【課題を解決するための手段】
【0008】
熱と水分に対する堅牢性の高い気密封止光電子又は電子光学変換部品の製造方法において、上記の目的は、以下の重要なステップによって達成される。
a)同時にハウジングの台板としても使用される、少なくとも1つの光電子又は電子光学変換器要素のためのキャリアを提供するステップと、
b)底面に開口部を有するハウジングキャップを提供するステップと、
c)ハウジングキャップに少なくとも1つの穴を設け、ハウジングキャップをキャリアに載せると、それによってキャリアの上にハウジングキャップにより、少なくとも1つの変換器要素を受ける内部空間が形成されて、その少なくとも1つの変換器要素に関連する放射が、穴と変換器要素との間の、キャリアに対して実質的に垂直な向きの光路に沿って、妨害されずにハウジングキャップを通過できるようにするステップと、
d)変換器要素に関連する放射に対して透過性であり、ハウジングキャップのそれぞれの穴に合わせた形状と大きさを有し、少なくとも1つの穴の縁領域
に対する接触面としての縁辺金属化部分を有する少なくとも1つの窓要素を提供するステップ
であって、前記縁辺金属化部分が少なくとも2層の層連続体でできており、前記窓要素が少なくとも、クロムかチタンの第1層と、ニッケル−鉄、プラチナ及びパラジウムの群の中の少なくとも1つを有する第2層で被覆される、ステップと、
e)キャリアと、変換器要素と、ハウジングキャップと、少なくとも1つの窓要素と、を組み立てるステップであって、ハウジングキャップと少なくとも1つの窓要素との間に、少なくとも1つの窓要素の縁辺金属化部分とハウジングキャップとの間の金属材料の溶着によって気密封止結合が生成され、
それらの間に溶融金属材料の第一のシームが形成され、ハウジングキャップとキャリアとの間の気密封止結合が、溶融金属材料の第二のシームがキャリアと気密封止状態に形成されるという点で生成され、ハウジングキャップは、キャリアに結合する前に、少なくとも1つの穴が少なくとも1つの変換器要素のそれぞれの必要な光路に相対して整合されるようにキャリア上に位置決めされるステップ。
【0009】
もちろん、ステップa)〜d)は何れの順番で行うこともできる。重要なのは、要素、すなわちキャリア、ハウジングキャップ、変換器要素、窓要素が組立開始時に上記のように調整されていることだけである。また、窓要素を最初にハウジングキャップに結合し、次にハウジングキャップをキャリアの上に設置するか、又は後者のステップをまず実行して、次に窓要素をハウジングキャップに結合するかは問題ではない。ハウジングキャップをキャリアに結合するステップも同様に、変更可能である。これは、窓要素をハウジングキャップに結合する前でも、後でも、又は同時にも行うことができる。
【0010】
光電子変換器要素は、光情報、例えば検出された電磁放射を電気信号に変換する(センサ)。電子光学変換器要素とは、電気信号から光信号を生成する電子回路と装置(例えば、IRエミッタ、発光ダイオード)を意味する。簡単にするために、以下では「変換器要素」という用語を使用する。
【0011】
金属材料の溶着による結合シームの形成は、はんだ付けと溶接の接合技術をまとめて意味するものと理解する。はんだ付けは、充填材料の中間層を設けても(例えば、リフローはんだ)、充填材料を使用しなくても(例えば、拡散結合法)実行できる。はんだ付けの場合、接合するべきそれぞれの要素の材料の融点に到達しない。それに対して、溶接の場合、接合するべきそれぞれの要素の材料の融点に到達する。溶接は、溶接充填材料を使用しても(例えば、溶解溶接)、溶接充填材料を使用しなくても(例えば、拡散溶接、抵抗溶接、パルス溶接、摩擦溶接)実行できる。
【0012】
シームは接合線に沿って形成され、そこで、接合するべき要素(ハウジングキャップとキャリア又は窓要素)は、金属材料の仮の(一時的な)溶融後にその固化により接合要素間が連続的に結合されたときに、相互に正確に結合されることになる。選択された接合方法に応じて、溶融金属材料は充填材料、溶接充填材料、又は接合するべき要素自体の材料とすることができる。
【0013】
この説明文の意味の中で、「気密封止」という技術用語は、気密性(漏れ率)が10
−8ミリバール(mbar)l/s未満、好ましくは最大10
−10ミリバールl/s未満である結合について使用される。ハウジングキャップと、それぞれ窓要素とキャリアの気密封止結合に関して、溶融金属材料のシームは少なくとも、上記の要素が、上記の定義の意味において相互に接触する長さ全体に沿って気密封止状態で相互に結合されるのに十分な長さとなるように形成されることは自明である。
【0014】
本発明による方法の好ましい実施形態において、窓要素は透明材料の板として生成される。透明材料は好ましくは、サファイア(Al
2O
3)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、酸化マグネシウム(MgO)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化カルシウム(CaF
2)、フッ化バリウム(BaF
2)、ケイ素(Si)、二酸化ケイ素(SiO
2)、ゲルマニウム(Ge)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、テルル化カドミウム(CdTe)、ガリウムヒ素(GaAs)、二酸化チタン(TiO
2)、部分安定化ジルコニア(ZrO
2)、臭化タリウムとヨウ化タリウムの混合物(KRS5:Tl(Br−I))、フリントガラス、又は溶融石英を含む材料群から選択される。
【0015】
縁辺金属化部分によって、金属材料の溶着によるシームの選択された生成方法が可能となる。縁辺金属化部分により、接合するべき要素の材料間が結合しやすくなる。例えば、接合するべき要素の材料、例えば窓要素の材料が、それ自体でははんだ付け可能又は溶接可能でない場合、縁辺金属化部分により、まず溶融金属材料を使ったシームによって結合することが可能となる。
【0016】
本発明の実施形態では、縁辺金属化部分は少なくとも2層の層連続体とすることができる。このタイプの層連続体は、クロム、ニッケル、鉄、チタン、プラチナ、パラジウム、金の金属の中の1つの少なくとも1層を含む。少なくとも2つの金属を層連続体の中の層として組み合わせることによって、有利には、接合するべき要素間の接着を促進することが可能である。層連続体の層の材料、厚さ、順序、量は、接合するべき要素の材料と、採用される接合方法に応じて選択できる。
層連続体は例えば、クロムとニッケル
若しくは鉄−ニッケルと金、又はチタンとプラチナ
若しくはパラジウムと金の組み合わせである。
【0017】
本発明による方法の好ましい実施形態において、チタン又はクロムが基板の接着促進剤として使用される。プラチナ、パラジウム、又は鉄−ニッケルは、はんだ付け結合を生成するための金属材料として使用できる。さらに、金又はニッケルは、保護層及び/又はウェッティング層を生成するために使用できる。
【0018】
縁辺金属化部分は好ましくは、CVD(化学気相成長法/化学蒸着)又はPVD(物理気相成長法)等の気相蒸着法又は、電気化学法、例えばガルバニックプロセスによって生成される。
【0019】
はんだ付け不能又は溶接不能な材料がキャリア及び/又はハウジングキャップ用として選択された場合、適当な縁辺金属化部分をキャリアか、ハウジングキャップか、又はキャリアとハウジングキャップの両方にも配置できる。
【0020】
電子部品内部の反応化学元素又は化合物及び/又はラジカルの電子部品の存在を極小化するために、内部空間にガス又はガス混合物を充填してから、ハウジングキャップとキャリアとの間の気密封止結合を生成することができる。内部空間はまた、その代わりに真空化することもできる。さらに、まず内部空間に掃気ガスを充填させてから、それを抜くことも可能である。反応元素又は化合物とラジカルの残留分を後者の手順によってさらに縮小できる。
【0021】
例えば、セラミック、スチールやニッケル等の金属、金属合金、及び複合材料が、ハウジングキャップ用材料として選択される。この材料により、漏れ率を10
−8ミリバールl/s未満に保持できる。コバールも材料として選択可能である。コバールとは、膨張率が低く、膨張率に合わせて容易に調整可能な合金を意味する。これは、例えばハウジングキャップと窓要素との間の結合における張力を低減させるのに有利である。
【0022】
キャリアは例えば、セラミック、スチール又はニッケル等の金属、金属合金、複合材料又はコバールで作製できる。
【0023】
本発明による方法によって製造される電子部品は、熱や水分等の環境条件に関して非常に堅牢であることがわかる。したがって、許容可能な測定誤差もまた、本発明による電子部品によって、温度250℃、少なくとも10,000時間後も依然として保持される。さらに試験を重ねた結果、電子部品の堅牢性は、185℃、18,000時間後でも実証された。電子部品は同様に、−55℃、少なくとも3,000時間の連続負荷の下でも許容可能な測定誤差が示した。さらに、電子部品は+20℃〜+200℃及び−40℃〜+85℃の熱衝撃に対しても堅牢である。遷移時間が10秒未満の急速な温度変化と、少なくとも1000のサイクル数で5K/分の変化率での緩やかな温度変化にも耐えられる。さらに、電子部品は400kPaの圧力に対しても堅牢である。さらに、電子部品は、85℃/85%RH(=491hPa)、8,500時間と、95℃/95%RH(=803hPa)、5200時間の温度/気湿負荷に対して堅牢である。
【0024】
上記の目的はさらに電子部品によって達成され、これは、ハウジングキャップとハウジングの台板としてのキャリアとハウジングキャップとキャリアによって取り囲まれる内部空間を有するハウジングと、内部空間の中に配置され、キャリアを通って案内されて気密封止の状態でキャリア内に配置される電気コンタクトを有する少なくとも1つの光電子又は電子光学変換器要素と、を含む。ハウジングキャップは、溶融金属のボンディング結合を通じてキャリアによって気密封止状態に閉鎖される。本発明による電子部品は、少なくとも1つの穴がハウジングキャップに設けられ、それによって少なくとも1つの変換器要素に関連する放射がハウジングキャップを、穴と変換器要素との間で、キャリアに対して実質的に垂直な向きの光路に沿って通過できることを特徴とする。少なくとも1つの穴は、少なくとも1つの窓要素によって気密封止状態に閉鎖され、窓要素はハウジングキャップに、窓要素の縁辺金属化部分に沿って、少なくとも1つの穴の周囲の溶融金属材料の周縁の第一のシームによって気密封止状態に結合される。窓要素は少なくとも、少なくとも1つの変換器要素に関連する放射に対して透過性である。
【0025】
本発明による電子部品の第一の実施形態において、少なくとも1つの変換器要素は、光電子変換受光装置であり、したがって電子部品は堅牢なセンサとなる。
【0026】
少なくとも1つの光フィルタが、それぞれの光路内において、穴のうちの少なくとも1つに
付設される。この光フィルタ(以下、省略して「フィルタ」とも呼ぶ)は窓要素とは異なり、窓要素は、変換器要素に関連する放射に対しては透過性であるが、必然的に、不可避的な光学的効果(屈折、吸収、透過性)を有する。フィルタは、それが複数の光路の中で光学活性となるような寸法とすることができる。複数のフィルタを1つの光路に配置することができる。フィルタは、個々に光路に関して傾斜させることができ、又は光路に関して選択的かつ制御された方法で傾斜可能とすることができる。検出され、また発生される放射の波長の補正は、1つ又は複数の光フィルタを制御下で傾斜させることによって可能である。光フィルタは通常、光学的な複数の層を含むため、光フィルタ内のそれぞれの光路の光路長と光フィルタ上への放射光線の入射角を傾斜によって調節できる。放射の特性(例えば波長)には、光路長の効果と干渉等の界面効果を通じて選択的に影響を与えることができる。
【0027】
1つ又は複数の光フィルタの他に、又はその代わりに、例えば、隔膜等の光学活性な要素もまた光路内に配置できる。不要な迷光放射は、例えば、光路内の少なくとも1つのフィルタに加えて設置される隔膜によって大幅にブロックできる。
【0028】
光路は、それが変換器要素と穴との間の光軸に沿って延びている場合には垂直であり、この光軸は、変換器要素の受光又は発光面に直交する。光路はまた、光軸が変換器要素の受光又は発光面に対して垂直な面に関して最大15°傾斜していても「実質的に垂直」とみなされる。
【0029】
放射は、この放射を変換器要素が検出し、又は発生できるときに、変換器要素に関連する。
【0030】
少なくとも2つの穴が設けられているときは複数の光路が存在する。本発明による電子部品において、少なくとも2つの穴は、少なくとも1つの窓要素によって気密封止状態に閉鎖される。光路は、各々について光電子変換受光装置までの別々の光路でありうる。1つの穴又は少なくとも2つの穴の何れも、それぞれ窓要素によって気密封止状態に閉鎖できる。
【0031】
本発明による電子部品の他の実施形態において、それぞれの受光装置までの別々の光路は、少なくとも1つの測定光路と少なくとも1つの参照光路として形成される。この場合、測定光路と参照光路が相互にできるだけ近く、測定ビームと参照ビームの良好な比較可能性が確保できることが有利である。
【0032】
光フィルタと窓要素との間に中間空間を設けることが可能である。これは一方で、光フィルタと窓要素が直接接触するのを防止し、他方で、窓要素とハウジングキャップを結合するときに、光フィルタがハウジングの内部空間内の光路の中に予め配置されていた場合に光フィルタが受ける熱応力が少なくなる。
【0033】
さらに、中間空間は有利には、不要なガスが光フィルタと窓要素との間に直接溜り、それが光フィルタへの圧縮ひずみを招くのを防止する。このような不要なガスは、例えば組立中に閉じ込められた空気及び/又は材料の噛み込みの結果として生じる可能性がある。このような空気ポケット及び/又は材料の噛み込みは電子部品の動作中に加熱され、不要なガスのガス抜け又は膨張が生じることがある。
【0034】
この理由により、ハウジングの内部空間と、光フィルタと窓要素との間の中間空間が、ガス交換と圧力均等化のために少なくとも1つのチャネルによって接続されていればさらに非常に有利である。
【0035】
本発明による電子部品の他の実施形態において、変換器要素は電子光学光源である。リフレクタが、光路の当初部分に沿って好ましくは回転対称に配置され、それによって電子部品が有向ビーム束を発生する発光ユニットとして形成される。リフレクタは、ハウジングの壁の一部として形成できる。例えば、ハウジングの内面は、それに対応して、リフレクタとして形成でき、必要に応じてコーティングを施すことができる。研磨又はテクスチャ付与等の表面処理もコーティングと同等である。
【0036】
発光ユニットを提供する他の可能性は、変換器要素が電子光学光源であり、リフレクタがハウジングキャップに穴を覆うように設置され、それによって電子部品がリフレクタを備える、有向ビーム束を発生するための発光ユニットとして形成されるようにすることである。この種の構成において、リフレクタはハウジングの外側に配置される。単純な例では、リフレクタはハウジングに取り付けられる。リフレクタは好ましくは、これに加えて、所定の位置に、例えばボンディング係合(糊付け、はんだ付け、溶接)又は摩擦係合によって固定される。この種の構成によって、電子部品は、状況に応じて選択できるリフレクタを備えるように製造できる。
【0037】
本発明による電子部品は、測定セルの中で、その様々な実施形態と各種の生産形態で使用できる。電子部品は特に、ガスとガス混合物の測定と分析のためのIR測定セル用に利用できる。
【0038】
上述の種類の測定セルは、センサとして構成された少なくとも1つの電子部品と発光ユニットとして構成された少なくとも1つの電子部品を有する。これら2つの電子部品は、共通の軸に沿って相互に相対して位置付けられる。これらは、測定セルハウジングによって所定の距離に保持される。この所定の距離は測定経路を形成し、そこに沿って、測定セル内に配置され、又は測定セルを通じて案内されるガス又はガス混合物の特性の測定が行われる。
【0039】
本発明による測定セルの他の実施形態において、同様に、センサとして形成された少なくとも1つの電子部品と発光ユニットとして形成された少なくとも1つの電子部品がある。2つの電子部品は隣合わせに配置され、少なくとも1回偏向された共通の光軸に沿って位置付けられる。測定セルのハウジングによって2つの電子部品と相対して保持される少なくとも1つのミラーユニットが、光軸を偏向させるために設置される。この少なくとも1つのミラーユニットは、光軸が電子部品の共通の光軸として形成され、ミラーユニットの動作によって偏向されるときに、電子部品に相対して配置され、保持されるとみなされる。同様に電子部品に相対して保持される別のミラーユニットも設置できる。
【0040】
これに加えて、少なくとも1つのミラーユニットを電子部品間又はその付近に配置することが可能である。この種の配置により、光軸を複数回折り曲げることができ、したがって、それに応じた長い測定経路を測定セル内のエミッタとセンサとの間に実現でき、測定セルハウジングの長さを数デシメートルにする必要がない。ミラーユニットのすべて又は個々のミラーユニットを制御可能及び変位可能とすることができる。ミラーユニットは例えば、1つ又は複数の単純な金属ミラー、ダイクロイックミラー、干渉ミラー、(マイクロ)ミラーアレイ、及び/又はイメージングミラー、例えば楕円(凹面)ミラーを含むことができ、最後の構成の場合、発光ユニットとセンサは楕円の2つの焦点に配置される。
【0041】
測定セルハウジングは好ましくは、管状構造として形成され、ガスの通路のための開口部を有する。管状構造の断面は丸、楕円、不規則でも、又は角を有していてもよい。断面の形状と寸法は、測定セルハウジングの長さにわたって変化してもよい。スチール又はアルミニウム等の金属を、測定セルハウジングの材料として使用できる。アルミニウムは、陽極酸化が容易であるため、有利な材料である。
【0042】
前述の課題に対する発明性のある解決策は、電子部品のハウジングのハウジングキャップにあり、このハウジングキャップは、ハウジングキャップの底面に開口部を有し、また、少なくとも1つの穴がさらにハウジングキャップに設けられ、これが所定の透過性を有する窓要素によって気密封止状態に閉鎖されることを特徴とし、窓要素はハウジングキャップに、仮に(一時的に)溶融した金属の周縁シームによって、窓要素のうちの少なくとも1つの穴の周囲の縁辺金属化部分に沿って気密封止状態に結合される。
【0043】
本発明を、図面と実施形態の例を参照しながら以下により詳しく説明する。図面は以下の通りである。