(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加水分解されたN−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドが、N−アセチル−L−システインで処理される、請求項2に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
化合物5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンは、PI3K阻害性を有することが公知である。したがって、前記化合物は、様々な疾患の治療、特に、増殖性疾患の予防または治療に対して有益である。したがって、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンおよび薬剤として許容されるその塩の改良された製造方法を提供する必要性が大きい。
【0035】
以下の用語集、末尾の実施例および図面を含めて、以下の本発明の詳細な説明を考慮すると、本発明をより良く理解し、上記に示したもの以外の目的が明らかになってくる。以下の一般的な定義は、別な規定がされた場合を除き、本明細書に適用される。
【0036】
ヒドロキシル基、アミン基、およびスルフヒドリル基に関する「保護された」という用語は、Protective Groups in Organic Synthesis, Greene, T. W.; Wuts, P. G. M., John Wiley & Sons, New Jersey,(4
th Edition, 2007)に説明されたもの等の、当業者に公知の保護基によって望ましくない反応から保護されており、保護基は、文献中で述べられた手順を用いて付加または除去することができる、これらの官能基の形態を表す。保護されたヒドロキシル基の例には、限定するものではないが、シリルエーテル、例えば、ヒドロキシル基と、限定するものではないが、t−ブチルジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等の試薬との反応によって得られるもの;置換メチルおよびエチルエーテル、例えば、限定するものではないが、メトキシメチルエーテル、メチルチオメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、t−ブトキシメチルエーテル、2−メトキシエトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、1−エトキシエチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル;エステル、例えば、限定するものではないが、ベンゾイルギ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩が含まれる。保護されたアミン基の例には、限定するものではないが、アミド、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、およびベンズアミド;イミド、例えば、フタルイミド、およびジチオスクシンイミド;等が含まれる。保護されたスルフヒドリル基の例には、限定するものではないが、チオエーテル、例えば、S−ベンジルチオエーテル、およびS−4−ピコリルチオエーテル;置換S−メチル誘導体、例えば、ヘミチオ、ジチオおよびアミノチオアセタール;等が含まれる。
【0037】
「カルボキシ保護基」は、化合物の他の官能性部位が関与する反応が行なわれる間カルボン酸官能基を封鎖するまたは保護するために使用される、一般に使用されるカルボン酸保護エステル基の1つでエステル化されているカルボニル基を表す。さらに、カルボキシ保護基は、固体担体に結合させることができ、それによって、該化合物は、対応する遊離の酸を放出するために加水分解法によって切断されるまでカルボキシラートとして固体担体に連結されたままに留まる。代表的なカルボキシ保護基には、例えば、アルキルエステル、第二級アミド等が含まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合の「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明のピリミジン化合物の無毒性の酸またはアルカリ土類金属塩を表す。これらの塩は、ピリミジン化合物の最終単離および精製の間にin situで、または塩基もしくは酸官能基を、適切な有機または無機の酸または塩基とそれぞれ単独に反応させることによって調製することができる。代表的な塩には、限定するものではないが、以下のもの:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ピリジン塩酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。また、塩基性窒素含有基は、アルキルハロゲン化物、例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物;ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸塩のようなジアルキル硫酸塩、長鎖ハロゲン化物、例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物、ベンジルおよびフェネチル臭化物、等のようなアラルキルハロゲン化物等の作用物質で四級化され得る。これによって、水もしくは油可溶性または分散可能な生成物が得られる。
【0039】
複数形(例えば、化合物(compounds)、塩(salts)が使用される場合、これは、単数(例えば、単一化合物、単一の塩)を包含する。「1つの化合物(a compound)」は、(例えば、医薬製剤中に)複数の式Aの化合物(またはその塩)が存在することを排除しない。
【0040】
単数形(例えば、溶媒(solvent)、塩基(base))が使用される場合、これは複数(例えば、溶媒(solvents)、塩基(bases))を包含する。「1つの溶媒(a solvent)」、「その溶媒(the solvent)」、「1つの塩基(a base)」または「その塩基(the base)」は、(例えば、反応混合物中に)複数の溶媒または塩基が存在することを排除しない。
【0041】
式Aの化合物の塩は、好ましくは、薬学的に許容される塩であり;このような塩は当分野で公知である。
【0042】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミン(化合物A)の合成法
したがって、本発明の一実施形態は、
図2に要約されたように、式Aの化合物を製造する改良された方法であって、
【0043】
【化18】
(a)5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンをアシル化して、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成するステップと、
【0044】
【化19】
(b)N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを、アルキルグリニャール試薬と、続いて、トリアルキルボラートおよび2,2’−アザンジイルジエタノールと反応させて、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成するステップと、
【0045】
【化20】
(c)N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを、パラジウム触媒による鈴木カップリング反応を介して、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とカップリングさせて、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成するステップと、
【0046】
【化21】
(d)N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを酸性条件下で加水分解して、式Aの化合物を形成するステップと
を含む方法を提供する。
【0047】
ステップ(a)
例示的な実施形態において、5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンは、1種または複数の溶媒および式(R
5C=O)
2Oの酸無水物(R
5はC
1〜6アルキルおよびフェニルである)を含む反応混合中でアシル化されて、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成する。1種または複数の溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、極性非プロトン性溶媒、エステル溶媒およびエーテル溶媒から選択される。一実施形態では、ステップ(a)の1種または複数の溶媒は、酢酸エチルおよびヘプタンを含み、酸無水物は無水酢酸である。典型的な反応時間は、4から8時間の範囲である。典型的な反応温度は、還流条件下で70℃から90℃の範囲である。一実施形態では、無水酢酸を3時間内で連続的に添加し、反応混合物を80℃で5時間撹拌した。1種または複数の溶媒を真空中で除去し、生成物を、追加のヘプタンを添加し、冷却することによって沈殿させた。生成物N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドをろ過によって回収し、真空下で乾燥させ、ステップ(b)で使用した。改良された方法の利点は、国際特許出願PCT/US2011/053808のステップ(a)において、以前に溶媒として使用した溶媒、ジメチルアミノピリジン(DMAP)が排除されること、および生成物純度が一貫して高く(>99%)、同時に生成物収率が94〜96%であることである。
【0048】
ステップ(b)
例示的な実施形態において、1種または複数の溶媒を含む反応混合物中で、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドをアルキルグリニャール試薬と反応させ、続いて、トリアルキルボラートを添加することによって、および2,2’−アザンジイルジエタノールをさらに添加することによって、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成する。1種または複数の溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、およびエーテル溶媒から選択される。典型的なアルキルグリニャール試薬は、C
1〜6MgX(Xは、Cl、Br、Iである)から選択される。典型的なグリニャール試薬は、選択的メタル化を達成するために使用することができるもの、即ち、グリニャール試薬、塩錯体である。一実施形態において、アルキルグリニャール試薬は、イソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウム錯体であり、1種または複数の溶媒は、テトラヒドロフランであり、トリアルキルボラートは、トリイソプロピルボラートである。
【0049】
一実施形態において、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを製造するためのステップ(b)の方法は、
(i)テトラヒドロフラン中で、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドをイソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウムと反応させるステップと;
(ii)1種または複数の溶媒中のトリイソプロピルボラートを添加するステップと;
(iii)1種または複数の溶媒中の2,2’−アザンジイルジエタノールをさらに添加するステップと
をさらに含む。
【0050】
ステップ(i)に対する典型的な反応温度は、0℃から10℃の範囲である。アルキルグリニャール試薬を用いる利点は、これは、脱プロトンの間に選択的な塩基として機能し、金属交換反応を介して安定なジアニオンを生じさせることである。前記方法は、モノアニオンが沈殿せず、臭化物/金属交換のための有機リチウム試薬に比較してより少ない当量のアルキルグリニャール試薬が使用される点で、低温においてブチルリチウムを用いる脱プロトン/金属交換反応に対して他の利点を有する。ステップ(ii)に対する典型的な反応温度は、10℃から30℃の範囲である。一実施形態において、トリイソプロピルボラートの添加が完了した後、テトラヒドロフラン溶媒を2−メチルテトラヒドロフランで置き換えた。ステップ(iii)に対する典型的な反応温度は、0℃から30℃の範囲である。一実施形態において、1種または複数の溶媒は、2−メチルテトラヒドロフランおよびイソプロパノールである。ボロン酸エステル生成物、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドは、ボロン酸化合物に対して、ボロン酸に比較した、純度、収率および熱的安定性を含む、いくつかの利点を有する。
【0051】
ステップ(c)
例示的な実施形態において、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを、触媒、塩基および1種または複数の溶媒を含むパラジウム触媒による鈴木反応を介して、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とカップリングさせて、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成する。
【0052】
鈴木反応は、上記の反応の多くに使用されており、原理的には、有機化学における公知の反応であり、2つの反応物のパラジウム触媒によるカップリングを表し、ここで、反応物の一方は、反応性ハロゲン化物部分を含み、他の反応物は、反応性ボロン酸エステルまたはボロン酸部分を含む。この反応に対する適切な条件(「鈴木条件」)は、当業者には公知であり、特に、触媒、希釈剤、追加の反応助剤、反応時間および反応温度の選択に関係する。この反応は、まだ、本明細書に記載のような特定の出発材料を用いて適用されていないが、この反応は、このようにして新規な発明の方法となる。本方法の特定の実施形態において、Pd触媒は、in situで生成されるPd(PPh
3)
4である。
【0053】
一実施形態において、ステップ(c)の溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、極性非プロトン性溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒および水から選択される1種または複数の溶媒を含む。別の実施形態において、ステップ(c)の溶媒は、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチル−テトラヒドロフランおよび水から選択される1種または複数の溶媒を含む。特定の実施形態において、ステップ(c)の溶媒は、ジメトキシエタンおよび水を含む。他の特定の実施形態において、ステップ(c)の溶媒は、テトラヒドロフランおよび水を含む。ステップ(c)の塩基は、酢酸塩、リン酸塩および炭酸塩から選択される。特定の実施形態において、ステップ(c)の塩基は炭酸カリウムである。ステップ(c)の触媒は、パラジウムを含む。ある特定の実施形態において、触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドから選択される。他の実施形態において、ステップ(c)のパラジウム触媒は、Pd(OAc)
2をホスフィンリガンドと組み合わせることによって形成される。適したホスフィンリガンドは、当業者には公知である;非限定的な例には、トリフェニルホスフィンおよびトリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンが含まれる。特定の実施形態において、ステップ(c)の触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)である。触媒の適した量は、0.1〜20mol%から好ましくは1〜10mol%の範囲である。典型的な反応時間は、1分から2日、好ましくは10分から10時間、特に好ましくは1から3時間の範囲である。典型的な反応温度は、20℃から還流条件、好ましくは30℃から90℃、特に好ましくは40〜60℃の範囲である。
【0054】
他の有利な実施形態において、本発明は方法のステップ(c)による方法であって、最初に得られる反応混合物の後処理が、i)不溶性物質を(例えば、不溶物をろ過することによって、好ましくはセライトパッド等のろ過助剤を用いたろ過によって)分離するステップと、ii)有機相を分離し、場合によって、溶媒を(酢酸イソプロピル等の)別の溶媒で置き換えるステップと、iii)残留パラジウムを除去するステップと、iv)生成物を結晶化する(好ましくは、酸水溶液抽出およびpH制御後の沈殿)ステップとを含む方法に関する。
【0055】
本発明の利点は、鈴木触媒をin situで生成することができること、ならびに、生成物の精製およびパラジウム触媒の除去が、固体を取扱わずに、抽出を用いて実施することができることである。さらなる利点は、ステップ(c)および(d)は、単一工程ステップとして、組み合わせることができることである。
【0056】
ステップ(d)
例示的な実施形態において、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドは、1種または複数の溶媒中で酸性条件下、加水分解されて、式Aの化合物を形成する。
【0057】
一実施形態において、ステップ(d)の溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、極性非プロトン性溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒および水から選択される1種または複数の溶媒を含む。特定の実施形態において、ステップ(d)の1種または複数の溶媒は水である。別の特定の実施形態において、ステップ(d)の1種または複数の溶媒は、水およびイソプロピルアセタート(isopropylacetate)である。
【0058】
ステップ(d)において、アセチル部分の除去は、この部分の水素原子による置換も必然的に伴う。アセチル部分の除去は、当業者に公知の方法によって実施することができる。非限定的なこのような方法の例には、酸、塩基および金属により媒介される反応が含まれる。このような方法の特定の例は、酸により媒介される加水分解である。ステップ(d)の一実施形態において、アセチル部分の除去のための試薬は、酸、塩基および金属触媒から選択される。ステップ(d)の特定の実施形態において、アセチル部分の除去のための試薬は、塩酸である。
【0059】
ある特定の実施形態において、ステップ(a)から(d)は独立に、本明細書の実施例に詳述される追加のステップまたは手順(例えば、反応副生成物を除去するための、または反応生成物を後処理する、単離もしくは精製するための)を含む。
【0060】
ある特定の実施形態において、ステップ(a)から(d)に続いて、塩の形成が行なわれる。
【0061】
当業者であれば、所望の結果を得るために、前述の方法のいくつかのパラメーターを有利に変化させてもよいことを理解しよう。これらのパラメーターには、例えば、反応成分および溶媒の精製の方法および手段;前記反応成分および溶媒の反応混合物への添加の順序;前記反応成分および溶媒の反応の持続時間;および前記反応の間の反応成分および溶媒の温度および撹拌、混合またはかきまぜの速度が含まれる。
【0062】
ステップ(a)から(d)(特定の方法のステップも含む)によって具体化された方法は、式Aの化合物を製造するための公知の方法に比較して、1つまたは複数の以下の基準:より安全;より簡素;より高収率およびより経済的、を満たすことが判明した。さらに、本明細書に記載の方法は、大規模化が可能であると考えられ、量産に適したものになっている。
【0063】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミン(化合物A)の代替の合成法
本発明はまた、式Aの化合物を製造する代替の方法(
図3)であって、
【0064】
【化22】
(a)5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンをアルキルグリニャール試薬と、続いてトリアルキルボラートおよび2,2’−アザンジイルジエタノールと反応させて、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンを形成するステップと、
【0065】
【化23】
(b)N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンを、パラジウム触媒による鈴木カップリング反応を介して、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とカップリングさせて、式Aの化合物を形成するステップと、
【0067】
ステップ(a)
例示的な実施形態において、5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンを、1種または複数の溶媒を含む反応混合物において、3.5当量のアルキルグリニャール試薬と、続いて、トリアルキルボラートを添加することによって、および2,2’−アザンジイルジエタノールをさらに添加することによって反応させて、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンを形成する。1種または複数の溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、およびエーテル溶媒から選択される。典型的なアルキルグリニャール試薬は、C
1〜6MgX(Xは、Cl、Br、Iである)から選択される。典型的なグリニャール試薬は、選択的メタル化を達成するために使用することができるもの、即ち、グリニャール試薬、塩錯体である。一実施形態において、アルキルグリニャール試薬は、イソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウム錯体であり、1種または複数の溶媒はテトラヒドロフランであり、トリアルキルボラートは、トリイソプロピルボラートである。
【0068】
ステップ(b)
例示的な実施形態において、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンを、触媒、塩基および1種または複数の溶媒を含むパラジウム触媒による鈴木反応を介して、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とカップリングさせて、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミン(化合物A)を形成する。
【0069】
鈴木反応は、上記の反応の多くに使用されており、原理的には、有機化学における公知の反応であり、2つの反応物のパラジウム触媒によるカップリングを表し、ここで、反応物の一方は反応性ハロゲン化物部分を含み、他方の反応物は反応性ボロン酸エステルまたはボロン酸部分を含む。この反応に対する適切な条件(「鈴木条件」)は、当業者には公知であり、特に、触媒、希釈剤、他の反応助剤、反応時間および反応温度の選択に関係する。この反応は、まだ、本明細書に記載のような特定の出発材料を用いて適用されていないが、この反応は、このようにして新規な発明の方法となる。本方法の一実施形態において、Pd触媒は、Pd(PPh
3)
4である。本方法の別の実施形態において、Pd触媒は、in situで生成されるPd(PPh
3)
4である。
【0070】
一実施形態において、ステップ(b)の溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、極性非プロトン性溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒および水から選択される1種または複数の溶媒を含む。別の実施形態において、ステップ(b)の溶媒は、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフランおよび水から選択される1種または複数の溶媒を含む。ステップ(b)の塩基は、酢酸塩、リン酸塩および炭酸塩から選択される。特定の実施形態において、ステップ(b)の塩基は、炭酸カリウムである。ステップ(b)の触媒はパラジウムを含む。ある特定の実施形態において、触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドから選択される。他の実施形態において、ステップ(b)のパラジウム触媒は、Pd(OAc)
2をホスフィンリガンドと組み合わせることによって形成される。適したホスフィンリガンドは、当業者には公知であり;非限定的な例には、トリフェニルホスフィンおよびトリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンが含まれる。特定の実施形態において、ステップ(b)の触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)である。触媒の適した量は、0.1〜20mol%から好ましくは1〜10mol%の範囲である。典型的な反応時間は、1分から2日、好ましくは10分から10時間、特に好ましくは1から3時間の範囲である。典型的な反応温度は、20℃から還流条件、好ましくは30℃から90℃、特に好ましくは40〜60℃の範囲である。
【0071】
一実施形態において、ステップ(a)および(b)は、単一ステップとして組み合わせることができる。
【0072】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミン(化合物A)の代替の合成法
本発明はまた、式Aの化合物を製造する代替の方法(
図4)であって、
【0073】
【化25】
(a)ジアニオン N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドおよび4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]を、パラジウム触媒による熊田カップリング反応を介してカップリングさせて、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成するステップと、
【0074】
【化26】
(b)N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを酸性条件下で加水分解して、式Aの化合物を形成するステップと、
【0076】
ステップ(a)
例示的な実施形態において、1種または複数の溶媒を含む反応混合物中で、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを2.5当量のアルキルグリニャール試薬と反応させて、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドのジアニオンであるグリニャール試薬を形成する。1種または複数の溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、およびエーテル溶媒から選択される。典型的なアルキルグリニャール試薬は、C
1〜6MgX(Xは、Cl、Br、Iである)から選択される。典型的なグリニャール試薬は、選択的金属化を達成するために使用することができるもの、即ちグリニャール試薬、塩錯体である。一実施形態において、アルキルグリニャール試薬は、イソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウム錯体であり、1種または複数の溶媒はテトラヒドロフランである。熊田反応は、上記の反応の多くに使用されており、原理的には、有機化学における公知の反応であり、2つの反応物のパラジウムまたはニッケル触媒炭素−炭素カップリングを表し、ここで、反応物の一方は、反応性ハロゲン化物部分を含み、他方の反応物は、反応性グリニャール試薬を含む。この反応に対する適切な条件(「熊田条件」)は、当業者には公知であり、特に、触媒、希釈剤、追加の反応助剤、反応時間および反応温度の選択に関係する。この反応は、まだ、本明細書に記載のような特定の出発材料を用いて適用されていないが、この反応は、このようにして新規な発明の方法となる。本方法の一実施形態において、Pd触媒は、Pd(アセタート)
2および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンである。本方法の別の実施形態において、Pd−触媒はNiCl
2(dppf)である。
【0077】
一実施形態において、ステップ(a)の溶媒は、エーテル溶媒および水から選択される1種または複数の溶媒を含む。別の実施形態において、ステップ(a)の溶媒は、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチル−テトラヒドロフランおよび水から選択される1種または複数の溶媒を含む。他の実施形態において、ステップ(a)のパラジウム触媒は、Pd(OAc)
2をホスフィンリガンドと組み合わせることによって形成される。適したホスフィンリガンドは、当業者には公知であり;非限定的な例には、トリフェニルホスフィンおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが含まれる。触媒の適した量は、0.1〜20mol%から好ましくは1〜10mol%の範囲である。典型的な反応時間は、1分から2日、好ましくは10分から10時間、特に好ましくは1から3時間の範囲である。典型的な反応温度は、20℃から還流条件、好ましくは30℃から90℃、特に好ましくは40〜60℃の範囲である。
【0078】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミン(化合物A)の代替の合成法
本発明はまた、式Aの化合物を製造する代替の方法(
図5)であって、
【0079】
【化28】
5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンのトリアニオンを、パラジウム触媒による熊田カップリング反応を介して、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とカップリングさせて、式Aの化合物を形成するステップ
を含む方法を提供する。
【0081】
例示的な実施形態において、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンを、1種または複数の溶媒を含む反応混合物中において、3.5当量のアルキルグリニャール試薬と反応させて、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンのトリアニオンであるグリニャール試薬を形成する。1種または複数の溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、およびエーテル溶媒から選択される。典型的なアルキルグリニャール試薬は、C
1〜6MgX(Xは、Cl、Br、Iである)から選択される。
【0082】
典型的なグリニャール試薬は、選択的メタル化を達成するために使用することができるもの、即ちグリニャール試薬、塩錯体である。一実施形態において、アルキルグリニャール試薬は、イソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウム錯体であり、1種または複数の溶媒は、テトラヒドロフランである。熊田反応は、上記の反応の多くで使用されており、原理的には、有機化学において公知の反応であり、2つの反応物のパラジウムまたはニッケル触媒の炭素−炭素カップリングを表し、ここで、反応物の一方は反応性ハロゲン化物部分を含み、他方の反応物は反応性グリニャール試薬部分を含む。この反応に対する適した条件(「熊田条件」)は、当業者には公知であり、特に、触媒、希釈剤、追加の助剤、反応時間および反応温度の選択に関係する。この反応は、まだ、本明細書に記載の特定の出発材料を用いて適用されていないが、この反応は、このようにして新規な発明の方法となる。本方法の一実施形態において、Pd触媒は、Pd(アセタート)
2および1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンである。本方法の別の実施形態において、Pd触媒は、NiCl
2(dppf)である。
【0083】
一実施形態において、ステップ(a)の溶媒は、エーテル溶媒および水から選択される1種または複数の溶媒を含む。別の実施形態において、ステップ(a)の溶媒は、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチル−テトラヒドロフランおよび水から選択される1種または複数の溶媒を含む。他の実施形態において、ステップ(a)のパラジウム触媒は、Pd(OAc)
2をホスフィンリガンドと組み合わせることによって形成される。適したホスフィンリガンドは、当業者には公知であり;非限定的な例には、トリフェニルホスフィンおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが含まれる。触媒の適した量は、0.1〜20mol%から好ましくは1〜10mol%の範囲である。典型的な反応時間は、1分から2日、好ましくは10分から10時間、特に好ましくは1から3時間の範囲である。典型的な反応温度は、20℃から還流条件、好ましくは30℃から90℃特に好ましくは40〜60℃の範囲である。
【0084】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの一塩酸塩を製造する改良された方法
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの一塩酸塩を、結晶形Aとして形成する改良された方法を見出した。塩酸(1当量未満、例えば0.94から1当量超、例えば1.1当量の)水溶液のアルコール溶液は、ピリジンの存在下、高温で5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの1当量に添加された場合、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの一塩酸塩を、結晶形Aとして、高純度で、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの二塩酸塩の不純物なしで提供する。ピリジンは、1当量を超えるHClの量を緩衝する機能を果たし、その結果、一塩酸塩が形成される。アルコール/水性溶媒(複数可)中のピリジン塩酸塩(1当量未満から2当量、例えば1.1当量)も、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの一塩酸塩を結晶形Aとして形成するために使用することができる。典型的な高温は、25〜80℃の範囲である。典型的な溶媒には、例えば、エタノール、イソプロパノール、およびこれらの水性混合物が含まれる。使用されるHClの典型的な濃度は、2.25Nおよび4.5N HClを含めて、0.1Nから6N HClの範囲である。
【0085】
例示的な実施形態において、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの一塩酸塩を、結晶形Aとして形成する改良された方法であって、ピリジンおよび1.11当量の4.5N HClのイソプロパノール溶液を、60℃で1当量の5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンのイソプロパノール溶液に添加するステップを含む方法を見出した。一塩酸塩の結晶形Aを、XRD、WOPCT/US2011/053808で開示されたようなXRDによって確認した。改良された方法の1つの利点は、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミン一塩酸塩に対して不純物となる、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの二塩酸塩の形成が防止されることである。
【0086】
この方法に使用される出発材料、反応助剤は公知であるかまたは公知の方法の類推で入手できる。有利には、出発材料は、本明細書に記載の通りに得られる。
【0087】
式Aの化合物およびその塩の固体形態は、驚くべきことに、特に有利な薬物動態学的特性を有し、その特性が固体形態を、式Aの化合物およびその塩を含む医薬組成物の調製に特に適したものにすることを見出している。異なる結晶形は、融点、吸湿性、溶解度、流動性または熱力学的安定性等の異なる物理的特性を有し、したがって、異なる結晶形は、特定の使用または態様、例えば、薬物製造の工程における中間体としての使用、または、錠剤、カプセル剤、軟膏剤または液剤のような異なる投与形態における使用に最も適した形態の選択を可能にする。
【0088】
化合物Aは、WO2007/084786に最初に記載されており、この内容を参照により本明細書に援用する。化合物Aは、PI3K(ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ)の阻害薬であり、生化学および細胞アッセイにおいてAKTのリン酸化を調節する。したがって、化合物Aおよびその薬学的に許容される塩、および化合物Aまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、PI3Kによって決まる疾患の予防、寛解または治療に使用することができる。本明細書に記載の通り、化合物Aの遊離の塩基は、無水および水和物を含めて、1種または複数の多形体として存在する固体形態であることができる。化合物Aの一塩酸塩は、無水、水和物および溶媒和物を含めて、1種または複数の多形体として存在する固体形態であることができる。これらの多形体(あるいは、当技術分野で多形形態または結晶形として知られている)は、その粉末X線回折パターン、分光、生理化学的および薬物動態学的特性、ならびにその熱力学的安定性に関して異なる。
【0089】
ある種の条件下において、化合物A、その水和物、その塩およびその塩の水和物または溶媒和物の新規な特定の固体形態が見出され得て、これらは有利な有用性および特性を有することが驚くべきことに見出されており、これらは以下に説明される。
【0090】
式Aの化合物、その水和物、その塩およびその塩の水和物または溶媒和物の固体の、好ましくは結晶の形態は、好ましくは、腫瘍および/またはPI3Kによって媒介される癌性の細胞増殖等の細胞の増殖性疾患の治療に使用され得る。特に、式Aの化合物、その水和物、その塩およびその塩の水和物または溶媒和物は、例えば、肺および気管支;前立腺;乳房;膵臓;結腸および直腸;甲状腺;肝および肝内胆管;肝細胞;胃;神経膠腫/神経膠芽腫;子宮内膜;メラノーマ;腎および腎盂;膀胱;子宮体部;子宮頚部;卵巣;多発性骨髄腫;食道;急性骨髄性白血病;慢性的骨髄性白血病;リンパ球白血病;骨髄白血病、ミエロイド白血病;脳;口腔および咽頭;喉頭;小腸;非ホジキンリンパ腫;メラノーマ;および絨毛結腸腺腫を含むヒトまたは動物(例えば、マウス)の癌の治療に有用である。
【0091】
一実施形態において、本発明は、癌の治療における、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミン一塩酸塩の多形体Aの使用に関する。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を例示する。本発明は、本明細書で説明された実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲に入るすべての形態を包含するものと理解される。
【実施例1】
【0093】
N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドの調製
反応器に5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン(50g、207.462mmol)を充填した。酢酸エチル(50ml)を添加し、混合物を10分間撹拌した。ヘプタン(100ml)を添加した。混合物を30分内に80℃まで加温した。無水酢酸(27.404ml、290.446mmol)を3時間内で連続的に添加した。反応混合物を80℃で5時間撹拌した。60mlの残留物の体積が得られるまで、蒸留(80℃、750〜550mバール)によって溶媒を除去した。混合物を0℃まで冷却した。ヘプタン(200ml)を添加し、混合物を0℃で2時間撹拌した。生成物をろ過によって回収した。残留物をヘプタン(25ml)で洗浄し、トレイドライヤー中において40℃、<20mバールで16時間乾燥させて、わずかに茶色の固体として、55.2g(94.6%)のN−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを得た。
【実施例2】
【0094】
N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドの調製
反応器に、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミド(70.000g、247.310mmol)およびテトラヒドロフラン(480.261ml、5861.254mmol)を充填した。混合物を10分間撹拌した。混合物を30分内に2℃まで冷却した。THF(197.848ml、247.310mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを2時間内で連続的に添加した。混合物を30分内に22℃まで加温した。THF(257.203ml、321.503mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムの第2の添加を、2時間内で連続的に添加した。グリニャール試薬の添加が完了した後、混合物を22℃で30分間撹拌した。トリイソプロピルボラート(116.280g、618.276mmol)を、撹拌した混合物に1時間の間に添加した。550mlの残留物の体積が得られるまで、溶媒を蒸留(20℃、430〜80mバール)によって除去した。溶媒2−メチルテトラヒドロフラン(500ml)を20℃で添加し、混合物を撹拌した。550mlの残留物の体積が得られるまで、溶媒を減圧下蒸留によって除去した。追加の量の溶媒2−メチルテトラヒドロフラン(200ml)を20℃で添加し、混合物を撹拌した。混合物をデカンテーションし、濃HCl(水溶液)70.0g、ブライン280mlおよび水300gで充填された第2の反応器に滴下で添加した。混合物を7℃まで冷却し、1N NaOH(水溶液)148.1gの添加によって混合物のpHを2.97に調整し、20℃まで加温し、混合物を撹拌した。別の1N NaOH(水溶液)10.8gを添加して、pHを3に調整した。有機相を水相から分離し、2−メチルテトラヒドロフラン500mlを有機相に添加した。750mlの残留物の体積が得られるまで、溶媒を減圧下蒸留によって除去した。有機相に2−メチルテトラヒドロフランを2×500mlを添加して、有機相の共沸蒸留を2回実施した。混合物750mlをろ過し、2,2’−アザンジイルジエタノール(26.001g、247.310mmol)およびiPrOH 900mlを充填した第3の反応器に23℃で1時間の間連続的に添加し、混合物を撹拌した。300mlの残留物の体積が得られるまで、溶媒を減圧下蒸留によって除去した。追加の量のイソプロパノール(900ml)を20℃で添加し、混合物を撹拌した。300mlの残留物の体積が得られるまで、溶媒を減圧下蒸留によって除去した。混合物を−10℃まで冷却し、懸濁した固体をろ過によって回収し、この温度のイソプロパノール100mlで洗浄して、57.5g(73.3%)の生成物、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを得た。
【実施例3】
【0095】
N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドの調製
N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミド(25g、78.846mmol)を、2〜7℃のジメトキシエタン(200mL)および水(100mL)の混合物に溶解し、溶液を3℃のジャケット温度を有する、ジャケット付きの予冷した滴下漏斗に移した。滴下漏斗の温度を3℃に維持した。化合物4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジモルホリン(22.45g、78.843mmol)およびK
2CO
3(21.8g、157.7mmol)を不活性化された1L反応器に入れ、1,2−ジメトキシエタン(200mL)、続いて水(25mL)を添加した。反応器を100mバールまで真空排気し、窒素で2回フラッシングした。懸濁液を74〜78℃まで加熱した。二相の溶液が形成された。溶液を還流下でさらに10分間撹拌し、トリフェニルホスフィン(0.822g)のジメトキシエタン(15mL、3.134mmol)溶液を添加した。還流下での撹拌をさらに10分間続け、その時間後、酢酸パラジウム(0.176g、0.784mmol)のジメトキシエタン(15mL)溶液を還流反応混合物に添加した。反応混合物を還流下でさらに10分間撹拌した。この混合物に、強い撹拌下でN−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドの溶液を、4.5時間の間滴下漏斗を介して添加し、同時に、反応混合物を還流に、および滴下漏斗の温度を3℃に維持した。還流において強い撹拌をさらに15分間続け、温度を45〜60℃に到るまで冷却した。溶媒(270mL)の一部を45〜60℃/125mバールで蒸留し、同時に水(200mL)を添加した。さらなる溶媒(100mL)を減圧蒸留し、同時に水(100mL)を添加した。懸濁液をIT25℃に到るまで冷却し、この温度で30分間撹拌し、沈殿をろ過によって単離した。ろ過ケーキを水(2×100mL)で洗浄し、生成物を2mバール/25℃で一晩乾燥させて、37.3g(定量的収量)のN−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを得た。生成物をそのままで次ステップに使用した。
【0096】
別法の手順において、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミド(25g)を、2〜5℃のテトラヒドロフラン(200mL)および水(100mL)の混合物に溶解し、溶液を3℃のジャケット温度を有する、ジャケット付きの予冷した滴下漏斗に移した。滴下漏斗の温度を約3℃に維持した。
【0097】
4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジモルホリン(22.45g)およびK
2CO
3(21.8g)を不活性化された1L反応器に入れ、テトラヒドロフラン(100mL)を添加し、続いて水(25mL)を添加した。二相の混合物を撹拌し、撹拌下80℃(ジャケット温度)で加熱還流した。このようにして得られた溶液を還流下でさらに10分間撹拌し、トリフェニルホスフィン(1.241g)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を添加した。還流下で撹拌をさらに10分間続け、この時間後、酢酸パラジウム(0.266g)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を還流反応混合物に添加した。還流下80℃(ジャケット温度)で、撹拌をさらに10分間続けた。強い撹拌下のこの混合物に、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドの溶液を、約6時間の間滴下漏斗を介して添加し、同時に、反応混合物を還流に、および滴下漏斗の温度を約3℃に維持した。強い撹拌を還流下でさらに15分間続け、温度を65〜70℃(ジャケット温度)に到るまで冷却した。イソプロパノール(60mL)を反応混合物に添加し、続いて水(100mL)を添加した。溶媒の一部(約170mL)を、800mバールで開始して、約400mバールまでの減圧下、70℃(ジャケット温度)で蒸留して除去した。水(100mL)を混合物に添加し、溶媒の別の一部(約100mL)を、約400mバールまでの減圧下、70℃(ジャケット温度)で蒸留して除去した。このようにして得られた懸濁液を25℃まで冷却し、この温度で1時間撹拌した。生成物をろ過によって単離し、ろ過ケーキを水(100mL)で洗浄した。生成物を50℃および30mバールで一晩乾燥させて、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミド(34.39g;粗生物収率96.4%)を得た。粗生成物をそのままで次にステップに使用した。
【実施例4】
【0098】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジン−4−イル)−4(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン(化合物A)の調製
N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミド(36.1g、76.52mmol)を脱塩水(180mL)に懸濁させた。懸濁液を2N HCl水溶液(180mL)で処理し、混合物を70℃〜75℃に加熱した。反応混合物を75℃でこの温度で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を25℃に到るまで冷却し、ろ過した。ろ過ケーキを水(2×50mL)で洗浄した。イソプロピルアセタート(IPA、100mL)をろ液に添加し、二相溶液のpHを、強い撹拌下2N NaOH(105g)水溶液の緩徐な添加によって1.75に調整した。撹拌を20〜25℃でさらに15分間続け、相を分離した。水相を追加のIPA(2×50mL)で抽出し、相を分離した。水相のpHを、2N NaOH(114g)の緩徐な添加によって9.1に調整した。懸濁液が形成された。イソプロピルアセタート(400mL)を懸濁液に添加し、混合物を撹拌下で40℃まで加熱して、二相溶液を得た。相を分離し、水相を再度イソプロピルアセタート(50mL)で抽出した。有機相を組み合わせた。N−アセチル−L−システインの水溶液(140mL)を有機相に添加し、混合物を50℃で1時間撹拌した。相を分離した。有機相を再度N−アセチル−L−システインの水溶液(140mL)で60℃1時間処理し、相を分離した。最終的に、有機相を脱塩水(70mL)で洗浄し、温度を20℃に到るまで冷却した。1N HCl水溶液(200mL)を有機相に緩徐に添加し、同時に温度を20〜25℃に維持した。混合物を10分間強く撹拌し、相を分離した。有機相を再度1N HCl水溶液(50mL)および水(50mL)で抽出した。HCl水溶液および水の相をろ過し、組み合わせた。組み合わせた水相のpHを2N NaOH水溶液(123g)の緩徐な添加によって7.1に調整し、形成された懸濁液を20〜25℃で3時間撹拌した。生成物をろ過によって単離し、ろ過ケーキを脱塩水(3×100mL)で洗浄した。生成物を真空中、50℃で一晩乾燥させて、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン(HPLCによって決定された純度>99.5%)および全体的収率85%を得た。
【0099】
N−アセチル−L−システインの調製
N−アセチル−L−システイン(30.6g)を脱塩水(300mL)に溶解し、7.0のpHが得られるまで4N NaOH水溶液(46.8g)を滴下で添加した。70mLのこの溶液を210mLの脱塩水で希釈し、該溶液を上記の抽出に使用した。
【実施例5】
【0100】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン一塩酸塩
オーバーヘッドスターラー、凝縮器、窒素注入口/排出口および500mL添加漏斗を備えた、窒素でフラッシングした3L反応器に、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン10.5g(25.59mmol、1当量)を室温で、イソプロパノール(79.0g)、水およびピリジン(0.2g)混合物(97:2.5:0.3重量/重量/重量)に懸濁させた。懸濁液を70℃まで加熱し、わずかに濁った溶液が得られた。濁った溶液を70℃でろ過した。透明な溶液を60℃まで冷却し、イソプロパノール中の4.5N HClの第1の部分(1.03ml、4.39mmol、0.2当量)を添加した。依然として透明な溶液を55℃まで冷却し、イソプロパノール:水(97:2.5重量/重量)混合物に懸濁された化合物Aの形体Aの一塩酸塩0.19gのシードを添加し、15分間撹拌した。イソプロパノール中の4.5N HClの第2の部分(4.67ml、19.94mmol、0.91当量)を非常に緩徐に添加した。懸濁液を60分間撹拌し、16時間で−10℃に到るまで冷却し、−10℃でさらに60分間撹拌した。固体生成物をろ過によって単離し、予冷したイソプロパノール(3×18g)で3回洗浄した。固体生成物を真空下90℃で少なくとも24時間乾燥させて、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン一塩酸塩8.64g(収率88.2%)を黄色の結晶性固体、多形体Aとして得た。
【0101】
結晶形Aの一塩酸塩を生成する、他の一塩酸塩形成実験を以下に要約する。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【実施例6】
【0104】
N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンの調製
反応器に5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン(10.000g、41.49mmol)およびテトラヒドロフラン(44ml)を充填した。混合物を撹拌した。混合物を0℃まで冷却した。THF(121.4g、165.97mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムの4当量を45分の時間内で連続的に添加し、同時に温度を<10℃に維持した。グリニャール試薬の添加が完了した後、混合物を44℃まで加温し、この温度で4.5時間撹拌した。テトラヒドロフラン(32mL)中のトリイソプロピルボラート(31.85g、165.97mmol)を15分内に撹拌した混合物に添加し、混合物を44℃でさらに30分間撹拌した。混合物を0℃まで冷却した。混合物に、イソプロパノール中の5N HCl(30.18mL;165.97mmol)を滴下で添加した。混合物を22℃まで加温し、一晩撹拌した。形成された固体をろ過によって除去し、ろ過ケーキをテトラヒドロフラン50mLで洗浄し、処分した。ろ液にジエタノールアミン(13.22g)のテトラヒドロフラン(95mL)溶液を45分にわたって緩徐に添加した。形成された懸濁液を30分撹拌し、固体をろ過によって除去した。ろ過ケーキをテトラヒドロフラン(50mL)で洗浄し、処分した。ろ液をイソプロピルアセタート(100mL)で希釈し、溶媒を最終体積約80mLまで部分的に蒸発させた。溶液を追加のイソプロピルアセタート(20mL)で希釈し、飽和NaCl水溶液(100mL)を添加した。水相のpHを2M HClで5〜6に調整し、水(25mL)を二相の混合物に添加した。相を分離し、有機相を再度飽和NaCl水溶液で洗浄した。水相をイソプロピルアセタート(100mL)で再抽出し、有機相を組み合わせた。有機相にジエタノールアミン(4.4g)のテトラヒドロフラン(44mL)溶液を30分内に添加した。減圧下35〜40℃で、溶媒を最終体積約100mLまで部分的に蒸発させた。形成された懸濁液を室温で30分間撹拌し、生成物をろ過によって単離した。ろ過ケーキをイソプロピルアセタート(50mL)で洗浄し、真空中室温で乾燥させて、生成物、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミン8.73g(76.5%)を得た。
【実施例7】
【0105】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン(化合物A)の調製
化合物4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジモルホリン(2.85g、9.99mmol)およびK
2CO
3(2.76g、19.97mmol)を不活性化した1L反応器に入れ、1,2−ジメトキシエタン(100mL)を添加し、続いて水(25mL)を添加した。反応器を100mバールまで真空排気し、窒素で2回フラッシングした。懸濁液を60℃まで加熱した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.1gのジメトキシエタン2mL(0.100g、0.087mmol)中の溶液を添加した。懸濁液を78℃まで加熱し、3時間撹拌した。N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミン(2.75g、9.99mmol)を、ジメトキシエタン(20mL)と水200mLの混合物に溶解した。反応混合物を95℃の還流下でさらに10分間撹拌した。懸濁液を25℃に到るまで冷却し、この温度で30分間撹拌した。生成物をろ過によって単離し、ろ過ケーキを脱塩水(3×100mL)で洗浄した。生成物は、HPLCによって決定された、5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンであった。
【実施例8】
【0106】
3.5当量のイソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウム錯体を用いた、5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンのトリアニオンの調製
【0107】
【化30】
【0108】
反応器に5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン(1.000g、4.149mmol)およびテトラヒドロフラン(7.72ml)を充填した。混合物を10分間撹拌した。混合物を30分内に0℃まで冷却した。THF(6.383ml、8.298mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを0℃において1.5時間内で連続的に添加した。追加の1.5当量のTHF(4.788ml、6.224mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを0℃において1.5時間内で連続的に添加した。追加の0.5当量のTHF(1.596ml、2.075mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを0℃において1時間内で連続的に添加した。生成物は、HPLCおよびLCMSによって決定された5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンのトリアニオンであった。
【実施例9】
【0109】
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン(化合物A)の調製
不活性化された反応器に、化合物4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジモルホリン(0.40g、1.405mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.040g、0.070mmol)および酢酸パラジウム(0.016g、0.070mmol)およびテトラヒドロフラン2mLを入れた。反応器を100mバールまで真空排気し、窒素で2回フラッシングした。THF(1.405mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを30℃で、続いて、当量の、5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミン(1.405mmol)のトリアニオンを添加した。懸濁液を0.5時間撹拌した。生成物は、HPLCおよびLCMSによって決定された5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンであった。
【実施例10】
【0110】
2.5当量のイソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウム錯体を用いた、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドのジアニオンの調製
反応器にN−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミド(1.405mmol)およびテトラヒドロフラン(2mL)を充填した。混合物を10分間撹拌した。混合物を30分内に0℃まで冷却した。THF(ml、1.405mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを、0℃において1時間内で連続的に添加した。さらに1.5当量のTHF(4.788ml、2.107mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを、0℃において1.5時間内で連続的に添加した。生成物は、HPLCおよびLCMSによって決定された、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドのジアニオンであった。
【実施例11】
【0111】
N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドの調製
不活性化された反応器に、化合物4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジモルホリン(0.40g、1.405mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.040g、0.070mmol)および酢酸パラジウム(0.016g、0.070mmol)およびテトラヒドロフラン2mLを入れた。反応器を100mバールまで真空排気し、窒素で2回フラッシングした。THF(1.405mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを30℃で添加し、続いて当量のN−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミド(1.405mmol)のジアニオンおよび1−ヨードアダマンタン(0.413g、1.405mmol)を添加した。懸濁液を0.5時間撹拌した。生成物は、HPLCおよびLCMSによって決定された、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドであった。
【実施例12】
【0112】
N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドの調製
不活性化された反応器に、化合物4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジモルホリン(0.40g、1.405mmol)、NiCl
2(dppf)1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.048g、0.070mmol)およびテトラヒドロフラン2mLを入れた。反応器を100mバールまで真空排気し、窒素で2回フラッシングした。THF(1.405mmol)中の1.3Mイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムを30℃で添加し、続いて、当量の、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミド(1.405mmol)のジアニオンを添加した。懸濁液を0.5時間撹拌した。生成物は、HPLCおよびLCMSによって決定された、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドであった。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
式Aの化合物を製造する方法であって、
【化31】
(a)5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンをアシル化して、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成するステップと、
(b)有機溶媒中で、N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドをアルキルグリニャール試薬と、続いて、トリアルキルボラートおよび2,2’−アザンジイルジエタノールと反応させて、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成するステップと、
(c)N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを、パラジウム触媒による鈴木カップリング反応を介して、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とカップリングさせて、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成するステップと、
(d)N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを酸性条件下で加水分解して、式Aの化合物を形成するステップと
を含む方法。
[2]
ステップ(b)のアルキルグリニャール試薬が、テトラヒドロフラン中のイソプロピルマグネシウムクロリド塩化リチウムであり、トリアルキルボラートが、トリイソプロピルボラートである、[1]に記載の方法。
[3]
ステップ(c)のパラジウム触媒による鈴木カップリングが、有機溶媒中で酢酸パラジウムおよびトリフェニルホスフィンからin situでパラジウム触媒を生成するステップを含む、[2]に記載の方法。
[4]
加水分解されたN−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドが、N−アセチル−L−システインで処理される、[3]に記載の方法。
[5]
N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドである化合物。
[6]
N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンである化合物。
[7]
式Aの化合物を製造する方法であって、
【化32】
(a)5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンを、アルキルグリニャール試薬と、続いてトリアルキルボラートおよび2,2’−アザンジイルジエタノールと反応させて、N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンを形成するステップと、
(b)N−(5−(1,3,6,2−ジオキサザボロカン−2−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アミンを、パラジウム触媒による鈴木カップリング反応を介して、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とカップリングさせて、式Aの化合物を形成するステップと
を含む方法。
[8]
アルキルグリニャール試薬が、テトラヒドロフラン中のイソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウムであり、ステップ(b)のパラジウム触媒が、有機溶媒中の水性塩基を有する(テトラキストリフェニルホスフィン)パラジウムである、[7]に記載の方法。
[9]
式Aの化合物を製造する方法であって、
【化33】
(a)ジアニオン N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドから調製されたグリニャール試薬と、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とを、金属触媒による熊田カップリング反応を介してカップリングさせて、N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを形成するステップと、
(b)N−(5−(2,6−ジモルホリノピリミジン−4−イル)−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドを酸性条件下で加水分解して、式Aの化合物を形成するステップと
を含む方法。
[10]
ステップ(a)において、ジアニオン N−(5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イル)アセトアミドが、テトラヒドロフラン中で2.5当量のイソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウムを用いて形成され、熊田カップリング反応が、酢酸パラジウムおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、またはNiCl2(dppf)から選択される金属触媒を用いて触媒される、[9]に記載の方法。
[11]
式Aの化合物を製造する方法であって、
【化34】
5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンのトリアニオンと、4,4’−(6−クロロピリミジン−2,4−ジイル)ジ[モルホリン]とを、パラジウム触媒による熊田カップリング反応を介してカップリングさせて、式Aの化合物を形成するステップを含む方法。
[12]
5−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−アミンのトリアニオンが、テトラヒドロフラン生成物中で、3.5当量のイソプロピルマグネシウムクロリド、塩化リチウムを用いて形成され、熊田カップリング反応が、酢酸パラジウムおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、またはNiCl2(dppf)から選択される金属触媒を用いて触媒される、[11]に記載の方法。
[13]
式Aの化合物の一塩酸塩を製造する方法であって、
【化35】
アルコール溶媒中で、1当量の5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンを、1当量未満から1当量超の水性塩酸およびピリジンと高温において反応させるステップを含む方法。
[14]
5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンの一塩酸塩が、結晶形Aである、[13]に記載の方法。
[15]
1.2当量の水性塩酸および0.1当量のピリジンを、1当量の5−(2,6−ジ−4−モルホリニル−4−ピリミジニル)−4−トリフルオロメチルピリジン−2−アミンに60℃で添加する、[13]に記載の方法。
[16]
アルコール溶媒が、イソプロパノールである、[13]に記載の方法。