特許第6267597号(P6267597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267597
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電動グリッパ装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   B25J15/08 C
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-152582(P2014-152582)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-30302(P2016-30302A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】澤田 謙
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−18274(JP,A)
【文献】 特開平8−300283(JP,A)
【文献】 特開2000−42966(JP,A)
【文献】 実開昭56−121592(JP,U)
【文献】 特開2007−301708(JP,A)
【文献】 特開平10−26204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時に他の2枚と回転同期するように噛合された4枚の同期歯車と、
前記4枚の同期歯車の何れかと駆動連結された駆動モータと、
前記4枚の同期歯車と一体になって回転するよう固定された4つの短アームと
前記4つの短アームの先端部において第1の連結軸を介してそれぞれ回動自在にその先端部が支持された4つの長アームと、
前記4つの長アームうち、互いに対となる2つの長アームの先端部同志を互いに回動自在に連結した第2の連結軸と、
前記第2の連結軸に回動自在に支持された把持部材と
を備えることを特徴とする電動グリッパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動グリッパ装置に関し、特に、FA(Factory Automation)組立工程における製品の自動組立、部品搬送、検査等において、ワークを把持して位置決や測長等を行うためのモータ駆動による電動グリッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動グリッパ装置においては、モータによって正逆回転されるカム部材と、レールに沿って直線摺動する一対の把持部材とを備え、一対の把持部材のそれぞれのカムフォロア(駆動ピン)をカム部材に摺動自在に嵌合させる一対のカム溝が当該カム部材に螺旋状に形成され、モータによるカム部材の正逆回転により一対の把持部材がレールに沿って互いに接近・離隔摺動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の電動グリッパ装置におけるカム部材のカム溝は、モータの回転トルクによって生ずる把持部材の推力がどの位置でも一定となるように、アルキメデスの渦巻き線に沿う螺旋状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の電動グリッパ装置においては、モータによるカム部材の回転運動を把持部材のカムフォロア(駆動ピン)における直線運動に変換したときの当該把持部材のストローク範囲が当該カム部材の半径に制限されているので短く、このストローク範囲を長くするにはカム部材の半径を大きくしなければならず、その場合には装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献1の電動グリッパ装置においては、カム部材、カムフォロアおよび把持部材を直線摺動させるための直線ガイドが必要であるため、その構成が複雑化および大型化するという問題があった。
【0007】
さらに、把持部材をクリーンルーム等のクリーンな環境で使用する場合、直線ガイドにグリス飛散対策としてカバーを付けたり、直線ガイドをジャバラ状のカバーで覆ったりすることが一般的であり、これらカバーの存在により更に大型化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、大型化することなく簡易な構成でありながら把持部材のストローク範囲を長くすることのできる電動グリッパ装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、同時に他の2枚と回転同期するように噛合された4枚の同期歯車(10、20、110、120)と、前記4枚の同期歯車(10、20、110、120)の何れかと駆動連結された駆動モータ(2)と、前記4枚の同期歯車(10、20、110、120)と一体になって回転するよう固定された4つの短アーム(6、23、106、123)と、前記4つの短アーム(6、23、106、123)の先端部において第1の連結軸(7、27、107、127)を介してそれぞれ回動自在にその先端部が支持された4つの長アーム(12、24、112、124)と、前記4つの長アーム(12、24、112、124)うち、互いに対となる2つの長アーム(12、24)、(112、124)の先端部同志を互いに回動自在に連結した第2の連結軸(32、132)と、前記第2の連結軸(32、132)に回動自在に支持された把持部材(HR、HQ)とを備えるようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、駆動モータ(2)により4枚の同期歯車(10、20、110、120)が一体になって回転すると、同期歯車(10、20、110、120)と一体化された4つの短アーム(6、23、106、123)の回転を、4つの長アーム(12、24、112、124)の先端部に支持された把持部材(HR、HQ)の直線移動にそのまま変換することができるので、大型化することなく簡易な構成でありながら把持部材のストローク範囲を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1参考例による片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置の正面構成を示す断面図である。
図2図1の片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置を下方から見たときの下面構成を示す断面図である。
図3図2の片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置を右側から見たときの側面構成を示す断面図である。
図4】リンク部のシール構造を示す断面図である。
図5】把持部材のリニアな動作範囲の説明に供する特性曲線図である。
図6本発明に係る双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置の正面構成を示す断面図である。
図7図6の双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置を下方から見たときの下面構成を示す断面図である。
図8図2の双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置を右側から見たときの側面構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
リンク式電動グリッパ装置は、片一方の把持部材だけを有する片ハンドタイプと、一対の把持部材を有する双ハンドタイプとがあり、片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置を本発明の参考例として説明し、双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置を本発明の実施の形態として説明する。
【0020】
参考例
<片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置の構成>
図1乃至図4に示すように、参考例における片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置1は、ステッピングモータ(以下、これを単にモータと呼ぶ。)2のモータ軸2aの基端部に歯車10が一体に固定され、当該歯車10に対して同一外径同一歯数の歯車20が噛合されており、これら2枚の同期歯車10、20が断面L字状のギアカバー3(図1)に収納されている。
【0021】
ギアカバー3は、2枚の同期歯車10、20を収納する収納空間が形成された収納部3aと、後述する把持部材HRと対向するように当該収納部3aの端部から突出した突出部3bとによって構成されている。
【0022】
この突出部3bは、把持部材HRが矢印AB方向へ移動されたときに、当該把持部材HRとの間でワーク(図示せず)を挟み付けて把持する役割を担うものであり、突出部3bおよび把持部材HRにより片ハンドタイプのワーク把持部WHDが構成される。
【0023】
歯車10と一体に固定されたモータ2のモータ軸2aは、ベアリング4を介してギアカバー3に回転自在に支持されている。このモータ2のモータ軸2aの先端部は、第1短手アーム6の基端部に形成されたモータ軸固定部6aの貫通孔に嵌合された状態で固定ピン6pにより一体に固定されている。すなわちモータ軸2aの回転に伴って第1短手アーム6も一体に回転される。なお、第1短手アーム6の長さは、歯車10の半径とほぼ等しい程度の長さに設定されている。
【0024】
第1短手アーム6の先端部に形成された回動支持部6bの貫通孔には第1の連結軸7の一端部が回動自在に支持され、当該第1の連結軸7の他端部が第1長手アーム12の基端部に形成された回動支持部12aの貫通孔に回動自在に支持されている。
【0025】
なお、第1長手アーム12の長さが第1短手アーム6よりも短い場合には、把持部材HRのストローク範囲が極めて狭くなり実用的ではなくなるため、第1長手アーム12の長さは、第1短手アーム6よりも長く設定されている。
【0026】
このように、第1短手アーム6および第1長手アーム12が第1の連結軸7に対して互いに回動自在に連結され、当該第1短手アーム6および当該第1長手アーム12により第1アーム部50が構成される。
【0027】
第1長手アーム12の先端部に形成された回動支持部12bの貫通孔には、把持部材HRと連結するための第2の連結軸32の一端部が回動自在に支持され、当該第2の連結軸32の他端部が把持部材HRの貫通孔に挿通された状態で回動自在に支持されている。
【0028】
歯車20の歯車軸20aは、その基端部においてベアリング35、36を介してギアカバー3に回転自在に支持されている。この歯車20の歯車軸20aの先端部は、第2短手アーム23の基端部に形成された歯車軸固定部23aの貫通孔に嵌合された状態で固定ピン23pにより一体に固定されている。
【0029】
すなわち歯車軸20aの回転に伴って第2短手アーム23も一体に回転される。但し、歯車10と歯車20とが噛合されており、第1短手アーム6の回転方向と第2短手アーム23の回転方向とは互いに逆向きとなる。なお、第2短手アーム23の長さについても、歯車20の半径とほぼ等しい程度の長さに設定されている。
【0030】
第2短手アーム23の先端部に形成された回動支持部23bの貫通孔には第1の連結軸27の一端部が回動自在に支持され、当該第1の連結軸27の他端部が第2長手アーム24の基端部に形成された回動支持部24aの貫通孔に回動自在に支持されている。
【0031】
この第2長手アーム24の長さは、第1長手アーム12と同じ長さである。なお、第2長手アーム24の長さが第2短手アーム23よりも短い場合にも、把持部材HRのストローク範囲が極めて狭くなり実用的ではなくなるため、第2長手アーム24の長さは、第2短手アーム23よりも長く設定されている。
【0032】
このように、第2短手アーム23および第2長手アーム24が第1の連結軸27に対して互いに回動自在に連結され、当該第2短手アーム23および当該第2長手アーム24により第2アーム部60が構成される。
【0033】
第2長手アーム24の先端部に形成された回動支持部24bの貫通孔には、第2の連結軸32の一端部と他端部との中間に位置する中間部が回動自在に支持されている。したがって第1長手アーム12および第2長手アーム24の先端部同志が第2の連結軸32を介してそれぞれ回動自在に連結される。この第2の連結軸32には把持部材HRが回動自在に支持されているため、第1長手アーム12の回動支持部12b、第2長手アーム24の回動支持部24bおよび把持部材HRが直線状に並ぶことになる。
【0034】
このように片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置1においては、第1アーム部50および第2アーム部60により把持部材HRを矢印AB方向へ移動させるためのリンク構造が形成されている。
【0035】
ところで、図4に示すように、第1の連結軸7に対して回動自在に支持された第1短手アーム6の回動支持部6bの内部には、例えばOリングからなる2つのシール部材38が設けられ、当該2つのシール部材38が当該第1の連結軸7の周面に対して取り付けられている。これにより、第1の連結軸7の周面のグリスや第1の連結軸7の回動動作により生じる摩耗粉が2つのシール部材38によって回動支持部6bの内部に封止される。
【0036】
同様に、第1の連結軸7に対して回動自在に支持された第1長手アーム12の回動支持部12aの内部にも、例えばOリングからなる2つのシール部材39が設けられ、当該2つのシール部材39が当該第1の連結軸7の周面に対して取り付けられている。これにより、第1の連結軸7の周面のグリスや第1の連結軸7の回動動作により生じる摩耗粉が2つのシール部材39によって回動支持部12bの内部に封止される。
【0037】
図示しないが、このようなシール部材については、第1の連結軸27に対して回動自在に支持された第2短手アーム23の回動支持部23bの内部、および第2長手アーム24の回動支持部24aの内部においても設けられており、当該シール部材が当該第1の連結軸27の周面に取り付けられている。
【0038】
同様に、図示しないが、第2の連結軸32に対して回動自在に支持された第1長手アーム12の回動支持部12b、第2長手アーム24の回動支持部24bおよび把持部材HRの内部に対しても当該シール部材が設けられており、当該シール部材が当該第2の連結軸32の周面に取り付けられている。
【0039】
<片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置の動作>
片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置1におけるモータ2のモータ軸2aが図中時計回り方向へ回転されると、モータ軸2aと一体化された歯車10が図中時計周り方向へ回転され、当該歯車10の回転とともに第1アーム部50における第1短手アーム6についても図中時計周り方向へ回転される。
【0040】
このとき同時に、歯車10と噛合された歯車20が当該歯車10と同期した状態で図中反時計周り方向へ回転されるので、当該歯車20の回転とともに第2アーム部60における第2短手アーム23についても図中反時計周り方向へ回転される。
【0041】
第1短手アーム6が図中時計周り方向へ回転され、かつ、第2短手アーム23が図中反時計周り方向へ回転されると、当該第1短手アーム6の回動支持部6bに回動自在に支持されている第1長手アーム12の回動支持部12b、および、当該第2短手アーム23の回動支持部23bに回動自在に支持されている第2長手アーム24の回動支持部24bが、ピッチ円共通接線L1に沿って矢印B方向へ移動されるので、把持部材HRについてもピッチ円共通接線L1に沿って矢印B方向へ水平移動される。
【0042】
つまり、この場合、ギアカバー3の突出部3bに対して把持部材HRが離反するように移動するので、当該突出部3bと把持部材HRとの間で挟み付けることにより把持していた外径把持タイプのワークを解放したり、突出部3bと把持部材HRとにより内径把持タイプのワークを把持することが可能となる。
【0043】
一方、リンク式電動グリッパ装置1におけるモータ2のモータ軸2aが図中反時計回り方向へ回転されると、モータ軸2aと一体化された歯車10が図中反時計周り方向へ回転され、当該歯車10の回転とともに第1アーム部50における第1短手アーム6についても図中反時計周り方向へ回転される。
【0044】
このとき同時に、歯車10と噛合された歯車20が当該歯車10と同期した状態で図中時計周り方向へ回転されるので、当該歯車20の回転とともに第2アーム部60における第2短手アーム23についても図中時計周り方向へ回転される。
【0045】
第1短手アーム6が図中反時計周り方向へ回転され、かつ、第2短手アーム23が図中時計周り方向へ回転されると、当該第1短手アーム6の回動支持部6bに回動自在に支持されている第1長手アーム12の回動支持部12b、および、当該第2短手アーム23の回動支持部23bに回動自在に支持されている第2長手アーム24の回動支持部24bが、ピッチ円共通接線L1に沿って矢印A方向へ移動されるので、把持部材HRについてもピッチ円共通接線L1に沿って矢印B方向へ水平移動される。
【0046】
つまり、この場合、ギアカバー3の突出部3bに対して把持部材HRが近接するように移動するので、当該突出部3bと把持部材HRとの間で外径把持タイプのワークを挟み付けて把持したり、これまで把持していた内径把持タイプのワークを解放することが可能となる。
【0047】
ところで、第1短手アーム6および第2短手アーム23が矢印AB方向とほぼ水平になり、かつ、当該第1短手アーム6の回動支持部6bおよび当該第2短手アーム23の回動支持部23bがギアカバー3の仮想位置UP1および仮想位置UP2の近傍を回転しているときには、当該第1短手アーム6および当該第2短手アーム23の回転が把持部材HRの矢印AB方向への移動に殆ど寄与しない。
【0048】
このため第1短手アーム6の回動支持部6bおよび第2短手アーム23の回動支持部23bが仮想位置UP1および仮想位置UP2の近傍を回転しているときには、把持部材HRのピッチ円共通接線L1に沿った移動速度は非常に遅くなる。
【0049】
これに対して、第1短手アーム6および第2短手アーム23が矢印CD方向とほぼ水平になり、かつ、当該第1短手アーム6の回動支持部6bおよび当該第2短手アーム23の回動支持部23bがギアカバー3の仮想位置HP1および仮想位置HP2の近傍を回転しているときには、当該第1短手アーム6および当該第2短手アーム23の回転が把持部材HRの矢印AB方向への移動に大きく寄与する。
【0050】
このため第1短手アーム6の回動支持部6bおよび第2短手アーム23の回動支持部23bが仮想位置HP1および仮想位置HP2の近傍を回転しているときには、把持部材HRのピッチ円共通接線L1に沿った移動速度は非常に速くなる。
【0051】
すなわち、図2および図5に示すように、例えば仮想位置UP1およびUP2を回動支持部6bおよび回動支持部23bの回転始点とした場合、第1短手アーム6および第2短手アーム23の最大動作角度範囲を約30度〜約150度とすると、仮想位置HP1および仮想位置HP2を中心とした約30度〜約120度までの動作角度範囲で回転するのであれば、第1短手アーム6および第2短手アーム23の回転が把持部材HRの矢印AB方向への移動に対してほぼリニアに伝達されることになる。
【0052】
したがって、第1短手アーム6および当該第2短手アーム23が仮想位置HP1および仮想位置HP2を中心とした約30度〜約120度の動作角度範囲で回転移動すれば、把持部材HRの変位がリニアになるので、この動作角度範囲で把持部材HRの使用条件を設定することが好ましい。
【0053】
なお、第1短手アーム6および第2短手アーム23が回転することにより把持部材HRが移動する際の仕事率Pは、当該把持部材HRの力Fおよび当該把持部材HRの移動速度Vにより、次の(式1)で表すことができる。
【0054】
P=F×V…………………………………………………………………………………(式1)
【0055】
ここで、第1短手アーム6および第2短手アーム23がギアカバー3の仮想位置UP1および仮想位置UP2の近傍を回転するときの把持部材HRの仕事率P1(P1=F1×V1)と、第1短手アーム6および第2短手アーム23がギアカバー3の仮想位置HP1および仮想位置HP2の近傍を回転するときの把持部材HRの仕事率P2(P2=F2×V2)とは等しく、次の(式2)の関係を満たす。
【0056】
P1(F1×V1)=P2(F2×V2)……………………………………………(式2)
【0057】
したがって、第1短手アーム6および第2短手アーム23が仮想位置UP1および仮想位置UP2の近傍を回転する場合、把持部材HRの移動速度V1が遅くなるため把持部材HRの力F1が大きくなり、第1短手アーム6および第2短手アーム23が仮想位置HP1および仮想位置HP2の近傍を回転する場合、把持部材HRの移動速度V2が速くなるため把持部材HRの力F2が小さくなる。
【0058】
かくして、第1短手アーム6および第2短手アーム23が仮想位置UP1および仮想位置UP2の近傍を回転する場合、すなわち第1短手アーム6、第2短手アーム23と、第1長手アーム12、第2長手アーム24とが第2の連結軸32を介して矢印AB方向に沿った直線に最も近くなる状態に伸ばされたとき、把持部材HRの移動速度V1が遅くなるものの力F1が大きくなるため、ギアカバー3の突出部3bと把持部材HRとの間のワーク把持部WHDの把持力が最も大きくなり、重たいワークを把持させるのに最適となる。
【0059】
一方、第1短手アーム6および第2短手アーム23が仮想位置HP1および仮想位置HP2の近傍を回転する場合、把持部材HRの移動速度V2が速くなるものの力F2が小さくなるため、ギアカバー3の突出部3bと把持部材HRとの間のワーク把持部WHDの把持力が小さくなり、軽いワークを把持させるのに最適となる。
【0060】
<片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置の効果>
片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置1では、歯車10に連結された第1アーム部50および歯車20に連結された第2アーム部60により把持部材HRをピッチ円共通接線L1に沿って矢印AB方向へ水平移動させるためのリンク構造が形成されるようにしたことにより、従来の電動グリッパ装置のような把持部材を直線摺動させるための直線ガイドが不要となり、その構成を簡素化および小型化することができる。
【0061】
また片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置1では、第1短手アーム6および第2短手アーム23の最大動作角度範囲を約30度〜約150度とし、歯車10、20の直径範囲近くまで把持部材HRのストローク範囲を拡げることができるので、従来のカム部材を用いた把持部材のストローク範囲が当該カム部材の半径範囲に制限されてしまうことに比べて大型化することなく把持部材HRのストローク範囲を延ばすことができる。
【0062】
さらに片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置1では、連結軸7、27、32に対する第1アーム部50および第2アーム部60の回動摺動部分からグリスや摩耗粉が出ることのないシール構造としたことにより、環境に優しくかつクリーンルーム等の使用条件の厳しい環境下においても使用することが可能となる。
【0063】
<本発明の実施の形態>
<双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置の構成>
図6乃至図8に示すように、本発明の第1の実施の形態における双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置200は、参考例における片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置1と、当該リンク式電動グリッパ装置1と左右対称形に構成された片ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置100とを備え、2つのリンク式電動グリッパ装置1および100を互いに歯車連結して同期回転させるようにしたものである。なお、図8においては、リンク式電動グリッパ装置200を図6中右側から見たときの側面構成であるため、リンク式電動グリッパ1によりリンク式電動グリッパ100が隠れてしまっている状態である。
【0064】
ここで、リンク式電動グリッパ装置1における第1アーム部50および第2アーム部60の構成については参考例において既に説明しているため、ここでは省略し、参考例とは異なる部分を中心に説明する。
【0065】
リンク式電動グリッパ装置200を構成しているリンク式電動グリッパ装置100は、リンク式電動グリッパ装置1のモータ2に固定された歯車10と噛合された歯車110を有し、当該歯車110に対して同一外径同一歯数の歯車120が噛合されている。この歯車120はリンク式電動グリッパ装置1の歯車20に対しても噛合されている。
【0066】
すなわちリンク式電動グリッパ装置100は、モータ2には接続されていないものの、リンク式電動グリッパ装置1の歯車10、20とリンク式電動グリッパ装置100の歯車110、120とが4枚噛合されているため、モータ2により歯車10が回転されると当該歯車10と同期して歯車110、120が同期回転する。この場合、歯車10および歯車120が同一方向へ回転し、この回転方向とは逆方向に歯車110および歯車20が回転する。なお、これら4枚の同期歯車10、20、110および120は全て矩形状のギアカバー70に収納されている。
【0067】
リンク式電動グリッパ装置1の歯車10と噛合されたリンク式電動グリッパ100の歯車110の歯車軸110aは、その基端部においてベアリング151、152を介してギアカバー70に回転自在に支持されている。
【0068】
この歯車110の歯車軸110aの先端部は、第3短手アーム106の基端部に形成された歯車軸固定部106aの貫通孔に嵌合された状態で固定ピン(図示せず)により一体に固定されている。すなわち歯車軸110aの回転に伴って第3短手アーム106も一体に回転される。但し、歯車10と歯車110とは噛合されているため、第1短手アーム6の回転方向と第3短手アーム106の回転方向とは互いに逆向きとなる。なお、第3短手アーム106の長さについても、歯車110の半径とほぼ等しい程度の長さに設定されている。
【0069】
第3短手アーム106の先端部に形成された回動支持部106bの貫通孔には第1の連結軸107の一端部が回動自在に支持され、当該第1の連結軸107の他端部が第3長手アーム112の基端部に形成された回動支持部112aの貫通孔に回動自在に支持されている。なお、第3長手アーム112の長さが第3短手アーム106よりも短い場合には、把持部材HQのストローク範囲が極めて狭くなり実用的ではなくなるため、第3長手アーム112の長さは、第3短手アーム106よりも長く設定されている。
【0070】
このように、第3短手アーム106および第3長手アーム112が第1の連結軸107に対して互いに回動自在に連結され、当該第3短手アーム106および当該第3長手アーム112により第3アーム部150が構成される。
【0071】
第3長手アーム112の先端部に形成された回動支持部112bの貫通孔には、把持部材HQと連結するための第2の連結軸132の一端部が回動自在に支持され、当該第2の連結軸132の他端部が把持部材HQの貫通孔に挿通された状態で回動自在に支持されている。
【0072】
リンク式電動グリッパ装置1の歯車20と噛合されたリンク式電動グリッパ装置100の歯車120の歯車軸120aは、その基端部においてベアリング(図示せず)を介してギアカバー70に回転自在に支持されている。この歯車120の歯車軸120aの先端部は、第4短手アーム123の基端部に形成された歯車軸固定部123aの貫通孔に嵌合された状態で固定ピン(図示せず)により一体に固定されている。すなわち歯車軸120aの回転に伴って第4短手アーム123も一体に回転される。但し、歯車20と歯車120とは噛合されているため、第2短手アーム23の回転方向と第4短手アーム123の回転方向とは互いに逆向きとなる。なお、第4短手アーム123の長さについても、歯車120の半径とほぼ等しい程度の長さに設定されている。
【0073】
第4短手アーム123の先端部に形成された回動支持部(図示せず)の貫通孔には第1の連結軸127の一端部が回動自在に支持され、当該第1の連結軸127の他端部が第4長手アーム124の基端部に形成された回動支持部124aの貫通孔に回動自在に支持されている。
【0074】
この第4長手アーム124の長さは、第3長手アーム112と同じ長さである。なお、第4長手アーム124の長さが第4短手アーム123よりも短い場合にも、把持部材HQのストローク範囲が極めて狭くなり実用的ではなくなるため、第4長手アーム124の長さは、第4短手アーム123よりも長く設定されている。
【0075】
このように、第4短手アーム123および第4長手アーム124が第1の連結軸127に対して互いに回動自在に連結され、当該第4短手アーム123および当該第4長手アーム124により第4アーム部160が構成される。
【0076】
第4長手アーム124の先端部に形成された回動支持部124bの貫通孔には、第2の連結軸132の一端部と他端部との中間に位置する中間部が回動自在に支持されている。したがって第3長手アーム112および第4長手アーム124の先端部同志が第2の連結軸132を介してそれぞれ回動自在に連結される。この第2の連結軸132には把持部材HQが回動自在に支持されているため、第3長手アーム112の回動支持部112b、第4長手アーム124の回動支持部124bおよび把持部材HQが直線状に並ぶことになる。この場合、把持部材HRおよび把持部材HQにより双ハンドタイプのワーク把持部WWHDが構成される。
【0077】
このように双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置200においては、第1アーム部50および第2アーム部60により把持部材HRを矢印AB方向へ移動させるためのリンク構造が形成されるとともに、第3アーム部150および第4アーム部160により把持部材HQを矢印AB方向へ移動させるためのリンク構造が形成されている。
【0078】
ところで、第1の連結軸107に対して回動自在に支持された第3短手アーム106の回動支持部106bの内部にも、図4に示したような例えばOリングからなる2つのシール部材が設けられ、当該2つのシール部材が当該第1の連結軸107の周面に対して取り付けられている。これにより、第1の連結軸107の周面のグリスや第1の連結軸107の回動動作により生じる摩耗粉が2つのシール部材によって回動支持部106bの内部に封止される。
【0079】
同様に、第1の連結軸107に対して回動自在に支持された第3長手アーム112の回動支持部112aの内部にも、図4に示したようなOリングからなる2つのシール部材が設けられ、当該2つのシール部材が当該第1の連結軸107の周面に対して取り付けられている。
【0080】
図示しないが、このようなシール部材については、第1の連結軸127に対して回動自在に支持された第4短手アーム123の回動支持部123bの内部、および第4長手アーム124の回動支持部124aの内部においても設けられており、当該シール部材が当該第1の連結軸127の周面に取り付けられている。
【0081】
同様に、図示しないが、第2の連結軸132に対して回動自在に支持された第2長手アーム112の回動支持部112b、第4長手アーム124の回動支持部124bおよび把持部材HQの内部に対しても当該シール部材が設けられており、当該シール部材が当該第2の連結軸132の周面に取り付けられている。
【0082】
<双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置の動作>
双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置200におけるモータ2のモータ軸2aが図中時計回り方向へ回転されると、モータ軸2aと一体化された歯車10が図中時計周り方向へ回転され、当該歯車10の回転とともに第1アーム部50における第1短手アーム6についても図中時計周り方向へ回転される。
【0083】
このとき同時に、歯車10と噛合された歯車20が当該歯車10と同期した状態で図中反時計周り方向へ回転されるので、当該歯車20の回転とともに第2アーム部60における第2短手アーム23についても図中反時計周り方向へ回転される。
【0084】
歯車10と噛合連結された歯車110については図中反時計周り方向へ回転され、当該歯車110の回転とともに第3アーム部150における第3短手アーム106についても図中反時計周り方向へ回転される。
【0085】
同時に、歯車110および歯車20と噛合された歯車120が当該歯車110および歯車20と同期した状態で図中時計周り方向へ回転されるので、当該歯車120の回転とともに第4アーム部160における第4短手アーム123についても図中時計周り方向へ回転される。
【0086】
第1短手アーム6が図中時計周り方向へ回転され、かつ、第2短手アーム23が図中反時計周り方向へ回転されると、当該第1短手アーム6の回動支持部6bに回動自在に支持されている第1長手アーム12の回動支持部12b、および、当該第2短手アーム23の回動支持部23bに回動自在に支持されている第2長手アーム24の回動支持部24bが、ピッチ円共通接線L1に沿って矢印B方向へ移動されるので、把持部材HRについてもピッチ円共通接線L1に沿って矢印B方向へ水平移動される。
【0087】
第3短手アーム106が図中反時計周り方向へ回転され、かつ、第4短手アーム123が図中時計周り方向へ回転されると、当該第3短手アーム106の回動支持部106bに回動自在に支持されている第3長手アーム112の回動支持部112b、および、当該第4短手アーム123の回動支持部123bに回動自在に支持されている第4長手アーム124の回動支持部124bが、ピッチ円共通接線L1に沿って矢印A方向へ移動されるので、把持部材HQについてもピッチ円共通接線L1に沿って矢印A方向へ水平移動される。
【0088】
つまり、この場合、把持部材HRおよび把持部材HQが矢印AB方向へ互いに離反するように移動するので、把持部材HRおよびHQにより挟み付けた状態で把持していた外径把持タイプのワークを解放したり、内径把持タイプのワークを把持することが可能となる。
【0089】
一方、リンク式電動グリッパ装置1におけるモータ2のモータ軸2aが図中反時計回り方向へ回転されると、モータ軸2aと一体化された歯車10が図中反時計周り方向へ回転され、当該歯車10の回転とともに第1アーム部50における第1短手アーム6についても図中反時計周り方向へ回転される。
【0090】
このとき同時に、歯車10と噛合された歯車20が当該歯車10と同期した状態で図中時計周り方向へ回転されるので、当該歯車20の回転とともに第2アーム部60における第2短手アーム23についても図中時計周り方向へ回転される。
【0091】
歯車10と噛合連結された歯車110については図中時計周り方向へ回転され、当該歯車110の回転とともに第3アーム部150における第3短手アーム106についても図中時計周り方向へ回転される。
【0092】
同時に、歯車110および歯車20と噛合された歯車120が当該歯車110および歯車20と同期した状態で図中反時計周り方向へ回転されるので、当該歯車120の回転とともに第4アーム部160における第4短手アーム123についても図中反時計周り方向へ回転される。
【0093】
第1短手アーム6が図中反時計周り方向へ回転され、かつ、第2短手アーム23が図中時計周り方向へ回転されると、当該第1短手アーム6の回動支持部6bに回動自在に支持されている第1長手アーム12の回動支持部12b、および、当該第2短手アーム23の回動支持部23bに回動自在に支持されている第2長手アーム24の回動支持部24bが、ピッチ円共通接線L1に沿って矢印A方向へ移動されるので、把持部材HRについてもピッチ円共通接線L1に沿って矢印A方向へ水平移動される。
【0094】
第3短手アーム106が図中時計周り方向へ回転され、かつ、第4短手アーム123が図中反時計周り方向へ回転されると、当該第3短手アーム106の回動支持部106bに回動自在に支持されている第3長手アーム112の回動支持部112b、および、当該第4短手アーム123の回動支持部123bに回動自在に支持されている第4長手アーム124の回動支持部124bが、ピッチ円共通接線L1に沿って矢印B方向へ移動されるので、把持部材HQについてもピッチ円共通接線L1に沿って矢印B方向へ水平移動される。
【0095】
つまり、この場合、把持部材HRおよび把持部材HQが矢印AB方向へ互いに近接するように移動するので、把持していた内径把持タイプのワークを解放したり、外径把持タイプのワークを外側から挟み付けた状態で把持することが可能となる。
【0096】
ところで、第3短手アーム106および第4短手アーム123が矢印AB方向と水平になり、かつ、当該第3短手アーム106の回動支持部106bおよび当該第4短手アーム123の回動支持部123bがギアカバー70の仮想位置UP3および仮想位置UP4の近傍を回転しているときは、当該第3短手アーム106および当該第4短手アーム123の回転が把持部材HQの矢印AB方向への移動に殆ど寄与しない。
【0097】
このため第3短手アーム106の回動支持部106bおよび第4短手アーム123の回動支持部123bが仮想位置UP3および仮想位置UP4の近傍を回転しているときには、把持部材HQのピッチ円共通接線L1に沿った移動速度は非常に遅くなる。
【0098】
これに対して、第3短手アーム106および第4短手アーム123が矢印CD方向と水平になり、かつ、当該第3短手アーム106の回動支持部106bおよび当該第4短手アーム123の回動支持部123bがギアカバー70の仮想位置HP3および仮想位置HP4の近傍を回転移動しているときには、当該第3短手アーム106および当該第4短手アーム123の回転が把持部材HQの矢印AB方向への移動に大きく寄与する。
【0099】
このため第3短手アーム106の回動支持部106bおよび第4短手アーム123の回動支持部123bが仮想位置HP3および仮想位置HP4の近傍を回転移動しているときには、把持部材HQのピッチ円共通接線L1に沿った移動速度は非常に速くなる。
【0100】
すなわち、リンク式電動グリッパ装置100は、リンク式電動グリッパ装置1と同様に、例えば仮想位置UP3およびUP4を回動支持部106bおよび回動支持部123bの回転始点とした場合、第3短手アーム106および第4短手アーム123の最大動作角度範囲を約30度〜約150度とすると、仮想位置HP3および仮想位置HP4を中心とした約30度〜約120度までの動作角度範囲で回転するのであれば、第3短手アーム106および第4短手アーム123の回転が把持部材HQの矢印AB方向への移動にほぼリニアに伝達されることになる。
【0101】
したがって、第3短手アーム106および当該第4短手アーム123が仮想位置HP3および仮想位置HP4を中心とした約30度〜約120度の動作角度範囲で回転すれば、把持部材HQの変位がリニアになるので、この動作角度範囲で把持部材HQの使用条件を設定することが望ましい。
【0102】
なお、リンク式電動グリッパ装置1と同様に、第3短手アーム106および第4短手アーム123が回転することにより把持部材HQが移動する際の仕事率Pは、当該把持部材HQの力Fおよび当該把持部材HQの移動速度Vにより、上述した(式1)で表すことができるとともに、第3短手アーム106および第4短手アーム123が仮想位置UP3および仮想位置UP4の近傍を回転するときの把持部材HQの仕事率P3(P3=F3×V3)と、第3短手アーム106および第4短手アーム123が仮想位置HP3および仮想位置HP4の近傍を回転するときの把持部材HQの仕事率P4(P4=F4×V4)とは等しく、次の(式3)の関係を満たす。
【0103】
P3(F3×V3)=P4(F4×V4)……………………………………………(式3)
【0104】
したがって、第3短手アーム106および第4短手アーム123が仮想位置UP3および仮想位置UP4の近傍を回転する場合、把持部材HQの移動速度V3が遅くなるため把持部材HQの力F3が大きくなり、第3短手アーム106および第4短手アーム123が仮想位置HP3および仮想位置HP4の近傍を回転する場合、把持部材HQの移動速度V4が速くなるため把持部材HQの力F4が小さくなる。
【0105】
かくして、第3短手アーム106および第4短手アーム123が仮想位置UP3および仮想位置UP4の近傍を回転する場合、すなわち第3短手アーム106、第4短手アーム123と、第3長手アーム112、第4長手アーム124とが第2の連結軸132を介して矢印AB方向に沿った直線に最も近くなる状態に伸ばされたとき、把持部材HQの移動速度V3が遅くなるものの力F3が大きくなるため、把持部材HRと把持部材HQとの間のワーク把持部WWHDの把持力が最も大きくなり、重たいワークを把持させるのに最適となる。
【0106】
一方、第3短手アーム106および第4短手アーム123がギアカバー70の仮想位置HP3および仮想位置HP4の近傍を回転する場合、把持部材HQの移動速度V4が速くなるものの力F4が小さくなるため、把持部材HRと把持部材HQとの間のワーク把持部WWHDの把持力が小さくなり、軽いワークを把持させるのに最適となる。
【0107】
<双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置の効果>
双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置200では、歯車10に連結された第1アーム部50および歯車20に連結された第2アーム部60が共通の把持部材HRをピッチ円共通接線L1に沿って矢印AB方向へ水平移動させ得るリンク構造とするとともに、歯車110に連結された第3アーム部150および歯車120に連結された第4アーム部160が共通の把持部材HQをピッチ円共通接線L1に沿って矢印BA方向へ水平移動させ得るリンク構造としたことにより、従来のような把持部材を直線摺動させるための直線ガイドが不要となり、その構成を簡素化および小型化することができる。
【0108】
また双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置200では、第1短手アーム6および第2短手アーム23の最大動作角度範囲を約30度〜約150度とし、かつ、第3短手アーム106および第4短手アーム123の最大動作角度範囲を約30度〜約150度とし、歯車10、20、110および120の直径範囲近くまで把持部材HR、HQのストローク範囲を拡げることができるので、従来のカム部材を用いた把持部材のストローク範囲が当該カム部材の半径範囲に制限されてしまうことに比べて大型化することなく把持部材HR、HQのストローク範囲を延ばすことができる。
【0109】
さらに双ハンドタイプのリンク式電動グリッパ装置200では、第1アーム部50、第2アーム部60、第3アーム部150および第4アーム部160の回動摺動部分からグリスや摩耗粉が出ることのない構造としたことにより、環境に優しくかつクリーンルーム等の使用条件の厳しい環境下において使用することが可能となる。
【0110】
<他の実施の形態>
なお、上述した実施の形態においては、第1短手アーム6、第2短手アーム23、第3短手アーム106および第4短手アーム123の長さを歯車10、20、110および120の半径とほぼ等しい程度の長さにするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、歯車10、20、110および120の半径よりも長くしたり、短くするようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本願発明の電動グリッパ装置は、FA組立工程における製品の自動組立、部品搬送、検査等において利用するようにした場合について述べた。しかしながら、これに限らず、食品トッピング工程、光学機器アライメント自動化工程、医療用および創薬市場のロボット先端グリッパに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1、100、200…リンク式電動グリッパ装置、2…モータ、2a…モータ軸、10、20、110、120…歯車(同期歯車)、3、70…ギアカバー、3a…収納部、3b…突出部、4、35、36、151、152…ベアリング、6…第1短手アーム(短アーム)、6b…回動支持部、7、27、107、127…第1の連結軸、12…第1長手アーム(長アーム)、12a、12b…回動支持部、23…第2短手アーム(短アーム)、23a…歯車軸固定部、23b…回動支持部、24…第2長手アーム(長アーム)、24a、24b…回動支持部、32、132…第2の連結軸、50…第1アーム部、60…第2アーム部、38、39…シール部材、106…第3短手アーム、106a、106b…回動支持部、112…第3長手アーム、112a、112b…回動支持部、123…第4短手アーム、123a…歯車軸固定部、123b…回動支持部、124…第4長手アーム、124a、124b…回動支持部、150…第3アーム部、160…第4アーム部、200…リンク式電動グリッパ装置、HR、HQ…把持部材、WHD、WWHD…ワーク把持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8