特許第6267616号(P6267616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6267616-電子制御装置の取り付け構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267616
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】電子制御装置の取り付け構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20180115BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180115BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20180115BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01L23/36 A
   H05K7/20 E
   H05K7/20 B
   H05K5/00 B
   B60R16/02 610A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-198034(P2014-198034)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-72329(P2016-72329A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】山 一
(72)【発明者】
【氏名】堀切 浩次
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−224065(JP,A)
【文献】 特開2003−031978(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3161357(JP,U)
【文献】 特開2003−014246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R16/00 −17/02
H01L23/29
23/34 −23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H05K 5/00 − 5/06
7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底ケース(1)と回路基板(2)とを備え、
有底ケース(1)の上側にケース入口(4)が開口されるとともに、下側に底壁(6)が設けられ、回路基板(2)に電子部品(5)が実装され、有底ケース(1)内に回路基板(2)と電子部品(5)が収容された電子制御装置の取り付け構造であって、
電子制御装置は、ヒートシンク(3)を備え、有底ケース(1)の底壁(6)に対向する回路基板(2)の下面(2a)に電子部品(5)が実装され、回路基板(2)の上面(2b)にヒートシンク(3)の吸熱板(3a)が接し、吸熱板(3a)から上向きに放熱フィン(3b)が突出され、回路基板(2)と電子部品(5)とが、ヒートシンク(3)の吸熱板(3a)や放熱フィン(3b)の基部(3c)とともに、有底ケース(1)内に充填されたポッティング材(8)に埋設され、放熱フィン(3b)の先端部(3d)がポッティング材(8)の上面から突出され、ケース入口(4)から有底ケース(1)外に向けて露出され、
回路基板(2)に取り付けられたコネクタ(9)が有底ケース(1)の周壁(10)と直交する向きに導出され、有底ケース(1)の周壁(10)が底壁(6)に対して鋭角(Θ)をなす向きに方向付けられ、
有底ケース(1)の底壁(6)を装置取り付け座(7)に沿わせて、上記電子制御装置が水平な装置取り付け座(7)に取り付けられることにより、コネクタ(9)の導出方向が有底ケース(1)の周壁(18)から斜め上向きに方向付けられているとともに、ポッティング材(8)の上面と放熱フィン(3b)とがコネクタ(9)の導出方向と反対方向に下り傾斜している、ことを特徴とする電子制御装置の取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子制御装置として、有底ケースと回路基板とを備え、有底ケースの上側にケース入口が開口されるとともに、下側に底壁が設けられ、回路基板に電子部品が実装され、有底ケース内に回路基板と電子部品が収容されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の電子制御装置によれば、有底ケースにより、回路基板やこの回路基板に実装された電子部品を、水や塵埃から保護することができる利点がある。
【0004】
しかし、特許文献1のものでは、有底ケース内は中空で、ケース蓋が有底ケースに溶着または接着で液密に固定されているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−36147号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 電子制御装置の製造が煩雑になる。
特許文献1のものでは、有底ケース内は中空で、ケース蓋が有底ケースに溶着または接着で液密に固定されているため、ケース蓋と有底ケースの密閉作業に手間がかかり、電子制御装置の製造が煩雑になる。
【0007】
本発明の課題は、製造を簡素化できる電子制御装置の取り付け構造を提供することにある。
【0008】
本発明の発明者らは、研究の結果、回帰基板と電子部品とヒートシンクとを有底ケース内に充填されたポッティング材に埋設すれば、ケース蓋が不要になり、溶接や接着等によるケース蓋と有底ケースの密閉作業を省略できることに着目し、この発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)に例示するように、有底ケース(1)と回路基板(2)とを備え、
有底ケース(1)の上側にケース入口(4)が開口されるとともに、下側に底壁(6)が設けられ、回路基板(2)に電子部品(5)が実装され、有底ケース(1)内に回路基板(2)と電子部品(5)が収容された電子制御装置の取り付け構造であって、
図1(A)に例示するように、電子制御装置は、ヒートシンク(3)を備え、有底ケース(1)の底壁(6)に対向する回路基板(2)の下面(2a)に電子部品(5)が実装され、回路基板(2)の上面(2b)にヒートシンク(3)の吸熱板(3a)が接し、吸熱板(3a)から上向きに放熱フィン(3b)が突出され、回路基板(2)と電子部品(5)とが、ヒートシンク(3)の吸熱板(3a)や放熱フィン(3b)の基部(3c)とともに、有底ケース(1)内に充填されたポッティング材(8)に埋設され、放熱フィン(3b)の先端部(3d)がポッティング材(8)の上面から突出され、ケース入口(4)から有底ケース(1)外に向けて露出され、
図1(A)に例示するように、回路基板(2)に取り付けられたコネクタ(9)が有底ケース(1)の周壁(10)と直交する向きに導出され、有底ケース(1)の周壁(10)が底壁(6)に対して鋭角(Θ)をなす向きに方向付けられ、
図1(A)に例示するように、有底ケース(1)の底壁(6)を装置取り付け座(7)に沿わせて、上記電子制御装置が水平な装置取り付け座(7)に取り付けられることにより、コネクタ(9)の導出方向が有底ケース(1)の周壁(18)から斜め上向きに方向付けられているとともに、ポッティング材(8)の上面と放熱フィン(3b)とがコネクタ(9)の導出方向と反対方向に下り傾斜している、ことを特徴とする電子制御装置の取り付け構造。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 電子制御装置の製造を簡素化することができる。
図1(A)に例示するように、回路基板(2)と電子部品(5)とが、有底ケース(1)内に充填されたポッティング材(8)に埋設されているため、回路基板(2)と電子部品(5)に対する水や塵埃の接触がポッティング材(8)で阻止され、ケース蓋が不要となり、溶接や接着等によるケース蓋と有底ケース(1)の密閉作業を省略することができ、電子制御装置の製造を簡素化することができる。
なお、回路基板(2)や電子部品(5)の発熱は、ヒートシンク(3)を介して有底ケース(1)外に放熱されるため、回路基板(2)や電子部品(5)の放熱に支障は生じない。
【0012】
《効果》 回路基板や電子部品に対する防水防塵機能と防振機能が高い。
図1(A)に例示するように、回路基板(2)と電子部品(5)とが、ヒートシンク(3)の吸熱板(3a)や放熱フィン(3b)の基部(3c)とともに、有底ケース(1)内に充填されたポッティング材(8)に埋設されているため、水分や塵埃がヒートシンク(3)を伝って回路基板(2)や電子部品(5)に接近するおそれもなく、回路基板(2)や電子部品(5)に対する防水防塵機能が高い。また、有底ケース(1)やヒートシンク(3)の振動がポッティング材(8)で吸収されるため、回路基板(2)や電子部品(5)に対する防振機能が高い。
【0013】
《効果》 コネクタへのケーブルプラグ等の接続が容易になる。
図1(A)に例示するように、有底ケース(1)の周壁(10)が底壁(6)に対して鋭角(Θ)をなす向きに方向付けられ、有底ケース(1)の底壁(6)を装置取り付け座(7)に沿わせて、電子制御装置が水平な装置取り付け座(7)に取り付けられることにより、コネクタ(9)の導出方向が有底ケース(1)の周壁(18)から斜め上向きに方向付けられている場合には、コネクタ(9)へのケーブルプラグ等の接続を、装置取り付け座(7)から離れたコネクタ(9)の斜め上の位置から行うことができ、接続が容易になる。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る電子制御装置の取り付け構造を説明する図 で、図1(A)は電子制御装置とその取り付け状態を示す縦断側面図、図1(B)は電子制御装置の製造方法を説明する縦断側面図である。
図2図1の電子制御装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1(A)は本発明の実施形態に係る電子制御装置の取り付け構造を説明する図であり、この実施形態では、産業用ディーゼルエンジンのエンジンECUの取り付け構造について説明する。
【0017】
まず、この実施形態で用いる電子制御装置について説明する。
この電子制御装置は、エンジンECUである。エンジンECUは、エンジン電子制御ユニットの略称であり、運転条件に応じて、エンジンの燃料噴射量や噴射時期を調節して、エンジン回転数を制御するガバナ機能等を備えたマイコンである。
図1(A)に示すように、エンジンECUは、有底ケース(1)と回路基板(2)とを備えている。
このエンジンECUは、有底ケース(1)の上側にケース入口(4)が開口されるとともに、下側に底壁(6)が設けられ、回路基板(2)に電子部品(5)が実装され、有底ケース(1)内に回路基板(2)と電子部品(5)が収容されている。
【0018】
このエンジンECUを用いる産業用ディーゼルエンジンには、トラクタやバックホー等の農業機械や建設機械に搭載するエンジンを例示することができる。
電子制御装置は、ACUであってもよい。ACUは、後処理電子制御ユニットの略称であり、排気条件に応じて、尿素SCRシステムの尿素水の噴射量や噴射時期を調節して、排気の浄化を制御するマイコンである。SCRとは、選択的触媒還元の略称である。
図1(A)(B),2に示すように、有底ケース(1)は、側面視が台形、平面視が矩形の合成樹脂製のケースである。回路基板(2)にはコネクタ(9)が取り付けられ、コネクタ(9)が有底ケース(1)の周壁(10)の切欠(10a)に嵌合されることにより、回路基板(2)が有底ケース(1)に支持されている。電子部品(5)には、中央演算処理装置やメモリ等がある。
【0019】
図1(A)に示すように、この電子制御装置は、ヒートシンク(3)を備えている。この電子制御装置では、有底ケース(1)の底壁(6)に対向する回路基板(2)の下面(2a)に電子部品(5)が実装され、回路基板(2)の上面(2b)にヒートシンク(3)の吸熱板(3a)が接し、吸熱板(3a)から上向きに放熱フィン(3b)が突出され、回路基板(2)と電子部品(5)とが、ヒートシンク(3)の吸熱板(3a)や放熱フィン(3b)の基部(3c)とともに、有底ケース(1)内に充填されたポッティング材(8)に埋設され、放熱フィン(3b)の先端部(3d)がポッティング材(8)の上面から突出され、ケース入口(4)から有底ケース(1)外に向けて露出されている。
ポッティング材(8)には、硬化型で熱伝導性電気絶縁性の樹脂が用いられている。
【0020】
図1(A)に示すように、この電子制御装置では、回路基板(2)に取り付けられたコネクタ(9)が有底ケース(1)の周壁(10)と直交する向きに導出され、有底ケース(1)の周壁(10)が底壁(6)に対して鋭角(Θ)をなす向きに方向付けられている。
【0021】
図1(A)に示すように、この取り付け構造では、有底ケース(1)の底壁(6)を装置取り付け座(7)に沿わせて、上記電子制御装置が水平な装置取り付け座(7)に取り付けられることにより、コネクタ(9)の導出方向が有底ケース(1)の周壁(18)から斜め上向きに方向付けられているとともに、ポッティング材(8)の上面と放熱フィン(3b)とがコネクタ(9)の導出方向と反対方向に下り傾斜している。
装置取り付け座(7)は、エンジン搭載機械のボンネット内に収容された支持基板であり、電子制御装置は、有底ケース(1)の底壁(6)を支持基板に接着して取り付けられる。
【0022】
次に、電子制御装置の製造方法について説明する。
図1(B)に示すように、この製造方法では、ケース入口(4)から電子部品(5)と回路基板(2)とヒートシンク(3)とが有底ケース(1)内に収容される。
次に、上側のケース入口(4)から有底ケース(1)に液状のポッティング材(8)が注入され、電子部品(5)と回路基板(2)とヒートシンク(3)とがポッティング材(8)に浸漬された後、ポッティング材(8)が硬化される。
このため、有底ケース(1)内のポッティング材(8)の充填状態がケース入口(4)から確認され、ポッティング材(8)が有底ケース(1)から溢れる失敗が起こりにくく、有底ケース(1)内へのポッティング材(8)の充填作業が容易になる。
【符号の説明】
【0023】
(1) 有底ケース
(2) 回路基板
(2a) 下面
(2b) 上面
(3) ヒートシンク
(3a) 吸熱板
(3b) 放熱フィン
(3c) 基部
(3d) 先端部
(Θ) 鋭角
(4) ケース入口
(5) 電子部品
(6) 底壁
(7) 装置取り付け座
(8) ポッティング材
(9) コネクタ
(10) 周壁
図1
図2