(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267225
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】アルミノシリケートモレキュラーシーブの種結晶形成による合成
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
C01B39/48
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-546475(P2015-546475)
(86)(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公表番号】特表2016-500360(P2016-500360A)
(43)【公表日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】US2013067207
(87)【国際公開番号】WO2014092870
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年8月16日
(31)【優先権主張番号】61/735,152
(32)【優先日】2012年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】グアン・カオ
(72)【発明者】
【氏名】マトゥ・ジェイ・シャー
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−066242(JP,A)
【文献】
特開2001−031416(JP,A)
【文献】
特表2012−500772(JP,A)
【文献】
特表2002−521303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00 − 39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノシリケートモレキュラーシーブの製造方法であって、
(a)水と、シリカの供給源と、ERI、LEV、AFX、CHA、AEIならびにそれらの混合物および連晶からなる群から選択されるフレームワーク型を有するシリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブの種結晶とを含む反応混合物を結晶化させること、および
(b)0.5重量%未満のフレームワークのリンを含むアルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物を回収すること
を含む方法。
【請求項2】
前記反応混合物が、少なくとも500wppmの前記種結晶を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物が、前記種結晶によって含有されるリンを除いて、リンを含まない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応混合物が、フッ化物イオンの供給源をも含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応混合物が、9以下のpHを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、前記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物の合成を導くために有効な有機指向剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物が、CHAフレームワークを有し、前記種結晶が、構造単位として、2つの6員環を有するシリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合物が、1000wppm〜50000wppmの前記種結晶を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、2000wppm〜25000wppmの前記種結晶を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物が、5〜9のpHを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物が、0.2重量%未満のフレームワークのリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物が、0.1重量%未満のフレームワークのリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物が、500wppm未満のフレームワークのリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物が、測定可能なフレームワークのリンを含まない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、種結晶を使用する結晶質アルミノシリケートモレキュラーシーブの合成に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
モレキュラーシーブ材料は、天然のものであっても、合成されたものであっても、これまで、吸着剤として有用であること、および様々な炭化水素変換反応のための触媒特性を有することが実証されている。ゼオライト、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、アルミノホスフェート(AlPO)およびメソ細孔材料などのある種のモレキュラーシーブは、X線回折(XRD)によって決定されるように、秩序のある明確な結晶構造を有する多孔性結晶質材料である。結晶質モレキュラーシーブ材料内では、チャネルまたは細孔によって相互連結し得る空孔がある。これらの空孔および細孔は、特定のモレキュラーシーブ材料内で径において均一である。これらの細孔の寸法が、より大きい寸法の分子は受け入れないが、ある種の寸法の吸着分子を受け入れるようなものであるため、これらの材料は「モレキュラーシーブ」として知られるようになり、様々な産業プロセスで利用されている。
【0003】
そのようなモレキュラーシーブは、自然のものも、合成されたものも、広範囲の種々の正イオン含有結晶質シリケートを含む。これらのシリケートは、SiO
4四面体および周期表の第13族元素の酸化物(例えば、AlO
2)の三次元フレームワークとして記載することができる。四面体は、カチオン、例えば、プロトン、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンが結晶中に含まれることによって釣合いが取られた第13族元素(例えば、アルミニウム)を含有する四面体の電子価を有する酸素原子を共有することによって架橋される。これは、第13族元素(例えば、アルミニウム)対様々なカチオン、例えば、H
+、Ca
2+/2、Sr
2+/2、Na
+、K
+またはLi
+の数の比率が等しく一致すると表わすことができる。
【0004】
モレキュラーシーブは、国際ゼオライト協会構造委員会(the Structure Commission of the International Zeolite Association)によって、IUPACゼオライト命名委員会(the IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature)の原則に従って分類される。この分類によって、フレームワーク型ゼオライトおよび構造が確立されている他の結晶質微孔性モレキュラーシーブには3文字のコードが割り当てられており、これについては、本明細書に参照によって組み込まれる非特許文献1に記載されている。
【0005】
アルミノシリケートなどのモレキュラーシーブの結晶化は、種結晶形成によってしばしば促進される。種結晶形成は、より大量の同一材料の結晶化を促進する際の、(意図的な添加によって、または相互汚染によってのいずれかで存在する)少量の生成物相の効果を記載するために一般に使用される用語である。種結晶形成は、効果的に相純度および結晶径を制御するために、ならびに合成を促進して、有機構造指向剤の必要性を低下させるか、または不要にするために使用されることが可能である。
【0006】
1種のフレームワーク型の結晶質アルミノシリケートの合成は、異なるフレームワーク型のアルミノシリケートの種結晶によって促進することができることも知られている。例えば、特許文献1は、CHAフレームワーク型アルミノシリケートを、AEI、LEVまたはOFFフレームワーク型を有するアルミノシリケートの種結晶の存在下で合成することができることを開示している。
【0007】
加えて、特許文献2には、Levyne、NU−3、ZK−20、ZSM−45およびSAPO−35などのLEVフレームワーク型モレキュラーシーブの種結晶のコロイド懸濁液を使用して、リン含有モレキュラーシーブ、特に、CHAフレームワーク型のSAPOおよびAlPOを製造することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,067,108号明細書
【特許文献2】国際公開第00/06493号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Atlas of Zeolite Framework Types」,Ch.Baerlocher,L.B.McCusker,D.H.Olson編,Elsevier,第6改訂版,2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明に従って、今や、アルミノシリケートモレキュラーシーブの合成は、シリコアルミノホスフェート(SAPO)およびアルミノホスフェート(AlPO)モレキュラーシーブによって種結晶形成することができることが見出された。SAPOおよびAlPOは、組成的にアルミノシリケートとは異なり、かつSAPOおよびAlPOの種結晶は、最終的なアルミノシリケート結晶(リン組み込みでない)にはならないという事実にもかかわらず、場合によっては、結晶質生成物は、SAPOまたはAlPOの種結晶がないと形成されない。また、種結晶構造を生成物アルミノシリケート構造のものと関連させる構造的な特性、ならびにアルミノシリケート生成物のモルフォロジーに及ぼすSAPOおよびAlPOの種結晶の明白な効果があることも見出された。この発見は、前例がないと考えられ、ゼオライト相ではなく、SAPOまたはAlPO相として存在する新規のモレキュラーシーブ構造の合成への可能性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
一態様において、本発明は、アルミノシリケートモレキュラーシーブの製造方法であって、
(a)水と、シリカの供給源と、シリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブの種結晶(シードまたは種)とを含む反応混合物を結晶化させること、および
(b)フレームワーク(framework)のリンを実質的に含まないアルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物を回収すること
を含む方法に関する。
【0012】
一実施形態において、反応混合物は、少なくとも500wppm、例えば、約1000wppm〜約50000wppm、または約2000wppm〜約25000wppmの上記種結晶を含む。
【0013】
都合よくは、反応混合物は、上記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物の合成を導くために有効な有機指向剤(organic directing agent)を含むこともできる。反応混合物は、追加的に、または代わりとして、フッ化物イオンの供給源を含んでいてもよい。
【0014】
一実施形態において、アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物は、CHAフレームワークを含むことができ、種結晶は、構造単位(structural building unit)として2つの(ダブル)6員環を有するシリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブおよび/またはアルミノホスフェートを含むことができる。例えば、種結晶は、ERI、LEV、AFX、CHA、AEIならびにそれらの混合物および連晶からなる群から選択されるフレームワーク型(タイプ)を有するシリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例1および2の種結晶形成のない合成の生成物のX線回折パターンを、実施例3〜7のSAPO種結晶を使用して得られる生成物のX線回折パターンと比較する。
【
図2】
図2は、実施例1および2の種結晶形成のない合成の生成物のX線回折パターンを、実施例8〜10のSAPO種結晶を使用して得られる生成物のX線回折パターンと比較する。
【
図3】
図3は、様々なSAPO種結晶(上部)およびそれらの相当するチャバサイト生成物(実施例3〜7、下部)の走査電子顕微鏡検査像を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態の詳細な説明)
本明細書には、シリコアルミノホスフェート(SAPO)および/またはアルミノホスフェート(AlPO)モレキュラーシーブの種結晶を使用する結晶質アルミノシリケートモレキュラーシーブの合成方法が記載される。この方法の機構は完全には理解され得ないが、種結晶からのリンは本質的になく、任意選択で、しかし好ましくはアルミニウムの少なくとも一部が、結晶質アルミノシリケート生成物のフレームワークに組み込まれることができることが予想外に見出された。一般に、結晶質生成物は、フレームワークのリンを実質的に含まないことが可能である(例えば、0.5重量%未満のフレームワークリン、0.2重量%未満のフレームワークリン、0.1重量%未満のフレームワークリン、500wppm未満のフレームワークリン、200wppm未満のフレームワークリン、100wppm未満のフレームワークリンまたは測定不可能なフレームワークリンを含有することができる)。
【0017】
SAPOおよび/またはAlPO種結晶は、ケイ素の供給源と、任意選択で(SAPOおよび/またはAlPO種結晶とは別の)アルミニウムの追加的な供給源と、典型的に、所望のアルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物の合成を導くために有効な有機構造指向剤とを含んでなる水性反応混合物に添加されることができる。一実施形態において、反応混合物は、上記種結晶によって含有されるリンを除き、リンを実質的に含まないことが可能である。本明細書で使用される場合、「実質的にリンを含まない」という用語は、反応混合物が、種結晶からのリンを除いて、0.5重量%未満のリン、0.2重量%未満のリン、0.1重量%未満のリン、500wppm未満のリン、200wppm未満のリン、100wppm未満のリン、または測定不可能なリンを含有することができることを意味する。
【0018】
反応混合物に添加されるSAPOおよび/またはAlPO種結晶の量は有意に異なることができるが、一実施形態において、反応混合物は、少なくとも500wppm、例えば、約1000wppm〜約50000wppm、または約2000wppm〜約25000wppmのSAPOおよび/またはAlPO種結晶を含んでなることができるように、十分な種結晶を添加することができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、反応混合物は、追加的に、または代わりとして、例えば、反応混合物のF
−/SiO
2モル比が、約0.4〜約0.8であることができるように、フッ化物イオンの供給源を含んでなってもよい。典型的に、反応混合物のpHは、9未満、例えば、8未満、約5〜約9または約5〜約8であることができる。
【0020】
種結晶形成合成混合物からの所望のアルミノシリケートモレキュラーシーブの結晶化は、約80℃〜約220℃(例えば、約100℃〜約200℃)の温度で、使用される温度で結晶化が生じるために十分な時間で(例えば、約半日〜約100日、または1日〜約20日)、適切な反応器容器(例えば、ポリプロピレンジャーまたはTeflon(商標)ラインドもしくはステンレス鋼オートクレーブ)での静的または撹拌条件で実行することができる。その後、アルミノシリケート結晶を液体から分離することができ、回収することができる。
【0021】
作用のいずれかの特定の理論によって拘束されることは望まないが、本方法で種結晶として利用されるSAPOおよび/またはAlPOモレキュラーシーブの結晶構造は、最終的なアルミノシリケート生成物の結晶構造を決定することができ、ならびに/またはアルミノシリケート生成物の結晶モルフォロジーに影響することができると考えられる。
【0022】
したがって、CHAフレームワーク型アルミノシリケートモレキュラーシーブの合成を導くために有効な有機指向剤を含有する反応混合物の場合、構造単位として2つの6員環を有するSAPOおよび/またはAlPOモレキュラーシーブの種結晶は、所望のモレキュラーシーブの結晶化および結果として生じる結晶質相の純度を促進するために有効となることが可能であることが予想外に見出された。そのようなSAPOおよび/もしくはAlPOモレキュラーシーブの例には、ERIフレームワーク型(例えばSAPO−17)、LEVフレームワーク型(例えばSAPO−35)、AFXフレームワーク型(例えばSAPO−56)、CHAフレームワーク型(例えば、CHAフレームワーク型を有し、かつN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンで製造されるSAPO、例えばEMM−4、および/またはフッ化物を含有するもの、例えばEMM−5)、ならびに/またはAEIフレームワーク型(例えばSAPO−18)を含むことができる。
【0023】
そのうえ、結晶質アルミノシリケート生成物のモルフォロジーに関して、構造単位として1つの(シングル又は単一)6員環ではなく2つの(ダブルまたは二重)6員環のみを有するSAPOおよび/またはAlPOモレキュラーシーブの種結晶を使用することによって、最終的なCHAフレームワーク型生成物に接触双晶が現れる(優位を占める)ことが予想外に見出された。しかしながら、種結晶材料が構造単位として1つの(シングル)6員環を有する場合、次いで、貫入双晶が最終的なCHAフレームワーク型生成物中に現れることができる(優位を占める)。
【0024】
追加的に、または代わりとして、本発明は以下の実施形態の1つ以上を含むことができる。
【0025】
実施形態1
アルミノシリケートモレキュラーシーブの製造方法であって、
(a)水と、シリカの供給源と、シリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブの種結晶とを含む反応混合物を結晶化させること、および
(b)フレームワークのリンを実質的に含まないアルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物を回収すること
を含む方法。
【0026】
実施形態2
上記反応混合物が、少なくとも500wppm、例えば、約1000wppm〜約50000wppm、または約2000wppm〜約25000wppmの上記種結晶を含む、実施形態1の方法。
【0027】
実施形態3
上記反応混合物が、リンを実質的に含まない(ただし、上記種結晶によって含有されるリンは除く)、実施形態1または実施形態2の方法。
【0028】
実施形態4
上記反応混合物が、フッ化物イオンの供給源をも含む、上記の先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0029】
実施形態5
上記反応混合物が、9以下、例えば約5〜約9のpHを有する、上記の先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0030】
実施形態6
上記反応混合物が、上記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物の合成を導くために有効な有機指向剤をさらに含む、上記の先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0031】
実施形態7
上記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物が、CHAフレームワークを有し、上記種結晶が、構造単位として、2つの6員環を有するシリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含む、上記の先行する実施形態のいずれか1つの方法。
【0032】
実施形態8
上記種結晶が、ERI、LEV、AFX、CHA、AEIならびにそれらの混合物および連晶からなる群から選択されるフレームワーク型を有するシリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含む、実施形態7の方法。
【0033】
ここで本発明は、以下の非限定的な実施例および添付の図面を参照することによって、より詳細に説明される。
【実施例】
【0034】
実施例1
CHAフレームワーク型を有し、かつ有機構造指向剤として水酸化ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(DMECHA
+OH
−)を使用する高シリカアルミノシリケートゼオライトの合成のために適切な反応混合物を、約58.6グラムのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)および約214グラムのDMECHA
+OH
−の水溶液(約11.4重量%)を混合することによって調製した。この混合物を3日間、室温(約20〜25℃)でシェーカーに配置し、TEOSの完全な加水分解を確実にした。得られた溶液に約6.75グラムのHF溶液(約50重量%)を添加したところ、すぐに沈殿が生じるように見えた。混合物は、約6のpHを有することが確認された。この混合物を、わずかに加熱されたホットプレートに配置し、その重量が約70gに低下するまでエタノールおよび過剰な水を蒸発させて、以下のモル組成が達成された(約1.0シリカ含有量に正規化される):約0.6のHF:約0.5のDMECHA
+OH
−:約0.002のAl
2O
3:SiO
2:約5のH
2O。
【0035】
得られた混合物を、10個のほぼ等しい約7グラムの部分に分割した。第1の約7グラム部分には、種結晶を添加しなかった。混合物を、約23mLテフロン(商標)ラインドパーオートクレーブ内に密封した)。オートクレーブを約4日間、約150℃のオーブンで加熱し、その後、取り出して冷却し、固体生成物を濾過で単離して、脱イオン水で洗浄した。この固体は、結晶質相として、いくらかのチャバサイトおよびゼオライトベータを含有する、主に非晶質生成物であるように見えた。生成物のX線回折パターンを
図1に示す。
【0036】
実施例2
実施例1の反応混合物の残り9個の約7グラム部分のうちの1つに、アルミニウム供給源としてAl(NO
3)
3水性溶液を添加し、過剰量の水を結晶化の前のパーオートクレーブでの密封の前に蒸発させた。混合物は約83のSi/Al比を有した。再び、生成物は主に非晶質のように見え、非常に少量のチャバサイトがX線回折パターンから識別することができる(
図1を参照のこと)。本実施例は、単に非SAPO種結晶供給源からアルミニウムを提供することのみが、実質的なチャバサイト生成物相の形成にもたらすわけではないことを示すために含まれた。
【0037】
実施例3〜7
実施例1の反応混合物の残り8個の約7グラム部分のうちの5個に、それぞれ、下記の表1に記載される約0.5重量%のSAPO種結晶を添加し、個々の混合物を、結晶化の前に完全に混合した。
【0038】
【表1】
【0039】
生成物のX線回折パターンは
図1に示されており、各ケースにおいて、主にCHAフレームワーク型アルミノシリケートから構成される高結晶質生成物を実証するように見えた。リンは生成物で観察されなかった。反応混合物のAlおよびSi含有量、ならびにSi/Al比も表1に記載される。
【0040】
実施例8〜10
実施例1の反応混合物の残り3個の約7グラム部分に、それぞれ、下記の表2に記載される約0.5重量%のSAPO種結晶を添加し、個々の混合物を、結晶化の前に完全に混合した。
【0041】
【表2】
【0042】
生成物のX線回折パターンは
図2に示され、各ケースにおいて、いくらかの少数のチャバサイトおよびゼオライトベータ相が存在する主に非晶質生成物を実証するように見えた。
【0043】
本開示の具体的な実施形態が特に記載されたが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な他の変更形態が当業者には明白であり、かつ当業者は容易に変更を行うことができることは理解されるであろう。したがって、本明細書に添付される請求の範囲が、本明細書に明示される実施例および記載に限定されることは意図されず、請求の範囲は、本開示が関連する技術分野の当業者によってそれらの均等物として扱われ
る全ての特徴を含む、本開示に帰する特許性のある新規性の全ての特徴を包含する。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
アルミノシリケートモレキュラーシーブの製造方法であって、
(a)水と、シリカの供給源と、シリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブの種結晶とを含む反応混合物を結晶化させること、および
(b)フレームワークのリンを実質的に含まないアルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物を回収すること
を含む方法。
(態様2)
前記反応混合物が、少なくとも500wppm、例えば、約1000wppm〜約50000wppm、または約2000wppm〜約25000wppmの前記種結晶を含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記反応混合物が、前記種結晶によって含有されるリンを除いて、リンを実質的に含まない、態様1または2に記載の方法。
(態様4)
前記反応混合物が、フッ化物イオンの供給源をも含む、態様1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(態様5)
前記反応混合物が、9以下、例えば約5〜約9のpHを有する、態様1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(態様6)
前記反応混合物が、前記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物の合成を導くために有効な有機指向剤をさらに含む、態様1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(態様7)
前記アルミノシリケートモレキュラーシーブ生成物が、CHAフレームワークを有し、前記種結晶が、構造単位として、2つの6員環を有するシリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含む、態様1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(態様8)
前記種結晶が、ERI、LEV、AFX、CHA、AEIならびにそれらの混合物および連晶からなる群から選択されるフレームワーク型を有するシリコアルミノホスフェートおよび/またはアルミノホスフェートモレキュラーシーブを含む、態様7に記載の方法。