(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の第1実施形態の立体シート10においては、
図1及び
図2に示すように、第1不織布2と第2不織布3とが部分的に熱融着されて接合部4が形成されており、また、第1不織布2が、該接合部4に囲まれた非接合部6において第2不織布から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部5を多数形成している。このような基本構造は公知であり、第1実施形態の立体シート10における基本構造も、例えば、前述した特許文献1に記載の立体シートと同様の構造とすることができる。
【0011】
本発明の立体シートは、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する繊維処理剤が、立体シートを構成する第1不織布2及び第2不織布3の少なくとも何れか一方に含まれている。第1実施形態の立体シート10においては、第2不織布3のみに、この繊維処理剤が含まれている。また、繊維処理剤を含ませた第1又は第2不織布においては、それぞれ、熱融着繊維が、不織布のいずれかの部位に存在していればよいが、各不織布の平面方向の全域又は吸収性物品の着用者の液排泄部に対向配置される液排泄部対向部等の所望の範囲の全域に分布していることが好ましい。また、第1又は第2不織布が、繊維処理剤が付着した熱融着繊維を含む場合、その不織布は、この繊維処理剤が付着した熱融着繊維のみから構成されていてもよく、あるいは他の1種又は2種以上の繊維を付加的に含んでいてもよい。
【0012】
本発明の立体シートに用いられる前記の繊維処理剤は、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分、すなわちポリオルガノシロキサン、アルキルリン酸エステル、及び一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤を含有している。この3成分を含む繊維処理剤が付着した繊維は、熱処理を施すことにより、ポリオルガノシロキサンが、アルキル鎖を有するアニオン界面活性剤の繊維内部への浸透を促進するため、繊維の表面の親水度が熱処理によって低い値へと変化する。これは、ポリオルガノシロキサンのポリシロキサン鎖と、アニオン界面活性剤の持つ、アルキル鎖が不相溶なため、アニオン界面活性剤が、より馴染みやすい繊維内部へ、繊維が加熱溶融した際に浸透するために起こると考えられる。その中でも一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤は、アルキル基が嵩高で、親水基を包み込むようにして繊維内部へ浸透していくことが可能なため、ポリオルガノシロキサンの存在により繊維内部への浸透が促進されやすい。
これにより、本発明の立体シートの製造工程においては、第1不織布2と第2不織布3とを接合する前に、第1不織布2及び第2不織布3の少なくとも一方に前記繊維処理剤を含ませておくことによって、第1不織布2と第2不織布3とが、第1のロール11における凸部11aとヒートロール14との間で、加熱及び加圧されて接合部4が形成される際に、繊維処理剤を含む第1不織布2及び/又は第2不織布3は、接合部4に近ければ近いほど多くの熱量を受けて親水度が低下し、それによって、繊維処理剤を含む第1不織布2及び/又は第2不織布3に、接合部4に近づくにつれて親水度が低下する親水度の勾配が生じる。
【0013】
〔(A)成分〕
ポリオルガノシロキサンとしては、直鎖状のもの、架橋二次元又は三次元網状構造を有するものいずれも使用できる。好ましくは実質上直鎖状のものである。
【0014】
ポリオルガノシロキサンのうち好適なものの具体例は、アルキルアルコキシシランやアリールアルコキシシラン、アルキルハロシロキサンの重合物あるいは環状シロキサンであり、アルコキシ基としては、典型的にはメトキシ基である。アルキル基としては炭素数1以上18以下、好ましくは1以上8以下、特に1以上4以下の側鎖を有してもよいアルキル基が適当である。アリール基としては、フェニル基やアルキルフェニル基、アルコキシフェニル基等が例示される。アルキル基やアリール基に代えて、シクロヘキシル基やシクロペンチル基等の環状炭化水素基、ベンジル基のごときアラルキル基であってもよい。また、本発明で言うポリオルガノシロキサンは、界面活性剤の浸透をより促進させ、加熱により繊維表面の接触角をより高い目的にする観点から、親水性の高いPOE鎖で変性したポリオルガノシロキサンを含まない概念である。
【0015】
本発明において好ましい最も典型的なポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン等が挙げられ、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0016】
ポリオルガノシロキサンの分子量は、高分子量であることが好ましく、具体的には、重量平均分子量で好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下である。また、ポリオルガノシロキサンとして、分子量の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンを用いてもよい。分子量が異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンを用いる場合、そのうちの一種類は、重量平均分子量が、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下であり、他の一種類は、重量平均分子量が、好ましくは10万未満、より好ましくは5万以下、より好ましくは3万5千以下、更に好ましくは2万以下であり、また、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは5000以上である。また、重量平均分子量が10万以上のポリオルガノシロキサンと重量平均分子量が10万未満のポリオルガノシロキサンとの好ましい配合比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:10〜4:1、より好ましくは1:5〜2:1である。
【0017】
ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量はGPCを用いて測定される。測定条件は下記のとおりである。また、換算分子量の計算はポリスチレンで行う。
分離カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(カチオン)
溶離液:LファーミンDM20/CHCl
3
溶媒流速:1.0ml/min
分離カラム温度:40℃
【0018】
ポリオルガノシロキサンの繊維処理剤中の含有量は、熱処理による親水度の変化を大きくする観点から1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、不織布表面で液を吸収させやすい観点から30質量%以下が好ましく、20質量%以下が更に好ましい。例えばポリオルガノシロキサンの繊維処理剤中の含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0019】
ポリオルガノシロキサンとしては市販品を用いることもできる。例えば、信越シリコーン社製の「KF−96H−100万Cs」、東レ・ダウコーニング社製の「SH200 Fluid 1000000Cs」、また2種類のポリオルガノシロキサンを含有するものとしては、信越シリコーン社製の「KM−903」や、東レ・ダウコーニング社製の「BY22−060」を用いることができる。
【0020】
〔(B)成分〕
(B)成分であるアルキルリン酸エステルは、原綿のカード機通過性やウエブの均一性などの特性を改良し、これによって不織布の生産性の向上と品質低下を防止することを目的として、繊維処理剤に配合される。
アルキルリン酸エステルの具体例としては、ステアリルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、パルミチルリン酸エステルなどの飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルリン酸エステル、パルミトレイルリン酸エステルなどの不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和または部分中和塩である。なお、アルキルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類などが挙げられる。アルキルリン酸エステルは、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
前記繊維処理剤中の(B)成分の配合割合は、カード機通過性やウエブの均一性などの観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、熱処理に起因するポリオルガノシロキサンによる繊維の疎水化を妨げないようにする観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0022】
〔(C)成分〕
(C)成分は、先に示した一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤である。
(C)成分は、(B)成分であるアルキルリン酸エステルは含まない成分を指す。また、(C)成分は、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
一般式(1)中のXが―SO
3M、すなわち親水基がスルホン酸又はその塩である前記
アニオン界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホン酸又はそれらの塩を挙げることができる。ジアルキルスルホン酸の具体例としては、ジオクタデシルスルホコハク酸、ジデシルスルホコハク酸、ジトリデシルスルホコハク酸、ジ2‐エチルヘキシルスルホコハク酸などの、ジアルキルスルホコハク酸、ジアルキルスルホグルタル酸などのジカルボン酸をエステル化し、ジエステルのアルファ位をスルホン化した化合物や、2−スルホテトラデカン酸1−エチルエステル(又はアミド)ナトリウム塩や、2−スルホヘキサデカン酸1−エチルエステル(またはアミド)ナトリウム塩などの飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸エステル(又はアミド)のα位をスルホン化したアルファスルホ脂肪酸アルキルエステル(又はアミド)や、炭化水素鎖の内部オレフィンや不飽和脂肪酸の内部オレフィンをスルホン化することで得られるジアルキルアルケンスルホン酸などを挙げることができる。ジアルキルスルホン酸の2鎖のアルキル基それぞれの炭素数は、4個以上14個以下、特に、6個以上10個以下であることが好ましい。
【0024】
親水基がスルホン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
【0027】
一般式(1)中のXが―OSO
3M、すなわち親水基が硫酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、ジアルキル硫酸エステルを挙げることができ、その具体例としては、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム塩や、2−ヘキシルデシル硫酸ナトリウム塩などの分岐鎖を有するアルコールを硫酸化した化合物や、硫酸ポリオキシエチレン2−ヘキシルデシルや硫酸ポリオキシエチレン2−ヘキシルデシルなどの分岐鎖を有するアルコールと硫酸基の間にPOE鎖を導入したような化合物や、12−サルフェートステアリン酸1‐メチルエステル(またはアミド)3‐サルフェートへキサン酸1−メチルエステル(またはアミド)などのヒドロキシ脂肪酸エステル(またはアミド)を硫酸化した化合物などを挙げることができる。
【0028】
親水基が硫酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
【化4】
【0029】
一般式(1)中のXが―COOM、すなわち親水基がカルボン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、ジアルキルカルボン酸を挙げることができ、その具体例としては、11‐エトキシヘプタデカンカルボン酸ナトリウム塩や2‐エトキシペンタカルボン酸ナトリウム塩などのヒドロキシ脂肪酸のヒドロキシ部分をアルコキシ化し、脂肪酸部分をナトリウム化した化合物や、サルコシンやグリシンなどのアミノ酸のアミノ基にアルコキシ化したヒドロキシ脂肪酸クロリドを反応させ、アミノ酸部のカルボン酸をナトリウム化させた化合物や、アルギニン酸のアミノ基に脂肪酸クロリドを反応させて得られる化合物などを挙げることができる。
【0030】
親水基がカルボン酸又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
【化5】
【0031】
本発明においては、繊維処理剤として、一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤とポリオルガノシロキサンが配合された繊維処理剤を用いることにより、繊維処理剤が付着した熱融着性繊維は、熱処理により親水度が低下しやすい繊維となる。この理由は、ポリオルガノシロキサンが、特に2鎖以上のアルキル鎖を有するアニオン界面活性剤の繊維内部への浸透を促進するため、繊維表面の親水度が熱処理によって低下しやすい。これは、ポリオルガノシロキサンのポリシロキサン鎖と、アニオン界面活性剤の持つ、アルキル鎖が不相溶なため、より馴染みやすい繊維内部へ、繊維が加熱溶融した際に、アニオン界面活性剤が浸透するために起こると推定される。
【0032】
前記繊維処理剤中の前記(C)成分の配合割合は、熱処理による親水度の変化を大きくする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、親水性が高くなりすぎると、液を持ちやすくなりドライ性を損なう観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下である。また、前記(C)成分の前記配合割合は、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上13質量%以下である。
【0033】
繊維処理剤における(A)成分のポリオルガノシロキサンと、(C)成分のアニオン界面活性剤との含有比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:3〜4:1であり、より好ましくは1:2〜3:1である。
また、繊維処理剤における(A)成分のポリオルガノシロキサンと、(B)成分のアルキルリン酸エステルとの含有比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:5〜10:1であり、より好ましくは1:2〜3:1である。
【0034】
本発明で用いる繊維処理剤は、上述した(A)成分ないし(C)成分に加えて、他の成分を含んでいてよい。前記(A)成分ないし(C)成分以外に配合する他の成分としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性及びノニオン性の界面活性剤等を用いることができる。
【0035】
アニオン性の界面活性剤の例としては、アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホネートナトリウム塩、アルキルスルホネートナトリウム塩、アルキルサルフェートナトリウム塩、セカンダリーアルキルサルフェートナトリウム塩等が挙げられる(いずれのアルキルも炭素数6以上22以下、特に8以上22以下が好ましい)。これらは、ナトリウム塩に代えてカリウム塩等の他のアルカリ金属塩を用いることもできる。
【0036】
カチオン性の界面活性剤の例としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等が挙げられ、これらの化合物は、炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。上記ハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
【0037】
両性イオン性の界面活性剤の例としては、アルキル(炭素数1〜30)ベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン、スルフォベタイン型両性界面活性剤等のベタイン型両性イオン性界面活性剤や、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型等]両性界面活性剤、アルキルベタイン等のグリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]両性界面活性剤などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキル(炭素数1〜30)タウリン型などのアミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。
【0038】
ノニオン性の界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(好ましくはn=2〜10)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8〜60)、ポリオキシアルキレン(付加モル数2〜20)アルキル(炭素数8〜22)アミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数2〜20)アルキル(炭素数8〜22)エーテル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0039】
本発明で用いる繊維処理剤は、変性シリコーン等の膠着防止剤等の処理剤を添加してもよい。
【0040】
次に、本発明の立体シートの製造方法の一実施態様について、
図3を参照して説明する。
本実施態様の立体シート10の製造方法は、
図3及び
図4に示すように、周面が凹凸形状となっている第1のロール11と、第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロール12との噛み合わせ部に、第1不織布2を噛み込ませて凹凸賦形した後、第2不織布3を、第1のロール11における凸部11a上に位置する第1不織布2と、ヒートロール14によって接合する工程を具備する。
【0041】
本実施態様の製造方法において重要であることは、第1不織布2と第2不織布3とを接合する前に、第1不織布2及び第2不織布3の少なくとも一方に前述した繊維処理剤を含ませておくことである。これにより、第1不織布2と第2不織布3とが、第1のロール11における凸部11aとヒートロール14との間で、加熱及び加圧されて接合部4が形成される際に、繊維処理剤を含む第1不織布2及び/又は第2不織布3に、接合部4に近ければ近いほど多くの熱量を受けて親水度が低下し、それによって、繊維処理剤を含む第1不織布2及び/又は第2不織布3に、接合部4に近づくにつれて親水度が低下する親水度の勾配が生じる。
本実施態様の製造方法に関し、特に説明しない点については、特許文献1に記載の方法(特に段落〔0021〕〜〔0025〕に記載の方法)と同様にして実施することができる。
【0042】
本発明の製造方法において、第1不織布2と第2不織布3とを接合する前の不織布に繊維処理剤を含ませる方法としては、原料繊維を、ウエブや不織布とする前の繊維の段階で、該繊維に繊維処理剤を塗布する方法や、原料繊維を各種公知の手法でウエブや不織布とした後に繊維処理剤を塗布する方法、あるいは、これらを併用する方法等が挙げられる。
例えば、第1又は第2不織布として、カード機により得たウエブを、ニードルによる繊維交絡、水流交絡、レジン等による融着により不織布化する不織布を用いる場合は、ウエブとする前の原料繊維の段階で、該繊維に繊維処理剤を塗布しても良いし、ウエブの段階又は不織布化後に繊維処理剤を塗布しても良い。
また、第1又は第2不織布として、カード機により得たウエブを、エアスルー方式の熱風処理による繊維の交点の融着により不織布化する不織布を用いる場合は、油剤塗付のムラ防止の観点から、不織布化する前に繊維処理剤を塗布することが望ましい。
また、スパンボンド不織布を用いる場合は、その製法上、不織布化した後に繊維処理剤を塗布することが好ましい。
上述した不織布毎の塗布不法は、あくまでも例示である。原料繊維に繊維処理剤を練り込む方法を単独で又は他の方法と組み合わせて採用しても良い。また、原料繊維や、繊維ウエブ、不織布等に繊維処理剤を塗布する方法としては、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、ロール転写による塗布、繊維処理剤への浸漬等の任意の塗布方法を採用できる。
【0043】
本発明の立体シートの第1実施形態である立体シート10Aは、上述した立体シート10の製造方法において、第2不織布3のみに、前述した繊維処理剤を含ませておき、それを、第1のロール11における凸部11aとヒートロール14との間で、加熱及び加圧して接合部4を形成したものである。
【0044】
第1実施形態の立体シート10Aは、このようにして製造されたものであることによって、第2不織布が前記の繊維処理剤を含んでおり、また、接合部4に囲まれた非接合部6における第2不織布3が、接合部4に近づくにつれて親水度が低下する親水性の勾配を有している。
接合部4に囲まれた非接合部6は、立体シート10の平面視において、接合部4に囲まれている部分であり、第1不織布2及び第2不織布を有する。接合部4に囲まれた非接合部6は、周囲を、相互に離間した複数の接合部4によって囲まれていることが好ましい。
図1に示す立体シート10Aにおいては、4個の接合部4によって周囲を囲まれているが、非接合部6を囲む接合部4の数は、4個に限られず、例えば、2個、3個、5個、6個、あるいは7個以上とすることもできる。非接合部6を囲む接合部4の数は、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上であり、更に好ましくは4個以上であり、また、好ましくは12個以下、より好ましくは8個以下であり、更に好ましくは6個以下である。
【0045】
第1実施形態の立体シート10Aは、
図1及び
図2に示すように、多数の凸部5が形成されて凹凸面となっている第1面1aと、平坦であるか又は前記凹凸面に比して凹凸の程度が明確に小さい第2面1bとを有している。
【0046】
第1実施形態の立体シート10Aにおける第2不織布3の親水性の勾配について、より詳細に説明すると、非接合部6における第2不織布3は、
図2に示すように、接合部4との間の距離が2mm以上である遠位部P1から、該接合部4に隣接する近位部P3に向かって親水度が漸次低下している。
【0047】
本発明に言う「親水度」は、以下に述べる方法で測定された繊維の接触角に基づきその程度が判断される。具体的には、親水度が低いことは接触角が大きいことと同義であり、親水度が高いことは接触角が小さいことと同義である。
【0048】
非接合部6における第2不織布3が、近位部P3から遠位部P1に向かって親水度が漸次低下する親水度の勾配を有するか否かは、近位部P3、遠位部P1、及び近位部P3と遠位部P1との間の中位部P2から取り出した繊維の接触角を比較し、近位部P3、中位部P2及び遠位部P1の接触角が、下記条件(1)を満足し、近位部P3と遠位部P1の接触角の差が3度以上ある場合に、近位部P3から遠位部P1に向かって親水度が漸次低下する親水性の勾配を有すると判断する。
近位部P3の接触角>中位部P2の接触角>遠位部P1の接触角 …(1)
非接合部6における第2不織布4に関し、接合部4に隣接する近位部P3は、立体シート10の平面視において、接合部4の外周縁からの距離が、0mm以上1mm未満の範囲であり、接触角を測定する繊維は、該距離が0.1mmの地点から取り出す。同様に、遠位部P1は、立体シート10の平面視において、接合部4の外周縁からの距離が、2mm以上の範囲であり、接触角を測定する繊維は、該距離が2mmの地点から取り出す。同様に、中位部P2は、立体シート10の平面視において、接合部4の外周縁からの距離が1mm超2mm未満の範囲であり、接触角を測定する繊維は、該距離が1.2mmの地点から取り出す。
ここでいう、接合部4の外周縁からの距離は、立体シートの平面視において、凸部5の中心と接合部4の中心とを通る直線上において測定する。また、接触角を測定する繊維は、不織布の、厚み方向における中央部付近から取り出すことが好ましい。
【0049】
〔接触角の測定方法〕
不織布の所定の部位から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には蒸留水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析や画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、不織布から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。不織布から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。該繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を接触角と定義する。
【0050】
第1実施形態の立体シート10においては、
図5に示すように、凹凸面である第1面1a側に液が供給されると、その液の一部は、経路R1に示すように、凸部5間の接合部4近傍から、非接合部6における第1不織布2内に入った後、第2不織布3が有する親水度の勾配によって、第2不織布3内又は第2不織布3上を、親水度が低い接合部4近傍から、親水度の高い中央部方向へと移動する。そのため、接合部4の形成時に繊維密度が高くなった接合部4の周縁部近傍に液が残り難く、立体シート10Aの全体として、液の透過性に優れたものとなる。
第1実施形態の立体シート10Aを、吸収体物品の表面シートとして用いる場合、
図5に示すように、凹凸面となっている第1面1a側が着用者の肌側を向くようにして用いることが、立体シート10Aの性能を充分に発揮させる観点から好ましい。
図5中、符号20は、吸収性物品の吸収体である。なお、吸収性物品の表面シートとして用いた場合には、第1不織布2における凸部5を形成する部分に存する液は、第1不織布の凸部5の頂部P4から第2不織布3の
遠位部P1付近へ着用者の体圧等が加わることによって、経路R2に示すように、直接的に第2不織布3へと移行する。
【0051】
第1実施形態の立体シート10を、吸収体物品の表面シートとして用いる場合、非接合部6における接合部4の周縁部近傍に液が残り難いことは、上述したような経路R1で、液を吸収体20に誘導して、着用者から排泄された尿や経血等の液体が、着用者の肌に対向配置される第1面1aに残らないようにして、べたつき等の不快感が生じないようにする観点や、経血等の色つきの液体が目立つのを防ぎ、吸液後の吸収性物品の外観を良好とする観点から好ましい。
【0052】
このように、第1実施形態の立体シート10Aは、液が供給される面側に液が残りにくく、全体としての液の透過性に優れている。また、前述したような、簡易な製造工程で生産可能であり、生産性にも優れている。
本発明の立体シートの製造方法においては、吸引によって第1のロール11の周面に、凹凸賦形された第1不織布2を保持しつつ、ヒートロール14による第1不織布2と第2不織布3との接合を行うことが好ましい。これにより、接合部4の形成時又はその直前若しくは直後に、接合部4から非接合部6に向かう空気の流れが生じ、それによって、接合部4から離れた場所の親水度も低下させ易くなり、第2不織布に、前述したような親水度に勾配を付けやすくなる。吸引の方法としては、
図6に示すように、第1のロール11の凹凸の凹部に吸引孔13を設けて吸引する方法が挙げられる。
【0053】
立体シート10Aの液の透過性の向上や表面シートとして使用した場合の液残り量の低減の観点から、近位部P3と遠位部P1とは、近位部P3の接触角が遠位部P1の接触角よりも高いことを前提にして、繊維に対する水の接触角の差が、好ましくは3度以上、より好ましくは4度以上であり、また、好ましくは20度以下、更に好ましくは15度以下であり、更に好ましくは10度以下であり、また、好ましくは3度以上20度以下、更に好ましくは4度以上15度以下であり、更に好ましくは4度以上10度以下である。
【0054】
同様の観点から、近位部P3は、繊維に対する水の接触角が、好ましくは70度以上、更に好ましくは80度以上であり、また、好ましくは120度以下、更に好ましくは100度以下であり、更に好ましくは95度以下であり、また、好ましくは70度以上120度以下、更に好ましくは80度以上100度以下であり、更に好ましくは 80度以上95度以下である。
同様の観点から、遠位部P1は、繊維に対する水の接触角が、好ましくは60度以上、更に好ましくは70度以上であり、また、好ましくは95度以下、更に好ましくは90度以下であり、また、好ましくは60度以上95度以下、更に好ましくは70度以上90度以下である。
【0055】
同様の観点から、近位部P3と中位部P2とは、近位部P3の接触角が中位部P2の接触角よりも高いことを前提にして、繊維に対する水の接触角の差が、好ましくは1度以上、より好ましくは2度以上であり、また、好ましくは15度以下、更に好ましくは10度以下である。また、中位部P2と遠位部P1とは、中位部P2の接触角が遠位部P1の接触角よりも高いことを前提にして、繊維に対する水の接触角の差が、好ましくは1度以上、より好ましくは2度以上であり、また、好ましくは15度以下、更に好ましくは10度以下である。
【0056】
第1実施形態の立体シート10Aの第1不織布2は、凸部5の頂部P4における親水度が、第2不織布の前記遠位部P1の親水度よりも低くなっている。
即ち、第1不織布2は、凸部5の頂部P4における接触角が、第2不織布3の前記遠位部P1における接触角よりも高くなっている。頂部P4における接触角を測定する繊維は、立体シートの平面視における凸部5の中心から取り出す。
凸部5の頂部P4における親水度が、第2不織布の遠位部P1の親水度より低いことにより、吸収性物品の表面シートとして用いた場合には、第1不織布2における凸部5を形成する部分に存する液は、第1不織布の凸部5の頂部P4から第2不織布3の近位部P1付近へ着用者の体圧等が加わることによって、経路R2に示すように、直接的に第2不織布3へと移行しやすくなる。
凸部5の頂部P4と遠位部P1とは、凸部5の頂部P4の接触角が遠位部P1の接触角よりも高いことを前提にして、繊維に対する水の接触角の差が、好ましくは1度以上であり、また、好ましくは20度以下、更に好ましくは15度以下である。
【0057】
第1実施形態の立体シート10Aにおいては、親水度に勾配を有する第2不織布3とは対照的に、第1不織布2はその親水度が、該第1不織布2のいずれの部位においても同じになっている。そのような第1不織布2を形成するためには、第2不織布3を親水化させるための繊維処理剤として、例えば繊維に親水性を付与するために従来用いられてきた油剤と呼ばれる繊維処理剤を用いればよい。そのような繊維処理剤としては、例えば各種の界面活性剤が典型的なものとして挙げられる。界面活性剤としては、陰イオン、陽イオン、両性イオン及び非イオンの界面活性剤等を用いることができる。
【0058】
陰イオン界面活性剤の例としては、アルキルホスフェート塩、アルキルエーテルホスフェート塩、ジアルキルホスフェート塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、アルキルベンゼンスルホネート塩、アルキルスルホネート塩、アルキルサルフェート塩、セカンダリーアルキルサルフェート塩等が挙げられる(前記いずれのアルキルも炭素数6〜22が好ましい。)。アルカリ金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0059】
陽イオン界面活性剤の例としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等が挙げられ、これらの化合物は、炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。前記のハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
【0060】
両性イオン界面活性剤の例としては、アルキル(炭素数1〜30)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)アミドアルキル(炭素数1〜4)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1〜30)ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜30)ベタイン、スルフォベタイン型両性界面活性剤等のベタイン型両性イオン界面活性剤や、アラニン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1〜30)イミノジプロピオン酸型等]両性イオン界面活性剤、グリシン型[アルキル(炭素数1〜30)アミノ酢酸型等]両性イオン界面活性剤などのアミノ酸型両性イオン界面活性剤、アルキル(炭素数1〜30)タウリン型などのアミノスルホン酸型両性イオン界面活性剤が挙げられる。
【0061】
非イオン界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(好ましくはn=2〜10)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8〜22)、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8〜22)アミド、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8〜22)エーテル、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0062】
第1実施形態の立体シート10Aの凸部5の大きさや高さ等は、その具体的な使用目的に応じて適宜に設定することができるが、吸収性物品の表面シートとして用いる場合は、凸部5はその高さH(
図1参照)が、1mm以上10mm以下、特に1.5mm以上6mm以下であることが好ましい。また、製造時の搬送方向に対応するX方向に沿う凸部5の底部寸法(非接合部6の寸法)A、及び前記X方向と直交するY方向に沿う凸部5の底部寸法(非接合部6の寸法)Bは、何れも、1mm以上30mm以下、特に1.5mm以上10mm以下であることが好ましい。同様に、X方向の接合部4の長さC及びY方向の接合部4の長さDは、0.5mm以上20mm以下、特に0.8mm以上5mm以下であることが、好ましい。
【0063】
本発明の立体シートは、第1不織布によって形成された凸部を多数有している。凸部の個数は、立体シートの単位面積(1cm2)当たり、好ましくは5個以上、更に好ましくは20個以上であり、また、好ましくは50個以下、更に好ましくは30個以下である。また、前記(A)〜(C)成分を含む繊維処理剤の付着量は、立体シートの全質量に対する割合(%)が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.1〜 1.0質量%であり、より好ましくは0.2〜0.6質量%である。
【0064】
第1実施形態の立体シート10Aにおける第1及び第不織布2,3は、実質的に非伸縮性であることが好ましい。実質的に非伸縮性の不織布は、例えば伸長限界が105%以下であり、それを超える伸長では材料破壊を起こすか又は永久歪みが発生する。第1不織布2及び第2不織布3としては、例えば、吸収性物品における表面シートを構成する不織布として従来用いられているものを特に制限なく用いることができる。例えば、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。第1不織布2と第2不織布3とは、同一製法の不織布であっても良いし、異なる製法の不織布であっても良い。
【0065】
また、第1不織布2及び第2不織布3は、少なくとも何れか一方、好ましくは両方が、熱融着性繊維を含むものであり、熱融着性繊維としては、例えば熱融着性芯鞘型複合繊維、非熱伸長性繊維、熱収縮繊維、立体捲縮繊維、潜在捲縮繊維、中空繊維等を挙げることができる。これらの繊維は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの繊維のうち、熱融着性芯鞘型複合繊維を用いることが特に好ましい。
【0066】
熱融着性繊維は、繊維処理剤の付着の前後いずれにおいても熱融着性を有し、かつ芯鞘型の複合構造を有している。芯鞘型の複合繊維は、同心の芯鞘型でも、偏心の芯鞘型でも、サイド・バイ・サイド型でも、異型形でもよい。特に同心の芯鞘型であることが好ましい。繊維がどのような形態をとる場合であっても、柔軟で肌触り等のよい不織布等を製造する観点からは、熱融着性繊維の繊度は1.0dtex以上10.0dtex以下が好ましく、2.0dtex以上8.0dtex以下であることがより好ましい。
【0067】
熱融着性繊維の繊度は、第1不織布2と第2不織布3とで同じであってもよく、あるいは相違していてもよい。各不織布2,3における熱融着性繊維の繊度が相違する場合、第1不織布2に含まれる熱融着性繊維の繊度よりも、第2不織布3に含まれる熱融着性繊維の繊度の方が小さいことが好ましい。こうすることによって、第1不織布2から第2不織布3に向けて毛管力が高まる勾配が生じ、そのことと、繊維処理剤に起因する親水度の勾配とが相まって、第1不織布2から第2不織布3に向けての液の引き込み性が向上するという有利な効果が奏される。尤も、本発明においては、繊維処理剤に起因する親水度の勾配が十分に付与されているので、第2不織布3に繊度の小さな熱融着性繊維を用いなくても、第1不織布2から第2不織布3に向けての液の引き込み性は十分なものとなる。
【0068】
特に好ましい熱融着性芯鞘型複合繊維としては、例えば、特開2010−168715号公報に記載の「ポリエチレン樹脂を含む鞘部及び該ポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分からなる芯部を有する芯鞘型複合繊維(以下、この繊維を芯鞘型複合繊維Pと言う)」が挙げられる。芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成するポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。特に、密度が0.935〜0.965g/cm
3である高密度ポリエチレンであることが好ましい。芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成する樹脂成分は、ポリエチレン樹脂単独であることが好ましいが、他の樹脂をブレンドすることもできる。ブレンドする他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。ただし、鞘部を構成する樹脂成分は、鞘部の樹脂成分中の50質量%以上が、特に70質量%以上100質量%以下がポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成するポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが10nm以上20nm以下であることが好ましく、11.5nm以上18nm以下であることがより好ましい。
【0069】
芯鞘型複合繊維Pの鞘部は、熱融着性芯鞘型複合繊維に熱融着性を付与するとともに、熱処理時に、前述した繊維処理剤を内部に取り込む役割を担う。他方、芯部は、熱融着性芯鞘型複合繊維に強度を付与する部分である。芯鞘型複合繊維Pの芯部を構成する樹脂成分としては、鞘部の構成樹脂であるポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を特に制限なく用いることができる。芯部を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂を除く)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂等が挙げられる。更に、ポリアミド系重合体や前述した樹脂成分の2種以上の共重合体なども使用することができる。複数種類の樹脂をブレンドして使用することもでき、その場合、芯部の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。
繊維処理剤を付着させる熱融着性芯鞘型複合繊維は、芯部を構成する樹脂成分の融点と鞘部を構成する樹脂成分との融点の差(前者−後者)が、20℃以上であることが、不織布の製造が容易となることから好ましく、また150℃以下であることが好ましい。芯部を構成する樹脂成分が複数種類の樹脂のブレンドである場合の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。
【0070】
繊維処理剤を付着させる熱融着性芯鞘型複合繊維は、加熱によってその長さが伸びる繊維(以下、熱伸長性複合繊維とも言う)であっても良い。熱伸長性繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して自発的に伸びる繊維が挙げられる。熱伸長性繊維は、不織布中において、加熱によってその長さが伸長した状態、及び/又は、加熱によって伸長可能な状態で存在している。熱伸長性繊維は、加熱時に、表面の繊維処理剤が内部に取り込まれやすく、繊維やそれを用いて製造した不織布等に、加熱処理によって親水度の大きく異なる複数の部分を形成しやすくなる。
【0071】
好ましい熱伸長性複合繊維は、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する、ポリエチレン樹脂を含む第2樹脂成分とを有しており、第1樹脂成分は、第2樹脂成分より高い融点を有している。第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分である。
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、その樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とし、これを融点の代わりに用いる。
【0072】
熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分の好ましい配向指数は、用いる樹脂により自ずと異なるが、例えばポリプロピレン樹脂の場合は、配向指数が60%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは25%以下である。第1樹脂成分がポリエステルの場合は、配向指数が25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下であり、更に好ましくは10%以下である。一方、第2樹脂成分は、その配向指数が5%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは30%以上である。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。そして、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数がそれぞれ前記の値であることによって、熱伸長性複合繊維は、加熱によって伸長するようになる。
【0073】
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数は、特開2010−168715号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に記載の方法によって求められる。また、熱伸長性複合繊維における各樹脂成分が前記のような配向指数を達成する方法は、特開2010−168715号公報の段落〔0033〕〜〔0036〕に記載されている。
【0074】
熱伸長性複合繊維は、第1樹脂成分の融点よりも低い温度において熱によって伸長可能になっている。そして熱伸長性複合繊維は、第2樹脂成分の融点(融点を持たない樹脂の場合は軟化点)より10℃高い温度での熱伸長率が0.5〜20%であることが好ましく、より好ましくは3〜20%、更に好ましくは5.0〜20%である。このような熱伸長率の繊維を含む不織布は、該繊維の伸長によって嵩高くなり、あるいは立体的な外観を呈する。繊維の熱伸長率は、特開2010−168715号公報の段落〔0031〕〜〔0032〕に記載の方法によって求められる。
【0075】
熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(質量比、前者:後者)は10:90〜90:10、特に20:80〜80:20、とりわけ50:50〜70:30であることが好ましい。熱伸長性複合繊維の繊維長は、不織布の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。不織布を例えば後述するようにカード法で製造する場合には、繊維長を30〜70mm程度とすることが好ましい。
【0076】
熱伸長性複合繊維の繊維径は、不織布の具体的な用途に応じ適切に選択される。不織布を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合には、10〜35μm、特に15〜30μmのものを用いることが好ましい。なお熱伸長性複合繊維は、伸長によってその繊維径が小さくなるところ、前記の繊維径とは、不織布を実際に使用するときの繊維径のことである。
【0077】
熱伸長性複合繊維としては、上述の熱伸長性複合繊維の他に、特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報及び特開2007−204902号公報等に記載の繊維を用いることもできる。
【0078】
本発明においては、熱融着性繊維として、熱伸長性繊維と非熱伸長性繊維を混綿されたものを用いてもよい。非熱伸長性繊維は、高融点成分と低融点成分とを含み、低融点成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している二成分系の複合繊維である。複合繊維(非熱伸長性繊維)の形態には芯鞘型やサイド・バイ・サイド型などの様々な形態があり、いずれの形態であっても用いることができる。熱融着性の複合繊維は原料の段階で延伸処理が施されている。ここで言う延伸処理とは、延伸倍率2〜6倍程度の延伸操作のことである。熱伸長性繊維と非熱伸長性繊維との混合割合は、質量比で、前者:後者が1:9〜9:1が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4である。これにより熱風で不織布の嵩を回復させることがより容易になり、それぞれの繊維を単独で用いるよりも、肌触りとドライ性の良好なエアスルー不織布とすることができる。
【0079】
身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。本発明のエアスルー不織布を表面シートとして用いた場合の吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限なく用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0080】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、本発明の好ましい第2実施形態の立体シートにおいては、前記(A)〜(C)成分を含む前記繊維処理剤が、第1不織布2のみに含まれており、また、本発明の好ましい第3実施形態の立体シートにおいては、前記(A)〜(C)成分を含む前記繊維処理剤が、第1不織布2及び第2不織布3の両者に含まれている。第2及び第3実施形態の立体シートにおいては、繊維処理剤を含む第1不織布についても、接合部4に近づくにつれて親水度が低下する親水度の勾配を有している。
【0081】
また、
図3に示す製造方法においては、第1不織布2及び第2不織布3を、それぞれがロール状に巻回されたロール2”,3’から繰り出しているが、第1不織布の製造工程で得られた第1不織布及び第2不織布の製造工程で得られた第2不織布を巻き取らずに、立体シート10の製造工程に導入しても良い。
また、本発明の立体シートにおける接合部の形状は、平面視矩形状のものに制限されず、円形や楕円形、三角形、四角形、五角形、ハート形、十字型等の任意の形状とすることができる。また、凸部の形状も、平面視矩形状のものに制限されず、例えば、平面視円形又は楕円形状のドーム状のもの等とすることもできる。
【0082】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の立体シートや立体シートの製造方法を開示する。
<1>第1不織布と第2不織布とが部分的に熱融着されて接合部が形成され、第1不織布が、該接合部に囲まれた非接合部において第2不織布から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部を多数形成している立体シートであって、
第1及び第2不織布の少なくとも何れか一方に、繊維処理剤が含まれており、
前記繊維処理剤が、下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する不織布。
(A)ポリオルガノシロキサン、
(B)アルキルリン酸エステル、
(C)下記の一般式(1)で表わされるアニオン界面活性剤
【化1】
(式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わし、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし、Xは―SO
3M、―OSO
3M又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
【0083】
<2>
第2不織布が前記繊維処理剤を含んでおり、前記非接合部における第2不織布が、前記接合部に近づくにつれて親水度が低下する親水性の勾配を有している、前記<1>に記載の立体シート。
<3>
前記非接合部における第2不織布は、前記接合部との間の距離が2mm以上である遠位部P1から、該接合部に隣接する近位部P3に向かって親水度が漸次低下している、前記<1>又は<2>に記載の立体シート。
<4>
前記近位部P3と前記遠位部P1とで、繊維に対する水の接触角の差が3度以上20度以下である、前記<3>に記載の立体シート。
<5>
近位部P3と遠位部P1とは、近位部P3の接触角が遠位部P1の接触角よりも高いことを前提にして、繊維に対する水の接触角の差が、好ましくは3度以上、より好ましくは4度以上であり、また、好ましくは20度以下、更に好ましくは15度以下であり、更に好ましくは10度以下である、前記<3>又は<4>に記載の立体シート。
<6>
近位部P3は、繊維に対する水の接触角が、好ましくは70度以上、更に好ましくは80度以上であり、また、好ましくは120度以下、更に好ましくは100度以下であり、更に好ましくは95度以下である、前記<3>〜<5>の何れか1に記載の立体シート。
<7>
遠位部P1は、繊維に対する水の接触角が、好ましくは60度以上、更に好ましくは70度以上であり、また、好ましくは95度以下、更に好ましくは90度以下である、前記<3>〜<6>の何れか1に記載の立体シート。
<8>
近位部P3と中位部P2とは、近位部P3の接触角が中位部P2の接触角よりも高いことを前提にして、繊維に対する水の接触角の差が、好ましくは1度以上、より好ましくは2度以上であり、また、好ましくは15度以下、更に好ましくは10度以下である、前記<3>〜<7>の何れか1に記載の立体シート。
<9>
中位部P2と遠位部P1とは、中位部P2の接触角が遠位部P1の接触角よりも高いことを前提にして、繊維に対する水の接触角の差が、好ましくは1度以上、より好ましくは2度以上であり、また、好ましくは15度以下、更に好ましくは10度以下である、前記<3>〜<8>の何れか1に記載の立体シート。
<10>
第1不織布は、前記凸部の頂部P4における親水度が、第2不織布の前記遠位部P1の親水度よりも低い、前記<1>〜<9>の何れか1に記載の立体シート。
<11>
凸部5の頂部P4と遠位部P1とは、凸部5の頂部P4の接触角が遠位部P1の接触角よりも高いことを前提にして、繊維に対する水の接触角の差が、好ましくは1度以上であり、また、好ましくは20度以下、更に好ましくは15度以下である、前記<1>〜<10>の何れか1に記載の立体シート。
<12>
前記(A)〜(C)成分を含む前記繊維処理剤が、第2不織布のみに含まれている、前記<1>〜<11>の何れか1に記載の立体シート。
<13>
第1不織布2はその親水度が、該第1不織布2のいずれの部位においても同じになっている、前記<1>〜<12>の何れか1に記載の立体シート。
<14>
前記ポリオルガノシロキサンがポリジメチルシロキサンである、前記<1>〜<13>の何れか1に記載の立体シート。
<15>
ポリオルガノシロキサンの分子量は、重量平均分子量で好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下である、前記<1>〜<14>の何れか1に記載の立体シート。
<16>
ポリオルガノシロキサンとして、分子量の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンが用いられている、前記<1>〜<15>の何れか1に記載の立体シート。
<17>
分子量が異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンを用いる場合、そのうちの一種類は、重量平均分子量が、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下であり、他の一種類は、重量平均分子量が、好ましくは10万未満、より好ましくは5万以下、より好ましくは3万5千以下、更に好ましくは2万以下であり、また、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは5000以上である、前記<1>〜<16>の何れか1に記載の立体シート。
<18>
重量平均分子量が10万以上のポリオルガノシロキサンと重量平均分子量が10万未満のポリオルガノシロキサンとの好ましい配合比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:10〜4:1、より好ましくは1:5〜2:1である、前記<16>又は<17>の何れか1に記載の立体シート。
<19>
前記繊維処理剤は、前記(A)成分を、該繊維処理剤の全質量に対して1質量%以上30質量%以下の割合で含む、前記<1>〜<18>の何れか1に記載の立体シート。
<20>
(B)成分であるアルキルリン酸エステルが、炭素鎖が16〜18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である、前記<1>〜<19>の何れか1に記載の立体シート。
<21>
前記繊維処理剤中の(B)成分の配合割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である、前記<1>〜<20>の何れか1に記載の立体シート。
<22>
繊維処理剤における(A)成分のポリオルガノシロキサンと、(B)成分のアルキルリン酸エステルとの含有比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:5〜10:1であり、より好ましくは1:2〜3:1である、前記<1>〜<21>の何れか1に記載の立体シート。
<23>
前記(C)成分が、ジアルキルスルホン酸又はその塩である、前記<1>〜<22>の何れか1に記載の立体シート。
<24>
前記繊維処理剤中の前記(C)成分の配合割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下である、前記<1>〜<23>の何れか1に記載の立体シート。
<25>
繊維処理剤における(A)成分のポリオルガノシロキサンと、(C)成分のアニオン界面活性剤との含有比率(前者:後者)は、質量比で、好ましくは1:3〜4:1であり、より好ましくは1:2〜3:1である、前記<1>〜<24>の何れか1に記載の立体シート。
<26>
前記(A)成分と前記(C)成分との含有比率(前者:後者)が、質量比で1:3〜4:1である、前記<1>〜<25>の何れか1に記載の立体シート。
<27>
前記繊維処理剤が熱融着性芯鞘型複合繊維に付着させてあり、該熱融着性芯鞘型複合繊維は熱伸長性複合繊維である、前記<1>〜<26>の何れか1に記載の立体シート。
<28>
請求項1に記載の立体シートの製造方法であって、
周面が凹凸形状となっている第1のロールと、第1のロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2のロールとの噛み合わせ部に、第1不織布を噛み込ませて凹凸賦形した後、第2不織布を、第1のロールにおける凸部上に位置する第1不織布とヒートロールによって接合する工程を具備し、
第1不織布と第2不織布とを接合する前に、第1不織布及び第2不織布の少なくとも一方に前記繊維処理剤を含ませておく、立体シートの製造方法。
<29>
吸引によって第1のロールの周面に、凹凸賦形された第1不織布を保持しつつ、前記ヒートロールによる第1不織布と第2不織布との接合を行う、前記<28>に記載の立体シートの製造方法。
<30>
製造する立体シートが、前記<2>〜<27>の何れか1に記載の立体シートである、前記<28>又は<29>に記載の立体シートの製造方法。
<31>
前記<1>〜<27>の何れか1に記載の立体シート又前記<28>若しくは<29>に記載の方法で得られた立体シートを、第1不織布側が着用者の肌側を向くようにして吸収性物品の表面シートとして用いた吸収性物品。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0085】
〔実施例1,2及び比較例1〕
図3に示す製造装置を用いて
図1に示す形態の立体シート10を製造した。実施例1,2及び比較例1の何れについても、第1不織布2及び第2不織布3としては、以下のものを用いた。また、第1不織布2と第2不織布3との接合は、ヒートロール14の周面温度を135℃、第1ロール11の凸部の温度を常温、第2ロール12の温度常温に設定して行った。
〔第1不織布2〕
構成繊維:芯がポリエチレンテレフタレートであり、鞘がポリエチレンである同心タイプの芯鞘型複合繊維であり、芯と鞘との質量比は芯:鞘=40:60であり、繊度は2.2dtex、繊維長は51mm。なお、この繊維は、非熱伸長性繊維である。
不織布の製法:エアスルー法により繊維を融着させた。
〔第2不織布3〕
構成繊維:芯がポリエチレンテレフタレートであり、鞘がポリエチレンである同心タイプの芯鞘型複合繊維であり、芯と鞘との質量比は芯:鞘=40:60であり、繊度は2.2dtex、繊維長は51mm。なお、この繊維は、非熱伸長性繊維である。
不織布の製法:エアスルー法により繊維を融着させた。
【0086】
実施例1の立体シートの製造には、第2不織布3として、カード機によりウエブ化する前の原料繊維の段階で、表1に示す繊維処理剤を塗布したものを用い、第1不織布2としては、カード機によりウエブ化する前の原料繊維の段階で、表1に示す(A)成分を含まない繊維処理剤を塗布したものを用いた。
【0087】
表1に示す繊維処理剤は、以下の表2に示すとおりである。なお表1中、成分(A)の配合量は、表2に示す成分(A)の「KM−903」の組成のうち、シリコーンのみの配合量のことであり、「KM−903」全体の配合量でないことに注意を要する。
【0088】
表1に示す繊維処理剤は、以下の表2に示すとおりである。なお表1中、成分(A)の配合量は、表2に示す成分(A)の「KM−903」の組成のうち、シリコーンのみの配合量のことであり、「KM−903」全体の配合量でないことに注意を要する(以下の表2についても同様である。)。
【0089】
〔実施例2〕
実施例2の立体シートの製造には、第2不織布3として、カード機によりウエブ化する前の原料繊維の段階で、表1に示す繊維処理剤を塗布したものを用い、第1不織布2としても、カード機によりウエブ化する前の原料繊維の段階で、表1に示す繊維処理剤を塗布したものを用いた。
それ以外は、実施例1と同様にして、立体シートを製造した。
〔比較例1〕
比較例1の立体シートの製造には、第2不織布3として、カード機によりウエブ化する前の原料繊維の段階で、表1に示す(A)成分を含まない繊維処理剤を塗布したものを用い、第1不織布2としても、カード機によりウエブ化する前の原料繊維の段階で、表1に示す(A)成分を含まない繊維処理剤を塗布したものを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、立体シートを製造した。
【0090】
〔評価〕
実施例及び比較例の立体シートについて、以下に示す方法で、吸収性物品の表面シートとして用いたときの液残り量を測定し、結果を表1に示した。
<液残り量>
測定は、吸収性物品の一例として乳幼児用おむつ(花王株式会社2013年製:メリーズさらさらエアスルー(登録商標)Mサイズ)から表面シートを取り除き、その代わりに立体シートの試験体(以下、試験体という)を用い、その周囲を固定して得た評価用の乳幼児用おむつを用いた。おむつを平面状に拡げ、表面シート上に、厚み3mmのアクリル板をのせ、更にそのアクリル板上に2kgの錘を2つのせることによって、吸収体部分に対して5.7kPaの荷重を加えた。その状態で5分間放置した。
5分間放置後に、アクリル板及び錘を除去し、おむつの吸収性コアを覆っているコアラップシートの長手方向の腹側部分の先端から155mmの位置に、注入ポンプを用いて5g/秒の速度で人工尿を160g注入して吸収させた。
注入完了から10分静置した後に、注入点を中心に10cm×10cmの表面シートを剥がし、その重量(W4)を測定する。その後、その表面シートを乾燥機で、80℃で、6時間乾燥させて、その重量(W3)を測定し、次式のようにして、液残り量を算出した。
液残り量(g)=160g注入後の表面材の質量(W4)−乾燥させた表面材の質量(W3)
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1に示す結果の比較から、本発明の立体シートを、表面シートとして用いた吸収性物品は、液の透過性に優れ、表面シートに液が残りにくいことが判る。