特許第6267522号(P6267522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6267522-センサ装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267522
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/14 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   G01K1/14 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-9410(P2014-9410)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-137922(P2015-137922A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 康祐
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−055548(JP,A)
【文献】 実開平02−127885(JP,U)
【文献】 特開2000−205467(JP,A)
【文献】 実開平04−066486(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持部と平面な接触面とが形成された接触部材を有する熱電対と、上記接触部材の被保持部を保持する保持部材とを備え、上記接触部材の接触面を測定対象物に接触させて該測定対象物の温度を検出するセンサ装置であって、
上記接触部材は、上記接触面と直交する上記被保持部の中心軸上に位置する点を揺動中心として揺動可能に上記保持部材に保持され
上記接触部材の被保持部は、外周面に上記揺動中心を球心とする球面を有し、
上記保持部材は、上記接触部材の被保持部が挿入されて該被保持部の球面と摺接し、該被保持部を揺動可能に保持する球面を有し、
上記接触部材には、上記被保持部の中心軸に沿って貫通孔が形成され、
上記接触部材の貫通孔に隙間を有して挿通され、先端を上記測定対象物に押し付けて上記測定対象物の振動を検出する検出針を備え、
上記保持部材における上記接触部材の被保持部材が挿入された端部には、内側が切除されたテーパ部が形成され、
上記接触部材は、外周面から出っ張って形成され、上記接触部材が上記検出針と接触しないように、上記テーパ部に接することによって上記接触部材の揺動動作を規制する揺動規制部を有していることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
請求項に記載のセンサ装置において、
上記検出針は、先端が上記接触部材の接触面から突出する状態で設けられ、該先端を上記測定対象物に押し付けて上記接触部材の接触面まで押し込むことによって上記測定対象物の振動を検出することを特徴とするセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物に押し当てて温度を検出するセンサ装置に関し、特に検出精度の向上対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、測定対象物に押し当てて温度を検出するセンサ装置が知られている。このセンサ装置は、ケーシング(プローブ)と、該ケーシングの先端部に挿入された保護管と、該保護管の先端に取り付けられた熱電対とを備えている。熱電対は、測定対象物と接触する平面部を有している。このセンサ装置では、ケーシングを手で握り、保護管の先端を測定対象物に押し当てて熱電対の平面部を測定対象物に接触させることによって、測定対象物の温度が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−55548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなセンサ装置では、測定対象物への押し当て角度によって熱電対の接触度合いが変わり、温度の検出精度が損なわれる場合があった。つまり、測定対象物への押し当て角度によっては熱電対の平面部はその一部しか測定対象物に接触せず、このため温度を精度良く検出できない場合があった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱電対を測定対象物に接触させて温度を検出するセンサ装置において、温度の検出精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセンサ装置は、被保持部と平面な接触面とが形成された接触部材を有する熱電対と、上記接触部材の被保持部を保持する保持部材とを備え、上記接触部材の接触面を測定対象物に接触させて該測定対象物の温度を検出するセンサ装置を前提としている。そして、上記接触部材は、上記接触面と直交する上記被保持部の中心軸上に位置する点を揺動中心として揺動可能に上記保持部材に保持されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接触部材が、その接触面と直交する被保持部の中心軸上に位置する点を揺動中心として揺動可能に保持されているため、測定対象物に対して接触面が斜めとなる角度で接触部材が測定対象物に押し付けられた場合でも、接触部材を揺動させることによって接触面を測定対象物の面と平行にすることができる。これにより、接触部材を如何なる角度で測定対象物に押し付けても、確実且つ容易に接触面の全面を測定対象物に接触させることができる。したがって、温度の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係るセンサ装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0010】
図1に示す本実施形態のセンサ装置1は、測定対象物に直接押し付けて該測定対象物の振動および温度の2つを検出する、いわゆるハンディタイプのセンサである。なお、図1は、センサ装置1の上部を示し、下部は省略している。
【0011】
センサ装置1は、ケーシング5と、振動検出機構10と、保持部材20と、温度検出機構30(熱電対)と、信号処理回路40とを備えている。
【0012】
ケーシング5は、図1紙面に対して垂直方向に分割された2つのケーシング部材によって形成され、それらがテーパねじ6,7によって連結されている。ケーシング5の先端側には、円筒状の保護管8が差し込まれている。つまり、保護管8はケーシング5の先端から突出した状態で設けられている。ケーシング5はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)で形成され、保護管8はステンレス鋼で形成されている。
【0013】
振動検出機構10は、検出針11と、振動伝達板12と、2つの電極板13,15と、圧電素子14と、スイッチ金具18とを備え、測定対象物の振動を検出(測定)するものである。
【0014】
検出針11は、細長い棒状の部材であり、保護管8からケーシング5に亘って挿入されている。検出針11の基端側は、小径部11bとなっており、外周面に雄ねじが形成されている。検出針11の先端11aは、先細形状になっている。振動伝達板12は、雌ねじが形成されており、検出針11の小径部11bにねじ結合されている。検出針11の小径部11bには、振動伝達板12に次いで、第1電極板13、圧電素子14、第2電極板15およびウエイト16が順に挿入されている。検出針11の小径部11bでは、ナット17を締め付けることによって、振動伝達板12や電極板13,15等が互いに密接して固定されている。
【0015】
こうして振動伝達板12等が固定された検出針11は、スイッチ金具18によってケーシング5内に保持されている。スイッチ金具18は、図1紙面の手前側から向こう側へ切り込みが設けられた上壁18aと、上壁18aの向こう側の端から下方へ延びた後手前側へ延びる二股のばね部18bとが形成されている。スイッチ金具18は、上壁18aとばね部18bで振動伝達板12の上面とウエイト16の下面を挟持している。つまり、振動伝達板12等が固定された検出針11は、ばね部18bの弾性力によってウエイト16が上方へ付勢されることにより、振動伝達板12の上面が上壁18aの下面に押し付けられる(接触する)。スイッチ金具18では、上壁18aの下面から振動伝達板12が離れるとスイッチがONされ、上壁18aの下面に振動伝達板12が接触するとスイッチがOFFされる。また、スイッチ金具18は、上壁18aから下方へ延びる側壁18cを有しており、この側壁18cおよび上壁18aがケーシング5の内壁に保持されている。
【0016】
ケーシング5内において、振動検出機構10の下方には信号処理回路40が設けられている。振動検出機構10の2つの電極板13,15は、図示しないが、信号処理回路40の振動用端子41,42に電気的に接続されている。
【0017】
検出針11、振動伝達板12およびスイッチ金具18はステンレス鋼で形成され、電極板13,15はリン青銅で形成され、ウエイト16はジルコニアセラミックで形成されている。
【0018】
保持部材20は、振動検出機構10の検出針11と、後述する温度検出機構30の接触部材31を保持する。保持部材20は、略円筒状に形成されており、主軸部21と、その両端に形成された大径部22および先端部23とを有している。保持部材20は、主軸部21および先端部23が保護管8内に挿入されており、大径部22がケーシング5内において保護管8の外側に位置している。保持部材20の主軸部21は外径が保護管8の内径よりも小さく形成され、先端部23は外径が保護管8の内径と略同じに形成されている。また、主軸部21には2つの窓21a,21bが形成されている。検出針11は、保持部材20に挿入されて保持されている。
【0019】
なお、保護管8は、保持部材20の大径部22寄りに形成された突起24(図1に破線で示す)に嵌め合わされて抜け出しが防止されている。保持部材20は、ケーシング5と同様、PEEKで形成されている。
【0020】
温度検出機構30は、接触部材31と、2本の熱電対線36,37とを備え、測定対象物の温度を検出(測定)するものである。
【0021】
接触部材31は、保護管8の先端側に設けられ、測定対象物に押し付けられて接触する部材である。2本の熱電対線36,37は、それぞれ、一端が接触部材31に接続され、他端が信号処理回路40の温度用端子43,44に接続されている。保持部材20の先端部23は、外周面に上下方向(図2において上下方向)に延びる1つの縦溝23c(スリット)が形成されている。2本の熱電対線36,37は、先端部23の縦溝23cを介して信号処理回路40まで配線されている。接触部材31は、ステンレス鋼で形成されている。2本の熱電対線36,37は、一方がアルメル線で、他方がクロメル線である。
【0022】
接触部材31の詳細な構成について図2も参照しながら説明する。
【0023】
接触部材31は、保持部材20の先端部23に保持され、保護管8から突出した状態で設けられている。接触部材31は、測定対象物と接触する接触部32が先端側(図2において下側)に形成され、保持部材20の先端部23に保持される被保持部34が基端側(図2において上側)に形成されている。接触部材31は、被保持部34の中心軸Cに沿って貫通孔33が形成されて、略円筒状に構成されている。なお、本実施形態において、中心軸Cは、接触部材31、検出針11および保護管8の中心軸でもある。
【0024】
接触部32は、周方向に亘って径方向外方へ延びるフランジ形状となっている。接触部32の下面は、測定対象物に接触させる平面な接触面32aとなっている。なお、中心軸Cは接触面32aと直交する軸である。
【0025】
検出針11は、接触部材31の貫通孔33に挿通され、先端11aが接触部材31の接触面32aから突出する状態で設けられている。接触部材31の貫通孔33は検出針11の外径よりも大きい孔径となっており、接触部材31と検出針11との間には隙間が設けられている。
【0026】
そして、本実施形態の接触部材31は、中心軸C上に位置する点を揺動中心Pとして揺動可能に保持部材20の先端部23に保持されている。具体的に、接触部材31の被保持部34は、外周面が揺動中心Pを球心とする球面34aに形成されている。一方、保持部材20の先端部23は、接触部材31の被保持部34に対応する球面23aを有している。先端部23の球面23aは、接触部材31の被保持部34が挿入されて被保持部34の球面34aと摺接し、被保持部34を揺動可能に保持するように構成されている。つまり、揺動中心Pは、接触部材31の球面34aの球心であると共に、保持部材20の球面23aの球心でもある。こうして、接触部材31は、例えば図2に破線で示すように、揺動中心Pを中心として揺動可能となる。
【0027】
保持部材20の先端部23には、端部の内側が斜めに切除されたテーパ部23bが形成されている。こうすることにより、接触部材31の一定の揺動動作が許容される。一方、接触部材31は、検出針11と接触しない範囲で揺動するように構成されている。つまり、接触部材31が検出針11と接触しないように接触部材31の揺動動作が一定範囲に規制される。具体的に、接触部材31の外周面に揺動規制部35が形成されている。揺動規制部35は、接触部材31の外周面から僅かに出っ張った角部であり、上述した保持部材20のテーパ部23bに接することによって接触部材31の揺動動作を規制している。
【0028】
センサ装置1では、保護管8の先端を測定対象物(例えば、スチームトラップの表面)に押し付けて検出針11の先端11aを接触部材31の接触面32aまで押し込むことにより、スイッチ金具18においてスイッチがONされる。そして、測定対象物の機械的振動が検出針11を通して振動伝達板12に伝わり、圧力変動として圧電素子14に作用する。これに応じて圧電素子14に電圧変動が生じ、この電圧変動に関する信号が電極板13,15から信号処理回路40に送られて測定対象物の振動が検出(測定)される。
【0029】
また、センサ装置1では、上述したように検出針11の先端11aが接触部材31の接触面32aまで押し込まれることにより、接触部材31の接触面32aが測定対象物に接触する。そうすると、2本の熱電対線36,37において電位差が生じ、この電位差に関する信号が信号処理回路40に送られて測定対象物の温度が検出される。以上のようにして検出された測定対象物の振動および温度の数値は、ケーシング5に設けられた表示部(図示省略)に表示される。
【0030】
以上のように上記実施形態のセンサ装置1によれば、温度検出機構30の接触部材31を、その接触面32aと直交する中心軸C上に位置する点を揺動中心Pとして揺動可能に保持するようにしたため、測定対象物に対して接触面32aが斜めとなる角度で接触部材31が測定対象物に押し付けられた場合でも、接触部材31を揺動させることによって接触面32aを測定対象物の面と平行にすることができる。これにより、接触部材31を如何なる角度で測定対象物に押し付けても、確実且つ容易に接触面32aの全面を測定対象物に接触させることが可能である。したがって、温度の検出精度を向上させることができる。
【0031】
具体的に、接触部材31における被保持部34の外周面を揺動中心Pを球心とする球面34aに形成する一方、保持部材20において被保持部34の球面34aと摺接して被保持部34を揺動可能に保持する球面23aを形成するようにしたため、簡易な構成で接触部材31を確実に揺動させることが可能である。
【0032】
また、上記実施形態のセンサ装置1は、測定対象物の振動を検出する検出針11が接触部材31に挿通されて設けられているものであるが、接触部材31に揺動規制部35を設けて接触部材31を検出針11と接触しない範囲で揺動させるようにしたため、測定対象物の振動を正確に検出することができる。つまり、接触部材31が揺動して検出針11に接触すると測定対象物の振動が正確に振動伝達板12に伝わらなくなるが、上記実施形態ではそのような事態を未然に回避することができる。
【0033】
なお、上記実施形態のセンサ装置1では、振動検出機構10を設けているが、本発明は、振動検出機構10を省略して測定対象物の温度のみを検出するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、測定対象物に押し当てて温度を検出するセンサ装置について有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 センサ装置
11 検出針
20 保持部材
23a 球面
30 温度検出機構(熱電対)
31 接触部材
32a 接触面
33 貫通孔
34 被保持部
34a 球面
C 中心軸
P 揺動中心
図1
図2