(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開閉体が閉鎖側へ作動開始後、所定時間を経過するまで又は所定距離を移動するまでの間のみ、前記挟み込み防止作動が制約されることを特徴とする請求項2に記載の開閉体制御装置。
前記所定の条件は、前記操作スイッチによる前記閉鎖側への駆動の指示が停止されたとき、前記閉鎖側への前記開閉体の連続駆動作動が制約された後、予め定められた時間が経過したとき、又は、前記閉鎖側への前記開閉体の連続駆動作動が制約された後における前記開閉体の前記閉鎖側への移動距離が、予め定められた距離に達したときであることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の開閉体制御装置。
開閉体を開閉駆動する駆動モータと、該駆動モータに、前記開閉体の開放側又は閉鎖側への駆動を指示する駆動信号を出力する操作スイッチと、前記駆動モータの作動を制御する制御手段と、前記駆動モータによって開閉駆動される前記開閉体の作動状態に応じた作動状態検出信号を出力する作動状態検出手段と、前記作動状態検出信号に基づいて前記開閉体への異物の巻き込みを検出する巻き込み検出手段と、前記作動状態検出信号に基づいて前記開閉体への異物の挟み込みを検出する挟み込み検出手段と、を備え、操作スイッチを操作している間駆動されるか、前記操作スイッチを所定位置まで操作することで前記操作スイッチを離しても連続駆動される開閉体へ、異物が挟み込みされた場合に挟み込みを解除する開閉体の制御方法であって、
前記制御手段は、前記開閉体の開放動作中に、前記巻き込み検出手段が、前記異物の巻き込みを検出した場合に、前記異物の巻き込みの進行を止めるよう前記駆動モータへの電力供給を制限する第一ステップと、
前記電力供給の制限後に、前記閉鎖側への前記開閉体の駆動を指示する前記操作スイッチからの前記駆動信号を受けた場合に、所定の作動が制約された状態で、前記開閉体を閉鎖側へ駆動するよう前記駆動モータへ電力を供給した後、所定の条件で、前記制約を解除するか前記巻き込みの前記検出の有無の監視を行う第二ステップと、を備えたことを特徴とする開閉体の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する構成、手順等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1〜
図9は本発明の実施形態に係るものであり、
図1は開閉体制御装置の説明図、
図2は
図1の開閉体制御装置の電気構成図、
図3は
図1のIII−IIIによる断面説明図、
図4は巻き込み判定処理の説明図、
図5は巻き込み判定の処理フロー図、
図6は、巻き込み解除モードの処理の処理フロー図、
図7は、他の実施形態に係る巻き込み解除モードの処理の処理フロー図、
図8は、更に他の実施形態に係る巻き込み解除モードの処理の処理フロー図、
図9は、更に他の実施形態に係る巻き込み解除モードの処理の処理フロー図である。
【0021】
以下に、本発明の開閉体制御装置としてのパワーウインドウ装置の一実施形態について説明する。
図1に本実施形態のパワーウインドウ装置1(以下、「装置1」という)の説明図、
図2にその電気構成図、
図3に
図1のIII−IIIによる断面説明図を示す。本実施形態の装置1は、車両のドア10に配設される窓ガラス(開閉体)11を、駆動手段2の一部を構成するモータ20の回転駆動により昇降(開閉)作動させるものである。装置1は、窓ガラス11を開閉駆動する駆動手段2と、駆動手段2の作動を制御するための制御手段3と、乗員が作動を指令するための操作スイッチ4とを主要構成要素としている。
【0022】
ドア10は、その下側部位の車両外部側(車幅方向外側)に配設されたアウタパネル15と車室側(車幅方向内側)に配設されたインナパネル16の間に、下降した窓ガラス11を収納する収納空間を有している。また、ドア10の上部には窓枠(ガラス枠)12が設けられており、窓ガラス11は、上記収納空間内から窓枠12の下枠部分を越えて窓枠12内に出現し、昇降作動する。
【0023】
窓枠12の下枠部分には、シール部材としてのベルトモール(ベルトモールディング)13,14が装着されている。ベルトモールはアウタモール13とインナモール14からなり、アウタモール13はアウタパネル15の上部に固定され、インナモール14はインナパネル16の上部に固定されている。
【0024】
窓ガラス11は、アウタモール13とインナモール14との隙間を通過して窓枠12内を昇降作動する。アウタモール13とインナモール14には、それぞれ窓ガラス11側に突出するシール突起13a,13b,14a,14bが形成されており、このシール突起13a,13b,14a,14bが窓ガラス11のガラス表面に弾性的に圧接するようになっている。
【0025】
また、窓枠12の上枠部分には、同様にシール部材として不図示のウェザストリップ(アッパーモールディング)が装着されている。ウェザストリップは、その下端部分に下方に開口した溝が形成されている。この溝は窓ガラス11の上端を所定の長さ分だけ挿入可能に形成されており、その溝内壁には、挿入された窓ガラス11の上端部分のガラス表面が弾性的に圧接するようになっている。
【0026】
本実施形態では、窓ガラス11は不図示のレールに沿って上方の全閉位置(上端)X1と下方の全開位置(下端)X2との間で昇降動作する。
本実施形態の駆動手段2は、ドア10に固定された減速機構を有するモータ20と、モータ20に駆動される扇形状のギヤ21aを備えた昇降アーム21と、昇降アーム21とクロスして枢支される従動アーム22と、ドア10に固定された固定チャンネル23及び窓ガラス11と一体のガラス側チャンネル24とを主要構成要素としている。昇降アーム21,従動アーム22,固定チャンネル23及びガラス側チャンネル24により、駆動手段2の駆動機構が構成されている。
【0027】
本実施形態のモータ20は、制御手段3から電力供給を受けることにより、回転子の巻線に通電され、これにより回転子とマグネットを有する固定子との間で磁気吸引作用が生じて回転子が正逆回転するように構成されている。本実施形態の駆動手段2では、モータ20の回動に応じて昇降アーム21及び従動アーム22が揺動すると、これらの各端部がチャンネル23,24により摺動規制を受け、Xリンクとして駆動し、窓ガラス11を昇降作動させる。
【0028】
本実施形態のモータ20には、作業状態検出手段としての回転検出装置27が一体に備えられている。回転検出装置27は、モータ20の回転と同期したパルス信号(作動状態検出信号)を制御手段3へ出力するものである。本実施形態の回転検出装置27は、モータ20の出力軸と共に回動するマグネットの磁気変化を複数のホール素子で検出するように構成されている。このような構成により、回転検出装置27は、モータ20の回転に同期したパルス信号を出力する。すなわち、パルス信号は、窓ガラス11の所定移動量毎もしくはモータ20の所定回転角毎に出力される。これにより、回転検出装置27は、モータ20の回転速度に略比例する窓ガラス11の作動状態の一例である移動に応じた信号を出力可能である。そして、回転検出装置27からのパルス信号から、制御手段3がパルスエッジをカウントし、パルスカウント値より窓ガラス11の位置を検出している。本実施形態では、回転検出装置27と制御手段3によって作動状態検出手段が構成されている。
【0029】
なお、本実施形態では、回転検出装置27にホール素子を用いたものを採用しているが、これに限らず、モータ20の回転を検出することができれば、エンコーダを採用してもよい。また、本実施形態では、窓ガラス11の移動に応じたモータ20の出力軸の回転を検出するために、モータ20に回転検出装置27を一体に設けているが、これに限らず、公知の手段によって窓ガラス11の位置を直接的に検出するようにしてもよい。
【0030】
本実施形態の制御手段3は、コントローラ31と、駆動回路32から構成されている。コントローラ31,駆動回路32には、車両に搭載されるバッテリ5から作動に必要な電力が供給される。
本実施形態のコントローラ31は、CPU,ROM,RAM等のメモリ、入力回路、出力回路等を備えるマイクロコンピュータで構成されている。CPUは、メモリ、入力回路及び出力回路とバスを介して互いに接続されている。なお、これに限らず、コントローラ31をDSPやゲートアレイで構成してもよい。
【0031】
コントローラ31は、通常時、操作スイッチ4からの操作信号に基づいて駆動回路32を介してモータ20を正逆回転させて、窓ガラス11を開閉動作させる。また、コントローラ31は、回転検出装置27から受け取ったパルス信号に基づいて窓ガラス11の位置を検出し、窓ガラス11の検出位置に応じて駆動回路32を介してモータ20へ供給する駆動電力の大きさを調整する。具体的には、駆動電圧の大きさまたはPWM制御する場合はデューティー比の大きさを調整する。これによりモータ出力を調整している。
【0032】
本実施形態の駆動回路32は、FETを有するICによって構成されており、コントローラ31からの入力信号に基づいて、モータ20への電力供給の極性を切換えている。すなわち、駆動回路32は、コントローラ31から正回転指令信号を受けたときは、モータ20を正回転方向に回転させるようにモータ20へ電力を供給し、コントローラ31から逆回転指令信号を受けたときは、モータ20を逆回転方向に回転させるようにモータ20へ電力を供給する。また、コントローラ31から回転停止指令信号を受けたときは、モータ20への電力供給を停止する。なお、駆動回路32は、リレー回路を用いて極性を切換えるように構成してもよい。また、駆動回路32がコントローラ31内に組み込まれた構成であってもよい。
【0033】
コントローラ31は、入力されるパルス信号からパルス信号の立上がり部,立下がり部(パルスエッジ)を検出し、このパルスエッジの間隔(周期)に基づいてモータ20の回転速度(回転周期)を算出すると共に、各パルス信号の位相差に基づいてモータ20の回転方向を検出する。つまり、コントローラ31は、モータ20の回転速度(回転周期)に基づいて窓ガラス11の移動速度を間接的に算出し、モータ20の回転方向に基づいて窓ガラス11の移動方向を特定している。また、コントローラ31は、パルスエッジをカウントしている。このパルスカウント値は、窓ガラス11の開閉動作に伴って加減算される。コントローラ31は、このパルスカウント値の大きさによって窓ガラス11の開閉位置を特定する。
【0034】
すなわち、本実施形態では、全閉位置X1を基準位置として窓ガラス11を駆動することができる。全閉位置X1を基準位置とする場合には、全閉位置X1でパルスカウント値が「0」となるように設定される。そして、このように基準位置でパルスカウント値が「0」となるように設定した後、作動領域(作動区間)の一端側、例えば全開位置X2方向へ窓ガラス11が移動しているときはパルス信号を受け取る毎にパルスカウント値を1インクリメントし、作動領域の他端側すなわち全閉位置X1方向へ窓ガラス11が移動しているときはパルス信号を受け取る毎にパルスカウント値を1デクリメントする。
なお、全開位置X2を基準位置として窓ガラス11を駆動してもよい。この場合には、全開位置X2でパルスカウント値が「0」となるように設定されると共に、全閉位置X1方向へ窓ガラス11が移動しているときにパルスカウント値がインクリメントされ、全開位置X2方向へ窓ガラス11が移動しているときにパルスカウント値がデクリメントされるようにすればよい。
【0035】
本実施形態の操作スイッチ4は、2段階操作可能な揺動型スイッチ等で構成され、開スイッチ,閉スイッチ及びオートスイッチを有している。この操作スイッチ4を乗員が操作することにより、コントローラ31へ窓ガラス11を開閉動作させるための指令信号が出力される。
具体的には、操作スイッチ4は、一端側へ1段階操作されると開スイッチがオンされ、窓ガラス11を通常開動作(すなわち操作している間だけ開動作)させ、開放方向へ作動させるための通常開指令信号をコントローラ31へ出力する。また、操作スイッチ4は、他端側へ1段階操作されると閉スイッチがオンされ、窓ガラス11を通常閉動作(すなわち操作している間だけ閉動作)させるための通常閉指令信号をコントローラ31へ出力する。
【0036】
また、操作スイッチ4は、一端側へ2段階操作されると開スイッチ及びオートスイッチが共にオンされ、窓ガラス11をオート開動作(すなわち操作を止めても全開位置X2の直前位置まで開動作)させ、開放方向へ作動させるためのオート開指令信号をコントローラ31へ出力する。また、操作スイッチ4は、他端側へ2段階操作されると閉スイッチ及びオートスイッチが共にオンされ、窓ガラス11をオート閉動作(すなわち操作を止めても全閉位置X1の直前位置まで閉動作)させるためのオート閉指令信号をコントローラ31へ出力する。
【0037】
コントローラ31は、操作スイッチ4から通常開指令信号を受けている間中(操作スイッチ4が操作されている間中)、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を通常開動作させる。一方、コントローラ31は、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けている間中(操作スイッチ4が操作されている間中)、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を通常閉動作させる。
また、コントローラ31は、操作スイッチ4からオート開指令信号を受けると、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を全開位置X2の直前位置までオート開動作させる。一方、コントローラ31は、操作スイッチ4からオート閉指令信号を受けると、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を全閉位置X1の直前位置までオート閉動作させる。
【0038】
コントローラ31は、窓ガラス11を閉作動(通常閉作動及びオート閉作動)させているとき、窓ガラス11による挟み込みの有無を監視している。すなわち、挟み込みが生じると、窓ガラス11の移動速度(上昇速度)およびこれに関連してモータ20の回転速度が低下する(回転周期が長くなる)。このため本実施形態のコントローラ31は、モータ20の回転速度の変動を常時監視している。
本実施形態のコントローラ31では、このモータ20の回転速度(すなわち窓ガラス11の上昇速度)の変動に基づいて、まず挟み込みの開始を検出し、次いで挟み込みの開始が検出されてから回転速度が所定量変動したことを検出した場合に、挟み込みと判定(確定)する。
【0039】
そして、挟み込みを確定した場合には、コントローラ31は、挟み込み防止機能による制御をおこなう。すなわち、窓ガラス11にて挟持された異物を解放すべくモータ20を反転させ、窓ガラス11を所定量だけ開動作させる挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)制御を行う。なお、挟み込みと判定した場合に、モータ20の作動を停止して窓ガラス11のそれ以上の閉動作を停止させて、窓ガラス11にて挟持した異物を解放可能とするように制御してもよい。
【0040】
本実施形態におけるコントローラ31は、窓ガラス11を開作動(通常開作動及びオート開作動)させているとき、窓ガラス11による巻き込みの有無を監視している。すなわち、巻き込みが生じると、窓ガラス11の移動速度(下降速度)およびこれに関連してモータ20の回転速度が低下する(回転周期が長くなる)。このため本実施形態のコントローラ31は、モータ20の回転速度の変動を常時監視している。
本実施形態のコントローラ31では、このモータ20の回転速度(すなわち窓ガラス11の下降速度)の変動に基づいて、窓ガラス11とベルトモール13,14の間で、まず巻き込みの開始を検出し、次いで巻き込みの開始が検出されてから回転速度が所定量変動したことを検出した場合に、巻き込みと判定(確定)する。
【0041】
そして、巻き込みを確定した場合には、コントローラ31は、窓ガラス11とベルトモール13,14との間に巻き込まれた異物を解放すべく、すなわち巻き込みの進行を止める作動をするために、モータ20への電力の供給を制御してモータ20の作動を停止させ、窓ガラス11の開動作(下降)を停止させる(巻き込み進行停止処理)。
巻き込みを検出(確定)したときに単純にモータ20の作動を反転させて窓ガラス11を上昇させると、窓ガラス11と窓枠12の上部との間の挟み込みが発生する可能性がある。そこで、乗員に、状況を確認しながら巻き込みを解除させる。
本実施形態では、巻き込み防止機能が働いた場合はその状態を記憶し、次の作動で操作スイッチ4による閉作動要求があった場合は、以下の制御を単独または組み合わせで実施することにより巻き込みが発生した後の閉作動時に再度巻き込まれることを防止する。
単独または組み合わせで実施する制御としては、(1)挟み込み防止機能の無効化、(2)オートスイッチによるオート閉動作の禁止、(3)挟み込み検知後の開作動による挟み込み解除機能の禁止、(4)閉鎖側作動時間の制限、(5)閉鎖側作動量の制限である。
なお、上述したように、コントローラ31は、パルスカウント値の大きさによって窓ガラス11の位置を特定する。
【0042】
次に、
図4に基づいて、本実施形態の装置1における巻き込み判定の概略処理について説明する。本実施形態のパワーウインドウ装置1では、コントローラ31は、回転検出装置27から受け取るパルス信号に基づいて、モータ20の回転速度ωを算出し、算出した回転速度ωをRAMに記憶させる。
図4(A)は、このようにして算出された回転速度ωの変動状況を表している。
図4(A)の縦軸はモータ回転速度,横軸はパルスカウント数に対応する。
図4(A)の例は、モータ20の回転速度ωが巻き込みにより途中から減速している状況である。データ線A1は、硬いものを巻き込んで回転速度ωが大きな減速率で低下している状況を示しており、データ線B1は、軟らかいものを巻き込んで回転速度ωが小さな減速率で低下している状況を示している。なお、
図4(B),(C)では、データ線A2,A3が硬いものを巻き込んだ場合に対応しており、データ線B2,B3が軟らかいものを巻き込んだ場合に対応している。
【0043】
そして、本実施形態の装置1では、移動速度変動値演算を不図示のCPUで行うが、この回転速度ωのデータに基づいて、現在の回転速度ωと数パルスエッジ前の回転速度ωとの差である回転速度差Δωを算出する。すなわち、数パルスエッジ前の回転速度ωに対する現在の回転速度ωの変動値を算出する。回転速度差Δωは、回転速度(移動速度)の変化率に相当する(もしくは、数パルスエッジ前からの回転速度の変化量または変化分に相当する)。
図4(B)は、この回転速度差Δωの変動状況を表している。なお、
図4(A)では、データ線A1の方がデータ線B1と比べて、回転速度差Δωの絶対値が大きくなっていることが分かる。
【0044】
そして、まず、巻き込みの開始を検出する巻き込み検出手段としてのコントローラ31は、このようにして算出した回転速度差Δωが変動判定しきい値αを超えたか否かを判定する。この変動判定しきい値αを超えると、巻き込みが開始したと判定される。
図4(B)では、点P1,点P2でそれぞれ巻き込みの開始が検出される。しかし、この時点では、巻き込みが確定したわけではないので、モータ20は回転を継続し、窓ガラス11は下降(開作動)を続ける。この変動判定しきい値αは、装置1が、たとえ軟らかいもの(例えばベルトモールのリップ部分など)を巻き込んだ場合においても、これによって生じる回転速度差Δωがこの値を超えるような大きさに設定される。
【0045】
このようにして、一旦、巻き込みの開始が検出されると、装置1では、巻き込み確定を行うコントローラ31は、この時点からの回転速度差Δωの累積値(すなわち、回転速度ωの変化量)が、巻き込み判定しきい値βを超えたか否かを判別する。そして、回転速度ωの変化量が、巻き込み判定しきい値βを超えた場合に、巻き込みが検出(確定)される。
図4(C)は、回転速度差Δωの累積値の変動状況を表している。コントローラ31は、累積値が巻き込み判定しきい値βを超えた場合に、巻き込みと判定(確定)する。
【0046】
なお、上述のように、巻き込みの開始が検出されてからの回転速度差Δωの累積値(すなわち、回転速度ωの変化量)が、巻き込み判定しきい値βを超えた場合に、巻き込みを検出(確定)するのに換えて、巻き込みの開始が検出されてからの所定期間の回転速度差Δωの累積値、または所定数個分の回転速度差Δωの累積値(すなわち、これらの場合は回転速度ωの変化率)が、巻き込み判定しきい値βを超えた場合に、巻き込みを検出(確定)するように構成してもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態の装置1では、2つのしきい値が設定されているが、一方の変動判定しきい値αは回転速度差Δωに対して設定されており、他方の巻き込み判定しきい値βは回転速度ωの変化量(回転速度差Δωの総和)に対して設定されており、これらは判定対象が異なる。
そして、本実施形態の装置1では、回転速度差Δωが変動判定しきい値αを超えた後の継続時間やパルス信号数等によって実際に巻き込みが発生したと確定されるのではなく、回転速度差Δωが変動判定しきい値αを超えた後の回転速度ωの変動量によって巻き込みが確定される。
【0048】
したがって、本実施形態の装置1では、異物を巻き込んだ場合に、巻き込み荷重が大きくなり過ぎることがないので、巻き込んだ異物に損傷を与えることなく、巻き込みを確定することができる。
また、本実施形態の装置1では、軟らかいものを巻き込んだ場合にでも、回転速度差Δωは、比較的早い段階で変動判定しきい値αを超えるので、その後の変化量が巻き込み判定しきい値βを超えた時点で巻き込みが確定される。この場合、巻き込んだものが、例えばベルトモールのリップ部分などは軟らかいため、回転速度差Δωが小さな値(絶対値としては大きな値)とならないが、一旦、変動判定しきい値αを超えれば、回転速度差Δωの累積が開始されるので、この累積値が巻き込み判定しきい値βを超えた時点で確実に巻き込みを確定することができる。
【0049】
また、中程度の硬さのものを巻き込んだ場合にも、軟らかいものを巻き込んだ場合と同様に、早い段階で回転速度差Δωが変動判定しきい値αを超えて、回転速度差Δωの累積が開始されるので、この値が巻き込み判定しきい値βを超えた時点で確実に巻き込みを確定することができる。
このように、本実施形態の装置1では、巻き込んだものの硬さ軟らかさによらず、低荷重で確実に巻き込みを確定することができる。
【0050】
また、窓ガラス11が移動する際には、巻き込みがなくても摺動抵抗や外的要因によって、モータ20の回転速度は影響を受ける。このような影響によって、仮に回転速度差Δωが変動判定しきい値αを超えた場合でも、その後に回転速度差Δωの累積値が巻き込み判定しきい値βを超えなければ巻き込みが確定されることがないので、変動判定しきい値αを軟らかいものを巻き込んだとき用の値に設定しても、誤判定を起こすことがなく、むしろ巻き込みの開始を確実に検出することができる。
【0051】
また、本実施形態のパワーウインドウ装置1における挟み込み判定も、巻き込み判定と同様の処理により行われるため、説明を省略する。
挟み込み判定では、挟み込みの開始を検出する挟み込み検出手段としてのコントローラ31は、算出した回転速度差Δωが変動判定しきい値α´を超えたか否かを判定し、この変動判定しきい値α´を超えると、挟み込みが開始したと判定する。
【0052】
次に、
図5に基づいて、本実施形態のコントローラ31の巻き込み判定及び解除処理について説明する。
本実施形態のコントローラ31は、まず、操作スイッチ4から通常開指令信号又はオート開指令信号を受けると、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を下降駆動する(ステップS1)。
次いで、回転検出装置27から受け取ったパルス信号に基づいて、モータ20の回転速度データの更新を行う(ステップS2)。具体的には、コントローラ31は、まず回転検出装置27から受け取ったパルス信号を信号処理してパルスエッジを検出する。そして、パルスエッジを検出する毎に、前回検出されたパルスエッジと今回検出されたパルスエッジとのパルス幅(時間間隔)Tを算出してメモリ内に順次格納していく。
【0053】
本実施形態では、パルス幅Tは、新たなパルスエッジが検出される度に順送りに更新されていき、最新の4つのパルス幅T(0)〜T(3)が記憶される。すなわち、パルスエッジが検出されると、新たにパルス幅T(0)を算出すると共に、前回のパルス幅T(0)〜T(2)を1ずらして、それぞれパルス幅T(1)〜T(3)として記憶し、前回のパルス幅T(3)を消去する。
【0054】
そして、コントローラ31は、時間的に連続するn個のパルスエッジのパルス幅Tの総和(パルス周期P)の逆数から回転速度ωを算出する。この回転速度ωは実際の回転速度に比例する値である。
本実施形態では、現パルスエッジから4パルスエッジ前までのパルス幅T(0)〜T(3)によって(平均)回転速度ω(0)が算出される。そして、次のパルスエッジを検出すると、新たに算出されたパルス幅T(0)〜T(3)によって回転速度ω(0)が更新される。このとき、前回の回転速度ω(0)は回転速度ω(1)として記憶される。このようにして、コントローラ31内には、パルスエッジを検出する度に(所定移動量毎にまたは所定回転角毎に)更新される最新の8つの回転速度ω(0)〜ω(7)が常時記憶される。このように、複数のパルス幅Tによって回転速度ωを算出することにより、受信する各パルス信号出力のセンサーDutyのばらつきを相殺し、誤差変動分が相殺された回転速度を算出することができる。
【0055】
次に、コントローラ31は、この回転速度ωから(平均)回転速度差(回転速度変化率)Δωを算出する(ステップS3)。具体的には、回転速度ω(0)〜ω(3)を現ブロックデータ、回転速度ω(4)〜ω(7)を前ブロックデータとし、それぞれのブロック内データの和を差し引く処理を行っている。すなわち、回転速度差Δωは、回転速度ω(4)〜ω(7)の和から回転速度ω(0)〜ω(3)の和を引くことにより算出され、パルスエッジを検出する度に(所定移動量毎にまたは所定回転角毎に)更新されていく。なお、算出された値を加算したデータ数(本実施形態では4)で除してもよい。このように、複数の回転速度ωによって回転速度差Δωを算出することにより、回転速度ω間の位相差を相殺することができる。
【0056】
そして、本実施形態のコントローラ31は、窓ガラス11の所定位置を基準として、算出された回転速度差Δωを加算していく(ステップS4)。回転速度差Δωが算出される毎にこれを累積していくことによって、基準位置に対する回転速度ωの差が算出される。
次に、コントローラ31は、巻き込み開始の判定処理を行う(ステップS5)。具体的には、回転速度差Δωが変動判定しきい値αを負側に超えた場合は巻き込みの開始と判定され、超えていない場合は巻き込みの開始と判定しない。
巻き込みの開始と判定された場合(ステップS5;有)、ステップS7へ移行する。一方、巻き込みの開始と判定されなかった場合(ステップS5;無)、ステップS6で回転速度差Δωの累積値と巻き込み判定しきい値βへの初期値の設定が行われる。具体的には、ステップS4で算出された回転速度差Δωの累積値が、回転速度ωの初期変化量S
0にセットされると共に、巻き込み判定しきい値βが増大されていない通常値に戻される。
【0057】
そして、ステップS7では、回転速度ωの変化量Sの演算処理が行われる。具体的には、コントローラ31は、巻き込み開始と判定される直前にステップS6でセットされた回転速度ωの初期変化量S
0(回転速度差Δωの累積値)からステップS4で算出された回転速度差Δωの累積値を差し引いて、巻き込み開始以降の回転速度ωの変化量S(回転速度差Δωの累積値)を算出する。これにより、巻き込みによる回転速度の変化分(すなわち、巻き込み荷重分)を確実に算出することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、基準値からの変化量の差を算出して、巻き込み開始以降の回転速度ωの変化量を算出しているが、これに限らず、巻き込み開始が検出されないときには、回転速度差Δωの累積値を初期化し、巻き込み開始が検出されたときには、初期化しないようにして、巻き込み開始検出以降の分についてのみ回転速度差Δωを累積して、これにより回転速度ωの変化量を算出してもよい。
【0059】
次に、コントローラ31は、ステップS7で算出された回転速度ωの変化量Sが巻き込み判定しきい値βを超えたか否かを判定する(ステップS8)。
回転速度ωの変化量Sが巻き込み判定しきい値βを超えたと判断された場合(ステップS8;有)、モータ20の駆動を停止し、窓ガラス11の下降駆動を停止する(ステップS9)。次いで、巻き込み解除モードへ移行し(ステップS10)、処理を終了する。
一方、回転速度ωの変化量Sが巻き込み判定しきい値βを超えていないと判断された場合(ステップS8;無)は、処理をそのまま終了する。
【0060】
次に、
図6に基づいて、巻き込み解除モードの処理(ステップS10)について説明する。
図5で示す巻き込み判定処理のステップS8で巻き込み有りと判断されたとき、すなわち、巻き込みと確定した場合に、モータ20の駆動を停止した後、
図6の巻き込み解除モードの処理が実行される。
図6の巻き込み解除モードでは、挟み込み防止機能の誤作動による再度の巻き込みを防止するために、挟み込み防止機能の無効化制御及びオート閉動作の禁止制御を行うと同時に、操作スイッチ4から閉指令信号を受けると、窓ガラス11を反転駆動制御して巻き込みを解除する。
【0061】
コントローラ31は、まず、挟み込み防止機能を無効にすると同時に、オート閉動作を禁止する(ステップS21)。
このステップでは、挟み込み防止機能の無効状態及びオート閉動作の禁止状態を継続する時間を制限するために、予め定められた規定時間t1及び規定距離L1のカウントを開始する。規定時間t1は、予め不図示のタイマーに設定され、規定距離L1は、予めパルスカウント値と対応する値で設定され、設定値は、ROM等のメモリに記憶されている。ステップS21の処理が実行されると、不図示のタイマーをセットして計時を開始すると同時に、パルス信号を受け取る毎にパルスカウント値を1インクリメント又はデクリメントして窓ガラス11の上昇距離の測定を開始する。
【0062】
次いで、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けたかを判定することにより、操作スイッチ4の閉スイッチがオンされたかを判定する(ステップS22)。
操作スイッチ4の閉スイッチがオンされていない場合(ステップS22;No)、再度操作スイッチ4の閉スイッチがオンされたかを判定する(ステップS22)。つまり、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けるまで、ステップS22を繰り返す。
【0063】
操作スイッチ4の閉スイッチがオンされた場合(ステップS22;Yes)、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を上昇駆動する(ステップS23)。この窓ガラス11の上昇駆動により、異物の巻き込みが解除される。
次いで、操作スイッチ4からの通常閉指令信号が停止したかを判定することにより、操作スイッチ4の閉スイッチがオフされたかを判定する(ステップS24)。
操作スイッチ4の閉スイッチがオフされていない場合(ステップS24;No)、操作スイッチ4は、オンになったままであるものとして、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を上昇駆動する(ステップS23)。つまり、ステップS24で、通常閉指令信号が停止したことを検知するまで、ステップS23とステップS24を繰り返す。
操作スイッチ4の閉スイッチがオフされた場合(ステップS24;Yes)、乗員が、窓ガラス11の上昇により異物の巻き込みを解除できたと判断したものとして、駆動回路32を介してモータ20の駆動を停止し、窓ガラス11の上昇駆動を停止して(ステップS25)、
図5で示す巻き込み判定処理に戻る。
また、ステップS21で開始した計時及び上昇距離の測定により、ステップS21実行後規定時間t1が経過したか、窓ガラス11の上昇距離が規定距離L1に達したことが検知された場合には、挟み込み防止機能の無効化状態及びオート閉動作の禁止状態を解除する。
【0064】
巻き込み解除モードの処理(ステップS10)では、コントローラ31は、
図6の処理の代わりに、
図7の処理を行ってもよい。
図5で示す巻き込み判定処理のステップS8で巻き込み有りと判断されたとき、すなわち、巻き込みと確定した場合に、モータ20の駆動を停止した後、
図7の巻き込み解除モードの処理が実行される。
図7の巻き込み解除モードでは、挟み込み防止機能の誤作動による再度の巻き込みを防止するために、挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)作動機能の禁止制御及びオート閉動作の禁止制御を行うと同時に、操作スイッチ4から開指令信号を受けると、窓ガラス11を反転駆動制御して巻き込みを解除する。
【0065】
コントローラ31は、まず、挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)作動を禁止すると同時に、オート閉動作を禁止する(ステップS31)。
このステップでは、挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)作動及びオート閉動作の禁止状態を継続する時間を制限するために、予め定められた規定時間t2及び規定距離L2のカウントを開始する。規定時間t2は、予め不図示のタイマーに設定され、規定距離L2は、予めパルスカウント値と対応する値で設定され、設定値は、ROM等のメモリに記憶されている。ステップS31の処理が実行されると、不図示のタイマーをセットして計時を開始すると同時に、パルス信号を受け取る毎にパルスカウント値を1インクリメント又はデクリメントして窓ガラス11の上昇距離の測定を開始する。
次いで、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けたかを判定することにより、操作スイッチ4の閉スイッチがオンされたかを判定する(ステップS32)。
操作スイッチ4の閉スイッチがオンされていない場合(ステップS32;No)、再度操作スイッチ4の閉スイッチがオンされたかを判定する(ステップS32)。つまり、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けるまで、ステップS32を繰り返す。
【0066】
操作スイッチ4の閉スイッチがオンされた場合(ステップS32;Yes)、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を上昇駆動する(ステップS33)。この窓ガラス11の上昇駆動により、異物の巻き込みが解除される。
次いで、挟み込みが発生又は操作スイッチ4の閉スイッチがオフされたかを判定する(ステップS34)。
このステップにおいて、挟み込み発生の有無の判定としては、回転速度差Δωが変動判定しきい値α´を負側に超えた場合は挟み込みの開始と判定され、超えていない場合は挟み込みの開始と判定しない。
【0067】
挟み込みの発生も、操作スイッチ4の閉スイッチのオフもない場合(ステップS34;No)、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を上昇駆動する(ステップS33)。つまり、ステップS34で、挟み込みの発生か、通常閉指令信号の停止のいずれかを検知するまで、ステップS33とステップS34を繰り返す。
挟み込みが発生したか、操作スイッチ4の閉スイッチがオフされた場合(ステップS34;Yes)、挟み込み発生により、それ以上閉作動を継続すると、他の異物が窓ガラス11と窓枠12の間に挟まれる2次被災の虞があるか、乗員が、窓ガラス11の上昇により異物の巻き込みを解除できたと判断したかのいずれかであるものとして、駆動回路32を介してモータ20の駆動を停止し、窓ガラス11の上昇駆動を停止して(ステップS35)、
図5で示す巻き込み判定処理に戻る。
また、ステップS31で開始した計時及び上昇距離の測定により、ステップS31実行後規定時間t2が経過したか、窓ガラス11の上昇距離が規定距離L2に達したことが検知された場合には、挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)作動及びオート閉動作の禁止状態を解除する。
【0068】
巻き込み解除モードの処理(ステップS10)では、コントローラ31は、
図6の処理の代わりに、
図8の処理を行ってもよい。
図5で示す巻き込み判定処理のステップS8で巻き込み有りと判断されたとき、すなわち、巻き込みと確定した場合に、モータ20の駆動を停止した後、
図8の巻き込み解除モードの処理が実行される。
図8の巻き込み解除モードでは、挟み込み防止機能の誤作動による再度の巻き込みを防止するために、挟み込み防止機能の無効化制御及び閉作動量の制限制御を行うと同時に、操作スイッチ4から閉指令信号を受けると、窓ガラス11を反転駆動制御して巻き込みを解除する。
【0069】
コントローラ31は、まず、挟み込み防止機能を無効にすると同時に、閉作動量の制限処理を行う(ステップS41)。
閉作動量の制限処理では、巻き込み検出時のモータ20を逆転駆動させる閉作動量として、所定の時間を、規定時間tとして、予め、不図示のタイマーに設定する。この設定値は、ROM等のメモリに記憶される。
また、このステップでは、挟み込み防止機能の無効状態及び閉作動量の制限状態を継続する時間を制限するために、予め定められた規定時間t3及び規定距離L3のカウントを開始する。規定時間t3は、予め不図示のタイマーに設定され、規定距離L3は、予めパルスカウント値と対応する値で設定され、設定値は、ROM等のメモリに記憶されている。ステップS41の処理が実行されると、不図示のタイマーをセットして計時を開始すると同時に、パルス信号を受け取る毎にパルスカウント値を1インクリメント又はデクリメントして窓ガラス11の上昇距離の測定を開始する。
次いで、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けたかを判定することにより、操作スイッチ4の閉スイッチがオンされたかを判定する(ステップS42)。
操作スイッチ4の閉スイッチがオンされていない場合(ステップS42;No)、再度操作スイッチ4の閉スイッチがオンされたかを判定する(ステップS42)。つまり、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けるまで、ステップS42を繰り返す。
【0070】
操作スイッチ4の閉スイッチがオンされた場合(ステップS42;Yes)、不図示のタイマーをセットして計時を開始した後、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を上昇駆動する(ステップS43)。この窓ガラス11の上昇駆動により、異物の巻き込みが解除される。
次いで、操作スイッチ4の閉スイッチがオフされたか、又は、タイマーのカウント値に基づいて、タイマーにより予め定められた規定時間tが経過したかを判定する(ステップS44)。
【0071】
操作スイッチ4の閉スイッチのオフもなく、規定時間tも経過していない場合(ステップS44;No)、操作スイッチ4は、オンになったままであるものとして、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を上昇駆動する(ステップS43)。つまり、ステップS44で、閉スイッチのオフ又は規定時間tの経過のいずれかを検知するまで、ステップS43とステップS44を繰り返す。
操作スイッチ4の閉スイッチがオフされたか、規定時間tが経過した場合(ステップS44;Yes)、乗員が、窓ガラス11の上昇により異物の巻き込みを解除できたと判断したか、又は、異物の巻き込みの解除のために十分な時間窓ガラス11を上昇したものとして、駆動回路32を介してモータ20の駆動を停止し、窓ガラス11の上昇駆動を停止して(ステップS45)、
図5で示す巻き込み判定処理に戻る。
また、ステップS41で開始した計時及び上昇距離の測定により、ステップS41実行後規定時間t3が経過したか、窓ガラス11の上昇距離が規定距離L3に達したことが検知された場合には、挟み込み防止機能の無効状態及び閉作動量の制限状態を解除する。
【0072】
巻き込み解除モードの処理(ステップS10)では、コントローラ31は、
図6の処理の代わりに、
図9の処理を行ってもよい。
図5で示す巻き込み判定処理のステップS8で巻き込み有りと判断されたとき、すなわち、巻き込みと確定した場合に、モータ20の駆動を停止した後、
図9の巻き込み解除モードの処理が実行される。
図9の巻き込み解除モードでは、挟み込み防止機能の誤作動による再度の巻き込みを防止するために、挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)作動機能の禁止制御及び閉作動量の制限制御を行うと同時に、操作スイッチ4から閉指令信号を受けると、窓ガラス11を反転駆動制御して巻き込みを解除する。
【0073】
コントローラ31は、まず、挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)作動を禁止すると同時に、閉作動量の制限処理を行う(ステップS51)。
閉作動量の制限処理では、巻き込み検出時のモータ20を逆転駆動させる閉作動量として、所定の距離を、規定距離Lとして予めパルスカウント値と対応する値で設定する。この設定値は、ROM等のメモリに予め記憶されているものである。
このステップでは、挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)作動及び閉作動量の制限状態を継続する時間を制限するために、予め定められた規定時間t4及び規定距離L4のカウントを開始する。規定時間t4は、予め不図示のタイマーに設定され、規定距離L4は、予めパルスカウント値と対応する値で設定され、設定値は、ROM等のメモリに記憶されている。ステップS51の処理が実行されると、不図示のタイマーをセットして計時を開始すると同時に、パルス信号を受け取る毎にパルスカウント値を1インクリメント又はデクリメントして窓ガラス11の上昇距離の測定を開始する。
次いで、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けたかを判定することにより、操作スイッチ4の閉スイッチがオンされたかを判定する(ステップS52)。
操作スイッチ4の閉スイッチがオンされていない場合(ステップS52;No)、再度操作スイッチ4の閉スイッチがオンされたかを判定する(ステップS52)。つまり、操作スイッチ4から通常閉指令信号を受けるまで、ステップS52を繰り返す。
【0074】
操作スイッチ4の閉スイッチがオンされた場合(ステップS52;Yes)、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を上昇駆動する(ステップS53)。上昇駆動中には、パルス信号を受け取る毎にパルスカウント値を1インクリメント又はデクリメントして、窓ガラス11の上昇距離を測定する。この窓ガラス11の上昇駆動により、異物の巻き込みが解除される。
次いで、挟み込みが発生したか、又は、規定距離L上昇したかを判定する(ステップS54)。
このステップにおいて、挟み込み発生の有無の判定としては、回転速度差Δωが変動判定しきい値α´を負側に超えた場合は挟み込みの開始と判定され、超えていない場合は挟み込みの開始と判定しない。
また、窓ガラス11の上昇駆動中にインクリメント又はデクリメントされたパルスカウント値が、規定距離Lに達した場合は規定距離L上昇したと判定される。
【0075】
挟み込みの発生もなく、規定距離Lの上昇もしていない場合(ステップS54;No)、駆動回路32を介してモータ20を駆動し、窓ガラス11を上昇駆動する(ステップS53)。つまり、ステップS54で、挟み込みの発生又は規定距離Lの上昇のいずれかを検知するまで、ステップS53とステップS54を繰り返す。
挟み込みが発生したか、規定距離L上昇した場合(ステップS54;Yes)、挟み込み発生により、それ以上閉作動を継続すると、他の異物が窓ガラス11と窓枠12の間に挟まれる2次被災の虞があるか、又は、異物の巻き込みの解除のために十分な距離窓ガラス11を上昇したかのいずれかであるものとして、駆動回路32を介してモータ20の駆動を停止し、窓ガラス11の上昇駆動を停止して(ステップS55)、
図5で示す巻き込み判定処理に戻る。
また、ステップS51で開始した計時及び上昇距離の測定により、ステップS51実行後規定時間t4が経過したか、窓ガラス11の上昇距離が規定距離L4に達したことが検知された場合には、挟み込み検知後の挟み込み解除(開作動)作動及び閉作動量の制限状態を解除する。
【0076】
上記実施形態では、変動判定しきい値α,巻き込み判定しきい値βを窓ガラス11の位置によらず一定の値としていたが、これに限らず、窓ガラス11の位置によって変動させるように設定してもよい。
また、上記実施形態では、巻き込み及び挟み込みを、回転検出装置27から受け取ったパルス信号(作動状態検出信号)に基づいて計算されたモータ20の回転速度ωの変化により検出しているが、窓ガラス11が異物に接触したかどうかなどの作動状態は、窓ガラス11の速度の変化やモータ20の回転速度ωの変化だけでなく、モータ20の巻線に流れる電流値に基づいて検出することもできる。
例えば、挟み込みが発生したとき、モータ20へ負荷がかかり、電流が増加し、電圧が減少するので、コントローラ31は、電流変化量が閾値を超えたかを調べ、超えている場合には、電力変化量が閾値を超えたかを調べて挟み込みを検知可能である。この場合、コントローラ31へ出力される電流値、電圧値が、特許請求の範囲の作動状態検出信号に対応する。
また、上記実施形態では、開閉体制御装置を車両のパワーウインドウ装置1として説明したが、開閉体制御装置には、サンルーフ開閉装置やスライドドア開閉装置等の開閉部材を開閉駆動する装置全般に適用できるものである。