特許第6267295号(P6267295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6267295
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ゲームプログラムおよびゲームシステム
(51)【国際特許分類】
   G06T 13/40 20110101AFI20180115BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20180115BHJP
   A63F 13/56 20140101ALI20180115BHJP
   A63F 13/577 20140101ALI20180115BHJP
【FI】
   G06T13/40
   G06T19/00 C
   A63F13/56
   A63F13/577
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-160584(P2016-160584)
(22)【出願日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓一
【審査官】 真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−164221(JP,A)
【文献】 特開2002−319036(JP,A)
【文献】 特開2003−044878(JP,A)
【文献】 特開2002−342784(JP,A)
【文献】 森江 康太,アニメーションスタイル vol.25,CG WORLD vol.170,日本,株式会社ワークスコーポレーション,2012年10月 1日,第170巻,P.134-137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 13/00 − 13/80
G06T 19/00
A63F 13/00 − 13/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
3次元のキャラクタが動作する3次元の仮想空間を生成する仮想空間生成手段、および
前記キャラクタに対応して設定される複数の関節を有する関節モデルの各関節の位置および姿勢を決定することにより、前記キャラクタの動作を制御するキャラクタ動作制御手段、として機能させ、
前記キャラクタ動作制御手段は、前記キャラクタの所定の動作中において前記キャラクタの所定部位が所定のオブジェクトまたは地面に当接した状態を維持する当接動作を行う当接動作実行手段を含み、
前記所定部位は、前記キャラクタにおいて連続して配置される少なくとも3つの関節のうちの先端に位置する関節より先に位置する部位であり、
前記当接動作実行手段は、
前記少なくとも3つの関節のうちの所定の第1関節を固定し、他の関節を可動とした状態で、前記他の関節の位置および姿勢を決定する第1の演算を実行する第1演算実行手段と、
前記第1の演算の結果、前記他の関節のうちの所定の第2関節の角度が所定の角度以上となったか否かを判定する角度判定手段と、
前記第2関節の角度が前記所定の角度以上となった場合に、前記第2関節を固定した状態で、前記第1関節を可動とし、前記第1関節および前記他の関節のうちの前記第2関節以外の関節の位置および姿勢を決定する第2の演算を実行する第2演算実行手段と、を含む、ゲームプログラム。
【請求項2】
前記第1関節は、前記少なくとも3つの関節のうちの先端に位置する関節であり、
前記第2関節は、前記第1関節に隣接する関節である、請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記少なくとも3つの関節は、前記キャラクタの脚部の関節である、請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記当接動作実行手段は、前記所定部位における前記所定のオブジェクトまたは地面に当接した箇所を起点にして可動状態にある関節の位置および姿勢を決定する、請求項1から3の何れかに記載のゲームプログラム。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、
前記プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータとを備えた、ゲームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームプログラムおよびゲームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクションゲームまたはロールプレイングゲーム等、ユーザの操作に応じてプレイヤキャラクタを3次元の仮想空間内で動作させるゲームがある。このようなゲームにおいては、敵キャラクタ等の様々なノンプレイヤキャラクタが登場し、プレイヤキャラクタが敵キャラクタを討伐することにより進行するものがある。プレイヤキャラクタおよびノンプレイヤキャラクタの動作は、複数の関節を有する関節モデルの各関節の位置および姿勢(角度)を決定することにより、実現される(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−61420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のゲームにおいて、キャラクタが身体の向きを変えたり、足が地面に付いた状態で体が引っ張り上げられたりするような動作を行う場合に、足を地面から浮かせないようにすることが難しく、不自然に見える場合があった。このような問題は、足と地面との接地だけでなく、キャラクタの手等の所定部位が所定のオブジェクトまたは地面に当接した状態を保持しつつキャラクタを動作させる際に同様に生じ得る。
【0005】
そこで本発明は、キャラクタの動作時にキャラクタの所定部位を所定のオブジェクトまたは地面から浮かせないようにすることができるゲームプログラムおよびゲームシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るゲームプログラムは、コンピュータを、3次元のキャラクタが動作する3次元の仮想空間を生成する仮想空間生成手段、および前記キャラクタに対応して設定される複数の関節を有する関節モデルの各関節の位置および姿勢を決定することにより、前記キャラクタの動作を制御するキャラクタ動作制御手段、として機能させ、前記キャラクタ動作制御手段は、前記キャラクタの所定の動作中において前記キャラクタの所定部位が所定のオブジェクトまたは地面に当接した状態を維持する当接動作を行う当接動作実行手段を含み、前記当接動作実行手段は、前記少なくとも3つの関節のうちの所定の第1関節を固定し、他の関節を可動とした状態で、前記他の関節の位置および姿勢を決定する第1の演算を実行する第1演算実行手段と、前記第1の演算の結果、前記他の関節のうちの所定の第2関節の角度が所定の角度以上となったか否かを判定する角度判定手段と、前記第2関節の角度が前記所定の角度以上となった場合に、前記第2関節を固定した状態で、前記第1関節を可動とし、前記第1関節および前記他の関節のうちの前記第2関節以外の関節の位置および姿勢を決定する第2の演算を実行する第2演算実行手段と、を含む。
【0007】
前記第1関節は、前記少なくとも3つの関節のうちの先端に位置する関節であり、前記第2関節は、前記第1関節に隣接する関節であってもよい。
【0008】
前記少なくとも3つの関節は、前記キャラクタの脚部の関節であってもよい。
【0009】
前記当接動作実行手段は、前記所定部位における前記所定のオブジェクトまたは地面に当接した箇所を起点にして可動状態にある関節の位置および姿勢を決定してもよい。
【0010】
本発明の他の態様に係るゲームシステムは、上記ゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、前記プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータとを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャラクタの動作時にキャラクタの所定部位を所定のオブジェクトまたは地面から浮かせないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態におけるゲーム装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2図1に示すゲーム装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】本実施の形態における関節モデルを例示するための図である。
図4】本実施の形態におけるプレイヤキャラクタの当接動作の具体例を示す図である。
図5】本実施の形態における当接動作実行処理の流れを示すフローチャートである。
図6】比較例におけるプレイヤキャラクタの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るゲームプログラムおよびゲームシステムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
[ゲーム概要]
以下の説明では、家庭用ゲーム装置において実行されるアクションゲームを例として説明する。本実施の形態に係るアクションゲームは、3次元の仮想空間が生成され、ユーザが当該仮想空間内で行動するプレイヤキャラクタを操作して、敵キャラクタを全滅させる、またはゲーム空間内の所定の位置に到達する等といった所定の目標を達成するために、敵キャラクタと戦うことにより進行する。
【0015】
[ハードウェア構成]
上述したゲームを実現するゲーム装置の構成について説明する。本実施の形態におけるゲームシステムは、下記ゲーム装置2と、当該ゲーム装置2に接続されるモニタ(表示部)19、スピーカ22およびコントローラ(操作部)24などの外部装置とで構成され、下記ディスク型記憶媒体30から読み込んだゲームプログラム30aおよびゲームデータ30bに基づいてゲームを行い得るものである。ただし、以下では、説明を簡単にするため、単にゲーム装置2と称する場合がある。
【0016】
図1は、本実施の形態におけるゲーム装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、ゲーム装置2は、他のゲーム装置2およびサーバ装置3との間で、インターネットまたはLANなどの通信ネットワークNWを介して互いに通信可能である。このゲーム装置2は、その動作を制御するコンピュータであるCPU10を備え、このCPU10にはバス11を介してディスクドライブ12、メモリカードスロット13、プログラム記憶部を成すHDD14、ROM15およびRAM16が接続されている。
【0017】
また、CPU10には、バス11を介してグラフィック処理部17、オーディオ合成部20、無線通信制御部23およびネットワークインタフェース25が接続されている。
【0018】
このうちグラフィック処理部17は、CPU10の指示にしたがってゲーム空間および各キャラクタなどを含むゲーム画像を描画する。また、グラフィック処理部17にはビデオ変換部18を介して外部のモニタ19が接続されており、グラフィック処理部17にて描画されたゲーム画像はビデオ変換部18において動画形式に変換され、モニタ19にて表示されるようになっている。
【0019】
オーディオ合成部20は、CPU10の指示に従ってデジタルのゲーム音声を再生および合成する。また、オーディオ合成部20にはオーディオ変換部21を介して外部のスピーカ22が接続されている。したがって、オーディオ合成部20にて再生および合成されたゲーム音声は、オーディオ変換部21にてアナログ形式にデコードされ、さらにスピーカ22から外部へ出力されるようになっている。
【0020】
さらに、オーディオ合成部20は、ゲーム装置2に接続されるヘッドセットやコントローラ24等に設けられたマイク26から入力されるユーザの音声等がオーディオ変換部21にてデジタル形式にコードされたデータを取得可能である。オーディオ合成部20は、取得したデータをCPU10に入力情報として伝えることができる。
【0021】
無線通信制御部23は、2.4GHz帯の無線通信モジュールを有し、ゲーム装置2に付属するコントローラ24との間で無線により接続され、データの送受信が可能となっている。ユーザは、このコントローラ24に設けられたボタン等の操作子(後述)を操作することにより、ゲーム装置2へ信号を入力することができ、モニタ19に表示されるプレイヤキャラクタの動作を制御可能になっている。また、ネットワークインタフェース25は、インターネットまたはLANなどの通信ネットワークNWに対してゲーム装置2を接続するものであり、他のゲーム装置2またはサーバ装置3との間で通信可能である。そして、ゲーム装置2を、通信ネットワークNWを介して他のゲーム装置2と接続し、互いにデータを送受信することにより、同一のゲーム空間内で同期して複数のプレイヤキャラクタを表示させることができる。これにより、本ゲームにおいては、複数のユーザに対応する複数のプレイヤキャラクタが協同して敵キャラクタと戦う、または複数のユーザ同士が敵対して対戦する、マルチプレイが可能である。
【0022】
[ゲーム装置の機能的構成]
図2は、図1に示すゲーム装置2の機能的な構成を示すブロック図である。図1に示すようにゲーム装置2は、CPU10、HDD14、ROM15、RAM16、グラフィック処理部17、ビデオ変換部18、オーディオ合成部20、オーディオ変換部21、ネットワークインタフェース25などを含む制御部4を備えたコンピュータとして動作する。そして、図2に示すように、ゲーム装置2の制御部4は、本発明のゲームプログラム30aを実行することで、仮想空間生成手段41、オブジェクト配置手段42、および、キャラクタ動作制御手段43等の機能を発揮する。キャラクタ動作制御手段43は、当接動作実行手段44を含む。さらに、当接動作実行手段44は、第1演算実行手段45、角度判定手段46、および、第2演算実行手段47を含む。
【0023】
このうち、仮想空間生成手段41は、3次元の仮想空間を生成する。当該仮想空間が、ユーザが操作するプレイヤキャラクタが行動するゲーム空間となる。また、オブジェクト配置手段42は、仮想空間に種々のオブジェクトを配置する。例えば、オブジェクト配置手段42は、プレイヤキャラクタの移動に伴って、ゲームデータ30bに含まれるオブジェクト等のデータを読み出し、仮想空間に配置する。オブジェクト配置手段42は、プレイヤキャラクタおよび敵キャラクタ等のノンプレイヤキャラクタも仮想空間に配置する。
【0024】
キャラクタ動作制御手段43は、キャラクタに対応して設定される複数の関節を有する関節モデルの各関節の位置および姿勢を決定することにより、キャラクタの動作を制御する。キャラクタ動作制御手段43は、例えば、ユーザによるコントローラ24の操作に応じて、プレイヤキャラクタの各種動作を制御する。さらに、キャラクタ動作制御手段43は、例えば、敵キャラクタおよび敵キャラクタでないノンプレイヤキャラクタ(味方となって一緒に敵キャラクタを攻撃するキャラクタや味方でも敵でもない村人などのキャラクタ等)の動作も制御する。
【0025】
図3は、本実施の形態における関節モデルを例示するための図である。図3には、プレイヤキャラクタPが例示されている。図3に示されるプレイヤキャラクタPは人間を模したキャラクタとして構成されている。すなわち、プレイヤキャラクタPは、頭部100、首部101、胸部102、腰部103、腕部104、脚部105等を有する複数の部位で構成される。関節モデルMは、これらの部位のそれぞれに対応付けられた複数の関節J(J0,J1〜J3を含む)と、所定の2つの関節J−J間を接続する骨Bとを有している。プレイヤキャラクタPの各部位の体表面は多数のポリゴンの組み合わせで構成されており、各ポリゴンの頂点は1または複数の関節Jに関連付けられている。プレイヤキャラクタPの動作は、関節Jを移動させる(位置を変える)および/または所定角度回転させる(姿勢を変える)ことで行われる。関節Jの位置または姿勢の変化に応じて、その関節Jに関連付けられているポリゴンが連動して変形し、プレイヤキャラクタPの様々な動作が実現される。
【0026】
通常、キャラクタ動作制御手段43は、所定のモーションデータに基づいて身体の中心部に位置する関節(図3の例では腰関節J0)を起点にして動作を生成する。後述する第1の演算の結果に基づいた当接動作は、腰関節J0を起点にして生成される。具体的には、キャラクタ動作制御手段43は、所定の部位を移動させる動作(例えば足部Fを地面に接地した状態を維持しながら腰部103をひねる動作等)を行う際、まず、腰関節J0の位置および姿勢を決定し、次に当該関節J0に骨Bを介して接続されている関節、すなわち、胸部102の関節および脚部105の関節J3,J2,J1の位置および姿勢を決定する。その後、胸部102の関節Jに骨Bを介して接続されている腕部104の関節の位置および姿勢を決定する。
【0027】
すなわち、キャラクタ動作制御手段43は、プレイヤキャラクタPの中央部の部位(基端側部位)の関節(親関節)から順に先端側部位の関節(子関節)の位置および姿勢を決定することによって、プレイヤキャラクタPの全身の動きを決定する。例えば、キャラクタ動作制御手段43は、フォワードキネマティクス(FK)に基づいて各関節Jの位置および姿勢を決定する。
【0028】
なお、本実施の形態および特許請求の範囲において、「関節の位置および姿勢を決定する」とは、関節の座標と関節の所定位置からの角度とを変更可能なパラメータとして有するという意味であり、動作の前後において、関節の位置および姿勢のうちの何れかが変化しない状態も含まれ得る。
【0029】
さらに、キャラクタ動作制御手段43は、プレイヤキャラクタPの先端側部位(例えば手、足等)の関節から順に中央部の部位の関節の位置および姿勢を決定することによって、プレイヤキャラクタPの全身の動きを決定することもできる。例えば、キャラクタ動作制御手段43は、インバースキネマティクス(IK)に基づいて各関節Jの位置および姿勢が決定され得る。すなわち、IKの場合、親関節と子関節との関係がFKと逆になる。
【0030】
さらに、関節モデルMは、プレイヤキャラクタPを移動制御するための基準位置JNを含んでいる。基準位置JNは、プレイヤキャラクタPの移動方向を定めるように構成されている。例えば、基準位置JNにおいて、移動平面の法線に垂直な方向(移動平面に沿った方向)にプレイヤキャラクタPの移動方向が設定されている。基準位置JNは、その位置が関節モデルMの各関節Jと対応付けられている。一般的に、基準位置JNは、NULLパーツ等と呼称される。本実施の形態において、基準位置JNは、プレイヤキャラクタPが水平面上において立ち姿勢または移動姿勢にあるときに腰関節J0の直下かつ移動平面に接する位置に設定されている。基準位置JNは、プレイヤキャラクタPの位置座標の基準となる。例えば、プレイヤキャラクタPの位置座標は、基準位置JNに一致する。なお、基準位置JNは、ゲーム画面上には表示されない。
【0031】
[キャラクタ動作制御の具体例]
図4は、本実施の形態におけるプレイヤキャラクタの当接動作の具体例を示す図である。また、図6は、比較例におけるプレイヤキャラクタの動作例を示す図である。図4および図6においては、足部が地面Qに接地した状態を維持しながら腰部103をひねる動作により、腰関節J0が上方へ移動した場合の脚部105の動作が示されている。なお、図4および図6には、腰関節J0および一方の脚部105の各関節J1〜J3と、これらを繋ぐ骨B0〜B3とのみを示している。図4および図6においては、左側の図が動作前を示し、右側の図が動作後を示している。
【0032】
まず、図6の比較例において、足部Fが地面Qに接した状態で上体(図示せず)のひねり動作により腰関節J0の位置が地面Qに対して離れる方向(腰関節位置J0’)に移動した場合、足部Fが地面Qから離れないように膝関節J2および股関節J3の位置および姿勢が演算される。従来、足部Fの当接箇所Tを起点にしてIKにより脚部105の各関節の位置および姿勢を決定する際には、多数の解が生じるのを避けるため、足首関節J1を固定して膝関節J2および股関節J3の位置および姿勢が演算される。すなわち、各関節の位置および姿勢を決定する際、膝関節J2および股関節J3は可動に設定され、足首関節J1は固定に設定されている。(図6において、可動に設定された関節における角度を両端に矢印を付した円弧として表示し、固定に設定された関節の角度を二重の円弧として表示している(図4においても同様)。
【0033】
この場合、地面Qと腰関節J0との間の距離が所定の長さ以上になると、両関節J2,J3が伸びきった状態でも、足部Fが地面Qから離れてしまい、隙間Xが生じてしまう。また、隙間Xが生じない場合であっても、両関節J2,J3が必要以上に伸びた状態はプレイヤキャラクタPの動きとしては不自然である。
【0034】
そこで、本実施の形態において、当接動作実行手段44は、第1演算実行手段45、角度判定手段46および第2演算実行手段47の各機能を実行する。
【0035】
図5は、本実施の形態における当接動作実行処理の流れを示すフローチャートである。まず、角度判定手段46は、脚部105を構成する3つの関節J1〜J3のうちの先端に位置する第1関節である足首関節J1の角度(足首関節J1に接続される骨B1,B2のなす角度)θ1が所定の角度θ1th以上であるか否か判定する(ステップS1)。
【0036】
足首関節J1の角度θ1が所定の角度θ1th未満である場合(ステップS1でNo)、第1演算実行手段45は、足首関節J1を固定し、3つの関節J1〜J3のうちの他の関節J2,J3を可動に設定する(ステップS2)。さらに、第1演算実行手段45は、当該関節J2,J3の位置および姿勢を決定する第1の演算を実行する(ステップS3)。第1の演算は、足部Fにおける地面Qへの当接箇所を起点にして可動状態にある膝関節J2および股関節J3の位置および姿勢を決定する。すなわち、第1演算実行手段45は、IKに基づいて膝関節J2および股関節J3の位置および姿勢を決定する。
【0037】
ここで、第1の演算の結果、角度判定手段46は、足首関節J1に隣接する(基端側に位置する)第2関節である膝関節J2の角度(膝関節J2に接続される骨B2,B3のなす角度)θ2が所定の角度θ2th以上であるか否か判定する(ステップS4)。
【0038】
膝関節J2の角度θ2が所定の角度θ2th以上である場合(ステップS4でYes)、第2演算実行手段47は、膝関節J2を固定し、足首関節J1および股関節J3を可動に設定する(ステップS5)。さらに、第2演算実行手段47は、足首関節J1および股関節J3の位置および姿勢を決定する第2の演算を実行する(ステップS6)。第2の演算は、第1の演算と同様に、足部Fにおける地面Qへの当接箇所Tを起点にして可動状態にある足首関節J1および股関節J3の位置および姿勢を決定する。すなわち、第2演算実行手段47は、IKに基づいて足首関節J1および股関節J3の位置および姿勢を決定する。
【0039】
当接動作実行手段44は、第1の演算の結果において膝関節J2の角度θ2が所定の角度θ2th以上である場合は、第2の演算の結果に基づいて脚部105の当接動作を実行する(ステップS7)。また、当接動作実行手段44は、第1の演算の結果において膝関節J2の角度θ2が所定の角度θ2th未満である場合(ステップS4でNo)、第1の演算の結果に基づいて脚部105の当接動作を実行する(ステップS7)。一旦、第2の演算の結果に基づいて脚部105の当接動作を実行した後は、足首関節J1の角度θ1が所定の角度θ1th未満となるまで、第2の演算が継続的に行われ、足首関節J1の角度θ1が所定の角度θ1th以上となった場合は、再度第1の演算が行われる。これを実現するためにステップS1の判定処理が行われる。
【0040】
なお、第2の演算において、足首関節J1の角度θ1が最大角度θ1M(>θ1th)以上となる場合、前記第2演算実行手段47は、足部Fにおける地面Qへの当接箇所Tを起点とする足首関節J1および股関節J3の位置および姿勢の決定を中止し、足部Fを地面Qから浮かせる動作として例えばFKに基づいて各関節の位置および姿勢を決定してもよい。プレイヤキャラクタPが過度に爪先立ちになる状態が不自然となる動作等において、プレイヤキャラクタPが爪先立ちになることを防止することができる。
【0041】
以上のような態様によれば、プレイヤキャラクタPが身体をひねるような動作等において腰関節J0が引っ張り上げられるような状態となっても、膝関節J2が適度に曲がった状態を維持しつつ足部Fが地面Qに当接した状態を維持することができる。したがって、足部Fが地面Qに当接した状態を維持する動作をより自然に表現することができる。また、当接箇所Tを起点にして脚部105の可動状態にある各関節の位置および姿勢が決定される。これにより、腰関節J0の変化の方向および程度に拘わらず脚部105の各関節の位置および姿勢を予め個別に設定しておく必要がない。したがって、プレイヤキャラクタPの様々な動作に対して足部Fが地面Qに当接した状態を維持させることを、データ量の増大を抑制しつつ容易に実現することができる。
【0042】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0043】
例えば、上記実施の形態においては、プレイヤキャラクタPにおける当接動作について説明したが、敵キャラクタ等のノンプレイヤキャラクタにおける当接動作に適用することも可能である。
【0044】
また、上記実施の形態において、第1の演算において固定する第1関節は、足首関節J1としたが、第1関節は、足首関節J1以外の関節(連続する3つの関節のうちの先端に位置する関節以外の関節)でもよい。また、上記実施の形態において、第2の演算において固定する第2関節は、膝関節J2としたが、第2関節は、膝関節J2以外の関節でもよい。例えば、第1関節を膝関節J2とし、第2関節を足首関節J1としてもよい。また、角度判定手段46が角度を判定する関節は、複数であってもよい。例えば、角度判定手段46は、膝関節J2および股関節J3の角度θ2,θ3が所定の角度θ2th,θ3th以上であるか否かをそれぞれ判定し、少なくとも何れか一方が所定の角度以上であれば対応する関節を固定してもよい。
【0045】
また、キャラクタの足がキャラクタの装備品(例えば竹馬、歩行ロボット)等を介して間接的に地面に当接する場合にも適用可能である。
【0046】
また、上記実施の形態においては、脚部105の足部Fが地面Qに当接する状態を維持する当接動作について説明したが、これに限られない。例えば、キャラクタが逆立ちしている場合等、腕部104の手が地面Qに当接する状態を維持する当接動作にも上記実施の形態における当接動作実行処理を適用可能である。また、例えば、壁等のオブジェクトに腕部104の手等の部位が当接する状態を維持する当接動作にも上記実施の形態における当接動作実行処理を適用可能である。これらの場合、第1関節は手首関節、第2関節は肘関節、第3関節は肩関節となる。また、4足歩行の動物の移動動作について、当該動物の四肢の動作に対して上記実施の形態における当接動作実行処理が行われてもよい。この場合、第1関節は手首関節および足首関節、第2関節は肘関節および膝関節、第3関節は肩関節および股関節となる。
【0047】
上記実施の形態において、関節モデルMに含まれる複数の関節Jは人間の関節を模したものでもよいし、モンスター等、より多い関節またはより少ない関節を有していてもよい。すなわち、上記動作が適用できるキャラクタは、人間のキャラクタだけでなく、様々なモンスター等も含まれる。
【0048】
また、上記実施の形態においては、アクションゲームを例示したが、3次元のキャラクタについての上記動作態様は、ロールプレイングゲーム、シミュレーションゲームまたはシューティングゲーム等、3次元の仮想空間を用いる種々のゲームに適用可能である。
【0049】
また、上記実施の形態では据え置き型のゲーム装置について説明したが、携帯型のゲーム装置、携帯電話機、およびパーソナルコンピュータなどのコンピュータについても、本発明を好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、キャラクタの動作時にキャラクタの所定部位を所定のオブジェクトまたは地面から浮かせないようにするために有用である。
【符号の説明】
【0051】
2 ゲーム装置
30a ゲームプログラム
30b ゲームデータ
41 仮想空間生成手段
43 キャラクタ動作制御手段
44 当接動作実行手段
45 第1演算実行手段
46 角度判定手段
47 第2演算実行手段
J 関節
J0 腰関節
J1 足首関節
J2 膝関節
J3 股関節
M 関節モデル
P プレイヤキャラクタ
Q 地面
T 当接箇所
【要約】
【課題】 キャラクタの動作時にキャラクタの所定部位を所定のオブジェクトまたは地面から浮かせないようにすることができるゲームプログラムおよびゲームシステムを提供する。
【解決手段】 コンピュータを、仮想空間生成手段、およびキャラクタ動作制御手段、として機能させ、キャラクタ動作制御手段は、キャラクタの所定部位が所定のオブジェクトまたは地面に当接した状態を維持する当接動作を行う当接動作実行手段を含み、当接動作実行手段は、少なくとも3つの関節のうちの所定の第1関節を固定し、他の関節を可動とした状態で、他の関節の位置および姿勢を決定する第1の演算を実行し、他の関節のうちの所定の第2関節の角度が所定の角度以上となったか否かを判定し、第2関節の角度が所定の角度以上となった場合に、第2関節を固定した状態で、第1関節を可動とし、第1関節および他の関節のうちの第2関節以外の関節の位置および姿勢を決定する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6