(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、懸濁物質を含む原液から当該懸濁物質を分離するために、スクリュープレス式、ベルトプレス式、遠心式、真空式、フィルタプレス式、あるいは多重円板式といった様々な方式の脱水機が用いられている。懸濁物質を含む原液としては、し尿汚泥、下水汚泥、または民間産業排水汚泥などが挙げられるが、その他にも浄水場の原水、食料品原料液、化粧品原料液、製紙原料液、または工業用の原料液が、懸濁物質を含む原液に含まれる。この懸濁物質を含む原液を脱水機で脱水するための前処理として、当該原液に凝集剤を注入し、凝集剤が注入された原液を攪拌することで原液内に懸濁物質の凝集フロックを形成させることが行われる。
【0003】
凝集フロックを形成させるために、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液を高速攪拌装置で高速攪拌した後で、低速攪拌装置で低速攪拌する2段階攪拌を行うことが知られている。高速攪拌装置で、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液を高速攪拌することにより、凝集剤が懸濁物質を含む原液と均一に混合させられる。高速攪拌後の原液を、低速攪拌装置で低速攪拌することで、凝集フロックが造粒させられる。このように凝集フロックを造粒させることで、脱水機での脱水効率が高められる。
【0004】
従来の高速攪拌装置の側面図が
図8に示される。従来の高速攪拌装置101は、T字型配管(所謂チーズ配管)160の第1開口端部および第2開口端部にそれぞれ接続された上流側配管130および下流側配管133と、T字型配管160の第3開口端部から挿入された回転軸103に取り付けられた攪拌羽根105とを備えている。回転軸103は、モータなどの駆動源102に接続されている。
【0005】
駆動源102により回転軸103を回転させると、回転軸103と共に攪拌羽根105が回転する。T字型配管160の第3開口端部にはフランジ126が設けられており、フランジ126には、回転軸103が貫通する貫通孔が設けられた蓋プレート125が固定される。そして、蓋プレート125に設けられた貫通孔には、シール装置116が設けられる。このシール装置116は、回転軸103の回転を許容しながら、原液の漏洩を防止する軸封装置である。シール装置116として、例えば、メカニカルシールやグランドパッキンが用いられる。
【0006】
このような構成で、攪拌羽根105を高速で回転させることにより、上流側配管130から流入してくる原液をT字型配管160内で高速攪拌している。凝集剤が注入された原液は、T字型配管160内で攪拌羽根105の高速回転により攪拌され、その結果、当該懸濁物質を含む原液は凝集剤と均一に混合される。
【0007】
しかしながら、T字型配管160の内周面と攪拌羽根105との間の隙間は均一ではない。すなわち、T字型配管160の内周面と攪拌羽根105との間の隙間が大きい箇所もあれば、小さい箇所も存在している。そのため、凝集剤を原液内に均一に混合させることが難しい。攪拌羽根105をより高速で回転させることで、原液に凝集剤を均一に混合させることは可能ではあるが、攪拌羽根105の高速回転に起因してシール装置116の寿命は短くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、凝集剤を、懸濁物質を含む原液に効率良く且つ均一に混合させることのできる高速攪拌装置を提供することを目的とする。また、本発明は、この高速攪拌装置で高速攪拌した後で、低速攪拌装置で低速攪拌する凝集攪拌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液を攪拌する高速攪拌装置であって、駆動源により回転される回転軸と、前記回転軸に連結された攪拌羽根と、前記回転軸と同軸上に配置され、前記攪拌羽根を収容する円筒部材と、前記円筒部材の内周面に固定された複数のバッフルと、
前記回転軸の長手方向に沿って並び、前記攪拌羽根を挟むように配置された先端側円板および後端側円板と、を備え、前記複数のバッフルは、前記攪拌羽根の周囲に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記複数のバッフルのそれぞれは、多角形状の横断面を有していることを特徴とする。
本発明の一参考例は、前記複数のバッフルのそれぞれは、前記回転軸の長手方向に沿って並ぶ分割体から構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の
一参考例は、前記円筒部材の開口端部を閉じる蓋部材をさらに備え、前記蓋部材は、前記円筒部材に着脱自在に取り付けられることを特徴とする。これにより、高速攪拌装置の開放点検が容易となる。
本発明の
一参考例は、前記円筒部材の開口端部を閉じる蓋部材をさらに備え、前記蓋部材に前記先端側円板が取り付けられていることを特徴とする。
本発明の
一参考例は、前記懸濁物質を含む原液を前記円筒部材に導入する流入配管と、当該原液を前記円筒部材から排出する排出配管とが前記円筒部材の側面に接続され、前記流入配管が延びる方向に対する、前記排出配管が延びる方向の角度は、90°以上270°以下であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記懸濁物質を含む原液を前記円筒部材に導入する流入配管と、当該原液を前記円筒部材から排出する排出配管とが前記円筒部材の側面に接続され、前記円筒部材内を通過する原液の流れ方向は、前記回転軸に対して垂直であることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、上記高速攪拌装置に、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液を供給し、前記高速攪拌装置で、前記原液と前記凝集剤とを攪拌することにより、前記原液と前記凝集剤とを混合させ、前記凝集剤が混合された原液を凝集混和槽に供給し、前記凝集混和槽で、凝集剤を再添加して前記原液を攪拌することにより、凝集フロックを形成することを特徴とする凝集攪拌方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、攪拌羽根が固定される回転軸と同軸上に設けられる円筒部材内に、攪拌羽根が収容される。したがって、円筒部材と攪拌羽根との間の隙間は攪拌羽根の回転方向の全周で均一になるので、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液を均一に攪拌できる。結果として、凝集剤を原液と均一に混合させることが可能になる。また、円筒部材の内周面には、バッフルが設けられる。攪拌羽根によって攪拌される原液は、このバッフルに衝突することで乱流を形成し、渦を発生させることができるので、凝集剤を短時間で効率良く原液と混合させることができる。さらには、攪拌羽根を中速で回転させても凝集剤および原液を十分に攪拌できるので、結果として、電動機などの駆動源の消費動力を少なくし、軸封装置の寿命を伸ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る高速攪拌装置の側面図である。
図2は、
図1のA−A線における断面図である。
図3は、
図1のB−B線における断面図である。
図1、
図2、および
図3に示す高速攪拌装置1は、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液を高速で攪拌する装置である。懸濁物質を含む原液としては、し尿汚泥、下水汚泥、民間産業排水汚泥などが挙げられるが、その他にも浄水場の原水、食料品原料液、化粧品原料液、製紙原料液、または工業用の原料液が、懸濁物質を含む原液に含まれる。本明細書中における原液とは、高速攪拌装置1で処理される液体の総称である。
【0017】
高速攪拌装置1は、モータなどの駆動源2と、駆動源2に接続されて、当該駆動源2により回転する回転軸3と、回転軸3に連結された攪拌羽根5と、回転軸3と同軸上に配置された円筒部材7と、を備える。攪拌羽根5は、円筒部材7内に収容される。このように、円筒部材7が回転軸3と同軸上に配置されているので、攪拌羽根5と円筒部材7との隙間が攪拌羽根5の回転方向の全周で均一になる。その結果、この高速攪拌装置1で攪拌される原液を均一に攪拌できるので、凝集剤と、懸濁物質を含む原液とを均一に混合させることが可能になる。
【0018】
円筒部材7の上端には、フランジ26が設けられ、このフランジ26には、相フランジ25が固定される。相フランジ25には、回転軸3が貫通する貫通孔25aが開口している。この貫通孔25aから、高速攪拌装置1を流れる原液が漏洩しないように、貫通孔25aと回転軸3との隙間はシール装置16によってシールされる。このシール装置16は、回転軸3の回転を許容しながら、原液の漏洩を防止する軸封装置である。シール装置16として、例えば、メカニカルシールやグランドパッキンが用いられる。
【0019】
図示した例の高速攪拌装置1は、インラインミキサーとして構成されている。インラインミキサーとは、配管に組み込まれた混合機のことを言う。
図1および
図2に示すように、円筒部材7の側面には、懸濁物質を含む原液を円筒部材7に導入する流入配管20と、当該原液を円筒部材7から排出する排出配管21とが接続されている。これら流入配管20と排出配管21とは、高速攪拌装置1の一部を構成する。流入配管20と排出配管21は、一直線上に配置されている。したがって、流入配管20から流入してきた原液は、円筒部材7を通って直線的に排出配管21に流れる。また、流入配管20と排出配管21は、それぞれ円筒部材7の側面に垂直に接続されるので、流入配管20が延びる方向と、排出配管21が延びる方向は、攪拌羽根5が連結される回転軸3に対して垂直である。したがって、円筒部材7内を通過する原液の流れ方向は、回転軸3に対して垂直になる。
【0020】
流入配管20の円筒部材7に接続される端部とは逆側の端部には、フランジ23が取り付けられており、同様に、排出配管21の円筒部材7に接続される端部とは逆側の端部には、フランジ24が取り付けられている。フランジ23は、高速攪拌装置1の上流側に配置される上流側配管30に設けたフランジ31に接続され、同様に、フランジ24は、高速攪拌装置1の下流側に配置される下流側配管33に設けたフランジ34に接続される。このように上流側配管30と下流側配管33とを、高速攪拌装置1を介して連結することで、高速攪拌装置1はインラインミキサーとして構成される。
【0021】
攪拌羽根5は、回転軸3から着脱可能な円筒状の軸部材17と、軸部材17の周方向に沿って等間隔で配列された複数の翼18とを備える。本実施形態では、4枚の翼18が軸部材17の外周面に固定されている。
図2に示されるように、攪拌羽根5を上方から眺めると、軸部材17の外周面から翼18が外側に放射状に延びている。翼18は、軸部材17の外周面から外側に放射状に延びると共に、
図3に示されるように、回転軸3の長手方向と平行な方向にも延びる。なお、翼18の枚数は、4枚に限定されない。例えば、翼18の枚数を5枚以上にしてもよいし、3枚以下にしてもよい。
【0022】
攪拌羽根5の軸部材17の中心部には、回転軸3が嵌入される貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、回転軸3に設けられたキー(図示せず)が挿入されるキー溝(図示せず)が設けられている。回転軸3のキーを攪拌羽根5のキー溝に係合させると共に、回転軸3の末端に締結部材10を装着して締結部材10を締め付けることにより、攪拌羽根5が回転軸3に固定される。締結部材10は、例えば、回転軸3の末端に形成されたねじ溝に螺合するナットである。駆動源2によって回転軸3を回転させると、攪拌羽根5は回転軸3と共に回転する。攪拌羽根5は約1000〜3600min
−1の回転速度であって、翼18の最外周の周速(羽根先端の周速)が4m/s以上20m/s以下であるような、高速で回転させられる。最適回転速度は、原液の量や性状により異なる。
【0023】
円筒部材7の内周面には、攪拌羽根5に近接する複数のバッフル15が設けられる。本実施形態では、4つのバッフル15が設けられている。これらバッフル15は、攪拌羽根5を囲むように配置されており、回転する攪拌羽根5がバッフル15に接触しないように、攪拌羽根5とバッフル15との間には隙間が形成されている。各バッフル15は、回転軸3の長手方向と平行な方向に延びている。回転軸3は、高速攪拌装置1の円筒部材7に流れ込む原液の流れ方向に対して垂直な方向に延びているので、バッフル15も原液の流れ方向に対して垂直な方向に延びる。
【0024】
図2に示されるように、本実施形態のバッフル15は、板材から構成されており、矩形状の横断面を有している。バッフル15は、円筒部材7の内周面に設置される。また、
図2に示される実施形態では、バッフル15は、原液の流れ方向に垂直な面であって、円筒部材7の中心を通る面から、攪拌羽根5の回転方向の上流側と下流側に35°離間した4方向の位置に設けられている。さらに、
図3に示されるように、各バッフル15は、回転軸3の長手方向に沿って並ぶ分割体15a,15bから構成されている。これら分割体15a,15bの間には、回転軸3の長手方向に沿った隙間15cが形成されている。
【0025】
バッフル15の配置位置や枚数は、図示した例に限定されない。例えば、バッフル15を、原液の流れ方向に垂直な面であって、円筒部材7の中心を通る面から35°とは異なる角度で離間した4方向の位置に設けてもよい。また、一体物として構成されたバッフル(すなわち、複数の分割体から構成されていないバッフル)を用いることもできるし、あるいは、バッフルを3つ以上の分割体から構成し、当該3つ以上の分割体を、回転軸3の長手方向に沿って離間して配置してもよい。
【0026】
攪拌羽根5によって攪拌された原液は、円筒部材7の内周面に設けたバッフル15に衝突することで乱流を形成し、円筒部材7内に渦を発生させる。その結果、懸濁物質を含む原液と凝集剤とを、短時間で効率良く混合させることができる。特に、各バッフル15は、回転軸3に沿って並ぶ複数の(図示した例では2つの)分割体15a,15bから構成されているので、これら分割体15a,15bの間の隙間15cを流れる原液の流速と、バッフル15に衝突して流れを阻害された原液の流速との間に速度差が生じる。そして、この速度差に起因して円筒部材7内に渦が発生するので、凝集剤が注入された原液をより効率良く攪拌することができる。
【0027】
本実施形態の高速攪拌装置1によれば、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液を効率良く攪拌することができるので、従来の高速攪拌装置に比べて攪拌羽根5の回転速度を低くすることができる。攪拌羽根5の回転速度を低くすることができれば、高速攪拌装置1からの原液の漏洩を防止するシール装置16にかかる負荷を低減することができる。その結果、高速攪拌装置1のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0028】
円筒部材7の開口端部には蓋部材28が着脱自在に取り付けられている。蓋部材28は、例えば、円筒部材7の外周端部に固定されたフランジ29に接続される閉止フランジである。蓋部材28は、円筒部材7内に配置された円柱状のプラグ39を備えている。蓋部材28の外周部には、複数の貫通孔が設けられており、フランジ29にも、この貫通孔に対応する位置に貫通孔が設けられる。蓋部材28の貫通孔とフランジ29の貫通孔とを位置合わせして、この両方の貫通孔にボルト35を挿入し、当該ボルト35をナット36で締結することで、蓋部材28がフランジ29に固定される。ボルト35からナット36を外せば、蓋部材28をフランジ29から取り外すことができる。高速攪拌装置1のメンテナンス時に、蓋部材28を円筒部材7から取り外すだけで、作業者は、容易に攪拌羽根5をメンテナンスすることができる。
【0029】
図3に示されるように、先端側円板30および後端側円板31が、攪拌羽根5を挟むように回転軸3の長手方向に沿って並んでいる。これら先端側円板30および後端側円板31は、攪拌羽根5に近接して配置されている。先端側円板30と後端側円板31は、回転軸3の長手方向に対して垂直な円板で構成されており、先端側円板30および後端側円板31の中心は回転軸3の中心に一致している。また、先端側円板30と後端側円板31は、円筒部材7の内径よりも小さく、攪拌羽根5の直径よりも大きな直径を有している。
【0030】
後端側円板31は、回転軸3に固定されており、回転軸3と共に回転する。先端側円板30は、蓋部材28のプラグ39に固定されており、攪拌羽根5が回転しても、先端側円板30は回転しない。先端側円板30と攪拌羽根5との間、および後端側円板31と攪拌羽根5との間には、均一な狭い隙間が形成されている。
図3に示すように、円板30,31と攪拌羽根5との隙間は、バッフル15と攪拌羽根5との隙間とほぼ同じ大きさである。このように攪拌羽根5の全体には均一な隙間が形成されているので、攪拌羽根5は、原液を効率良く攪拌することができる。その結果、凝集剤と、懸濁物質を含む原液とを効率良く混合することができる。
【0031】
図4は、本発明の別の実施形態に係る高速攪拌装置の、
図2に対応する断面図である。
図4に示すように、この実施形態のバッフル15は、三角形状の横断面を有している。すなわち、バッフル15の長手方向と垂直な断面は三角形状である。攪拌羽根5によって攪拌される原液は、このバッフル15に衝突することで乱流を形成し、円筒部材7内に渦を発生させることができる。その結果、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液が効率良く攪拌され、凝集剤と原液とを短時間で効率良く混合させることができる。さらに、このような断面三角形状を有するバッフル15を用いると、攪拌羽根5が回転したときに、原液内に含まれるし渣等の混入塵がバッフル15に絡みつくことが防止される。したがって、効率の良い原液の攪拌を維持しながら、高速攪拌装置1のメンテナンス頻度を低減することができる。なお、バッフル15の横断面の形状は、三角形状に限定されない。例えば、バッフル15が、四角形、五角形などの多角形状の横断面を有していてもよい。さらに、バッフル15は、円弧または円形状の横断面を有していてもよい。
【0032】
図5は、本発明のさらに別の実施形態に係る高速攪拌装置の、
図3に対応する断面図である。
図5に示す高速攪拌装置1では、先端側円板30の攪拌羽根5に対向する表面には、複数のバッフル40が固定されている。これらバッフル40は、先端側円板30から垂直に立設している。各バッフル40は、先端側円板30の半径方向に延び、攪拌羽根5に近接して配置される。複数のバッフル40は、先端側円板30の周方向に沿って等間隔で配置される。例えば、バッフル40が2枚設けられる場合は、バッフル40は180°間隔で配置される。同様に、バッフル40が3枚設けられる場合は、バッフル40は120°間隔で配置され、バッフル40が4枚設けられる場合は、バッフル40は90°間隔で配置される。なお、バッフル40の枚数は4枚に限定されない。バッフル40の枚数を、5枚以上にしてもよいし、3枚以下にしてもよい。例えば、バッフル40を1枚だけ設けることも可能である。
【0033】
このように、円筒部材7の内周面に取り付けられたバッフル(第1のバッフル)15に加えて、さらに別のバッフル(第2のバッフル)40を設けると、攪拌羽根5によって攪拌される原液により多くの渦が発生するので、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液をより効率良く攪拌することができる。
【0034】
図6は、本発明のさらに別の実施形態に係る高速攪拌装置の、
図2に対応する断面図である。
図6に示す高速攪拌装置1は、円筒部材7の側面には、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液が流入する流入配管20と、当該原液が排出される排出配管21とが接続されている点で
図2に示す実施形態と同じであるが、排出配管21が延びる方向は、流入配管20の延びる方向に対して垂直である点で異なっている。すなわち、流入配管20から流入してきた原液は、円筒部材7を通って、90°に流れ方向を変えて排出配管21に流れるようになっている。この場合、円筒部材7の内周面に設けられるバッフル15が、流入配管20と排出配管21とに干渉しないように、バッフル15は、円筒部材7の周方向に沿って90°の間隔で配置される。
【0035】
図6に示すバッフル15は、三角形状の横断面を有しているが、バッフル15の横断面の形状は、上記したように三角形状に限定されない。例えば、バッフル15が、四角形、五角形などの多角形状の横断面を有していてもよい。さらに、バッフル15は、円弧または円形状の横断面を有していてもよい。流入配管20が延びる方向に対する、排出配管21が延びる方向の角度をθとすると、角度θは、直角以外の角度であってもよい。角度θの範囲は、好ましくは、90°以上270°以下であり、例えば、角度θを120°とすることができる。角度θが180°である場合が、
図2に示される、流入配管20と排出配管21とが一直線上に配置される場合である。
【0036】
図7は、本発明の実施形態に係る高速攪拌装置が組み込まれた凝集攪拌装置の一例を示す概略フロー図である。
図7に示される凝集攪拌装置は、上述の高速攪拌装置1と、この高速攪拌装置1の下流側に配置される低速攪拌装置70とを備える。すなわち、この凝集攪拌装置は、懸濁物質を含む原液を、高速攪拌した後で低速攪拌する2段階攪拌を行う凝集攪拌装置である。
【0037】
低速攪拌装置70は、モータなどの駆動源72と、駆動源72により回転させられる回転軸73と、回転軸73に連結される攪拌羽根75と、攪拌羽根75を内部に収容する凝集混和槽71と、を備える。攪拌羽根75は、回転軸73に固定されており、駆動源72によって回転軸73を回転させると、攪拌羽根75も回転軸73と共に回転する。攪拌羽根75は、高速攪拌装置1の攪拌羽根5よりも低速で回転させられる。低速攪拌装置70の攪拌羽根75は、例えば、約30〜300min
−1の回転速度であって、攪拌羽根75の最外周の周速が1m/s以上4m/s未満であるような、低速で回転させられる。
【0038】
上述したように、凝集剤が注入された、懸濁物質を含む原液を、高速攪拌装置1で高速攪拌することにより、凝集剤と、懸濁物質を含む原液とを均一に混合させることができる。凝集剤は、高速攪拌装置1に流入する直前の原液に注入される。高速攪拌装置1内で凝集剤を原液に注入してもよい。
【0039】
高速攪拌装置1を出た、凝集剤が混合された原液は、低速攪拌装置70の凝集混和槽71の下部に流入する。凝集混和槽71の下部から流入した原液は、低速攪拌装置70の低速回転する攪拌羽根75により、ゆっくりと攪拌されながら、凝集混和槽71を上昇していき、この過程で凝集フロックが造粒され、且つ成長する。凝集混和槽71の上部には、排出口が設けられている。凝集混和槽71内の原液はオーバーフローしてこの排出口に流入し、さらに低速攪拌装置70の下流側に設けられた脱水機に送られる。脱水機では、原液が凝集フロックの集合体である脱水ケーキと脱水ろ液とに分離され、その結果、凝集フロックを脱水ケーキとして回収することができる。
【0040】
なお、凝集剤を凝集混和槽71に更に注入してもよい。この凝集剤は、高速攪拌装置1に流入する前に、または高速攪拌装置1内で原液に注入される凝集剤と同じもの、または異なるものを使用することができる。
【0041】
従来の高速攪拌装置と本発明の一実施形態にかかる高速攪拌装置とにおける、凝集剤の混合状態を比較するための実験を行った。実験では、高分子凝集剤の溶液を汚泥に注入し、さらに高速攪拌装置により汚泥の攪拌を実施して、汚泥を凝集させ、得られた凝集フロックの粒径を比較した。実験には、
図4に示した高速攪拌装置1を使用した。また、比較例として、
図8に示される従来型の高速攪拌装置101を使用した。
【0042】
実験には排水処理施設から採取した嫌気性消化汚泥を使用した。汚泥のTS(Total Solids)は、22.5g/Lである。TSとは、蒸発残留物のことであり、汚泥を105〜110℃で蒸発乾固したときに残留する物質の濃度である。測定方法は下水試験方法に準拠した。高分子凝集剤には、カチオン性高分子凝集剤を使用した。高分子凝集剤の溶液は、高分子凝集剤を水に溶解して得た水溶液であり、2.5g/Lの濃度に調製した。高分子凝集剤の濃度とは、水溶液中の高分子凝集剤の濃度の意味である。
【0043】
実験手順は以下の通りである。
まず、所定流量の汚泥に所定流量の高分子凝集剤の溶液を注入する。次に、高分子凝集剤の溶液が注入された汚泥を高速攪拌装置に供給する。高速攪拌装置では、回転速度を1000min
−1(周速約4.2m/s)に設定した高速攪拌で、汚泥と高分子凝集剤の溶液とを混合する。汚泥と高分子凝集剤の溶液とを高速攪拌装置で混合すると、汚泥が凝集させられ、フロックが形成される。次に、この形成されたフロックを採取し、フロックの粒径を測定した。実験結果を表1に示す。
【0045】
汚泥流量が1.0m
3/hについて、本発明の一実施形態にかかる高速攪拌装置の方が従来型の高速攪拌装置に比べてフロック粒径を小さくすることができた。汚泥流量が2.0m
3/hについても、本発明の一実施形態にかかる高速攪拌装置の方がフロック粒径を小さくすることができた。これらのことから、本発明の一実施形態にかかる高速攪拌装置1は攪拌効率が高いことが分かった。
【0046】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。