【実施例】
【0014】
実施例に係る搬送台車につき、
図1から
図7を参照して説明する。以下、
図2の画面左斜め下を搬送台車の背面側(後方側)、
図3及び
図4の画面右を搬送台車の正面側(前方側)とし、
図5は、搬送台車の背面側(後方側)から見た図を示す。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、搬送台車1は、複数の収容部2aを上下左右に備えた収容棚2が複数配置された大型倉庫等において、指定された物品3を収容棚2の所定の収容部2aに対して搬入もしくは搬出を行う際に用いられる。収容棚2の各収容部2aの底面2bには、正面視L字状、逆L字状で一対に対向する走行レール4が敷設されており、走行レール4の載置部4aには、物品3が載置された複数のパレット5が支持されている。
【0016】
図1から
図3に示されるように、搬送台車1は走行レール4の走行部4bを走行可能な車体6と、物品3を載置支持し、車体6に対し昇降可能に設けられた載置台7と、該載置台7を昇降させる昇降装置8(
図6参照)と、搬送台車1を走行レール4上で走行可能とする走行装置12とを備えており、載置台7がパレット5の下面から離間する最下降状態で走行レール4の走行部4bを走行してパレット5の下方に進入した後、載置台7を上昇させることでパレット5ごと物品3を持ち上げ、パレット5及び物品3を走行レール4の載置部4aから所定高さ浮かせて運搬するようになっている。
【0017】
図2から
図5に示されるように、車体6は、金属板の前後を屈曲して断面コ字状に形成された底板10aと前後の側板部10b,10cを有する基部材10と、基部材10の左右に取付けられる側板11,11と、を備え、側板11,11は、図示しないボルト・ナット等により基部材10に対して着脱可能に固定されている。
【0018】
走行装置12は、駆動モータ(図示せず)、駆動車輪13及び従動輪14により主に構成され、駆動モータが図示しないケーブルによりシーケンサ等の制御部34(
図6参照)と接続されており、制御部34から送信される回転方向や回転数等の情報に基づき回転駆動するようになっている。これら制御部34、走行装置12及び昇降装置8は、車体6内に内蔵されたバッテリー(図示せず)から供給される電力によりそれぞれ稼働可能となっている。
【0019】
また、基部材10の前後の側板部10b,10cには、それぞれの左右端部から外側に張り出す水平ローラ28,28,…が設けられている。さらに、左右の側板11,11には、その前後方向の中央部近傍に水平ローラ29,29がそれぞれ設けられている。これら水平ローラ28,28,…及び水平ローラ29,29が走行レール4の側面に当接することにより、車体6が走行レール4に沿って走行するようになっている。
【0020】
図3から
図5に示されるように、搬送台車1の底板10aには、フォーク挿入部材21が設けられている。
図5に示すように、フォーク挿入部材21は、挿入部底板22、挿入部側板24、挿入部天板25及び挿入部フランジ26から構成される。また、挿入部23は、挿入部底板22の両端に挿入部側板24,24が立設され、正面から見て上方に開放した略コ字状として形成されている。このフォーク挿入部材21と搬送台車1の底板10aとによりフォーク案内部が構成され、
図7に示されるように、挿入部底板22と挿入部側板24,24と搬送台車1の底板10a、すなわちフォーク案内部内の上下左右の壁面でフォークリフトのフォーク40が適切な角度に案内されながら移動することになる。
【0021】
図3に示すように、フォーク40の挿入が容易となるように、フォーク挿入部材21のフォーク挿入口を構成する挿入部側板24は、搬送台車1の前後方向の中心に向かうにつれて下方に傾斜させて形成されている。尚、
図4に示すように、フォーク挿入部材21は、搬送台車1の底板10aに、挿入部天板25及び挿入部フランジ26をボルト30により着脱可能に結合されている。挿入部23の大きさは、フォークリフトのフォークの寸法に対し、若干の余裕を持たせ、挿入作業が容易となる寸法及び運搬中に搬送台車が大きくずれることを防止する寸法に設定されている。また、フォーク挿入部材21は、搬送台車1の底板10aに着脱可能に結合されているので、フォークの寸法に応じて挿入部23の寸法を自在に変更して、搬送台車1の底板10aに取付けることができる。
【0022】
また、
図5に示すように、挿入部底板22は、搬送台車1の載置台7と略平行に設けられているとともに、走行装置12の下端よりも突出しているので、搬送台車1を床面に置いた状態において走行装置12が床面に接触しない状態となる。このように、搬送台車1の走行装置12は床面から浮いた状態となるので、車輪の交換、走行装置12の試運転、走行装置12の点検等を容易に行うことができる。さらに、搬送台車1を一時的に保管する際には、床面上あるいは他の搬送台車1の載置台7の上にフォーク挿入部材21を介して搬送台車1を積み重ねることができる。
【0023】
また、
図2から
図5に示されるように、搬送台車1の前後両方の走行方向における側板部10b,10cには、ゴム等の緩衝材により形成されたバンパー50,50が取り付けられており、搬送台車1が走行時に対象物に衝突した際の緩衝作用を奏している。それぞれのバンパー50は、中空のチューブ形状であり、内部に接触感知式のセンサーであるスイッチ51が設けられている。バンパー50は、搬送台車1が走行時に対象物に衝突した際に弾性変形し、この弾性変形によりバンパー50の内面がスイッチ51に接触し、スイッチ51をオンとするようになっている。
【0024】
このスイッチ51は、
図6に示されるように制御部34と接続されており、搬送台車1が走行時に対象物に衝突した際に、スイッチ51がオンとなった信号が制御部34に送信される。即ち衝突したこと制御部34に対して検知させる検知手段である。制御部34はこの信号に基づき走行装置12における駆動モータのブレーキング及び停止等を行い、搬送台車1を停止状態とする機能を有している。
【0025】
更に、制御部34には
図2に示される側板部10cに固定されたLED等の発光装置52と車体6に内蔵されたスピーカー53(
図5参照)とが接続されており、前記スイッチ51がオンとなった信号を受け取った場合、発光装置52を点灯させるとともに、スピーカー53から所定の音を出力させる。すなわち、発光装置52及びスピーカー53は、外部にスイッチ51がオンとなったことを報知する報知手段を構成している。この報知手段を利用することで、どの搬送台車1が収容棚2内のどこで対象物に衝突し、停止状態となっているのかを作業員に対して報知することができるため、復旧作業を円滑に行うことができる。尚、発光装置52は一方の側板部10cに限らず、例えば他方の側板部10bに設けられてもよいし、その両方及び側板11,11に設けられていてもよい。
【0026】
次に、フォークリフトによる搬送台車1の運搬方法について説明する。
図7に示すように、床面上に置かれた搬送台車1をフォークリフトで運搬する場合には、フォーク40を搬送台車1のフォーク挿入部材21のフォーク挿入口31に対向させる(
図7(a)参照)。次に、
図7(b)に示されるように、フォーク40をフォーク挿入口31に挿入する。このフォーク40の挿入が進むと、フォークリフトにおける立設部位41が搬送台車1の側板部10b,10cに設けられた前記バンパー50に接触する。
【0027】
上記したフォークリフトにおける立設部位41とは、フォーク40の終端近傍の立設した部位のことを指し、例えば、
図7に示される立設部位41は、フォーク40が側面視L字状となっており、このL字状の立上片を指す。また、フォークリフトの形状によっては、前述したような立上片を持たないフォーク形状である場合もあり、このような場合、フォークの挿入方向端部から最も近くでフォークに対して略直交する部材である例えばフォークを昇降する駆動部等が立設部位に相当することになる。
【0028】
そして、
図7(c)に示されるようにフォークリフトにおける立設部位41が搬送台車1のバンパー50に衝突したことにより、スイッチ51がオンとなり、発光装置52(
図2参照)が点灯するとともに内蔵されたスピーカー53(
図5参照)から所定の音が出力される。これによれば、フォークリフトの運転者は、発光装置52及びスピーカー53による報知により、フォークリフトにおける立上片41すなわちフォーク40の終端まで搬送台車1の下方に挿入された状態、すなわち搬送台車1に対してフォークリフトのフォーク40が適切な所定位置まで移動したことを確認できる。作業者がこの発光装置52及びスピーカー53による報知に従い作業を実施することで、搬送台車1は常にフォーク40上に安定して支持され、運搬中の搬送台車1の落下を防止することができる。
【0029】
また、
図7に示されるように、挿入部底板22と挿入部側板24,24と搬送台車1の底板10a、すなわちフォーク案内部内の上下左右の壁面でフォークリフトのフォーク40が適切な角度に案内されながら移動することになるため、フォークリフトにおける立設部位41と搬送台車1のバンパー50とが略平行な状態で接触することとなる。そのため、立設部位41と搬送台車1のバンパー50とが斜めに接触するなどして、正確な所定位置まで移動していない状態での誤検知を防止することができる。
【0030】
次いで、安定支持した状態でフォーク40を上昇させ、搬送台車1を床面から離れるように持ち上げる(
図7(c)参照)。持ち上げられた搬送台車1は、設置位置まで運搬され、
図1の収容部2aの走行レール4の高さまで上昇され、走行レール4上に降ろされて、最後に、フォーク40は挿入部23から引き抜かれ、走行レール4上に配置される。
【0031】
さらに、
図4に示すように、搬送台車を底面から見たとき、車体の底板10aの表面色と、フォーク挿入部材21の挿入部底板22、挿入部側板24、挿入部天板25及び挿入部フランジ26の表面色との色差、例えば、色の彩度、明度、色相の差を大きくして、視認性、識別性を高めることができる。高所に置かれた搬送台車の下方からフォークを挿入するときには、フォークリフトの運転者は、高所に置かれた搬送台車の下方から見上げてフォーク挿入口の位置にフォークを位置合わせする。この位置合わせの際、搬送台車1の底板10aの表面色とフォーク挿入部材21の表面色との色差を大きくしてあるので、フォーク挿入口31の位置を容易に識別できる。このように、搬送台車1の底板10aの表面色とフォーク挿入部材21の表面色との色差を大きくして、フォーク挿入口31の位置の識別を容易にして、フォーク40をフォーク挿入口31に挿入する際の安全性を高めることができる。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0033】
例えば、前記実施例においては、搬送台車1の走行時における対象物との衝突を検知するスイッチ51及び報知手段を利用してフォーク40上に搬送台車1の重心が安定する所定位置まで、フォーク40が挿入されたことを確認できるような態様としているが、これに限らず、搬送台車1の底板10a、側板部10b,10cまたはフォーク挿入部材21に、フォーク40上に搬送台車1の重心が安定する適切な所定位置まで、フォーク40が移動したことを確認するためのスイッチまたはセンサー等を別途設けるようにしてもよい。
【0034】
また、検知手段であるスイッチ51は、接触感知式のセンサーに限らず、例えばバンパー50の内面とスイッチとの距離を検知する近接センサーでもよいし、バンパー50への衝撃力を検知するセンサーであってもよい。
【0035】
また、報知手段は、発光装置52及びスピーカー53のいずれも構成するものに限らず、発光装置52のみ、若しくはスピーカー53のみを構成するものであってもよい。また例えば、外部から確認できる位置に表示パネル等を搭載し、この表示パネルにフォーク40上に搬送台車1の重心が安定する所定位置まで、フォーク40が移動されたことを表示するようにしてもよい。
【0036】
また、作業者は、検知手段であるスイッチ51と報知手段である発光装置52及びスピーカー53とにより、搬送台車1に対してフォークリフトのフォーク40が適切な所定位置まで移動したことを確認できるため、搬送台車1には必ずしもフォーク挿入部材21を取付けなくともよい。
【0037】
また、物品3及びパレット5を載置可能な載置部4aと、搬送台車1が走行する走行部4bとは、走行レール4,4に一体に設けられる構成に限らず、例えば収納ラック2内に別々に設けられてもよい。更に、載置部4a及び走行部4bを円形のバー等で構成し、物品3及びパレット5と、搬送台車1の駆動車輪13及び従動輪14と、にそれぞれ点接触するようにしてもよい。