特許第6267428号(P6267428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6267428顕微鏡検査サンプルの調製方法、及び、サンプルのカバーガラス装着品質の検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267428
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】顕微鏡検査サンプルの調製方法、及び、サンプルのカバーガラス装着品質の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   G02B21/34
【請求項の数】28
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-30230(P2013-30230)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2013-171291(P2013-171291A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2015年11月25日
(31)【優先権主張番号】10 2012 101 377.2
(32)【優先日】2012年2月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500113648
【氏名又は名称】ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト ネーフ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴィルケ
(72)【発明者】
【氏名】カール−ハインリッヒ ヴェスターホフ
【審査官】 瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0138852(US,A1)
【文献】 特開2012−014078(JP,A)
【文献】 特表2008−541179(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/080239(WO,A1)
【文献】 特開2006−023496(JP,A)
【文献】 特開2008−301332(JP,A)
【文献】 特開2007−233098(JP,A)
【文献】 特開昭59−157534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーガラスを適用した顕微鏡検査サンプルの調製方法であって、
該方法がカバーガラス装着装置において実行されること、
カバーガラス装着品質が自動的で、かつ、少なくとも部分的に暗視野照明を用いて光学的に検査されること、及び
当該暗視野照明を用いた検査において、下記a〜e項目の少なくとも1つについて検査すること、
a、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスがダメージを受けているか否か、
b、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスに破損があるか否か、
c、カバー媒体中に介在空気が存在するか否か、
d、カバーガラスとサンプルの間に介在空気が存在するか否か、
e、カバーガラスの表面非均一性があるか否か、
を特徴とする方法。
【請求項2】
検査のために、少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の画像を生成すること、及び/又は、
検査のために、少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の顕微鏡画像を生成すること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
画像として、グレースケール画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
下記a〜c項目、すなわち、
a、画像の生成という意味合いにおいて、カバーガラス、及び/又は、包埋溶液に照明を当てること、
b、明視野照明を用いて画像を生成すること、
c、暗視野照明を用いて画像を生成すること、
の少なくとも1以上を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
評価装置によって前記画像を自動的に評価すること、及び/又は、
データ処理デバイスを有する評価装置によって前記画像を自動的に評価すること、
を特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
a、明視野照明の画像及び暗視野照明の画像の両方を生成し、各画像を互いに比較すること、及び/又は、
b、明視野照明を用いた画像及び暗視野照明を用いた画像の両方を生成し、検出された1枚の画像の細部に関して、他の画像に対応するものが存在するか否かについて検査すること、を特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度が調節可能であること、及び/又は、
画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度が無段階に調節可能であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
カバーガラス装着品質を検査する前に、参照画像の平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布を、手動で又は自動的に測定することを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
a、測定された平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出(露光)時間を算出すること、及び/又は、
b、バックグラウンドについての明るさが予め設定されるか、又は予め設定可能なように、測定された平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出時間を算出すること、
を特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
測定された明るさ、及び/又は、明るさ分布に基づいて、画像の補正を各画像に実行することを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
下記a〜e項目、すなわち、
a、概観画像を生成すること、
b、サンプル特有のコード、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコードを読み出すこと、
c、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で概観画像を生成すること、
d、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で、サンプル特有のコード、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコードを読み出すこと、
e、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で、サンプル特有のコード、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコードを、明視野照明を用いて読み出すこと、
の少なくとも1以上を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
a、サンプルの染色品質、及び/又は、色彩強度について検査すること
b、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で生成した画像を、サンプルの染色品質、及び/又は、色彩強度について追加的に検査すること、
を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
a、カバーガラス装着品質に関するデータ、及び/又は、サンプル特有のコードを、より高レベルのデータ処理システムへ送信すること、
b、データを、より高レベルのデータ処理システムと通信すること、
を特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を実行する装置。
【請求項15】
カバーガラスを適用したサンプルのカバーガラス装着品質を検査する装置であって、
カバーガラスの装着及びカバーガラス装着品質の検査の両方を単一の機構において実行すること、
光学的な画像処理装置が自動的で、かつ、少なくとも部分的に暗視野照明を用いて処理を行うこと、及び
当該暗視野照明を用いた処理において、下記a〜e項目の少なくとも1つについて検査すること、
a、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスがダメージを受けているか否か、
b、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスに破損があるか否か、
c、カバー媒体中に介在空気が存在するか否か、
d、カバーガラスとサンプルの間に介在空気が存在するか否か、
e、カバーガラスの表面非均一性があるか否か、
を特徴とする装置。
【請求項16】
評価装置が、画像処理装置によって生成された少なくとも1枚の画像を検査すること、
を特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
画像処理装置が少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の画像を生成すること、及び/又は、
画像処理装置が少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の顕微鏡画像を生成すること、及び/又は、
画像処理装置がグレースケール画像を生成すること、
を特徴とする請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
a、画像の生成の際に、カバーガラス、及び/又は、カバー媒体に照明を当てる、及び/又は、
b、明視野照明を生じる、及び/又は、
c、暗視野照明を生じる、
照明装置を備えることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
a、画像処理装置が明視野照明を用いた画像及び暗視野照明を用いた画像の両方を生成し、評価装置が各画像を互いに比較すること、及び/又は、
b、画像処理装置が明視野照明を用いた画像及び暗視野照明を用いた画像の両方を生成し、評価装置が検出された1枚の画像の詳細について、他の画像に対応するものが存在するか否かについて検査すること、
を特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度が調節可能であること、及び/又は、
画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度が無段階に調節可能であること
を特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
a、評価装置が、測定された参照画像の平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出時間を算出すること、及び/又は、
b、評価装置が、画像生成の際にバックグラウンドについての明るさが予め設定されるか、又は予め設定可能なように、測定された参照画像の平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出時間を算出すること、
を特徴とする請求項16〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
評価装置が、測定された参照画像の明るさ、及び/又は、明るさ分布に基づいて、各画像の補正を実行することを特徴とする請求項16〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
a、概観画像を生成する手段、及び/又は、
b、サンプル特有のコードを読み出す手段、
を更に備えることを特徴とする請求項15〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
評価装置が、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置によって生成した画像を、サンプルの染色品質、及び/又は、色彩強度について検査すること、
を特徴とする請求項16〜23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
下記a〜c項目、すなわち、
a、画像処理装置のスキャン領域へ検査されるカバーガラス装着サンプルを移動させるハンドリング装置、
b、受容装置から検査されるカバーガラス装着サンプルを連続的に取り出し、画像処理装置のスキャン領域へそれらを移動させるハンドリング装置、及び/又は、
c、受容装置から検査されるカバーガラス装着サンプルを連続的に取り出し、画像処理装置のスキャン領域へそれらを移動させ、各サンプルを検査した後に、各サンプルを受容装置に戻すハンドリング装置、
の少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項15〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
カバーガラス装着装置の一部分である、及び/又は、カバーガラス装着装置に組み込まれることを特徴とする請求項15〜25のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
カバーガラス装着装置からカバーガラスを装着した少なくとも1つのサンプルを受容するか、又はカバーガラス装着装置からそれを取り出す構成をさらに備えることを特徴とする請求項15〜26のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
下記a〜c項目、すなわち、
a、カバーガラス装着品質に関するデータ、及び/又は、サンプル特有のコードを、カバーガラス装着品質を検査する装置から受け取るより高レベルのデータ処理システム、
b、カバーガラス装着品質を検査する装置とデータを通信するより高レベルのデータ処理システム、
c、カバーガラス装着品質についてのデータ、又は、サンプルの在り処についてのデータ、又は、サンプルと関連付けられた患者データに関するデータをカバーガラス装着品質を検査する装置と通信するより高レベルのデータ処理システム、
の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項15〜27のいずれか1項に記載の装置を含むサンプル処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は独国特許出願10 2012 101 377.2号(2012年2月21日の出願)の優先権を主張するものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み、記載されているものとする。
本発明は、カバーガラスを適用した顕微鏡検査サンプルの調製方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、カバーガラスを適用したサンプルのカバーガラス装着品質を検査するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
顕微鏡検査サンプルの調製において、カバーガラスを適用する前に、検査されるサンプル(例えば、組織切片を含み得る)は、通常、標本スライドガラスに載置されて、カバー媒体(好ましくは、カバーガラス又は標本スライドガラスの屈折率に採用される屈折率を有し、粘着性剤として機能するカバー媒体)で処理される。サンプルにカバーガラスを装着する工程は、通常、非常に多くの時間を要する工程であるので、しばしば、このためにカバーガラス装着装置が使用される。
【0004】
例えば、独国特許DE101 44 048A1号から、標本スライドガラス及びカバーガラスを取り扱う(ハンドリングする)装置が知られる。この装置では、カバーガラスは、各々に、作業アームを介してガイドされる受容ユニットによって受容され、標本スライドガラスの所望の位置にセットされる。
【0005】
カバーガラスを装着するプロセスでは、種々の欠陥が生じ得る。例えば、カバーガラスが完全に又は部分的に破損することが起こり得るし、その結果、更なる欠陥としてカバー媒体のはみ出し(emergence)が起こり得る。更なる欠陥として、カバーガラスの下に空気の介在が生じる。介在空気は、後の顕微鏡検査の際に不利な影響をもたらし得るし、または、実際に顕微鏡検査を実行できなくし得る。
【0006】
カバーガラスを装着するプロセスにおいて欠陥が生じても、それらの欠陥は、しばしば、顕微鏡検査の際にしか気づかれない。しばしば、この時点でサンプルに再度カバーガラスをかけることは不可能であり、ルーチン的な研究での操作についてのいくつかの深刻な問題点を導く。カバーガラスを装着するプロセスが中断するだけでなく、プロセス全体の連続性も失われるので、特に、(例えば、連続的なスループットで)複数ないし多数のサンプルを検査するときには、そのような欠陥は全体的な研究効率をかなり低下させる。
【0007】
米国特許US5,566,249号は、カバー媒体(溶液、coverslipping medium)中の気泡を検出する装置を開示する。この装置はカバーガラスの画像を生成する画像生成手段を含み、スキャンを自動化した顕微鏡として構成することができる。更に、気泡の端部を認識する手段、及び画像処理手段も提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許DE 101 44 048 A1号(対応特開2003−156692号)
【特許文献2】米国特許US 5,566,249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の問題を解消するか、少なくとも軽減することが可能な方法を開示することが望まれている。
本発明の第1の視点において、カバーガラスを装着するプロセスにおいて生じた欠陥にともなう研究効率の低下が解消されるか、少なくとも軽減することが望まれる。
本発明の第2の視点において、カバーガラスを適用したサンプルのカバーガラス装着品質の、迅速で信頼できる検査を実現する装置を開示することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の視点において、自動的で、かつ、少なくとも部分的に暗視野照明を用いて光学的にカバーガラス装着品質を検査することを特徴とする方法が提供される。
本発明の第2の視点において、光学的な画像処理装置が自動的で、かつ、少なくとも部分的に暗視野照明を用いて処理を行うことを特徴とする装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の視点において、カバーガラスを装着するプロセスにおいて生じた欠陥にともなう研究効率の低下が解消されるか、少なくとも軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、カバーガラスを適用したサンプルのカバーガラス装着品質を検査するための装置の一例を示す。
図2図2は、介在空気が存在する場合の、明視野照明の下でのカバーガラス装着サンプルの画像の生成を模式的に示す。
図3図3は、カバーガラスに破損が存在する場合の、明視野照明の下でのカバーガラス装着サンプルの画像の生成を模式的に示す。
図4図4は、暗視野照明を用いた画像の生成を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一視点において、上述の問題を解消するか、少なくとも軽減することが可能な方法が開示される。
【0014】
本発明の第1の視点において、自動的で、かつ、少なくとも部分的に暗視野照明を用いて光学的にカバーガラス装着品質を検査することを特徴とする方法が提供される。
【0015】
本発明の第2の視点において、カバーガラスを適用したサンプルのカバーガラス装着品質の、迅速で信頼できる検査を実現する装置を開示することが望まれている。
【0016】
本発明の第2の視点において、光学的な画像処理装置が自動的で、かつ、少なくとも部分的に暗視野照明を用いて処理を行うことを特徴とする装置が提供される。
【0017】
本発明によれば、カバーガラス装着品質を早期に信頼できる仕方で検査することによって、カバーガラス装着サンプルに欠陥が生じることでルーチン的な研究作業の間に生じる複数ないし多数の問題を少なくとも軽減することができることが認識される。サンプルが欠陥を含む状態にカバーガラス装着されているか否かについて、好ましくは、欠陥の性質が同定されるように早期に検査することは、欠陥を有するカバーガラス装着サンプルの発生の大部分を回避し、その後の研究プロセス(特に、顕微鏡検査)を維持することを可能にする。同時に、例えば、再びカバーガラスを装着することによって、同定されたカバーガラス装着の欠陥を除去できる可能性も生じる。
【0018】
本発明の特定の一実施形態において、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスがダメージを受けているか否かについて、特に、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスに破損があるか否かについて検査が行われる。その代わりに、又は、追加的に、カバー媒体(coverslipping medium)中に介在空気(混入、連行ないし含有空気、以下本願において「介在空気」で代表する)が存在するか否かについて検査することもできるし、及び/又は、カバーガラスとサンプルの間に介在空気が存在するか否かについて検査することもできる。その代わりに、又は、追加的に、カバーガラスの表面非均一性があるか否かについて検査することもできる。
【0019】
上述の検査を実行するために、少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の画像(好ましくは、顕微鏡画像)を生成することは有利である。特に、画像として、グレースケール画像を生成することができる。カバーガラス、及び/又は、包埋溶液の画像の生成は、特にデジタル画像データを生成する場合には、カバーガラス装着の欠陥の存在、及び/又は、欠陥の性質についての自動的な評価(例えば、コンピュータでコントロールされた評価)を可能にする。ここでは、特に、既知のカバーガラス装着の欠陥の画像パターン、及び/又は、特に頻繁に生じるカバーガラス装着の欠陥の画像パターンをメモリに保存し、生成した画像と細部を比較することもできる。
【0020】
カバーガラス、及び/又は、包埋溶液には、画像を生成するために適切に照明が当てられる。この意味合いにおいて、明視野照明を用いて画像を生成することもできる。特に、撮像(imaged)された目的物(対象)をクラス分けするため、及び、任意的に参照パターンとそれらを比較するために、先ず、明視野照明の下で第1の画像を生成することが有利であることは分かっている。
【0021】
画像の取得ないし撮像は、好ましくは、(入射)明視野照明システムとカメラが、標本スライドガラスの垂線に対称的に配置される状況下で行われる。その結果、主たる平行波面(parallel wavefront)はカバーガラスの表面全体に投射され、良く反射するので、容易に検出することが可能になる。カバーガラスの下に載置された目的物は光を出射(ないしは反射)させて(remits)、その一部分は検出器へ到達する。
【0022】
カバーガラス装着の欠陥(介在空気、表面非均一性、ガラスの破損など)は、欠陥が無いカバーガラス装着サンプルの反射とは実質的に異なる照明光の反射を生じる。これは、グレースケール画像で特に明確に現れる。介在空気は反射を増加させ、グレースケール画像において明るい領域として現われる。カバーガラスにおける表面非均一性及び破損は光を偏向(deflect)させ、これらの領域から検出器へ到達する光が減少するので、グレースケール画像において特に暗い領域として現われる。
【0023】
好ましくは、特に明るい領域、及び/又は、特に暗い領域が、バックグラウンドから特に良く目立つように、バックグラウンドがニュートラルのグレー領域で画像中に現わされ得る最適の露出時間の決定が校正によって行われる。
【0024】
サンプルに方向性の照明が当てられる場合には、空気‐ガラスの界面の層における照明光の反射に加えて、取り込まれた気泡とその周囲のカバー媒体(粘着性)との間の界面においても反射が生じる。従って、気泡介在の場合においては二重の反射が生じ、気泡が非常に特別明るい領域として画像内に現われる。バックグラウンドの反射率が特定の値を超えることを保証する材料及び入射角を使用して、介在空気の反射がいつも他の構成要素(例えば、標本スライドガラス又はカバーガラスのインターフェイス)における反射よりも大きくなることが好ましい。このことを保証するために、例えば、特定の光学的なコーティングを有する標本スライドガラス又はカバーガラスを使用することができる。
【0025】
バックグラウンドが100のグレースケール値で表され、画像中の介在空気がおよそ200のグレースケール値で表されるように、全てのパラメータを選択することが好ましい。介在空気がバックグラウンドに比べて少なくとも20%のコントラストを示す場合には、介在空気の検出が確実に機能することが分かっている。
【0026】
理想的な平面の表面からのカバーガラスの表面ジオメトリ(ないしは幾何形状)の偏差は、二倍(double)の角度の誤差をもって入射光を反射させる。更に、カバーガラスから反射した光はもはや完全にフラットな波面を示さない。検出ジオメトリは、好ましくは、欠陥箇所からの反射光が検出器に到達しないように選択される。従って、欠陥箇所の画像はバックグラウンドよりも暗く現われる。検出距離、検出器の入光開口のサイズ、及び、検出器(例えばカメラ)のレンズ開口(aperture)も、特に、欠陥箇所からの反射光が検出器に到達しないように選択される。
【0027】
特に有利な実施形態において、バックグラウンドに対して20%を上回るコントラストを示す領域の輪郭が、例えば、評価装置によって演算される。同定された領域をグレースケール値に関してフィルターして、カバーガラス装着の欠陥と関連付けることができる。
【0028】
明視野照明を用いた画像の生成の代わりに、又は、それに加えて、暗視野照明を用いた画像を生成することもできる。非常に特別に正確で信頼できる実施形態の1つは、先ず目的物の画像をクラス分けするために明るいフィールドで第1の画像を生成し、次に明視野照明の下で見出された目的物のより正確なクラス分けを達成するために暗視野照明で第2の画像を生成することである。
【0029】
暗視野照明は、照明光が目的物に対して十分な傾斜角度で入射すること、すなわち、反射した照明光が対物レンズ(objective、すなわち検出器)へ入射されず、従って画像生成に寄与しないことが重要である。この特徴によって、特に、専ら屈折光又は拡散光が画像生成に寄与することになる。その際には、目的構造が、通常、暗いバックグラウンドに明るく現われることが有利である。
【0030】
暗視野照明は、例えば、フラットな角度(カバーガラスの表面の法線に対する照明光の入射角が大きい角度)で照明を当てることによって達成される。明るく、鋭く輪郭が定まった目的物は、バックグラウンドに対して高いコントラストで画像中に現われる。この意味合いにおいて、半環状(semicircular)のパターンを示す照明を備え、検出される目的物の輪郭が完全でなく、そして連続的でなくすることができる。
【0031】
半分だけ見出された目的物の画像の正確なクラス分けに関して、アーチファクト(例えば、特定の反射)が画像中の同一の位置において生じているか否かについて、暗視野照明を用いて生成した画像において、追加の検査を行うことができる。それによって、画像の1つにおいて検出可能なアーチファクトがカバーガラス装着の欠陥と関連するか、又は、例えば、標本自体によって生じたかについて、特に確実に区別することができる。
【0032】
上述のように、評価装置によって画像(単数又は複数)を自動的に評価すること、及び/又は、データ処理デバイス(特にPC)を含む評価装置によって画像(単数又は複数)を自動的に評価すことは有利であり得る。この種の実施形態は特に迅速であるだけでなく、特に信頼でき、かつ、正確でもある。
【0033】
既に説明したように、明視野照明を用いた画像及び暗視野照明を用いた画像の両方を生成し、各画像を互いに(例えば、評価装置によって)比較する実施形態は、カバーガラス装着の欠陥が存在するか否か、そして如何なるカバーガラス装着の欠陥を有するかについて、特に信頼できる仕方で情報をもたらすことができる。検出された1枚の画像の細部に関して、他の画像に対応するものが存在するか否かについて(例えば、評価装置によって)検査を行う場合には、この実施形態は特に信頼できるものである。
【0034】
特定の実施形態において、画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度を、検査される性質及びサンプルのサイズに応じて個々に調節することが行われる。この意味合いにおいて、画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度を(好ましくは、無段階に、ないしは、段階的でなく)調節できるようにする装置を使用することは有利であり得る。
【0035】
この種の装置は、明視野照明(例えば、照明光の入射角が0°である)を用いて画像を生成すること、及び、暗視野照明(例えば、照明光の入射角が50°から80°の範囲内である)を用いて画像を生成することの両方に使用することができるという利点を有する。特に、この種の装置では、明視野画像を生成した後にサンプルをサンプルステージに残したままにすること、及び/又は、サンプルをマウントしたままにすることができるし、そして、画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度を変更した後に、すぐに、暗視野照明を生成することができる。特に、照明光源、及び/又は、検出器(例えば、カメラ)を、各々旋回可能なスタンドアームに取り付けることもできる。その代わりに、又は、追加的に、例えば、回転可能な鏡によってそれぞれのビーム光路を旋回させることも可能である。
【0036】
カバーガラス装着品質を検査する前に、参照画像(特に、サンプルが載置されずにカバーガラスが装着された標本スライドガラス)の平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布を、手動で又は自動的に測定する場合には、特に信頼できる結果がもたらされる。好ましくは、カバーガラス装着サンプルの検査という意味合いにおいて、その後に取得される画像のグレースケール値の分布と比較できるように、グレースケール値の分布の参考測定結果が保存される。特に、参考測定結果によって(特に測定された明るさ、及び/又は、明るさ分布に基づいて)各画像の明暗補正を(例えば、評価装置によって)実行することができる。周囲の状態は経時的に変化し得るので、予め定義された又は許容可能な時間間隔で校正操作を繰り返すことは有利であり得る。周囲の状態の変化は、例えば、周囲の温度又は照明光源の劣化による放射挙動の変化であり得る。
【0037】
特に、測定された平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出(露光)時間を算出する構成、及び/又は、バックグラウンドについての明るさが予め設定されるか、又は予め設定可能なように、測定された平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出時間を算出することができることは有利である。
【0038】
特定の実施形態において、先ず、概観画像を生成する、及び/又は、サンプル特有のコード(特に、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコード)を読み出すことが行われる。特に、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で概観画像を生成すること、及び/又は、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置でサンプル特有のコード(特に、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコード)を読み出すことができる。
【0039】
この種の実施形態は、カバーガラス装着の欠陥の検出とは全く関係がない特徴に基づいて、検査されるサンプルを同定して、例えば、患者と関連付けることができるという利点を有する。カバーガラス装着の欠陥を検出することができることに加えて、染色品質(特にヘマトキシリン−エオシン染色の染色品質)、及び/又は、色彩強度を検査することができる。カバーガラス装着品質を検査することにも使用される同一の装置を、この意味合いにおいて使用することができる。この構成は、追加の装置が不必要であり、サンプルを更なる装置に移動させる必要がない、とどのつまり、所要時間が削減されるという特別な利点を有する。
【0040】
例を挙げて既に説明したように、同一のカバーガラス装着結果を、時間的に連続した仕方で、異なる状態の下で検査すること、及び/又は、同一のカバーガラス装着結果を、時間的に連続した仕方で、異なる状態下で、異なるテスト機構(stations)で検査することができる。
【0041】
上述のように、画像処理装置、特に暗視野照明を有する画像処理装置を、カバーガラスを適用したサンプルのカバーガラス装着品質を検査することに特に有利に使用することができる。
【0042】
自動的に作動する光学画像処理装置を含むサンプルのカバーガラス装着品質を検査するための本発明に係る装置の特定の実施形態において、画像処理装置によって生成された少なくとも1枚の画像を検査する評価装置(好ましくは自動的に処理する評価装置)が追加的に備えられる。カバーガラスを装着する処理の後にカバーガラスがダメージを受けているか否かについて、及び/又は、カバーガラスを装着する処理の後にカバーガラスに破損があるか否かについて、及び/又は、カバー媒体(溶液)中に介在空気が存在するか否かについて、及び/又は、カバーガラスとサンプルの間に介在空気が存在するか否かについて、及び/又は、カバーガラスの表面非均一性があるか否かについて、画像処理装置によって生成された画像をこの種の評価装置は検査することができる。
【0043】
この目的に関し、特に、画像処理装置が少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の画像を生成する構成、及び/又は、画像処理装置が少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の顕微鏡画像を生成すること、及び/又は、画像処理装置がグレースケール画像を生成することができる。
【0044】
本発明に係る装置の有利な実施形態は、画像の生成の際のカバーガラス及び/又は包埋媒体(溶液)に照明を当てる照明装置を含み、この文脈において、照明装置は明視野照明、及び/又は、暗視野照明を生じるように設計され得る。上述のように、ここでは、明視野照明及び暗視野照明の両方を同一の照明装置で生じることが有利であり得る。
【0045】
特に、評価装置が、参照画像(特に、サンプルが載置されずにカバーガラスが装着された標本スライドガラス)の測定された平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から、画像を生成する際の露出(露光)時間を算出すること、及び/又は、評価装置が、画像生成の際にバックグラウンドについての明るさが予め設定されるか、又は予め設定可能なように、参照画像(特に、サンプルが載置されずにカバーガラスが装着された標本スライドガラス)の測定された平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出(露光)時間を算出することができる。
【0046】
上述のように、本発明に係る装置が、概観画像を生成する構成、及び/又は、サンプル特有のコード(特に、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコード)を読み出すことは有利であり得る。特に、本発明に係る装置が同一のカバーガラス装着結果を、時間的に連続した仕方で異なる状態の下で、及び/又は、異なるテスト機構で(stations)で検査することは有利であり得る。
【0047】
特に高いレベルに自動化された本発明に係る装置の特定の実施形態において、画像処理装置のスキャン領域へ検査されるカバーガラス装着サンプルを移動させるハンドリング装置が備えられる。ここでは、特に、ハンドリング装置が自動的に作動することができる。
【0048】
この種類のハンドリング装置は、例えば、受容装置(特に、積み重ね棚:stacking shelf)から検査されるカバーガラス装着サンプルを連続的に取り出し、画像処理装置のスキャン領域へそれらを移動させることができる。各サンプルを検査した後に、さらにハンドリング装置がサンプルを受容装置に戻すことができる。
【0049】
カバーガラス装着品質を検査する装置は、カバーガラス装着装置の一部分であり得るし、及び/又は、カバーガラス装着装置に組み込むこともできる。カバーガラスの装着及びカバーガラス装着品質の検査の両方を、単一の機構において実行することができる。カバーガラス装着の欠陥が同定された場合に、カバーガラスを装着する処理を繰り返すこと(特に、自動的に繰り返すこと)ができる。
【0050】
カバーガラス装着品質を検査する装置をカバーガラス装着装置に組み込む代わりに、カバーガラス装着品質を検査する装置が、特に自動的に、カバーガラス装着装置からカバーガラスを装着した少なくとも1つのサンプルを受容するか、又はカバーガラス装着装置からそれを取り出すこともできる。
【0051】
多数のサンプルでさえも短時間の間に確実に解析及び処理されるようにするために、カバーガラス装着品質に関するデータ、及び/又は、サンプル特有のコード(特に、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコード)を、より高レベルのデータ処理システムへ送信することは有利であり得る。その代わりに、又は、追加的に、データ(例えば、カバーガラス装着品質に関するデータ)、及び/又は、サンプル特有のコード(特に、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコード)、及び/又は、サンプルに関連付けられた患者データ、及び/又は、サンプルの現在の所在に関するデータを、より高レベルのデータ処理システムと通信することができる。
【0052】
特定の発明コンセプトによれば、特に信頼できる処理及び検査(特に、サンプル量がより多い場合であっても)が、本発明に係る装置が備えられるサンプル処理システムによって可能である。この構成は、特に、カバーガラス装着品質に関するデータ、及び/又は、サンプル特有のコード(特に、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコード)、及び/又は、サンプルに関連付けられた患者データに関するデータ、及び/又は、サンプルの現在の所在に関するデータを、カバーガラス装着品質を検査する装置から受け取る、より高レベルのデータ処理システムを含むことができる。より高レベルのデータ処理システムは、特に、これらのデータを保存するためのメモリを含むことができる。例えば、サンプルの処理を更にコントロールするために、受信したデータと以前に保存されたデータとを比較することもできる。サンプル処理システムがカバーガラス装着品質を検査する装置とデータ(例えば、カバーガラス装着品質についてのデータ、サンプルの所在についてのデータ、又は、サンプルと関連付けられた患者データに関するデータ)を通信する、より高レベルのデータ処理システムを含むこともできる。
【0053】
更に、本発明の目的、利点、特徴及び利用可能性は、以下に記載の図に例示した実施形態から明らかである。記載された、及び/又は、例示された全ての特徴は、それら自体が、又は有用な組み合せが、請求の範囲におけるグループ分け、又は、引用関係とは無関係に、本発明を構成する。
【実施例】
【0054】
本発明のとり得る好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0055】
図1は、カバーガラス14(図1には示されない)を適用したサンプル1のカバーガラス装着品質を検査する装置の実施形態の一例を示す一般的概要図である。この装置は、各々にカバーガラスが装着された検査されるサンプル1を積み重ね棚2から取り出し、サンプルステージ3のスキャン領域にそれを載置するハンドリング装置(更に詳細には図示されない)を含む。各サンプル1を検査した後に、ハンドリング装置が検査されたサンプル1を積み重ね棚2に戻す。これらの処理は水平方向の両矢印によって示される。
【0056】
積み重ね棚2は鉛直方向に移動することができる。そのため、検査される更なるサンプル1をサンプルステージ3のレベルまで移動させて、取り出すことができる。この処理は、鉛直方向の両矢印によって示される。
【0057】
カバーガラス装着品質を検査する装置は、明視野照明のための第1光源4を含む。第1光源4は、ビームスプリッター6及び偏向鏡7によってカバーガラスが装着された検査されるサンプル1へ向うように方向付けられる第1照明光5を射出する。サンプルから反射した検出光8(破線で表される)は、同一の光の経路に沿って、反対方向に進行する。すなわち、偏向鏡7を介してビームスプリッター6に戻り、後者を通過して、最終的に検出器9(CCDカメラとして構成される)へ到達する。検出器9は、評価電子システム(更には詳述されない)に送信する電気回路基板10に配設される。
【0058】
光学的な構成要素、特に、照明光及び検出光をガイド及び整形するためのテレセントリック光学要素(telecentric optic)も備えられる。当該構成要素は、レンズ11として、単に模式的及び例示的な様式で示される。
【0059】
本発明に係る装置は、暗視野の照明のための更なる(第2)光源12(単に模式的に表される)を更に含む。第2光源12は、特に、半環状の(semi-annular)光源であり得る。
【0060】
カバーガラス装着品質を検査する装置は、例えば、カバーガラスの欠損が発見されるとすぐに光学的な又は音響のシグナルを発信することができる。
【0061】
図2は、標本スライドガラス15に載置されるサンプル1のカバーガラス14の下に介在空気13が存在する場合の、明視野照明の下での画像(特にグレースケール画像)の生成を模式的に示す。カバーガラス装着サンプル1に向って発光する光源4は、明視野照明としての役割を果たす。カバーガラス装着サンプル1から反射する光は、カメラとして構成される検出器9で検出される。
【0062】
特に介在空気13とサンプル1の材料、又はカバー媒体(ないし溶液、coverslipping medium、粘着性)との間の境界において更なる反射が生じ、この領域は、グレースケール画像において、バックグラウンドと比べて特に明るく表われる。
【0063】
図3は、カバーガラス14の破損部17(カバー媒体(粘着性)が充填される)が存在する場合の、明視野照明の下でのカバーガラス装着サンプル1の画像(特に、グレースケール画像)の生成を模式的に示す。特に破損部17及びこの領域にはみ出た(emerged)粘着性剤18の凸凹な表面構造によって、光源4から発光された光は、カバーガラス装着の欠陥が存在しない領域においてカバーガラス装着サンプル1に投射される光(の反射方向)とは異なる方向に向って反射する。
【0064】
破損部17の領域において反射した光が全く検出器9に到達しないか、又は、光のわずかな一部分のみが到達するように、距離、角度及び光学的な特徴が選択される。この結果、破損部17の領域は、グレースケール画像において、バックグラウンドに比べて特に暗く現われる。
【0065】
明視野照明という意味合いにおいて、照明光の入射角は必ずしも0°と同等である必要はない。特に鉛直方向の入射角に対して、すなわち、カバーガラスの表面の垂線(確認されない)に対して、0°から30°までの範囲にある入射角が、明視野照明においても実際に使用される。この文脈において、検出器の位置は、好ましくは反射光が全く検出器に到達せず、その代わりに専ら屈折光及び/又は拡散光が到達するように選択される。
【0066】
図4は、暗視野照明を用いた画像(特にグレースケール画像)の生成を模式的に示す。光源16の照明光は、サンプル1に対してフラットな角度で、すなわち、カバーガラスの表面の法線に対して大きい入射角で入射する。サンプル1に対する垂直方向の視点で検出が行われる。
【0067】
生成される画像は、明るく、高いコントラストで明瞭に輪郭が定まった目的物を示し、カバーガラス装着の欠陥の認識、特に、カバーガラス装着の欠陥の自動認識が可能になる。特に、暗視野照明の下で生成したこの種類の画像は、以前に明視野照明を用いて実行した検査の評価結果を検査することを可能にする。特に、1枚の画像で検出された細部について他の画像に対応するものが該細部に存在するか否かを検査することが可能になる。
なお本発明は、以下の好ましい形態を有する。
[形態1]
カバーガラスを適用した顕微鏡検査サンプルの調製方法であって、
該方法がカバーガラス装着装置において実行されること、
カバーガラス装着品質が自動的で、かつ、少なくとも部分的に暗視野照明を用いて光学的に検査されること、及び
当該暗視野照明を用いた検査において、下記a〜e項目の少なくとも1つについて検査すること、
a、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスがダメージを受けているか否か、
b、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスに破損があるか否か、
c、カバー媒体中に介在空気が存在するか否か、
d、カバーガラスとサンプルの間に介在空気が存在するか否か、
e、カバーガラスの表面非均一性があるか否か、
を特徴とする方法。
[形態2]
検査のために、少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の画像を生成すること、及び/又は、
検査のために、少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の顕微鏡画像を生成すること、
を特徴とする形態1に記載の方法。
[形態3]
画像として、グレースケール画像を生成することを特徴とする形態2に記載の方法。
[形態4]
下記a〜c項目、すなわち、
a、画像の生成という意味合いにおいて、カバーガラス、及び/又は、包埋溶液に照明を当てること、
b、明視野照明を用いて画像を生成すること、
c、暗視野照明を用いて画像を生成すること、
の少なくとも1以上を含むことを特徴とする形態2又は3に記載の方法。
[形態5]
評価装置によって前記画像を自動的に評価すること、及び/又は、
データ処理デバイスを有する評価装置によって前記画像を自動的に評価すること、
を特徴とする形態2〜4のいずれか1つに記載の方法。
[形態6]
a、明視野照明の画像及び暗視野照明の画像の両方を生成し、各画像を互いに比較すること、及び/又は、
b、明視野照明を用いた画像及び暗視野照明を用いた画像の両方を生成し、検出された1枚の画像の細部に関して、他の画像に対応するものが存在するか否かについて検査すること、を特徴とする形態2〜5のいずれか1つに記載の方法。
[形態7]
画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度が調節可能であること、及び/又は、
画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度が無段階に調節可能であることを特徴とする形態2〜6のいずれか1つに記載の方法。
[形態8]
カバーガラス装着品質を検査する前に、参照画像の平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布を、手動で又は自動的に測定することを特徴とする形態2〜7のいずれか1つに記載の方法。
[形態9]
a、測定された平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出(露光)時間を算出すること、及び/又は、
b、バックグラウンドについての明るさが予め設定されるか、又は予め設定可能なように、測定された平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出時間を算出すること、
を特徴とする形態8に記載の方法。
[形態10]
測定された明るさ、及び/又は、明るさ分布に基づいて、画像の補正を各画像に実行することを特徴とする形態8又は9に記載の方法。
[形態11]
下記a〜e項目、すなわち、
a、概観画像を生成すること、
b、サンプル特有のコード、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコードを読み出すこと、
c、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で概観画像を生成すること、
d、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で、サンプル特有のコード、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコードを読み出すこと、
e、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で、サンプル特有のコード、標本スライドガラス又はカバーガラスに添付したバーコードを、明視野照明を用いて読み出すこと、
の少なくとも1以上を含むことを特徴とする形態1〜10のいずれか1つに記載の方法。
[形態12]
a、サンプルの染色品質、及び/又は、色彩強度について検査すること
b、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置で生成した画像を、サンプルの染色品質、及び/又は、色彩強度について追加的に検査すること、
を特徴とする形態1〜11のいずれか1つに記載の方法。
[形態13]
a、カバーガラス装着品質に関するデータ、及び/又は、サンプル特有のコードを、より高レベルのデータ処理システムへ送信すること、
b、データを、より高レベルのデータ処理システムと通信すること、
を特徴とする形態1〜12のいずれか1つに記載の方法。
[形態14]
形態1〜13のいずれか1つに記載の方法を実行する装置。
[形態15]
カバーガラスを適用したサンプルのカバーガラス装着品質を検査する装置であって、
カバーガラスの装着及びカバーガラス装着品質の検査の両方を単一の機構において実行すること、
光学的な画像処理装置が自動的で、かつ、少なくとも部分的に暗視野照明を用いて処理を行うこと、及び
当該暗視野照明を用いた処理において、下記a〜e項目の少なくとも1つについて検査すること、
a、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスがダメージを受けているか否か、
b、カバーガラス装着処理の後にカバーガラスに破損があるか否か、
c、カバー媒体中に介在空気が存在するか否か、
d、カバーガラスとサンプルの間に介在空気が存在するか否か、
e、カバーガラスの表面非均一性があるか否か、
を特徴とする装置。
[形態16]
評価装置が、画像処理装置によって生成された少なくとも1枚の画像を検査すること、
を特徴とする形態15に記載の装置。
[形態17]
画像処理装置が少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の画像を生成すること、及び/又は、
画像処理装置が少なくとも1枚のカバーガラス、及び/又は、カバー媒体の顕微鏡画像を生成すること、及び/又は、
画像処理装置がグレースケール画像を生成すること、
を特徴とする形態15又は16に記載の装置。
[形態18]
a、画像の生成の際に、カバーガラス、及び/又は、カバー媒体に照明を当てる、及び/又は、
b、明視野照明を生じる、及び/又は、
c、暗視野照明を生じる、
照明装置を備えることを特徴とする形態15〜17のいずれか1つに記載の装置。
[形態19]
a、画像処理装置が明視野照明を用いた画像及び暗視野照明を用いた画像の両方を生成し、評価装置が各画像を互いに比較すること、及び/又は、
b、画像処理装置が明視野照明を用いた画像及び暗視野照明を用いた画像の両方を生成し、評価装置が検出された1枚の画像の詳細について、他の画像に対応するものが存在するか否かについて検査すること、
を特徴とする形態16〜18のいずれか1つに記載の装置。
[形態20]
画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度が調節可能であること、及び/又は、
画像を取得する角度、及び/又は、照明の角度が無段階に調節可能であること
を特徴とする形態15〜19のいずれか1つに記載の装置。
[形態21]
a、評価装置が、測定された参照画像の平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出時間を算出すること、及び/又は、
b、評価装置が、画像生成の際にバックグラウンドについての明るさが予め設定されるか、又は予め設定可能なように、測定された参照画像の平均の明るさ、及び/又は、明るさ分布から画像を生成する際の露出時間を算出すること、
を特徴とする形態16〜20のいずれか1つに記載の装置。
[形態22]
評価装置が、測定された参照画像の明るさ、及び/又は、明るさ分布に基づいて、各画像の補正を実行することを特徴とする形態16〜21のいずれか1つに記載の装置。
[形態23]
a、概観画像を生成する手段、及び/又は、
b、サンプル特有のコードを読み出す手段、
を更に備えることを特徴とする形態15〜22のいずれか1つに記載の装置。
[形態24]
評価装置が、カバーガラス装着品質を検査する画像処理装置によって生成した画像を、サンプルの染色品質、及び/又は、色彩強度について検査すること、
を特徴とする形態16〜23のいずれか1つに記載の装置。
[形態25]
下記a〜c項目、すなわち、
a、画像処理装置のスキャン領域へ検査されるカバーガラス装着サンプルを移動させるハンドリング装置、
b、受容装置から検査されるカバーガラス装着サンプルを連続的に取り出し、画像処理装置のスキャン領域へそれらを移動させるハンドリング装置、及び/又は、
c、受容装置から検査されるカバーガラス装着サンプルを連続的に取り出し、画像処理装置のスキャン領域へそれらを移動させ、各サンプルを検査した後に、各サンプルを受容装置に戻すハンドリング装置、
の少なくとも1つを備えることを特徴とする形態15〜24のいずれか1つに記載の装置。
[形態26]
カバーガラス装着装置の一部分である、及び/又は、カバーガラス装着装置に組み込まれることを特徴とする形態15〜25のいずれか1つに記載の装置。
[形態27]
カバーガラス装着装置からカバーガラスを装着した少なくとも1つのサンプルを受容するか、又はカバーガラス装着装置からそれを取り出す構成をさらに備えることを特徴とする形態15〜26のいずれか1つに記載の装置。
[形態28]
下記a〜c項目、すなわち、
a、カバーガラス装着品質に関するデータ、及び/又は、サンプル特有のコードを、カバーガラス装着品質を検査する装置から受け取るより高レベルのデータ処理システム、
b、カバーガラス装着品質を検査する装置とデータを通信するより高レベルのデータ処理システム、
c、カバーガラス装着品質についてのデータ、又は、サンプルの在り処についてのデータ、又は、サンプルと関連付けられた患者データに関するデータをカバーガラス装着品質を検査する装置と通信するより高レベルのデータ処理システム、
の少なくとも1つを含むことを特徴とする形態15〜27のいずれか1つに記載の装置を含むサンプル処理システム。
【0068】
なお、上記の特許文献の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 カバーガラス装着サンプル
2 積み重ね棚
3 サンプルステージ
4 明視野照明のための第1光源
5 照明光
6 ビームスプリッター
7 偏向鏡
8 検出光
9 検出器
10 電気回路基板
11 レンズ
12 第2光源
13 介在空気(連行ないし混入、含有空気)
14 カバーガラス
15 標本スライドガラス
16 暗視野照明のための光源
17 カバーガラス14の破損部
18 はみ出た粘着性剤
図1
図2
図3
図4