(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
密閉ケースと、前記密閉ケース内に仕切板により仕切られ吸込ポート及びシリンダ室を有する複数のシリンダと、前記シリンダ室内に配置され偏心回転が与えられるローラとからなる圧縮機構部を備える回転式圧縮機であって、
前記シリンダ室内にそれぞれ圧縮室を形成し、前記圧縮機構部は、前記仕切板と、前記シリンダを閉塞する軸受とに、前記圧縮室内で圧縮された作動流体を吐出する吐出ポートを、それぞれ設け、前記仕切板に設けた前記吐出ポートの開口面積は、前記軸受に設けた前記吐出ポートの開口面積よりも大きく形成されることを特徴とする回転式圧縮機。
前記圧縮室のそれぞれに対して設けるふたつの前記吐出ポートを開閉する吐出弁をそれぞれ設け、前記吐出弁はそれぞれ異なる差圧で開弁されるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の回転式圧縮機。
それぞれの異なる差圧で開弁される前記吐出弁は、小さい差圧で開く方の吐出弁の固有振動数の方が、大きい差圧で開く方の吐出弁の固有振動数より大きく設定することを特徴とする請求項2記載の回転式圧縮機。
請求項1に記載の回転式圧縮機と前記回転式圧縮機に接続されて圧縮機本体から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器に接続されて凝縮された冷媒を減圧する膨張装置と、前記膨張装置で膨張した前記冷媒を蒸発させる蒸発器を備え、前記蒸発器と前記圧縮機本体とは、作動流体流路により接続したことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧縮された作動流体が複数個の同径の吐出ポートから同時に吐出されると、吐出圧力脈動が共鳴して騒音が増大し、吐出弁の開閉タイミングに起因する圧縮損失が増大し性能が低下する傾向にある。従って、単に吐出ポートを2つ設けるだけでは、十分に圧縮性能を向上することができず、実用化が難しいという現実があった。また、特許文献1に記載された回転式圧縮機は、軸受に設ける吐出ポートの径を、仕切板に設ける吐出ポートの径よりも大きくし、作動流体の流動経路を分岐し、軸受に多くの作動流体が流れるようにした構成としているが、仕切板に比べて軸受部分は遮音性が低く、この部分に多くの冷媒を吐出させると騒音が大きくなるという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、上述の従来技術の課題を鑑み、仕切板の吐出ポートの開口面積を軸受吐出ポートのものよりも大きくし、仕切板に流動する作動流体量を相対的に増やすことにより、遮音性を高め、副軸受側の高温化を抑えることで、摺動部についての摩耗量を低減し変形を抑え、高効率化をはかり全体の信頼性をあげることができる回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため提供される回転式圧縮機は、密閉ケースと、前記密閉ケース内に仕切板により仕切られ吸込ポート及びシリンダ室を有する複数のシリンダと、前記シリンダ室内に配置され偏心回転が与えられるローラとからなる圧縮機構部を備える回転式圧縮機であって、前記シリンダ室内にそれぞれ圧縮室を形成し、前記圧縮機構部は、前記仕切板と、前記シリンダを閉塞する軸受とに、前記圧縮室内で圧縮された作動流体を吐出する吐出ポートを、それぞれ設け、前記仕切板に設けた前記吐出ポートの開口面積が、前記軸受に設けた前記吐出ポートの開口面積よりも大きく形成されることを特徴とする。
上記特徴を有する回転式圧縮機において、前記圧縮室のそれぞれに対して設けるふたつの前記吐出ポートを開閉する吐出弁をそれぞれ設け、前記吐出弁はそれぞれ異なる差圧で開弁されるよう構成することが望ましい。
また、前記仕切板に設けた吐出ポートを開閉する前記吐出弁には、前記軸受に設けた前記吐出弁とは、固有振動数が異なる前記吐出弁を用いることが望ましい。
なお、それぞれの異なる差圧で開弁される前記吐出弁は、小さな差圧で開く方の吐出弁の固有振動数の方が、大きな差圧で開く方の吐出弁の固有振動数より大きく設定することが望ましい。
また、上記課題を達成するため提供される冷凍サイクル装置は、上記の特徴を有する回転式圧縮機とこの回転式圧縮機に接続されて圧縮機本体から吐出された冷媒を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器に接続されて凝縮された冷媒を減圧する膨張装置と、前記膨張装置で膨張した前記冷媒を蒸発させる蒸発器を備え、前記蒸発器と前記圧縮機本体とは、作動流体流路により接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴を有する本発明の実施形態の回転式圧縮機によれば、仕切板の吐出ポートの開口面積を軸受吐出ポートのものよりも大きくし、仕切板に流動する作動流体量を相対的に増やすようにしたので、遮音性が高められ、圧縮機本体における副軸受側の高温化を抑えることが可能となり、従って、摺動部についての摩耗量を低減しその変形を抑え、冷媒の圧縮高効率化をはかり、圧縮機並びに冷凍サイクル装置全体の信頼性をあげることができる。
また、本発明に依る更なる特徴及び作用効果は以下に添付図面を参照して説明される好適な実施形態の記載によりより明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。尚、以下の記載において、上下、左右、等方向を示す用語は、図示の状態に基づいて用いられている。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の回転式圧縮機及びそれを備えた冷凍サイクル装置について、
図1乃至
図3を参照して説明する。
図1は、冷凍サイクル装置の全体構成を示しており、この冷凍サイクル装置1は、圧縮機本体2と、圧縮機本体2に接続されて圧縮機本体2から吐出された高圧・高温の作動流体であるガス冷媒を凝縮して液冷媒にする凝縮器3と、凝縮器3に接続されて液冷媒を減圧する膨張装置4と、膨張装置4で膨張した液冷媒を蒸発させる蒸発器5と、冷媒をガス相と液相に分離するアキュムレータ6と、を有している。アキュムレータ6と圧縮機本体2とは、作動流体が流れる吸込流路8により接続され、回転式圧縮機を構成している。
【0010】
圧縮機本体2は、円筒状に形成された密閉ケース7を有し、密閉ケース7内には、上方側に位置する電動機部9と、電動機部9に連結された回転軸10と、回転軸10を介して電動機部9により駆動される圧縮機構部11とが収容されている。密閉ケース7内の下部には、潤滑油が収容されている。
【0011】
電動機部9は、回転軸10が固定された回転子12と、密閉ケース7に固定されて回転子12を囲む位置に配置された固定子13とを有している。回転子12には永久磁石(図示せず)が設けられ、固定子13には通電用のコイル(図示せず)が巻かれている。コイルに通電されることにより、回転子12と回転軸10とが回転する。
【0012】
圧縮機構部11は、作動流体であるガス冷媒を圧縮する部分であり、上下方向に隣り合う二つのシリンダ14、15を有している。シリンダ14、15の間には、内部に仕切板内空間23を有する仕切板24がシリンダ14、15の一方の閉塞部材として設けられている。
二つのシリンダ14、15のうち、下側に位置するシリンダ14における仕切板24が設けられている側の反対側には他方の閉塞部材である副軸受18が設けられている。上側に位置するシリンダ15における仕切板24が設けられている側の反対側には他方の閉塞部材である主軸受19が設けられている。そして、シリンダ14の上下方向の両端が仕切板24と副軸受18とに閉塞されることによりシリンダ14の内部にシリンダ室16が形成される。同様にシリンダ15の上下方向の両端が仕切板24と主軸受19とに閉塞されることによりシリンダ15の内部にシリンダ室17が形成されている。
【0013】
副軸受18と主軸受19とは回転軸10を軸支しており、回転軸10はシリンダ14内、シリンダ15内に挿通されている。回転軸10におけるシリンダ室16、シリンダ室17内に位置する部分には回転中心から偏心した偏心部21が設けられ、この偏心部21にはローラ22が嵌合されている。ローラ22は、回転軸10の回転時に外周面をシリンダ14、15の内周面に油膜を介して線接触させながら、偏心回転するように配置されている。尚、ブレード20については
図3を参照して後述する。
【0014】
仕切板24は、回転軸10の軸方向に重ね合わされた第1分割仕切板24aと第2分割仕切板24bとの二つを連結することにより形成されている。第1、第2分割仕切板24a、24bにはそれぞれ凹状の掘り込み部が形成され、第1、第2分割仕切板24a、24bを連結して仕切板24を形成した場合に、第1、第2分割仕切板24a、24bの掘り込み部が合わさることにより仕切板24内に仕切板内空間23が形成される。
【0015】
第1分割仕切板24aには、シリンダ室16内で圧縮された作動流体が仕切板内空間23に吐出される一方の吐出ポートである仕切板吐出ポート25aが形成されている。さらに、第1分割仕切板24aには、仕切板吐出ポート25aを開閉する一方の吐出弁である仕切板吐出弁26aと、仕切板吐出弁26aの最大開度を規制する仕切板弁押え27aとが取付けられている。
【0016】
尚、第2分割仕切板24bの構成は第1分割仕切板24aと同様であり、シリンダ室17内で圧縮された作動流体が仕切板内空間23に吐出される一方の吐出ポートである仕切板吐出ポート25bが形成されている。さらに、第2分割仕切板24bには、仕切板吐出ポート25bを開閉する一方の吐出弁である仕切板吐出弁26bと、仕切板吐出弁26bの最大開度を規制する仕切板弁押え27bとが取付けられている。
【0017】
副軸受18には、シリンダ室16内で圧縮された作動流体が吐出される軸受吐出ポート28aが形成され、さらに、軸受吐出ポート28aを開閉する軸受吐出弁29aと、軸受吐出弁29aの最大開度を規制する軸受弁押え30aとが取付けられている。また、副軸受18の外周部には、軸受吐出ポート28aから吐出された作動流体が流入する副軸受側マフラ31が取付けられている。
【0018】
主軸受19には、シリンダ室17内で圧縮された作動流体が吐出される軸受吐出ポート28bが形成され、さらに、軸受吐出ポート28bを開閉する軸受吐出弁29bと、軸受吐出弁29bの最大開度を規制する軸受弁押え30bとが取付けられている。また、主軸受19の外周部には、軸受吐出ポート28bから吐出された作動流体が流入する主軸受側マフラ32が取付けられている。
【0019】
図1に示すように、副軸受側マフラ31と主軸受側マフラ32とは、副軸受18とシリンダ14と、仕切板24と、シリンダ15と主軸受19とに形成された連通路33を介して連通され、副軸受側マフラ31内に流入した作動流体は連通路33を通って主軸受側マフラ32内に流入する。主軸受側マフラ32には、主軸受側マフラ32内の作動流体を密閉ケース7内に流出させる流出孔34が形成されている。
【0020】
副軸受側マフラ31と主軸受側マフラ32との容積を比べると、副軸受側マフラ31の容積は、主軸受側マフラ32の容積より小さく形成されている。
【0021】
ここで、第1分割仕切板24a、第2分割仕切板24bに形成された仕切板吐出ポート25a、25bと副軸受18、主軸受19に形成された吐出ポート28a、28bとの差異、及び、仕切板24a、24bに設けた吐出弁26a、26bと、副軸受18と主軸受19に設けた吐出弁29a、29bとの差異について説明する。
第1分割仕切板24aに形成された仕切板吐出ポート25aと副軸受18に形成された軸受吐出ポート28a、及び、仕切板吐出弁26aと軸受吐出弁29aとの差異と、第2分割仕切板24bに形成された仕切板吐出ポート25bと主軸受19に形成された軸受吐出ポート28b、及び、仕切板吐出弁26bと軸受吐出弁29bとの、仕切板と軸受との差異は同様であるので、以下、便宜的にまとめて説明する。
単に仕切板をさす場合は第1分割仕切板24aと第2分割仕切板24bを特に区別せず仕切板24と称し、仕切板24に設ける吐出ポートを仕切板吐出ポート25と称し、仕切板吐出ポート25を開閉する吐出弁を仕切板吐出弁26と称し、仕切板吐出弁26の最大開度を規制する弁押えを仕切板弁押え27と称し、単に軸受をさす場合は副軸受18、主軸受19を特に区別せずに軸受18、19と称し、軸受18、19に設けた吐出ポートは軸受吐出ポート28と称し、軸受吐出ポート28を開閉する吐出弁を軸受吐出弁29と称し、軸受吐出弁の最大開度を規制する弁押えを軸受弁押え30と称す。
【0022】
一つの圧縮室に対して設ける二つの吐出ポートである、仕切板吐出ポート25と軸受吐出ポート28とは開口面積が異なり、仕切板吐出ポート25の開口面積は軸受吐出ポート28の開口面積より大きく形成されている。この開口面積の差異に応じ、吐出ポートを開閉するそれぞれの吐出弁も異なっている。作動流体が圧縮室に流動し圧縮され、圧縮工程を終えると、圧縮室39内の圧力と、吐出される側の仕切板内空間23及び副軸受側マフラ31、主軸受側マフラ32内の圧力とに圧力の差が生じる。そして、作動流体は圧力の高いところから低いところへと流動するため、ある一定の圧力の差(以後、差圧と称し、圧縮室内の圧力と圧縮室の外側の圧力との差、を意味する)が生じると、吐出弁が開弁し、作動流体が吐出され、流動する。
【0023】
ここで、それぞれの吐出弁は、それぞれ異なる差圧で開弁されるように形成される。例えば、小さな差圧で開く板バネを軸受吐出弁29に用い、これよりも大きな差圧が生じないと開かない板バネを仕切板吐出弁26に用いれば、先に軸受吐出弁29が開弁し、圧縮された作動流体の圧力がさらに大きくなったら、圧縮室39内の圧力と吐出される側の仕切板内空間23の圧力の差も大きくなり、仕切板吐出弁26が開弁する。このように、軸受吐出弁29の開弁後に仕切板吐出弁26が開弁するため、同じタイミングで二つの吐出弁が開弁することを避け、吐出圧力脈動による共鳴を防止することができる。
【0024】
また、仕切板吐出弁26の固有振動数“f”は、軸受吐出弁29の固有振動数“f”と異なる大きさに形成されている。各々の固有振動数“f”は、“f=√(K/m)÷2π”で求めることができる。但し、Kは吐出弁26、29のばね定数であり、mは吐出弁26、29の開閉部の質量である。本実施形態においては、後述するように、仕切板吐出弁26と軸受吐出弁29とで、Kおよびmの数値を異ならせている。
【0025】
仕切板吐出ポート25と軸受吐出ポート28とは、設計制約上の理由から一部分がシリンダ室16、17から外れる位置に形成されている。そして、シリンダ14、15の内周部には、仕切板吐出ポート25と軸受吐出ポート28の開口面積の全体をシリンダ室16、17に連通させるように仕切板吐出切欠き35と、軸受吐出切欠き36が形成されている。これらの吐出切欠き35、36を比較すると、仕切板吐出ポート25に連通する仕切板吐出切欠き35の容積は、軸受吐出ポート28に連通する軸受吐出切欠き36の容積よりも大きく形成されている。
【0026】
図3は上述の圧縮機構部11の概略断面図を示す。
シリンダ14、15にはブレード溝37が形成され、このブレード溝37には往復移動可能にブレード20が収容されている。ブレード20は、先端部をローラ22の外周面に当接させるように付勢されており、ブレード20の先端部がローラ22の外周面に当接されることによりシリンダ室16、17内が吸込室38と圧縮室39とに仕切られている。吸込室38には吸込流路8が連通され、圧縮室39には仕切板吐出ポート25と、軸受吐出ポート28が連通されている。
【0027】
このような構成を有する本実施形態に係る回転式圧縮機2の作用を以下に記載する。
【0028】
回転式圧縮機2の電動機部9に通電されることにより回転軸10が回転子12と共に中心線回りに回転し、この回転により圧縮機構部11が駆動され、シリンダ室16、17内で作動流体が圧縮される。圧縮された作動流体の圧力が設定圧に達すると、仕切板吐出弁26と軸受吐出弁29とが開弁され、作動流体が仕切板吐出ポート25と軸受吐出ポート28とから吐出される。仕切板吐出ポート25から吐出された作動流体は仕切板内空間23内に流入し、吐出ポート28aから吐出された作動流体は副軸受側マフラ31内に流入した後に連通路33内を通って主軸受側マフラ32内に流入する。吐出ポート28bから吐出された作動流体は主軸受側マフラ32内に流入する。各吐出ポートから主軸受側マフラ32に流入した作動流体は、流出孔34から密閉ケース7内に流出する。
【0029】
尚、密閉ケース7内に流出した作動流体は、その後、回転式圧縮機2外に流れ、凝縮器5、膨張装置6、蒸発器7の順に流れて回転式圧縮機2に戻り、冷凍サイクル装置1での冷凍サイクル運転が実行される。
【0030】
ここで、圧縮機構部11は、シリンダ室16、17(より詳しくは圧縮室39)内で圧縮された作動流体が吐出される吐出ポートとして、仕切板24に設けられた仕切板吐出ポート25と、副軸受18、主軸受19に設けられた軸受吐出ポート28と、一つの圧縮室に対して二つの吐出ポートを有している。そして、仕切板吐出ポート25を開閉する仕切板吐出弁26と軸受吐出ポート28を開閉する軸受吐出弁29とが開弁する差圧は異なっている。このため、仕切板吐出ポート25と軸受吐出ポート28とから吐出される作動流体の吐出量は、一つの吐出ポートから全ての作動流体を出すよりも、相対的に少なくなる。さらに、仕切板吐出ポート25を開閉する仕切板吐出弁26と軸受吐出ポート28を開弁する軸受吐出弁29とは開弁するタイミングが異なるので、作動流体が仕切板吐出ポート25と軸受吐出ポート28とから吐出される際の脈動を抑えることができるとともに脈動の共鳴を防止することができ、回転式圧縮機2から発生する騒音を抑制することかできる。
【0031】
また、圧縮された作動流体がシリンダ室16、17から吐出される際に発生する騒音については、吐出される仕切板内空間23は仕切板24に覆われており、仕切板24は二つのシリンダ14、15に挟まれた位置であるので、仕切板24およびシリンダ14、15による遮音効果により、回転式圧縮機2の外に漏れ出す騒音を低減させることができる。さらに、本実施形態では、単に流動経路を二分にするだけでなく、作動流体を仕切板内空間23に流動する量が、仕切板吐出ポート25が軸受吐出ポート28よりも大きいので軸受に流動する量よりも多いため、従来の回転式圧縮機よりも大きな遮音効果を生み出すことができ、騒音を低減することができる。
【0032】
また、仕切板吐出ポート25を開閉する仕切板吐出弁26は、軸受吐出ポート28を開閉する軸受吐出弁29とは異なる差圧で開弁されるため、低速回転時であって作動流体の吐出量が少ない段階では、低い圧力の時点で一方の吐出弁が先に開弁されるので、吐出弁26、29を開弁させるために生じる過圧縮による圧力損失を低減させることができ、低速回転時における圧縮性能の向上を図ることができる。
【0033】
また、仕切板吐出ポート25を開閉する仕切板吐出弁26の固有振動数“f”が、軸受吐出ポート28を開閉する軸受吐出弁29の固有振動数“f”とは異なって形成されている。物体が変形を与えられると元に戻ろうとして逆方向に変形し、これが繰り返し起こるために発生する振動数、を意味する固有振動数は、この値が高いほど、弁を開く際の初速が速く、弁を閉める際のスピードも速い。このため、固有振動数の高い方の吐出弁の応答性(圧力が低下した場合に速やかに閉弁する性能)を良くすることができ、作動流体のシリンダ室16、17内への逆流を防止して圧縮性能の向上を図ることができる。
【0034】
ここで、小さい差圧で吐出弁を開弁させるためには、その吐出弁のばね定数“K”を小さくする必要があり、ばね定数“K”を小さくすると吐出弁の応答性が低下することになる。しかし、吐出弁の開閉部の質量“m”を小さくすれば、上記した数式“f=√(K/m)÷2π”から分かるように、“K”を小さくしても固有振動数“f”を大きくすることができる。したがって、例えば、軸受吐出弁29の固有振動数を、仕切板吐出弁26の固有振動数より小さく設定すると、開口面積が小さい軸受吐出ポート28を開閉する軸受吐出弁29の“m”を小さくし、軸受吐出弁29は“K”を小さくして小さい差圧で開弁させることにより低速回転時における軸受吐出弁29を開弁するために生じる過圧縮による圧力損失を低減させて低回転時の圧縮性能の向上を図りつつ、その軸受吐出弁29の応答性を良くすることによる圧縮性能の向上を図ることができる。
【0035】
シリンダ室17内で圧縮された作動流体は、一部が仕切板吐出ポート25bから吐出されて仕切板内空間23に流入するとともに、他の一部が軸受吐出ポート28bから吐出されて主軸受側マフラ32内に流入する。そして、軸受吐出ポート28bから吐出されて主軸受側マフラ32内に流入した作動流体は、シリンダ室16内で圧縮されて軸受吐出ポート28aから吐出されて副軸受側マフラ31内に流入してその後に連通路33を通って主軸受側マフラ32内に流入した作動流体と合流し、主軸受側マフラ32に形成された流出孔34から密閉ケース7内に流出する。
【0036】
そして、吐出ポート25、28の開口面積を比較すると、軸受吐出ポート28の方の開口面積が小さいので、軸受吐出ポート28aから吐出されて副軸受側マフラ31内に流入する作動流体の量は、仕切板吐出ポート25及び軸受吐出ポート28bから吐出されて主軸受側マフラ32内に流入する作動流体の量より少なくなっている。ここで、軸受吐出ポート28aから吐出されて副軸受側マフラ31内に流入した作動流体は高温であり、この作動流体はシリンダ室16の近傍に形成されている連通路33内を通って主軸受側マフラ32内に流入するので、その過程で、シリンダ室16内の作動流体を加熱することになる。シリンダ室16内の作動流体が外部からの熱で加熱されると回転式圧縮機2の圧縮性能が低下することになるが、上述のとおり、軸受吐出ポート28aから吐出されて副軸受側マフラ31内に流入する作動流体の量は、仕切板吐出ポート25及び軸受吐出ポート28bから吐出されて主軸受側マフラ32内に流入する作動流体の量より少ないため、連通路33を通る作動流体によるシリンダ室16内の作動流体の加熱を抑制することができる。これにより、シリンダ室16内の作動流体が外部から加熱されることによる回転式圧縮機2の圧縮性能低下を抑制することができる。
【0037】
また、上述の本実施形態によらず、副軸受18に従来と同量の作動流体を送る場合、圧縮室39から一つの吐出ポートのみに吐出するのであれば、吐出ポートを大きくせざるを得ないので、副軸受18の吐出機構部の取付けのための掘り込み部分が、副軸受18の中心部にまで侵出してしまい、副軸受18の剛性が下がり、変形しやすくなる。しかし、本発明の実施形態に依る回転式圧縮機によれば、軸受吐出ポート28が小さいので、圧縮機構部の吐出機構部を縮小することができる。このため、回転式圧縮機2の下部の安定を図ることができる。
【0038】
さらに、副軸受18に流動する作動流体の量は相対的に少ないので、高温・高圧に圧縮した作動流体を下部に多く集めることもないため、回転式圧縮機2の下部の温度が必要以上に上がることもない。よって、高温であればあるほど、副軸受18と回転軸10とが摺動する箇所が合計稼働時間に比例して摩耗してしまうが、本実施形態によれば、高温による摺動部の摩耗を抑えることができる。
【0039】
また、上述したように、副軸受側マフラ31内に流入する作動流体の量が少ないので、副軸受側マフラ31の容積を小さくすることができる。そして、副軸受側マフラ31の容積が小さくなることにより、密閉ケース7内に収容される潤滑油に関し、油面を上昇させることなく貯油量を増やすことができ、回転式圧縮機の性能を長期間に亘って維持することができる。
【0040】
また、吐出ポート25、28は、一部分がシリンダ室16、17から外れる位置に形成されているので、吐出ポート25、28の開口面積の全体をシリンダ室16、17に連通させるようにシリンダ14、15の内周部に吐出切欠き35、36が形成されている。これらの吐出切欠き35、36が形成されていることにより、シリンダ室16、17内で圧縮された作動流体がスムーズに吐出ポート25、28から吐出されるようになり、作動流体が吐出ポート25、28に至るまでの流路抵抗が原因となる過圧縮による圧縮損失を低減させることができ、圧縮性能の向上を図ることができる。
【0041】
また、これらの吐出切欠き35、36の容積は、開口面積の大きい仕切板吐出ポート25に連通する吐出切欠き35の容積が、開口面積の小さい軸受吐出ポート28に連通する吐出切欠き36の容積よりも大きく形成されている。このため、吐出切欠き35、36の総容積を抑制することができる。そのため、シリンダ室16、17からの作動流体の吐出が終了した時点における吐出切欠き35、36内に残留する作動流体の量を抑制することができ、圧縮された作動流体が吐出切欠き35、36内に残留することが原因となる再膨張損失を抑制することができる。
【0042】
また、圧縮機構部にて圧縮した作動流体を4つの吐出ポートから分散して吐出することにより、一度に多くの作動流体を圧縮することができる。さらに、一つの吐出ポートへの負荷も分散されることから、吐出弁の負荷も減り、弁割れ等の不具合が起きることも相対的に減る。よって、高効率化をはかり、全体の信頼性をあげることができる。
【0043】
(第2の実施形態)
前記第1の実施例では圧縮機構部のブレードとローラが別体のものについて説明したが、本発明によれば第2の実施形態として、ブレードとローラが一体となったスイングタイプを用いても良い。
【0044】
(第3の実施形態)
また、前記実施例では、回転式圧縮機のシリンダ数は2個であったが、これに加えて、第3の実施形態として、シリンダ数が3個以上のタイプに用いても同等の効果が得られる。
【0045】
尚、本発明は、上述の各実施例における回転式圧縮機を備えた冷凍サイクル装置を提供するものであり、その冷凍サイクル装置は、例えば、
図1に示されるように、上記構成を有する圧縮機本体2と、圧縮機本体2に接続されて圧縮機本体2から吐出された高圧・高温の作動流体であるガス冷媒を凝縮して液冷媒にする凝縮器3と、凝縮器3に接続されて液冷媒を減圧する膨張装置4と、膨張装置4で膨張した液冷媒を蒸発させる蒸発器5と、冷媒をガス相と液相に分離するアキュムレータ6と、を有して構成され、アキュムレータ6と圧縮機本体2とは、作動流体が流れる吸込流路8により接続され、回転式圧縮機を構成している。
【0046】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置によれば、仕切板の吐出ポートの開口面積を軸受吐出ポートのものよりも大きくし、仕切板に流動する作動流体量を相対的に増やすことができるので、遮音性を高め、摺動部の摩耗を抑え、過圧縮による圧力損失を低減させ、低速回転時の圧縮性能を向上させ、高効率化をはかり全体の信頼性をあげることが可能となる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。