(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測距情報処理手段は、前記測距手段より照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数が1つであり、且つ受光したパルス幅から算出される計測視野幅が、前記平坦視野幅算出手段により算出された平坦路の場合の視野幅と同一であるとみなされる場合には、視野内は平坦路であると判定し、
前記環境地図生成手段は、前記計測視野幅の範囲を移動可能な領域として登録することを特徴とする請求項1記載の移動体の環境地図生成制御装置。
前記測距情報処理手段は、前記測距手段より照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数が1つであり、且つ受光したパルス幅から算出される計測視野幅が、前記平坦視野幅算出手段により算出された平坦路の場合の視野幅より小である場合には、当該視野内は上り坂又は障害物があると判定し、
前記環境地図生成手段は、前記計測された計測視野幅の範囲を移動可能な領域として登録することを特徴とする請求項1又は2記載の移動体の環境地図生成制御装置。
前記測距情報処理ステップは、前記測距ステップにて照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数が1つであり、且つ受光したパルス幅から算出される計測視野幅が、前記平坦視野幅算出ステップにて算出された平坦路の場合の視野幅と同一であるとみなされる場合には、視野内は平坦路であると判定し、
前記環境地図生成ステップは、前記計測視野幅の範囲を移動可能な領域として登録することを特徴とする請求項5記載の移動体の環境地図生成方法。
前記測距情報処理ステップは、前記測距ステップにて照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりが1つであり、且つ受光したパルス幅から算出される計測視野幅が、前記平坦視野幅算出ステップにて算出された平坦路の場合の視野幅より小である場合には、当該視野内は上り坂又は障害物があると判定し、
前記環境地図生成ステップは、前記計測された計測視野幅の範囲を移動可能な領域として登録することを特徴とする請求項5又は6記載の移動体の環境地図生成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、LRFの設置条件は、移動体の最大速度に応じて決められるのが一般的であり、最大速度が大きくなるほど遠方の環境認識を行う必要がある。しかしながら、遠方の環境認識を行うべくLRFのレーザを遠方に照射すると、当該レーザの光軸に対する路面の仰角は小さくなる。このように仰角が小さくなると、移動体が僅かに揺動しただけで路面の走査に抜けが生じ、平坦で走行可能な領域であっても計測できないために走行不可能な領域として認識されるおそれがある。
【0006】
これに対しては、例えば多くのスキャンラインを有する高性能なセンサを搭載したり、センサ数を大幅に増加させたりして、走査する範囲を拡大することで、未計測となる領域を減少させることができるが、高性能なセンサは高価であり、センサ数を増加させればその分部品点数も増加する。そして、データ量も膨大となることから高い処理性能を有するコンピュータを搭載する必要も生じ、コストが大幅に増加するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、コストの増加を抑えつつ、比較的高速な移動を行う場合でも正確に路面状態等を検出することのできる移動体の環境地図生成制御装置、移動体、及び移動体の環境地図生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明は、移動体の移動制御に用いる環境地図を生成する移動体の環境地図生成制御装置であって、前記移動体から路面に向けてパルスレーザを照射し、反射したレーザを受光することで測距を行う測距手段と、前記測距手段から平坦路に向けて前記パルスレーザを照射した場合の視野幅を算出する平坦視野幅算出手段と、前記測距手段より照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数、及び、受光したパルス幅から算出される計測視野幅と前記平坦視野幅算出手段により算出された平坦路の場合の視野幅とを比較して、路面状態を判定する測距情報処理手段と、前記測距情報処理手段によ
り、判定された
前記路面状態と前記計測視野
幅に応じて移動可
能な領域を登録して環境地図を生成する環境地図生成手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2の移動体の環境地図生成制御装置では、請求項1において、前記測距情報処理手段は、前記測距手段より照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数が1つであり、且つ受光したパルス幅から算出される計測視野幅が、前記平坦視野幅算出手段により算出された平坦路の場合の視野幅と同一であるとみなされる場合には、視野内は平坦路であると判定し、前記環境地図生成手段は、前記計測視野幅の範囲を移動可能な領域として登録することを特徴としている。
【0010】
請求項3の移動体の環境地図生成制御装置では、請求項1又は2において、前記測距情報処理手段は、前記測距手段より照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数が1つであり、且つ受光したパルス幅から算出される計測視野幅が、前記平坦視野幅算出手段により算出された平坦路の場合の視野幅より小である場合には、当該視野内は上り坂又は障害物があると判定し、前記環境地図生成手段は、前記計測された計測視野幅の範囲を移
動可能な領域として登録することを特徴としている。
【0011】
請求項4の移動体では、請求項1から3の何れか一項に記載の環境地図生成制御装置を有し、生成された環境地図に基づき移動経路を生成し、当該移動経路に沿って移動を行う移動制御手段を備えることを特徴としている。
請求項5に係る発明は、移動体の移動制御に用いる環境地図を生成する移動体の環境地図生成方法であって、前記移動体から路面に向けてパルスレーザを照射し、反射したレーザを受光することで測距を行う測距ステップと、平坦路に向けて前記パルスレーザを照射した場合の視野幅を算出する平坦視野幅算出ステップと、前記測距ステップにて照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数、及び、受光したパルス幅から算出される計測視野幅と前記平坦視野幅算出ステップにて算出された平坦路の場合の視野幅とを比較して、路面状態を判定する測距情報処理ステップと、前記測距情報処理ステップに
て判定された
前記路面状態と前記計測視野
幅に応じて移動可
能な領域を登録して環境地図を生成する環境地図生成ステップと、を備えることを特徴としている。
【0012】
請求項6の移動体の環境地図生成方法では、請求項5において、前記測距情報処理ステップは、前記測距ステップにて照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数が1つであり、且つ受光したパルス幅から算出される計測視野幅が、前記平坦視野幅算出ステップにて算出された平坦路の場合の視野幅と同一であるとみなされた場合には、視野内は平坦路であると判定し、前記環境地図生成ステップは、前記計測視野幅の範囲を移動可能な領域として登録することを特徴としている。
【0013】
請求項7の移動体の環境地図生成方法では、請求項5又は6において、前記測距情報処理ステップは、前記測距ステップにて照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりが1つであり、且つ受光したパルス幅から算出される計測視野幅が、前記平坦視野幅算出ステップにて算出された平坦路の場合の視野幅より小である場合には、当該視野内は上り坂又は障害物があると判定し、前記環境地図生成ステップは、前記計測された計測視野幅の範囲を移
動可能な領域として登録することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上記手段を用いる本発明に係る移動体の環境地図生成制御装置、移動体、及び移動体の環境地図生成方法によれば、照射した1パルスのレーザに対し、受光したレーザのパルス波形の立ち上がりの数、及び、受光したパルス幅から算出される視野幅と平坦路の場合の視野幅とを比較して、路面状態を判定し、この判定結果に応じて移動可能又は移動不可能な領域を登録して環境地図を生成することとしている。
【0015】
このようにレーザの視野全体の評価を行うことで、1度の走査で広範囲の領域について、走行可能の可否を環境地図に登録することができる。このため、移動体に揺動等が生じても、未計測となる領域が生じることを減少させることができる。また、視野全体の評価を行うことでいち早く路面状態及び障害物を検知することができる。
これにより、センサを増加したり高性能化させたりすることなく、コスト増加を抑えながら、広範囲に亘って路面状態及び障害物を検出することができる。そして、路面との仰角が小さくなる高速走行を行う場合でも正確な環境地図を生成することができ、安全な自律走行を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る環境地図生成制御装置を備えた無人車両の概略構成図、
図2には当該無人車両が搭載するコンピュータユニットの制御構成を示すブロック図がそれぞれ示されており、以下同図に基づき、移動体の構成について説明する。
図1に示すように、無人車両(UGV:Unmanned Ground Vehicle)1は、図示しない遠隔操縦装置の指示に応じた走行を行う、自律型移動体である。
【0018】
当該無人車両1には、自己の位置を計測するためのGPS(Global Positioning System)受信機2、自己の姿勢を計測するためのジャイロセンサ4が搭載されている。また、無人車両1には、車両の操舵を行うステアリング6、車両の駆動力を操作するアクセル8が設けられており、それぞれに操作量を調整可能なアクチュエータ6a、8aが設けられている。
さらに、無人車両1には、屋根部の先端部分にLRF10(測距手段)が固定されている。当該LRF10は屋根部先端から車両前方の路面に向けてレーザを照射し測距を行うことで、主に路面状態を検出するLRFである。当該LRF10は、車両前方の路面において進行方向に並んだ4つの範囲にて車両幅方向に走査する4つのレーザを備えた、4ラインLRFである。なお、
図1では、1ライン分のレーザ照射範囲のみを示している。
【0019】
当該LRF10は、パルスレーザを照射し、対象物に当たり反射した光を半導体からなる受光素子により受光して、照射から受光までの時間差から距離を測定するものである。
そして、無人車両1には、自律走行を制御するためのコンピュータユニット20が搭載されており、当該コンピュータユニット20は、図示しない遠隔操縦装置の指示を受け、各種センサ等からの情報に基づき上記アクチュエータ6a、8aを操作して無人車両1を走行させるものである。
【0020】
図2に、当該コンピュータユニット20内の制御構成がブロック図で示されており、以下同図に基づき、当該コンピュータユニット20の構成について説明する。
図2に示すようにコンピュータユニット20内では、LAN等の通信線を介して各種センサと各種制御部と接続されている。当該コンピュータユニット20は、大別すると環境認識・自己位置計測部22と車両制御部24とを有している。
【0021】
そして、環境認識・自己位置計測部22は、自己位置評定部26、LRFデータ処理部28、及び環境地図生成部30を有している。
自己位置評定部26は、GPS受信機2からの自己位置情報及びジャイロセンサ4からの自己姿勢情報に基づき自己位置を評定する機能を備えている。
また、LRFデータ処理部28は、LRF10からの測距情報を処理する機能を備えている。
【0022】
これら自己位置評定部26及びLRFデータ処理部28にて処理された情報は環境地図生成部30に送られ、当該環境地図生成部30は、取得した情報に基づき、無人車両1の周辺における環境地図を生成する機能を有している。
一方、車両制御部24は、経路生成部32及び車両操作部34を有している。
経路生成部32は、環境認識・自己位置計測部22の自己位置評定部26において評定された自己位置情報及び環境地図生成部30にて生成された環境地図情報を取得し、図示しない遠隔操縦装置の指示に応じた経路を生成する機能を備えている。
【0023】
また、車両制御部24は、当該経路生成部32において生成された経路を走行するのに必要な操舵量や駆動力を算出する車両操作部34を有している。当該車両操作部34は、算出した操舵量及び駆動力に応じたステアリング操作及びアクセル操作を行うべく対応するアクチュエータ6a、8aを制御する。
ここで、環境認識・自己位置計測部22のLRFデータ処理部28においては、LRF10により検出された測距データから路面状態及び障害物の有無を判定し、環境地図生成部30において、環境地図上で対応する領域に当該判定結果を反映させて環境地図を生成している。
【0024】
以下、当該環境認識・自己位置計測部22のLRFデータ処理部28及び環境地図生成部30において実行される路面状態及び障害物の検出制御及び環境地図の生成制御について説明する。
ここで
図3〜6を参照すると、無人車両の進路上の路面状態及び障害物に応じたLRF10による受光パルス波形の変化についての説明図が示されており、以下これらの図に基づいて各状態における測距データについて説明する。
【0025】
まず、
図3には、無人車両1の進路上の路面が平坦路である場合の受光パルス波形について示されている。
図3に示すように、LRF10から照射されたレーザは遠方に向かうほど拡がりをもち、ある範囲の視野をもって路面に到達する。LRF10が備える受光素子は路面から反射したレーザを受光すると電圧値が上がり
図3に示すような波形を示す。当該電圧値が所定の閾値を超えた時点を受光開始時点とし、LRF10からレーザを照射した時点から受光開始時点までの時間から測距値Rが求められる。そして、当該パルス波形のパルス幅に相当する、受光開始時点から受光パルスが閾値を下回るまでの閾値超越時間ΔTは、視野の幅(x方向の幅)に対応している。なお、以下平坦路における閾値超越時間ΔTを平坦視野幅tbとする。当該平坦視野幅tbは無人車両1の姿勢角、LRF10の高さ位置及び照射されるレーザの光軸の角度等から幾何学的に算出することができる値である。
【0026】
次に、
図4には、無人車両1の進路上の路面に小さな障害物がある場合の受光パルス波形について示されている。
図4に示すように、LRF10から照射されたレーザの視野内に、当該視野内に収まる程度の小さな障害物があると、当該障害物の高さに応じて受光パルスの電圧値の立ち上がりが一部途切れることとなる。従って、この場合の受光パルス波形では、第1閾値超越時間ΔT1と第2閾値超越時間ΔT2からなる2つの立ち上がりが生じることとなる。このため
図4に示すように、レーザの照射から第1の立ち上がりの開始時点までの第1測距値R1と、第2の立ち上がりの開始点までの第2測距値R2が計測されることとなる。
【0027】
続いて
図5には、無人車両1が平坦路から上り坂に差し掛かる場合の受光パルス変化について示されている。
図5に示すように、平坦路にある無人車両1のLRF10からレーザが上り坂に照射されると、レーザの光軸に対する路面の仰角は平坦路の場合よりも大きくなる。このため、受光パルスの立ち上がりは1つであるが閾値超越時間ΔTは平坦路の場合よりも短くなり、計測される視野幅(計測視野幅)は平坦視野幅tbより狭くなる。
【0028】
また、視野内に当該視野の範囲を超える大きな障害物がある場合も、同様に受光パルスの立ち上がりが1つでありながら、計測視野幅が平坦視野幅tbより狭くなる。
最後に
図6には、無人車両1が平坦路から下り坂に差し掛かる場合の受光パルス変化について示されている。
図6に示すように、平坦路にある無人車両1のLRF10からのレーザが下り坂に照射されると、レーザの光軸に対する路面の仰角は平坦路の場合よりも小さくなる。このため、受光パルスの立ち上がりは1つであるが閾値超越時間ΔTは平坦路の場合よりも長くなり、計測視野幅は平坦視野幅tbより広くなる。
【0029】
(LRFデータ処理)
環境認識・自己位置計測部22は、LRFデータ処理部28において、測距値に基づく障害物の判定に加えて、以上のようなLRF10からのレーザの視野と路面状態の関係に基づき計測視野内の路面状態の判定を行う。LRFデータ処理部28は、上記
図3で示した平坦視野幅を算出し(平坦視野幅算出手段)、測距値の数及び計測視野幅と比較することで路面状態を判定する(測距情報処理手段)。
【0030】
具体的には、
図7、8にLRFデータ処理部において実行されるLRFデータ処理を示すフローチャートが示されており、以下同フローチャートに基づきLRFデータ処理について説明する。なお、
図7、8では、LRF10から照射した1パルス分のレーザにより得られる測距データについて行う処理を示しており、LRFデータ処理部28は同処理を得られた測距データ毎に繰り返し行うものである。
【0031】
まず、
図7のステップS10として、LRFデータ処理部28は、LRF10により測距された計測点における測距データを、ジャイロセンサ4により検出される無人車両1の姿勢角に基づき環境地図の生成に合わせた座標情報へ座標変換する。例えば、LRF10により測距される計測点の測距データは距離と角度を有しており、当該測距データをx、y、zの直交3軸からなるデカルト座標系に座標変換する。なお、上記
図4に基づき説明したように、測距値が2つ得られた場合には、第1測距値R1を座標変換する。
【0032】
続くステップS11において、LRFデータ処理部28は、隣接する計測点間の高さ(z成分)の差分を算出して、当該差分が予め定めた所定の差分より大であるか否かを判別することで、障害物の有無を判定する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち隣接点との差分がない又は差分が小さい場合は、ステップS12に進む。
ステップS12において、LRFデータ処理部28は、当該計測点は障害物を検出するものではなく走行可能であると判断し、計測点評価結果値Aとして、走行可能であることを示す値1を入力する(A=1)。
【0033】
一方、上記ステップS11の判別結果が真(Yes)である場合、即ち隣接点との差分が大きく変化しているような場合は、ステップS13に進む。
ステップS13においてLRFデータ処理部28は、当該計測点はなんらかの障害物を検出していると判断し、計測点評価結果値Aとして、障害物があることを示す値2を入力する(A=2)。
LRFデータ処理部28はここまでの上記ステップS10〜S13において計測点の評価を行っており、ここまでの処理を計測点評価処理という。そして、以下
図8に示すステップS14からは計測した視野についての評価を行うものであり、以下の処理を計測視野評価処理という。
【0034】
図8のステップS14において、LRFデータ処理部28は、照射したレーザ1パルスに対し、受光して得られた測距値が1つであるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち上記
図4に基づき説明したように、レーザ1パルスに対し、受光パルスの立ち上がりが2つ以上あり、測距値が2つ以上得られた場合にはステップS15に進む。
ステップS15において、LRFデータ処理部28は、視野内に小さな障害物が含まれると判断し、計測視野評価結果値Bとして障害物があることを示す値4を入力する(B=4)。
【0035】
一方、上記ステップS14の判別結果が真(Yes)である場合、即ち測距値が1つである場合には、ステップS16に進む。
ステップS16において、LRFデータ処理部28は、平坦視野幅tbを算出するとともに、得られた測距データからパルス幅に相当する閾値超越時間ΔTを算出する。
ステップS17において、LRFデータ処理部28は、閾値超越時間ΔTが平坦視野幅tbに相当する時間に所定値δtを加算した値よりも大であるか否かを判別する。当該所定値δtは誤差範囲を定める値であり、当該所定値δtの範囲内であれば平坦視野幅tbと同一な範囲とみなすものである。当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち計測視野幅が、上記
図6に基づき説明したように平坦視野幅tbの範囲よりも広い場合には、ステップS18に進む。
【0036】
ステップS18では、計測視野内は下り坂であると判断し、計測視野評価結果値Bとして下り坂であることを示す値3を入力する(B=3)。
一方、ステップS17の判別結果が偽(No)である場合は、ステップS19に進む。
ステップS19において、LRFデータ処理部28は、閾値超越時間ΔTが平坦視野幅tbに相当する時間に所定値δtを減算した値よりも小であるか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち計測視野幅が、上記
図5に基づき説明したように平坦視野幅tbの範囲よりも狭い場合には、ステップS20に進む。
【0037】
ステップS20において、LRFデータ処理部28は、計測視野内は上り坂であるか大きい障害物があると判断し、計測視野評価結果値Bとして上り坂又は障害物であることを示す値2を入力する(B=2)。
一方、ステップS19の判別結果が偽(No)である場合、即ち計測視野幅が、上記
図3に基づき説明したように平坦視野幅tbと同一の範囲内(tb−δt≦ΔT≦tb+δt)である場合は、ステップS21に進む。
【0038】
ステップS21において、LRFデータ処理部28は、計測視野内は平坦であると判断し、計測視野評価結果値Bとして平坦領域であることを示す値1を入力する(B=1)。
上記ステップS15、S18、S20、S21において、計測視野評価結果値Bが入力された後はステップS22に進む。
ステップS22において、LRFデータ処理部28は、計測点評価結果値A及び計測視野評価結果値Bからなる評価結果データを環境地図生成部30へ送信し当該処理をリターンする。
【0039】
(環境地図生成処理)
次に、環境地図生成部30が上記LRFデータ処理部28から受信した評価結果データに基づき環境地図を生成する(環境地図生成手段)。以下、当該環境地図生成部30において実行される環境地図の生成制御について説明する。
ここで、
図9を参照すると、環境地図生成部において実行される環境地図生成処理の流れについてのフローチャートが示されており、以下このフローチャートに沿って説明する。
【0040】
まず、ステップS30において、環境地図生成部30は上記LRFデータ処理部28から受信した計測点評価結果値Aが走行可能状態を示す値1であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち計測点評価結果値Aが障害物であることを示す値2である場合は、ステップS31に進む。
ステップS31において、環境地図生成部30は、環境地図上において計測点に対応する位置(グリッド)のみに計測点評価結果値Aの結果を登録する。具体的には、計測点に対応した1つのグリッドについて障害物があり、走行不可能であることを登録する。
【0041】
一方、計測点評価結果値Aが走行可能状態を示す値1であり、上記ステップS30の判別結果が真(Yes)である場合は、ステップS32に進む。
ステップS32において、環境地図生成部30は、上記LRFデータ処理部28から受信した計測視野評価結果値Bが平坦領域を示す値1であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合はステップS33に進む。
【0042】
ステップS33において、環境地図生成部30は、計測視野評価結果値Bが上り坂を示す値2であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち計測視野評価結果値Bが下り坂を示す値3又は障害物があることを示す値4である場合には、上述したステップS31に進む。この場合、ステップS31では計測点に対応するグリッドのみに計測点評価結果値A(=1)に応じて走行可能であることを登録する。
【0043】
一方、ステップS33の判別結果が真(Yes)である場合、即ち計測視野評価結果値Bが上り坂又は障害物を示す値2である場合は、ステップS34に進む。
ステップS34において、環境地図生成部30は、計測視野の範囲におけるグリッドについてのみ走行可能領域として登録する。ここでの計測視野は、
図5に示したように平坦視野幅tbに対し所定の割合(α%)狭まっている。
【0044】
また、計測視野評価結果値Bが平坦領域を示す値1であり、上記ステップS32の判別結果が真(Yes)であった場合は、ステップS35に進む。
ステップS35において、環境地図生成部30は、当該計測視野内のグリッド全てを走行可能領域として登録する。このときの計測視野は
図3に示したとおり平坦視野幅と同一となる。
環境地図生成部30は、上記ステップS31、S34、S35において対応するグリッドに走行可能又は走行不可能の登録をした後当該処理をリターンする。このように、環境地図生成部30は、無人車両1の走行に伴い以上の処理を繰り返していくことで、環境地図を生成していく。
【0045】
ここで、
図10、
図11を参照すると、
図10には視野の評価を行
わず計測点の評価のみを
行った場合の環境地図生成の変遷が示されており、
図11には本実施形態のように視野の評価も行った場合の環境地図生成の変遷が示されている。以下これらの図に基づき本実施形態に係る移動体の環境地図生成制御装置の作用効果について説明する。なお、
図10、
図11に示す環境地図はx、y方向に等間隔にグリッドが区画されており、破線で示す領域が4ラインLRF10のうち最も手前側の1ライン分のレーザ1パルスに対応する平坦視野幅を示しており、ハッチングされた領域が走行可能と登録された領域、塗りつぶされた領域が走行不可能と登録された領域をそれぞれ示している。LRF10は無人車両1の走行に伴い車幅方向(y方向)に走査を行っていく。
【0046】
まず、
図10(a)(b)に示すように、視野の評価を行わず計測点のみの評価を行った場合は、計測点は計測視野の最も手前に位置することから、これに対応するグリッドのみ(1行分)について走行可能の可否が登録されていく。このため、
図10(c)に示すように、無人車両に揺動等が生じると、評価されない未計測なグリッドが多数生じてしまう。
一方、
図11(a)に示すように、本実施形態では、計測点の評価に加えて計測視野全体の評価も行っていることで、1度の走査で広範囲(x方向に4行分)のグリッドについて、走行可能の可否を登録することができる。そして、
図11(b)に示すように、無人車両1の走行に伴い前回評価した領域と一部重複しながら、前方へと走行可能の可否を更新していくこととなる。このため
図11(c)に示すように、無人車両1に揺動等が生じても、未計測なグリッドが生じることを防ぐことができる。
【0047】
また、計測視野の評価を行うことで
図11(b)(c)に示すように、計測点よりも前方に上り坂や障害物があることを、いち早く検出することができる。
このように、LRF10のレーザの視野と受光パルスとの関係を利用することで、LRF10等のセンサを増加したり、高性能化させたりすることなく、コスト増加を抑えながら、広範囲に亘って路面状態及び障害物を検出することができる。これにより、路面との仰角が小さくなる高速走行を行う場合でも正確な環境地図を生成することができ、安全な自律走行を実現することができる。
【0048】
以上で本発明に係る実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
上記実施形態では、移動体を無人車両としているが、移動体は車両に限られるものではなく、例えば自律歩行をするロボット等でも構わない。
また、移動体は自律型移動体に限られるものではなく、遠隔操縦又は運転者が自ら搭乗して運転するような車両やロボット等にも本発明を適用することができる。例えば、運転者が搭乗する自動車において、本発明により生成した環境地図を用いて周辺環境を認識し、当該周辺環境に応じて運転支援したり、衝突回避のために警告表示をしたり、自動的にブレーキ制御したりしてもよい。