされないが、抗炎症剤、気管支拡張剤、およびその組合せが含まれる。
気管支拡張剤の例には、限定はされないが、ベータ作用薬、抗ムスカリン作用薬、ステロイド、およびその組合せが含まれる。たとえば、ステロイドは、硫酸アルブテロールな
どのアルブテロールを含んでもよい。
【0076】
活性薬剤は、たとえば、睡眠薬、鎮静剤、精神賦活剤、精神安定剤、呼吸器系薬剤、抗痙攣薬、筋弛緩薬、抗パーキンソン薬、ドーパミン拮抗薬、鎮痛剤、抗炎症薬、抗不安薬(精神安定剤)、食欲抑制剤、抗片頭痛薬、筋肉収縮薬、抗感染薬(抗ウイルス剤、抗真菌薬、ワクチン)、抗関節炎薬、抗マラリア薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、サイトカイン、成長因子、抗がん剤、抗血栓剤、血圧降下薬、心臓脈管薬、抗不整脈薬、抗酸化剤、抗喘息薬、避妊薬を含むホルモン剤、交感神経興奮様薬、利尿薬、脂質制御薬、抗アンドロゲン薬、駆虫薬、腫瘍薬、抗腫瘍薬、血糖低下薬、栄養剤および栄養補助食品、成長補助食品、抗腸炎剤、ワクチン、抗体、診断用薬、ならびに造影剤を含んでもよい。活性薬剤は、吸入によって投与されると、局所的または全身的に作用することがある。
【0077】
活性薬剤は、複数の構造的クラスのうちの1つに分類されてもよく、このクラスには、小分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ステロイド、生理的効果を引き出すタンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、電解質などが含まれるが、ただしそれだけに限定されない。
【0078】
本発明で使用するのに適した活性薬剤の例には、限定はされないが、カルシトニン、アンホテリシンB、エリスロポエチン(EPO)、第VIII因子、第IX因子、セレデース、セレザイム、シクロスポリン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、トロンボポエチン(TPO)、α1プロテイナーゼインヒビター、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン(HGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヘパリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロン・アルファ、インターフェロン・ベータ、インターフェロン・ガンマ、インターロイキン−1受容体、インターロイキン−2、インターロイキン−1受容体拮抗薬、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、第IX因子、インスリン、プロインスリン、インスリン類似体(たとえば、米国特許第5,922,675号明細書に記載のモノアシル化インスリンであり、この特許を、参照により全体として本明細書に援用する)、アミリン、C−ペプチド、ソマトスタチン、オクトレオチドを含むソマトスタチン類似体、バソプレシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インスリン様成長因子(IGF)、インスリントロビン、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、神経成長因子(NGF)、組織増殖因子、ケラチノサイト成長因子(KGF)、グリア成長因子(GGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、内皮増殖因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン様ペプチドチモシンアルファ−1、IIb/IIIa阻害剤、アルファ1−アンチトリプシン、ホスホジエステラーゼ(PDE)化合物、VLA−4阻害剤、ビスフォスフォネート、呼吸器合胞体ウイルス抗体、嚢胞性線維性膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、殺菌性透過性増加タンパク質(BPI)、抗サイトメガロウイルス抗体、13−cis−レチノイン酸、オレアンドマイシン、トロレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、ダベルシン、アジスロマイシン、フルリスロマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、ミデカマイシン、ロイコマイシン、ミオカマイシン、ロキタマイシン、アンダジスロマイシン、およびスウィンホリドA、ならびにシプロフロキサシン、オフロキサシン、レポフロキサシン、トロバフロキサシン、アラトロフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、グレパフロキサシン、ガチフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、フレロキサシン、トスフロキサシン、プルリフロキサシン、オフロキサシン、パズフロキサシン、クリナフロキサシン、シタフロキサシンなどのフルオロキノロン、テイコプラニン、ラモプラニン、ミデプラニン、コリスチン、ダプトマイシン、グラミシジン、コリスチメタート、ポリミキシンB、カプレオマイシン、バシトラシンなどのポリミキシン、ならびにペニシリンGのようなペニシリナ
ーゼ感受性物質を含むペニシリン、ペニシリンV、メチシリンのようなペニシリナーゼ耐性物質、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、ナフシリンなどのペネム、ならびにアンピシリン、アモキシシリン、ヘタシリンのようなグラム陰性菌(活性薬剤)、シリン、およびガランピシリン、ならびにカルベニシリンのような抗緑膿菌性ペニシリン、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、およびピペラシリン、ならびにセフポドキシム、セフプロジル、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セフラドリン、セフォキシチン、セファマンドール、セファゾリン、セファロリジン、セファクロル、セファドロキシル、セファログリシン、セフロキシム、セフォラニド、セフォタキシム、セファトリジン、セファセトリル、セフェピム、セフィキシム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォテタン、セフメタゾール、セフタジジム、ロラカルベフ、モキサラクタムのようなセファロスポリン、アズトレオナムのようなモノバクタム、ならびにイミペネム、メロペネムなどのカルバペネム、ならびにイセチオン酸ペンタミジン、リドカイン、硫酸メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン・アセトニド、ブデソニド・アセトニド、フルチカゾン、イプラトロピウム臭化物、フルニソリド、クロモグリク酸ナトリウム、エルゴタミン酒石酸塩など他の分類の薬剤、ならびに適用可能なら、類似体、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤、ならびに上記の薬学的に許容される塩形態のうちから1つまたは複数が含まれる。ペプチドおよびタンパク質に関しては、本発明は、合成型、天然型、グリコシル化型、非グリコシル化型、ペグ化型、および生物学的活性フラグメント、誘導体、およびその類似体を包含するものである。
【0079】
本発明で使用するための活性薬剤にはさらに、ベア核酸分子としての核酸、ベクター、関連するウィルス粒子、プラスミドDNAもしくはRNA、または細胞のトランスフェクションもしくは変換に適した、すなわちアンチセンスを含む遺伝子治療に適したタイプの他の核酸構造が含まれる。さらに、活性薬剤は、ワクチンとして使用するのに適した弱毒化ウィルスまたは死滅ウィルスを含んでもよい。他の有用な薬剤には、米医薬品便覧(Physician’s Desk Reference)(最新号)にリストされた薬剤が含まれ、この文献を、参照により全体として本明細書に組み込む。
【0080】
製剤処方での抗生物質または他の活性薬剤の量は、単位用量当たり治療的または予防的に有効な量の薬剤を投与して所望の結果を得るのに必要な量となる。実際には、具体的な薬剤、その活動度、治療すべき状態の重症度、患者集団、投与の要求事項、および所望の治療効果に応じて、これは広く変化することになる。組成は一般に、活性薬剤の約1重量パーセント〜約99重量パーセント、たとえば約2重量パーセント〜約95重量パーセント、または約5重量パーセント〜85重量パーセントの範囲に含まれることになり、やはり、組成に含まれる添加剤の相対量に依存することになる。本発明での組成は、0.001mg/日〜100mg/日の用量、たとえば0.01mg/日〜75mg/日の用量、または0.10mg/日〜50mg/日の用量で投与される活性薬剤にとって、特に有用である。本明細書に記載の処方には2種類以上の活性薬剤を組み込んでもよく、用語「薬剤」の使用は、2種類以上のそうした薬剤の使用を排除するものではないことを理解されたい。
【0081】
一般に、組成物には、過度な賦形剤は含まれない。1つまたは複数の実施形態では、水性組成物は実質的に、アミカシンもしくはゲンタマイシン、もしくはその両方などアンチグラム陰性の抗生物質、ならびに/またはその塩および水から構成される。
【0082】
さらに、1つまたは複数の実施形態では、水性組成物は保存剤なしである。この点に関しては、水性組成物は、メチルパラベンなし、および/またはプロピルパラベンなしでもよい。さらに、水性組成物は、生理食塩水なしでもよい。
【0083】
1つまたは複数の実施形態では、組成物は、抗感染薬および賦形剤を含む。組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含んでもよく、これらは、被検者への、特に被験者の肺への著しく不都合な毒性効果をもたらさずに、肺に取り込むことができる。活性薬剤に加えて、製剤処方には、場合によっては、肺内投与に適した1つまたは複数の医薬品賦形剤が含まれ得る。これらの賦形剤は、それが存在する場合には、一般に、安定性、表面改質、効果促進、または組成物の投与など、その所期の機能を実行するのに十分な量で組成物中に存在する。したがって、賦形剤は、それが存在する場合には、約0.01重量パーセント〜約95重量パーセント、たとえば約0.5重量パーセント〜約80重量パーセント、約1重量パーセント〜約60重量パーセントの範囲にあってもよい。このような賦形剤は、1つには、より効率的かつ再現可能に活性薬剤を投与することにより、かつ/または製造を容易にすることによって、活性薬剤の機能をさらに改善するように働くことが好ましい。1つまたは複数の賦形剤はまた、処方の際に活性薬剤の濃度を下げることが望ましいときに、増量剤として働くよう供給してもよい。
【0084】
たとえば、組成物には、塩化ナトリウムなど1つまたは複数の重量オスモル濃度調整剤が含まれ得る。たとえば、塩酸バンコマイシンの溶液に塩化ナトリウムを加えて、溶液の重量オスモル濃度を調整してもよい。1つまたは複数の実施形態では、水性組成物は実質的に、塩酸バンコマイシンなどのアンチグラム陽性の抗生物質、重量オスモル濃度調整剤、および水から構成される。
【0085】
この製剤処方に有用な医薬品賦形剤および添加剤には、限定はされないが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、非生体高分子、生体高分子、砂糖などの炭水化物、アルジトール、アルドン酸、エステル型糖、糖高分子などの誘導体化糖類が含まれ、これらは、単一でまたは組み合わせて存在してもよい。
【0086】
例示的なタンパク質賦形剤には、人血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)などのアルブミン、ゼラチン、カゼイン、ヘモグロビンなどが含まれる。適切なアミノ酸(本発明のジロイシルペプチド以外)は、緩衝能力としても働くことができ、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム、チロシン、トリプトファンなどを含む。分散剤として機能するアミノ酸およびポリペプチドが好ましい。このカテゴリに分類されるアミノ酸には、ロイシン、バリン、イソロイシン、トリプトファン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、プロリンなどの疎水性アミノ酸が含まれる。
【0087】
本発明での使用に適した炭水化物賦形剤には、たとえば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類、および、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどのアルジトールが含まれる。
【0088】
製剤処方はまた、通常は有機酸または有機塩基から調整される塩である、緩衝調整剤またはpH調整剤を含んでもよい。代表的な緩衝剤は、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、もしくはフタル酸の有機酸塩、トリス、トロメタミン塩酸塩、またはリン酸緩衝液を含む。
【0089】
製剤処方にはまた、高分子賦形剤/添加剤、たとえば、ポリビニルピロリドン、セルロース、およびヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フィコール(ポリマー糖)、ヒドロキシエチルデンプン、デキ
ストレート(たとえば、2−ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンやスルホブチルエーテルβシクロデキストリンナトリウム)などのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、ペクチンなどの誘導体化セルロースが含まれ得る。
【0090】
製剤処方はさらに、香味剤、矯味剤、無機塩(たとえば、塩化ナトリウム)、抗菌剤(たとえば、塩化ベンザルコニウム)、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(たとえば、「ツイン20」や「ツイン80」などのポリソルベート)、ソルビタンエステル、脂質(たとえば、レシチンや他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質)、脂肪酸および脂肪エステル、ステロイド(たとえば、コレステロール)、ならびにキレート剤(たとえば、EDTA、亜鉛、および他のこのような適切な陽イオン)を含んでもよい。本発明による組成物で使用するのに適した他の医薬品賦形剤および/または添加剤は、「レミントン(Remington):調剤の科学と実践(The Science & Practice of Pharmacy)」19版、ウィリアムズ(Williams) & ウィリアムズ(Williams)、(1995年)、および「米医薬品便覧(Physician’s Desk Reference)」、52版、医療経済学(Medical Economics)、モントベール、ニュージャージー(1998年)、にリストされており、この両方を、参照により全体として本明細書に組み込む。
【0091】
これまでに論じた、各方法、システム、および装置は、例である。様々な構成は、必要に応じて、様々な手順もしくは構成要素を、省いても、置き換えても、または追加してもよい。たとえば、代替構成では、説明した順序とは異なる順序で各方法を実行してもよく、かつ/または、様々な段階を追加し、省略し、かつ/もしくは組み合わせてもよい。また、ある種の構成に関して説明した特徴は、他の様々な構成と組み合わせてもよい。構成の様々な態様および要素は、同様に組み合わせてもよい。また、技術は進化し、したがって要素の多くは例であり、本開示または特許請求の範囲に記載の範囲を制限するものではない。
【0092】
説明において具体的詳細を提示して、(実施形態を含む)例示的な構成の完全な理解を実現する。しかし、各構成は、これら具体的な詳細がなくても実行してよい。たとえば、必要以上に詳細に説明することなく、よく知られた回路、プロセス、アルゴリズム、構造、および技法を示して、各構成を曖昧にすることを避けてきた。この説明により、例示的な構成のみを提示し、特許請求の範囲に記載の範囲、適用可能性、または構成を制限するものではない。むしろ、各構成の前述の説明は、説明した技法の実装を実現させるための説明を当業者に提供することになる。本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、各要素の機能および構成に様々な変更を加えてもよい。
【0093】
また、フロー図またはブロック図として示してあるプロセスとして、各構成を説明してもよい。それぞれ、順次プロセスとして各動作を説明してもよいが、各動作の多くは、並列にまたは同時に実行することができる。さらに、各動作の順序を再構成してもよい。1つのプロセスは、図に含まれない追加ステップを有してもよい。さらに、各方法の例は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、またはそれらの任意の組合せで実装してもよい。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、またはマイクロコードで実装されるとき、必要なタスクを実行するためのプログラム・コードまたはコード・セグメントは、記憶媒体など持続的なコンピュータ読取り可能な媒体に格納してもよい。プロセッサは、説明したタスクを実行してもよい。
【0094】
いくつかの例示的な構成を説明してきたが、本開示の趣旨から逸脱することなく、様々な修正形態、代替構造、および均等物を使用してもよい。たとえば、前述の要素は、より
大きなシステムの構成要素でもよく、他のルールが、本発明の用途に優先してもよく、または他の方法でその用途を修正してもよい。また、前述の要素を考慮に入れる前に、その間に、またはその後に、いくつかのステップにとりかかってもよい。したがって、前述の説明は、特許請求の範囲に記載の範囲を縛るものではない。