特許第6267595号(P6267595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267595
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ベントフィルター一体シール
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20180115BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B01D46/10 Z
   F16J15/10 T
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-138744(P2014-138744)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-16335(P2016-16335A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】二家本 博之
(72)【発明者】
【氏名】簑島 建司
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 慶一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良栄
(72)【発明者】
【氏名】宇田 徹
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−9173(JP,A)
【文献】 特表平9−508193(JP,A)
【文献】 特開2008−237949(JP,A)
【文献】 実開平3−70711(JP,U)
【文献】 特開2011−98326(JP,A)
【文献】 特開平7−267871(JP,A)
【文献】 特表2003−521358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/10
F16J 15/10
H05K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の合わせ面に装着されて筐体内部および筐体外部間をシールするシール部品と、前記筐体内部を前記筐体外部に対し通気させるベントフィルターとを備え、前記シール部品が前記ベントフィルターを一体に保持したことを特徴とするベントフィルター一体シール。
【請求項2】
請求項1記載のベントフィルター一体シールにおいて、
前記ベントフィルターは、前記シール部品の周上一部において前記シール部品の内周側から外周側へ貫通するように配置されていることを特徴とするベントフィルター一体シール。
【請求項3】
請求項1または2記載のベントフィルター一体シールにおいて、
前記ベントフィルターは、多孔質素材または中空素材よりなる内装部品を撥水性または撥油性を有する多孔質のシート状外装部品で袋状に覆った構造を備え、かつ所定の長さおよび幅ならびに前記長さおよび幅より小さな厚みを備えて扁平状に成形され、前記厚みを前記シール部品が装着時に圧縮される方向に向け配置されていることを特徴とするベントフィルター一体シール。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のベントフィルター一体シールにおいて、
前記筐体は、電子機器、精密機器、産業機器または自動車部品に係る筐体であることを特徴とするベントフィルター一体シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール機能を備えるシール部品と、通気機能を備えるベントフィルターとを組み合わせたベントフィルター一体シールに関する。本発明のベントフィルター一体シールは例えば、電子機器(車載用電子機器を含む)の分野で用いられ、または精密機器の分野、油ポンプ等の産業機器の分野、ヘッドライト等の自動車部品の分野などで用いられる。
【背景技術】
【0002】
例えば電子機器においては、温度変化による内圧変化を防止もしくは緩和するため、または結露を防止するために通気口が必要な場合がある。このため機器本体を内蔵する筐体に開口部を形成するが、このように開口部を形成するとこの開口部を経由して筐体外部から筐体内部へ水分、油、塵埃などの異物が侵入する原因ともなる。
【0003】
これを防止するため、通気性を確保すると同時に、水分、油、塵埃などの異物が筐体内部へ侵入しないようベントフィルターを取り付けるのが一般的とされている。
【0004】
例えば、図8(A)に概略を示す電子機器51においては、機器本体52を内蔵する筐体53に開口部54が設けられ、この開口部54にベントフィルター61が取り付けられている。
【0005】
筐体53は、この筐体53を開閉できるようケース55および蓋体56の組み合わせとされ、ケース55および蓋体56間にはここから水分、油、塵埃などの異物が筐体内部へ侵入しないようシール部品57が取り付けられている。開口部54はケース55の側面位置に設けられ、この開口部54にベントフィルター61が取り付けられている。
【0006】
ベントフィルター61は図8(B)に拡大して示すように水分、油、塵埃などの異物は通さないが気体は通すフィルター本体62と、このフィルター本体62を保持するボディ63および固定リング64とを備え、ボディ63に通気路655と、ボディ63を開口部54にねじ込むためのネジ部66とが設けられ、更にボディ63およびケース55間をシールするためのシール材67が組み付けられている。
【0007】
しかしながら上記従来の技術によると、筐体53のケース55に、シール部品57を取り付けるためのシール装着溝58とは別に、ベントフィルター61を取り付けるための開口部54を設ける必要がある。したがって筐体53の構成が複雑になり、開口部54を設けるスペースが必要で、このため筐体53の体積や重量が増える問題があり、意匠性についても制限を受けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−320255号公報
【特許文献2】特開2014−14060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の点に鑑みて、ベントフィルターを取り付けるための開口部を筐体に設ける必要がなく、もってベントフィルターの取付構造を簡略化することを目的とし、またベントフィルターをシール部品と一体品として取り扱うことができ、もってベントフィルターを単独で取り扱う必要がなく、ベントフィルターの取り扱い性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるベントフィルター一体シールは、筐体の合わせ面に装着されて筐体内部および筐体外部間をシールするシール部品と、前記筐体内部を前記筐体外部に対し通気させるベントフィルターとを備え、前記シール部品が前記ベントフィルターを一体に保持したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2によるベントフィルター一体シールは、上記した請求項1記載のベントフィルター一体シールにおいて、前記ベントフィルターは、前記シール部品の周上一部において前記シール部品の内周側から外周側へ貫通するように配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3によるベントフィルター一体シールは、上記した請求項1または2記載のベントフィルター一体シールにおいて、前記ベントフィルターは、多孔質素材または中空素材よりなる内装部品を撥水性または撥油性を有する多孔質のシート状外装部品で袋状に覆った構造を備え、かつ所定の長さおよび幅ならびに前記長さおよび幅より小さな厚みを備えて扁平状に成形され、前記厚みを前記シール部品が装着時に圧縮される方向に向け配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4によるベントフィルター一体シールは、上記した請求項1、2または3記載のベントフィルター一体シールにおいて、前記筐体は、電子機器、精密機器、産業機器または自動車部品に係る筐体であることを特徴とする。
【0014】
上記構成を備える本発明のベントフィルター一体シールにおいては、筐体の合わせ面に装着されて筐体内部および筐体外部間をシールするシール部品と、筐体内部を筐体外部に対し通気させるベントフィルターとが設けられ、前者のシール部品が後者のベントフィルターを一体に保持しているため、このシール部品およびベントフィルターを一体品としてまとめて取り扱うことが可能とされ、また、ベントフィルターがシール部品とともに筐体の合わせ面に装着されるため、ベントフィルターを取り付けるための開口部を筐体の側面などに別途設ける必要がない。シール部品は例えばゴム状弾性体よりなるガスケットとされるが、その形状や材質はもっぱら装着箇所によって定められるので、本発明では特に限定されない。
【0015】
シール部品およびベントフィルターを一体にするための構造としては、上記ガスケットなどよりなるシール部品の周上一部においてシール部品の内周側から外周側へ貫通するようにベントフィルターを配置するのが好適であり、これによればシール部品によるシールラインに対しベントフィルターによるベントラインが交差(横断)する構造となるため、筐体内部と筐体外部がシール部品によって遮断されても筐体内部を筐体外部に対し通気させることが可能とされる。またこの構造によればベントフィルターがシール部品の厚み内に収められる。
【0016】
また、筐体の合わせ面は可及的にスキマが小さいことが求められるので、この合わせ面に装着されるベントフィルターについてもその厚みが小さい(薄い)ほうが望ましい。そこで、ベントフィルターを以下の構造とすることを提案する。
【0017】
すなわちベントフィルターはこれを、多孔質素材または中空素材よりなる内装部品を撥水性または撥油性を有する多孔質のシート状外装部品で袋状に覆った構造とし、また所定の長さおよび幅ならびに長さおよび幅より小さな厚みを備える扁平状に成形する。そして、厚みをシール部品が装着時に圧縮される方向に向け配置することにより、厚みが小さく扁平なものが筐体の合わせ面に挟まれることになる。内装部品は中空素材または多孔質素材よりなるので、ベントフィルター内にてもっぱら通気路を形成する。外装部品は撥水性または撥油性を有する多孔質よりなるので、水分をはじき油をはじき、多孔質により塵埃などに対するフィルター機能を発揮する。
【0018】
筐体は、例えば電子機器の筐体とされ、あるいは精密機器の筐体、産業機器の筐体または自動車部品の筐体などとされる。これらの機器または部品は水分、油、塵埃などの外部異物を嫌う傾向が強くベントフィルターは必須とされるので、これらの機器にとってベントフィルターを改良することは殊更重要である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0020】
すなわち本発明においては以上説明したように、シール部品およびベントフィルターが一体とされているため、シール部品およびベントフィルターを一体品としてまとめて取り扱うことが可能とされ、また、ベントフィルターがシール部品とともに筐体の合わせ面に装着されるため、ベントフィルターを取り付けるための開口部を筐体の側面などに別途設ける必要がない。したがって本発明所期の目的どおり、ベントフィルターを取り付けるための開口部を筐体に設ける必要がなく、もってベントフィルターの取付構造を簡略化することができる。またベントフィルターをシール部品と一体品として取り扱うことができ、もってベントフィルターを単独で取り扱う必要がなく、ベントフィルターの取り扱い性を向上させることができる。
【0021】
また、ベントフィルターをしてシール部品の内周側から外周側へ貫通させることによりシールラインに対しベントラインが交差する構造となるので、シールライン設定の完了と同時にベントライン設定を完了することができ、ベントフィルターがシール部品の厚み内に収められるので、ベントフィルターが筐体の合わせを邪魔することもない。また、ベントフィルターを扁平形状とすることにより、筐体の合わせ方向に対しコンパクトな構造のベントフィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例に係るベントフィルター一体シールの一例を示す図で、(A)はその平面図、(B)はその断面図で(A)におけるF−F線断面図
図2】本発明の実施例に係るベントフィルター一体シールの他の例を示す図で、(A)はその平面図、(B)はその断面図で(A)におけるG−G線断面図
図3】同ベントフィルター一体シールに備えられるベントフィルターの一例を示す図で、(A)はその正面図、(B)はその平面図、(C)はその断面図であって(A)におけるH−H線断面図、(D)はその断面図であって(B)におけるI−I線断面図、(E)はその断面図であって(B)におけるJ−J線断面図
図4】同ベントフィルター一体シールに備えられるベントフィルターの他の例を示す図で、(A)はその正面図、(B)はその平面図、(C)はその断面図であって(A)におけるK−K線断面図、(D)はその断面図であって(B)におけるL−L線断面図、(E)はその断面図であって(B)におけるM−M線断面図
図5】同ベントフィルター一体シールを装着する電子機器の一例を示す図で、(A)はその断面図、(B)はその要部拡大断面図
図6】同ベントフィルター一体シールにおける通気路の説明図
図7】(A)(B)ともそれぞれ同ベントフィルター一体シールを装着する電子機器の他の例を示す要部断面図
図8】従来例に係る図であって、(A)は電子機器の断面図、(B)はベントフィルターの拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明は、シールを横断するように多孔質素材などからなるフィルターを成型加工する。すなわち本発明のベントフィルター一体シール(圧抜き(気体透過)シール)は、環状のシール部品と多孔質・中空素材を撥水・撥油素材からなる若しくは撥水・撥油処理した多孔質シートで袋状に覆ったベントフィルターとから構成されており、シール部品の一部分にベントフィルターをインサート成形などにより一体化する。電子機器内部と外部との通気路はケースの上下の合わせ面に挟持されたベントフィルターで構成される。
(2)多孔質もしくは中空素材(不織布、パイプ、ハニカム等)を多孔質のシート状素材で袋状に覆ったベントフィルターをOリングに代表されるシールを貫通させて成形もしくは接着したものである。
(3)電子機器内部と外部は、ケースの上下の合わせ面に挟持されたベントフィルターの厚さ方向ではなく長さ方向(面方向)を介して連通しており、これが電子機器内部と外部との通気路となる(電子機器内外の気体はフィルターの長さ方向(面方向)を通過する)。本発明のベントフィルター一体シール(圧抜き(気体透過)シール)を用いることによりベントフィルター取り付け穴加工や、ベントフィルター自体が不要になり、設計の自由度が増し、意匠性も改善される。したがって通常のシール構造の範疇だけで、容易に外部環境変化による内外圧力差を無くし、水、油、埃の通過を防ぎつつ、省スペースの選択的シール部品の提供が可能となる。
【実施例】
【0024】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0025】
(1)ベントフィルター一体シールの構成
図1に示すように当該実施例に係るベントフィルター一体シール11は、シール機能を発揮するシール部品21および通気機能を発揮するベントフィルター31の組み合わせにより構成されており、シール部品21がその周上1箇所にてベントフィルター31を一体に保持している。ベントフィルター31はシール部品21の周上1箇所にてシール部品21の内周側から外周側へ貫通するように配置されており、このためベントフィルター31はシール部品21の周上1箇所にてインサート成形により一体化されている。ベントフィルター31の一方の端部はシール部品21の内周面から突出し、他方の端部はシール部品21の外周面から突出し、すなわちベントフィルター31は、シール部品21に埋設された被埋設部31aと、シール部品21からその内周側へ突出する内周側突出部31bと、シール部品21からその外周側へ突出する外周側突出部31cとを一体に備えている。ベントフィルター31はシール部品21の厚みの中ほどに保持されている。ベントフィルター一体シール11はその機能からして、圧抜きシールまたは気体透過シールとも称される。
【0026】
i)シール部品
シール部品21は、ゴム状弾性体よりなる平面長方形の無端状環状ガスケットとされている。但し、シール部品21の形状や材質はもっぱら装着箇所によって定められるので、これらの形状や材質は特に限定されず、例えば図2に示すような平面円形の無端状環状ガスケットなどであっても良い。
【0027】
ii)ベントフィルター
図3に示すようにベントフィルター31は、内装部品32および外装部品33の組み合わせにより構成されており、中空素材または多孔質素材よりなる内装部品32を撥水性または撥油性を有する多孔質のシート状外装部品33で袋状に覆った構造とされている。
【0028】
このうち内装部品32は、具体的には不織布32Aとされているが、そのほか金属網、ポーラス体、ハニカム管、パイプまたは連通管などであっても良く、図4に示す他の例では不織布32Aおよび剛性素材よりなるパイプ32Bの組み合わせにより構成され、不織布32Aの幅方向両側にパイプ32Bが並んで配置されている。一方、外装部品33は、ポリプロピレン(PP)もしくはポリエチレン(PE)等の撥水性を有する、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水・撥油性を有する厚さ0.1〜0.5mm程度のシート状多孔質フィルターとされている(例えばゴアテックス社のePTFEや3M社のマイクロポーラスなど)。内装部品32の機能は、筐体内部および筐体外部間における良好な通気性を確保することおよびそのために通気路を確保することであり、外装部品33の機能は、水分、油、塵埃などの外部異物の侵入を止め、気体を通過させることである。内装部品32を外装部品33で覆うのは有効透過面積を大きくするためである。外装部品33としてはその材質自体が撥水性または撥油性を備えるほか、撥水性または撥油性を備えない材質に対し表面処理を施すなどして撥水性または撥油性を持たせるようにしても良い。
【0029】
また、ベントフィルター31は、所定の長さLおよび幅Wならびに前記長さLおよび幅Wより小さな厚みTを備える扁平なプレート状に成形されており、その長さLの方向をもってシール部品21の内周側から外周側へ貫通するように配置され、またその厚みTの方向をシール部品21が装着時に圧縮される方向に向けて配置されている。
【0030】
また、外装部品33は、長さ方向一方の端部すなわち筐体内部側の端部33aを開口した状態で袋体を構成している。筐体内部側の端部33aを開口した状態とするのは、筐体内部側は筐体外部側に比べ水分、油、塵埃などの異物が少ないためである。一方、筐体外部側からは水分、油、塵埃などの異物が侵入しやすいので、長さ方向他方の端部すなわち筐体外部側の端部33bは閉塞するのが好適である。これは筐体外部側からの異物の侵入を防ぐためである。さらに長さ方向両端部33a,33bを閉塞した場合、気体は外装部品33を2回通過する(図6に示すように外周側突出部31cの上面および内周側突出部31bの上面にて2回通過する)ことになるので抵抗が大きくなるが、もちろん使用条件によっては長さ方向両端部33a,33bを閉塞することにしても良い。
【0031】
(2)通気路
図5(A)に示すようにベントフィルター一体シール11は、機器本体42を内蔵した電子機器41の筐体43の合わせ面44に装着され、すなわち筐体43はケース45および蓋体46の組み合わせとされ、ケース45および蓋体46はそれぞれの側壁部45a,46a端面が合わせ面44とされ、ケース45の側壁部45a端面にシール部品21を装着するためのシール装着溝47が設けられているので、ベントフィルター一体シール11はこのシール装着溝47に装着され、装着された状態でシール部品21は図5(B)に示すようにその厚み方向に圧縮される。
【0032】
図5(B)の装着状態で、筐体内部Xと筐体外部Yは、筐体43の合わせ面44に挟持されたベントフィルター一体シール11におけるベントフィルター31の厚み方向ではなく長さ方向を介して連通しており、これが筐体内部Xおよび筐体外部Y間の通気路とされる。
【0033】
また図5(B)の装着状態で、ベントフィルター31はその長さ方向両端部(内周側突出部31bおよび外周側突出部31c)がそれぞれシール部品21から突出し、さらに側壁部45a,46aの内面または外面からも突出しているので、露出面積が大きく、よって気体を通過させやすく構成されている。すなわち図6に示すように、ベントフィルター31は外周側突出部31cの上面全体で通気することができ、内周側突出部31bの先端面(厚み面)のみでなく上面全体でも通気することができる。したがってベントフィルター31全体として通気面積が広く確保されるため、気体を通過させやすく構成されている。
【0034】
また、このように気体を通過させやすくするには、装着状態においてベントフィルター31が筐体43の合わせ面44(側壁部45a,46a端面)と接触しないようにすることも考えられ、この場合にはベントフィルター31の筐体内部Xまたは筐体外部Yに対する露出面積が一層増加するため、更に気体を通過させやすくなる。
【0035】
このため、図7(A)に示す例では、シール装着溝47の溝深さが比較的小さく(浅く)形成され、装着状態においてベントフィルター31とケース45の側壁部45a端面との間に間隙cが形成されている。この場合、ベントフィルター31は外周側突出部31cの上面全体および下面全体で通気することができ、内周側突出部31bの先端面(厚み面)のみでなく上面全体および下面全体でも通気することができる。したがってベントフィルター31全体として通気面積が更に広く確保されるため、気体を一層通過させやすい。
【0036】
また、図7(B)に示すように、ケース45の側壁部45a端面のみならず蓋体46の側壁部46a端面にもシール装着溝47を設けることによりベントフィルター31をケース45の側壁部45a端面と蓋体46の側壁部46a端面の中間に配置することも考えられ、この場合には、ベントフィルター31とケース45の側壁部45a端面との間およびベントフィルター31と蓋体46の側壁部46a端面との間に略同等の大きさの間隙cがそれぞれ形成されることになる。この場合もベントフィルター31は外周側突出部31cの上面全体および下面全体で通気することができ、内周側突出部31bの先端面(厚み面)のみでなく上面全体および下面全体でも通気することができる。したがってベントフィルター31全体として通気面積が更に広く確保されるため、気体を一層通過させやすい。
【0037】
また、図示はしないが、ケース45の側壁部45a端面および蓋体46の側壁部46a端面のいずれか一方または双方にベントフィルター31を装着するためのフィルター装着溝を設け、これにより間隙cを確保することも考えられる。この場合、フィルター装着溝はシール装着溝47と平面上交差することになるが、フィルター装着溝の溝深さはシール装着溝47の溝深さよりも小さく形成しても良い。
【0038】
更に、フィルター装着溝を設ける代わりにケース45の側壁部45a端面および蓋体46の側壁部46a端面のいずれか一方または双方に表面粗さによる微細な凹凸を設けるようにしても良い。
【0039】
(3)ベントフィルター一体シールの製法
上記構成のベントフィルター一体シール11を製造するに際しては、先ずベントフィルター31を製造し、次いでこのベントフィルター31をシール部品21に対して一体化する。
【0040】
ベントフィルター31の製造に際して、外装部材33を袋状にするには、2枚のシート状外装部材33の間に内装部材32を挟み込んで2枚のシート状外装部材33の周縁部を互いに溶着接合するか、あるいは1枚のシート状外装部材33を2つ折りにし、折り部の間に内装部材32を挟み込んで折り部の周縁部を互いに溶着接合する。
【0041】
シール部品21にベントフィルター31を一体化するに際しては、上記したようにシール部品21の成形時に金型によるインサート成形を実施するが、このほか、シール部品21を予め成形したうえでシール部品21とベントフィルター31を接着等の手段で互いに組み付けるようにしても良い。
【0042】
ベントフィルター31の内装部品32が不織布32Aなどである場合、金型によるインサート成形を実施すると不織布32Aが成形圧力によって潰されてしまうことが懸念されるので、この場合には上記したように不織布32Aに対し剛性の高いパイプ32Bを併設するなどして、パイプ32Bを潰れ防止の補強材とすると良い。パイプ32Bの設置数は2本に限定されず、1本または3本以上であっても良い。このためパイプ32Bやそのほかの金属網、ポーラス体、ハニカム管または連通管などには成形圧力によって潰れない剛性を備えさせることができる。また、外装部品33がPTFEの場合、シール部品31との接着力を高めるために、プラズマ処理等を追加するのも好適である。
【0043】
上記構成を備えるベントフィルター一体シール11においては、筐体43の合わせ面44に装着されて筐体内部Xおよび筐体外部Y間をシールするシール部品21と、筐体内部Xを筐体外部Yに対し通気させるベントフィルター31とが設けられ、前者のシール部品21が後者のベントフィルター31を一体に保持しているため、このシール部品21およびベントフィルター31を一体品としてまとめて取り扱うことが可能とされ、またベントフィルター31がシール部品21とともに筐体43の合わせ面44に装着されるため、ベントフィルター31を取り付けるための開口部を筐体43の側面などに別途設ける必要がない。したがってベントフィルター31を取り付けるための開口部を筐体43に設ける必要がなく、もってベントフィルター31の取付構造を簡略化し、意匠性を向上させることもでき、またベントフィルター31をシール部品21と一体品として取り扱うことができ、もってベントフィルター21を単独で取り扱う必要がなく、ベントフィルター21の取り扱い性を向上させることができる。
【0044】
また、ベントフィルター31をしてシール部品21の内周側から外周側へ貫通させることによりシールラインに対しベントラインが交差する構造とされているため、シールライン設定の完了と同時にベントライン設定を完了することができ、ベントフィルター31がシール部品21の厚み内に収められているため、ベントフィルター31が筐体43の合わせを邪魔することもない。また、ベントフィルター31に被埋設部31aのほかに内周側突出部31bおよび外周側突出部31cが一体に設けられているため、ベントフィルター31の露出面積、延いては通気面積が増大させることができ、よって通気機能を一層高めることができる。また、ベントフィルター31が扁平形状とされているため、筐体43の合わせ方向に対しコンパクトな構造のフィルター製品を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
11 ベントフィルター一体シール
21 シール部品
31 ベントフィルター
31a 被埋設部
31b 内周側突出部
31c 外周側突出部
32 内装部品
32A 不織布
32B パイプ
33 外装部品
33a,33b 長さ方向の端部
41 電子機器
42 機器本体
43 筐体
44 合わせ面
45 ケース
45a,46a 側壁部
46 蓋体
47 シール装着溝
X 筐体内部
Y 筐体外部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8