特許第6267528号(P6267528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267528
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/02 20060101AFI20180115BHJP
   H01H 37/54 20060101ALI20180115BHJP
   H01H 37/32 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01H37/02 B
   H01H37/54 C
   H01H37/32 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-15952(P2014-15952)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-141880(P2015-141880A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(72)【発明者】
【氏名】浪川 勝史
(72)【発明者】
【氏名】中野 信幸
(72)【発明者】
【氏名】公文 高博
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/105175(WO,A1)
【文献】 特開2003−109560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/00 − 37/56
H01H 11/00 − 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に応じて電流を遮断する電流遮断手段と、前記電流遮断手段を収容するケースとを備えた電流遮断装置において、
前記ケースには、2次電池のタブリードが埋設されていることを特徴とする電流遮断装置。
【請求項2】
前記電流遮断手段は、
前記ケースに対して固定された固定接点と、
前記固定接点に対して接離可能に移動する可動接点が設けられ、この可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子とを有する請求項1記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記可動片の一部が前記タブリードに接合されている請求項2記載の電流遮断装置。
【請求項4】
前記可動片は、前記タブリードの先端に形成されている請求項2記載の電流遮断装置。
【請求項5】
前記固定接点は、前記タブリードに形成されている請求項2乃至4のいずれかに記載の電流遮断装置。
【請求項6】
前記電流遮断手段は、正特性サーミスター又は可溶体を含む請求項1乃至5のいずれかに記載の電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の2次電池パック等に内蔵される小型の電流遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の2次電池やモーター等の保護装置として電流遮断装置が使用されている。電流遮断装置は、充放電中の2次電池の温度が過度に上昇した場合、又は自動車、家電製品等の機器に装備されるモーター等に過電流が流れた場合等の異常が生じた際に、2次電池やモーター等を保護するために電流を遮断する。このような電流遮断装置としては、機器の安全を確保するために、温度変化に追従して正確に動作する(良好な温度特性を有する)ことと、通電時の抵抗値が安定していることが求められる。このため、近年の電流遮断装置では、例えば、温度特性と抵抗値の安定性に優れたブレーカーが用いられている。
【0003】
また、電流遮断装置が、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型携帯情報端末機器又はスマートフォンと称される薄型の多機能携帯電話機等の電気機器に装備される2次電池等の保護装置として用いられる場合、上述した安全性の確保に加えて、小型化が要求される。特に、近年の携帯情報端末機器にあっては、ユーザーの小型化(薄型化)の志向が強く、各社から新規に発売される機器は、デザイン上の優位性を確保するために、小型に設計される傾向が顕著である。こうした背景の下、携帯情報端末機器を構成する一部品として、2次電池と共に実装される電流遮断装置もまた、さらなる小型化が強く要求されている。
【0004】
電流遮断装置の一例であるブレーカーには、通常、温度変化に応じて動作し、電流を導通又は遮断する熱応動素子が備えられている。例えば、特許文献1には、熱応動素子としてバイメタルを適用したブレーカーが示されている。バイメタルとは、熱膨張率の異なる2種類の板状の金属材料が積層されてなり、温度変化に応じて形状を変えることにより、接点の導通状態を制御する素子である。同文献に示されたブレーカーは、固定片、可動片、熱応動素子、PTCサーミスター等の部品が、ケースに収納されてなり、固定片及び可動片の端子が電気機器の電気回路に接続されて使用される。ケースは、通常、成形の容易さ及びコスト等を考慮して、熱可塑性等の樹脂材料によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2011/105175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に示された構造のブレーカーにおいては、固定片及び可動片からケースの外側に突設された端子は、通常、2次電池のタブリードと溶接等によって接合され、2次電池回路が構成される。
【0007】
しかしながら、このような端子がケースの外側に突設される構造にあっては、端子を含むブレーカーの寸法が肥大する。従って、ブレーカーのさらなる小型化が困難であると、回路基板上でブレーカーを実装するために必要なスペースの確保が問題となる。
【0008】
さらに、端子とタブリードとを接合する溶接工程は手間がかかり、電気機器の生産性の向上を阻む一因となっている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電気機器のさらなる小型化と生産性の向上とを図ることが可能な電流遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の電流遮断装置は、温度変化に応じて電流を遮断する電流遮断手段と、前記電流遮断手段を収容するケースとを備えた電流遮断装置において、前記ケースには、2次電池のタブリードが埋設されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る前記電流遮断装置においては、前記電流遮断手段は、前記ケースに対して固定された固定接点と、前記固定接点に対して接離可能に移動する可動接点が設けられ、この可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離反するように前記可動片を作動させる熱応動素子とを有することが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記電流遮断装置においては、前記可動片の一部が前記タブリードに接合されていることが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記電流遮断装置においては、前記可動片は、前記タブリードの先端に形成されていることが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記電流遮断装置においては、前記固定接点は、前記タブリードに形成されていることが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記電流遮断装置においては、前記電流遮断手段は、正特性サーミスター又は可溶体を含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電流遮断装置によれば、ケースに2次電池のタブリードが埋設されているので、従来構造の電流遮断装置で必要とされていた端子を省略できる。これにより、電流遮断装置の小型化を図ることが可能となる。さらに、回路基板への電流遮断装置の実装にあたって、端子とタブリードとを接合する工程を省略することができるため、電気機器の生産性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の電流遮断装置の一実施形態であるブレーカーの構成を示す組み立て斜視図。
図2】通常の充電又は放電時などの通電状態におけるブレーカーの動作を示す断面図。
図3】過充電状態又は異常時などの電流遮断状態におけるブレーカーの動作を示す断面図。
図4】同ブレーカーの可動片、カバー部材及びタブリードの構成を内面側から示す斜視図。
図5】同タブリードをインサートしてカバー部材を成形する工程を示す断面図。
図6】同ブレーカーを組み立てる工程を示す断面図。
図7】同ブレーカー及びそれを用いた2次電池パックの構成を示す側面図。
図8】同ブレーカーのタブリード及び可動片の変形例の構成を示す斜視図。
図9】同ブレーカーの変形例及びそれを用いた2次電池パックの構成を示す側面図。
図10】本発明の電流遮断装置の別の実施形態である正特性サーミスター及びそれを用いた2次電池パックの構成を示す側面図。
図11】本発明の電流遮断装置のさらに別の実施形態である温度ヒューズ及びそれを用いた2次電池パックの構成を示す斜視図。
図12】本発明のブレーカーを備えた安全回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
本発明の電流遮断装置の一実施形態であるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、温度変化に応じて電流を遮断する電流遮断手段10を備えている。電流遮断手段10は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6等によって構成されている。電流遮断手段10は、ケース7に収容されている。
【0019】
ケース7は、電流遮断手段10と共に、ブレーカー1を構成する。ケース7には、2次電池101のタブリード9が埋設されている。
【0020】
固定片2は、リン青銅等を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、樹脂ベース71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2は、平面視でケース7から外側にはみ出さないように形成されているのが望ましい。固定片2の一端には固定接点21が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。支持部23の背面は、ケース7から露出し、外部回路と電気的に接続される端子として機能する。支持部23の背面は、ケース7の底面と実質的に同一平面上に設けられている。従って、ケース7の高さが抑制され、ブレーカー1の薄型化を図ることが可能となる。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24aの上に載置されて、突起24aに支持される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、樹脂ベース71の上方に形成されている開口部73cの一部から露出されている。
【0021】
固定片2は、固定接点21及び支持部23において露出し、固定接点21の周囲及び固定接点21と支持部23との間等において樹脂ベース71に埋設される。固定片2の支持部23の表面は、ケース7の内部の収容空間に露出し、突起24aを介してPTCサーミスター6と電気的に接触している。
【0022】
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、固定片2と同等のリン青銅等を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。可動片4の長手方向の一端には、タブリード9の先端部92の内面に接合される接合部42(アーム状の可動片4の基端に相当)が形成されている。接合部42は、タブリード9の内面に設けられている接合部93と溶接等により接合されている。可動片4の他端(アーム状の可動片4の先端に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。可動片4は、可動接点3と接合部42の間に、弾性部43を有している。弾性部43は、接合部42から可動接点3の側に延出されている。接合部42においてタブリード9によって可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
【0023】
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して突起(接触部)44が形成されている。熱応動素子5の熱変形時に突起44と熱応動素子5とは接触して、突起44を介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(図3参照)。
【0024】
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなる。過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0025】
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0026】
ケース7は、樹脂ベース(第1ケース)71と樹脂ベース71の上面に装着されるカバー部材(第2ケース)81等によって構成されている。樹脂ベース71及びカバー部材81は、難燃性のポリアミド(PA)、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。樹脂ベース71には、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための収容部73、及び可動接点3を収納するための開口部73aなどが形成されている。なお、樹脂ベース71に組み込まれた熱応動素子5の端縁は、収容部73の内部に形成されている枠によって当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0027】
カバー部材81には、2次電池のタブリード9がインサート成形によって埋め込まれている。タブリード9は、電子機器の各部に2次電池の電力を供給するために設けられている。タブリード9の基端部91は、2次電池101のセル(図示せず)に接続されている。タブリード9の先端部92は、カバー部材81の内部に埋設される。本実施形態では、図1中、タブリード9の天面は、カバー部材81を構成する樹脂によって覆われている。これにより、ブレーカー1の気密性が高められる。タブリード9の天面は、カバー部材81の天面から露出し、カバー部材81の天面と同一平面上に形成されていてもよい。このような構成によれば、ケース7の高さが抑制され、ブレーカー1の薄型化を図ることが可能となる。
【0028】
タブリード9の先端部92には、可動片4が接合される接合部93が設けられている。接合部93は、熱応動素子5と平面視で重複する領域に設けられている。これにより、タブリード9及びカバー部材81の小型化を図ることができる。タブリード9は、給電用のリードとして機能する他、可動片4を適切な姿勢で支持すると共に、カバー部材81を補強し、カバー部材81のひいては筐体としてのケース7の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。タブリード9は、例えば、上述したリン青銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。
【0029】
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容した樹脂ベース71の収容部73等を塞ぐように、カバー部材81が、樹脂ベース71の上面に装着される。樹脂ベース71とカバー部材81とは、例えば超音波溶着によって接合される。
【0030】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43を通じてブレーカー1の固定片2とタブリード9との間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0031】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0032】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図2に示す導通状態に復帰する。
【0033】
図4は、タブリード9がインサートされ、可動片4が接合されたカバー部材81を内面側から示している。カバー部材81は、タブリード9の周縁に形成された周縁部82と、周縁部92から連続してタブリード9の内面側に形成された接合部83とを有する。周縁部82は、タブリード9をその周縁で保持する。平面視で周縁部82の内側には、可動片4を収容するための収容部84が形成されている。接合部83は、樹脂ベース71の端面74(図1参照)と超音波溶着等により接合されている。
【0034】
カバー部材81の接合部83には、可動片4の接合部42に対向する側壁から収容部84に突出する当接部86が形成されている。図3に示すように、当接部86は、熱応動素子5の熱変形時に、熱応動素子5の端縁と当接し、熱応動素子5の姿勢を規制する。本実施形態にあっては、図2に示す通電時において、熱応動素子5の端縁は、当接部86から離れているが、両者が常時当接していてもよい。
【0035】
図5は、カバー部材81が成形される要領を示している。カバー部材81は、金型300を用いた射出成形工程によって形成される。金型300は、雌金型301及び雄金型302を有する。
【0036】
図5(a)に示すように、射出成形の際には、タブリード9がインサートされる。タブリード9が金型300内に装填され、雌金型301及び雄金型302の間で型閉じ動作がなされると、図5(b)に示すように、雌金型301及び雄金型302によって区画されたキャビティ空間303が金型300の内部に生ずる。
【0037】
図5(c)に示すように、上記キャビティ空間303には樹脂材料304が充填され、冷却・硬化後に型開きの後、タブリード9がインサートされたカバー部材81が取り出される。樹脂材料304の充填は、雌金型301又は雄金型302に形成されているゲート(図示せず)を介してなされる。本実施形態においては、タブリード9に可動片4が接合される前に、タブリード9が金型300内に装填される。これにより、雄金型302の形状をタブリード9のみに対応する簡素なものとすることができ、金型300の製造コストが低減される。
【0038】
図6は、カバー部材81のタブリード9に可動片4が接合され、樹脂ベース71にカバー部材81が装着される要領を示している。図6(a)に示されるように、上述した射出成形工程によって、タブリード9の先端部92は、カバー部材81に埋設され、カバー部材81の内面には、接合部83及び当接部86が形成されている。
【0039】
図6(b)に示されるように、タブリード9の内面には可動片4が接合される。両者の接合は、タブリード9の接合部82及び可動片4の接合部42においてなされる。これにより、図6(c)に示されるように、カバー部材81、タブリード9及び可動片4が一体化される。本実施形態にあっては、可動片4は溶接によってタブリード9と接合されるが、十分な接合強度が得られ、かつ可動片4とタブリード9との間で十分な導通が得られれば、他の接合形態を適用してもよい。タブリード9と可動片4との接合は、図5に示めされるインサート成形の前に行ってもよい。この場合、カバー部材81を構成する樹脂によって、可動片4とタブリード9とを接合し、その接合強度が十分に得られるのであれば、タブリード9と可動片4との溶接による接合を省略してもよい。
【0040】
その後、図6(d)に示されるように、固定片2が埋設され、PTCサーミスター6及び熱応動素子5が載置されている樹脂ベース71にカバー部材81が装着され、樹脂ベース71とカバー部材81とが超音波溶着により接合される。これにより、ケース7内に電流遮断手段10が収容され、樹脂ベース71の端面74とカバー部材81の接合部83とが接合される。この端面74と接合部83との接合は、樹脂同士の溶着であるため、密着性が高く、ケース7の気密性及び強度の向上に寄与している。
【0041】
図7は、本実施形態のブレーカー1を用いた2次電池パックの一例を示している。2次電池パック100は、ブレーカー1と、2次電池101と、回路基板110等を備える。2次電池101は、電解質を含有するセパレータを介して正極及び負極が積層されてなるセル(図示せず)と、セルに接続されたタブリード9等を有する。タブリード9の基端部91は、セルに接続され、先端部92が2次電池101から突出されている。タブリード9を介して、2次電池101のセルとブレーカー1の可動片4とが電気的に接続される。
【0042】
ブレーカー1は、例えば、銀ペースト111等の導電性接着剤を介して、回路基板110に実装されている。すなわち、回路基板110のランド112に銀ペースト111が塗布され、その上にブレーカー1が載置される。これにより、銀ペースト111は、ブレーカー1の固定片2と接着され、ブレーカー1が回路基板110に対して固定されると共に、ランド112と固定片2とが電気的に接続される。これにより、2次電池パック100内で、安全回路102が構成される。
【0043】
図7に示されるタブリード9では、基端部91と先端部92との間に段差部94が設けられている。段差部94は、側面視で階段状に形成され、基端部91と先端部92と段違いに配置する。段差部94は、プレス加工等によって形成される。段差部94の加工は、図5(a)に示されるタブリード9が金型300内に装填される前に行なわれるが、図5(b)に示される型閉じ動作において、雌金型301及び雄金型302とによってなされてもよい。さらには、図6(a)に示されるカバー部材81の射出成形後に行なわれてもよく、図6(d)に示される超音波溶着の後に行なわれてもよい。タブリード9に段差部94が設けられることにより、2次電池101に対する回路基板110ひいてはブレーカー1の相対的な高さが調整される。これにより、電気機器内での回路基板110と2次電池101との配置の自由度が高められる。
【0044】
ブレーカー1及び2次電池101の製造順序は、任意である。すなわち、先にタブリード9の先端部92が埋設されたブレーカー1を製造し、かかるブレーカー1を2次電池101の製造ラインに供給して2次電池101を製造してもよいし、先にタブリード9の基端部91が埋設された2次電池101を製造し、かかる2次電池101をブレーカー1の製造ラインに供給してブレーカー1を製造してもよい。また、先にタブリード9の先端部92が埋設されたカバー部材81を製造し、かかるカバー部材81を2次電池101の製造ラインに供給して2次電池101を製造し、その後、2次電池101をブレーカー1の製造ラインに供給してブレーカー1を製造してもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、ケース7に2次電池101のタブリード9が埋設されているので、従来構造で必要とされていた端子(例えば、特許文献1における端子22及び端子32)を省略できる。これにより、ブレーカー1の小型化を図ることが可能となる。さらに、回路基板110へのブレーカー1の実装にあたって、端子とタブリードとを接合する工程を省略できるため、電気機器の生産性を高めることが可能となる。
【0046】
また、可動片4の接合部42とタブリード9の先端部92とが溶接によって接合されているので、可動片4とタブリード9との導通が確保され、かつタブリード9によって可動片4が支持され、可動片4の姿勢が安定する。これにより、ブレーカー1の温度特性が良好となると共に、通電時の抵抗値が安定する。
【0047】
(変形例)
図8には、ブレーカー1を構成する上記カバー部材81及びタブリード9の変形例であるカバー部材81A及びタブリード9Aが示されている。この変形例では、タブリード9Aと可動片4とが一枚の金属板によって一体に形成されている点で、図4に示される構成とは異なる。タブリード9Aの先端部92Aは、可動片4の弾性部43として機能し、その端縁に可動接点3が形成されている。かかる変形例によれば、ブレーカー1の構成が簡素化されてコストダウンを図ることができる。また、ブレーカー1の薄型化を図ることができる。
【0048】
タブリード9Aは、可動片4の基端部46でカバー部材81の支持部88に埋設されて、可動片4が支持部88によって支持されている。これにより、可動片4の姿勢が安定し、ブレーカー1の温度特性が良好となると共に、通電時の抵抗値が安定する。
【0049】
図8では、基端部46で、タブリード9Aの先端部92Bが略90゜方向転換されて、タブリード9Aがカバー部材81の短手方向の端縁から突出している構成を示しているが、タブリード9Aの先端部92Bが直線状に延出されて、カバー部材81の長手方向の端縁から突出している構成であってもよい。
【0050】
図9には、ブレーカー1の変形例であるブレーカー1Bと、それを用いた2次電池100Bとが示されている。ブレーカー1Bでは、タブリード9Bの先端部92Bが樹脂ベース71に埋設され、固定片2Bとして機能する。従って、タブリード9Bの先端部92Bには、固定接点21が形成されている。一方、可動片4は、カバー片8を介してカバー部材81によって支持されている。
【0051】
カバー片8は、カバー部材81に埋設されている。カバー片8は、固定片2と同様に、平面視でケース7から外側にはみ出さないように形成されているのが望ましい。図中、カバー片8の背面は、カバー部材81から露出され、端子として機能する。すなわち、カバー片8の背面は、銀ペースト111を介して回路基板110のランド112と接着されている。これにより、ブレーカー1Bが回路基板110に対して固定されると共に、ランド112と可動片4とが電気的に接続され、2次電池パック100B内で、安全回路102が構成される。
【0052】
(実施形態2)
図10には、本発明の電流遮断装置の別の実施形態である電流遮断装置1Cと、それを用いた2次電池100Cとが示されている。電流遮断装置1Cでは、電流遮断手段10として、PTCサーミスター6Cが単独で用いられている点で、図7等に示されるブレーカー1とは異なる。
【0053】
電流遮断装置1Cでも、タブリード9Cの先端部92Cは、ケース7のカバー部材81に埋設されている。PTCサーミスター6Cは、ケース7内で、タブリード9Cの先端部92C及び端子2C等によって挟み込まれて支持されている。端子2Cは、図1等に示される固定片2と同様に、平面視でケース7から外側にはみ出さないように形成されているのが望ましい。端子2Cの下端面は、樹脂ベース71から露出され、銀ペースト111を介して回路基板110のランド112と接着されている。これにより、電流遮断装置1Cが回路基板110に対して固定されると共に、ランド112と端子2Cとが電気的に接続され、2次電池パック100C内で、安全回路102が構成される。
【0054】
PTCサーミスター6Cとしては、絶縁性ポリマー中にカーボンブラック等の導電性粒子を分散させたポリマーPTCが好適に用いられる。ポリマーPTCが高温にさらされると、絶縁性ポリマーが膨張し、これに伴い導電性粒子からなる導通経路が断絶され、電流が遮断される。
【0055】
電流遮断装置1Cによれば、上記ブレーカー1と同等の効果に加えて、電流遮断手段10の構成が簡素化され、電流遮断装置1Cのコストダウンを図ることができる。
【0056】
(実施形態3)
図11には、本発明の電流遮断装置のさらに別の実施形態である温度ヒューズ1Dと、それを用いた2次電池100Dとが示されている。温度ヒューズ1Dでは、電流遮断手段10として、可溶体11が用いられている点で、図7等に示されるブレーカー1とは異なる。
【0057】
温度ヒューズ1Dでも、タブリード9Dの先端部92Dは、ケース7に埋設されている。可溶体11は、低融点の可溶金属からなり、先端部92Dと端子2Dとを接続する。温度ヒューズ1Dが高温にさらされると、可溶体11が溶融し、これに伴い導通経路が断絶され、電流が遮断される。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも温度変化に応じて電流を遮断する電流遮断手段10と、電流遮断手段10を収容するケース7とを備えた電流遮断装置において、ケース7には、2次電池101のタブリード9が埋設されていればよい。また、電流遮断装置1等を製造する際には、タブリード9等が埋設されている電流遮断装置1等又はカバー部材81を2次電池101の製造ラインに供給し、タブリード9等を2次電池101のセルに接続する工程、又は、タブリード9等がセルに接続された状態の2次電池101を電流遮断装置1等の製造ラインに供給し、タブリード9等を電流遮断装置1等のケース7に埋設する工程が含まれる。
【0059】
例えば、図1等に示されるタブリード9は、ブレーカー1の短手方向の端面からカバー部材81に埋設されているが、長手方向の端面からカバー部材81ひいてはケース7に埋設されている構成であってもよい。さらには、タブリード9がケース7の内部で屈曲されて、ケース7の天面に対して垂直に突出する形態であってもよい。これにより、電気機器内での回路基板110と2次電池101との配置の自由度が高められる。他の電流遮断装置1B乃至1Dについても同様である。
【0060】
また、埋設の形態は、インサート成形に限られない。例えば、タブリード9が、嵌合、かしめ又は接着等の手法を適宜用いることによりケース7に埋設されていてもよい。さらには、ケース7は、二次的なインサート成形等により、樹脂等で密封されていてもよい。この場合、端子として機能する固定片2、カバー片8等の少なくとも一部が、回路基板110のランド111に固定され導通可能なように、ケース7の外側に形成された樹脂から露出していればよい。
【0061】
さらに、タブリード9は、単一の板状部材からなるものに限られることなく、複数の板状部材からなるものであってもよい。例えば、金属板の片面又は両面にフイルム状の絶縁体が形成されたフレキシブル基板によって、タブリード9が形成されていてもよい。このようなタブリード9によれば、電気機器内での回路基板110と2次電池101との配置の自由度がより一層高められる。また、2次電池101又は回路基板110を可動部品に組み込むことが可能となる。
【0062】
また、樹脂ベース71とカバー部材81との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合され十分な気密性が得られる手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。また、ケース7は、樹脂ベース71とカバー部材81等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって構成される形態であればよい。例えば、樹脂ベース71とカバー部材81の外側に、インサート成形等によって第3ケースを構成する樹脂が充填されている形態であってもよい。
【0063】
また、可動片4、樹脂ベース71カバー部材81及びタブリード9の形状は、図1等に示したものに限られず、適宜変更可能である。また、熱応動素子5及び収容部73等の形状も、図1等に示したものに限られず、適宜変更可能である。
【0064】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
【0065】
図1に示されるブレーカー1において、固定接点21、可動接点3、可動片4及び熱応動素子5と共に、図11に示される可溶体11を用いて電流遮断装置が構成されていてもよい。
【0066】
また、本発明のブレーカー1等の電流遮断装置は、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。例えば、図12には電気機器用の安全回路102が示されている。安全回路102は2次電池101の出力回路中に、直列にブレーカー1等を備えている。
【符号の説明】
【0067】
1 ブレーカー(電流遮断装置)
1C、1D 電流遮断装置
2 固定片
3 可動接点
4 可動片
5 熱応動素子
6、6C PTCサーミスター(正特性サーミスター)
7 ケース
9、9A、9B、9C、9D タブリード
10 電流遮断手段
11 可溶体
21 固定接点




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12