(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バルーンが膨張しているとき、バルーンが膨張しているときのバルーンアセンブリの断面積の少なくとも約40%の断面積を、体液管腔が有する、請求項1記載のカテーテル。
バルーンが膨張しているとき、バルーンが膨張しているときのバルーンの下流で適度を超える圧力低下を誘発しない断面積を、体液管腔が有する、請求項1記載のカテーテル。
【発明の概要】
【0002】
処置の過程で処置部位を生理的方向に通過する体液(たとえば血液)の流れを維持することが望まれる体内の通路に管腔内プロテーゼ(たとえばステント、グラフト、ステントグラフト、人工弁など)を埋め込むために使用することができるバルーンカテーテルが開発されている。バルーンカテーテルは体液管腔を含み、バルーンカテーテルのバルーンが膨張すると、通常は処置される管腔を通過して移動する体液がこの体液管腔を通過できる。体液管腔は、体液が体液管腔を通過して流れるとき体液流を一つの方向に維持するための弁を備えることができる。弁は、圧力および/または流量の変化とともに開閉する。
【0003】
第一の局面において、基端および末端を有する細長い管状部材を備えるカテーテルが提供される。バルーンアセンブリが細長い管状部材の末端に配置されている。バルーンアセンブリは、膨張状態および非膨張状態を有し、通常、膨張状態と非膨張状態との間で繰り返し切り換えることができるバルーンを備える。バルーンは基端および末端を有する。バルーンは、膨張状態にあるとき、バルーンを通過して縦方向に延び、バルーンの基端およびバルーンの末端で開口した体液管腔を備える。バルーンはさらに、体液管腔の壁または側面を形成する内面および体液管腔とは反対向きのバルーンの側面で形成された外面を備える。バルーンが膨張状態にあるとき、バルーンの外面はバルーンの基端から末端まで連続する。細長い管状部材はさらに、バルーンと流体連通したバルーン膨張管腔を備える。
【0004】
もう一つの局面において、末端、基端および外面を有するバルーンを有する膨張性バルーンアセンブリを備える医療装置が提供される。バルーンは、膨張状態および非膨張状態を有し、通常、膨張状態と非膨張状態との間で繰り返し切り換えることができる。バルーンは、膨張状態にあるとき、バルーンを通過して縦方向に延び、バルーンの基端およびバルーンの末端で開口した体液管腔を備える。バルーンはさらに、体液管腔の壁または側面を形成する内面および体液管腔とは反対向きのバルーンの側面で形成された外面を備える。管腔内プロテーゼ、たとえばステントまたはグラフト、たとえば人工弁をその上に有するステントまたはグラフトがバルーンアセンブリを包囲し、バルーンの外面に隣接する。
【0005】
さらに別の局面において、流動する流体を含む体内導管、たとえば動脈もしくは静脈または心臓中の導管、たとえば左心室または右心室流入路もしくは流出路に管腔内プロテーゼを埋め込むのに適した管腔内プロテーゼインプラント装置が提供される。管腔内プロテーゼインプラント装置は、膨張状態および非膨張状態を有し、第一端、第二端および外面を有するバルーンを備える膨張性バルーンアセンブリを備える。管腔内プロテーゼがバルーンアセンブリを包囲し、バルーンの外面に隣接して位置する。バルーンアセンブリは、バルーンが膨張状態にあるとき、たとえば、バルーンが体内導管中で膨張してバルーンの外面が体内導管の壁に対してシールを形成しているとき、流体(たとえば体内導管中の体液)をバルーンの第一端からバルーンの第二端まで通過させるように構成されている。いくつかの態様において、バルーンは、膨張状態にあるとき、流体がバルーンの第二端からバルーンの第一端まで通過することを防ぐように構成されている。
【0006】
上記局面のいずれかの特定の態様において、体液管腔は、体液管腔弁、たとえば第一の位置と第二の位置との間で動くことができる、リーフレットを備える弁を備える。体液管腔弁は、第二の位置よりも第一の位置においてより大きな程度に体液管腔を閉塞する。特定の態様において、体液管腔弁は、流体が体液管腔を通って第一の方向に流れることを実質的に防ぐ。
【0007】
管腔内プロテーゼを有するいくつかの態様において、管腔内プロテーゼは、バルーンが非膨張状態にあるとき、バルーンの外面にクリンピングされる。いくつかの態様において、管腔内プロテーゼはステントを含む。いくつかの態様において、管腔内プロテーゼは人工弁、たとえば人工大動脈弁または僧帽弁を含む。
[本発明1001]
基端および末端を有する細長い管状部材、
該細長い管状部材の末端に配置された膨張性バルーンアセンブリであって、該膨張性バルーンアセンブリが、膨張状態および非膨張状態を有するバルーンを含み、該バルーンが、基端、末端および外面を備えるものである、バルーンアセンブリ、ならびに
該バルーンと流体連通したバルーン膨張管腔、
を備え、バルーンが膨張状態にあるとき、バルーンの外面がバルーンの基端からバルーンの末端まで連続し、かつ、膨張状態にあるとき、バルーンがバルーンの基端およびバルーンの末端で開口した体液管腔を備える、カテーテル。
[本発明1002]
第一の位置と第二の位置との間で動くことができる体液管腔弁をさらに含み、該体液管腔弁が、該第二の位置よりも該第一の位置でより大きな程度に体液管腔を閉塞する、本発明1001のカテーテル。
[本発明1003]
体液管腔弁が第一の位置にあるとき、流体が体液管腔を通って第一の方向に流れることを、体液管腔弁が実質的に防ぐ、本発明1002のカテーテル。
[本発明1004]
体液管腔弁がリーフレットを備える、本発明1002のカテーテル。
[本発明1005]
体液管腔弁が三つのリーフレットを備える、本発明1004のカテーテル。
[本発明1006]
ガイドワイヤ管腔をさらに備える、本発明1001のカテーテル。
[本発明1007]
バルーンアセンブリが、少なくとも二つのバルーンを備える、本発明1001のカテーテル。
[本発明1008]
バルーン膨張管腔が、少なくとも一つの開口を介してバルーンと流体連通している、本発明1001のカテーテル。
[本発明1009]
バルーンが膨張しているとき、バルーンが膨張しているときのバルーンアセンブリの断面積の少なくとも約40%の断面積を、体液管腔が有する、本発明1001のカテーテル。
[本発明1010]
バルーンが膨張しているとき、バルーンが膨張しているときのバルーンの下流で適度を超える圧力低下を誘発しない断面積を、体液管腔が有する、本発明1001のカテーテル。
[本発明1011]
基端、末端および外面を備え、膨張状態および非膨張状態を有するバルーン
を備える膨張性バルーンアセンブリ、ならびに
該バルーンアセンブリを包囲し、バルーンの外面に隣接する管腔内プロテーゼ
を含み、該バルーンが、膨張状態にあるとき、該バルーンの基端および該バルーンの末端で開口した体液管腔を備える、医療装置。
[本発明1012]
第一の位置と第二の位置との間で動くことができる体液管腔弁をさらに含み、該体液管腔弁が、第二の位置よりも第一の位置でより大きな程度に体液管腔を閉塞する、本発明1011の医療装置。
[本発明1013]
体液管腔弁が、流体が体液管腔を通って第一の方向に流れることを実質的に防ぐ、本発明1012の医療装置。
[本発明1014]
体液管腔弁がリーフレットを備える、本発明1012の医療装置。
[本発明1015]
バルーンが膨張状態にあるとき、該バルーンの外面が、バルーンの基端からバルーンの末端まで連続する、本発明1012の医療装置。
[本発明1016]
バルーンが体液管腔を画定する内面を含み、医療装置が該バルーンの内面に沿って延びる膨張性支持要素をさらに備える、本発明1011の医療装置。
[本発明1017]
膨張性支持要素が、支持膨張管腔と流体連通したらせん細管を備える、本発明1016の医療装置。
[本発明1018]
膨張性支持要素が、支持膨張管腔と流体連通した少なくとも二つのらせん細管を備える、本発明1016の医療装置。
[本発明1019]
バルーンが膨張しているとき、バルーンが膨張しているときのバルーンアセンブリの断面積の少なくとも約40%の断面積を、体液管腔が有する、本発明1011の医療装置。
[本発明1020]
管腔内プロテーゼが人工弁を備える、本発明1011の医療装置。
[本発明1021]
管腔内プロテーゼが人工大動脈弁を備える、本発明1011の医療装置。
[本発明1022]
管腔内プロテーゼが人工僧帽弁を備える、本発明1011の医療装置。
[本発明1023]
流動する流体を含む体内導管のための管腔内プロテーゼインプラント装置であって、
第一端、第二端および外面を備え、膨張状態および非膨張状態を有するバルーンを備える膨張性バルーンアセンブリ、および
該バルーンアセンブリを包囲し、該バルーンの外面に隣接する管腔内プロテーゼ
を含み、該バルーンアセンブリが、バルーンが膨張状態にあるとき、流体をバルーンの該第一端からバルーンの該第二端まで通過させるように構成されている、管腔内プロテーゼインプラント装置。
[本発明1024]
バルーンアセンブリがさらに、バルーンが膨張状態にあるとき、流体が該バルーンの第二端から該バルーンの第一端まで通過することを防ぐように構成されている、本発明1023の管腔内プロテーゼインプラント装置。
[本発明1025]
バルーンアセンブリが、バルーンが膨張状態にあるとき、流体が該バルーンの第二端から該バルーンの第一端まで通過することを防ぐ弁を備える、本発明1023の管腔内プロテーゼインプラント装置。
[本発明1026]
バルーンが膨張状態にあるとき、該バルーンの外面が、バルーンの基端からバルーンの末端まで連続する、本発明1023の管腔内プロテーゼインプラント装置。
[本発明1027]
管腔内プロテーゼが人工弁を備える、本発明1023の管腔内プロテーゼインプラント装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
以下に記載する態様は、網羅的であること、または本発明を以下の詳細な説明に開示されるとおりの形態に限定することを意図したものではない。むしろ、これらの態様は、本発明の特定の原理および実施を説明するために選択され、記載されるものである。
【0011】
管腔内プロテーゼ、たとえばステントまたは人工弁の埋め込みを要する状況が数多くある。人工弁を埋め込む場合、人工弁(またはインプラントの一部分)を体本来の弁の上に配置し、体本来の弁が十分に(たとえば完全に)押さえこまれ、体内管腔中の流体流を必要以上に妨げないようにすることが望ましい場合がある。埋め込みプロセスは、たとえば、バルーンカテーテルを適切な位置に配置すること、バルーンカテーテルを膨張させてインプラントを適切な埋め込み構造中に拡張させること、バルーンカテーテルをしぼませること、およびその後バルーンカテーテルを取り出すことを含み得る。
【0012】
たとえば、これらのカテーテルは、置換心臓弁、たとえば大動脈弁、僧帽弁、三尖弁または肺動脈弁、を埋め込むために使用するように構成できる。人工心臓弁、たとえばステントに位置する弁は、バルーンを使用してステントを拡張させ、ステントを弁管腔に埋め込むことによって、埋め込むことができ、そうすることで、ステントが体本来の弁を弁管腔に対して圧潰し、ステント上の人工弁が開いて体本来の弁に代わって機能する。
【0013】
しかし、バルーンおよび人工弁を所望の位置に配置したのち、標準的なバルーンが膨張するとき、その背後で流体圧(たとえば左心室の収縮からの圧)が増大することがある。この圧力が、バルーンおよびプロテーゼをたとえば流体流の方向に移動させ、プロテーゼを誤配置させるおそれがある。心臓弁、たとえば大動脈弁に代わる人工弁を埋め込む場合も、流体圧は、同じく圧力増大に付されるおそれのある左心室に対してマイナスの影響を有することがある。また、標準的なバルーンが膨張するとき、体内管腔を通過する流体流が妨げられるおそれがあり、それは望ましくないことがある。
【0014】
特定の態様において、これらの問題の一つまたは複数に対処する、または対処することを支援するバルーンカテーテル、およびバルーンカテーテルを使用して管腔内プロテーゼを埋め込む方法が開発された。バルーンカテーテルは、バルーンを通して延びる体液管腔を有し、処置される体内管腔の各端部で開口したバルーンを備える。体液管腔は、体液がバルーンの上流端からバルーンの下流端まで通過することを可能にする。体液管腔は、バルーンが膨張すると体本来の弁に代わって機能して体液の逆行流を減らす、または防ぐことができる弁を備える。体内管腔中の弁は、圧力および/または流量の変化とともに開閉することができる。
【0015】
本発明の一つの態様にしたがって、バルーンカテーテルは、処置の過程で処置部位を生理学的方向に通過する少なくともいくらかの流体流を維持することが望ましい場合、たとえば管腔内プロテーゼ(たとえば交換弁)を、弁を含む処置部位に埋め込むために使用することができる。加えて、カテーテルは、生物学的通路を通過する流体流パターンの乱れを減らすことにより、より良好な血行動態を処置部位において維持するように構成することができる。
【0016】
たとえば
図1に示すような特定の態様において、カテーテル1は基端4および末端6を備える。カテーテル1は、基端4が患者の体外にとどまる一方、末端6が患者に挿入されて処置部位で処置を施すように設計されている。基端4には、末端に位置する機能性の制御を可能にするための制御装置が配置されている。カテーテルの末端6は、弁の処置、たとえば人工弁の展開のための膨張性バルーンアセンブリ5を備える。
【0017】
図2〜4を参照すると、カテーテル1は、ガイドワイヤ12が通過できるガイドワイヤ管腔10を備える。カテーテル1は、カテーテル1の末端6に位置する膨張性バルーン5と流体連通したバルーン膨張管腔14を備える。この態様において、バルーン膨張管腔は、一対の開口16を介してバルーン5と流体連通している。他の態様においては、異なる数の開口がバルーン膨張管腔とバルーンとの間に存在することができる。たとえば、いくつかの態様においては、バルーンをより均一に膨張させることができるよう、バルーンの長手に沿って多数の開口(たとえば三つ、四つ、五つ、六つまたはそれ以上の開口)を有することが有利であり得る。他の態様においては、バルーンをある特定の方向に膨張させることができるよう、バルーン膨張管腔とバルーンとの間に一つの開口しか有しないことが有利であり得る。たとえば、ステントが体本来の弁の上に埋め込まれる場合、バルーンが上流端(上流とは、体内管腔中の流体の流れの方向に関して上流を指す)から膨張して、体本来の弁が、自然に開く方向で体内管腔の壁に押し当てられるようにバルーンを膨張させることが有利であり得る。このような場合の開口は、バルーンの上流端に位置する。
【0018】
バルーン5は外面40を有する。その上に人工弁を有するステント20が、たとえばバルーン5の外面40の周囲にクリンピングされることにより、バルーン5を包囲している。ステントは、できるだけ小さな断面しか呈さないよう、人工弁がステントボディとバルーンの外面との間に収納されるようにバルーンの周囲にクリンピングすることができる。そのような人工弁は、米国特許第6,945,957号、第5,928,281号および第4,888,099号に開示されている弁を含む。
【0019】
使用中、カテーテルは、体に挿入され、所望の場所、たとえば大動脈弁に配置される。いくつかの態様において、バルーンカテーテルを体に導入するためには、標準的なセルジンガー(Seldinger)技術を使用することができる。いくつかの態様においては、大腿動脈を穿孔したのち、公知の技術を使用して、ガイドワイヤ12を動脈に挿入し、処置部位を過ぎるまで動脈中を移動させる。そして、カテーテル1のバルーン5が処置部位に位置するまで、カテーテル1をガイドワイヤ12の上で滑らせる。少なくとも一つの態様において、カテーテルの挿入中、バルーン5は完全に非膨張状態である。挿入後、ガイドワイヤ12を抜き取ることができる。
【0020】
処置部位に位置させて、バルーンアセンブリを膨張させる。
図2および3に示すように膨張すると、バルーン5のバルーンは拡張し、拡張するバルーン5の外面40がステント20を拡張させて、処置部位で、たとえば体内管腔中の弁の位置でステント20が体内管腔壁に食い込むようになる。この方法で、さらに以下において詳細に説明するように、ステント20は処置部位で体内管腔に埋め込まれる。
【0021】
バルーン5が膨張すると、バルーン5の円環形状が縦方向に延び、バルーン5の末端32および基端34で開口した体液管腔30を創りだす。体液管腔30は、膨張すると、
図2および
図3の矢印35によって示すように、処置される管腔を通過して流れる流体が通過することを許して、それにより非円環形のバルーンが使用される場合よりも小さな程度にしか体液の流れを乱さない。体液の逆流を防ぐために、体液管腔弁36が体液管腔30内に位置している。体液管腔弁36は、特定の態様において、ステントの埋め込みが実施される間、体本来の弁に代わって本質的に機能することができる。
【0022】
この態様において、バルーン5は、膨張すると、バルーン5の外面40がバルーン5の末端32からバルーン5の基端34まで連続的に延びるように構成されている。これは、バルーン5の外面40がステント20の内面42との接触を最大限にすることを可能にする。この方法で、バルーンがステントに加える拡張力をステントの長手に沿って均一に分散させることができ、それが特定の状況において体内管腔中のステントのより均一な埋め込みを可能にする。
【0023】
バルーンカテーテルのもう一つの態様が
図5および6に示されている。この態様において、カテーテル100は同心の管腔102および104を備える。もっとも内側の管腔102はガイドワイヤ管腔として働き、他方のバルーン膨張管腔104は、バルーンの膨張を可能にするために、チャネル106を介してバルーン50と流体連通している。バルーン50が非膨張状態にある間にステント120がバルーン50の周囲にクリンピングされ、処置部位に配置されたのち、バルーン50が膨張してステント120を拡張させ埋め込む。バルーン50はひとたび膨張すると、バルーンの末端134で開口し、チャネル間の窓135によってバルーンの基端132で開口した体液管腔130を規定する。矢印145(
図6参照)によって示すように、流体が体液管腔130の末端134から流れ込み、体液管腔130を通って流れ、体液管腔130の反対側の基端132で窓135を通って流れ出ることができる。体液管腔弁136は体液管腔130の内側に位置している。体液管腔弁136は、バルーン50が膨張したとき、生理学的方向への流体流を許しながらも反応方向への流体流を実質的に防ぐように構成されている。体液管腔弁136は通常、体本来の弁および/または展開されるステント上の人工弁と同じ方向に向けられる。
【0024】
カテーテルは一般に、所期の用途に適した任意の適切な数の管腔を備えることができる。たとえば、カテーテルは、バルーンへの流体の流入を可能にし、バルーンを膨張させるためにバルーンに流動的に接続されているバルーン流体管腔を備える。バルーン流体管腔はまた、バルーンをしぼませることが望まれるとき、たとえば弁配置が完了したのちバルーンを取り出すために、バルーンからの流体の排出を可能にするように働く。バルーンを膨張させるためには、任意の適切な流体、たとえば液体または気体、たとえば食塩水または二酸化炭素ガスを使用することができる。
【0025】
一般に円環形のバルーンの内壁は、特定の態様において、体液管腔の内壁に沿って一つまたは複数の膨張性支持要素を備えることができ、これらを膨張させると、体液管腔の内壁に対して支持を提供することができる。これは、特定の状況において、たとえばバルーンが膨張しているとき、体液管腔の壁が体液管腔を狭窄することを防ぐのに役立つ。これらの膨張性支持要素は、相対的に高圧(たとえばバルーンよりも高圧)にある別個の支持膨張管腔からの膨張媒体によって速やかに膨張させて、バルーンそのものが完全に膨張する前に体液管腔を開かせることができる。たとえば、
図10に示すように、円環形バルーン500は、バルーン500の内壁502に取り付けられ、バルーンの長手に沿って縦方向に延びる多数の支持細管510を備えることができる。支持細管510は、バルーン500の内壁502に沿って周方向に延びる周方向支持細管512になめらかに(fluidly)接続されている。これらの相互接続された支持細管510および周方向支持細管512には、たとえば環状マニホルドによって別個の支持膨張管腔から膨張媒体を供給することができる。体液管腔の内壁を支持するためには、膨張性支持要素に適したいずれかの構造、たとえば一つまたは複数のらせん支持細管を使用することができる。もう一つの態様において、バルーンは分割され、各セグメントが流体チャネルを介して相互に連通して、内側管腔の開放性を維持しながら一つの流体ラインによって膨張を達成することもできる。セグメントは、膨張したとき、周方向に管状である、または相互接続する球体であり得る。
【0026】
バルーンは、多様なポリマー材料、たとえばポリエチレン、ポリオレフィン、オレフィンのコポリマーおよびそれらのいずれかの組み合わせから調製することができる。たとえば、E.I DuPont de Nemours and Co.(Wilmington, Del.)から商品名Surlyn(商標)イオノマーとして市販されているポリオレフィン材料を使用してバルーンを形成することができる。また、これらの材料の組み合わせを使用することもできる。
【0027】
特定の態様において、バルーンの長さは約10mm〜約30mm(たとえば約10mm〜約20mm)の範囲であることができる。バルーンが膨張状態にあるときの体液管腔の直径は、体液管腔を通過する所望のレベルの流体流を可能にするのに適当なサイズを創りだすように選択される。たとえば、いくつかの態様において、バルーンが膨張しているとき、体液管腔の内径は約10〜約30mmである。体液管腔の内径は一般に、それが配置される導管のサイズおよびバルーンの膨張中に維持することを望む流体流の量に依存する。
【0028】
いくつかの態様において、非膨張状態(たとえば
図4に示すような)において、バルーン5は、カテーテル1の末端6の全体直径を有意に増大させない。一般に、非膨張状態にあるとき、バルーンの外径は、カテーテルの末端が必要な体内管腔を通過して処置部位まで到達でき得るように選択される。たとえば、いくつかの態様において、非膨張状態のバルーンの外径は、カテーテルが使用される人(または動物)の体の様々な生物学的通路に依存して、約4mm〜約7mmであり得る。一般に、カテーテルは、患者の脈管系に通して容易に操作するのに十分な小ささの直径である。バルーン部分のサイズもまた、様々な処置および/または患者に関して異なってよい。
【0029】
特定の態様では、バルーンが膨張すると、体液管腔の断面積は、たとえば心臓の弁区域などの処置部位の断面積のかなりの割合を占め、その処置部位を通過する流体流が、カテーテルが挿入されていない場合のその処置部位を通過する流量とほぼ同等となり得る。たとえば特定の態様では、バルーンの断面積は、膨張したバルーンがバルーンの下流で適度を超える圧力低下を誘発しないような断面積である。
【0030】
特定の態様において、膨張したバルーンの外径は約20mm〜約35mmの範囲であることができる。一般に、膨張したバルーンの外径は、それが位置する導管のサイズに依存する。たとえば、膨張したバルーンの外径は一般に、成人心臓の大動脈弁に代えて使用する場合で約20mm〜約35mmであり、成人心臓の僧帽弁に代える場合で約20mm〜約35mmであり、成人心臓の三尖弁に代える場合で約20mm〜約35mmである。適切なサイズは、弁が交換される、またはプロテーゼが埋め込まれる導管の計測値を得ることにより、所期の使用に依存して選択することができる。たとえば、一般に、非成人心臓(たとえば乳児または子供の心臓)は、多くの非ヒト心臓(たとえばイヌ、ネコなど)と同じく、より小さい外径を必要とする。
【0031】
特定の態様において、体液管腔は、膨張時、膨張時のバルーンアセンブリの断面積(処置部位の体内管腔の断面積に一致する)の少なくとも約40%(たとえば少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%)である内側開放面積(inner open area)を有する。特定の態様において、たとえば膨張したバルーンの体液管腔を通過する血液(または他の流体)流量は、バルーンが配置されていない状態の処置部位で体内管腔を通過する血液(または他の流体)流量の少なくとも約40%(たとえば少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%)であることができる。
【0032】
カテーテルは、所望の程度の押し込み性(pushability)、追跡性(trackability)、横断性(crossability)およびトルクがカテーテルの基端に加えられる場合のカテーテル末端へのトルク伝達を有するように構成することができる。たとえば、特定の態様において、カテーテルは、十分な押し込み強さ(力をカテーテルの基端からカテーテルの末端まで伝達する能力)および座屈または屈曲に対する抵抗を有するように構成することができる。特定の態様において、カテーテルは、たとえばカテーテルの少なくとも末端部分にゴム弾性を提供して可撓性を改善することにより、カテーテルの末端部分が小さな曲がりくねった導管または体内管腔を通過しながらガイドワイヤを追跡して処置される部位に到達することを可能にするのに十分な可撓性を有するように構成することができる。特定の態様においては、横断性(脈管構造中の狭窄部または閉塞部を横切りながらカテーテルを進める能力)を最適化することもできる。
【0033】
カテーテルの押し込み性、追跡性、横断性、トルク伝達および他の特性は、カテーテル材料およびその物理特性、たとえば壁厚を入念に選択することによって調節または選択することができる。たとえば、これらのカテーテルは長い距離で挿入されることがよくあるため、一般に、単独または組み合わされた高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または他の滑性材料のような滑性材料からカテーテルを構築することによって、ガイドワイヤとカテーテル管腔の表面との摩擦を最小限にすることが望ましい。
【0034】
カテーテルの異なる部分で異なる性質または特性を有することが望ましい特定の態様において、カテーテルは、異なる材料および/または物理特性を含む多数の部分(たとえば二つ、三つ、四つまたはそれ以上の部分)を備えることができる。たとえば、より良好な横断性のために、また、体の内膜などに当接する場合に、より軟らかいカテーテルの前端を提供するために、カテーテル管腔の残りの部分よりも比較的弾性のある先端部分を提供することができる。異なる材料は、お互いに異なるポリマー材料を含み、例えば、異なる密度、異なる充填剤、異なる架橋または異なる他の特性を有する類似のポリマーを含む。特に、カテーテル管腔の一部分は、体内管腔の経路を追従するための可撓性に対して選択された材料を含むことができ、別の部分は、軸方向および/またはトルク伝達に対して選択された材料を含むことができる。
【0035】
カテーテルは、装置の末端に機能性を提供するために任意の数の内部管腔を備えることができる。カテーテル内に含まれる一般的な管腔は、ガイドワイヤ管腔、バルーン膨張管腔および/または支持膨張管腔を備える。いくつかの態様において、カテーテルは、一つより多いバルーン流体管腔(たとえば二つ、三つ、四つまたはそれ以上のバルーン流体管腔)を備えることができる。これらの管腔は、たとえばより均一なバルーンの膨張を可能にするため、バルーンの異なる部分に流体を導入するように使用できる。いくつかの態様において、バルーンは、多数のバルーン区分(たとえば二つ、三つ、四つまたはそれ以上のバルーン区分)を備えることができる。
【0036】
いくつかの態様において、カテーテルはさらに、ガイドワイヤが通過できるガイドワイヤ管腔を備えることができる。いくつかの態様において、ガイドワイヤ管腔は実質的にカテーテルの全長に沿って延びる。他の態様において、ガイドワイヤ管腔は、カテーテルの一部分、たとえばカテーテルの末端部分だけに延びる。これらの構造において、ガイドワイヤ管腔はガイドワイヤポートでカテーテルの外部に通じ、ガイドワイヤはこのポートを通過し、ガイドワイヤ管腔に入る。
【0037】
先に記したように、カテーテルは、体液管腔中に配置された、体液管腔を通過する流体流の方向ならびに血行動態を制御する能力を提供する少なくとも一つの体液管腔弁を備える。より具体的には、体液管腔弁は、処置部位における生理的方向への血流を許しながらも逆行流(逆流)を効果的に阻止する。
図3、4および6に示すように、体液管腔弁36は、バルーン5の内面7に取り付けられ、体液管腔30の直径にかけて延びる。
【0038】
体液管腔弁36は、任意の公知の方法で形成することができる。体液管腔弁は、自然な状態からの血行動態の乱れを減らすような生理的特性および血栓形成の危険の低下を提供するように選択される。体液管腔弁は、生理的方向への血流(すなわち、生物学的通路を通過する血液の順方向流)を可能とし、装置を通過する血液の逆流(逆行流とも呼ばれる)を阻止し、脈管構造に通してカテーテルを処置部位に通すことができるほどに圧縮するように設計できる。いくつかの態様において、体液管腔弁のコンポーネント(たとえばリーフレット)は、体液管腔弁をはさんでの圧力低下を最小限にしつつ、過度な乱流を発生させたり、血液細胞を溶血的に損傷することなく、滑らかに開閉するのに十分な可撓性を有する。
【0039】
体液管腔弁は、特定の用途(たとえば、心臓弁または体内の他の生物学的通路)および特定の患者(たとえば、若い患者、たとえば子供または高齢患者)に依存して、任意の所望のサイズに作製することができる。一般に、体液管腔弁は、それ自体が特定の用途および患者にしたがってサイズ決定されるバルーンにフィットするようにサイズ決定される。
【0040】
体液管腔弁は、体液管腔内の任意の位置に設けることができる。たとえば、いくつかの態様において、体液管腔弁を体液管腔の基端または末端に配置すると、弁機能が改善し、より小さな圧縮断面を可能とすることができる。体液管腔弁が体液管腔の基端または末端に位置させる場合、バルーンが圧縮中に、体液管腔弁のリーフレットがバルーンを超えて伸長し、それにより、圧縮中の装置の断面を改善することができる。体液管腔内の体液管腔弁の位置は、処置中により良い弁機能を提供するために、体本来の弁の解剖学的位置にできるだけ近く位置するような位置であり得る。
【0041】
いくつかの態様において、体液管腔弁は、弁の各側の差圧に受動的に応答するように構成することができる。他の態様においては、アクティブな体液管腔弁を体液管腔に組み込んで、場合によってはカテーテル基端から制御することもできる。一般に、体液管腔弁は、装置を通過する血液の順方向流の間には脇に移動し、管腔を通過する逆流を阻止する閉塞体(occluder)を備える。体液管腔弁は一般に、処置される生物学的通路内の圧力に耐えるのに適した耐久性を有するが、装置内で移動して血液または流体を体液管腔に通して流すのに十分な可撓性を有する。
【0042】
いくつかの態様において、バルーンは、多数の(たとえば二つ、三つ、四つまたはそれ以上の)体液管腔または血液の通過を許可する材料(たとえば多孔性材料)を含むことができる。一例として、
図9に示すように、バルーンカテーテル400は、ガイドワイヤ管腔410および四つのバルーン420と流体連通したバルーン膨張管腔414を備える。各バルーン420は断面がほぼT字形であり、そのTの外側部分422が弓状の外面424を有し、そのTの内側部分426が外側部分424およびバルーン膨張管腔414と流体連通している。バルーン420が膨張すると、四つの体液管腔430が形成され、そのそれぞれが、末端および基端で体内管腔に通じて、体内管腔中にある体液が末端から基端まで(またはその逆に)通過することを可能にする。膨張すると、バルーン420の弓状外面424が、バルーン420を包囲するステント(図示せず)を拡張させ、そのステントを体内管腔に埋め込むのに十分な直径の実質的に円柱形の形状を形成する。各体液管腔430はさらに、体液管腔430を一つの方向に通過する流体流を許し、反対方向の流体流を妨げるように構成された一つまたは複数の弁を備えることができる。
【0043】
図7に示すように、体液管腔弁は、可撓性リーフレット弁300の形態で提供することができる。
図7に示される体液管腔は三尖弁であり、それ自体、大動脈弁を模倣させるよう使用できる。この態様において、可撓性リーフレット弁300は、ほぼ弓状の中央部分303および周辺カフ305を備える。弁300の中央部分303は三つのリーフレット307を備えるが、可撓性弁中には任意の所望の数のリーフレット、たとえば一つ、二つまたは四つのリーフレットがあってもよいことが理解される。周辺カフ305は、たとえば縫合、生体適合性接着剤または他の適当な取り付け方法によって弁をバルーンの内面に取り付けるために使用することができる。または、周辺カフは、バルーンと一体に形成することもできる。
【0044】
可撓性リーフレット弁300は体液管腔350内に配置される。弓状部分303の直径は、特定の態様において、バルーンが膨張したときの体液管腔350の内径と実質的に同じであり得る。そのような態様において、周辺カフ305は、体液管腔350の壁に対して実質的に平行に配置される。したがって、バルーン355が膨張すると、弁300は拡張し、体液管腔350の区域にまたがる。いくつかの態様において、バルーン355が非膨張状態にあるとき、弁300はバルーン内で圧縮していて、圧縮しているバルーンの外寸に実質的に適合する。特定の態様において、周辺カフ305は、バルーン355が非膨張状態にあるときカフが圧縮できるようにするため、可撓性材料で作製されている。このようにして、弁は、装置全体の直径を有意に変化させない。
【0045】
いくつかの態様において、各弁リーフレットは、リーフレットの自由端が隣接リーフレットと重なり合い、リーフレットが互いに上にスライドすることができる状態で、周辺カフの周囲に沿って周辺カフに部分的に取り付けられる。この手法で、リーフレットは、処置部位の構造が周辺カフの完全な拡張を妨げるときでも、部分的に重なり合った状態でとどまることができ、本質的にしわのない状態にとどまることができる。適切なリーフレット高さ/直径比を選択することにより、弁の脱出の危険性を低減することができる。たとえば、いくつかの態様においては、高さ/直径比が約1であると、脱出の危険性が低減する。
【0046】
リーフレットの材料は、合成樹脂フォイル、たとえば可撓性ポリウレタンのフォイルであり得る。他の材料は、シリコーン、Teflon(商標)および他のポリマーを含む。一般に、リーフレット区域の大部分は薄い膜からなる。いくつかの態様において、合わせ目区域を形成するリーフレットの部分は、弁リーフレットの追加的な支持を提供するために、より厚い、および/またはより大きい剛性を有することができる。いくつかの態様において、哺乳動物組織(たとえばブタまたはウシ心膜など)を使用してリーフレットを形成することができる。周辺カフ205は、同様の材料で作製することができ、弁のリーフレットを作製するために使用される材料と同じまたは異なる材料で形成することができる。
【0047】
いくつかの態様において、弁のリーフレットは個々に鞘に取り付けられることができる。これらの態様において、装置には周辺カフは含まれない。これらの態様において、リーフレットは、縫合、生体適合性接着剤、前記二つの組み合わせまたは任意の他の適当な取り付け機構を使用して鞘に取り付けることができる。
【0048】
または、弁は、米国特許第6,945,957号、第5,928,281号および第4,888,009号に記載された方法のいくつかまたはすべてを使用して、標準化されたリーフレット構造を備えるように作製することもできる。
【0049】
図2および3に示す態様は、一つのバルーンをその上に有するカテーテルを示すが、カテーテルは、具体的な用途に依存して、任意の数の個々のバルーンを多数の構成で備えることができる。たとえば、それぞれが別個の膨張管腔を有する多数のバルーンを有するカテーテルを使用して、上記のように上流から下流への手段で、上流のバルーンを膨張させたのち下流のバルーンを拡張させることにより、ひとつのステントを拡張させ、埋め込むことができる。
【0050】
ステント弁を埋め込む方法が
図8a〜8cに示されている。バルーンカテーテル200には、バルーン250の外側にクリンピングされたステント弁220が設けられている。ステント弁220は人工弁リーフレット221を含み、これらのリーフレットは、はじめ、ステント弁ボディ222とバルーン252の外面との間に収容されている。カテーテル200が体内管腔260に挿入され、体本来の弁272が位置する処置部位270まで通される(
図8aを参照)。バルーン250は、ステント弁220が、拡張時、体本来の弁272を体内管腔壁262に押し当て、バルーン250が膨張するように配置される(
図8bを参照)。バルーン250の膨張がステント弁220を拡張させ、体本来の弁272をステント弁ボディ222と体内管腔壁262との間に閉じ込めると、体本来の弁272は、体内管腔260を通過する流体流を実質的に妨げないようになる。他方、バルーン250が膨張すると、流体は、バルーン250中の体液管腔(図示せず)を通過することができ、それにより、体内管腔260を通過する流れを維持し、バルーン250の上流での圧力増大を回避させる。流体流は矢印290によって示されている。体液管腔内に収容された弁(図示せず)が体液の逆行流を防ぐ。ひとたびステント弁220が十分に拡張して体内管腔260に埋め込まれたら、バルーン250をしぼませ、カテーテル200を取り出して、ステント弁250をその場に残す(
図8cを参照)。バルーン250をしぼませ、取り出すと、ステント弁220の人工弁リーフレット221が展開し、体本来の弁272に代わって機能し始める。
【0051】
いくつかの態様において、人工弁の展開後のバルーンの回収は、セグメント化されたフレアを有する抜き取りチューブを使用して支援し、達成することができる。
図11A、11Bおよび11Cに示すように、バルーンカテーテル540を挿入し、抜き取ることを支援するために抜き取りチューブ560が使用される。
図11Aは、展開前状態のカテーテル504を収容する、カテーテルが完全に収容されている抜き取りチューブ560の断面図を示し、
図11Bは、カテーテル540が、バルーン550が膨張した展開状態にある抜き取りチューブの断面図を示す。
図11Cは、抜き取りチューブ560の端部断面図を示す。抜き取りチューブ560は外側チューブ562および内側チューブ564を備える。抜き取りチューブは基端565および末端567を備える。内側チューブは、外側チューブと同心的に配置され、フレア状セグメント568を有する末端にフレア状端部566を有している。内側チューブは、以下に記載するように、カテーテル540の展開および引き込みのために外側チューブ内でスライド可能である。少なくとも一つの態様において、内側チューブは、基端で外側チューブの外に延び、内側チューブが外側チューブ内でスライドすることができる距離を制限するための停止機構として働くことができる環状リング569を備えることができる。
【0052】
バルーン550は、展開の前、
図11Aに示すように、その非膨張状態で抜き取りチューブ内に収容されている。カテーテル540の挿入中、抜き取りチューブは、カテーテル540とともに切開部から挿入することができる。少なくとも一つの態様において、抜き取りチューブの長さはカテーテル540の長さよりも実質的に短く、埋め込み中、カテーテルの基端が抜き取りチューブの基端から外に延び、カテーテルの末端が抜き取りチューブ内に収容され、抜き取りチューブの末端の近くに位置するようになっている。抜き取りチューブは、切開部から挿入したのち、その末端がほぼ処置部位に位置するまで、動脈に通してスライドさせることができる。カテーテル540を、そのバルーン550とともに、バルーンが処置部位に位置するまで抜き取りチューブ内からスライドさせ、処置部位で、使用のために膨張させることができる。
【0053】
いくつかの態様において、抜き取りチューブの使用は、バルーンおよびカテーテルを使用後に処置部位から抜き取るプロセスを容易にする。カテーテル抜き取りに備えて、内側チューブを、外側チューブ内で、環状リング569が外側チューブと接触してフレア状セグメント568を外側チューブの末端から押し出すまで、スライドさせることができる。内側チューブは、たとえば、フレア状セグメントを露出させるために約1cmスライドさせることができる。カテーテル540の抜き取りはバルーン550のしぼみとともに始まる。そして、カテーテル540を、その上の非膨張状態のバルーン550とともに、抜き取りチューブ内でスライドさせて、非膨張状態のバルーンが内側チューブのフレア状端部を通して引き抜かれるようにする。内側チューブは、漏斗として機能して、非膨張状態のバルーンが内側チューブに引き込まれるとき非膨張状態のバルーンを圧縮させることができる。カテーテル540は、抜き取りチューブ中に完全に引き込むことができ、その時点で、抜き取りチューブそのものを抜き取る。本明細書に提供される開示に基づいて、開示される装置および方法が、他の交換弁必要性を含め、カテーテルバルーンまたは類似装置を使用してインプラントを配置する用途、たとえば、食道または処置中に生物学的流体の制御された流れが望まれる体の他の生物学的通路の処置ならびに静脈用途(たとえば、静脈弁の機能不全)にも適用可能であるということが理解される。
【0054】
態様はまた、プロテーゼそのものが弁を含まず、生物学的弁に代わることを意図したものではないが、プロテーゼを埋め込む手順が少なくとも一時的に流体流を阻止する、および/または体本来の弁の機能に影響するおそれのある場合に、管腔内プロテーゼを生物学的弁の近くの場所に埋め込むために使用することもできる。たとえば、ステントが生物学的弁のすぐ上流またはすぐ下流に配置される場合、ステントを拡張させるためのバルーンの膨張が、バルーンが膨張する間、例えば体本来の弁を開位置に留めてしまうことにより体本来の弁に影響を与えるおそれがある。そのような状況において、体液管腔弁は、体本来の弁に代わって機能し、処理が施される間、逆行流体流を防ぐことができる。
【0055】
態様はさらに、たとえば、血管形成術、たとえば冠動脈形成術、末梢動脈形成術、腎動脈形成術および/または頸動脈形成術において、弁を含まない体内管腔の区域に管腔内プロテーゼを埋め込むために使用することもできる。管腔内プロテーゼ、たとえばステントは、そのような処置が望まれる区域、たとえば塞栓形成および/または狭窄の部位で展開させることができる。膨張したバルーンを通過して縦方向に延びる体液管腔を有するバルーンカテーテルの態様を使用すると、ステントが展開されている間、体内管腔中の流体流の減少または停止を防ぐことができ、それが、特定の状況において、膨張したバルーンの上流側の圧力上昇を防ぐこと、および/またはステントをより正確に配置することを可能とし、さらに、展開部位の下流における流体流の乱れを防ぐことができる。これらの態様では、バルーンが膨張している間、逆行流体流を減らすか、または防ぐための体液管腔中の弁を任意に含んでもよい。