(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記逆エマルション界面活性剤は、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムと、ビス(トリデシル)スルホコハク酸ナトリウムと、ビス(ジアルキル)スルホコハク酸塩と、ポリジメチルシロキサン及びポリエチレン/ポリプロピレンオキシドのコポリマー類と、ポリオキシプロピレン(12)ジメチコンと、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコンと、ラウリン酸ヘキシル及びポリグリセリル−4−イソステアレートと、PEG−10ジメチコンと、ソルビタンモノラウレートと、ソルビタンモノオレエートと、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートと、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルと、ポリオキシエチレン20セチルエーテルと、ポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテルと、ジ(2−エチルヘキシル)リン酸ナトリウムと、ジ(オレイル)リン酸ナトリウムと、ジ(トリデシル)リン酸ナトリウムと、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと、3−ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウムと、3−ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウムと、N−2−ヒドロキシドデシル−N−メチルタウリンナトリウムと、レシチンと、ショ糖脂肪酸エステル類と、2−エチルヘキシルグリセリンと、カプリリルグリコールと、モノアルキルグリコール類、モノアルキルグリセロール類又はモノアシルグリセロール類の長鎖疎水性のビシナルジオール類と、ポリオキシルヒマシ油誘導体と、ポリエチレングリコール硬化ヒマシ油と、オレイン酸カリウムと、オレイン酸ナトリウムと、塩化セチルピリジニウムと、臭化アルキルトリメチルアンモニウム類と、塩化ベンザルコニウムと、臭化ジドデシルジメチルアンモニウムと、臭化トリオクチルメチルアンモニウムと、臭化セチルトリメチルアンモニウムと、臭化セチルジメチルエチルアンモニウムと、それらの組み合わせとを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
前記非刺痛性、揮発性、疎水性溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、プロパン、イソブタン、ブタン(加圧条件下)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、石油蒸留物類及びシクロヘキサンの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
前記非刺痛性、揮発性、疎水性溶媒は、ヘキサメチルジシロキサンと、イソオクタンと、イソブタンと、ブタン(加圧条件下)と、ペンタンと、ヘキサンと、ヘプタンと、オクタンと、それらの異性体と、石油蒸留物類と、シクロヘキサンと、それらの混合物とからなる群から選択される溶媒を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
前記ポリマー基材は、(i)3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、メタクリル酸メチル、N−イソプロピルアクリルアミド、1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン(TRIS二量体)、のシロキシ基含有ポリマー類、(ii)イソオクチルアクリレートのポリマー類及びコポリマー類、(iii)ポリジメチルシロキサン及びポリウレタン類のブロックコポリマー類、(iv)ポリジメチルシロキサン及びポリ(エチレングリコール)のブロックコポリマー類、(v)ポリスチレン及びエチレン/ブチレンのブロックコポリマー類、(vii)ポリスチレン及びポリイソブチレンのブロックコポリマー類、(viii)ブチルゴム、(ix)ポリイソブチレン、(x)C4−C18アクリレート類及びメタクリレート類のポリマー類及びコポリマー類及び(xi)それらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
前記浸透促進剤は、分岐及び直鎖、C6−C18飽和酸、C14−C22不飽和酸、オレイン酸、cis−9−オクタデセン酸、リノール酸、リノレン酸、C8−C18飽和脂肪酸、テルペン類、d−リモネン、α−ピネン、3−カレン、メントン、フェンコン、プレゴン、ピペリトン、ユーカリプトール、ヘノポジ油、カルボン、メントール、α−テルピネオール、テルピネン−4−オール、カルベオール、リモネンオキシド、ピネンオキシド、シクロペンタンオキシド、シクロヘキサンオキシド、アスカリドール、7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,8−シネオール、グリセロールモノエーテル類、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−ラウリル−2−ピロリドン、4−デシルオキサゾリジン−2−オン、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、N−ドデシルカプロラクタム、及び1−メチル−3−ドデシル−2−ピロリドン、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム類、ハロゲン化アルキルジメチルベンジルアンモニウム類、ハロゲン化アルキルピリジニウム類、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、21、80及び81、プルロニックF127、プルロニックF68、N−n−ブチル−N−n−ドデシルアセトアミド、N,N−ジ−n−ドデシルアセトアミド、N−シクロヘプチル−N−n−ドデシルアセトアミド及びN,N−ジ−n−プロピルドデカンアミド、尿素、1−ドデシル尿素、1,3−ジドデシル尿素、1,3−ジフェニル尿素、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、テトラデシルメチルスルホキシド、ラウリン酸メチル、ラノリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、シクロデキストリン類、1−アルキル−2−ピペリジノン類、1−ドデシアザシクロヘプタン−2−オン、1,2,3−アルカントリオール類、1,2,3−ノナントリオール、1,2−アルカンジオール類、n−アルキル−β−D−グルコピラノシド類、2−(1−アルキル)−2−メチル−1,3−ジオキソラン類、オキサゾリジノン類、4−デシルオキサゾリジン−2−オン、N,N−ジメチルアルカンアミド類、1,2−ジヒドロキシプロピルアルカノエート類、1,2−ジヒドロキシプロピルデカノエート、1,2−ジヒドロキシプロピルオクタノエート、デオキシコール酸ナトリウム、trans−3−アルケン−1−オール類、cis−3−アルケン−1−オール類及びtrans−ヒドロキシプロリン−N−アルカンアミド−C−エチルアミドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
非刺痛性、揮発性、疎水性溶媒内に、疎水性の逆エマルション界面活性剤により可溶化される少なくとも1種類の親水性の生物学的に活性な薬剤を含む逆マイクロエマルションを含む組成物であって、
ここで、前記非刺痛性、揮発性、疎水性溶媒は、揮発性の直鎖及び環状シロキサンと、
揮発性の直鎖、分岐及び環状アルカンと、揮発性フルオロカーボン及びクロロフルオロカーボンと、加圧条件下での液体二酸化炭素と、それらの組み合わせとからなる群から選択され、
40〜90重量パーセントの揮発性、疎水性溶媒、0.25ないし50重量パーセントの逆エマルション界面活性剤、0.00001ないし5重量パーセントの生物学的に活性な薬剤及び前記非刺痛性、揮発性、疎水性溶媒に可溶なポリマー基材を含み、
ここで、前記ポリマー基材は、20重量パーセント未満の量で存在し、
鉱油を含まないことを特徴とする、組成物。
水、C1−C4アルキルアルコール類及びそれらの混合物からなる群から選択される親水性溶媒を3重量パーセント未満含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
前記生物学的に活性な薬剤は、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩及び関連する塩、アレキシジン塩酸塩及び関連する塩、クロルヘキシジンジグルコン酸塩、クロルヘキシジン二酢酸塩及び関連する塩、ナノ銀、コロイド状銀、スルファジアジン銀、硝酸銀、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酢酸、乳酸、脂肪酸、エタノール、イソプロパノール、長鎖アルコール類、分岐及び長鎖グリコール類、グリセロールエーテル類、グリセロールエステル類、エッセンシャルオイル類、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、ハチミツ、ホウ酸、安息香酸、ポビドンヨード、ポロキサマー・ヨード、ヨウ素、サリチル酸、亜鉛塩類、スズ塩類、硫酸アルミニウム、次サリチル酸ビスマス、クロトリマゾール、硝酸ミコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩、サリチル酸メチル、トリエタノールアミンサリチル酸、サリチル酸フェニル、アセチルサリチル酸、チモール、ユーカリプトール、メントール、オイゲノール、ハッカ油、セージオイル、クロロキシレノール、クロフルカルバン、ヘキシルレゾルシノール、トリクロカルバン、ヘキサクロロフェン、ジンクピリチオン、クロロブタノール、カプサイシン、ワルファリン、バシトラシン、硫酸ネオマイシン、ポリミキシンb硫酸塩、アロエベラ、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、エチレンオキシド、クロロアミン類、デーキン溶液、希釈された漂白剤、ポリクオタニウム−1、ポリクオタニウム−10、アイオネンポリマー類、ピリジニウムポリマー類、イミダゾリウムポリマー類、ジアリルジメチルアンモニウムポリマー類、アクリロイル−、メタクリロイル−及びスチリル−トリメチルアンモニウムポリマー類、アクリルアミド−及びメタクリルアミド−トリメチルアンモニウムポリマー類、抗菌ペプチド類及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗菌剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
前記逆エマルション界面活性剤がビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムであり、前記ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムは、グラム陰性菌、グラム陽性菌及び真菌からなる群から選択される少なくとも1種の微生物に対して活性な抗菌剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
前記ポリマー基材は、(i)3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、メタクリル酸メチル、N−イソプロピルアクリルアミド、1,3−ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン(TRIS二量体)の、シロキシ基含有ポリマー類、(ii)イソオクチルアクリレートのポリマー類及びコポリマー類、(iii)ポリジメチルシロキサン及びポリウレタン類のブロックコポリマー類、(iv)ポリジメチルシロキサン及びポリ(エチレングリコール)のブロックコポリマー類、(v)ポリスチレン及びエチレン/ブチレンのブロックコポリマー類、(vii)ポリスチレン及びポリイソブチレンのブロックコポリマー類、(viii)ブチルゴム、(ix)ポリイソブチレン、(x)C4−C18アクリレート類及びメタクリレート類のポリマー類及びコポリマー類(xi)及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の組成物。
【発明の概要】
【0008】
逆エマルション界面活性剤を含有する疎水性、揮発性溶媒中での生物学的に活性な薬剤の経皮送達のための組成物が、開示され、前記逆エマルション界面活性剤は、揮発性、非極性溶剤に可溶な、前記生物学的に活性な薬剤の油中水型マイクロエマルション(w/o)を提供する。前記組成物は、揮発性、疎水性溶媒に本質的に不溶な生物学的に活性な物質を逆マイクロエマルション内で可溶化することにより、生物学的に活性な物質の経皮送達を提供することを可能にする。前記生物学的に活性な薬剤は親水性(例えば、極性又はイオン性)であり、逆マイクロエマルションにより、疎水性、揮発性溶媒に可溶化することができる。
【0009】
本明細書で用いられるところの「生物学的に活性な薬剤」は、標準的な意味を有し、ヒト、動物又は植物に有利に作用するか、感染症又は疾病の治癒、緩和、治療、予防、診断に使用するためか、又は微生物を破壊する又は微生物の発生を抑制する、化学物質又は製剤を含む。前記用語「生物学的に活性な薬剤」及び「活性な薬剤」が、本明細書において、同じ意味で使用される。
【0010】
本明細書で用いられるところの「生体表面」は、その標準的な意味を有し、細菌、真菌、原生動物、ウイルス、植物、動物及びヒトの表面又は外層を含む。
【0011】
本明細書で用いられるところの「界面活性剤」は、その標準的な意味を有し、乳化剤、乳濁剤及び界面活性剤を含む。
【0012】
本明細書で用いられるところの「マイクロエマルション」は、その標準的な意味を有し、油、水(及び/又は親水性化合物)及び界面活性剤の熱力学的に安定な混合物を含む。マイクロエマルションは、3種類の基本的なタイプ:正型(油が水に分散した、o/w)、逆型(水が油に分散した、w/o)及び両連続型を含む。分散したミセルは可視光の波長と比較してより小さい直径(例えば、380ナノメートル未満、200ナノメートル未満又は100ナノメートル未満)を有するので、マイクロエマルションは、視覚的に、透明である。乳白剤の非存在下では、マイクロエマルションは、視覚的に透明な、等方性の液体である。
【0013】
本明細書で用いられるところの「逆マイクロエマルション」は、連続油相中に懸濁させた親水性相を含むマイクロエマルションを指す。逆マイクロエマルションは、逆エマルション界面活性剤によって、油層で安定化された親水性相(例えば、水、アルコール又は両方の混合物)の液滴を含む。このような場合、親水性の活性な薬剤は、液滴中に可溶化することができる。しかし、他の場合、逆マイクロエマルションは水及び/又はアルコールを含まない場合があり、親水性の活性な薬剤は逆エマルション界面活性剤によって油相に直接溶解させることができる。
【0014】
本明細書で用いられるところの「親水性」は、その標準的な意味を有し、水に対して親和性を有し、通常、電荷を有するか、構造内に水を引き付ける極性基を有する化合物を含む。例えば、親水性の化合物は、水に混和することができる。
【0015】
本明細書で用いられるところの「水及び/又はアルコールを含まない」は、前記組成物が、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満又は0.1重量%未満の水及びC
1−C
4アルキルアルコール類を組み合わせて含むことを意味する。
【0016】
本明細書で用いられるところの「非刺痛性」は、前記製剤が、生体表面との接触の結果として、鋭い、刺激性又はヒリヒリした痛みを引き起こさないことを意味する。
【0017】
本明細書で用いられるところの「非火傷性(non−burning)」は、前記製剤が、生体表面に温度上昇を引き起こさないことを意味する。
【0018】
本明細書で用いられるところの組成物は、生物学的製剤を標的領域に迅速に提供するために、非刺痛性、揮発性溶媒からの、皮膚及び他の生体表面の角質層に浸透することが可能な生物学的に活性な薬剤、特に、親水性又は極性の生物学的に活性な薬剤の経皮送達のために特に有用である。かかる溶媒は、経皮的浸透及び無痛性適用の容易さと、柔軟又は伸縮するすべての領域を含む被覆することができる表面領域の程度と、生物学的に活性な薬剤が皮膚に浸透することができる速度とにより、他の経皮的処置よりも有利である。
【0019】
生物学的に活性な薬剤の可溶化のための溶媒は、好ましくは、揮発性及び疎水性であり、より好ましくは、前記溶媒は無傷の皮膚又は開いた傷に非刺痛性であり、非火傷性である。これらの溶媒は、患者に不快感を引き起こすことなく適用することができ、低表面張力が隙間に流入することを容易にし、領域に到達することが困難であるので、かかる溶媒は、特に有用である。また、揮発性、疎水性溶媒の低い気化熱による急速な揮発により、揮発性、疎水性溶媒に可溶な生物学的に活性な物質が所望の部位に堆積する。好適な非刺痛性、非火傷性の疎水性溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)(気化熱34.8kJ/mol)及びイソオクタン(気化熱33.26kJ/mol)を含み、該溶媒は、生体表面へのスプレー適用で使用される場合があり、多くの薬物はこれらの溶媒に難溶解性又は不溶性である。シリコーン溶媒は非刺痛性であり、すぐれた潤滑性及び快適性を与えるため、シリコーン溶媒がもっとも皮膚に好適である。すべてのシリコーン流体のうち、ヘキサメチルジシロキサンが、最も速い蒸発速度、最も低い粘度及び最も低い表面張力を有し、最も高い延展性を有する。また、他の揮発性液体とは異なり、ヘキサメチルジシロキサンは、蒸発時に、皮膚に、熱を与えず、やけど又は刺痛性を与えず、わずかに冷却感が感じられるだけである。これらの特性が皮膚への局所治療のために、シリコーン溶剤を有用なものとするが、いくつかの生物学的に活性な有機又は無機物質は本明細書に記載のマイクロエマルションシステムなしで、それらに溶解する。
【0020】
前記疎水性、揮発性液体は、好ましくは、非刺痛性及び非刺激性であり、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン又はアルキルメチルトリシロキサンなどの低分子量のポリジメチルシロキサン;ヘキサメチルシクロトリシロキサン又はオクタメチルシクロテトラシロキサンなどの低分子量の環状シロキサン;プロパン、ブタン及びイソブタン(加圧条件下での)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン及びそれらの異性体、石油蒸留物類、揮発性植物性炭化水素、シクロペンタン又はシクロヘキサンなどのシクロメチコン類、直鎖、分岐又は環状アルカン;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン及びジクロロテトラフルオロエタンなどのクロロフルオロカーボン;テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン、1,1−ジフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサンなどのフルオロカーボン、1,1,1,2,−テトラフルオロエタン及び1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどのヒドロフルオロアルカン類、それらの組み合わせ及びそれらに類するもの;液体二酸化炭素などの加圧条件下における揮発性ガス;又はそれらの混合物を含む。理解されるように、高圧下で保存した場合、二酸化炭素は、室温で液状で存在することができる。揮発性溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン、イソオクタン及びそれらの混合物である場合がある。好適には、揮発性溶媒は、ヘキサメチルジシロキサンである。
【0021】
本明細書で用いられるところの「揮発性」とは、その標準的な意味を有し、通常の温度及び圧力で急速に蒸発することが可能である。例えば、溶媒の1滴(0.05mL)が5分以内、4分以内、3分以内、2分以内、1分以内に、又は30秒以内又は15秒以内に、20〜25℃の間で、完全に蒸発するときに、溶媒は、揮発性である。
【0022】
前記生物学的に活性な薬剤は、逆マイクロエマルションが形成されるように、逆エマルション界面活性剤を添加することにより、疎水性揮発性液体に可溶化することができる。また、逆(inverse)エマルションと称される逆(reverse)エマルションは非極性溶媒内での界面活性剤分子の凝集に起因し、ここで、水が界面活性剤のコアに取り込まれ、油中水型エマルションが形成される。3〜11のHLB値を有する逆エマルション界面活性剤が一般に使用され、HLBは親水性−親油性バランスである。逆エマルション界面活性剤のHLB値は、5ないし11か、7ないし10の範囲である場合がある。前記低いHLB値はより低い水溶解度と非極性相へのより高い親和性を示し、前記高いHLB値はより水溶性の高い界面活性剤である。
【0023】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の前記組成物は、グラム陰性菌、グラム陽性菌及び真菌からなる群から選択される少なくとも1種の微生物に対して活性な抗菌剤である場合がある。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組成物は、グラム陰性菌、グラム陽性菌及び真菌からなる群から選択される少なくとも2種類の微生物に対して活性な抗菌剤である場合があり、他の実施態様では、前記組成物は、グラム陰性菌、グラム陽性菌及び真菌に対して活性な抗菌剤である場合がある。
【0024】
また、水中油中水型エマルション又は油中水中油型エマルションなどのダブルエマルションを有することも可能である。特に断りのない限り、「逆エマルション」は、ダブルエマルションを含む。逆エマルションは、ダブルエマルションを除いて、油中水型エマルションである場合がある。
【0025】
薬物:揮発性液体:界面活性剤:水の比は、得られた溶液が視覚的に透明な状態を維持する状態とすることができる。逆エマルション界面活性剤は、疎水性、揮発性液体に固有の溶解度を有することができ、逆ミセル内に水及び/又は前記活性な薬剤を可溶化することができ、全体的にクリアで、透明な溶液を得ることができる。水溶性ポリマーが前記組成物に添加される場合、溶媒の蒸発後、水中の生物学的に活性な薬剤を被包した界面活性剤を吸収し、持続性の経皮送達用の基材として機能する得られるポリマーフィルムが透明であるように、溶液の透明度が維持される。ある例では、水の添加は、揮発性、疎水性溶媒中での逆エマルション界面活性剤による生物学的に活性な薬剤の可溶化のために必要ではない。
【0026】
適当な逆エマルション界面活性剤は、アルカノール類例えばイソプロパノール、1−ブタノール及び1−ヘキサノールの添加の有無に関わらず、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ビス(トリデシル)スルホコハク酸ナトリウム、ビス(ジアルキル)スルホコハク酸塩類、ポリジメチルシロキサン及びポリエチレン/ポリプロピレンオキシドのコポリマー、ポリオキシプロピレン(12)ジメチコン、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン、ラウリン酸ヘキシル及びポリグリセリル−4−イソステアレート、PEG−10ジメチコン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン10セチルエーテル、ポリオキシエチレン20セチルエーテル、ポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル、ジ(2−エチルヘキシル)リン酸ナトリウム、ジ(オレイル)リン酸ナトリウム、ジ(トリデシル)リン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム、3−ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム、N−2−ヒドロキシドデシル−N−メチルタウリンナトリウム、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル類、2−エチルヘキシルグリセリン、カプリリルグリコール、モノアルキルグリコール類かモノアルキルグリセロール類かモノアシルグリセロール類かの長鎖の疎水性のビシナルジオール類、ポリオキシルヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコール硬化ヒマシ油、テトラエチレングリコールドデシルエーテル、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、塩化セチルピリジニウム(cetylpyridynium chloride)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム類、塩化ベンザルコニウム、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム、臭化トリオクチルメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム及びこれらに類するもの及びそれらの組み合わせを含む。逆エマルション界面活性剤は、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類である場合がある。
【0027】
ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(また、AOTとも称される、エアロゾルAOT、ドクサートナトリウム、DSS、エアロゾル OT及び1,4−ビス(2−エチルヘキソキシ)−1,4−ジオキソブタン−2−スルホン酸ナトリウム)は、よく研究された界面活性剤であり、該界面活性剤は、有機溶媒中で、はっきり規定された構造の逆ミセルを形成する(T.K.De,A.Maitra,Adv.Colloid Interface Sci.59,95(1995)。これは、汎用性の高い2本鎖医薬用界面活性剤である(S.N.Malik,D.H.Canaham,M.W.Gouda,J.Pharm.Sci.64,987(1975))。これは、逆ミセル被包研究において最も広く使用される界面活性剤であり(P.F.Flynn,Prog.Nucl.Magn.Reson.Spectrosc.45,31‐51(2004))、消費者製品の共通の成分である。AOTマイクロエマルションは、一般的にアルカン(シクロヘキサン、イソオクタンなど)又は芳香族分子からなる弱極性油に水を満たした「逆」ミセルを与える(J.R.Lalanne,B.Pouligny,and E.Sein,J.Phys.Chem.,87,696−707(1983))。AOTの化学構造は、よくバランスのとれた親水性‐親油性を付与する。AOTのこのユニークな特徴は、任意の補助界面活性剤を使用せずに、非水性及び水性溶媒内に、アルコールフリーの逆ミセル及び正常なミセル凝集体をそれぞれ形成することができる。AOTは、油中にかなりの量の水を溶解し、油中水型マイクロエマルションとしても知られる安定した逆ミセル系を形成する(R.R.Gupta,S.K.Jain,M.Varshney,Colloids and Surfaces B:Biointerfaces,41,25‐32(2005))。これは、多くの生物学的に活性な薬剤の経皮送達のために、非揮発性油相として、浸透促進剤と相互作用する(M.Varshney,T.Khanna,M.Changez,Colloids&Surfaces B 13,1−11(1999))。また、AOTマイクロエマルションは、安全な経皮キャリアとして作用することが報告されている(M.Changez and M.Varshney,Drug Devel.Industrial Phar.,26(5),507−512(2000))。AOT(別名ドクサートナトリウム)は、HLB値10を有し、この値はマイクロエマルションの形成を補助することが報告されている(Pharmaceutical Suspensions:From Formulation Development to Manufacturing,A.K.Kulshreshtha,O.N.Singh,G.M.Wall,eds.,“Pharmaceutical Development of Suspension Dosage Form,Y Ali,et al.,2009,Table 4.3,page 112)。
【0028】
また、ビス(2−エチルヘキシ)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)などのジアルキルスルホコハク酸類が、(グラム陽性微生物に対する)抗菌、抗真菌及び抗ウイルス特性を有することが実証されている(米国特許第4,717,737号明細書、米国特許第4,719,235号明細書及び米国特許第4,885,310号明細書)。この効果は、本明細書に記載の組成物の抗菌性及び抗感染特性を高めることが期待される。
【0029】
前記界面活性剤逆ミセル内に取り込むことができる前記生物学的に活性な薬剤は、抗生剤、消毒薬、抗感染薬、抗菌剤、抗菌薬、抗真菌剤、抗ウイルス剤、原虫駆除剤、殺胞子剤、抗寄生虫薬、末梢神経障害薬剤、神経障害治療薬、鎮痛剤、抗炎症薬、抗アレルギー薬、抗高血圧薬、マイトマイシン型抗生剤、ポリエン系抗真菌剤、制汗剤、鬱血除去薬、乗り物酔い予防薬、中枢神経系作用薬、創傷治療薬、抗VEGF薬、抗腫瘍薬、痂皮薬、抗乾癬用治療薬、抗糖尿病薬、抗関節炎薬、抗掻痒剤、鎮痒薬、麻酔薬、抗マラリア薬、皮膚治療薬、抗不整脈薬、抗痙攣薬、制吐薬、抗リウマチ薬、抗アンドロゲン薬、アントラサイクリン、禁煙治療剤、抗アクネ剤、抗コリン薬、アンチエイジング剤、抗ヒスタミン薬、抗寄生虫薬、止血薬、血管収縮薬、血管拡張薬、抗凝固薬、心血管治療薬、アンギナ治療薬、勃起不全治療薬、性ホルモン、成長ホルモン、免疫調節物質、腫瘍壊死因子α、抗癌剤、抗悪性腫瘍薬、抗うつ薬、鎮咳薬、抗悪性腫瘍薬、麻薬拮抗薬、抗高コレステロール血症薬、アポトーシス誘発剤、受胎調節剤、サンレス・タンニング剤、皮膚軟化薬、アルファ−ヒドロキシル酸、マトリックスメタロプロテアーゼ、局所レチノイド、ホルモン、腫瘍特異的抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、抗−VEGF・RNA・アプタマー、核酸、DNA、ビタミン、エッセンシャルオイル類、銀塩類、亜鉛塩類、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、5−フルオロウラシル、ニコチン酸、ニトログリセリン、クロニジン、エストラジオール、テストステロン、ニコチン、乗り物酔い薬剤、スコポラミン、フェンタニル、ジクロフェナク、ブプレノルフィン、ブピバカイン、ケトプロフェン、オピオイド(opiods)、カンナビノイド、酵素、酵素阻害薬、オリゴペプチド、環状ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、プロドラッグ、プロテアーゼ阻害薬、サイトカイン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、副交感神経遮断薬、キレート剤、発毛剤、脂質、糖脂質、糖タンパク質、内分泌性ホルモン、成長ホルモン、増殖因子、熱ショックタンパク質、免疫応答修飾因子、糖類、多糖類、インスリン及びインスリン誘導体、ステロイド、副腎皮質ステロイド及び非ステロイド性抗炎症薬又は類似物質を含み、それらの塩の形態又はそれらの中性の形態であり、本質的に親水性か、親水性のマイクロ粒子又はナノ粒子内に被包された状態である。かかる生物学的に活性な薬剤は、(R)−、(R,S)−又は(S)−立体配置、又はそれらの組み合わせのいずれかである場合がある。
【0030】
前記非刺痛性、疎水性の揮発性液体は、ヘキサメチルジシロキサン又はオクタメチルトリシロキサンなどの低分子量ポリジメチルシロキサン;ヘキサメチルシクロトリシロキサン又はオクタメチルシクロテトラシロキサンなどの低分子量環状シロキサン;プロパン、ブタン及びイソブタン(加圧条件下)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、石油蒸留物類又はシクロヘキサンなどの直鎖、分岐又は環状アルカン;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン及びジクロロテトラフルオロエタンなどのクロロフルオロカーボン;フルオロカーボン例えばテトラフルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン、1,1−ジフルオロエタン、ペンタフルオロプロパン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ヒドロフルオロアルカン例えば1,1,1,2,−テトラフルオロエタン及び1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、それらの組み合わせ及びそれらの類似物;液体二酸化炭素などの加圧条件下での揮発性ガス;又はそれらの混合物である場合がある。理解されるように、高圧下で貯蔵した場合、二酸化炭素は、室温で液体の形状で存在することができる。前記揮発性溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン、イソオクタン及びそれらの混合物である場合がある。好ましくは、前記揮発性溶媒は、ヘキサメチルジシロキサンである。
【0031】
生物学的に活性な薬剤又はその他の添加物質の溶解性を高めるために、例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコール及びポリ(エチレングリコール)などのより親水性の溶媒が、揮発性、疎水性溶媒中の逆エマルション界面活性剤に少量(10重量%以下)添加される場合があるが、これらの極性溶媒は、使用者に対して非刺痛性である、全体的な溶媒組成を干渉してはならない。前記親水性溶媒は、エタノール、イソプロパノール、グリセリン及びそれらの混合物を含む場合がある。また、メタノール、アセトン、ジオキサン、エチルアセテート、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラエチレングリコール、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物などの他の親水性溶媒が使用される場合もある。前記組成物は、親水性溶媒を添加しない場合がある。
【0032】
化学的浸透促進剤は、薬物の皮膚層から真皮への経皮送達を大幅に増強することが知られている。浸透促進剤は、微生物(例えば、細菌、カビ、酵母又は原生動物)の外壁を通じて抗生剤又は抗菌剤の浸透を潜在的に促進することにより殺菌作用を増強するだけでなく、真皮への角質層を介した生物学的に活性な薬剤の経皮送達を促進させるように機能することができる。かかる浸透促進剤は、脂肪酸例えば分岐及び直鎖C
6−C
18飽和酸、不飽和酸例えばC
14ないしC
22オレイン酸、cis−9−オクタデセン酸、リノール酸、リノレン酸、脂肪アルコール類例えば飽和C
8−C
18テルペン類例えばd−リモネン、α−ピネン、3−カレン、メントン、フェンコン、プレゴン、ピペリトン、ユーカリプトール、ヘノポジ油、カルボン、メントール、α−テルピネオール、テルピネン−4−オール、カルベオール、リモネンオキシド、ピネンオキシド、シクロペンタンオキシド、トリアセチン、シクロヘキサンオキシド、アスカリドール、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン(7−oxabicylco[2,2,1]heptane)、1,8−シネオール、グリセロールモノエーテル類、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、イソステアリルイソステアレートピロリドン例えば2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−ラウリル−2−ピロリドン、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、4−デシルオキサゾリジン−2−オン、N−ドデシルカプロラクタム及び1−メチル−3−ドデシル−2−ピロリドン、陽イオン性の界面活性剤例えばハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム類、ハロゲン化アルキルジメチルベンジルアンモニウム類及びハロゲン化アルキルピリジニウム類、陰イオン性の界面活性剤例えばラウリル硫酸ナトリウム及びラウレス硫酸ナトリウム及び非イオン性界面活性剤例えばポリソルベート20、21、80及び81、プルロニック(登録商標)F127、プルロニック(登録商標)F68、N−n−ブチル−N−n−ドデシルアセトアミド、N,N−ジ−n−ドデシルアセトアミド、N−シクロヘプチル−N−n−ドデシルアセトアミド及びN,N−ジ−n−プロピルドデカンアミド、尿素、1−ドデシル尿素、1,3−ジドデシル尿素、1,3−ジフェニル尿素、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、テトラデシルメチルスルホキシド、疎水性エステル例えばラウリン酸メチル(methyl laureate)、ラノリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル及びシクロデキストリン類を含むがこれらに限定されない。また、有効な浸透促進剤は、1−アルキル−2−ピペリジノン類、1−アルキル−2−アザシクロヘプタノン例えば1−ドデシアザシクロヘプタン−2−オン(1−dodecyazacycloheptan−2−one)、1,2,3−アルカントリオール類例えば1,2,3−ノナントリオール、1,2−アルカンジオール類、n−アルキル−β−D−グルコピラノシド類、2−(1−アルキル)−2−メチル−1,3−ジオキソラン類、オキサゾリジノン類例えば4−デシルオキサゾリジン−2−オン、N,N−ジメチルアルカンアミド類、1,2−ジヒドロキシプロピルアルカノエート類例えば1,2−ジヒドロキシプロピルデカノエート、1,2−ジヒドロキシプロピルオクタノエート、デオキシコール酸ナトリウム、trans−3−アルケン−1−オール類、cis−3−アルケン−1−オール類及びtrans−ヒドロキシプロリン−N−アルカンアミド−C−エチルアミドを含む。浸透促進剤のより完全なリストが、その全体が引用により本明細書に取り込まれる、「A Listing of Skin Penetration Enhancers Cited in the Technical Literature,」D.W.Osborne,J.J.Henke,Pharmaceutical Technology,21(11),58−66(1997)に挙げられる。前記浸透促進剤は、疎水性のエステルであるミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソプロピルと、非イオン性界面活性剤のポリソルベートとを含む場合がある。
【0033】
他の添加剤の有無に関わらず、逆エマルション界面活性剤内に取り込まれる前記生物学的に活性な薬剤の徐放のための基材担体として、非刺痛性、液体粘着性絆創膏で利用されるポリマーが好ましい。いくつかの実施態様では、液体粘着性絆創膏は、溶媒蒸発後、非刺痛性、非刺激性液体絆創膏コーティング材料を提供する、揮発性液体ポリジメチルシロキサン及び揮発性液体アルカンと混合されたシロキシ含有疎水性のポリマー(その全体が引用により本明細書に取り込まれる、米国特許第4,987,893号明細書、米国特許第5,103,812号明細書及び米国特許第8,263,720号明細書と、米国特許第6,383,502号明細書)から調製される。かかるコーティング材料は、酸素透過性であり、さらに汚染や乾燥から体表面を保護しつつ、体液の蒸発を可能にする。
【0034】
また、両親媒性シロキシ基含有ポリマー類は、揮発性、疎水性溶媒内において液体粘着性絆創膏として報告されており(その全体が引用により本明細書に取り込まれる、米国特許第7,795,326号明細書)、ここで、疎水性のシロキシシランモノマーは親水性の窒素含有モノマーと共重合する。他のシロキシ基含有ポリマー類は、ポリジメチルシロキサン及びポリウレタンのブロックコポリマー類と、ポリジメチルシロキサン及びポリ(エチレングリコール)のブロックコポリマー類とを含む。さらに、揮発性、疎水性溶媒に溶解する他のポリマー類は、ポリスチレン及びエチレン/ブチレンのブロックコポリマー類と、ポリスチレン及びポリイソブチレンのブロックコポリマー類と、ポリスチレン及びポリイソプレンのブロックコポリマー類と、ポリスチレン及びポリブタジエンのブロックコポリマー類と、ポリジメチルシロキサン及びポリウレタン類のブロックコポリマー類と、C
4−C
18アクリレート類及びメタクリレート類のポリマー類と、ブチルゴムと、ポリイソブチレンと、それらの組み合わせとを含む。
【0035】
上述の特許の疎水性であり、かつ両親媒性の液体粘着性絆創膏用の好適なシロキシ含有モノマーは、シロキシモノマー、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)に基づく。TRISは、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)などの親水性のコモノマー又はメタクリル酸メチルなどの疎水性のコモノマー両方と組み合わせて使用される場合があり、これにより、得られるコポリマーは、揮発性、非刺痛性、疎水性溶媒に可溶である。
【0036】
同様に、他のポリマー基材は、それらが揮発性、非刺痛性溶媒に可溶であるよう、イソオクチルアクリレート(ISO)などの疎水性モノマーからの粘着系ポリマーに基づく場合がある。
【0037】
本明細書に記載される前記徐放を参照すると、疼痛発生及び全身薬が有効である程度を予測する困難性のために、末梢神経障害などの特定の疾病を制御するのが困難であることは注目に値する。神経因性疼痛のための現在の経口又は全身的治療は、OTC(over−the−counter)鎮痛剤;ノルトリプチリン及びアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬;ガバペンチン、プレガバリン、及びカルバマゼピンなどの抗痙攣薬;デュロキセチン及びベンラファキシンなどのセロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬;オキシコドン及びトラマドールなどの麻薬;ニチノールなどのカンナビノイド;リドカインパッチ及びカプサイシンクリームなどの局所薬を含む。OTC鎮痛剤及び局所薬は最小限の副作用を有するが、それらはまた、神経障害性疼痛を軽減するために限られた能力を示す。麻薬が最も効果的で比較的安価であり;しかし、麻薬は中毒のリスクが高く、長期的な使用により、耐性と痛覚過敏を誘発し;したがって、他の薬が失敗したときにのみ、麻薬が使用される。三環系抗うつ薬(TCAs)は、効果的かつ安価であるが、心血管及び神経毒性のために深刻な罹患率と死亡率を引き起こす可能性がある。プレガバリン及びデュロキセチンが、糖尿病性末梢神経障害の治療のためにFDAによって、現在、承認されているただ2つの薬である。これらの薬剤は、比較的高価であるが、TCAs及び麻薬と比較して、それらは、より少ない副作用、より低い乱用及び薬物耐性のリスク、より少ない薬物相互作用で有効であるが(T.J.Lindsay,B.C.Rodgers,V.Savath,K.Hettinger,Am.Fam.Physician,82(2),151−8(2010))、それらは依然として重大な副作用を有する。
【0038】
外用薬送達のもう1つの重要な方法は、通常、耳の後ろに適用されるスコポラミンの経皮パッチの使用による乗り物酔いの治療である。経皮的に送達されたスコポラミンは、他の経路で投与したときと比較して顕著に少ない副作用を伴うことが報告されている(http://www.drugs.com/sfx/scopolamine−side−effects.html)。
【0039】
好気性微生物による皮膚上の又は嫌気性微生物による皮膚の下の微生物感染症の治療において、治療は、主に経口投与による抗生剤の利用か、液体、クリーム又は軟膏などの外用抗生物質又は抗感染薬の使用のいずれかによる。抗感染薬は、微生物のような感染性病原体を死滅させ、又は拡散することを防止することにより、感染に対抗する物質として定義されているのに対して、抗菌剤は、微生物を死滅させるか、又はそれらの増殖又は複製を阻害する物質として定義される。多くの場合、2つの用語は互換的に使用される。
【0040】
一般に、クロルヘキシジン、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)、アレキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム(cetylpyridynium chloride)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、ネオマイシン、バシトラシン、ポリミキシンB、ミコナゾール、クロトリマゾール、過酸化物、サリチル酸、サリチル酸塩、銀、銀塩類、亜鉛塩類、N−ハロ化合物及びこれらに類するものなどの抗菌剤(又は抗感染薬)が、外用製剤で利用される。皮膚表面又は身体内部表面上の微生物感染症の主な問題は微生物バイオフィルムの存在であり、ここで、前記バイオフィルムは、細胞外ポリマーマトリックスを介して表面上で互いに粘着された微生物の集合体である。バイオフィルムを根絶することは困難であり、抗菌剤、生物学的に活性な物質の標的送達は、バイオフィルムの根絶を促進するために、その濃度を顕著に増大させる。
【0041】
現在使用されている経皮送達パッチは、長期的な皮膚の閉塞に起因するそれらに関連する困難な多くの問題を有する。これらの副作用は、接触性皮膚炎、細菌及び酵母の増殖及びパッチの痛みを伴う除去を含む(Hogan,D.J.,Maibach,H.I.,“Adverse dermatologic reactions to transdermal drug delivery systems,”J.Am.Acad.Dermatol.,22,811−4(1990))。また、パッチは、温度変化、発汗、入浴及び移動で、密着性での問題のために有効性が低下し、パッチが皺になるか、又は患者からの脱落を引き起こす。粘着は、薬物送達の成功のための重要な要因である(Wokovich,A.M.,Prodduturi,S.,Doub,W.H.,Hussain,A.S.,Buhse,L.F.,Eur.J.Pharm.Biopharm.64,1−8(2006))。
【0042】
本明細書に記載のスプレー及びペイントコーティング(例えば、溶解ポリマー)は、現在のパッチ製品と比較して、改善された薬物放出の着実性と効率を有するコンフォーマルなコーティングを提供することにより、上記の経皮パッチでの多くの困難性を緩和することができる。また、マイクロニードル及び局所適用の他の方法とは異なり、揮発性、非刺痛性溶媒からのスプレー適用は、より低侵襲性であり、皮膚への生物学的に活性な薬剤の適用及び送達に関連する痛みを最小限に抑える。
【0043】
本明細書に記載の組成物の利点の1つは、揮発性溶媒の蒸発後、それらが堆積する生体表面への生物学的に活性な薬剤の徐放を提供する、前記生物学的に活性な薬剤の吸着のためのポリマー基材を含むことができる点である。また、本明細書に記載の組成物の油中水型マイクロエマルションは、水溶性の生物学的に活性な薬剤の徐放を示す(Martin Malmsten,Surfactants and Polymers in Drug Delivery,2002,Marcel Dekker,Inc.New York,Chapter 5,Microemulsions)。
【0044】
本発明の目的は、疎水性、揮発性溶媒から生体表面への生物学的に活性な薬剤の送達を提供することである。
【0045】
本発明のさらなる目的は、疎水性、揮発性溶媒に生物学的に活性な薬剤を可溶化することができる界面活性剤を提供することである。
【0046】
本発明のさらなる目的は、生体表面に対して非刺痛性である疎水性、揮発性溶媒を提供することである。
【0047】
本発明のさらなる目的は、抗菌特性も有する逆エマルション界面活性剤を提供することである。
【0048】
本発明のさらなる目的は、前記疎水性、揮発性溶媒に本質的に、不溶性であり、逆エマルションに可溶である生物学的に活性な薬剤の経皮送達を提供することである。
【0049】
本発明のさらなる目的は、前記皮膚表面に浸透することができる生物学的に活性な薬剤の前記表皮への経皮送達を提供することである。
【0050】
本発明のさらなる目的は、前記皮膚表面に浸透することができる生物学的に活性な薬剤の前記真皮への経皮送達を提供することである。
【0051】
本発明のさらなる目的は、前記皮膚表面に浸透することができる生物学的に活性な薬剤の前記筋肉への経皮送達を提供することである。
【0052】
本発明のさらなる目的は、前記皮膚表面に浸透することができる生物学的に活性な薬剤の前記血流への経皮送達を提供することである。
【0053】
本発明のさらなる目的は、前記揮発性、疎水性溶媒が、皮膚に対して、非刺痛性であり、非刺激性であることである。
【0054】
本発明のさらなる目的は、生物学的に活性な物質を揮発性、疎水性溶媒内に可溶化するための界面活性剤を提供することである。
【0055】
さらなる目的は、生物学的に活性な薬剤を可溶化するために、界面活性剤、非極性溶媒及び水の組み合わせにより、逆マイクロエマルションを形成することである。
【0056】
さらなる目的は、生物学的に活性な薬剤を可溶化するために、界面活性剤及び非極性溶媒の組み合わせにより、逆マイクロエマルションを形成することである。
【0057】
本発明の他の局面では、前記逆エマルションは、溶媒蒸発後、生体表面に粘着性コーティングを形成することができる1又は2種類以上の可溶化ポリマーを含む。
【0058】
本発明の他の局面では、前記逆エマルションは、溶媒蒸発後、生体表面に粘着性コーティングを形成できる、前記生物学的に活性な薬剤及び逆エマルション界面活性剤を取り込む前記可溶化ポリマーを含む。
【0059】
本発明の他の局面では、前記逆エマルションは、1又は2種類以上の経皮浸透促進剤を含む。
【0060】
本発明の他の局面では、前記逆エマルションは、1又は2種類以上の抗菌剤を含む。
【0061】
本発明の他の局面では、前記逆エマルションは、1又は2種類以上の抗感染薬を含む。
【0062】
本発明の他の局面では、前記逆エマルションは、1又は2種類以上の末梢神経障害薬剤を含む。
【0063】
本発明の他の局面では、前記逆エマルションは、1又は2種類以上の乗り物酔い薬剤を含む。
【0064】
本発明の他の局面では、ポリマーコーティングが、微生物汚染から生体表面を保護するのに有用であり、溶媒蒸発後、コンフォーマルで、粘着性のフィルムを形成する。
【0065】
他の局面では、前記ポリマーコーティングが、前記生物学的に活性な薬剤の徐放のための基材として機能する。
【0066】
他の局面では、曲げ、ねじれ及び延伸を含む曲げ応力下で、接着性であるポリマーコーティングを提供する。
【0067】
本発明のさらなる目的は、表面への適用後に、被覆物のない場合に、外部から加えられる溶媒又は他の除去方法を必要とせずに、経時的に徐々に、表面から除去されるコーティングを提供することである。
【0068】
本発明のさらなる目的は、不水溶性であるが、水蒸気透過性であるコーティングを提供することである。
【0069】
本発明のさらなる目的は、酸素透過性のコーティングを提供することである。
【0070】
本発明のさらなる目的は、限定された空間に、容易に流動する低表面張力ポリマー溶液を提供することである。
【0071】
さらなる目的は、前記皮膚、粘膜又は内臓上に流延することができるポリマーコーティングを提供することである。
【0072】
その他の局面では、外部の水、石鹸、洗剤及び多くの化粧品にさらされたときに、表面に接着したままであるポリマーコーティングが提供される。
【0073】
他の局面では、種々の外部の湿度及び温度条件にさらされたときに、表面に接着したままであるポリマーコーティングが提供される。
【0074】
他の局面では、損傷した又は炎症を起こした皮膚又は組織に適用されるとき、痛み及び炎症を減少させる透明なポリマーコーティングが提供される。
【0075】
本発明のさらなる局面では、末梢神経障害用の薬剤の経皮送達を提供する。
【0076】
本発明のさらなる局面では、抗生剤の経皮送達を提供する。
【0077】
本発明のさらなる局面では、抗菌剤の経皮送達を提供する。
【0078】
本発明のさらなる局面では、消毒薬の経皮送達を提供する。
【0079】
本発明のさらなる局面では、抗感染薬の経皮送達を提供する。
【0080】
本発明のさらなる局面では、鎮痛薬の経皮送達を提供する。
【0081】
本発明のさらなる局面では、抗炎症薬の経皮送達を提供する。
【0082】
本発明のさらなる局面では、抗腫瘍薬の経皮送達を提供する。
【0083】
本発明のさらなる局面では、心血管治療薬の経皮送達を提供する。
【0084】
本発明のさらなる局面では、糖尿病治療薬の経皮送達を提供する。
【0085】
本発明のさらなる局面では、パーキンソン病治療薬の経皮送達を提供する。
【0086】
本発明のさらなる局面では、アルツハイマー病治療薬の経皮送達を提供する。
【0087】
本発明のさらなる局面では、注意欠陥多動性障害の経皮送達を提供する。
【0088】
本発明のさらなる局面では、インスリン又はインスリン誘導体の経皮送達を提供する。
【0089】
本発明のさらなる局面では、オピオイド又はカンナビノイドの経皮送達を提供する。
【0090】
本発明のさらなる局面では、皮膚癌治療薬の経皮送達を提供する。
【0091】
本発明のさらなる局面では、抗癌剤の経皮送達を提供する。
【0092】
本発明のさらなる局面では、皮膚治療薬の経皮送達を提供する。
【0093】
本発明のさらなる局面では、創傷治療薬の経皮送達を提供する。
【0094】
本発明のさらなる局面では、禁煙治療剤の経皮送達を提供する。
【0095】
本発明のさらなる局面では、抗乾癬用治療薬の経皮送達を提供する。
【0096】
本発明のさらなる局面では、ステロイド、副腎皮質ステロイド及び非ステロイド性抗炎症薬の経皮送達を提供する。
【0097】
本発明のさらなる局面では、抗糖尿病薬の経皮送達を提供する。
【0098】
本発明のさらなる局面では、抗アレルギー薬の経皮送達を提供する。
【0099】
本発明のさらなる局面では、鎮痒薬の経皮送達を提供する。
【0100】
本発明のさらなる局面では、抗リウマチ薬の経皮送達を提供する。
【0101】
本発明のさらなる局面では、勃起不全治療薬の経皮送達を提供する。
【0102】
本発明のさらなる局面では、雌性性機能障害治療薬の経皮送達を提供する。
【0103】
本発明のさらなる局面では、閉経後骨減少症治療薬の経皮送達を提供する。
【0104】
本発明のさらなる局面では、尿失禁治療薬の経皮送達を提供する。
【0105】
本発明のさらなる局面では、ビタミン、エッセンシャルオイル又は必須脂肪酸の経皮送達を提供する。
【0106】
本発明のさらなる局面では、1又は2以上の生物学的に活性な薬剤の組み合わせの経皮送達を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0107】
経皮薬物送達システムは、典型的には全身的に非侵襲性であり、自己投与することができ、制御された徐放を提供することができ、患者のコンプライアンスを向上させることができる(M.R.Prausnitz,and R.Langer,Nat.Biotechnol.,November,26(11),1261−1268(2008))。しかし、現在使用される経皮送達パッチは、長期間の皮膚の閉塞に起因する多くの問題を有する。これらの副作用は、接触性皮膚炎、細菌及び酵母の増殖及びパッチの痛みを伴う除去を含む(Hogan,D.J.,and Maibach,H.I.,1990,J.A.Acad.Dermat.,22,811−814(1990))。また、パッチは、温度変化、発汗、入浴、運動、皮膚洗浄及びこれらに類することにより引き起こされる粘着の減少に関する問題のために、有効性が減少し、パッチが皺になるか又は患者からの脱落を引き起こす(Wokovich,A.M.,Prodduturi,S.,Doub,W.H.,Hussain,A.S.,and Buhse,L.F.,Eur.J.Pharm.Biopharm.,64,1−8(2006))。本明細書に記載の組成物のスプレー及びペイント適用は、現在のパッチ製品と比較して、改善された薬物放出の着実性と効率を示すコンフォーマルなコーティングを提供する。
【0108】
非刺痛性、揮発性溶媒からの生体表面の保護外層への及び保護外層を介した生物学的に活性な薬剤の経皮送達は、驚くべきことに、報告されてこなかった。経皮薬物送達の他の方法に対する本方法の利点は、すべての活性成分が、生体表面を被覆し、浸透することができる逆エマルション界面活性剤を用いて液体形状に可溶化されるので、迅速に、皮膚に浸透させることができる点である。
【0109】
本明細書に記載される組成物は、はけ塗り、スプレー、塗装又は浸漬液として用いることができるユニークな液体デリバリーシステムであり;よって、適用の際に生じる付加的な痛みを最小限に抑えながら、ほとんどの皮膚表面の被覆を可能にする。デリバリーシステムの前記疎水性部分は、好ましくは、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、非刺痛性、非火傷性の迅速に蒸発する疎水性溶媒を含む。揮発性、疎水性溶媒の使用は、手足の指などの周辺や可動性領域に特に有用であり、密接にコンフォーマルなコーティングを可能にする。パッチとは異なり、密にコンフォーマルな前記コーティングは、より広い面積にわたり、前記生物学的に活性な物質のより着実な送達を提供する場合がある。
【0110】
本明細書に記載される前記組成物に取り込まれる前記生物学的に活性な薬剤は、抗菌剤、抗感染薬、抗菌薬剤、抗真菌薬剤、抗ウイルス薬剤、抗寄生虫薬及び鎮痛薬を含む場合があるが、これらに限定されない。抗菌剤及び抗感染薬が、前記組成物に取り込まれる場合がある。前記抗菌剤及び抗感染薬は、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)(PHMB)塩酸塩などのビグアナイド類及び関連する塩、アレキシジン塩酸塩及び関連する塩、クロルヘキシジンジグルコン酸塩、クロルヘキシジン二酢酸塩及び関連する塩、ナノ銀、コロイド状銀、スルファジアジン銀、硝酸銀、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酢酸、乳酸、脂肪酸、エタノール、イソプロパノール、長鎖アルコール類、分岐及び長鎖グリコール類及びグリセロールエーテル類、グリセロールエステル類、エッセンシャルオイル類、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、ハチミツ、ホウ酸、安息香酸、ポビドンヨード、ポロキサマー・ヨード、ヨウ素、サリチル酸、亜鉛塩類、スズ塩類、硫酸アルミニウム、次サリチル酸ビスマス、クロトリマゾール、硝酸ミコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、オキシコナゾール硝酸塩、サリチル酸メチル、トリエタノールアミンサリチル酸、サリチル酸フェニル、アセチルサリチル酸、チモール、ユーカリプトール、メントール、オイゲノール、ハッカ油、セージオイル、クロロキシレノール(chloroxlyneol)、クロフルカルバン、ヘキシルレゾルシノール、トリクロカルバン、ヘキサクロロフェン、ジンクピリチオン、クロロブタノール、カプサイシン、ワルファリン、バシトラシン、硫酸ネオマイシン、ポリミキシンb硫酸塩、アロエベラ、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、エチレンオキシド、クロロアミン類、デーキン溶液、希釈された漂白剤、ポリクオタニウム−1、ポリクオタニウム−10、アイオネンポリマー類、ピリジニウムポリマー類、イミダゾリウムポリマー類、ジアリルジメチルアンモニウムポリマー類、アクリロイル−、メタクリロイル−及びスチリル−トリメチルアンモニウムポリマー類、アクリルアミド−及びメタクリルアミド−トリメチルアンモニウムポリマー類、及び抗菌ペプチド類を含むが、これらに限定されない。前記抗菌剤は、PHMB及びその塩類、アレキシジン及びその塩類、クロルヘキシジン及びその塩類、分岐及び長鎖のグリコール類及びグリセロールエーテル類、グリセロールエステル類、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、硝酸ミコナゾール及び硫酸ネオマイシンを含む場合がある。前記抗菌剤は、PHMB及びその塩類、クロルヘキシジン及びその塩類、硝酸ミコナゾール、ポリミキシンb硫酸塩及び硫酸ネオマイシンである場合がある。
【0111】
前記界面活性剤逆ミセルに取り込むことができる抗菌薬剤は、βラクタム抗生剤、広域ペニシリン及びペニシリナーゼ耐性ペニシリン類(例えば、アンピシリン、アンピシリン−スルバクタム、ナフシリン、アモキシシリン、クロキサシリン、メチシリン、オキサシリン、ジクロキサシリン、アゾシリン、バカンピシリン、シクラシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、メズロシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、チカルシリン、ピペラシリンを含むペニシリン−関連化合物と、アズトレオナム及びイミペネムと、セファロスポリン類(例えば、セファピリン、セファキソリン(cefaxolin)、セファレキシン、セフラジン及びセファドロキシル、セファマンドール、セフォキシチン、セファクロル、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフォニシド、セフォテタン、セフォラニド、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン及びセフタジジム)と、テトラサイクリン類(例えば、テトラサイクリン塩酸塩、デメクロシテトラサイクリン(demeclocytetracycline)、ドキシサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン及びオキシテトラサイクリン)と、βラクタマーゼ阻害剤(例えば、クラブラン酸)と、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、ゲンタマイシンC、カナマイシンA、ネオマイシンB、ネチルマイシン、ストレプトマイシン及びトブラマイシン)と、クロラムフェニコールと、エリスロマイシンと、クリンダマイシンと、スペクチノマイシンと、バンコマイシンと、バシトラシンと、イソニアジドと、リファンピンと、エタンブトールと、アミノサリチル酸と、ピラジナミドと、エチオナミドと、サイクロセリンと、ダプソンと、スルホキソンナトリウムと、クロファジミンと、スルホンアミド類(例えば、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルファジアジン及びスルフイソキサゾール)と、トリメトプリム−スルファメトキサゾールと、キノロン類(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、ノルフロキサシン及びシプロフロキサシン)と、メテナミンと、ニトロフラントインと、フェナゾピリジンとを含むが、これらに限定されない。医薬用抗菌剤薬剤は、クロロキンと、エメチン又はデヒドロエメチンと、8−ヒドロキシキノリン類と、メトロニダゾールと、キナクリンと、メラルソプロールと、ニフルチモックスと、ペンタミジンなどの原虫感染に対して活性な薬剤を含む。
【0112】
界面活性剤逆ミセルに取り込むことができる抗真菌医薬品及び非医薬用薬剤は、アンホテリシン−B、フルシトシン、ケトコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール、グリセオフルビン、クロトリマゾール、エコナゾール、テルコナゾール、ブトコナゾール、テルビナフィン、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート(toinaftate)、ナフチフィン、ニスタチン、ナタマイシン、アニデュラファンギン、カスポファンギン、グリセオフルビン、ロドキノール(lodoquinol)、ウンデシレン酸、安息香酸、サリチル酸、プロピオン酸及びカプリル酸を含むが、これらに限定されない。
【0113】
前記界面活性剤逆ミセルに取り込むことができる抗ウイルス薬剤は、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、フォクスカルネット(foxcarnet)、アマンタジン、リマンタジン、ティーツリーオイル及びリバビリンを含むが、これらに限定されない。
【0114】
前記界面活性剤逆ミセルに取り込むことができる抗寄生虫薬は、メトロニジアゾール、メベンダゾール、アルベンダゾール、ミルベマイシン、イベルメクチン、プラジカンテル、アルテミシニン、キニーネ、クロロキン、ハロファントリン、メフロキン、ルメファントリン、アモジアキン、ピロナリジン、ピペラキン、プリマキン、タフェノキン、アトバコン、アーテメータ、アーテスネート、ジヒドロアルテミシニン、アルテミシニン、プログアニル、テトラサイクリン類、ペンタミジン、スラミン、メラルソプロール、アンホテリシン、エフロルニチン、ベンズニダゾール及びアミノサイジンを含むが、これらに限定されない。
【0115】
前記界面活性剤逆ミセルに取り込むことができる鎮痛薬は、ノルトリプチリン及びアミトリプチリン;ガバペンチン、プレガバリン及びカルバマゼピンなどの抗痙攣薬;デュロキセチン及びベンラファキシンなどのセロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬;オキシコドン及びトラマドールなどの麻薬;ニチノールなどのカンナビノイド;及び前記リドカインパッチ及びカプサイシンクリームなどの局所薬を含むが、これらに限定されない。
【0116】
水中での上述の薬物の溶解度は、塩形成又は親水性ポリマー被覆を用いたマイクロ粒子又はナノ粒子などの親水性マトリックス内に被包されることにより促進することができる。本発明を実施するために必要ではないが、陽イオン性の生物学的に活性な薬剤が、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)などの逆エマルション界面活性剤を用いて、揮発性、疎水性溶媒中で利用されるとき、生物学的に活性な薬剤の陽イオン部分とビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸の陰イオンの複合体が第一に形成され、前記複合体は、その後、AOT逆ミセル内への溶解により、被包されると考えられる。同様に、陰イオン性の生物学的に活性な薬剤が利用される場合、陽イオン性の逆エマルション界面活性剤が類似の複合体を生成する場合がある。中性の逆エマルション界面活性剤が用いられる場合、おそらく、陰イオン性の複合体を形成することなく、陽イオン性、中性又は陰イオン性の生物学的に活性な薬剤が逆エマルションミセル内に被包される場合がある。さらに、陰イオン性の生物学的に活性な薬剤も、不溶性の複合体を第一に形成することなく、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)などの陰イオン性の逆エマルション界面活性剤内に被包される場合がある。
【0117】
前記逆エマルション界面活性剤は、添加された水又はアルコールなしで、ジアルキルスルホコハク酸及びそれらの塩である。前記ジアルキルスルホコハク酸塩は、各アルキル基の炭化水素鎖長が長さで6炭素原子ないし18炭素原子の範囲であり、1又は2の同一又は異なる直鎖及び/又は分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル基を含む。例えば、ジアルキルスルホコハク酸は、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(エアロゾルAOT又はAOT)及びビス(トリデシル)スルホコハク酸ナトリウム(エアロゾルTR又はTR)を含むが、これらに限定されない。前記陰イオン性の界面活性剤ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムは、水、AOT及びバルク有機溶媒からなる安定なマイクロエマルションを形成する場合がある(C.L.Kitchens,D.P.Bossev,and C.B.Roberts,J.Phys.Chem.B,110,20392−20400(2006))。
【0118】
本発明では、水が必要とされる場合には、典型的には、前記油中水型エマルションを形成する水の量は、約0ないし約10重量%、好ましくは、約0.001ないし約7.5重量%、より好ましくは、0.01ないし約5重量%である。最小量の水が、溶媒のより速い蒸発を可能にするために、もっとも好ましい。エタノールなどのアルコールが共溶媒として添加されるとき、前記アルコール濃度は親水性の液体(例えば、水及びアルコール)の10%以下である。前記逆エマルション界面活性剤による被包のために、水中での前記生物学的に活性な薬剤の溶解性を高めるために、アルコールを使用することができる。特定の例において、前記生物学的に活性な薬剤は、揮発性、疎水性溶媒中で本質的に不溶性であっても、揮発性、非極性溶媒中で逆エマルション界面活性剤に直接溶解することができる。
【0119】
前記逆エマルション界面活性剤は、組成物の0.10ないし50重量パーセント(wt%)か、0.20ないし20wt%か、0.40ないし10wt%か、又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、0.10〜0.40wt−%及び0.20〜10wt−%)の量で存在する場合がある。
【0120】
製剤の生物学的に活性な薬剤成分は、組成物の0.00001ないし10wt%か、0.0001ないし7.5wt%か、0.001ないし5wt%か、0.01ないし2.5wt%か、0.1ないし1wt%か、又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、0.01〜1wt−%又は1〜5wt−%)の範囲の量で存在する場合がある。
【0121】
製剤の揮発性、疎水性溶媒は、組成物の40ないし99.99wt%か、45ないし99wt%か、50ないし90重量%か、55ないし80重量パーセントか、又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、40〜55wt−%又は45〜80wt−%)で存在する場合がある。
【0122】
極性溶媒(例えば、水及び/又はC
1−C
4アルキルアルコール類を組み合わせた)が、0ないし3wt%か、0.01ないし3wt%か、2wt%未満か、1wt%未満か、0.5wt%未満か、0.1wt%未満かで存在する場合がある。
【0123】
経時的な生物学的に活性な薬剤の徐放のための基材を形成するための、及び揮発性溶媒の蒸発後に生体表面上にコーティングを形成する、添加されたポリマーは、組成物の0ないし20wt%か、1ないし15wt%か、2ないし10wt%か、又はそれらの任意の組み合わせ(例えば、2〜15wt%又は1〜2wt%)の範囲の量で存在する場合がある。
【0124】
前記組成物は、50〜99.5wt%の揮発性、疎水性溶媒、0.25ないし50wt%の逆エマルション界面活性剤、0.00001ないし5wt%の生物学的に活性な薬剤及び0ないし20wt%ポリマー基材を含む場合がある。前記組成物は、0ないし5wt%の親水性溶媒(例えば、水及びC
1−C
4アルキルアルコール類)を含む場合がある。ポリマー基材は、組成物中に完全に溶解及び/又は揮発性、疎水性溶媒中に完全に溶解する量で存在することができる。前記組成物は、光学的に、透明である場合がある。
【0125】
以下の成分及びそれらの略称が、本発明で用いられる。
ALEX:アレキシジン二塩酸塩、1,1’−ヘキサメチレンビス[5−(2−エチルヘキシル)ビグアナイド]二塩酸塩、トロント・リサーチ・ケミカルズ
AgNO
3:硝酸銀、アルファ・エイサー
AOT:エアロゾルAOT、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、フィッシャー・サイエンティフィック
キャビロン:3M(商標登録)キャビロン(商標登録)HMDS(65〜90%)、ISO(8〜12%)、アクリレートターポリマー(3〜12%)及びポリフェニルメチルシロキサンコポリマー(0.1〜5%)からなる非刺痛性バリアフィルム
CHG:クロルヘキシジンジグルコン酸塩、スペクトラム・ケミカルズ
CHG−P:クロルヘキシジンジグルコン酸塩の中和及び乾燥から得られるクロルヘキシジン粉末、
DULOX:デュロキセチン、(+)−(S)−N−メチル−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)−3−(チオフェン−2−イル)プロパン−1−アミン、SST社、及び塩酸塩への変換
ETOH:エタノール、VWR・インターナショナル
G67:グランサーフ67、PEG−10ジメチコン、グラン・インダストリーズ
G W9:グランサーフ W9、セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン、ラウリン酸ヘキシル及びポリグリセリル−4−イソステアレート、グラン・インダストリーズ
GML:グリセロールモノラウレート、ラウリシジン(登録商標)、メド・ケム・ラボラトリーズ
HMDS:ヘキサメチルジシロキサン、ダウコーニング
IOA:イソオクチルアクリレート、サルトマー
IOA:NIPAM:フリーラジカル重合(無架橋)により調製された4:1wt%のIOA及びNIPAMコポリマー;表1、米国特許出願公開第2012/0208974号明細書
IPM:ミリスチン酸イソプロピル、アルゾ・インターナショナル・インコーポレイティッド
IPP:パルミチン酸イソプロピル、アルゾ・インターナショナル・インコーポレイティッド
ISO:イソオクタン、VWR・インターナショナル
クレイトン:クレイトンG1657M、クレイトン・パフォーマンス・ポリマーズ、13%のポリスチレン含有量を有する、スチレン及びエチレン/ブチレンの直鎖トリブロックコポリマー
LIDO:リドカイン塩酸塩、2−(ジエチルアミノ)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アセトアミド塩酸塩、ミッドコースト・エンバイアロンメント
MICON、硝酸ミコナゾール、シグマ・アルドリッチ
MMA:メタクリル酸メチル、アルファ・エイサー
NEO:ネオマイシン三硫酸塩、シグマ・アルドリッチ
ネオスポリン:バシトラシン、ネオマイシン及びポリミキシンB、ジョンソン・エンド・ジョンソン
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド、ジャーケム
PHMB:ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩、コスモシル(商標登録)CQ、アーチ・ケミカルズ
POLYMYX:ポリミキシン・B・三硫酸、シグマ・アルドリッチ
PREG:プレガバリン、SST・コーポレイション;プレガバリン塩酸に変換された;(S)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸塩酸塩
ロッカール:ロッカール(登録商標)−Dプラス、ファイザー:アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルココアルキルジメチルアンモニウムクロリド及びトリブチルスズ酸化物の混合物
R−Surf:逆エマルション界面活性剤
SC50:センシバ(登録商標)SC50、グリセリン1−(2−エチルヘキシル)エーテル)、シュルケ&マイヤー
SCOP:スコポラミン塩酸塩、エンゾ・バイオケム
SL:ラウリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、シグマ・アルドリッチ
SORB:ソルビン酸、2,4−ヘキサジエン酸、アルファ・エイサー
TR:エアロゾル TR、ビス(トリデシル)スルホコハク酸ナトリウム、サイテック・インダストリーズ
TRIS(0.3%TRIS−D含有):3−メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、シラー・ラボラトリーズ
TRIS二量体(TRIS−D):1,3−ビス(3−メタクリルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、ゲレスト
TRIS:MMA:9:1wt%のTRIS及びMMAのコポリマー
TRIS:NIPAM:3:1wt%のTRIS及びNIPAMのコポリマー;米国特許第7,795,326号明細書
水:(精製、USP)、リッカ・ケミカル・カンパニー
XL−TRIS:TRIS−Dで架橋されたTRIS及びMMAのポリマー、TRIS/MMA/TRIS−D=60/20/20wt%(米国特許第8,263,720号明細書)
Zn(OAc)
2:酢酸亜鉛、アルファ・エイサー
【実施例】
【0126】
以下の実施例では、すべての製剤について、各生物学的に活性な薬剤は、試験された前記非極性、疎水性溶媒、すなわち、イソオクタン(ISO)及びヘキサメチルジシロキサン(HMDS)に本質的に不溶性であった。溶解が、添加された水の存在の有無に関わらず、逆エマルション界面活性剤の存在下で起こり、光学的に透明で均一な溶液が得られた。前記生物学的に活性な薬剤(Active)の濃度は、使用した溶媒の濃度と比較して、かなり低かったため、すべての成分に関連する表のデータは、丸め込みを行い、次の最高数とした。
【0127】
前記逆エマルション界面活性剤及び水のようなエアロゾルAOT(AOT、HLB 10)を用いて、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)及びイソオクタン(ISO)の前記非刺痛性、揮発性溶媒に光学的に透き通り、透明な溶液として可溶な、多くの場合、OTC製剤で使用される種々の抗菌剤の重量パーセント(wt%)での製剤の組成が、表1に列挙される。前記抗菌剤は、ネオマイシン三硫酸塩(NEO)、アミノグルコシド抗生剤、ポリミキシンB三硫酸(POLYMYX)、環状ペプチド抗生剤及び2種類の抗菌性塩、硝酸銀及び酢酸亜鉛だけでなく、3種類のビグアナイド、ポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)塩酸塩(PHMB)、アレキシジン二塩酸塩(ALEX)及びクロルヘキシジンジグルコン酸塩(CHG)を含む。また、ALEX製剤は、水中でのアレキシジン二塩酸塩の限定された溶解度により、水と親水性の共溶媒としてエタノールを含んだ。
【0128】
研究したすべての親水性、イオン性、極性の抗菌剤は、ISO及びHMDSに本質的に不溶性である。これらの薬剤のそれぞれの抗菌活性は、それらの陽イオン形態に依存し、それぞれISO及びHMDSの非極性溶媒に不溶性である。しかし、AOTを含有するこれらの非極性溶剤は、水又はアルコールに可溶である抗菌性化合物を溶解する。PHMB、CHG、ALEX、NEO、硝酸銀、酢酸亜鉛及びPOLYMYXの試験化合物では、これらの化合物はHMDS又はイソオクタン中のより高濃度のAOTと混合したとき、最初に、白色沈殿を形成し、その後、AOT含有量を増加させると、溶解し、透明な溶液を形成する。おそらく、前記陽イオン性の生物学的に活性な薬剤は、前記AOT陰イオンを用いてビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩を形成し、その後、エアロゾルAOTにより、逆エマルション内に溶解した。
【0129】
取り込むことができる生物学的に活性な薬剤の量は、HMDS及びISO内のAOT逆エマルションに溶解できる水の量に依存するようであり、これは、水へのそれらの溶解度に関連する。例えば、アレキシジンHCl(ALEX、0.1%水に可溶)の水溶性は、CHXジグルコネート(CHG、20%水に可溶)と比較して、はるかに低い。よって、AOTを用いて、より少ないALEXを前記非極性溶剤内の逆エマルションに可溶化することができる。しかし、ALEXは水よりエタノールにより溶解しやすく、添加したエタノールが、AOTを用いた、イソオクタン内へのその溶解度を増加させる(表1)。
【0130】
表1は、均一、透明(光学的に透明)、安定な溶液が、揮発性、疎水性溶媒内での界面活性剤AOTを用いた、逆エマルション内の研究された種々の陽イオン性の抗菌剤から調製できることを実証する。前記製剤が生体表面に適用されるとき、溶媒の蒸発後に、前記活性な薬剤が、生体表面に輸送されることになる。
【0131】
表1から、それぞれの場合において、揮発性溶媒の重量パーセントが、製剤の約0.5%ないし5%の範囲のAOTの量で、90%を超えていたことがわかる。また、表1には、AOT/Active及びAOT/水の2つの比を含み、前記activeは前記陽イオン性の抗菌剤を表す。AOTのactiveに対する比は10ないし1000の範囲であり、AOTの水に対する比は1ないし約5の範囲である。AOT/activeのモル量の点で、これらは、(例えば、CHG及びNEOを使用して)約20モル超の低い値ないし(例えば、PHMBを使用して)4,500モル超の範囲である。AOT/active比は、まず陽イオン性抗菌剤のスルホコハク酸塩を形成し、その後、それらがビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)逆ミセル内に溶解するのに必要な添加されるエアロゾルAOTと一致する。
【0132】
表1の生物学的に活性な薬剤は、それらの陽イオンを介して活性であり、その後、陰イオン性のビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸逆ミセル内に可溶化されるのに対して、関連した研究は、界面活性剤としての陰イオン性のAOTと、陽イオン性の生物学的に活性な薬剤の代わりに陰イオン性の脂肪酸塩のラウリン酸ナトリウム(SL)を用いて実施された。AOT及び水を用いて、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸のナトリウム塩がISOへのそれらの溶解性について研究され、後者は抗菌性を有する脂肪酸であり、それらは溶媒に不溶である。陰イオン性の界面活性剤の溶解性が、透明で均一なマイクロエマルションを与えることとなる。研究されたISO/SL/AOT/H
2Oの比は92.57/2.78x10
−2/4.63/2.78であり、AOT/SLの比は16.7であり、AOT/H
2Oの比は1.67であり、すべての値は表1の値と一致する。AOT、陰イオン性の逆エマルション界面活性剤は、前記疎水性溶媒イソオクタン中に、マイクロエマルション内に、陰イオン性の水溶性脂肪酸塩を可溶化することができ、これにより、陽イオン性及び陰イオン性の生物学的種の両方を油中水型マイクロエマルションに可溶化できることを示す。
【0133】
【表1】
【0134】
表2は、イソオクタン又はHMDSに、透明な溶液として、ビグアナイド類PHMB及びCHGを可溶化することができる他の逆エマルション界面活性剤を含む。これらの界面活性剤は、センシバ SC 50(SC 50、HLB 7.5)、グランサーフW9(G W9、HLB 4.5)及びエアロゾル TR(TR、HLB 4〜7)を含む。ISO及びHMDS内で光学的に、透明な逆エマルションを形成するのに必要な界面活性剤の量は表1の量と比較して実質的により多く、よって、揮発性溶媒の量を減少させ、該揮発性溶媒の量は約48wt%ないし82wt%の範囲であった。エアロゾルTRは、グランサーフW9及びセンシバ SC 50と比較してより効果的であるが、エアロゾルAOTと比較して効果がより低いと見られる。界面活性剤の活性なビグアナイド剤に対する比は400ないし2000の範囲であり、界面活性剤の水に対する比は10ないし21であった。
【0135】
【表2】
【0136】
表3には、逆エマルション界面活性剤を用い、添加された水なしで、HMDS及びISOに可溶である、水内の3種類の固体の陽イオン性抗菌剤(CHG−P、MICON及びGML)及び1種類の固体の陰イオン性の抗菌剤(SORB)(pK
a4.76超のpHで陰イオン性、http://en.wikipedia.org/wiki/Sorbic_acid)を列挙する。硝酸ミコナゾール(MICON)及びグリセロールモノラウレート(GML)は入手したまま使用するのに対し、クロルヘキシジン粉末(CHG−P)はクロルヘキシジンジグルコン酸塩(CHG)を中和することにより調製された。ミコナゾールはイミダゾール系抗真菌剤であり、グリセロールモノラウレートは抗菌特性を有するモノグリセリドである。ソルビン酸及びその塩は、カビ、酵母及び真菌に対して抗菌特性を有する、食品の防腐剤、薬物及び保存溶液として使用される。これらの生物学的に活性な薬剤はイソオクタン又はヘキサメチルジシロキサンに可溶ではなかったが、4種類の異なる逆エマルション界面活性剤(AOT、G W9、G 67(HLB 4.5)及びSC 50)がISO及びHMDSに添加されたとき、可溶化され、光学的に透明な溶液が得られた。ソルビン酸、カルボン酸防腐剤は、支障なく、エアゾールAOT、陰イオン性の逆エマルション界面活性剤によって可溶化した。前記溶媒の濃度は、約50ないし95wt%の範囲であった。表3の製剤には水を全く添加しなかったが、界面活性剤の生物学的に活性な薬剤の比は、5ないし500の範囲であり、表1及び2と類似の値であった。微量の水が、表3の種々の成分に存在し、可溶化が促進されたと考えられる。
【0137】
【表3】
【0138】
揮発性、非刺痛性疎水性溶媒からの生物学的に活性な薬剤の徐放のためのポリマー基材の製剤が、表4に示される。使用された溶媒は、リドカイン塩酸塩、局所麻酔薬及び抗不整脈薬に加えて、PHMB、CHG、NEO及び硝酸銀の前記抗菌剤を含むISO及びHMDSであり、多くの場合、そう痒、火傷及び疼痛を緩和するために局所的に使用された。前記逆エマルション界面活性剤は、AOT及びSC 50を含んだ。
【0139】
表4で使用された前記ポリマー基材は、(1)IOA:NIPAM、イソオクチルアクリレート(IOA)及びN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)モノマー4:1重量部の無架橋コポリマー;(2)TRIS:MMA、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)及びメタクリル酸メチル(MMA)9:1重量部のコポリマー;(3)クレイトン、スチレンとエチレン/ブチレンとのブロックポリマーを含有する市販のエラストマー;(4)キャビロン、3M(商標登録)キャビロン(商標登録)非刺痛性バリアフィルム、HMDS及びISOの揮発性溶媒内にポリフェニルメチルシロキサンを含む独占権のあるアクリレートポリマーからなる市販の液体絆創膏;及び(5)XL−TRIS、TRISとメタクリル酸メチルとの可溶性架橋ポリマーを含む。
【0140】
3種類のポリマー含有溶液は、TRIS:NIPAM及びキャビロンポリマーを含む光学的に透明で均一な組成物を製造するために、添加された水を必要としないことがわかり、残りの製剤は表1と同様の界面活性剤の水に対する比を有した。
【0141】
表4は、前記揮発性溶媒が蒸発したときのポリマー中の前記生物学的に活性な薬剤の添加されたパーセント(%ポリマー内のActive)を示す。これらの値は、0.01ないし1wt%の範囲であった。
【0142】
【表4】
【0143】
表5は表4に関連する組成物を含み、水とAOTにより可溶化されたキャビロン溶液中の抗菌剤、CHG及びMICONと、PHMB及びMICONの組み合わせの溶解度を提供する。キャビロンポリマー中の組み合わせた抗菌剤の添加量%のように、逆エマルション界面活性剤のactiveに対する比と、逆エマルション界面活性剤の水に対する比は、他の表と同様であった。表5の前記組成物は、光学的に透明であった。
【0144】
【表5】
【0145】
表6は、疼痛治療で使用される異なる薬物を含む3種類の組成物を列挙する:(1)リドカイン(LIDO)、(2)プレガバリン(PREG)、神経障害性疼痛及び不安障害、特に、線維筋痛症及び脊髄損傷で使用される抗痙攣薬、及び(3)デュロキセチン(DULOX)、末梢神経障害、特に、糖尿病性神経障害、線維筋痛症及びうつ病性障害及び不安障害用のセロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害薬。前記溶媒は、水を含む前記逆エマルション界面活性剤のようなAOTを含む、ISO及びHMDSであった。界面活性剤のactiveに対する比と、界面活性剤の水に対する比は、他の結果と同一であった。表6の組成物は、光学的に透明であった。
【0146】
【表6】
【0147】
表7は、PHMB及びLIDOを含む、水を含有するISO及びHMDS内の逆エマルション界面活性剤のように、AOTを用いた、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)及びパルミチン酸イソプロピル(IPP)の皮膚浸透促進剤(PE)を含む製剤を示す。2種類のポリマーマトリックスXL−TRIS及びキャビロンが、試験された。1つの製剤は、ポリマーマトリックスを含まない。界面活性剤のactiveに対する比と、界面活性剤の水に対する比は、他の表と同一であった。また、AOTの浸透促進剤に対する比が試験され、これらの値から、前記浸透促進剤が逆エマルション界面活性剤より多量で用いることができることがわかった。前記浸透促進剤の前記activeに対する比は、前記界面活性剤の前記activeに対する比の2倍であった。前記溶媒乾燥ポリマー中の前記activeの添加量は、0.025ないし1%であった。表7の組成物は、光学的に透明であった。
【0148】
【表7】
【0149】
表8は、水を含むISO又はHMDSにおけるAOTの逆エマルション界面活性剤中のスコポラミン塩酸塩(SCOP)の製剤を示す。スコポラミンは、ムスカリン受容体遮断薬の効果を有するトロパンアルカロイド薬である。これは、多くの場合、乗り物酔いの悪心及び嘔吐を防ぐために、徐放パッチで使用されている。界面活性剤のactiveに対する比と、界面活性剤の水に対する比は、他の表と一致する。表8の組成物は、光学的に透明であった。
【0150】
【表8】
【0151】
表1〜8では、すべての逆エマルション界面活性剤のHLB値は4〜10の範囲内であり、範囲はマイクロエマルション逆界面活性剤で見られた。
【0152】
上述の表のデータは、前記揮発性溶媒の蒸発後、前記生物学的に活性な薬剤が表面に及び表面を通して輸送することができるように、前記生物学的に活性な薬剤の徐放のためのポリマー基材を含むこともできる揮発性疎水性溶媒内に、親水性、イオン性、極性の生物学的に活性な薬剤を取り込むことができることを示す。さらに、本明細書に記載の非極性、揮発性、疎水性溶媒中の生物学的に活性な薬剤の送達特性を実証するために、抑制ゾーンによる(抑制ゾーン:ZOI)抗菌性の分析が、グラム陽性菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(表9)、グラム陰性菌、緑膿菌(表10)及び酵母(真菌)、カンジダ・アルビカンス(表11)を用いて、3日にわたる時間の関数として、AOTを含有するキャビロン溶液に添加された種々の抗菌剤を用いて、実施された。すべての微生物学的試験は、テキサス州サンアントニオのINCELL社によって行われた。抑制データのすべてのゾーンは、mm単位で測定された。
【0153】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌及び緑膿菌についての前記抑制ゾーン試験が、以下のとおり実施された。前記細菌はATCCから入手し、トリプチックソイブロス中で一晩増殖させた。各細菌培養物は、その後トリプチックソイ寒天(TSA)プレート上に広げられた。揮発性、疎水性溶媒中の前記生物学的に活性な薬剤を含む滅菌クローニングシリンダー(シリンダーあたり0.1mL)が、前記TSAプレート上に載置され、室温で1時間空気乾燥された。ネオスポリンが正の対照として使用された。前記TSAプレートが観察され、24時間、48時間及び72時間後に撮影された。画像は、抑制ゾーン又は前記送達物質の周囲のクリーニング領域を測定するために使用された。
【0154】
また、前記抑制ゾーン試験は、ATCCから入手したカンジダ・アルビカンスを用いて実施され、一晩、トリプチックソイブロス上に広げられた。この真菌培養物は、0.1 OD 600unitsに希釈され、TSAプレート上に広げられた。滅菌クローニングシリンダーが、前記生物学的に活性な薬剤を含む揮発性、疎水性溶媒(シリンダーあたり0.1mL)を充填した、前記TSAプレート上に載置され、室温で1時間空気乾燥された。1%ロッカール溶液が、正の対照として使用された。前記TSAプレートが観察され、24時間、48時間及び72時間後に撮影された。画像は、抑制ゾーン又は前記送達物質の周囲のクリーニング領域を測定するために使用された。
【0155】
経時的な生物学的に活性な抗菌剤の徐放研究のために選択された前記ポリマー基材は、キャビロンであった。前記キャビロン溶液は、HMDS及びISO内の独占権のあるアクリレートポリマー及びより少量のポリフェニルメチルシロキサンからなる。これは、すべての抑制ゾーン研究で、負の対照として使用された(表8〜10)。
【0156】
表9は、3日間にわたり測定された、すべてキャビロンポリマーの固体に含まれる、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ATCC 700787、とともにエアロゾルAOT、PHMBとともにAOT、CHXとともにAOT、NEOとともにAOT及び硝酸銀とともにAOTでの抑制ゾーン結果を示す。同様に、表10は、3日間にわたり測定された、すべてキャビロンポリマーの固体に含まれる、緑膿菌、ATCC 27853、とともにエアロゾルAOT、PHMBとともにAOT、CHXとともにAOT、NEOとともにAOTでの抑制ゾーン結果を示す。すでに、エアロゾルAOT(ドクサートナトリウムと称される)が、抗菌薬、抗ウイルス剤及び抗真菌剤として研究されたことが報告された。抗菌薬として、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌に対しては活性であるが、緑膿菌などのグラム陰性菌に対しては不活性であることが報告された(G.N.カーン、米国特許第4,717,737号明細書)。抗真菌剤として、AOTは、カンジダ・アルビカンスに対して、有効であることが報告された(G.N.カーン、米国特許第4,885,310号明細書)。
【0157】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対する表9のAOTのZOI挙動は、前記キャビロンポリマー内のAOTが、この細菌に対して実際に活性であり、前記ネオスポリン正の対照と比較して大幅により有効であったことを示す。また、表10に示されるように、キャビロンポリマー内のAOTは、ネオスポリンと比較して、緑膿菌に対して顕著に有効であった。この挙動は、G.N.カーンの見解で予測されたものとは反対であり(米国特許第4,717,737号明細書)、G.N.カーンの特許は、緑膿菌を含むグラム陰性菌に対する殺菌作用の欠如を示した。前記キャビロンポリマー基材内でAOTとPHMBを組み合わせることは、著しく全体的な殺菌作用を増強し、その抑制ゾーンはAOT単独と比較して、有意により大きかった。キャビロンポリマー基材内でAOTとCHGを組み合わせることは、例外的な結果を示し、前記正の対照(ネオマイシン)又はAOTのいずれかと比較して実質的により大きかった。この増強された効果はAOT内のPHMBの溶解度と比較して、AOT内のCHGのより高い溶解度に起因する可能性があり、徐放のための前記キャビロンポリマー内のactiveのより高い濃度をもたらす。同様に、PHMBの添加量と比較して、ポリマーでのより添加量の多い硝酸銀及びNEOも、3日間にわたり、非常に効果的な徐放性抗菌剤であった。
【0158】
【表9】
【0159】
表10は、緑膿菌での抑制ゾーン結果を示す。これらの結果は、AOTを含むキャビロンポリマーが、経時的に、非常に効果的な抗菌薬であり、ネオスポリン正の対照と比較して、実質的により良好であることを示す。また、この結果は、AOT及びキャビロンポリマー内のPHMB及びNEOで見られた。しかし、AOT及びキャビロン内のCHGは、黄色ブドウ球菌に対するその活性と著しい対照をなして、効果が低かった(表9)。
【0160】
【表10】
【0161】
表11は、正の対照として1wt%ロッカール及び負の対照としてキャビロンと比較した、カンジダ・アルビカンス、ATCC 10231に対する、AOT及びキャビロン内のPHMB及びMICONでの抑制ゾーン結果を示す。硝酸ミコナゾール製剤では、AOT内でこの抗真菌剤を可溶化するために水を添加する必要はなかった。前記正の対照は、おそらく、そのより高濃度のために、すべての他の製剤と比較して、より優れていた。これらのデータについて、AOT内のPHMBは、AOT自体と比較して、わずかにより効果が低いように見える。しかし、MICON及びAOTは、AOT単独及びPHMB及びAOTと比較して、より優れていた。AOT/active及びAOT/水の比は、他の表の比と比較して、より小さかった。
【0162】
【表11】
【0163】
また、動物及びヒトの皮膚への適用を考慮し、AOTなどの逆エマルション界面活性剤は哺乳動物細胞に対して毒性の可能性がある。水溶液では、0.002wt%の低い濃度では、AOTは、線維芽細胞、腎細胞及び癌細胞などの哺乳動物細胞に対して細胞毒性があることが報告された(G.N.カーン、米国特許第4,885,310号)。これは、線維芽細胞などの哺乳動物細胞の創傷を修復する必要があることを考慮して、望ましくない場合がある。しかし、従来技術は、AOTが、制御された送達のためのポリマーを含有する揮発性、疎水性溶媒内で、細胞毒性を有するかを示すものではない。よって、細胞毒性研究は、すべての上記抗菌及び抗真菌研究で使用された濃度と比較して、より低濃度である、0.5wt%AOTを含有するキャビロン溶液を用いて、実施された(表9〜11)。AOTを含まないキャビロン溶液が、負の対照として使用された。
【0164】
毒性研究は、トキシコン コーポレイション、ベッドフォード、マサチューセッツ州により実施され、データを表12に示す。前記AOTキャビロン溶液に反応するL929マウス線維芽細胞の生物学的な反応性を測定した。線維芽細胞の単層が寒天プレート内で培養され、細胞生存率が生体染色(ニュートラルレッド)を用いて評価された。前記AOTキャビロン溶液が寒天の表面に直接適用された。試験システムの適切な機能を検証するために、正(ブナ−N−ゴム)及び負(負の対照可塑、キャビロン溶液)の対照物品が調製された。前記培養物が、5±1%の二酸化炭素を含有する加湿雰囲気下、37±1℃でインキュベートされた。抑制ゾーンが測定され、生物学的な反応性(細胞変性及び形成異常)が、24及び48時間で、グレード0(反応性なし)ないしグレード4(重度の反応性)の尺度で等級づけされた。実験は、3回行った。結果は、グラム陽性菌、グラム陰性菌及び真菌を死滅させるのに有効であるが、ゼロのグレードを有するAOTキャビロン溶液は、哺乳動物細胞に対して毒性がないことを示した。
【0165】
【表12】
【0166】
哺乳類の皮膚への適用のための逆エマルション界面活性剤の使用に伴う別の懸念は、皮膚への刺激を引き起こす可能性である。水溶液中で、AOTは皮膚に対して刺激性である可能性があることが報告されている(M.Changez and M.Varshney,Drug Development and Industrial Pharmacy,26(5),507−512(2000))。ポリマーの存在下で揮発性、疎水性溶媒内で使用されるときAOTが皮膚刺激性であるかを試験するため、動物皮膚刺激性研究がトキシコン コーポレイションにより実施され、0.5wt%のAOTを含有するキャビロン溶液が試験され、キャビロン溶液が負の対照として使用された。
【0167】
3羽の白色ウサギが、皮膚刺激性研究のために使用された。適用部位は、試験物質及び対照物質の適用前、24時間以内に、毛のない躯幹の皮膚をクリップすることにより、準備された。動物は、AOT含有キャビロン溶液及びキャビロン負の対照(0.5mL)を約6cm
2の皮膚領域に、皮膚に直接、適用することにより処置された。前記試験溶液は脊椎の左側の皮膚に適用され、前記対照溶液は脊椎の右側の皮膚に適用された。前記AOT溶液及び前記負の対照はそれぞれ、3つの部位に順次適用され、紅斑及び浮腫の徴候が6、24、48及び72時間で観察された。観察は、スコアリングするためのドレーズ尺度によりスコア化された。AOT溶液部位のいずれも、観察点のいずれにおいても、紅斑又は浮腫の徴候を示さなかった。あらゆる観察期間において、任意の動物のいずれの対照部位でも、紅斑又は浮腫の徴候は見られなかった。よって、試験されたAOTキャビロン溶液が、非刺激性であると考えられた。
【0168】
その他の実施態様
上記明細書は多くの詳細を含むが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、その好ましい実施態様の例である。他の多くの変形が可能である。したがって、本発明の範囲は、図示された実施態様によって決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的均等物によって決定されるべきである。