特許第6267481号(P6267481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リコーエレメックス株式会社の特許一覧 ▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000002
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000003
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000004
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000005
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000006
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000007
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000008
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000009
  • 特許6267481-外観検査装置および外観検査方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267481
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】外観検査装置および外観検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20180115BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20180115BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20180115BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G01N21/88 J
   G01N21/956 Z
   G01B11/30 A
   G06T1/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-217683(P2013-217683)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78960(P2015-78960A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006932
【氏名又は名称】リコーエレメックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓史
(72)【発明者】
【氏名】本宮 祥之亮
(72)【発明者】
【氏名】多田 拡太郎
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124553(WO,A1)
【文献】 特開2013−096972(JP,A)
【文献】 米国特許第04467214(US,A)
【文献】 特開昭57−006307(JP,A)
【文献】 特開2012−194108(JP,A)
【文献】 特開2011−141260(JP,A)
【文献】 特開2010−181320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトシートによって照らされることで、検査対象物の第一の検査対象面と、当該第一の検査対象面と交叉した前記検査対象物の第二の検査対象面と、に亘って形成された一連の線状の光であって、前記第一の検査対象面および前記第二の検査対象面における照射位置が移動する光を、当該照射位置に対して固定された位置から撮像した画像を、順次取得する撮像部と、
前記第一の検査対象面で二次元に離散化された各点に対応した前記線状の光の画像のずれに基づいて前記各点での輝度値を決定して、二次元の第一の疑似画像データを生成する第一の疑似画像データ生成部と、
前記第二の検査対象面で二次元に離散化された各点に対応した前記線状の光の画像のずれに基づいて前記各点での輝度値を決定して、二次元の第二の疑似画像データを生成する第二の疑似画像データ生成部と、
前記第一の疑似画像データおよび前記第二の疑似画像データのうち一方から、基準となる疑似画像データを特定することにより、当該一方および他方の、前記光の移動方向における位相を特定する位相特定部と、
前記位相特定部によって特定された位相に基づいて前記第一の疑似画像データおよび前記第二の疑似画像データのうち他方を画像処理して当該他方での異常領域を決定する異常領域決定部と、
を備えた、外観検査装置。
【請求項2】
前記第一の検査対象面の前記第二の検査対象面から離れた第一端部と前記第二の検査対象面の前記第一の検査対象面から離れた第二端部とに亘るライトシートを照射する光照射部と、
前記撮像部としての前記第一の検査対象面に面した第一の撮像部および前記第二の検査対象面に面した第二の撮像部と、
を備えた、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記検査対象物はタイヤであり、前記第一の検査対象面は前記タイヤの接地面であり、前記第二の検査対象面は前記タイヤの前記接地面と隣接した側面である、請求項1または2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記基準となる疑似画像データは、前記側面に設けられた文字の画像に対応したデータである、請求項に記載の外観検査装置。
【請求項5】
外観検査装置を構成するコンピュータが、
ライトシートによって照らされることで、検査対象物の第一の検査対象面と、当該第一の検査対象面と交叉した前記検査対象物の第二の検査対象面と、に亘って形成された一連の線状の光であって、前記第一の検査対象面および前記第二の検査対象面における照射位置が移動する光を、当該照射位置に対して固定された位置から撮像した画像を、順次取得するステップと、
前記第一の検査対象面で二次元に離散化された各点に対応した前記線状の光の画像のずれに基づいて前記各点での輝度値を決定して、二次元の第一の疑似画像データを生成するステップと、
前記第二の検査対象面で二次元に離散化された各点に対応した前記線状の光の画像のずれに基づいて前記各点での輝度値を決定して、二次元の第二の疑似画像データを生成するステップと、
前記第一の疑似画像データおよび前記第二の疑似画像データのうち一方から、基準となる疑似画像データを特定することにより、当該一方および他方の、前記光の移動方向における位相を特定するステップと、
特定された前記位相に基づいて前記第一の疑似画像データおよび前記第二の疑似画像データのうち他方を画像処理して当該他方での異常領域を決定するステップと、
を実行する、外観検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査装置および外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂光切断法によって、検査対象面の三次元形状に対応した画像を得ることが可能な外観検査装置が知られている(例えば、特許文献1)。この種の外観検査装置では、検査対象面に照射された線状の光の位置や形状に基づいて検査対象領域の各位置での高さが算出され、さらに当該高さに応じた各位置での輝度値が設定されて二次元の疑似画像データが生成され、当該疑似画像データに基づいて異常領域の有無の判別、すなわち外観検査が行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−141260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の外観検査装置では、疑似画像データにおいて位置(位相)を特定するのに手間がかかる場合があった。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、一例としては、疑似画像データの位置(位相)を特定しやすい外観検査装置および外観検査方法を得ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかる外観検査装置にあっては、ライトシートによって照らされることで、検査対象物の第一の検査対象面と、当該第一の検査対象面と交叉した検査対象物の第二の検査対象面と、に亘って形成された一連の線状の光であって、第一の検査対象面および第二の検査対象面における照射位置が移動する光を、当該照射位置に対して固定された位置から撮像した画像を、順次取得する撮像部と、第一の検査対象面で二次元に離散化された各点に対応した線状の光の画像のずれに基づいて各点での輝度値を決定して、二次元の第一の疑似画像データを生成する第一の疑似画像データ生成部と、第二の検査対象面で二次元に離散化された各点に対応した線状の光の画像のずれに基づいて各点での輝度値を決定して、二次元の第二の疑似画像データを生成する第二の疑似画像データ生成部と、第一の疑似画像データおよび第二の疑似画像データのうち一方から、基準となる疑似画像データを特定することにより、当該一方および他方の、光の移動方向における位相を特定する位相特定部と、位相特定部によって特定された位相に基づいて第一の疑似画像データおよび第二の疑似画像データのうち他方を画像処理して当該他方での異常領域を決定する異常領域決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、一例としては、疑似画像データの位置(位相)を特定しやすい外観検査装置および外観検査方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかる外観検査装置の一例が示された模式的な平面図である。
図2図2は、図1の視線IIからの側面図である。
図3図3は、図1の視線IIIからの側面図である。
図4図4は、実施形態にかかる外観検査装置で得られた検査対象領域に当てられた線状の光の一例が示された模式図である。
図5図5は、実施形態にかかる外観検査装置の一例が示された模式的なブロック図である。
図6図6は、実施形態にかかる外観検査装置の制御部の一例が示された模式的なブロック図である。
図7図7は、実施形態にかかる外観検査装置による検査方法の一例が示されたフローチャートである。
図8図8は、実施形態にかかる外観検査装置で得られた疑似画像データの一例の一部が示された模式図である。
図9図9は、実施形態にかかる外観検査装置の処理により表示装置の表示画面に表示された疑似画像ならびに異常領域の画像の一例が示された模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、一例として、外観検査装置1は、検査対象物100を撮像した画像に基づいて、当該検査対象物100の検査対象面101,102(本実施形態では、一例として、特に、検査対象面101)の検査を行う。外観検査装置1は、図1〜3,5に示されるように、光源2や、撮像部31,32、制御部40、移動装置5、表示装置6等を備える。
【0010】
本実施形態では、図1〜4に示されるように、タイヤが検査対象物100の一例であり、当該タイヤの外周面(トレッド面、接地面)が検査対象面101(第一の検査対象面)の一例であり、外周面と隣接した一つまたは二つ(本実施形態では、一例として一つ)の側面が検査対象面102(第二の検査対象面)の一例である。また、検査対象物100は、ドーナツ状の外観を呈し、検査対象面101は、略円筒面状であり、検査対象面102は、略円環状かつ略平面状である。検査対象物100は、移動装置5によって検査対象物100の中心軸Ax(回転軸)を中心として回転される。なお、検査対象物100としてのタイヤはあくまで一例であって、本発明は例えばシート等のタイヤ以外の検査対象物100にも適用可能である。
【0011】
光源2(光照射部)は、図1〜3に示されるように、ライトシートLS(シート状の光、平坦なカーテン状の光、スリット光、一例としてはレーザーライトシート)を出射する。図1,2,4に示されるように、検査対象面101,102には、光源2から出射されたライトシートLSに照らされることで、線状の光L(の筋)が形成される。線状の光Lは、検査対象面101,102のそれぞれで、検査対象面101,102の幅方向(中心軸Axの軸方向または径方向)に沿って延びている。ライトシートLSは、本実施形態では、一例として、中心軸Axを含む平面に沿っている。光源2は、図3に示されるように、検査対象面101および検査対象面102と交叉する方向に位置され、検査対象面101上に位置されるとともに、検査対象面102上にも位置されている。本実施形態では、一例として、光源2は、検査対象面101,102で共用され、検査対象面101,102上にそれぞれ設定される線状の検査対象領域A1,A2を照らしている。光源2は、例えば、輝線照射用のレーザ光源等である。
【0012】
撮像部31,32は、図1〜3に示されるように、ライトシートLSが沿う方向と交叉する方向(本実施形態では、一例としてR方向と鋭角をなす方向)から検査対象領域A1,A2を含む検査対象面101,102の細長い領域を撮像する。撮像部31は、検査対象面101の検査対象領域A1を撮像し、撮像部32は、検査対象面102の検査対象領域A2を撮像する。図4に示される撮像部31の視線では、右側が光源2に近い側、左側が光源2から遠い側である。撮像部31,32は、例えば、二次元に配列された光電変換素子(光電変換部)を有したエリアセンサ(固体撮像素子、例えば、CCD(charge coupled device)イメージセンサや、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサ等)である。
【0013】
ここで、図4を参照して、仮に検査対象面101に凹凸(X方向に沿った凹凸)が無かった場合、検査対象面101上の光L(輝線)は直線状である。しかし、検査対象面101が凸部を有していた場合、検査対象面101が平面であった場合の光Lを基準線RL(直線、基準位置)とすると、当該凸部に当たった光Lは、基準線RLから光源2側(図4の例では右側)にずれる。また、逆に、検査対象面101が凹部を有していた場合、当該凹部に当たった光Lは、基準線RLから光源2とは反対側(光源2から遠い側、図4の例では左側)にずれる。すなわち、光Lの位置(形状、基準線RLからのずれ)によって、検査対象面101の凹凸ならびに当該凹凸の程度(凸部の高さ、凹部の深さ、法線方向における位置)を判別することができる。なお、ライトシートLSの向きならびに撮像部31,32による撮像方向は、種々に設定することが可能である。
【0014】
移動装置5は、検査対象物100の検査対象面101を、光L(検査対象領域A)の幅方向(検査対象面101,102の長手方向、中心軸Axの周方向、図1中のC方向、タイヤの周方向)に、略一定の速度で移動させ(搬送し)、検査対象面101における検査対象領域A1,A2を移動させる。なお、検査対象物100が固定され、光源2や撮像部31,32等が検査対象面101に沿って移動する構成(移動装置5によって動かされる構成)であってもよい。
【0015】
また、外観検査装置1は、図5に示されるように、制御部40(例えばCPU(central processing unit)等)や、ROM41(read only memory)、RAM42(random access memory)、SSD43(solid state drive)、光照射コントローラ44、撮像コントローラ45、移動コントローラ46、表示コントローラ47等を備えることができる。光照射コントローラ44は、制御部40からの制御信号に基づいて、光源2の発光(オン、オフ)等を制御する。撮像コントローラ45は、制御部40からの制御信号に基づいて、撮像部31,32による撮像を制御する。移動コントローラ46は、制御部40から受けた制御信号に基づいて、移動装置5を制御し、検査対象物100の搬送(開始、停止、速度等)を制御する。表示コントローラ47は、制御部40からの制御信号に基づいて、表示装置6を制御する。また、制御部40は、不揮発性の記憶部としてのROM41やSSD43等にインストールされた(記憶された)プログラム(アプリケーション)を読み出して実行する。RAM42は、制御部40がプログラムを実行して種々の演算処理を実行する際に用いられる各種データを一時的に記憶する。なお、図5に示されるハードウエアの構成はあくまで一例であって、例えばチップやパッケージにする等、種々に変形して実施することが可能である。また、各種演算処理は、並列処理することが可能であり、制御部40等は、並列処理が可能なハードウエア構成とすることが可能である。
【0016】
また、本実施形態では、一例として、制御部40は、ハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働によって、外観検査装置1の少なくとも一部として機能(動作)する。すなわち、図6に示されるように、制御部40は、光照射制御部40aや、撮像制御部40b、移動制御部40c、画像処理部40d(疑似画像データ生成部40d1,前処理部40d2,補間処理部40d3,位相特定部40d4,異常領域決定部40d5)、表示制御部40e等として機能する。光照射制御部40aは、光照射コントローラ44を制御する。撮像制御部40bは、撮像コントローラ45を制御する。移動制御部40cは、移動コントローラ46を制御する。画像処理部40dは、撮像部31,32が取得した疑似画像データを画像処理する。表示制御部40eは、表示装置6(例えば、LCD(liquid crystal display)、OELD(organic electroluminescent display)等)を制御する。
【0017】
ここで、本実施形態では、一例として、画像処理部40dは、複数の検査対象領域A1,A2の各点(検査対象領域A1,A2の長手方向の各点)に対応した光Lの画像の基準線RL(基準位置)からのずれに応じて、当該各点での輝度値を決定することにより、二次元の疑似画像データImv1,Imv2(図8,9参照)を生成する。一例として、検査対象面101に対応した疑似画像データImv1(第一の疑似画像データ)の生成に関し、画像処理部40dは、各位置での基準線RLから光源2に近い側(図4では右側)へのずれが大きいほど輝度値を高く設定し(画素を明るくし)、光源2から遠い側(図4では左側)へのずれが大きいほど輝度値を低く設定する(画素を暗くする)。画像処理部40dは、検査対象面102に対応した疑似画像データImv2(第二の疑似画像データ)についても同様の処理を行う。このような処理により、疑似画像データImv1,Imv2は、検査対象領域A1,A2の二次元の外観に近い画像となる。画像処理部40dは、疑似画像データImv1,Imv2を生成する疑似画像データ生成部40d1(第一の疑似画像データ生成部、第二の疑似画像データ生成部)の一例である。疑似画像データImv1,Imv2は、検査対象面101,102の凹凸の状態(大きさや、位置等)を視覚的に判断しやすいという利点を有している。表示制御部40eは、疑似画像データImv1が表示されるよう、表示装置6を制御することができる。
【0018】
また、本実施形態では、一例として、画像処理部40dは、撮像された画像から得られた疑似画像データImv1,Imv2と、所定の記憶部(例えば、SSD43や、ROM41等)に記憶された基準となる疑似画像データとを比較して、各点の輝度値の差異を取得する。そして、画像処理部40dは、輝度値の差異が所定の閾値と同じかあるいは超えている点(画素)の群(集合、かたまり、領域)の大きさが、所定数(画素数あるいは面積の閾値)と同じかあるいはより多かった場合には、当該領域を異常領域と決定する。なお、疑似画像データImv1,Imv2と基準となる疑似画像データとの比較は、輝度値によって二値化処理したデータ同士を比較してもよい。
【0019】
次に、図7を参照して、本実施形態にかかる外観検査装置1による異常領域の特定処理の一例について説明する。具体的に、制御部40は、まず、画像処理部40d(疑似画像データ生成部40d1)として機能し、複数の検査対象領域A1,A2の各点(画素)についての基準線RL(基準位置)に対する光Lの位置(ずれ)から、当該各点の輝度値を決定し、二次元の疑似画像データImv1,Imv2を生成する(ステップS1)。このステップS1で、画像処理部40dは、一例として、各点の輝度値を、ずれの大きさに応じて線形的に決定することができる。
【0020】
次に、制御部40は、画像処理部40d(前処理部40d2)として機能し、画像処理の前処理を実行する(ステップS2)。前処理としては、例えば、ノイズ除去や、フィルタリング(平滑化)、穴埋め処理等がある。
【0021】
次に、制御部40は、画像処理部40d(補間処理部40d3)として機能し、輝度値が無い画素(データ欠損領域の画素)について、当該画素の輝度値を、その周囲の画素の輝度値から補間して決定する(ステップS3)。一例として、検査対象面101,102に比較的深い凹部(図示されず)が存在した場合、当該凹部内に形成された線状の光Lが、当該凹部の縁に遮られて撮像部31,32に入らない場合がある。また、検査対象面101,102に比較的高い凸部(図示されず)が存在した場合、当該凸部の死角となる領域には光Lが到達しない場合がある。このような場合は、対応する画素の輝度値が無い状態となる。輝度値が無いと、疑似画像データの画像処理の演算に支障を来したり、疑似画像データに基づいて表示装置6で表示される画像に、欠損(例えば、黒い領域)が含まれたりすることがある。そこで、ステップS3では、このような不都合が生じないように、輝度値が無いデータ欠損領域の画素の輝度値を、その周囲の画素の輝度値から補間する。
【0022】
次に、制御部40は、画像処理部40d(位相特定部40d4)として機能し、撮像部32で撮像された検査対象面102(タイヤの側面)の画像から、疑似画像データImv2(図8参照)の位相、ひいては、疑似画像データImv1(図9参照)の位相を特定する(ステップS4)。このステップS4では、検査対象物100がタイヤ(例えば自動車等の車両用のタイヤ)である場合、図8に例示されるような、検査対象面102(タイヤの側面)に設けられた文字(この例では「Y」)を示す形状(凹凸形状、ロゴ、マーク、印刷、刻印等)に対応した疑似画像データImcに基づいて、位相を特定することができる。すなわち、画像処理部40dは、疑似画像データImv2と、所定の記憶部(例えば、SSD43や、ROM41等)に記憶された基準となる疑似画像データ(基準画像データ、図示されず)とを用いて、パターンマッチング(例えば、テンプレートマッチング)を行う。具体的に、画像処理部40dは、例えば、疑似画像データImv2および基準となる疑似画像データのうち少なくとも一方を、検査対象面102の長手方向(中心軸Axの周方向、図8中の右方向、図1中のC方向、タイヤの周方向)に沿ってずらしながら(位置を変化させながら)、各位置(位相)での相関係数を取得する。そして、画像処理部40dは、相関係数が最も高い位置(位相)を取得する。これにより、画像処理部40dは、疑似画像データImv2の位相を特定することができる。疑似画像データImv1の取得されたタイミングと疑似画像データImv2の取得されたタイミングとは対応付けられている(疑似画像データImv1の位相は、疑似画像データImv2の位相と同じである)ため、画像処理部40dは、疑似画像データImv1の位相も特定することができる。なお、位相は、疑似画像データImcの重心となる点Pcや、エッジ(端部、角部)となる点Peの位置を基準として決定されうる。
【0023】
次に、制御部40は、画像処理部40d(異常領域決定部40d5)として機能し、異常領域を決定する(ステップS5)。このステップS5では、画像処理部40dは、上述したように、撮像された画像から得られた疑似画像データImv1と、所定の記憶部(例えば、SSD43や、ROM41等)に記憶された基準となる疑似画像データとを比較する。このステップS5での演算は、ステップS4で取得された位相に基づいて、疑似画像データImv1と基準となる疑似画像データとの位相が合わせられた状態で行われる。画像処理部40dは、この比較によって各点の輝度値の差異を取得する。そして、画像処理部40dは、輝度値の差異が所定の閾値と同じかあるいは超えている点(画素)の群(集合、かたまり、領域)の大きさが、所定数(画素数あるいは面積の閾値)と同じかあるいはより多かった場合に、当該領域を異常領域と決定する。なお、疑似画像データImv1と基準となる疑似画像データとの比較は、輝度値によって二値化処理したデータ同士を比較してもよい。また、画像処理部40dは、疑似画像データImv2についても、同様の演算処理を行って、異常領域を特定してもよい。
【0024】
次いで、制御部40は、表示制御部40eとして機能し、例えば、図9に示されるように、表示装置6の表示画面6aに、疑似画像200や、異常領域を示す画像201、位相(位置)を示す数値202(角度や、長さ、数値(指標)等、本実施形態では、一例として角度)等が表示されるよう、表示コントローラ47ひいては表示装置6を制御する(ステップS6)。
【0025】
以上、説明したように、本実施形態では、一例として、画像処理部40d(位相特定部40d4)は、疑似画像データImv2(第一および第二の疑似画像データのうち一方)から、基準となる疑似画像データImcを特定することにより、当該一方および他方の、光の移動方向における位相を特定する。よって、本実施形態によれば、一例としては、疑似画像データImv1を用いて位相を特定する場合に比べて、より迅速にあるいはより容易に位相を特定することができる場合がある。
【0026】
また、例えばタイヤのような検査対象物100を外観検査装置1にセットする際に、検査対象面101を高精度に位置合わせする作業を行うと、検査に手間がかかる、すなわち、単位時間あたりに検査できる検査対象物100の数が減る場合がある。この点、本実施形態では、上記一例として、検査対象面102の疑似画像データImv2について、基準となる疑似画像データに基づいて、位相(位相差、ずれ)を取得する。よって、本実施形態によれば、一例としては、検査対象物100を外観検査装置1にセットする際の、位置合わせ作業(位置決め作業)の精度を低くできたり、位置決め作業を無くしたりすることができ、よって、一例としては、検査の手間や、検査に要する時間が減りやすい。
【0027】
また、本実施形態では、一例として、光源2は、検査対象面101(第一の検査対象面)と検査対象面102(第二の検査対象面)とに亘るライトシートLSを照射する。よって、本実施形態によれば、一例としては、検査対象面101,102のそれぞれに光源2を設けた場合に比べて、より構成が簡素化されやすい。また、一例としては、検査対象面101,102のそれぞれに光源2を設けた場合に比べて、光源の設置作業の手間が減りやすい。
【0028】
また、本実施形態では、一例として、撮像部として、検査対象面101(第一の検査対象面)に面した撮像部31(第一の撮像部)と、検査対象面102(第二の検査対象面)に面した撮像部32(第二の撮像部)と、を備えた。よって、本実施形態によれば、一例としては、検査対象面101,102の両方を撮像する撮像部を用いた場合に比べて、より容易にあるいはより精度良く、検査対象面101,102の位相を特定できる場合がある。
【0029】
また、本実施形態では、一例として、検査対象物100はタイヤであり、検査対象面101(第一の検査対象面)はタイヤの接地面であり、検査対象面102(第二の検査対象面)はタイヤの接地面と隣接した側面である。すなわち、本実施形態にかかる外観検査装置1は、一例としては、タイヤの外観検査装置として構成することができる。
【0030】
また、本実施形態では、一例として、基準となる疑似画像データは、検査対象面102(第二の検査対象面)に設けられた文字の画像に対応したデータである。よって、本実施形態によれば、一例としては、タイヤの側面に設けられた文字の画像を利用して、より容易にあるいはより精度良く、検査対象面101,102の位相を特定できる場合がある。
【0031】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例である。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、実施形態の構成や形状は、部分的に他の構成や形状と入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、角度、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。例えば、文字の画像に替えて、数字の画像や、記号、ロゴ、模様等の画像を用いることができる。また、二つの側面(第二の検査対象面)で位相(位置)を検出した結果に基づいて、接地面(第一の検査対象面)で検出された異常領域の位相(位置)を特定することができる。
【0032】
また、別の例として、検査対象面に位相を特定する対象となる複数の異なる形状が配置(点在)されている場合には、より迅速に位相を特定することができる。検査対象面に位相を特定する対象となる形状が一つだけ配置されている場合、一周分の撮像が必要となる場合があるが、検査対象面に位相を特定する対象となる複数の異なる形状が配置されている場合には、各形状で位相を特定することができるため、当該形状が一つだけである場合に比べて、位相の特定に要する時間が短くなりやすい。
【符号の説明】
【0033】
1…外観検査装置、2…光源(光照射部)、31…撮像部(第一の撮像部)、32…撮像部(第二の撮像部)、40d1…疑似画像データ生成部(第一の疑似画像データ生成部、第二の疑似画像データ生成部)、40d4…位相特定部、40d5…異常領域決定部、100…検査対象物、101…検査対象面(第一の検査対象面、接地面)、102…検査対象面(第二の検査対象面、側面)、201…(異常領域の)画像、A1…検査対象領域(照射位置)、A2…検査対象領域(照射位置)、Imc…(基準となる)疑似画像データ、LS…ライトシート、L…(線状の)光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9