(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6の排水構造および特許文献1のドレン構造は、ともに内側の挿入配管と外側の配管との間に隙間があるため、排水管内に逆流や詰りが発生して満管状態が起こった場合に、既存排水ドレンと改修ドレンの隙間に排水が流入してしまう場合がある。既存排水ドレンと改修ドレンの隙間に排水が流入すると、劣化した防水シート接続部111や、防水シート接続部111と配管接続部112との接続部の周囲に排水が流れるため、劣化によって生じた隙間から建物の躯体側に浸水する問題があった。
【0006】
一方、
図6に示した従来の排水構造では、改修ドレン120の蛇腹管部122が排水ドレン110の配管接続部112に挿入されるため、排水路の径が大幅に小さくなる。したがって、排水能力が大きく低下してしまう。時間雨量が増加傾向にある近年では、排水能力の低下は問題である。
【0007】
他方、防水技術の進歩により防水シート等の防水材料の耐用年数が排水ドレンの耐用年数よりも長くなっているところ、改修時に排水ドレンの撤去を行うのは、防水シートの開口部周辺を再施工しなければならないので、高耐用の防水シートの性能を活かしきれないこととなる。このことは、改修の度に第2ドレン部材を交換する特許文献1のドレン構造において発生する問題である。また、
図6の排水構造においても、最初の改修では既存の排水ドレン110を残置することができるが、複数回改修を行うと、改修の度に排水路の径が小さくなるので、現実的には改修ドレンの挿入による改修は一回が限度である。したがって、二度目の改修では、排水ドレン110または改修ドレン120、あるいはその両者の撤去を余儀なくされる。
【0008】
そこで、本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、排水能力の低下を抑制しつつ既存の排水ドレンと防水層との接続部分を利用できるとともに、既存排水ドレンと改修ドレンとの隙間への排水の流入を防止できる排水ドレン部材、継手部材および排水構造の改修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明は、排水口と排水管とを繋ぐ配管部を備えた排水ドレン部材において、前記配管部の内面には、内側に張り出す改修ドレン支持部が設けられており、前記改修ドレン支持部は、前記配管部の内面の全周に亘って形成されており、改修時に装着される改修ドレンの先端面が当接する支持面を有していることを特徴とする排水ドレン部材である。
【0010】
このような構成によれば、改修ドレンの先端面を改修ドレン支持部の支持面に当接させることで水密的接続を行うことができるので、既存排水ドレンと改修ドレンとの隙間への排水の流入を防止できる。これによって、劣化した部分に排水が流れるのを防止できるので、劣化によって生じた隙間から建物の躯体側に浸水することはない。
さらに、改修ドレン支持部に当接させるために改修ドレンとして蛇腹管ではなく既製の塩ビ管を用いることとなるので、従来用いられていた蛇腹管と比較して排水路の径の縮小化を抑えることができる。したがって、排水能力の低下を抑制しつつ既存の排水ドレン部材を利用することができる。
【0011】
本発明に係る排水ドレン部材においては、前記改修ドレン支持部が、複数段設けられており、複数の前記改修ドレン支持部のうち、前記排水管側に位置する改修ドレン支持部は、前記排水口側に位置する改修ドレン支持部よりも内側に張り出しているものが好ましい。このような構成によれば、排水能力の低下を抑制しつつ、防水層の排水口周辺を再施工することなく複数回の改修を行うことができる。したがって、高耐用の防水シートの性能を活かした排水構造の改修を行うことができる。
【0012】
さらに、本発明に係る排水ドレン部材においては、前記配管部が、配管本体と当該配管本体を前記排水管に接続する継手部材とを備えており、前記改修ドレン支持部は、前記継手部に設けられているものであってもよい。このような構成によっても、前記した作用効果と同等の作用効果が得られる。
【0013】
また、本発明は、排水口と排水管とを繋ぐ排水ドレン部材に用いられる筒状の継手部材であって、内面には、内側に張り出す配管本体支持部と改修ドレン支持部が設けられており、前記配管本体支持部は、前記内面の全周に亘って形成されており、前記排水口に繋がる配管本体の先端面が当接する配管支持面を有し、前記改修ドレン支持部は、前記内面の全周に亘って形成されており、改修時に装着される改修ドレンの先端面が当接する支持面を有していることを特徴とする継手部材である。このような構成の継手部材を備えた排水ドレン部材を用いれば、前記した作用効果と同等の作用効果が得られる。
【0014】
さらに、本発明は、排水口と排水管とを排水ドレン部材で繋いで形成された排水構造の改修方法において、前記排水ドレン部材の内面には、内側に張り出す改修ドレン支持部が設けられ、前記改修ドレン支持部は、前記排水ドレン部材の内面の全周に亘って形成されており、前記排水口側から前記排水ドレン部材の内側に第一の改修ドレンを挿入して、前記第一の改修ドレンの先端面を、前記改修ドレン支持部の支持面に当接させて水密的接続を施した後、前記第一の改修ドレンの前記排水口側端部の周囲を止水することを特徴とする排水構造の改修方法である。
【0015】
このような方法によれば、改修ドレンの先端面と改修ドレン支持部の支持面とを水密的接続することができるので、既存排水ドレンと改修ドレンとの隙間への排水の流入を防止できる。これによって、劣化した部分に排水が流れるのを防止できるので、劣化によって生じた隙間から建物の躯体側に浸水することはない。
さらに、改修ドレンとして蛇腹管ではなく既製の塩ビ管を用いることとなるので、蛇腹管と比較して排水路の径の縮小化を抑えることができる。したがって、排水能力の低下を抑制することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る排水構造の改修方法においては、前記改修ドレン支持部は、複数段設けられており、複数の前記改修ドレン支持部のうち、前記排水管側に位置する改修ドレン支持部は、前記排水口側に位置する改修ドレン支持部よりも内側に張り出しており、前記排水口側から前記第一の改修ドレンの内側に第二の改修ドレンを挿入して、前記第二の改修ドレンの先端面を、前記排水管側に位置する前記改修ドレン支持部の支持面に当接させて水密的接続を施した後、前記第二の改修ドレンの前記排水口側端部の周囲を止水することが好ましい。このような方法によれば、防水層の排水口周辺を再施工することなく二回の改修を行うことができるので、高耐用の防水シートの性能を活かした排水構造の改修を行うことができる。さらに、二回の改修を行っても排水能力の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る排水ドレン部材および排水構造の改修方法によれば、排水能力の低下を抑制しつつ、既存防水層と改修防水層の隙間への排水の流入を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る排水ドレン部材について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、かかる排水ドレン部材1は、屋根やバルコニーの床部2に形成された排水路3に設けられている。床部2は、下地4上に防水層5が形成されて構成されている。防水層5は、防水シートあるいは塗布防水など、公知の防水材料にて形成されている。排水ドレン部材1で、防水層5の排水口(開口部)6とその下方の排水管7とを繋ぐことで排水構造8が形成されている。
【0020】
図1および
図2に示すように、排水ドレン部材1は、配管部10と下地固定部30と防水層固定部40とを備えている。
【0021】
配管部10は、排水口6と排水管7とを繋ぐ(
図1参照)。配管部10は、段付の円筒管にて構成されている。
図1に示すように、配管部10の内面には、内側に張り出す改修ドレン支持部11が設けられている。改修ドレン支持部11は、配管部10の内面の全周に亘って形成されており、後記する改修ドレン50(
図1、
図3および
図4参照)の先端面(下端面)が当接する支持面12を有している。支持面12は、水平方向に広がる円環平面状を呈している。支持面12の平面形状は、支持される改修ドレン50の先端面(下端面)と同等の形状である。支持面12の上側に繋がる配管部10の内周面の内径寸法は、支持される改修ドレン50の外周面の外径寸法と同等である。この内周面は、改修ドレン50の外周面が嵌合される面である(以下「嵌合内周面13」という)。
【0022】
本実施形態では、改修ドレン支持部11は、上下二箇所に形成されている。上下の改修ドレン支持部11,11のうち、上側に位置する改修ドレン支持部11aは、配管部10の管本体が段差を持って縮径することで内側に張り出している。下側に位置する改修ドレン支持部11bは、配管部10の内周面に内側に突出する円環状の突条16を形成することで内側に張り出している。突条の上面が、支持面12を構成している。
図3に示すように、突条の下方の配管部10に、排水管7が嵌合されるようになっている。突条16の下面は排水管当接面17となっており、排水管当接面17に排水管7の上端面が当接する。
【0023】
上側の改修ドレン支持部11aの上側に位置する嵌合内周面13の上端部には、改修ドレンの案内面14が形成されている。案内面14は、上方に向かうに連れて拡径するテーパ状に形成されている。このような案内面14によれば、上方から配管部10に挿入された改修ドレン50先端(下端)は、テーパ状の案内面14に沿って、内側の嵌合内周面13へと導かれる。
【0024】
案内面14の上側に位置する配管部10は、上方に向かってなだらかに拡径している。これによって、配管部10の上端部は、拡がった状態となっており、内側に防水層固定部40を固定するためのスペースを確保している。なお、配管部10の上端部は、拡径する形状に限定されるものではなく、一定の内径を備えた直線管状であってもよい。この場合、防水層固定部40を固定するためのスペースは、案内面14の拡径部分で確保する。
【0025】
図2に示すように、配管部10の円環状の上端面は、内周縁15aが外周縁15bよりも上方に突出している。配管部10の上端面の外周縁15bは、下地固定部30の固定面となっている。
【0026】
図1に示すように、下地固定部30は、排水ドレン部材1を屋根やバルコニーの床部2の下地に固定するための部材である。
図1および
図2に示すように、下地固定部30は、板材からなり、平面視正方形形状を呈している。下地固定部30の中央部には、円形の貫通孔31が形成されている。貫通孔31の内径は、配管部10の上端の内周縁15aの突出部分の外径と同等である。貫通孔31の内側に、配管部10の内周縁15aの突出部分が入り込んで接続される。下地固定部30の厚さ寸法は、突出部分の突出高さと同等となっており、内周縁15aの上端面と下地固定部30の上面とは面一となっている。配管部10の上端の外周縁15bに下地固定部30の下面が当接しており、下地固定部30は、配管部10の外周縁15bに接着されている。下地固定部30の周縁部(本実施形態では四隅部)には、ビス用孔32(
図2参照)が形成されている。ビス用孔32には、屋根下地にねじ込まれるビスVが挿入される(
図1参照)。
【0027】
図1に示すように、防水層固定部40は、排水ドレン部材1を屋根やバルコニーの床部2の表面に形成された防水層5の開口縁部に固定するための部材である。
図1および
図2に示すように、防水層固定部40は、平板部41と円筒部42とを備えている。平板部41と円筒部42は樹脂製材料からなり一体形成されている。平板部41は、防水層5へ水密的接続に十分な接続しろを有する大きさに形成されており、本実施形態では、平板部41は、平面視正方形形状を呈している。なお、平板部41の形状は正方形に限定されるものではなく、円形や多角形なの他の形状であってもよい。平板部41は、下地固定部30よりも大きく、下地固定部30の全体を上側から覆う。平板部41の中央部には、円形の貫通孔43が形成されている。貫通孔43に円筒部42が繋がっている。円筒部42の外周面は、配管部10の上端部の内周面に沿った形状となっている。円筒部42は、配管部10の上端部の内側に嵌合されている。
【0028】
次に、改修ドレン50の構造を説明する。
図3に示すように、改修ドレン50は、排水構造8の改修時に装着されるものである。改修ドレン50は、筒部51と鍔部52とを備えている。筒部51は、配管部10に挿入される部位であり、既製の塩ビ管にて構成されている。鍔部52は、防水層固定部40または防水層5の開口縁部に固定される部位である(本実施形態では、鍔部52は、防水層固定部40の上面に固定されている。なお、図示しないが、鍔部が防水層固定部よりも大きい場合は、鍔部は防水層の上面に固定される)。鍔部52は、平板部53と円筒部54とを備えている。円筒部54が筒部51の上端部内側に挿入されて接着されることで、鍔部52が筒部51に固定されている。
【0029】
図3および
図4に示すように、本実施形態では、改修ドレン50として、第一の改修ドレン50aと第二の改修ドレン50bの大きさが異なる二種が用いられている。
図3に示すように、第一の改修ドレン50aは、1回目の改修時に装着されるものであって、第二の改修ドレン50bよりも大径である。第一の改修ドレン50aは、配管部10の内側に挿入される。第一の改修ドレン50aの筒部51の先端面(下端面)は、上側に位置する改修ドレン支持部11aの支持面12と同じ平面形状である。第一の改修ドレン50aの筒部51の先端面は、上側の支持面12に当接し、全周に渡って支持面12に面接触する。第一の改修ドレン50aの筒部51の先端部の外周面は、嵌合内周面13に嵌合する。
【0030】
第二の改修ドレン50bは、2回目の改修時に装着されるものであって、第一の改修ドレン50aの内側に挿入される。第二の改修ドレン50bの筒部51の先端面(下端面)は、下側に位置する改修ドレン支持部11bの支持面12と同じ平面形状である。第二の改修ドレン50bの筒部51の先端面は、下側の支持面12に当接し、全周に渡って支持面12に面接触する。第二の改修ドレン50bの筒部51の先端部の外周面は、嵌合内周面13に嵌合する。第二の改修ドレン50bの内周径は、排水管7の内周径と同等である。
【0031】
以上のような構成の排水ドレン部材1および改修ドレン50を用いた排水構造8の改修方法を、以下に説明する。
【0032】
1回目の改修は、完成から10年後を目安に行われる。排水構造8の接続部分の耐用年数が10年程度であるためである。1回目の改修では、
図3に示すように、防水層5の排水口6側から排水ドレン部材1の内側(配管部10の内部)に第一の改修ドレン50aの筒部51を挿入する。このとき、改修ドレン50aの先端部は、傾斜した案内面14によって、配管部10の中心に移動され、内周面の段差に引っ掛かることなく、改修ドレン支持部11aへと案内される。そして、第一の改修ドレン50aの筒部51の先端面を、上側の改修ドレン支持部11aの支持面12に当接させて面接触させる。このとき、第一の改修ドレン50aの先端部の外周面は、支持面12の上側に繋がる嵌合内周面13に嵌合して密着している。これによって、第一の改修ドレン50aと排水ドレン部材1とで水密的接続が施された状態となる。
【0033】
なお、第一の改修ドレン50aの筒部51の先端面に接着剤を塗布しておき、その先端面を上側の改修ドレン支持部11aの支持面12に接着してもよい。このようにすれば、水密性が向上する。
【0034】
そして、改修ドレン50aの鍔部52は、排水ドレン部材1の防水層固定部40の上に布設された状態となる。鍔部52の周縁端部と防水層固定部40の上面に跨るようにシール材を塗布または貼り付けることで、鍔部52と防水層固定部40との隙間を止水する。なお、鍔部52が防水層固定部40よりも大きい場合は、鍔部52と防水層5との間にシール材を塗布または貼り付ける。
【0035】
2回目の改修は、1回目の改修から10年後を目安に行われる。2回目の改修では、
図4に示すように、防水層5の排水口6側から第一の改修ドレン50aの内側(筒部51の内部)に第二の改修ドレン50bの筒部51を挿入する。そして、第二の改修ドレン50bの筒部51の先端面を、下側の改修ドレン支持部11bの支持面12に当接させて面接触させる。このとき、第二の改修ドレン50bの先端部の外周面は、下側の支持面12の上側に繋がる嵌合内周面13に嵌合して密着している。これによって、第二の改修ドレン50bと排水ドレン部材1とで水密的接続が施された状態となる。
【0036】
なお、第二の改修ドレン50bの筒部51の先端面に挿入前に接着剤を塗布しておき、その先端面を下側の改修ドレン支持部11bの支持面12に接着してもよい。このようにすれば、水密性が向上する。
【0037】
そして、第二の改修ドレン50bの鍔部52は、第一の改修ドレン50aの鍔部52の上に布設された状態となる。改修ドレン50bの鍔部52の周縁端部と改修ドレン50aの鍔部52の上面に跨るようにシール材を塗布または貼り付けることで、鍔部52,52同士間の隙間を止水する。なお、第二の改修ドレン50bの鍔部52が第一の改修ドレン50aの鍔部52よりも大きい場合は、鍔部52と防水層固定部40(または防水層5)との間にシール材を塗布または貼り付ける。
【0038】
以上説明したような排水ドレン部材1および排水構造8の改修方法によれば、改修ドレン50を配管部10に挿入して、改修ドレン支持部11の支持面12に当接させるだけで、改修ドレン50の先端部の全周に亘ってシールできるので、容易に水密的接続を施すことができる。つまり、改修ドレン50を、排水ドレン部材1の配管部10を介して、排水管7に水密的接続を施すことができる。よって、排水管7内に逆流や詰りが発生して満管状態が起こったとしても、既存排水ドレン(排水ドレン部材1)と改修ドレン(改修ドレン50)との隙間(改修ドレン0の外側)に排水が流入することはない。したがって、下地固定部30の周辺には浸水が発生しない。つまり、下地固定部30周辺は、改修ドレン50で水流領域と区画することができるので、仮に経年劣化によって、既存の防水層固定部40、防水層固定部40と配管部10との接合部、下地固定部30の周辺のシールが傷んでいだとしても、建物の躯体部分への浸水を防止できる。
【0039】
さらに、改修ドレン50の筒部51として蛇腹管ではなく既製の塩ビ管を用いているので、従来用いられていた蛇腹管と比較して、配管部10内の排水路の径の縮小化を大幅に抑えることができる。つまり、第一の改修ドレン50aの内側に第二の改修ドレン50bを装着しても、排水に必要な排水路の径を確保することができる。したがって、排水能力の低下を抑制することができるとともに、2回目の改修も可能となる。
【0040】
一方、改修ドレン50の鍔部52は、排水口6を覆っており、その周縁端部にシール材を設けているので、既存の排水ドレン(排水ドレン部材1)を撤去しなくて済む。これと同時に、本願発明によれば、改修ドレン50が、排水ドレン部材1の配管部10を介して、排水管7に水密的接続されている。したがって、防水層5を破損することなく残存させつつ、新たな水密的接続された防水構造を形成することができる。よって、既存の防水層5を再施工する必要がないので、改修作業を容易に行うことができる。これに対して、
図6に示した従来の蛇腹管部122を備えた改修ドレン120を用いた場合、水密的接続は行えない。水密的接続を行おうとすると、排水ドレン110を一旦切開・撤去して配管部102を露出した上で、排水ドレン110と同等の構成を再施工しなければいけない。つまり、従来の改修ドレンの水密的配管接続時に排水ドレンの撤去を行っていた場合と比較して、前記の改修方法では作業工程が大幅に低減される。要するに、前記の改修方法によれば、撤去に伴う既存の防水層5を切開することなく、改修ドレン50の水密的接続が可能である。これによって、改修工事中に降雨などが発生したとしても、雨水の躯体内への浸入を防ぐことができる。また、既存の防水層5を切開する必要がないので工期の短縮が図れるとともに、従来と比較して簡便な構成の改修ドレン部材1で水密的接続を行うことができる。したがって、改修工事にかかるコストを削減することができる。
【0041】
また、本実施形態では、改修ドレン支持部11を二段設けたことによって、改修ドレン50を2回装着することができる。これによって、排水構造8は、完成から10年、1回目の改修から10年、2回目の改修から10年の合計30年間、防水性能を確保できる。よって、近年の防水素材の発達により、30年まで長くなった防水層5の耐用年数を無駄にすることなく有効利用することができるので、高耐用の防水層5の性能を活かした排水構造8の改修を行うことができる。なお、完成から30年以上経過した場合には、既存の防水層5や排水構造8を撤去して、新たに施工することで改修する。
【0042】
次に、本発明の実施形態に係る排水ドレン部材の変形例について、
図5を参照して説明する。前記実施形態の排水ドレン部材1は、配管部10は一部材で構成されているが、変形例に係る排水ドレン部材1aは、
図5に示すように、配管部10aが、配管本体71と、配管本体71を下方の排水管(図示せず)に接続する継手部材72との二部材で構成されている。
【0043】
配管本体71は塩ビ管にて構成されており、筒状を呈している。配管本体71の上端部は、前記配管部10の上端と同等の形状である。
【0044】
継手部材72は筒状を呈している。継手部材72の上端部には、配管本体71を接続するための、配管本体支持部73が形成されている。配管本体支持部73は、継手部材72の内面の全周に亘って形成されており、配管本体71の下端面が当接する支持面74を有している。支持面74は、水平方向に広がる円環平面状を呈している。支持面74の平面形状は、配管本体71の先端面と同等の形状である。支持面74の上側に繋がる継手部材72の内周面の内径寸法は、配管本体71の外周面の外径寸法と同等である。この内周面は、配管本体71の外周面が嵌合される面である(以下「嵌合内周面75」という)。
【0045】
配管本体支持部73より下方の継手部材72は、前記配管部10の下部と同様の形状となっており、改修ドレン支持部11a,11b、嵌合内周面13等を備えている。前記配管部10と同じ構成の部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
このような構成の排水ドレン部材1aによれば、前記実施形態と同様の作用効果が得られる他に、配管本体71に既存の塩ビ管を利用できるので排水ドレン部材1aの製造コストを低減することができる。また、排水ドレン部材1aの長さ寸法を容易に調整可能である。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、排水ドレン部材1には、上下二箇所に改修ドレン支持部11,11が形成されているが、これに限定されるものではない。改修ドレン支持部11は、一箇所のみであってもよいし、三箇所以上形成してもよい。但し、現状の防水層5の耐用年数では、2回改修を行うことができる前記実施形態の構成が好ましい。将来的に防水層5の耐用年数がさらに伸びた場合に、改修ドレン支持部11を増やすのがよい。
【0048】
また、前記実施形態では、下地固定部30と防水層固定部40の平板部41は正方形形状であるが、その形状は正方形に限定されるものではない。円形や多角形など他の形状であってもよい。
【0049】
さらに、前記実施形態では、排水ドレン部材1は上下方向に延在して配置されているが、これに限定されるものではない。排水ドレン部材を、屋根やバルコニーの側部で立ち上がる壁面に形成された排水用開口部に設ける場合などは、横方向に延在あるいは傾斜して延在して配置してもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、排水ドレン部材1の下端部に排水管7が直接接続されているが、これに限定されるものではない。排水ドレン部材1の下端部を、既存の継手部材を介して排水管7に接続するようにしてもよい。
【0051】
また、前記実施形態では、配管部10と下地固定部30は、別離された部材にて構成されているが、これに限定されるものではなく、配管部の上端部に、鍔状に張り出した下地固定部を一体成形した構造であってもよい。