(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る保冷具は、水、析出成分、非析出成分及びpH指示薬を含有する保冷用組成物を供えた保冷具であって、前記析出成分は、前記保冷用組成物の凍結時に析出し、前記pH指示薬に該当しない成分であり、前記非析出成分は、前記保冷用組成物の凍結時に析出せず、前記pH指示薬に該当しない成分であり、前記保冷用組成物は、前記析出成分及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(α)が4.5以上7.0未満となり、且つ、前記非析出成分及び水以外の含有成分をすべて水で置換した場合のpH(β)が5.5以上10.3以下となるものであり、pH(α)及びpH(β)が、前記pH指示薬の変色域よりも低いpH、変色域のpH、及び変色域よりも高いpHの3つのpH域のうち、互いに異なるpH域の値を示すことを特徴とする。
かかる保冷具は、pH指示薬の発色の有無が反映された保冷用組成物の色が、凍結の前後において大きく変化するために、冷却状態が目的とする状態(対象物を十分に冷却できる状態)にあるか容易に視認可能なものである。そして、凍結の前後における保冷用組成物の色は、前記析出成分及び非析出成分等のpH指示薬以外の含有成分自体の色を主として反映したものではない。
【0009】
pH(α)及びpH(β)は、pH指示薬が保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましい。
【0010】
pH(α)は、保冷用組成物での含有量(質量%)と同じ含有量(質量%)で前記析出成分のみを含有する析出成分含有水(例えば、析出成分水溶液)のpHに相当する。pH(α)は6.9以下であることが好ましく、6.7以下であることがより好ましい。また、pH(α)は4.7以上であることが好ましく、4.9以上であることがより好ましい。
pH(β)は、保冷用組成物での含有量(質量%)と同じ含有量(質量%)で前記非析出成分のみを含有する非析出成分含有水(例えば、非析出成分水溶液)のpHに相当する。pH(β)は5.7以上であることが好ましく、5.9以上であることがより好ましい。
【0011】
前記保冷用組成物は、例えば、前記析出成分及び非析出成分として、保冷用組成物の酸性度を調節し得る成分を組み合わせて用いたもの、より具体的には、pH指示薬の発色に影響を与える前記析出成分及び非析出成分として、所定濃度の水溶液のpHが特定の範囲内にあるものを組み合わせて用いたものであり、さらにこれら析出成分及び非析出成分に対して、適した変色域を有するpH指示薬を組み合わせることで、pH指示薬の発色の変化又は有無に依存した色変化を顕著に大きくするものである。
以下、各成分について説明する。
【0012】
前記析出成分は、保冷剤の一成分として機能するものであり、主にその種類及び量により、保冷用組成物の凍結温度が決定される。
また、前記析出成分は、前記pH指示薬に該当せず、保冷用組成物の凍結時に、結晶又はアモルファス(非晶質)として析出する成分であり、析出によって保冷用組成物の色変化に関与するものである。
前記析出成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0013】
凍結前、好ましくは0℃以上の保冷用組成物中で、前記析出成分は、その溶解している量が多いほど好ましく、前記析出成分の総量のうち溶解している量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%(全量)であることが特に好ましい。
また、凍結後の保冷用組成物中で、前記析出成分は、その析出している量が多いほど好ましく、前記析出成分の総量のうち析出している量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%(全量)であることが特に好ましい。
【0014】
前記析出成分は、無機塩であることが好ましい。
【0015】
前記無機塩を構成するカチオンで金属イオンとしては、リチウムイオン(Li
+)、ナトリウムイオン(Na
+)、カリウムイオン(K
+)等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン(Mg
2+)、カルシウムイオン(Ca
2+)等のアルカリ土類金属のイオン;鉄イオン(Fe
3+、Fe
2+)、銅イオン(Cu
2+、Cu
+)等の遷移金属のイオン;亜鉛イオン(Zn
2+)、アルミニウムイオン(Al
3+)等の第12族又は第13族の金属のイオン等が例示できる。
前記無機塩を構成するカチオンで非金属イオンとしては、アンモニウムイオン(NH
4+)等が例示できる。
【0016】
前記無機塩を構成するアニオンとしては、塩化物イオン(Cl
−)、臭化物イオン(Br
−)、ヨウ化物イオン(I
−)等のハロゲンイオン;硫酸イオン(SO
42−);硝酸イオン(NO
3−);炭酸イオン(CO
32−);炭酸水素イオン(HCO
3−);硫酸水素イオン(HSO
4−);リン酸イオン(PO
43−);リン酸水素イオン(HPO
42−);リン酸二水素イオン(H
2PO
4−);亜硫酸イオン(SO
32−);チオ硫酸イオン(S
2O
32−);塩素酸イオン(ClO
3−);過塩素酸イオン(ClO
4−);カルボキシ基(−C(=O)−OH)、スルホ基(−S(=O)
2−OH)等の酸基から水素イオン(H
+)が除かれてなる基を有するイオン等が例示できる。
【0017】
前記無機塩は特に限定されないが、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)等のアルカリ金属の塩化物;塩化アンモニウム(NH
4Cl)等の塩酸塩;硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)、硫酸カリウム(K
2SO
4)、硫酸アンモニウム((NH
4)
2SO
4)、硫酸マグネシウム(MgSO
4)、硫酸アルミニウム(Al
2(SO
4)
3)、硫酸ニッケル(NiSO
4)、ミョウバン(AlK(SO
4)
2)、アンモニウムミョウバン(Al(NH
4)(SO
4)
2)等の硫酸塩;硝酸ナトリウム(NaNO
3)、硝酸カリウム(KNO
3)、硝酸アンモニウム(NH
4NO
3)、硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO
3)
2・4H
2O)、硝酸カルシウム(Ca(NO
3))等の硝酸塩;炭酸カリウム(K
2CO
3)等の炭酸塩;炭酸水素カリウム(KHCO
3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)等の炭酸水素塩;塩化カルシウム(CaCl
2)、塩化マグネシウム(MgCl
2)等のアルカリ土類金属の塩化物;リン酸二水素ナトリウム(NaH
2PO
4)、リン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)、リン酸二水素カリウム(KH
2PO
4)、リン酸水素二カリウム(K
2HPO
4)、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、リン酸水素二アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)等のリン酸水素塩;リン酸三ナトリウム(Na
3PO
4)等のリン酸塩;亜硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)等の亜硫酸塩;塩素酸カリウム(KClO
3)等の塩素酸塩;過塩素酸ナトリウム(NaClO
4)等の過塩素酸塩;チオ硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
3)等のチオ硫酸塩;臭化カリウム(KBr)、臭化ナトリウム(NaBr)等のアルカリ金属の臭化物;ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)等のアルカリ金属のヨウ化物;ホウ砂(Na
2B
4O
7)等のホウ酸塩等が例示できる。
前記無機塩は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0018】
保冷用組成物の析出成分の含有量は、後述するpH(α)が所定の範囲となる量であることが好ましく、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0019】
前記非析出成分は、前記保冷用組成物の凍結時に析出せず、前記pH指示薬に該当しない成分である。なお、本明細書において「前記非析出成分が保冷用組成物の凍結時に析出しない」とは、保冷用組成物の凍結時に、前記非析出成分が水に溶解した状態のまま固化することを意味し、前記非析出成分の分子が多量に集合することなく、水分子に取り囲まれたまま固化している状態であると推測され、多量の前記非析出成分の分子が集合して固化している状態ではないと推測される。
前記非析出成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0020】
凍結前及び凍結後の保冷用組成物中で、前記非析出成分は、その析出している量が少ないほど好ましく、前記非析出成分の総量のうち析出している量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%である(全量が析出していない)ことが特に好ましい。
【0021】
前記非析出成分は、増粘剤又は界面活性剤であることが好ましく、増粘剤であることがより好ましい。
【0022】
前記増粘剤は特に限定されないが、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系ポリマー(ポリアクリル酸骨格有する化合物);カルボキシメチルセルロース(CMC)等のカルボキシアルキルセルロース;グアーガム;ヒドロキシプロピルグアーガム等のヒドロキシアルキルグアーガム;ペクチン;キサンタンガム;タマリンドガム;カラギーナン;プロピレングリコール等のアルキレングリコールが例示できる。
前記増粘剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0023】
前記界面活性剤は特に限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;デカン酸ナトリウム等のアルキルカルボン酸塩;N−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミド;ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等のポリオキシエチレンジアルキルエーテル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンモノアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンモノアルケニルエーテル等が例示できる。
前記界面活性剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0024】
保冷用組成物の前記非析出成分の含有量は、後述するpH(β)が所定の範囲となる量であることが好ましく、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3〜4質量%であることがより好ましい。
【0025】
前記pH指示薬(酸塩基指示薬)は、その発色の有無を反映させて保冷用組成物の色を決定するものである。保冷用組成物は、pH指示薬を含有することにより、凍結の前後において色変化する。
【0026】
前記pH指示薬は公知のものでよく、特に限定されない。pH指示薬は、その変色が観察されるpH範囲、すなわち変色域を有しており、
【0027】
前記pH指示薬は公知のものでよく、特に限定されない。
pH指示薬は、その変色が観察されるpH範囲、すなわち変色域を有している。pH指示薬は、溶液中で解離形と未解離形とに分かれて存在し、これらの間に解離平衡が成り立っており、解離形と未解離形とで呈する色が異なるものであるが、変色域外では、平衡は解離形か未解離形かのいずれか一方に著しく片寄っており、一方の色しかみられない。そして、変色域でpH指示薬は、解離形と未解離形とが比較できる程度の量で混在しており、両方の色の混ざりがみられる(「化学大辞典縮刷版第39刷、2006年9月15日」)。
【0028】
本発明におけるpH指示薬は、変色域(pH)が2.8〜11.0の範囲内にあるものが好ましい。表1に主なpH指示薬を例示する。表1には、該当するpH指示薬と共に、その変色域及び色変化をあわせて記載している。なお、表1中の「色変化(低pH→高pH)」とは、pH指示薬が含有されている液体のpHが、特定の値からこれよりも高い値へ変化した際に、pH指示薬が変色域内で示す色変化を示し、例えば、「赤→黄」とは、前記液体のpHが高くなる過程で、pH指示薬が前記液体を赤色から黄色に色変化させることを示す。
【0030】
前記pH指示薬は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよいが、通常は一種を単独で用いることが好ましい。
【0031】
保冷用組成物のpH指示薬の含有量は、保冷用組成物の目的とする色変化が達成される限り特に限定されないが、1〜30ppmであることが好ましく、5〜20ppmであることがより好ましい。
【0032】
保冷用組成物は、水、析出成分、非析出成分及びpH指示薬以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、これらに該当しないその他の成分を含有していてもよい。前記その他の成分としては、水以外の溶媒、防腐剤等の公知の各種添加剤が例示できる。
【0033】
前記溶媒は、前記析出成分、非析出成分及びpH指示薬を溶解可能なものが好ましく、このようなものとしてアルコールが例示できる。
前記溶媒は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0034】
水及び前記溶媒は、保冷剤の一成分として機能するものであり、前記析出成分と共に、主にこれらの種類及び量により、保冷用組成物の凍結温度が決定される。
保冷用組成物において、水及び前記溶媒の総含有量に対する前記溶媒の含有量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
【0035】
前記防腐剤としては、食品保存料、酸化防止剤が例示でき、ナトリウムピリチオン、パラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、プロタミン、有機窒素硫黄系化合物等が例示できる。
【0036】
保冷用組成物は、水及び前記溶媒以外の成分(前記析出成分、非析出成分、pH指示薬、及び前記溶媒以外のその他の成分)の総含有量に対する、前記析出成分、非析出成分及びpH指示薬の総含有量の割合が、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。前記総含有量の割合が前記下限値以上であることで、保冷用組成物は凍結の前後においてより大きく色変化する。
【0037】
保冷用組成物で好ましいものとしては、下記(i)〜(iii)の一以上の条件を満たすものが例示できる。
(i)凍結の前後において、L
*a
*b
*表色系のa
*が、正の値から負の値へ、又は負の値から正の値へ変化するもの。すなわち、凍結後の保冷用組成物のa
*をa1
*、凍結前の保冷用組成物のa
*をa2
*とした場合、a1
*<0<a2
*、又はa2
*<0<a1
*の関係を満たすもの。
(ii)凍結の前後において、L
*a
*b
*表色系のb
*が、正の値から負の値へ、又は負の値から正の値へ変化するもの。すなわち、凍結後の保冷用組成物のb
*をb1
*、凍結前の保冷用組成物のb
*をb2
*とした場合、b1
*<0<b2
*、又はb2
*<0<b1
*の関係を満たすもの。
(iii)凍結後のa
*から凍結前のa
*を引いた差が10以上(+10以上)となるもの。すなわち、凍結後の保冷用組成物のa
*をa1
*、凍結前の保冷用組成物のa
*をa2
*とした場合、a1
*−a2
*≧10の関係を満たすもの。
ただし、a1
*及びb1
*は同時期の値であり、a2
*及びb2
*は同時期の値である。
保冷用組成物は、前記(i)、(ii)及び(iii)の一以上(一、二又はすべて)の関係を満たすことで、その凍結の前後においてより大きく色変化する。
【0038】
保冷用組成物としては、上述のものにおいて、「pH(α)及びpH(β)が、前記pH指示薬の変色域よりも低いpH、変色域のpH、及び変色域よりも高いpHの3つのpH域のうち、互いに異なるpH域の値を示す」という条件に代えて、凍結前の保冷用組成物のpHをpH(C)とした場合に、「pH(C)及びpH(β)が、前記pH指示薬の変色域よりも低いpH、変色域のpH、及び変色域よりも高いpHの3つのpH域のうち、互いに異なるpH域の値を示す」という条件を満たすものも好ましい。すなわち、保冷用組成物で好ましいものとしては、下記(vii)の条件を満たすものも例示できる。
(vii)前記析出成分及び水以外のすべての含有成分(前記非析出成分、pH指示薬及びその他の成分)を同じ質量の水で置換した場合のpH(pH(α))が、4.5以上7.0未満となり、且つ、前記非析出成分及び水以外のすべての含有成分(前記析出成分、pH指示薬及びその他の成分)を同じ質量の水で置換した場合のpH(pH(β))が、5.5以上10.3以下となるものであり、凍結前の保冷用組成物のpH(pH(C))及びpH(β)が、前記pH指示薬の変色域よりも低いpH、前記変色域のpH、及び前記変色域よりも高いpHの3つのpH域のうち、互いに異なるpH域の値を示すもの。
pH(C)は、pH指示薬が保冷用組成物中で溶解している温度でのpHであることが好ましい。
【0039】
保冷用組成物は、前記(vii)の条件を満たすことで、その凍結の前後において、より大きく色変化する。
前記(vii)の条件を満たす保冷用組成物は、pH指示薬の発色に影響を与える前記析出成分及び非析出成分として、所定濃度の水溶液のpHが特定の範囲内にあるものを組み合わせ、さらにこれら析出成分及び非析出成分に対して、適した変色域を有するpH指示薬を組み合わせることで、pH指示薬の発色の変化又は有無に依存した色変化を顕著に大きくするものである。
【0040】
保冷用組成物は、凍結前後での色差(ΔE)が8以上であるものが好ましく、10以上であるものがより好ましく、11以上であるものが特に好ましい。
また、保冷用組成物の凍結前後での色差(ΔE)の上限値は、特に限定されない。
【0041】
保冷用組成物は、凍結前の段階では、pH指示薬におけるプロトン化及び脱プロトン化のいずれかが、保冷用組成物中に溶解している前記析出成分の影響を受けているのに対し、凍結後の段階では、前記析出成分の大半又はすべてが保冷用組成物中で析出していることにより、pH指示薬におけるプロトン化及び脱プロトン化のいずれかが、前記析出成分の影響を全く受けていないか又は軽度に受けているに過ぎないと推測される。そしてこれにより、保冷用組成物は、pH指示薬の発色の変化又は有無を反映して、凍結の前後において、大きく色変化すると推測される。
【0042】
保冷用組成物は、水、前記析出成分、非析出成分、pH指示薬、及び必要に応じて前記その他の成分を配合することで得られる。
各成分の配合方法は特に限定されず、保冷用組成物の凍結温度よりも高い温度において、各成分が均一に溶解又は分散するように、任意に調節できる。
例えば、各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0043】
本発明に係る保冷具は、前記保冷用組成物を供えたものであり、例えば、液状物を封入可能な容器等の保持手段によって、保冷用組成物を保持することで構成される。
前記保持手段の材質は、保持された保冷用組成物の色変化(変色)が視認可能な程度に透明性を有していれば、特に限定されず、好ましいものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル等の合成樹脂が例示できる。これらの中でも、耐低温脆性、耐水性及び耐薬品性等に優れる点から、ポリオレフィンが好ましく、成形が容易で、高い強度を有する高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0044】
前記保冷用組成物は、凍結の前後において大きく色変化するために、凍結の有無を容易に視認可能なものである。そして、保冷用組成物のこの色変化が、保冷具の外側から視認可能となっており、これにより保冷具は、所望の温度にまで十分に冷却されているか否かが容易に視認可能となっている。
また、前記保冷用組成物は、凍結及び解凍を繰り返すなど、冷却及び昇温を繰り返しても、効果が損なわれることが無いので、これを備えた保冷具は、繰り返し利用にも適したものである。
【実施例】
【0045】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。なお、以下において、pH指示薬の含有量(配合量、濃度)の単位「ppm」は、すべて質量比に基づくものである。
【0046】
本実施例及び比較例で使用した原料を、以下に示す。
(増粘剤)
・アクリル系ポリマー(1):東亜合成社製「アロンビスAH−305X」
・アクリル系ポリマー(2):住友精化社製「アクペックHV−505ED」
・アクリル系ポリマー(3):日本触媒社製「アクアリックAS58」
・アクリル系ポリマー(4):日本触媒社製「アクアリックFH−S」
・アクリル系ポリマー(5):日本触媒社製「アクアリックIH−G」
・CMC:カルボキシメチルセルロース(関東化学社製)
・XTG:キサンタンガム(三晶社製)
(pH指示薬)
・BTB:ブロムチモールブルー(和光純薬社製)
・BCP:ブロモクレゾールパープル(和光純薬社製)
・PR:フェノールレッド(和光純薬社製)
・TP:チモールフタレイン(和光純薬社製)
・BPB:ブロモフェノールブルー(和光純薬社製)
【0047】
[参考例1]
<保冷用組成物及び保冷具の製造>
室温(20〜25℃)において、水(96.7質量部)、BTB、アクリル系ポリマー(1)(1.3質量部)、リン酸水素ニカリウム(2質量部)を添加及び混合して、保冷用組成物を得た。このとき、BTBの配合量は、得られた保冷用組成物での含有量が10ppmとなるように調節した。水以外の各配合成分及び濃度、pH(α)並びにpH(β)等を表2に示す。そして、得られた保冷用組成物のpH(C)を測定した。結果を表6に示す。pH(α)、pH(β)及びpH(C)は、すべて測定対象物の温度を25℃として測定した。
なお、表2において、pH(α)の欄に「質量%」単位で記載されている濃度は、pH(α)測定時の無機塩水溶液の濃度を示す。同様に、pH(β)の欄に「質量%」単位で記載されている濃度は、pH(β)測定時の増粘剤水溶液の濃度を示す。また、pH指示薬の変色域の欄に記載されている「色変化」とは、pH指示薬が含有されている液体のpHが、特定の値からこれよりも高い値へ変化した際に、pH指示薬が変色域内で示す色変化を示し、例えば、「黄→青」とは、前記液体のpHが高くなる過程で、pH指示薬が前記液体を黄色から青色に色変化させることを示す。
次いで、得られた保冷用組成物を高密度ポリエチレン製の容器に封入して、保冷具を得た。
【0048】
<保冷用組成物の評価>
(色差(ΔE))
得られた保冷用組成物(保冷具)を−25℃まで冷却した。この間、保冷用組成物は、−25℃よりも高い温度で凍結すると共に、凍結の前後で色変化した。そして、凍結前の保冷用組成物と、凍結後の保冷用組成物について、色差測定器(エックスライト社製「X−rite 530」)を使用して、下記条件でL
*、a
*、b
*を測定した。
(測定条件)
高密度ポリエチレン製の容器に封入した保冷用組成物について、この容器の上から色差測定器をあて、凍結前のL
*、a
*,b
*の値を測定した。さらに−25℃の凍結庫にて保冷用組成物を凍結させ、凍結直後のL
*、a
*,b
*の値を凍結前の場合と同様に測定した。
【0049】
そして、得られたL
*、a
*、b
*の測定値から、下記式(I)にしたがって、凍結前後での保冷用組成物の色差(ΔE)を算出した。結果を表4に示す。
(色差(ΔE)の算出)
ΔE=[(L1
*−L2
*)
2+(a1
*−a2
*)
2+(b1
*−b2
*)
2]
1/2 ・・・・(I)
(式中、L1
*は凍結後の保冷用組成物のL
*の値であり、L2
*は凍結前の保冷用組成物のL
*の値であり、a1
*は凍結後の保冷用組成物のa
*の値であり、a2
*は凍結前の保冷用組成物のa
*の値であり、b1
*は凍結後の保冷用組成物のb
*の値であり、b2
*は凍結前の保冷用組成物のb
*の値であり、L1
*、a1
*及びb1
*は同時期の値であり、L2
*、a2
*及びb2
*は同時期の値である。)
【0050】
(色変化)
上記のΔE算出時において、凍結前後での保冷用組成物の色変化を、下記基準にしたがって目視で評価した。結果を表4に示す。
なお、表4において、評価結果の欄に記載されている「色変化」とは、凍結前後での保冷用組成物の色変化を示し、例えば、「緑→黄」とは、保冷用組成物の色が凍結前は緑色で凍結後は黄色であったことを示す。
○:凍結前後での色変化が大きく、冷却状態の視認が極めて容易である。
△:凍結前後での色変化が判別可能であり、冷却状態の視認が可能である。
×:凍結前後での色変化が不明瞭であり、冷却状態の視認が困難又は不可能である。
【0051】
<保冷用組成物及び保冷具の製造、保冷用組成物の評価>
[参考例2〜6、比較例1〜4]
保冷用組成物の配合成分及び濃度を表2に示すとおりとした点以外は、参考例1と同じ方法で保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。結果を表4に示す。また、保冷用組成物のpH(C)を表6に示す。
【0052】
[実施例1〜4、参考例7〜12、比較例5〜10]
保冷用組成物の配合成分及び濃度を表3に示すとおりとした点以外は、参考例1と同じ方法で保冷用組成物及び保冷具を製造し、保冷用組成物を評価した。なお、保冷用組成物の評価は、目視による色変化についてのみ行った。結果を表5に示す。また、保冷用組成物のpH(C)を表6に示す。
【0053】
なお、実施例1〜4、参考例1〜12、比較例1〜10の保冷用組成物ではいずれも、凍結前は無機塩が完溶していたが、凍結後は無機塩の全量又はほぼ全量が析出していた。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
上記結果から明らかなように、実施例1〜4では、凍結時の無機塩の析出に伴い、pH指示薬の発色の変化を反映して、保冷用組成物の色が明瞭に変化し、冷却状態を容易に視認できた。参考例1〜12も同様であった。
これに対して、比較例1〜10では、凍結時に無機塩が析出しても、保冷用組成物の色変化が不明瞭であり、冷却状態の視認が困難であるか又は不可能であった。