(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
[実施形態の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る端末装置10のハードウェア構成を示す図である。本発明に係る端末装置は、ユーザが指を接触させる操作による入力を受け付ける機能を備えた装置であれば、モバイル型、タブレット型、ウェアラブル型、固定設置型などの形態の違いや、携帯電話機、ゲーム機、電子ノート端末、文書閲覧端末、電子書籍端末などの用途の違いを問わない。本実施形態では、通話及びデータ通信が可能なコンピュータであるスマートホンが端末装置である場合を例に挙げて、説明を行う。
【0016】
図1に示すように、端末装置10は、制御部11と、通信部12と、操作部13と、タッチパネル14と、音声入出力部15と、記憶部16とを備えている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などの記憶装置を備えている。ROMは、CPUによって利用されるプログラムや各種データを記憶している。記憶部16は、例えばEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)、フラッシュメモリ又はハードディスクなどの不揮発性の記憶手段であり、CPUによって利用されるプログラムや各種データを記憶している。CPUは、ROMや記憶部16に記憶されたプログラムやデータをRAMに展開し、そのプログラムに既述された手順に従って処理を行うことにより、後述する各種機能を実現する。
【0017】
通信部12は、例えばアンテナや通信回路を備えており、無線通信を行う。操作部13は、例えばキーやボタン或いはジョグダイアルなどの操作子を備え、ユーザの操作に応じた操作信号を制御部11に供給する。タッチパネル14は、例えば液晶パネルとタッチセンサとが積層された構造であり、制御部11による制御の下で画像を表示するとともに、ユーザからの接触操作による入力(以下、タッチ入力という)に応じた操作信号を制御部11に供給する。制御部11は、操作部13やタッチパネル14から供給される操作信号に応じた処理を行う。音声入出力部15は、例えばスピーカ、マイクロホン及び音声処理回路を備えており、通話、録音又は楽音再生などにおける音声の入出力や音声処理を行う。
【0018】
図2は、端末装置10の機能構成を示すブロック図である。端末装置10は、入力部101、情報保持部102、変換部103、判定部104、痕跡隠蔽用情報生成部105、指標情報生成部106、指標情報出力部107及び制限解除部108という機能を備える。入力部101及び指標情報出力部107はタッチパネル14及び制御部11によって実現される機能であり、情報保持部102は記憶部16及び制御部11によって実現される機能であり、変換部103、判定部104、痕跡隠蔽用情報生成部105、指標情報生成部106及び制限解除部108は制御部11によって実現される機能である。
【0019】
端末装置10は、或るパターンがユーザによってタッチパネル14に入力されると、ユーザに提供される何らかの機能が制限された状態から、その制限を解除した状態に遷移する。具体的な状態遷移の例としては、例えば、いわゆるスリープ状態やロック状態と呼ばれる省電力状態からユーザの各種要求を受け付けるホーム画面が起動した状態に遷移するとか、ログイン要求画面を表示したログイン待ち状態からユーザに対して各種サービスを提供し得るログイン状態に遷移するとか、アプリケーションプログラムが起動していない状態からそれが起動してユーザの要求に応じた処理を行い得る状態に遷移する、などが挙げられる。
【0020】
入力部101は、ユーザのタッチ入力を受け付ける手段であり、タッチ入力によりパターンの入力を受け付けると、そのパターンに応じた情報を生成する。ここでいう「パターン」とは、入力部101(タッチパネル14)に対してユーザがタッチ入力した領域に基づく位置情報を少なくとも含むものであり、さらに本実施形態では、この位置情報以外にタッチ入力の順序をも含む概念である。例えばタッチパネル14に配列された入力領域群(例としては後述する
図5における入力ポイントP1〜P9)のうち1又は複数を経由するようなパターンがユーザにより入力された場合、入力部101は、経由した各入力領域の識別情報とその経由順序とを「パターンに応じた情報」として生成する。
【0021】
変換部103は、入力部101が生成したパターンに応じた情報を、照合用情報及び特徴量に変換する。「照合用情報」とは、入力部101に入力されたパターンに応じた情報に固有の値であり、例えばそのパターンに応じた情報のハッシュ値である。「特徴量」とは、入力部101に入力されたパターンに応じた情報に基づいて生成される値であり、パターン全体の形状の特徴を表した量であるが、詳しくは後述する。例えば端末装置10の初期設定等のタイミングで、ユーザ認証時の基準となるパターン(以下、認証用パターンという)がユーザによって入力部101にタッチ入力されると、変換部103は、認証用パターンに応じた情報を入力部101から取得する。そして、変換部103は、認証用パターンに応じた情報を照合用情報及び特徴量(以下、認証用パターンの照合用情報、認証用パターンの特徴量という)に変換して情報保持部102に渡す。このため、変換部103は、入力部101が生成したパターンに応じた情報に基づいて照合用情報を生成する照合用情報生成部103aと、入力部101が生成したパターンに応じた情報に基づいて特徴量を生成する特徴量生成部103bとを有している。端末装置10の初期設定等のタイミングで認証用パターンが入力されると、照合用情報生成部103aが認証パターンに応じた情報に基づいて照合用情報を生成し、特徴量生成部103bが認証パターンに応じた情報に基づいて特徴量を生成する。情報保持部102は、認証用パターンの照合用情報及び特徴量を保持する。
【0022】
ユーザに提供される機能が制限された状態で、ユーザは自身が記憶している認証用パターンと同じパターンをタッチ入力すると(以下、ここで入力されるパターンを第1の入力パターンという)、入力部101はそのタッチ入力を受け付けて、第1の入力パターンに応じた情報を生成して変換部103に渡す。変換部103の照合用情報生成部103aは、その第1の入力パターンに応じた情報を、第1の入力パターンの照合用情報に変換して判定部104に渡す。
【0023】
判定部104は、変換部103から取得した第1の入力パターンの照合用情報と、情報保持部102から取得した認証用パターンの照合用情報とに基づいて、第1の入力パターンを入力したユーザが正当なユーザであるか否かを判定する。つまり、第1の入力パターンはユーザ認証のために入力されるパターンである。
【0024】
判定部104によって第1の入力パターンを入力したユーザが正当なユーザであると判定された場合、痕跡隠蔽用情報生成部105は、その判定結果に応じて、認証用パターンの特徴量を情報保持部102から取得し、第1の入力パターンに応じた情報を入力部101から取得する。痕跡隠蔽用情報生成部105は、認証用パターンの特徴量及び第1の入力パターンに応じた情報に基づいて痕跡隠蔽用情報を生成する。「痕跡隠蔽用情報」とは、第1の入力パターンがタッチ入力されたときに、タッチパネル14に残った指の皮脂、汗や汚れなど(以下、タッチ入力の痕跡という)を視認しづらくするために用いるパターンに対応する情報であり、詳しくは後述する。ここでいう「視認しづらくするために用いるパターンに対応する情報」とは、例えば、このパターンがタッチ入力された時に入力部101が生成する「パターンに応じた情報」である。
【0025】
指標情報生成部106は、痕跡隠蔽用情報生成部105から痕跡隠蔽用情報を取得して、ユーザが痕跡隠蔽用情報に対応するパターンを入力するときの指標となる指標情報を生成する。指標情報は、例えば痕跡隠蔽用情報に対応するパターンそのものを表す画像を表示するための画像データである。
【0026】
指標情報出力部107は、指標情報生成部106によって生成された指標情報を出力する。指標情報が例えば上記のような痕跡隠蔽用情報に対応するパターンを表す画像を表示するための画像データである場合、指標情報出力部107はその画像をタッチパネル14に表示する。
【0027】
ユーザは、出力された指標情報を指標にして、入力部101にパターンを入力する。以下、このパターンを第2の入力パターンという。例えば指標情報出力部107が痕跡隠蔽用情報に対応するパターンを表す画像をタッチパネル14に表示した場合には、ユーザはその画像の上を指でなぞるようなタッチ入力を行えばよい。この第2の入力パターンは、第1のパターンのタッチ入力の痕跡を隠蔽するために入力されるパターンである。
【0028】
入力部101は、このタッチ入力を受け付け、入力された第2の入力パターンに応じた情報を制限解除部108に渡す。制限解除部108は、痕跡隠蔽用情報生成部105から取得した痕跡隠蔽用情報と、入力部101から取得した第2の入力パターンに応じた情報とに基づいて、端末装置10の状態を、ユーザに提供される機能が制限された状態のままで維持するか、又は、その制限を解除した状態に遷移させる。
【0029】
[実施形態の動作]
[動作の概要]
まず、
図3に示したフローチャートを参照して、端末装置10の動作の概要を説明する。
図3において、端末装置10は、ユーザによって入力部101に認証用パターンが入力されると、認証用パターンの照合用情報及び特徴量を生成して保持する(ステップS1)。認証用パターンの照合用情報及び特徴量を保持した後に、ユーザによって第1の入力パターンが入力されると、端末装置10は、第1の入力パターンの照合用情報と認証用パターンの照合用情報とを照合することにより第1の入力パターンについての検証を行い、ユーザの正当性を確認する(ステップS2)。正当なユーザであることが確認されると、端末装置10は、第1の入力パターンに応じた情報及び認証用パターンの特徴量に基づいて痕跡隠蔽用情報及び指標情報を生成し、指標情報を出力する(ステップS3)。指標情報の出力後にユーザによって第2の入力パターンが入力されると、端末装置10は、第2の入力パターンに応じた情報と痕跡隠蔽用情報とに基づいて(例えば、比較や類似判断により)第2の入力パターンについての検証を行う(ステップS4)。第2の入力パターンについての検証がなされると、端末装置10は、ユーザに提供される機能の制限を解除する(ステップS5)。以下、これらステップS1〜S5の各処理について詳細に説明する。
【0030】
[認証用パターンの入力処理]
図4は、端末装置10による認証用パターンの入力処理(
図3のステップS1)の手順を示すフローチャートである。例えば端末装置10の初期設定時や認証用パターンの更新時において、ユーザにより入力部101に認証用パターンがタッチ入力されると、入力部101は、そのタッチ入力を受け付ける(ステップS11)。
【0031】
ここで、
図5は、端末装置10に認証用パターンがタッチ入力されたときの様子を示す図である。
図5は、端末装置10を正面から見たときの外観を示している。図示のように、端末装置10の正面側のほぼ全面にタッチパネル14が配置され、タッチパネル14の下方(ユーザから見て手前側)に操作部13としてのキーが配置されている。認証用パターンがタッチ入力される前は、予め配置が決められた複数の入力領域(ここでは縦横3×3で配列された9個の入力ポイントP1〜P9)を示す円形画像が表示されている。認証用パターンは、これらの入力ポイントP1〜P9のうち所定数(例えば5個)以上の入力ポイントを経由するパターンである。ユーザは、入力ポイントP1〜P9の中から任意で選んだ所定数以上の入力ポイントを経由する線を認証用パターンとして描く。この結果、認証用パターンに含まれる入力ポイントは環状画像Cで囲まれた状態になり、さらに、その認証用パターンに含まれる入力ポイントがその経由順に線状画像で結ばれる。
図5は、入力ポイントP1を始点とし、入力ポイントP2→P3→P4を順番に経由して終点としての入力ポイントP7に至る認証用パターンが描かれた結果、入力ポイントP1,P2,P3,P4,P7が環状画像Cで囲まれ、さらに、これらの入力ポイントP1,P2,P3,P4,P7をその経由順で結んだ線状画像L1が表示されている例を示している。
【0032】
上記のような処理を行うため、入力部101、変換部103及び痕跡隠蔽用情報生成部105との間で、各入力ポイントを示す識別情報および各入力ポイントの配置に関する情報を予め共有しておくようにすればよい。「各入力ポイントの配置に関する情報」とは、例えば、各入力ポイントPxとPy(x=1〜9の整数、y=1〜9の整数、x≠y)との間の縦方向及び横方向の線分の長さを示す情報である。一例を挙げると、入力ポイントP1とP2との間の線分は、縦方向に1、横方向に0の長さを有する、という情報である。また、入力部101が、入力ポイントを示す識別情報(例えば、ポイントPn(n=1〜9)に対して識別情報Pnを付与することとしてもよい)をその経由順に列挙した識別情報のリストを「入力に応じた情報」として変換部103に渡すようにしいてもよい。なお、以下ではこの識別情報のリストを識別情報リストという。
【0033】
図4の説明に戻り、変換部103は、入力された認証用パターンの照合用情報及び特徴量を算出する(ステップS12)。照合用情報は、前述のとおり、パターンに応じた情報に固有の値であり、本実施形態ではハッシュ値である。特徴量は、前述のとおり認証用パターン全体の形状の特徴を表す値であり、本実施形態では縦横比率という値を用いる。縦横比率は、
図5で例示した認証用パターンを構成する線分のうち、縦方向の線分の長さと、横方向の線分の長さと、斜め方向の線分の長さとの和で求められる。縦方向の長さは、隣り合う入力ポイント間の長さを1単位とし、縦方向の線分に相当する単位数に正の符号を付したものとする。つまり、
図5において縦方向の長さは+2単位である。横方向の長さは、隣り合う入力ポイント間の長さを1単位とし、横方向の線分に相当する単位数に負の符号を付したものとする。つまり、
図5において横方向の長さは−1単位である。斜め方向の長さは、隣り合う入力ポイント間の長さを1単位とし、斜め方向の線分の縦方向成分の長さと横方向成分の長さとの和である。つまり、
図5において斜め方向の長さは、2+(−1)=1単位である。よって、縦方向の長さと横方向の長さと斜め方向の長さとの和である縦横比率は、2+(−1)+1=2単位となる。なお、変換部103が、「入力に応じた情報」として、前述の識別情報リストを受け取った場合、前述の入力ポイントの配置に関する情報を用いて、識別情報リストにおいて列挙順序が隣接する識別情報同士の間の線分の縦方向および横方向の線分の長さを求めて、特徴量である縦横比率を求めることとしてもよい。
【0034】
そして、情報保持部102は、認証用パターンの照合用情報及び特徴量を保持する(ステップS13)。なお、認証用パターンに応じた情報は、ステップS11〜13の処理が実行されている期間はRAMなどの揮発性の記憶手段に記憶されているが、ステップ13の処理が終わると、その揮発性の記憶手段からは消去される。
【0035】
[第1の入力パターンの検証処理]
図6は、端末装置10による第1の入力パターンの検証処理(
図3のステップS2)の手順を示すフローチャートである。端末装置10において機能が制限された状態でユーザが第1の入力パターンを入力すると、入力部101はその入力を受け付け、第1の入力パターンに応じた情報を変換部103に渡す。変換部103は、第1の入力パターンに応じた情報を第1の入力パターンの照合用情報に変換して判定部104に渡す(ステップS21)。判定部104は、第1の入力パターンの照合用情報と、情報保持部102が保持している認証用パターンの照合用情報とを照合する(ステップS22)。
【0036】
判定部104は、上記照合の結果に基づき両者が所定の類似範囲内にあるか否かを判断し(ステップS23)、類似範囲内にあるなら(ステップS23;YES)
図6の処理を終了し、類似範囲内にないなら(ステップS23;NO)ユーザからの次の第1の入力パターンが入力されるのを待つ。人間のタッチ入力は必ずしも正確ではないため、認証用パターンと第1の入力パターンとの差分を或る程度許容する必要がある。このため、情報保持部102が保持している照合用情報に対応する認証用パターンとほぼ同一とみなせる範囲が、ここでいう類似範囲として予め決められている。
【0037】
なお、ユーザがタッチ入力して描いたパターンが入力ポイントP1〜P9のちょうど真上を通らずに、これらの入力ポイントから少しずれた位置を経由するときには、そのパターンから最も近い位置にある入力ポイントを通るパターンに補正されてから、ステップS22の比較がなされる場合がある。この場合には、ユーザにより入力された第1の入力パターンに対して上記補正がなされた後のパターンの照合用情報と、情報保持部102が保持している認証用パターンの照合用情報とは、一致するか一致しないかという2者択一の判断となる。
【0038】
上記のような
図6の処理は、第1の入力パターンの照合用情報と認証用パターンの照合用情報とが所定の類似範囲内に収まるまで、所定回数のリトライがなされる。所定回数のリトライによっても第1の入力パターンの照合用情報と認証用パターンの照合用情報とが所定の類似範囲内に収まらない場合には、予め決められたエラー処理が実行される。
【0039】
[痕跡隠蔽用情報及び指標情報に関する処理]
図7は、端末装置10による痕跡隠蔽用情報及び指標情報に関する処理(
図3のステップS3)の手順を示すフローチャートである。痕跡隠蔽用情報生成部105は、認証用パターンの類似範囲内にあると判定された入力部101から取得した第1の入力パターンに応じた情報に基づいて、上記第1の入力パターンに対応する入力ポイント群に含まれない入力ポイント群のうち少なくとも1つを含み、且つ、上記第1の入力パターンに対応する入力ポイント群の数以上の数の入力ポイントを抽出する(ステップS31)。この「第1の入力パターンに対応する入力ポイント」という表現は、ユーザにより入力された第1の入力パターンそのものが経由する入力ポイントのほかに、前述したようにその第1の入力パターンが最も近い位置にある入力ポイントを通るパターンに補正されるような場合に、その補正後の入力パターンが経由する入力ポイントをも含む意味である。
【0040】
このステップS31において、例えば
図5に示した認証用パターンに相当する線状画像L1が経由している(つまり、認証用パターンの類似範囲内にあると判定された第1の入力パターンに対応している)入力ポイントP2,P3と、線状画像L1が経由していない(つまり、認証用パターンの類似範囲内にあると判定された第1の入力パターンに対応していない)入力ポイントP5,P6,P8,P9という、合計6個の入力ポイントが抽出されたとする。次に、痕跡隠蔽用情報生成部105は、抽出した入力ポイント群の中から、始点に相当する入力ポイントと終点に相当する入力ポイントをそれぞれ選び、選んだ全入力ポイントを1本の線で結んだパターンを示す痕跡隠蔽用情報を生成する(ステップS32)。
図8に示すように、入力ポイントP9を始点として入力ポイントP6→P3→P2→P5を順番に経由し、終点としての入力ポイントP8に至る点線PTで示されるパターンに対応する痕跡隠蔽用情報が生成されたとする。この痕跡隠蔽用情報は、上記パターンに含まれる入力ポイントの識別情報とその経由順を含む情報である。なお、線状画像L1が全ての入力ポイントを経由している場合には(つまり、線状画像L1が経由しない入力ポイントが存在しない場合には)、全入力ポイントが抽出される。この場合、痕跡隠蔽用情報生成部105は、始点及び終点のいずれか一方もしくは双方が線状画像L1の始点及び終点と異なる入力ポイントとなるよう、痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの始点及び終点のいずれか一方もしくは双方を選ぶ。具体的には、痕跡隠蔽用情報生成部105は、(1)線状画像L1の始点に相当する入力ポイント以外の入力ポイントを、ステップS32で始点に相当する入力ポイントとして選ぶ、(2)線状画像L1の終点に相当する入力ポイント以外の入力ポイントを、ステップS32で終点に相当する入力ポイントとして選ぶ、という(1)及び(2)のうち少なくともいずれか一方を行う。
【0041】
なお、痕跡隠蔽用情報生成部105は、乱数発生アルゴリズムを用いることで、ステップS31において入力ポイントをランダムに抽出し、さらに、ステップS32において抽出した入力ポイントを結んで痕跡隠蔽用情報をランダムに生成することが望ましい。例えば、痕跡隠蔽用情報生成部105は、第1の入力パターンに対応する入力ポイント群に含まれない入力ポイントを選ぶには、全入力ポイントの識別情報から第1の入力パターンに応じた情報(前述した識別情報リスト)に含まれる識別情報を除外し、残った識別情報から任意のものを少なくとも1以上選択する。次に、痕跡隠蔽用情報生成部105は、識別情報リストに含まれる識別情報の数以上の入力ポイントの識別情報を任意に抽出し、抽出した識別情報を並べる全組み合わせ(つまり、全ての入力ポイントを結んだ1本の線を示す情報)の中から未選択の任意の1つの組み合わせを選択する。そして、痕跡隠蔽用情報生成部105は、選択した組み合わせにおける各入力ポイントの識別情報の並び順について特徴量算出を行う。このようにすれば、痕跡隠蔽用情報はその生成タイミングに応じて異なる内容のものが生成される。
【0042】
痕跡隠蔽用情報生成部105は、生成した痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの特徴量を算出する(ステップS33)。本実施形態においてパターンの特徴量は縦横比率である。従って、
図8に基づき、縦方向の線分の長さ(+1単位)と、横方向の線分の長さ(−(1+1+1+1)=−4単位)と、斜め方向の線分の長さ(0単位)との和で求められる痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの縦横比率は、+1+(−4)+(0)=−3単位となる。
【0043】
痕跡隠蔽用情報生成部105は、入力部101、変換部103及び痕跡隠蔽用情報生成部105の間で共有している入力ポイントの配置に関する情報を用いて、痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの特徴量が認証用パターンの特徴量と所定の関係にあるか否かを判断する(ステップS34)。「所定の関係」とは、痕跡隠蔽用情報に対応するパターンと認証用パターンとの形状の差分が或る閾値以上となるような関係である。ここでは、この所定の関係として、認証用パターンの特徴量>0の場合は痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの特徴量<0であり、認証用パターンの特徴量=0の場合は痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの特徴量=0であり、認証用パターンの特徴量<0の場合は痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの特徴量>0である、という関係を用いる。なお、攻撃者からみて認証用パターンが偏って表示されることを防止することを狙い、認証用パターンと痕跡隠蔽用情報に対応するパターン(以下、痕跡隠蔽用パターンという)とを重ねた際のパターン(認証用パターンと痕跡隠蔽用パターンとの論理和に相当するパターン)の特徴量を0に近づけるように、痕跡隠蔽用パターンを生成するものとする。ここで、パターンが偏るとは、パターンを構成する線分をベクトル分解した際の縦成分と横成分の割合に偏りがあることを指す。そのようにするために、認証用パターンの特徴量>0の場合は痕跡隠蔽用パターンの特徴量<0となるように、認証用パターンの特徴量<0の場合は痕跡隠蔽用パターンの特徴量>0となるように、認証用パターンの特徴量=0の場合は痕跡隠蔽用パターンの特徴量=0となるように、痕跡隠蔽用情報を生成するものとする。つまり、認証用パターンに縦方向の線分が多い場合には痕跡隠蔽用パターンが横方向の成分を多く有することとなり、同様に、認証用パターンに横方向の線分が多い場合には痕跡隠蔽用パターンが縦方向の成分を多く有することとなる。認証用パターンに縦方向の線分と横方向の線分が同程度に含まれている場合、痕跡隠蔽用パターンも縦方向の線分と横方向の線分を同程度に含むこととなる。
【0044】
図5及び
図8の例では、認証用パターンの特徴量=2>0で、痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの特徴量=−3<0であるから、上記の所定の関係を満たすことになる(ステップS34;YES)。両者が所定の関係を満たさない場合には(ステップS34;NO)、再びステップS31の処理に戻る。ステップS34で痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの特徴量と認証用パターンの特徴量とが所定の関係を満たすと判断されるまで、
図7の処理が繰り返される。
【0045】
[第2の入力パターンの検証処理]
図9は、端末装置10による第2の入力パターンの検証処理(
図3のステップS4)の手順を示すフローチャートである。指標情報生成部106は、ユーザが痕跡隠蔽用情報に対応するパターンを入力するための指標となる指標情報を生成し、指標情報出力部107がこの指標情報を出力する(ステップS41)。ここでは、指標情報は痕跡隠蔽用情報に対応するパターンを表す画像を表示するための画像データであり、その出力とは、タッチパネル14における上記の画像の表示である。つまり、指標情報生成部106は、判定部104によって正当なユーザであると判定された場合に入力された第1の入力パターンに対応する入力ポイントの一部を含むパターンに対応する痕跡隠蔽用情報を指標情報として生成する。
【0046】
図10は、端末装置10に指標情報が表示されている様子を示す図である。このとき、指標情報出力部107は、痕跡隠蔽用情報に対応するパターンに含まれる各入力ポイントの経由順がわかるように、タッチ入力の順序を意味する矢印を模した矢印画像Y1〜Y5を指標情報として表示している。なお、前述したように、痕跡隠蔽用情報がその生成タイミングに応じて異なる内容で生成される場合、指標情報もその生成タイミングに応じて異なる内容になる。
【0047】
ユーザはこの指標画像を指標として、入力ポイントP9を始点として入力ポイントP6→P3→P2→P5を順番に経由し、終点としての入力ポイントP8に至る第2の入力パターンを入力する。この入力を入力部101が受け付ける(ステップS42)。
図11は、端末装置10に第2の入力パターンが入力された様子を示す図である。
図11に示すように、第2の入力パターンに対応する入力ポイントP9、P6,P3,P2,P5,P8が環状画像Cで囲まれた状態になり、さらに、第2の入力パターンに対応する入力ポイントをその経由順に結んだ線状画像L2が表示されている。
【0048】
制限解除部108は、痕跡隠蔽用情報生成部105から取得した痕跡隠蔽用情報に対応するパターンと、入力部101から取得した第2の入力パターンに応じた情報とを比較し、両者が所定の類似範囲内にあるか否かを判断する(ステップS43)。人間のタッチ入力は必ずしも正確ではないため、痕跡隠蔽用情報に対応するパターンと第2の入力パターンとの差分を或る程度許容する必要がある。このため、痕跡隠蔽用情報とほぼ同一とみなせる範囲を、ここでいう類似範囲として予め決めている。なお、上記の例では第2のパターンの入力順序も含めて類似判定することとしているが、第1のパターンの痕跡を消すには入力順序は不問であるため、たとえば痕跡隠蔽用情報に対応するパターンを逆方向からなぞるような第2の入力パターンを入力した場合も類似と判定することとしてもよい。
【0049】
両者が所定の類似範囲内にあると判断された場合には(ステップS43;YES)
図9の処理は終了し、制限解除部108は、端末装置10の状態を、機能が制限された状態から、その制限を解除した状態に遷移させる。一方、類似範囲内にないと判断された場合には(ステップS43;NO)、指標情報出力部107は指標情報を再度表示し(ステップS41)、ユーザからの次の第2の入力パターンが入力されるのを待つ(ステップS42)。
図9の処理は、第2の入力パターンと痕跡隠蔽用情報に対応するパターンとが所定の類似範囲内に収まるまで、所定回数のリトライがなされるが、所定回数のリトライによっても両者が所定の類似範囲内に収まらない場合には、予め決められたエラー処理が実行される。
【0050】
[実施形態の効果]
本実施形態では、機能の制限を解除するために、ユーザが認証用パターンに相当する第1の入力パターンを入力した後に、その第1の入力パターンとは異なる第2の入力パターンを入力しなければならない。従って、第1の入力パターンのタッチ入力の痕跡がタッチパネル14に残っていたとしても、その後の第2の入力パターンのタッチ入力を経ることで、第1及び第2の入力パターンのタッチ入力の痕跡が互いに重なった状態や、第1及び第2の入力パターンのタッチ入力の痕跡が混在した状態になる。このため、タッチ入力の痕跡に基づいて第1の入力パターンを識別することが困難となり、認証用パターンの内容が第3者に漏洩する可能性は小さくなる。
【0051】
さらに、本実施形態では、認証用パターンの特徴量(つまり認証用パターンに相当する第1の入力パターンの特徴量)と痕跡隠蔽用情報に対応するパターンの特徴量とが所定の関係を満たすようにしているから、認証用パターン(つまり認証用パターンに相当する第1の入力パターン)と痕跡隠蔽用情報に相当する第2の入力パターンとの違いを一定程度以上に大きくすることができる。これにより、認証用パターンの内容が第3者に漏洩する可能性をさらに小さくすることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、痕跡隠蔽用情報を生成するときに、認証用パターンの照合用情報と類似範囲内にある照合用情報を持つ第1の入力パターンに応じた情報に基づいて痕跡隠蔽用情報を生成している。このため、端末装置が認証用パターンそのものを保持していなくても、その認証用パターンとは異なる痕跡隠蔽用情報を生成することが可能となる。
【0053】
[変形例]
上述した実施形態は次のような変形が可能である。また、以下の変形例を互いに組み合わせて実施してもよい。
[変形例1]
実施形態では、認証用パターンに相当する第1の入力パターンとは異なるパターンに対応する痕跡隠蔽用情報を生成し、さらにその痕跡隠蔽用情報に基づいて、第2の入力パターンを入力する際の指標となる指標情報を生成して出力していた。
ただし、第1の入力パターンが入力された後に、その第1の入力パターンとは異なる第2の入力パターンの入力さえあれば、第1の入力パターンのタッチ入力の痕跡は視認しづらくなる。従って、本発明では、痕跡隠蔽用情報の生成と指標情報の生成及び出力は、必須ではない。要するに、制限解除部108は、認証用パターンに相当する第1の入力パターンが入力された後に、その第1の入力パターンとは異なる第2の入力パターンが入力されることを条件に、機能の制限を解除すればよい。
【0054】
例えば、ユーザが、認証用パターンに相当する第1の入力パターンを入力した後に、その第1の入力パターンとは異なる任意のパターンを入力した場合、制限解除部108は機能の制限を解除する。ここでユーザにより入力された任意のパターンが、本発明における第2の入力パターンに相当することになるが、これは例えば
図5に示した複数の入力ポイントP1〜P9のうちユーザが任意で選んだいくつかの入力ポイントを経由するような軌跡のパターンであってもよいし、必ずしもこれらの入力ポイントを経由せずに、例えばタッチパネル14の表示領域の一部又は全部をあたかも指で塗りつぶすような軌跡のパターンであってもよい。
【0055】
このように、ユーザが任意のパターンを第2の入力パターンとして入力する場合、制限解除部108は、第2の入力パターンのタッチ入力の痕跡が第1の入力パターンのタッチ入力の痕跡を隠蔽している度合い(以下、隠蔽度という)を求め、その隠蔽度に基づいて、機能の制限を解除するか否かを判断してもよい。例えば、制限解除部108は、第2の入力パターンと第1の入力パターンとがタッチパネル14上で交差している回数を求め、その回数が閾値以上であれば機能の制限を解除すると判断し、閾値未満であれば機能の制限を解除しないと判断する。
【0056】
また、制限解除部108は、第1の入力パターンと第2の入力パターンとが重なる面積(以下、重複面積という)を求め、その重複面積が閾値以上である場合や、第1の入力パターンの面積に対してその重複面積の占める割合が閾値以上である場合には、機能の制限を解除すると判断する。一方、制限解除部108は、重複面積が閾値未満である場合や、第1の入力パターンの面積に対して重複面積の占める割合が閾値未満である場合には、機能の制限を解除しないと判断する。
【0057】
また、制限解除部108は、タッチパネル14の表示領域において第1の入力パターン以外の部分領域と第2の入力パターンとが重なる面積(つまり、第2の入力パターンの面積のうち、第1の入力パターンとは重ならない面積のこと、以下、非重複面積という)を求める。そして、制限解除部108は、その非重複面積が閾値以上である場合や、上記部分領域に対してその非重複面積の占める割合が閾値以上である場合には、機能の制限を解除すると判断する。一方、制限解除部108は、その非重複面積が閾値未満である場合や、上記部分領域に対してその非重複面積の占める割合が閾値未満である場合には、機能の制限を解除しないと判断する。
【0058】
[変形例2]
実施形態において、指標情報は痕跡隠蔽用情報に対応するパターンを表す画像を表示するための画像データであったが、本発明における指標情報は、第1の入力パターンとは異なる第2の入力パターンをユーザが入力するときの指標となるものであれば、どのような情報であってもよい。つまり、指標情報生成部106は、判定部104によって正当なユーザであると判定された場合に入力された第1の入力パターンに基づいて、ユーザが第2の入力パターンを入力するときの指標となる指標情報を生成すればよい。
【0059】
例えば、指標情報生成部106は、ユーザによって入力された第1の入力パターンを表す画像を表示するための画像データを指標情報として生成し、指標情報出力部107がこれを表示してもよい。この場合、ユーザは表示された指標情報(つまり第1の入力パターン)を見ながら、これとは異なる任意のパターンを第2の入力パターンとして入力すればよい。
【0060】
また、指標情報生成部106は、「認証用パターンとして入力したパターンとは異なるパターンを入力してください」というテキストメッセージを指標情報として生成し、指標情報出力部107がこれをタッチパネル14に表示したり、又は音声入出力部15から音声出力してもよい。この場合、ユーザはこのテキストメッセージに従い、自身が記憶している認証用パターンとは異なる任意のパターンを第2の入力パターンとして入力すればよい。
【0061】
このように、指標情報によって、第2の入力パターンの内容を規定する基準が決まるから、ユーザはその基準から所定の類似範囲にある第2の入力パターンを入力すれば、機能の制限が解除されることになる。例えば、実施形態のように指標情報が痕跡隠蔽用情報に対応するパターンを表す画像を表示するための画像データである場合には、ユーザが入力すべき第2の入力パターンそのものが上記基準として決まることになる。また、指標情報が第1の入力パターンを表す画像を表示するための画像データである場合には、その第1の入力パターン以外のパターンが上記基準として決まることになる。
【0062】
[変形例3]
実施形態では、痕跡隠蔽用情報はランダムアルゴリズムに基づき、その生成タイミングに応じて異なる内容のものが生成されるので、痕跡隠蔽用情報に基づく指標情報もその生成タイミングに応じて異なる内容のものが生成されていた。しかし、必ずしも、痕跡隠蔽用情報及び指標情報は生成タイミングに応じて異なる内容のものでなくてもよく、第1の入力パターンのタッチ入力の痕跡を隠蔽し得るものであれば、常に同じ内容のものであってもよい。
【0063】
また、実施形態では、痕跡隠蔽用情報は、認証用パターンの類似範囲内にあると判定された第1の入力パターンに対応する入力ポイントのうち少なくとも1つを含み、且つ、その第1の入力パターンに対応する入力ポイントよりも多い数の入力ポイントによって構成されていた。ただし、痕跡隠蔽用情報と第1の入力パターンとの関係は、この実施形態の例に限定されず、互いにパターンが異なるという関係であればよい。
【0064】
[変形例4]
実施形態では、タッチパネル14において規則的に配列された入力ポイント(入力領域)を経由する図形がパターンであったが、本発明におけるパターンはこのような図形に限らない。例えば、タッチパネル14に表示された複数のキー(入力領域)を順番にタッチするときの、それぞれのタッチ入力の位置と順序を本発明におけるパターンとしてもよい。また、タッチ入力の順序は必ずしも必須ではなく、例えば、タッチパネルに表示された複数のキーのうち、或る特定のキー群だけをその順序を問わずにタッチする場合には、それぞれのタッチ入力の位置が本発明におけるパターンに相当する。
なお、
図5,8,10,11に図示した各種パターンや表示画像は一例にすぎず、図示した内容に限定されない。
【0065】
[変形例5]
実施形態において、情報保持部102は、認証用パターンの不正読み出しを防止するために、認証用パターンそのものではなく、ハッシュ値などの認証用パターンの照合用情報を保持してが、必ずしもこれに限らず、情報保持部102は認証用パターンそのものを保持してもよい。
【0066】
[変形例6]
実施形態において、痕跡隠蔽用情報生成部105は、情報保持部102から取得した認証用パターンの特徴量と、入力部101から取得した第1の入力パターンに応じた情報とに基づいて痕跡隠蔽用情報を生成していた。ここで、認証用パターンの特徴量は、その認証用パターンと類似範囲内にあると判定された第1の入力パターンの特徴量と同じとみなせる。よって、痕跡隠蔽用情報生成部105は、痕跡隠蔽用情報を生成するときに、情報保持部102が保持する認証用パターンの特徴量に代えて、認証用パターンと類似範囲内にあると判定された第1の入力パターンの特徴量を用いてもよい。この場合、情報保持部102は認証用パターンの特徴量を保持する必要がなく、痕跡隠蔽用情報生成部105は、認証用パターンと類似範囲内にあると判定された第1の入力パターンの特徴量を判定部104から取得すればよい。
【0067】
[変形例7]
本発明は、端末装置だけでなく、端末装置が行う制御方法や、コンピュータを端末装置として機能させるためのプログラムといった形態でも実施が可能である。このプログラムは、光ディスク等の記録媒体に記録した形態でコンピュータに提供されたり、インターネット等のネットワークを介してコンピュータに提供されたりしてもよい。