特許第6267582号(P6267582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6267582-洗濯機の主軸受構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267582
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】洗濯機の主軸受構造
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/40 20060101AFI20180115BHJP
   D06F 39/08 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   D06F37/40 C
   D06F37/40 E
   D06F39/08 311Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-102118(P2014-102118)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-217064(P2015-217064A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390027421
【氏名又は名称】株式会社東京洗染機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(72)【発明者】
【氏名】三科 隆
(72)【発明者】
【氏名】杉本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】辻村 好寛
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−188637(JP,A)
【文献】 特開2013−111276(JP,A)
【文献】 実開昭54−083265(JP,U)
【文献】 実開昭53−015670(JP,U)
【文献】 特開平02−055086(JP,A)
【文献】 実開昭52−076172(JP,U)
【文献】 特開昭52−130164(JP,A)
【文献】 実開昭52−143877(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0137260(US,A1)
【文献】 特開2008−220797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/40
D06F 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外胴の内側で回転する内胴と、
該内胴を片持ちで支持し、回転させるべくボルトを用いて分離可能な構造にて固定し、水平方向に配置される主軸と、
前記外胴の開口部と相対向する外胴裏面板と、
該外胴裏面板に固定され、前記ボルトを用いて前記内胴と前記主軸とを固定した状態にあっても、前記ボルトを外して前記内胴と前記主軸とを分離した状態にあっても前記主軸を支持可能とすべく、水平方向に延びる軸受スタンドと、
前記主軸を回転自在に軸支し前記軸受スタンド上に載置される軸受と、
前記主軸が貫通する外胴部分に配設され外胴内に滞留する液体の外胴外への漏出を防止するシール部材と、
前記内胴の開口部と相対向する内胴裏面板と、
該内胴裏面板に前記主軸を分離可能に固定する前記ボルトと、
該ボルトの前記内胴内に露出する頭部を被覆する蓋と、
を備え、
前記主軸は前記内胴に対して分離可能に取り付けられるとともに、前記シール部材と前記軸受とを別体として前記主軸において間隔を設けて配置し、 前記ボルトを外した状態にあっては、前記主軸は該主軸を軸支する前記軸受とともに前記軸受スタンド上を前記内胴から離れるように軸方向に移動自在に支持されることを特徴とする洗濯機の主軸受構造。
【請求項2】
前記シール部材には該シール部材から前記外胴外に漏出する液体を排出するドレンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の洗濯機の主軸受構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗物を洗濯ドラム(内胴)に投入して洗濯する業務用の洗濯機及び洗濯脱水機において、外胴の内側で回転する内胴と、この内胴を片持ちで軸支する主軸とを分離交換可能な構造とすることにより優れたメンテナンス性と高信頼性を発揮することができる洗濯機の主軸受構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外胴の内側で被洗物が投入された内胴を回転して洗濯する業務用の洗濯機・洗濯脱水機において、内胴を回転させるべく水平方向に配置される主軸が、外胴を貫通して内胴の裏面板に取り付けられて、内胴を片持ちで回転自在に軸支する構造となっている。
そして、その主軸と内胴とは溶接等により一体不可分に接合されていた。また主軸の軸受けも、外胴の裏面板に固定される構造であった(特許文献1参照)。
【0003】
そのような容易に分離することができない構造とする根拠は、水を含んで重くなった被洗物を収納する内胴を回転(揺動)させることは、これを片持ちで軸支する主軸に多大な負荷がかかることから、できるだけ回転軸のブレをなくし余分な振動を発生させないように、内胴と主軸とを一体的な剛構造とすることが考慮されていたことによる。
そして、洗濯中は外胴の内側に多くの洗浄液が入って飛散していることから、その洗浄液が、主軸が貫通する外胴の隙間から外部に漏出しないように、主軸が貫通する外胴の裏面板部分にシール部材が設けられ、そしてシール部材の外側に近接して位置する軸受が外胴裏面板に固定される構造で配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−263397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の業務用の洗濯機・洗濯脱水機は、主軸と内胴とが一体不可分に接合され、かつ軸受が外胴に固定されていることから、一旦主軸の軸受に不具合が生じた場合に、それを交換するためには装置を大がかりに分解する必要があり、それには多大な手間と費用を要していた。
また、主軸の軸受構造としては、シール部材が経時的原因等で機能が低下した場合に、外胴内の洗浄液がシール部材から漏れ出ることがあり、その漏れ出た洗浄液はシール部材に近接する軸受に入り込み、グリスを流し落として軸受を損傷させるおそれがあった。そして、主軸の軸受が損傷してしまうと、軸受の交換のために装置を大がかりに分解して交換することが余儀なくされていた。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、内胴と主軸とを分離交換可能な構造として、メンテナンス性に優れかつ軸受が損傷するおそれの少ない高信頼性を発揮する洗濯機の主軸受構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、内胴と主軸とを分離交換可能な構造とし、さらに軸受とシール部材の構造にも配慮して軸受の信頼性を高めることができる洗濯機の主軸受構造を案出するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の洗濯機の主軸受構造は、外胴の内側で回転する内胴と、該内胴を片持ちで支持する主軸と、該主軸を軸支し前記外胴に分離可能に取り付けられる軸受と、前記主軸が貫通する外胴部分に配設され外胴内に滞留する液体の外胴外への漏出を防止するシール部材とを備え、前記主軸は前記内胴に対して分離可能に取り付けられるとともに、前記シール部材と前記軸受とを別体として前記主軸において間隔を設けて配置したことを特徴とする。
本発明によれば、主軸を内胴から分離可能とすることにより、これまで軸受等のメンテナンスに際して装置の大がかりな分解が必要であったのが、主軸を取り外すことで容易に行えることとなった。
また、シール部材と軸受とを別体として主軸において間隔を設けて配置したことで、シール部材からの液体の漏出があった場合でも、漏出した液体はシール部材から滴下してしまい、間隔を設けて位置する軸受に液体が浸入するおそれがなくなり、これにより軸受の信頼性が向上する。
【0009】
また本発明の洗濯機の主軸受構造は、シール部材に該シール部材から外胴外に漏出する液体を排出するドレンを設けたことを特徴とする。
これにより、シール部材から液体が漏出した場合であっても、液体が軸受に浸入することなく確実に排出される。
【0010】
また主軸は該主軸を軸支する軸受けとともに外胴に配設された軸受支持部材に対して移動自在に配設されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の洗濯機の主軸受構造の説明図である。
図2】本発明の洗濯機の主軸受構造の要部説明図である。
図3】本発明の洗濯機の主軸受構造の主軸を分離した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る洗濯機の主軸受構造を実施するための形態を詳細に説明する。図1図3は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び機能は同様であるものとする。
【0013】
本発明は、洗濯機及び洗濯脱水機に適用することが可能であるが、本実施例にあっては洗濯脱水機を例に取り説明する。
図1は、業務用の洗濯脱水機1の主軸を中心とした要部の構造を表している。洗濯脱水機1の内胴2は、外胴3の内側に回転自在に配置され、開口部と相対向する裏面板4に主軸5を、ボルト等を用いて分離可能な構造にて固定している。その分離する際は、具体的には内胴2の開口部側から内部に入って、主軸5の先端を内胴2の裏面板4中央に固定しているボルトを外すことで、主軸5と内胴2とを分離することが可能である。なお、内胴2内に露出するボルトの頭部を適宜な蓋6で被覆することで、内胴2内の被洗物を傷つけないようにしている。図中7は、主軸5を軸支するベアリングからなる軸受であり、この軸受7は、外胴3の裏面板10に固定された軸受スタンド8上に載置されるようにして堅固に固定されている。
【0014】
図2は、図1に示す主軸5とシール部材9と軸受7を表す要部説明図であり、主軸5は軸受7に軸支された状態で、外胴3の裏面板10を貫通し、内胴2の裏面板4にボルト等を用いて着脱可能な状態で固定されている。
そして、外胴3の裏面板10における主軸5が貫通する個所には、孔部10aが設けられており、その孔部10aと主軸5の間に液体の流通を遮断するためのオイルシール等のシール部材9を介在させている。
シール部材9の構造は、外輪部9aがリップ9bを備えて裏面板10の孔部10aに配設され、そのリップ9bはバネに付勢されて先端を回転する主軸5に嵌合する内輪部9cに押しつけることにより、外胴3内の洗浄液が回転する主軸5から漏れ出たり、外胴3外から外胴3内に塵埃等が侵入したりすることを防いでいる。
【0015】
さらに、シール部材9の下方部分には、経時によるシールの劣化等により洗浄液が漏れ出た場合に、これを適切に外部に排出するためのドレン9dを設けている。
そして、ドレン9dを含むシール部材9から離間した位置で主軸5に軸受7を配設している。軸受7は、主軸5を2個所で回転自在に支持する2組のベアリングを備え、各ベアリングの外側にはグリスの漏出を防いだり、塵埃や水の侵入を防いだりするためのオイルシール7aが配設されている。
【0016】
図3は、主軸5を内胴2から分離した状態を示し、内胴2の裏面板4から分離した主軸5は、軸受7とともに軸受スタンド8上を図の右方向、すなわち軸方向に移動させることができる。そして、軸受7を主軸5から取り外して、軸受7のグリスアップ、交換等のメンテナンスが容易に行うことができる。
またシール部材9は、裏面板10の孔部10aから取り外すことができ、これにより定期メンテナンス等において容易に交換することができる。
【0017】
上述した実施例にあっては、洗濯脱水機を例に取り説明したが、洗濯脱水機や洗濯機に限定することなく、回転軸のシール部分から洗浄液が漏出するおそれのある装置における回転軸と軸受とシール部材の構成において好適に適用することができるものである。
【0018】
以上、本発明の洗濯機の主軸受構造について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記実施形態における洗濯機の主軸受構造の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の洗濯機の主軸受構造は、業務用の洗濯機を製造する産業において利用することができるものである。
【符号の説明】
【0020】
1:洗濯機
2:内胴
3:外胴
4:裏面板
5:主軸
7:軸受
7a:オイルシール
8:軸受スタンド
9:シール部材
9a:外輪部
9b:リップ
9c:内輪部
9d:ドレン
10:裏面板
10a:孔部
図1
図2
図3