(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記綾振部に、巻取時よりも遅い速度で前記綾振ガイドを移動させることによって、前記マーキングを形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の糸巻取装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、上述したように、トラバースガイドをパッケージの品位に対応した位置で停止させた状態でパッケージに糸を巻き取ることによって、パッケージに棒巻を形成している。そのため、糸が細い場合には、棒巻の幅(パッケージの軸方向の長さ)が小さくなり、棒巻の視認性が悪くなってしまう虞がある。このとき、棒巻の形成に使用する糸の長さを長くして棒巻のパッケージ表面からの突出量を大きくするなどすれば、棒巻の視認性を高くすることはできる。しかしながら、棒巻を形成する糸は、通常、パッケージの使用時に、パッケージから除去されて廃棄されるため、棒巻を形成する糸の長さが長いと無駄に廃棄される糸の量が多くなってしまう。また、上述したように、棒巻の形成時にトラバースガイドを停止させると、棒巻を形成する糸が、パッケージの同じ部分に何度も巻き取られることになり、パッケージの表面が、棒巻を形成する糸によって局所的に強く押圧されることとなる。その結果、パッケージの使用時に、パッケージから棒巻を形成する糸を除去したときに、パッケージの表面の、棒巻が形成されていた部分に凹みが生じてしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、マーキングの視認性が高く、マーキングの形成によってパッケージの表面に凹みが生じにくい糸巻取装置及びマーキング形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る糸巻取装置は、巻取管が装着可能に構成され、装着された前記巻取管に糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、前記巻取管の軸方向に移動可能に構成された綾振ガイドを有し、前記綾振ガイドを前記軸方向に往復移動させることで糸を綾振りする綾振部と、前記巻取部及び前記綾振部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、
前記巻取部及び前記綾振部を制御して前記パッケージを形成した後に、前記巻取部及び前記綾振部を制御して、前記綾振ガイドを前記軸方向に移動させつつ、前記パッケージの一部分に巻取時よりも小さい綾角で糸を巻き取らせることによって、
形成された前記パッケージの品質に関するマーキングを
前記パッケージに形成させる。
【0007】
本発明によると、マーキングの有無やマーキングの形成位置によって、パッケージの品質などを把握することができる。また、綾振ガイドを軸方向に移動させつつ、巻取時よりも小さい綾角でパッケージに糸を巻き取らせるため、マーキングの幅(パッケージの軸方向における長さ)がある程度大きくなる。これにより、糸が細い場合などでも、使用する糸の量をそれほど多くすることなく、視認性の高いマーキングを形成することができる。
【0008】
また、本発明では、上述したように、マーキングの幅がある程度大きいため、マーキングの形成時に綾振ガイドを停止させる場合と比較して、マーキングを形成する糸がパッケージの同じ部分に巻き取られる回数が少なくなる。これにより、マーキングを形成する糸がパッケージの表面を押圧する力が小さくなり、パッケージからマーキングを形成する糸を除去したときに、パッケージの表面のマーキングが形成されていた部分に凹みが生じてしまうのを防止することができる。
【0009】
第2の発明に係る糸巻取装置は、第1の発明に係る糸巻取装置において、前記マーキングの形成時の綾角が、巻取時の綾角の1/20以下である。
【0010】
本発明によると、マーキング形成時の綾角を、巻取時の綾角の1/20以下とすることにより、マーキングの視認性を特に高くすることができる。
【0011】
第3の発明に係る糸巻取装置は、第1又は第2の発明に係る糸巻取装置において、前記パッケージの品質を検出する品質検出部をさらに備え、前記制御部は、前記パッケージの、前記品質検出部の検出結果に対応した一部分に、前記マーキングを形成させる。
【0012】
本発明によると、パッケージのどの部分にマーキングが形成されているかによって、パッケージの品質を把握することができる。また、マーキングをパッケージのどの部分に形成する場合でも、マーキングの視認性を高くすることができ、パッケージからマーキングを形成する糸を除去したときに、パッケージの表面のマーキングが形成されていた部分に凹みが生じてしまうのを防止することができる。
【0013】
第4の発明に係る糸巻取装置は、第1〜第3の発明に係る糸巻取装置において、前記制御部は、前記綾振部に、巻取時よりも遅い速度で前記綾振ガイドを移動させることによって、前記マーキングを形成する。
【0014】
本発明によると、綾振ガイドの移動速度を遅くすることにより、巻取時よりも小さい綾角でパッケージに糸を巻き取らせることができる。
【0015】
第5の発明に係る糸巻取装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る糸巻取装置において、前記巻取管に巻き取られる糸の太さが20デニール以下である。
【0016】
本発明によると、巻き取られる糸が20デニール以下の比較的細い糸であっても、視認性の高いマーキングを形成することができる。
【0017】
第6の発明に係るマーキング形成方法は、巻取管が装着可能に構成されて、装着された前記巻取管に糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、前記巻取管の軸方向に移動可能に構成された綾振ガイドを有し、前記綾振ガイドを前記軸方向に往復移動させることで糸を綾振りする綾振部と、を備えた糸巻取装置において、前記パッケージにマーキングを形成するマーキング形成方法であって、
前記巻取部及び前記綾振部によって前記パッケージを形成した後に、前記綾振ガイドを前記軸方向に移動させつつ、前記パッケージの一部分に巻取時よりも小さい綾角で糸を巻き取らせることによって、
形成された前記パッケージの品質に関する前記マーキングを
前記パッケージに形成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、糸が細い場合などでも、使用する糸の量をそれほど多くすることなく、視認性の高いマーキングを形成することができる。また、パッケージからマーキングを形成する糸を除去したときに、パッケージの表面のマーキングが形成されていた部分に凹みが生じてしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0021】
本実施の形態に係る延伸仮撚機は、
図1に示すような延伸仮撚装置1が、
図1の紙面垂直方向に複数配列されることによって形成されている。各延伸仮撚装置1は、糸加工装置2と、巻取装置3(本発明の「糸巻取装置」)とを備えている。
【0022】
糸加工装置2は、第一フィードローラ11、一次ヒータ12、撚止ガイド13、クーリングプレート14、加撚装置15、第二フィードローラ16、二次ヒータ17、第三フィードローラ18、オイリングローラ19などを備えている。
【0023】
第一フィードローラ11は、図示しないモータによって駆動され、クリール(図示省略)に取り付けられた給糸ボビン10から解舒された糸Yを一次ヒータ12に向けて搬送する。一次ヒータ12は、送られてきた糸Yを加熱する。撚止ガイド13は、一次ヒータ12のすぐ上流側に配置されている。撚止ガイド13は、後述するように糸Yに撚りを付与する際に、糸Yの撚止ガイド13よりも上流側の部分に撚りが伝達されないようにするためのものである。
【0024】
クーリングプレート14は、一次ヒータ12の下流側に配置されている。クーリングプレート14は、糸Yの走行方向に長尺であり、且つ、糸Yの走行方向と直交する方向に隙間をあけて配置された、金属材料からなる一対の板状の部材を含み、一対の板状部材の間の隙間を走行する糸Yを冷却する
。加撚装置
15は、クーリングプレート14の下流側に配置され、糸Yに撚りを付与する。このとき、糸Yのうち、撚止ガイド13と加撚装置15の間に位置する部分に撚りが付与される。また、このとき、糸Yは、一次ヒータ12によって加熱された状態で撚りが付与され、撚りが付与された状態でクーリングプレート14によって冷却されることになる。
【0025】
第二フィードローラ16は、図示しないモータによって駆動され、加撚装置15によって撚りが付与された糸Yを二次ヒータ17に向けて搬送する。また、第二フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第一フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。これにより、糸Yは、第一フィードローラ11と第二フィードローラ16との糸Yの搬送速度の違いによって延伸される。また、撚止ガイド13と加撚装置15の間で撚りが加えられた糸Yは、一次ヒータ12で撚りが熱固定され、加撚装置15と第二フィードローラ16との間で解撚される。これにより、糸Yの撚りが解かれるが、糸Yは、撚りが熱固定されているため、各フィラメントが波状の形態をした仮撚りされた状態となっている。
【0026】
二次ヒータ17は、延伸されるとともに仮撚りが付与された糸Yに所定の弛緩熱処理を施す。第三フィードローラ18は、弛緩熱処理が施されたYを巻取装置3に向けて搬送する。オイリングローラ19は、第三フィードローラ18と巻取装置3との間に設けられ、糸Yに油剤を塗布する。
【0027】
なお、糸加工装置2は、このほかに、各フィードローラ11、16、18を駆動するモータの回転速度や、各ヒータ12、17の温度を制御するための制御装置などを備えているが、ここではその説明は省略する。
【0028】
巻取装置3は、糸ガイド21、22、巻取部23、綾振部24、張力センサ25(本発明の「品質検出部」)、制御装置26などを備えている。糸ガイド21、22は、糸加工装置2から巻取装置3に送られてきた糸Yを綾振部24に案内するためのものである。
【0029】
巻取部23は、クレードル31と巻取ローラ32とを備えている。クレードル31は、円筒形状のボビンB(本発明の「巻取管」)が装着可能となっている。クレードル31に装着されたボビンBは、軸方向における両端部が、クレードル31によって回転自在に支持される。
【0030】
巻取ローラ32は、クレードル31に装着されたボビンBの軸方向(以下、単に「ボビンBの軸方向」とすることがある)と平行に延びており、クレードル31に装着されたボビンBの表面、あるいは、後述するように、ボビンBに糸Yが巻き取られることによって形成されたパッケージPの表面に接触する。巻取ローラ32は、巻取モータ33に接続されており、巻取モータ33を駆動すると、巻取ローラ32が回転し、これに連動して、巻取ローラ32と接触したボビンBあるいはパッケージPも回転する。ここで、巻取モータ33は、各延伸仮撚装置1の巻取部23に対して個別に設けられたものであってもよいし、複数の延伸仮撚装置1の巻取部23に対して共通のものであってもよい。また、巻取モータ33は、各延伸仮撚装置1の巻取部23に対して個別に設置される場合は、クレードル31に取り付けられてボビンBを直接駆動するものであってもよい。このとき、巻取ローラ32は、ボビンBの回転に連動して回転する従動ローラとなる。
【0031】
綾振部24は、巻取部23の上流側に配置され、3つのプーリ41〜43と、無端状のベルト44と、綾振ガイド45とを備えている。プーリ41、42は、ボビンBの軸方向に間隔をあけて配置されている。プーリ43は、ボビンBの軸方向におけるプーリ41と42との間の、プーリ41、42よりも巻取部23から離れた位置に配置されている。プーリ43は、綾振モータ46に接続されており、綾振モータ46を駆動するとプーリ43が回転する。ここで、綾振モータ46は、各延伸仮撚装置1の綾振部24に対して個別に設けられている。
【0032】
ベルト44は、3つのプーリ41〜43にまたがって巻き掛けられている。綾振ガイド45は、ベルト44のプーリ41と42との間に位置する部分に取り付けられている。糸ガイド21、22から綾振部24に送られてきた糸Yは、綾振ガイド45に掛けられたうえで、巻取部23に送られる。
【0033】
そして、綾振部24では、綾振モータ46を駆動してプーリ43を正逆回転させると、ベルト44が走行し、プーリ41、42は、ベルト44の走行に連動して回転する。これにより、ベルト44のプーリ41と42との間の部分に取り付けられた綾振ガイド45がボビンBの軸方向に往復移動する。
【0034】
張力センサ25は、加撚装置15と第二フィードローラ16との間の糸道に配置され、走行する糸Yの張力を検出する。制御装置26は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなり、後述するように、巻取モータ33及び綾振モータ46の動作を制御する。
【0035】
次に、巻取装置3においてボビンBに糸Yを巻き取ってパッケージPを形成し、形成したパッケージPに品質に応じたマーキングMを形成する手順について説明する。巻取装置3においてパッケージP及びマーキングMを形成するためには、
図4に示すように、まず、糸加工装置2から送られてきた糸Yを、ボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する(ステップS101)。ここで、パッケージPを形成する糸Yは、例えば20デニール(≒22dtex)以下の比較的細い糸である。なお、以下では、「ステップS101」を単に「S101」とするなど、「ステップ」を省略して説明する。
【0036】
S101では、制御装置26の制御により、綾振モータ46を駆動することで、綾振ガイド45をボビンBの軸方向に速度V1で往復移動させつつ、巻取モータ33を駆動することで、巻取ローラ32及びボビンBを回転させる。これにより、糸Yは、綾振ガイド45によりで綾振りされつつ、綾角θ1でボビンBに巻き取られ、パッケージPが形成される。また、本実施の形態では、S101のパッケージPの形成を行う間、張力センサ25によって継続的に糸Yの張力を検出する。
【0037】
そして、パッケージPの形成が完了した後、張力センサ25によって検出された糸Yの張力に基づいて、パッケージPの品質が「上級」、「中級」及び「規格外」のいずれに該当するかを判定する(S102)。より詳細に説明すると、
図5(a)に示すように、張力センサ25によって検出された張力が、パッケージPの形成期間Tの間、常に目標範囲R1内に収まっている場合には、パッケージPが良好な品質の糸Yが巻き取られることによって形成されたものであるとして、パッケージPの品質を「上級」と判定する。
【0038】
また、
図5(b)に示すように、張力センサ25によって検出された張力が、パッケージPの形成期間Tの間に、目標範囲R1からはみ出すことはあるが、常に目標範囲R1よりも広い許容範囲R2に収まっている場合には、パッケージPは、許容可能な品質の糸Yが巻き取られることによって形成されたものであるとして、パッケージPの品質を「中級」と判定する。
【0039】
また、
図5(c)に示すように、張力センサ25によって検出された張力が、パッケージPの形成期間Tの間に、許容範囲R2からはみ出すことがある場合には、パッケージPは、許容できない品質の糸Yが巻き取られたものであるとして、パッケージPの品質を「規格外」と判定する。
【0040】
そして、パッケージPの品質が「上級」と判定された場合には(S103:YES)、
図6(a)に示すように、パッケージPの軸方向における中央部にマーキングMを形成する(S105)。
【0041】
また、パッケージPの品質が「中級」と判定された場合には(S103:NO、S104:YES)、
図6(b)に示すように、パッケージPの軸方向における片側の端部にマーキングMを形成する(S106)。より詳細に説明すると、パッケージPは、軸方向における両端部において、軸方向の外側の部分ほど径が小さくなっており、これらの間の部分において径がほぼ一定となっている。S106でパッケージPの軸方向における端部にマーキングMを形成する際には、パッケージPの軸方向におけるマーキングMの外側の端が、パッケージPの径が一定となっている部分の軸方向における端よりも若干内側に位置するようにマーキングMを形成する。これにより、マーキングMの形成時に糸落ちが発生してしまうのを防止することができる。
【0042】
なお、巻取装置3では、上記のような形状のパッケージPのほか、軸方向におけるすべての部分において径が一定のパッケージPを形成することも可能である。この場合には、パッケージPの軸方向におけるマーキングMの外側の端が、パッケージPの軸方向における端よりも若干内側に位置するようにマーキングMを形成する。これにより、マーキングMの形成時に糸落ちが発生してしまうのを防止することができる。
【0043】
また、パッケージPの品質が「規格外」と判定された場合には(S103:NO、S104:NO)、
図6(c)に示すように、パッケージPの軸方向における中央部と端部との間に位置する途中部にマーキングMを形成する(S107)。すなわち、本実施の形態では、パッケージPの、張力センサ25の検出結果に対応した一部分にマーキングMを形成する。
【0044】
ここで、S105、S106、S107におけるマーキングMの形成について説明する。S105でマーキングMを形成するためには、
図6(a)に示すように、制御装置26の制御により、綾振モータ46を駆動することで、綾振ガイド45を、ボビンBの軸方向における中央部と対向する部分において、所定範囲(例えば、5〜10mm程度の範囲)にわたって、巻取時の速度V1よりも遅い速度V2で移動させつつ、巻取モータ33を巻取時と同じ回転速度で回転させる(パッケージPの表面速度を巻取時と同じとする)。これにより、糸Yは、巻取時の綾角θ1(例えば、10〜14°)よりも小さい綾角θ2(例えば、0.5°以下)でパッケージPに巻き取られ、マーキングMが形成される。マーキングMの形成時の綾角θ2は、巻取時の綾角θ1に対して1/20以下であることが好ましい。また、マーキングMの形成時に、綾振ガイド45を上記所定範囲の端から端まで一度だけ移動させるようにすれば、最小の糸量でマーキングMを形成することが可能である。あるいは、マーキングMの形成に使用する糸Yの量を増やし、マーキングMの形成時に、綾振ガイド45を上記所定範囲内で往復移動させるようにすることもできる。
【0045】
また、S106でマーキングMを形成するときには、
図6(b)に示すように、綾振ガイド45をボビンBの軸方向における片側の端部において、所定範囲(例えば、5〜10mm程度の範囲)にわたって速度V2で移動させる。それ以外の点については、S105と同様である。
【0046】
また、S107でマーキングMを形成するときには、
図6(c)に示すように、綾振ガイド45を、ボビンBの軸方向における中央部と端部との間の途中部と対向する部分において、所定範囲(例えば、5〜10mm程度の範囲)にわたって、速度V2で移動させる。それ以外の点については、S105、S106と同様である。
【0047】
以上に説明した実施の形態では、パッケージPの品質が、「上級」、「中級」及び「規格外」のいずれに該当するかに応じて、パッケージPの軸方向における中央部、端部及び途中部のいずれかにマーキングMが形成される。また、マーキングMの形成時の綾角θ2は、パッケージPの形成時の綾角θ1よりも小さいため、マーキングMが形成されたパッケージPは、マーキングMが形成された部分とそれ以外の部分とで表面の形態が異なり、これにより、これらの部分間で表面における光の反射の仕方が異なる。したがって、パッケージPのどの部分にマーキングMが形成されているかを視認することによって、パッケージPの品質を把握することができる。このとき、マーキングM形成時の綾角θ2が巻取時の綾角θ1の1/20以下であれば、パッケージPの綾角θ2で糸Yが巻取られたマーキングMが形成された部分と、綾角θ1で糸Yが巻取られたそれ以外の部分とで、表面の形態の違い(表面における光の反射の仕方の違い)が際立ち、マーキングMの視認性を特に高くすることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、上述したように、マーキングMの形成時に、パッケージPの表面速度は巻取時と同じとし、綾振ガイド45の移動速度を巻取時よりも遅くすることにより、マーキングMの形成時の綾角θ2を、巻取時の綾角θ1よりも小さくすることができる。
【0049】
ここで、本発明の実施の形態とは異なり、綾振ガイド45を停止させた状態で、パッケージPに糸Yを巻き取ることによってマーキングMを形成することも考えられる。しかしながら、この場合には、綾振ガイド45を停止させるため、糸Yが20デニール(≒22dtex)以下の比較的細い糸である場合には、マーキングMの幅(パッケージPの軸方向におけるの長さ)が小さくなり(例えば、2mm以下)、マーキングMの視認性が悪くなる。特に、糸Yの太さが10dtex以下である場合には、マーキングMを視認することが困難となる虞がある。
【0050】
このとき、マーキングMの形成に使用する糸Yの長さを長くしてマーキングMのパッケージPの表面からの突出量を大きくするなどすれば、マーキングMの視認性を高くすることはできる。しかしながら、マーキングMを形成する糸Yは、通常、パッケージPが使用される際に除去されて廃棄されるため、マーキングMの形成に使用される糸Yの長さが長いと、無駄に廃棄される糸の量が多くなってしまう。また、マーキングMの形成に使用する糸Yの長さを長くした場合には、マーキングMを形成するために綾振ガイド45を長時間停止させる必要があるが、綾振ガイド45を長時間停止させた場合には、マーキングMを形成する糸Yに緩みが発生してしまう虞がある。
【0051】
また、マーキングMの形成時に、綾振ガイド45を停止させた場合には、マーキングMを形成する糸Yが、パッケージPの同じ部分に何度も巻き取られることになるため、パッケージPの表面がマーキングMを形成する糸Yによって局所的に強く押圧される。そのため、パッケージPの使用時に、パッケージPからマーキングMを形成する糸Yを除去したときに、パッケージPの表面のマーキングMが形成されていた部分に凹みが生じてしまう虞がある。
【0052】
これに対して、本実施の形態では、マーキングMを形成する際に、綾振ガイド45をパッケージPの軸方向に移動させるため、綾振ガイド45を停止させた状態でマーキングMを形成する場合と比較して、マーキングMの幅が大きくなる(例えば、5〜10mm程度となる)。これにより、糸Yが20デニール以下の比較的細い糸である場合でも、マーキングMの形成に使用される糸Yの長さを長くすることなく、マーキングMの視認性を高くすることができる。
【0053】
また、綾振ガイド45を停止させた状態でマーキングMを形成する場合と比較して、マーキングMの幅が大きいため、マーキングMを形成する糸Yが、パッケージPの同じ個所に巻き取られる回数が少なくなる。これにより、マーキングMを形成する糸YがパッケージPの表面を押圧する力が小さくなり、パッケージPからマーキングMを形成する糸Yを除去したときにパッケージPの表面に凹みが生じてしまうのを防止することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、パッケージPの中央部、端部及び途中部のいずれにマーキングMを形成するときにも、綾振ガイド45をパッケージPの軸方向に移動させている。したがって、パッケージPの中央部、端部、途中部のいずれに形成されるマーキングMも、ある程度幅の大きい、視認性を高いものとすることができる。また、パッケージPの中央部、端部、途中部のいずれにマーキングMを形成する場合にも、パッケージPからマーキングMを形成する糸Yを除去したときにパッケージPの表面に凹みが生じてしまうのを防止することができる。
【0055】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0056】
上述の実施の形態では、パッケージPの品質が「上級」、「中級」及び「規格外」である場合に、それぞれ、パッケージPの軸方向における中央部、端部、及び、中央部と端部との間の途中部にマーキングMを形成したがこれには限られない。例えば、パッケージPの品質が「上級」、「中級」及び「規格外」である場合に、それぞれ、パッケージPの軸方向における端部、中央部、及び、上記途中部にマーキングMを形成するなど、パッケージPの品質と、パッケージPにおけるマーキングMの位置との対応関係は、上述の実施の形態と異なっていてもよい。
【0057】
また、パッケージPの品質に応じて、パッケージPの軸方向における中央部、端部及び途中部のいずれかにマーキングMを形成することにも限られない。パッケージPの品質に応じて、上述の実施の形態とは別の、パッケージPの軸方向における互いに異なる3つの部分のうちいずれかの部分にマーキングMを形成してもよい。
【0058】
また、上述の実施の形態では、パッケージPの品質を「上級」、「中級」及び「規格外」の3種類に分類し、これに対応して、パッケージPの中央部、端部及び途中部の3つの部分のうちいずれかの部分にマーキングMを形成したが、これには限られない。例えば、パッケージPの品質を2種類あるいは4種類以上に分類し、パッケージPの、品質に対応した部分にマーキングMを形成してもよい。また、このとき、ボビンBが向きを識別可能なものである場合や、糸Yの巻取形態によってパッケージPの向きを識別可能な場合には、パッケージPの品質に応じて、パッケージPの軸方向における中央部に対してどちら側にマーキングMを形成するかを変更してもよい。この場合には、マーキングMがパッケージPの軸方向における中央部に対してどちら側にあるかによっても、パッケージPの品質を把握することができるため、パッケージPの品質をより多くの種類に分類する場合にも容易に対応可能となる。
【0059】
また、上述の実施の形態では、パッケージPの品質によってパッケージPにおけるマーキングMを形成する位置を変更したが、これには限られない。例えば、パッケージPの品質によらず、マーキングMの形成位置を同じとし、パッケージPの品質に応じて、マーキングMの幅を変更してもよい。この場合でも、マーキングMの幅によってパッケージPの品質を把握することができる。さらには、パッケージPの品質に応じて、パッケージPにおけるマーキングMの形成位置と幅との組み合わせを変更してもよい。この場合には、マーキング
Mの形成位置と幅とに基づいて
パッケージPの品質を把握することができるため、パッケージPの品質の識別性をさらに高くすることができる。
【0060】
さらには、パッケージPの形成後に、常に、パッケージPの同じ部分に、同じ幅のマーキングMを形成してもよい。パッケージPの形成途中に糸切れが生じたときには、パッケージPにマーキングMが形成されないため、この場合でも、パッケージPにおけるマーキングMの有無によって、パッケージPが正常に糸Yの巻取が行われたものであるか否かを把握することができる。なお、この場合には、張力センサ25は設けられていなくてもよい。
【0061】
また、上述の実施の形態では、マーキングMの形成時に、パッケージPの表面速度は巻取時と同じとしたが、これには限られない。マーキングMの形成時の綾角θ2は巻取時の綾角θ1よりも小さいため、マーキングMの形成時のパッケージPの表面速度を巻取時と同じ速度とすると、マーキングMの形成時の糸Yの走行速度が巻取時よりも遅くなって糸
Yが弛み、糸Yの張力が低下する。このとき、巻取りに支障がない程度に張力が低下するのであれば、マーキングMを形成する糸YがパッケージPの表面を押圧する力が小さくなり、パッケージPの表面に上述したような凹みが生じにくく好ましい。しかしながら、糸Yの張力が低下しすぎると糸切れが生じて、マーキングMを正常に形成することができない虞がある。そこで、パッケージPの表面速度を変更せずに綾角をθ1からθ2に変更してしまうと糸切れが生じる虞がある場合には、マーキングMの形成時にパッケージPの表面速度を通常の巻取時よりも速めるように、巻取りモータ33の回転速度を補正してもよい。このようにすれば、マーキングMの形成時における糸Yの走行速度の低下を抑えることができる。なお、この場合には、各延伸仮撚装置1の巻取部23に対して個別に巻取モータ33を設ける必要がある。
【0062】
また、上述の実施の形態では、パッケージPの形成時に張力センサ25によって検出された糸Yの張力に基づいて、パッケージPの品質の判定を行ったが、これには限られない。糸Yの張力に基づいてパッケージPの品質を判定する代わりに、例えば、パッケージPの直径(巻密度)、重量、テールつなぎ部の有無など、別の情報を用いて、パッケージPの品質の判定を行ってもよい。あるいは、糸Yの張力に基づいてパッケージPの品質を判定するのに加えて、上記のような別の情報を用いてパッケージPの品質を判定してもよい。
【0063】
ここで、テールつなぎ部について説明すると、仮撚加工機1では、パッケージPの形成の途中で、給糸ボビン10の糸がなくなったときには、別の給糸ボビン10から糸を供給することで、パッケージPの形成を継続する。このとき、新旧2つの給糸ボビン10の糸端同士を繋ぎ合わせる必要があり、その繋ぎ目の部分をテールつなぎ部という。また、テールつなぎ部が、仮撚加工機1の糸道を通過することをテール通過と呼ぶ。そして、テールつなぎ部は、一般に染色異常など糸の欠点となる。そのため、テールつなぎ部が含まれているパッケージPは、テールつなぎ部が含まれていないパッケージPと比較して品質の低いものとなる。
【0064】
そこで、例えば、テール通過を専用のセンサや、上述の張力センサ25からの出力信号の分析により検出し、テール通過が検出されたときに、その直後に形成されたパッケージPにテールつなぎ部が含まれているとして、品質の判定結果をグレードダウンさせる。また、テール通過を検出するためのセンサがない場合には、作業者がパッケージPにテールつなぎ部が存在するか否かを判定する。そして、パッケージPにテールつなぎ部が存在しているときに、図示しない操作パネルなどを操作することによって、パッケージPの品質の判定結果をグレードダウンさせる補正を行う。
【0065】
また、作業者が、各装置やガイドからの糸Yの外れ(糸道異常)を発見したときに、図示しない操作パネルなどを操作することによって、パッケージPの品質の判定結果の入力や補正を行うことができるようにしてもよい。ここで、糸道異常とは、例えば、作業者の操作ミスや糸Yの張力変動などによって、糸Yが、各装置やガイドから外れてしまうことである。そして、このような糸道異常の発生は、パッケージPの品質の低下につながる。一方、このような糸道異常が発生したときに、糸Yの張力の変動により張力センサ25の検出値が異常を示す値となり、その値に基づいてパッケージPの品質の判定がされれば問題はないが、糸道異常が発生しても、張力センサ25の検出値が異常な値とならないこともある。そこで、このような場合には、上述したように、作業者が、パッケージPの判定結果の入力や補正を行う。
【0066】
また、上述の実施の形態では、糸Yの太さが20デニール以下であったが、これには限られない。糸Yは20デニールよりも太いものであってもよい。糸Yが太い場合には、マーキングMの形成時に綾振ガイド45を停止させても、マーキングMの幅が大きくなり、マーキングMを十分に視認性の高いものとすることができることはある。しかしながら、糸Yが太い場合でも、マーキングMの形成時に綾振ガイド45を停止させると、上述したように、マーキングMを形成する糸Yが、パッケージPの同じ部分に何度も巻き取られることになり、パッケージPの表面が、マーキングMを形成する糸Yによって局所的に強く押圧される。そのため、パッケージPからマーキングMを形成する糸Yを除去したときに、パッケージPの表面の、マーキングMが形成されていた部分に凹みが生じてしまう虞がある。
【0067】
これに対して、糸Yが太い場合でも、マーキングMの形成時に、綾振ガイド45をパッケージPの軸方向に移動させれば、上述の実施の形態と同様、マーキングMの形成時に、パッケージPの同じ部分に糸Yが巻き取られる回数が少なくなり、パッケージPからマーキングMを形成する糸Yを除去したときに、パッケージPの表面に凹みが生じてしまうのを防止することができる。
【0068】
また、上述の実施の形態では、マーキングMの形成時の綾角θ2が、巻取時の綾角θ1の1/20以下であったが、これには限られない。マーキングMの形成時の綾角θ2は、巻取時の綾角θ1よりも小さく、且つ、綾角θ1の1/20よりも大きい角度であってもよい。ただし、綾角θ2が大きすぎると、綾角θ1と綾角θ2との差が小さくなって、パッケージPのマーキングMが形成された部分とそれ以外の部分の表面の形態(表面における光の反射の仕方)の差が小さくなるため、パッケージPにおけるマーキングMの視認性は悪くなってしまう。
【0069】
また、上述の実施の形態では、張力センサ25が、加撚装置15と第二フィードローラ16との間の糸道に配置されていたが、これには限られない。張力センサ25は、例えば、第一フィードローラ11と撚止ガイド13との間の糸道など、別の位置に設けてもよいし、上記2箇所以上の位置に同時に設けてもよい。