【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的は独立請求項によって達成される。好ましい実施の形態は従属請求項から導かれる。
【0025】
本発明は、乳酸菌目に属する微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せであって、該微生物若しくは該アナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せが少なくとも1つの病原微生物と共凝集することができ、該病原微生物が、黄色ブドウ球菌又は緑膿菌を含む群から選択される、乳酸菌目に属する微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せに関する。とりわけ感染性細菌株と凝集する乳酸菌が、とりわけ、それらと共凝集するため、微生物の局所濃度を低減させて、それらの成長を阻害するか、又は更にはそれらを殺傷するか、又は生物膜の形成を防止することができることは、全く驚くべきことであった。これは、抗生物質治療を必要とすることなく、代わりに病原性の乳酸菌を使用することができるため、従来技術のこれまでの治療の選択肢と比較して幾つかの重要な利点を伴う、従来技術からの脱却をなすものである。さらに、特異的な乳酸菌の製造は、抗生物質の製造及び以下の治療コストと比較して安価な代替手段をなすものである。これらの微生物に対して特異的に誘導されかつ更なる耐微生物性を全く生じさせない乳酸菌による治療は、病原微生物対策における特有のアプローチである。
【0026】
本発明の意味において、共凝集は、遺伝学的に異なる細菌種間の特殊な付着又は結合を説明するものである一方、共付着とはとりわけ、遺伝学的に同一の細菌種同士の付着又は結合を指す。したがって、この点において、乳酸菌が病原性細菌に結合することによって、とりわけ特異的結合により共凝集をもたらし得ることは、更に驚くべきことであった。
【0027】
本発明は特に、生物学的処理、化学的処理又は物理的処理の後であっても前記少なくとも1つの病原微生物の共凝集能が現れる、微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せに関する。好ましい微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せでは、前記少なくとも1つの病原微生物の共凝集能がおよそ3〜およそ8のpHで現れるのが好ましい。好ましい実施の形態において、微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せは、とりわけ前記少なくとも1つの病原微生物の生物膜の形成を阻害する能力を有する。
【0028】
とりわけ、前記微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せは、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillushelveticus)、ラクトバチルス・イエンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillusbulgaricus)、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacilluscasei)、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ガゼリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillusjohnsonii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillusrhamnosus)、ラクトバチルス・クルバトス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillusbrevis)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・フルクチボランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルス・ヒルガルディ(Lactobacillushilgardii)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ビリデセンス(Lactobacillusviridescens)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、又はそれらのアナログ、誘導株、フラグメント若しくは変異株からなる群から選択されるのが好ましい。
【0029】
前記微生物が、ドイツ微生物細胞培養物コレクションに寄託されており、かつDSM25906、DSM25907、DSM25908、DSMZ25909、DSM25910、DSM25911、DSM25912、DSM25913、DSM25914及びDSMZ25915の番号を掲げる微生物を含む群から選択される、上述の請求項のいずれか一項に記載の微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せを使用することができる。
【0030】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せを含む組成物に関する。本発明の意味において、組成物という用語は、調合薬と同じ意味で使用することができる。好ましい組成物は、美容上許容可能な賦形剤若しくは補形薬、薬学上許容可能な賦形剤若しくは補形薬、又は皮膚科学上許容可能な賦形剤若しくは補形薬を含む群から選択される、賦形剤又は補形薬を更に含有し得る。
【0031】
組成物は、好ましくは粉末、スティック、エアロゾルスプレー、ポンプスプレー、クリーム、分散液、エマルション、泡沫、軟膏、スプレー、エアロゾル、粉末、スティック、布、ローション、懸濁液、溶液、ゲルの形態であり得るか、又は基板上にあり得る。組成物は、スキンクリーム、皮膚用洗浄ローション又は皮膚用軟膏の形態であるのが好ましい。
【0032】
好ましい実施の形態において、組成物は、固体、液体、粘性体であるか又はエアロゾルのようなものであり得る。さらに、好ましいスキンクリーム、皮膚用洗浄ローション又は皮膚用軟膏は、固体、液体、粘性体であるか又はエアロゾルのようなものであり得る。
【0033】
好ましい組成物は好ましくは、プロバイオティクス、防腐剤又は他の抗菌物質を更に含むことができ、好ましい組成物は、医薬用組成物、獣医用組成物、化粧用組成物又は食品用組成物である。
【0034】
別の好ましい実施の形態において、組成物は、ビルダー物質、界面活性剤、酵素、有機及び/又は無機過酸化化合物、過酸化活性化剤、水混和性有機溶剤、金属イオン封鎖剤、電解質、pH調整剤、増粘剤、防汚剤、蛍光増白剤、灰色化(graying:黒ずみ)阻害剤、色移り阻害剤、発泡調整剤及び/又は着色剤を更に含み得る。
【0035】
さらに、組成物は、
a.とりわけバイオキノンと組み合わせて、皮膚のコンディションにプラスの影響を及ぼす有効成分、とりわけ、高齢者の皮膚にプラスの影響を及ぼす有効成分、とりわけ、ユビキノンQ10、クレアチン、クレアチニン、カルニチン、ビオチン、イソフラボン、カルジオリピン、リポ酸、不凍タンパク質、アルクチイン、ホップ及びホップ−モルト抽出物、
b.該結合組織を再構築する促進剤、とりわけイソフラボノイド、
c.乾燥皮膚上の皮膚機能を助ける有効成分、とりわけ、ビタミンC、ビオチン、カルニチン、クレアチン、プロピオン酸、緑茶抽出物、ユーカリ油、尿素、並びに鉱物塩、とりわけNaCl、海洋鉱物及びオスモライト、
d.刺激性の皮膚状態を緩和し及び/又はこれにプラスの影響を及ぼす有効成分、とりわけ、セリコシド、甘草の様々な抽出物、リコカルコン、とりわけリコカルコンA、シリマリン、シリホス(silyphos)及び/又はデクスパンテノール、
の群から選択される少なくとも1つの物質を更に含み得るのが好ましい。
【0036】
微生物が組成物中に生存可能又は生存不能な不活性形態で存在することが好ましい。加えて、微生物は、組成物中に好ましくは封入形態、噴霧乾燥形態及び/又は凍結乾燥形態で存在していてもよい。微生物が、とりわけ細胞可溶化物の形態で組成物中に存在することも好ましい。好ましい実施の形態において、前記微生物は、0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.005重量%〜5重量%、特に好ましくは0.01重量%〜3重量%の量で組成物中に存在する。
【0037】
本発明は、黄色ブドウ球菌又は緑膿菌を含む群から選択される病原微生物と共凝集する特性を有する乳酸菌を特定及び/又は選択する方法であって、
a.生物膜を形成する前記病原微生物をインキュベーションする工程と、
b.調査対象の乳酸菌を添加するとともにインキュベーションする工程であって、前記病原微生物と調査対象の該乳酸菌との間に共凝集を形成するための混合物を形成する工程と、
c.前記上清を除去することによって結合していない乳酸菌を分離する工程と、
d.共凝集した乳酸菌の観点から前記生物膜を測定する工程と、
を少なくとも有する、方法に関する。
【0038】
この方法は、好ましくは前記病原微生物の生物膜の阻害を調査する工程であって、調査対象の前記乳酸菌の添加を、生物膜を形成する前記病原微生物のインキュベーション中に行う工程、
を更に含み得る。
【0039】
さらに、本方法は、好ましい実施の形態において以下の方法工程:
試験対象の乳酸菌を添加していない対照と比較する、光学密度の測定を用いた、結合していない細胞の除去による、生物膜の形成の定量化、
により補われるものであってもよい。
【0040】
別の態様において、本発明は皮膚疾患、とりわけ、ブドウ球菌熱傷様皮膚症候群、伝染性膿痂疹、表在性毛嚢炎、膿痂疹化、皮膚膿瘍、フルンケル、癰、膿瘍、蜂窩織炎、乾燥皮膚、皮膚掻痒、皮膚発赤、皮膚の刺激、極めて脂性の皮膚、座瘡、糖尿病足、褥瘡潰瘍、神経皮膚炎、急性リンパ節炎、毛巣洞、毛巣瘻、毛巣嚢胞、毛巣瘻、毛巣洞、皮膚及び皮下組織の局部感染、膿皮症、化膿性皮膚炎、敗血症性皮膚炎、膿瘍性皮膚炎、皮膚炎及び湿疹、アトピー性湿疹、脂漏性湿疹、おむつかぶれ、アレルギー性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、剥脱性皮膚炎、毒性接触皮膚炎、慢性単純性苔癬、痒疹、掻痒症及び他のタイプの皮膚炎、丘疹落屑性皮膚疾患、乾癬、類乾癬、外皮付属器の疾患、瘢痕性脱毛症、脱毛性毛包炎、並びに皮膚及び皮下組織の他の疾患、下腿潰瘍、皮膚外傷、切り傷(scraps)及びかさぶた、事故又は手術後の創傷の治療又は予防のための調合薬、医療品又は化粧用作用物質の製造への組成物の使用に関する。
【0041】
好ましい実施の形態において、表面の処理のための清浄剤又は消毒剤を製造するのに組成物を使用してもよい。加えて、組成物は、身体衛生、医療品及び予防の分野において使用される製品を製造するのにも有利に使用することができる。
【0042】
組成物は好ましくは、皮膚表面に塗布する、ローション、振盪水剤、粉末、ヒドロゲル、クリーム、クレサ(cresa)、軟膏、脂性軟膏又はペーストを製造するために使用することができる。
【0043】
皮膚感染の局所治療に特異的な作用を有しかつ慢性創傷の治癒を促す抗微生物添加剤を製造するのに好ましくは本組成物を使用することができることが有利に見出された。本組成物は、好ましくは予防的又は治療的に使用し得る。さらに、本組成物は好ましくは局所的に塗布し得る。
【0044】
別の態様において、本発明は、微生物、又は組成物と、身体衛生用の機器若しくは装置、リンス及び/又はペーストとを含む、衛生的な治療用キットに関する。
【0045】
好ましい塗布形態において、本発明は、動物用、とりわけ、イヌ、ウマ、ネコ及び齧歯類(ウサギ、野ウサギ、ハムスター、モルモット)並びにニワトリ、ブタ及びウシ等の商用動物用の噴霧溶液又は洗浄溶液に抗微生物添加剤として使用して、皮膚、毛及び羽毛上の汚染微生物数を著しく低減させることができる。
【0046】
このため、本発明はまた、とりわけ、乳児、幼児、小児、健康なヒト、高齢者、免疫抑制者、病理学的な皮膚の変化(とりわけ、ブドウ球菌熱傷様皮膚症候群、伝染性膿痂疹、表在性毛嚢炎、膿痂疹化、皮膚膿瘍、フルンケル(せつ腫症)、癰(膿瘍)、蜂窩織炎、乾燥皮膚、皮膚掻痒、皮膚発赤、皮膚の刺激、極めて脂性の皮膚、座瘡、糖尿病足、褥瘡潰瘍、神経皮膚炎、急性リンパ節炎、毛巣洞(毛巣瘻、毛巣嚢胞、尾骨瘻、尾骨洞を含む)、皮膚及び皮下組織の他の局部感染(例えば、膿皮症、化膿性皮膚炎、敗血症性皮膚炎、膿瘍性皮膚炎);また、皮膚炎及び湿疹の様々な形態(例えば、アトピー性湿疹、脂漏性湿疹、おむつかぶれ、アレルギー性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、剥脱性皮膚炎、毒性接触皮膚炎、慢性単純性苔癬、痒疹、掻痒症及び他のタイプの皮膚炎)を伴うヒトの治療又は予防に使用される、微生物、とりわけ乳酸菌、それらのアナログ、変異株、誘導株又はフラグメント、並びにこれらを含有する組成物に関する。それらはまた、丘疹落屑性皮膚疾患(乾癬、類乾癬)、外皮付属器の疾患(例えば、脱毛性毛包炎を含む、瘢痕を伴う脱毛症)、並びに皮膚及び皮下組織の他の疾患(例えば下腿潰瘍)、既往の皮膚損傷(例えば乾燥皮膚)、皮膚外傷(例えば、疥癬、事故又は手術後のものを含む創傷)を伴うヒト、又は商用動物及びペットにおける治療に使用することができる。
【0047】
好ましい微生物はすなわち、とりわけ黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌の群から選択される少なくとも1つの病原微生物と共凝集する、好ましくは特異的に結合する能力を有する、乳酸菌目に属する微生物、又はそれらのアナログ、誘導株、変異株若しくはフラグメントである。好ましい乳酸が、共生生物の皮膚細菌、又はコリネバクテリウム・ジェイケイウム(Corynebacterium jeikeium)、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcusluteus)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)若しくはとりわけスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)等の微生物との共凝集も結合も全く引き起こさないことは、全く驚くべきことであった。例えば、スタフィロコッカス・エピデルミディスは、皮膚微生物叢の日常的な(unremarkable)共生生物である。皮膚中又は皮膚上に見られる様々な微生物の相互作用では、多くの哺乳動物の健常な皮膚微生物叢に複数の種が存在し、少なくとも健常な皮膚上ではそれらによる微生物平衡状態にあるため、例えば凝集に起因するこの細菌への影響、それ故、身体衛生に的を絞って使用される他の微生物への影響は、本発明の範囲内では好ましくないと考えられる。
【0048】
言い換えれば、好ましい乳酸菌は、病原性細菌黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌と特異的に共凝集する。従来技術から導かれるタイプのものはない。従来技術では、共生微生物との結合を同様に示す乳酸菌のみが記載されているため、それらは、マイナスの影響を引き起こすことなく使用することができない。それらとは対照的に、好ましい乳酸菌は、共生生物の皮膚細菌、又は皮膚微生物叢に生息する他の病原微生物との任意の結合又は共凝集を示さない。別の好ましい実施の形態によれば、本発明による乳酸菌は、皮膚上の共生微生物との結合能を有しない。
【0049】
健常な皮膚は、共生生物形態すなわち相互関係にある、細菌及び真菌等の微生物で密に占有されていることが、当業者に知られている。これらの微生物は、皮膚表面の自然要素であり、皮膚微生物叢という用語によって要約される。皮膚微生物叢という用語に含められる微生物は、病原性生物から皮膚自体及び全身を保護するための重要な必須条件であり、バイオドーム(biodome)の一部である。この点において、好ましい乳酸菌は、皮膚微生物叢を不平衡にはせず、代わりに、病原性細菌黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌と結合し、及び/又はそれらと共凝集することが特に有利である。
【0050】
微生物は、病原微生物黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌ととりわけ特異的な付着特性を有するとともに、共凝集を形成する。しかしながら、乳酸菌が、微生物スタフィロコッカス若しくはシュードモナスの他の病原性種と同様に共凝集すること、又はそれらと少なくとも相互作用することも好ましい。
【0051】
本発明による微生物は少なからず生物膜の形成を防止するという特性を有する。好ましい乳酸菌が、病原性細菌と共凝集し、及び/又は病原性細菌に対する付着特性を有するという事実に起因して、例えば、病原性細菌の対応する表面付着因子をマスキング及び/又は結合させるによって、病原微生物をマスキングすることができ、これにより、多くの病原性因子の不顕在化(concealment)、ひいては汚染細菌数の低減及び/又は生物膜の形成の阻害がもたらされる。
【0052】
本発明はとりわけ乳酸菌群に関するものであるが、特許出願による教示の画一性は保たれる。特許請求の範囲に記載した微生物は共通の特性又は効果を有する。構造又は機能の共通点を合わせると、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌との共凝集と、皮膚の共生微生物との不結合と、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌による生物膜の形成の予防及び/又は構築された生物膜の破壊との間の機能的関連性がもたらされる。したがって、これらの共通の特徴は、特徴の任意の概要をなすものではないが、その代わり、いわば本目的のためのこれらの微生物の適応性を有利に認めかつ特徴とする、特許請求の範囲に記載した微生物の共通の特質(finger print)からなされる。
【0053】
好ましい微生物、とりわけ乳酸菌は、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・イエンセニイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・クルバトス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・フルクチボランス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ビリデセンス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、又はそれらのアナログ、誘導株、フラグメント若しくは変異株を含む群から選択される。これらの微生物は、機能的関連性により互いに関連付けられ、本発明の画一的な概念をなすため、それらは特性及び/又は効果を共有する、すなわち、特に病原性細菌黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌と共凝集し、皮膚及び/又は粘膜のいずれの共生微生物とも結合せずに、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌による生物膜の形成も防止する。これらの乳酸菌としては、とりわけ、ドイツ微生物細胞培養物コレクションによりDSM25906、DSM25907、DSM25908、DMZ25909、DSM25910、DSM25911、DSM25912、DSM25913、DSM25914及びDSMZ25915のコード番号で寄託されている微生物を含む群から選択される、微生物若しくはアナログ、フラグメント、誘導株、変異株、又はそれらの組合せが挙げられる。同一の有利な特性を有する一群の乳酸菌を特定することができたことは全く驚くべきことであった。これらの特性を全て併せ持つ一方で、非病原性でもあるとともに、皮膚の自然微生物叢に何ら損傷も影響も生じさせない細菌、とりわけ乳酸菌を説明してきた。また、組成物又はその他のものとして好ましい乳酸菌を適用することにより、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌による宿主細胞の結合及び侵襲が防止されることも見出した。この原因は、今までのところ知られていないが、更なる実験によって特定されるはずである。
【0054】
好ましい微生物、とりわけ乳酸菌の別の驚くべき利点は、それらが予防的にも使用することができる点である。好ましい微生物、とりわけ乳酸菌の別の驚くべき利点は、それらが予防的にも使用することができる点である。言い換えれば、乳酸菌及び/又はそれを含有する組成物は、皮膚又は皮膚微生物叢に何の損傷ももたらさずにリスクのある皮膚の範囲及び/又はリスクのあるヒト若しくは動物の集団に予防的に適用することができる。例えば、長い間寝たきりであるヒトにおいて止血点に開放創が生じるおそれがあることが知られている。初期実験によって、これらの部位の予防的治療が、開放創の出現を防止することができるか、又は黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌により引き起こされる更なる感染を少なくとも防ぐことができることが示された。
【0055】
好ましい実施の形態において、本発明の意味における皮膚は、とりわけ、外部から内部を隔てることを担う、ヒト又は動物の身体の外側器官であると理解される。好ましい実施の形態において、本発明の意味における皮膚の範囲には、皮膚の最上層、革質部若しくは真皮、又は皮下組織という構成要素が含まれる。また、皮膚の最上層(表皮)は、角質層(上皮角質層(stratum corneum))、透明層(淡明層(stratum lucidum))、顆粒層(果粒層(stratum granulosum))、有棘細胞層(有棘層(stratumspinosum))及び/又は基底層(基底細胞層(stratum basale))という本発明による層で構成される。この範囲における細胞の各修飾は、本発明の意味においては皮膚の範囲における細胞修飾からなる。本発明による皮膚の範囲の構成要素でもあり得る真皮(dermis)又は革質部は好ましくは、結合組織線維で構成され、栄養及び表皮のための支えを提供するものである。表皮との境界帯域における毛細血管系も本発明の意味では皮膚の範囲に属し、皮脂腺及び汗分泌腺(sudoriferous glands)すなわち汗腺(sweat glands)も同様である。本発明の意味における真皮は、乳頭層と網状層とに細分類することができる。加えて、本発明の意味における皮膚の範囲は、皮下組織(皮下)又は身体内部の組織中又はその上のいずれの範囲、すなわちいずれの位置も、又はいずれの器官若しくは器官要素もとることができる。周辺構造から器官を隔てる組織壁は、本発明の意味における皮膚とすることができる。加えて、皮膚の範囲の発明概念には、髪、皮脂腺、立毛筋、爪、角、並びに汗分泌腺、とりわけエクリン汗分泌腺及びアポクリン汗分泌腺、また乳腺等の外皮付属器も含まれると理解される。任意の細胞修飾、とりわけ、正常状態から逸脱する細胞成長は、本発明による作用物質を用いて、好ましくは皮膚の外部範囲に限定されることなく処理することができる。しかしながら、本発明の意味における皮膚の範囲には、肢の指若しくは足裏の皮膚等の鼠径部の皮膚、又はそれに関連する外皮及び皮膚付属器も含まれ得る。
【0056】
皮膚の乳酸菌の忍容性は、創傷における皮膚感染症及び細菌感染症若しくは他の疾患、又はスタフィロコッカス群若しくはシュードモナス群由来の微生物が起こす症状の治療の成功に必須のものである。
【0057】
好ましい組成物は、とりわけセッケン、ローション、粉末、合成洗剤、泡沫、スティック、エマルション、スプレー、クリーム、ゲル、シャンプー、液体セッケン又は消臭剤中に含めることができる。また、組成物を、とりわけ、洗浄剤、リンス剤、清浄剤又は消毒剤(例えば、セッケン、粉末、ペースト、溶液、エマルション、ローション)、掃除用タオル及び/又は消毒タオル、シャンプー、リンス、又は皮膚、髪及び/又は頭皮用の塗り薬、クリーム、軟膏、皮膚清浄用ローション及び/又はスキンケアローション、目、耳、口、鼻又は喉の中又はそれらの上に使用される溶液(例えば、滴剤、スプレー、リンス)として添加することができ、及び/又は、包帯又は創傷被覆材中に組み込んで病原微生物の形成を抑制し、病原微生物と結合させ、凝集体として病原微生物を除去し及び/又は病原微生物を阻害するか若しくは病原微生物を死滅させることによって、病原微生物の数を低減させることができるプロバイオティクスとして使用することが好ましい。
【0058】
本発明による組成物を上述の医薬品形態に組み込むことによって、本発明による組成物の利点をもう一段階改善することができたことは、全く驚くべきことであった。当業者は、本発明による組成物を賦形剤物質、例えば、エマルション、又は皮膚塗布用の他の製品、例えば、好ましくは無水物又は含水物であってもよく、本発明によれば水性形態を単相系及び多相系に分類することができる液体形態等の中に導入するという他の配合概念に精通している。加えて、無水物又は含水物である半固体形態を使用してもよく、これもまた単一相系、及び水を含有する半固体形態も可能な多相系に分類することが可能である。親油性又は親水性である固体形態も使用することができるのが好ましい。かかる形態の例としては、上記で既に述べたそれらの形態に加えて、例えば、脂性軟膏、泡沫、粉末、スティック、ゲルクリーム、水分散ゲル、水性エマルション、ローション、軟膏、スプレー及びクリームが挙げられる。ここで当業者は、かかる賦形剤物質をまず、皮膚上の感触に基づき、リッチ/高価なものと、新鮮で軽いものとに区別することができ、次に、粘度の観点から低粘度のものと、高粘度のものとに区別することができ、ヒドロゲル若しくはハイドロクリーム、及び/又はO/W型エマルション若しくはW/O型エマルションは高粘度を有することを認識している。液体塗布形態を使用する場合、それらは、上記に説明したように、含水物系と無水物系とに細分類することができる。無水物系の中でも、無極性系、乳化剤を含まない極性系、及び乳化剤を含む極性系が特に好ましい。含水物系の中では、溶液及びマイクロエマルション等の単一相系が好ましく、多相系の中では、多重エマルションであるW/O型エマルション若しくはO/W型エマルションが好ましい。固体/液体系の中では、好ましい形態として、懸濁液、又は懸濁液系/エマルション系等の液体/固体/液体系が挙げられる。当業者は、かかる賦形剤を供給するための様々な可能性を認識している。O/W型エマルションでは、好ましい主な医薬物質には、O/W型乳化剤、W/O型乳化剤、親水性液体成分及び親油性液体成分が含まれる。W/O型エマルションでは、好ましい主な医薬物質には、W/O型乳化剤、O/W型乳化剤、液体及び半固体の親油性成分、ゲル形成剤、親水性液体成分及び/又は塩が含まれる。
【0059】
好ましい半固体賦形剤物質の中では、無水物系及び含水物系が様々な用途に好ましい。無水物系は、乳化剤を含まない無極性系又は極性系、例えば、リポゲル、オレオゲル又はポリエチレングリコールゲルからなっていてもよく、及び/又は、O/W型吸収性基剤若しくはW/O型吸収性基剤における、乳化剤を含む無極性系からなっていてもよい。含水物系は好ましくは、ヒドロゲル若しくはマイクロエマルションゲル等の単一相系、又はO/W型クリーム、W/O型クリーム若しくは両親媒性系等の多相系からなっていてもよい。好ましい半固体製剤は、室温と皮膚温度との間の温度範囲で皮膚に塗布するために、又は粘膜に塗布するために、塗り広げることができる製剤であり、該製剤は局所的な効果を有するか、有効成分を輸送するか又は皮膚に対する軟化効果又は保護効果を有する。好ましい製剤としては、狭義の軟膏、クリーム、ゲル及び/又はペーストが挙げられる。軟膏、クリーム、ゲル及びペーストに加えて、オレオゲルも透明な半固体単一相系として使用することができる。当業者は、米国特許第6,187,323号又はAiache et al. 2001により、半固体系を配合するための様々な無水物化合物を認識しており、これらとしては、例えば、本発明によりバイオゲル(biogel)と称され得る、オレオゲル(oleogel)及びヒドロゲルの化合物が挙げられる。加えて、水分散ゲル又は様々な脂質は、本発明による賦形剤物質をもたらするのに使用することができる。脂質を使用する場合、有機ケイ素化合物及び有機炭素化合物を使用して、分散系に脂質相を供給することができ、ここで、有機炭素化合物は、例えば、非加水分解性脂質若しくは加水分解性脂質(グリセロール)又はワックスエステルを用いて供給することができる。かかる系の利点としては、皮膚の柔軟性の改善及び弾性の増大、並びに脂質組成物に応じて、物質の放出及び侵入を増大させる作用を有する能力が挙げられる。当業者は、例えば、時間パラメータ内における侵入を増大又は減少させるのに使用する必要のある脂質がどれかを知っているであろう。
【0060】
付加的な好ましい賦形剤物質としては、例えば、水分散ゲル及び/又はマイクロカプセル、微小球(microspherules)若しくはペレット剤(マクロビーズ)が挙げられる。既述した賦形剤は、安定性を増大させて、皮膚への最低限の塗布時間を確保するのに役立つ。好ましい半固体単一相系は、親水性液体成分、とりわけ水及び(多価)アルコール、親水性ゲル形成物質、塩形成物質及びW/O型乳化剤、O/W型乳化剤、液体、半固体及び固体の親油性成分、並びに親油性ゲル形成物質及びビルダーという主な医薬物質を用いて調製することができる。当業者は、或る特定の効果を達成するためにこれらの物質をどのように組み合わせるべきかを知っているであろう。
【0061】
また、当業者は、皮膚製品用の他の医薬製剤についても知っているであろう。本特許出願によれば、例えば、医薬化合物は全て、JDDG; 2007, 5:367-383においてDaniels及びKnieによる引例に開示されている。当業者は、種々の医薬製剤が、皮膚において種々の効果を有することを認識しており、生薬(galenical)組成物を種々の量で皮膚に塗布するであろう。JDDG; 2007, 5:367-383の内容は、引用することにより特許出願による教示の開示内容の一部をなすものとする。本発明による好ましい製品としては、例えば、親油性若しくは親水性の溶液、親油性若しくは親水性のエマルション、親油性若しくは親水性の懸濁液、特別な液体製剤、疎水性若しくは親水性の軟膏、水乳化軟膏、親油性、親水性若しくは両親媒性のクリーム、ヒドロゲル、疎水性若しくは親水性のペースト、及び/又は粉末が挙げられる。
【0062】
実験から、好ましい乳酸菌、とりわけラクトバチルス細胞が、黄色ブドウ球菌細胞及び/又は緑膿菌細胞と接触して共凝集体を形成することが示された。共凝集体の形成に起因して、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌が、とりわけ皮膚創傷内へ侵入するか、又は皮膚上に定着して、コロニーを形成し、生物膜を構築、付着及び形成させることができない。黄色ブドウ球菌細胞及び/又は緑膿菌細胞、とりわけそれらの細胞表面は、乳酸菌、とりわけラクトバチルス細胞によってマスキングされるため、黄色ブドウ球菌細胞及び/又は緑膿菌細胞は好ましくは皮膚上皮細胞と結合することができなくなる。黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌は、皮膚上皮細胞と結合することができないため、炎症反応が起こらず及び/又は皮膚刺激が低減又は防止される。黄色ブドウ球菌細胞及び/又は緑膿菌細胞、とりわけそれらの細胞表面は、乳酸菌、とりわけラクトバチルス細胞により結合される。その後、別個に存在するか又は小さい凝集体で存在する黄色ブドウ球菌細胞及び/又は緑膿菌細胞と比較して、皮膚、創傷及び包括的に表面(毛、羽毛、鋼、プラスチック及び金属の表面)からより容易かつより効率的及び効果的に除去する(洗い流す)ことができる、ラクトバチルス細胞及び/又は黄色ブドウ球菌細胞及び/又は緑膿菌細胞からなる細胞共凝集体が形成される。
【0063】
本発明の意味において、プロバイオティクス微生物は、ヒト及び/又は動物の身体に有益な効果を有する細胞を含む。好ましい組成物は、プロバイオティクス組成物として使用され、また、ヒト又は動物の身体に有利な効果を有する乳酸菌を含有する。有益な効果とはとりわけ、皮膚微生物叢を改善することとすることができる。とりわけ、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌等の、皮膚微生物叢において望ましくない微生物を、プロバイオティクス微生物と望ましくない微生物との直接的な相互作用によって、及びとりわけ、プロバイオティクス微生物の発現産物に起因する望ましくない微生物の代謝の阻害に基づく間接的な相互作用によって、阻害することができる。実験から、病原微生物黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌が、好ましい乳酸菌による共凝集後に何ら成長を示さない、すなわち、細胞集団が更に繁殖しない代わりに、共凝集体において細胞がマスキング、結合及び/又は死滅することが示された。
【0064】
本明細書に記載される乳酸菌のアナログ、変異株、誘導株又はフラグメントは、とりわけ乳酸菌の生物学的、化学的又は物理的な処理によって生産され、また驚くべきことに処理後でさえも有利な特性を示す。乳酸菌は、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・イエンセニイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・クルバトス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・フルクチボランス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ビリデセンス、ビフィドバクテリウム・ビフィダムからなる群から有利に選択され、好ましくは、DSM25906、DSM25907、DSM25908、DSM25909、DSM25910、DSM25911、DSM25912、DSM25913、DSM25914及びDSMZ25915として番号がつけられた、ドイツ微生物細胞培養物コレクションに寄託される微生物を含む群から選択される。
【0065】
さらに、乳酸菌、フラグメント、誘導株、変異株、アナログ、又はそれらの組合せが、物理的、化学的及び/又は生物学的な死滅後でさえも有利な特性を依然として有すると考えられることは、驚くべきことであった。例えば、好ましい株、すなわち、DSM25906、DSM25907、DSM2598、DSMZ25909、DSM25910、DSM25911、DSM25912、DSM25913、DSM25914及びDSMZ25915は、70℃における20分間の熱処理後又は超音波による処理後でさえも、病原体との共凝集をもたらし、生物膜の形成を防止し、また共生微生物の結合を何ら示さない。このため、乳酸菌、フラグメント、誘導株、変異株、アナログ、又はそれらの組合せは有利なことに、組成物の好ましい実施の形態では死滅した状態でも存在し得る。組成物の安定性及び有用性は、このように大幅に持続され得る。さらに、組成物は、生存可能な微生物の使用を許さない他の塗布領域においても使用することができる。組成物中の乳酸菌が、不活性で生存可能又は生存不能にかかわらず、依然として病原微生物との特異的結合及び/又は共凝集を可能とし得ることは、全く驚くべきことであった。組成物は有利なことに、食品、食品添加剤又は医薬品(pharmaceutical agent)、医療品、化粧品、清浄剤添加剤として、及び動物用の食料又は飲料として使用することができる。
【0066】
好ましい組成物は、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌の群から選択される少なくとも1つの病原微生物を共凝集させる能力を有する、本発明による乳酸菌、又はそれらのアナログ、フラグメント、変異株又は誘導株を含有するものであり、ここで組成物は、身体衛生、理学療法及び/又は予防のために使用される。
【0067】
好ましい微生物は、乳酸菌属又は乳酸菌目の代表的なもの、すなわち、グルコースの発酵によって乳酸を生産するグラム陽性細菌である。本発明による微生物は一方では、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌の群から選択される少なくとも1つの病原微生物との特異的な共凝集能を有することを特徴とする。この結合は、本発明による微生物と、特異的に結合された病原微生物との凝集体の形成をもたらす。共凝集体の形成に起因して、後者のもの、すなわち病原微生物は、機械的かつ標的を絞って、例えば洗い流すことによって、容易に除去することができ、これは過去に知られている手段では不可能であった。ラクトバチルス細胞、及び/又は黄色ブドウ球菌細胞及び/又は緑膿菌細胞からなる細胞共凝集体は、別個に存在するか又は小さい凝集体で存在する黄色ブドウ球菌細胞及び/又は緑膿菌細胞と比較して、皮膚、創傷及び包括的に表面(毛、羽毛、鋼、プラスチック及び金属の表面)からより容易かつより効率的及びより効果的に除去する(洗い流す)ことができる。
【0068】
本発明の意味において、並びに包括的に微生物学及び衛生学、とりわけヒト微生物学及び身体衛生の分野において、「特異的結合」又は「共凝集」という用語は、遺伝学的に異なるタイプの細胞に属する細胞の相互認識及び付着を指すものと理解される。その細胞表面上では、細菌が、受容体、及び細胞同士の付着に用いられる他の細胞タイプへの付着因子としての構造体を表す。この付着は、病原微生物及び共生微生物とのコロニー形成において優れた役割を担うため、付着における介入により、幅広い結論をもたらすことができる。本発明による微生物は、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌の群に由来する少なくとも1つの微生物との特異的結合能、とりわけ共凝集能を有することに起因して、本発明による微生物と病原微生物とから凝集する。得られる共凝集体は、例えば、表面、皮膚、組織及び/又はコロニー形成の一部の他の部位又はリザーバをすすぐことによって、容易に除去することができるため、病原微生物の数は確実に低減する。加えて、表面、皮膚、組織及び/又はコロニー形成の他の部位又はリザーバへの初期及び/又は新たな付着は防止され、及び/又は病原微生物の表面構造をマスキングすることによって低減される。細胞が互いに結合して凝集体を形成する場合に、このプロセスはとりわけ凝集と称される。1つの細胞種のみが凝集体の形成に関与する場合、そのプロセスは自動凝集又は自己凝集と称される。少なくとも2つの異なる細胞種が凝集体の形成に関与する場合、このプロセスはとりわけ共凝集として知られている。
【0069】
本発明の意味において、「少なくとも1つの病原微生物の特異的結合」は、とりわけ、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌の群に由来する少なくとも1つの細菌に結合する、本発明による微生物の特性を指すものと理解される。
【0070】
本発明による微生物の好ましい実施の形態によれば、本発明による微生物はまた、生物学的、化学的又は物理的な処理、例えば最低70℃の熱処理の後であっても、少なくとも1つの病原微生物に対する特異的結合能が存在することを特徴とする。言い換えれば、病原性細菌、とりわけ黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌との特異的な相互作用能又は結合能が影響を受けないことから、結合又は相互作用を構築することができるため、好ましい乳酸菌が好ましい組成物中に存在し得ることが好ましい。
【0071】
代謝活性が乳酸菌細胞から全く生じないため、不活性又は生存不能な乳酸菌細胞が特に有利とすることができる。
【0072】
乳酸菌の別の好ましい特性によれば、本発明による微生物は、上記の特性、すなわち、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)群から選択される少なくとも1つの病原微生物との特異的結合能に加えて熱安定性も特徴としてもよく、また本発明の微生物は、高温、好ましくは少なくともおよそ60℃、より好ましくは少なくとも65℃、更に好ましくは少なくとも70℃における少なくとも20分間、好ましくは25分間、より好ましくは少なくともおよそ30分間の処理に耐えることができるとともに、上記病原微生物の共凝集能に関しては変わらないままである。
【0073】
組成物の好ましい実施の形態において、乳酸菌は、依然として共凝集能及び/又は生物膜形成防止能を有するため、生存可能若しくは死滅した不活性なものであるか、又はそれらの一部及びフラグメント、例えば、これらの細菌の、酵素による又は機械的な分解産物(例えばフレンチプレス等)若しくは代謝産物であるとされる。また、乳酸菌は、封入形態、噴霧乾燥形態及び/又は凍結乾燥形態、すなわち、好ましい組成物中に封入形態、噴霧乾燥形態及び/又は凍結乾燥形態で用いられることが好ましい。さらに、乳酸菌を消化細胞の形態で使用する場合が有利とすることができる。
【0074】
さらに、病原微生物への特異的結合に関する本発明による乳酸菌の能力がおよそ3〜8のpHにおいても持続する場合が好ましい。これは、乳酸菌が3〜8のpHの媒体中存在するとともに、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌との結合能を依然として有し得ることを意味する。当業者は、皮膚が弱酸性pHを有することを認識している。この点において、好ましい乳酸菌が、幅広いpH範囲において黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌との共凝集能を示すことは、特に有利となる。例えば、化粧品に起因して又は身体の種々の領域において、皮膚のpHは様々な値をとり得る。好ましい乳酸菌は、広いpH範囲で有利であり、及び/又は好ましい範囲において好ましい特性を有することができる。このため、好ましい乳酸菌は、身体の種々の領域において普遍的に有利に使用することができる。
【0075】
さらに、本明細書中に記載される発明は、プロテアーゼ処理(例えば、トリプシン、TPCK処理されたトリプシン、リゾチーム、プロテイナーゼK、プロナーゼ、トロンビン、PNGアーゼ、ペプシン、キモトリプシン、パパイン)後にも共凝集特性を有する組成物、とりわけ革新的なプロバイオティクスである。
【0076】
本発明による乳酸菌は驚くべきことに、とりわけ、およそ25℃〜42℃の広い温度範囲において、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌との共凝集特性を示す。
【0077】
それ故、「約」又は「およそ」といった用語によって特徴付けられる、本明細書において及び本発明において挙げられる範囲の記述全てにおいて、正確な数値範囲は、「約」又は「およそ(approx./approximately)」という表現を伴って示す必要はないが、その代わり、示される数に関する上下のほんの僅かな偏差も本発明の範囲内にあることは、当業者にとって明らかであろう。
【0078】
好ましくは挙げられる病原微生物への本発明による乳酸菌の結合は、これらの病原微生物の成長の阻害をもたらす。
【0079】
病原微生物と本発明による乳酸菌との結合に起因して、沈殿物として存在する凝集体が、撹拌することなく室温において、とりわけ5分〜100分後に形成されることは、驚くべきことであった。
【0080】
創傷における主要な好気性の病原性細菌は、とりわけ、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌である。創傷治癒の炎症期は通常、潜在的な病原微生物を駆除するようにかつ細胞の再生に役立つ。しかしながら、難治性の創傷は多くの場合、既に免疫抑制されかつ炎症反応が低下した患者に生じる。この免疫応答の低下によって、一次創傷細菌を効果的に撃退することができなくなるため、細菌が創傷に侵入して、生物膜として組織化されるコロニーを形成してしまう。宿主の防御系に対して耐性を示すのはこれらの生物膜だけでなく、生物膜内に含まれる浮遊細胞又はマイクロコロニーも耐性を示す。
【0081】
好ましい実施の形態において、好ましい乳酸菌、アナログ、フラグメント、変異株、誘導株、又はそれらの組合せは好ましくは、a)生物学的、化学的及び/又は物理的な処理後の熱安定性又は安定性、又はb)黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌による生物膜形成阻害能の特色の少なくとも1つを有する。本発明による乳酸菌が、生物学的、化学的及び/又は物理的な処理後でさえも、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌と特異的に結合する能力を保持すると考えられることは、全く驚くべきことであった。
【0082】
本発明による乳酸菌の別の特性は、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌による生物膜の形成を阻害する能力である。これらの細菌は、超音波、洗浄剤、プロテアーゼ又は熱に耐性を示しかつ抗微生物物質にも耐性を示す極めて強靭な生物膜を形成する。本発明による微生物はとりわけ、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌による生物膜の形成を阻害する能力を有する。生物膜の形成を阻害することから、これらの病原性細菌は、生物学的な表面又は無機表面にコロニーを形成することができなくなり、結果的に疾患を起こすことがなくなる。
【0083】
それ故、本発明の意味において、「黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌による生物膜の形成を阻害する」という語句は、とりわけ本発明による乳酸菌が、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌と相互作用して、すなわち、それらに結合するか、又は別の形で生物膜を形成することができないようにそれらに影響を与える特性を指すものと理解される。
【0084】
それ故、好ましい実施の形態によれば、本発明による微生物は、上述の特性、すなわち、生物学的、化学的及び/又は物理的な処理に対する耐性、耐熱性、特異的結合能、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌との共凝集の少なくとも1つを有し得る。特性の好ましい組合せとしては、例えば、生物学的、化学的及び/又は物理的な処理に対する耐性、耐熱性、及び黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌との結合能、又は、生物学的、化学的及び/又は物理的な処理に対する耐性、耐熱性、及び黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌による生物膜の形成の阻害が挙げられる。
【0085】
本事例では、既に述べられるように、「乳酸菌属又は乳酸菌目に属する微生物」という表現も、本明細書に記載される本発明による微生物の特徴及び/又は特色又は特性を依然として有するそれらの誘導株、変異株、アナログ又はフラグメントを含むと理解される。本発明による乳酸菌は、ラクトバチルス・ガゼリ種、ラクトバチルス・クリスパータス種及びラクトバチルス・イングルビエイ(Lactobacillus ingluviei)種の細菌であることが好ましい。
【0086】
したがって、乳酸菌属に属する上述の微生物の「変異株又は誘導株」、とりわけラクトバチルス種であり、本事例において本発明による乳酸菌について特許請求の範囲に記載されるものと同じ特徴を有する変異株又は誘導株及び同様の株が、とりわけ特許請求の範囲に記載される。これは少なくとも、黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌の群から選択される少なくとも1つの病原微生物との特異的な共凝集能を指すものと考えられる。加えて、以下の特色:(i)生物学的、化学的及び/又は物理的な処理、とりわけ少なくとも30分間の70℃を超える熱処理に対する特異的結合能の耐性;(ii)スタフィロコッカス・エピデルミディス又は他の皮膚上の共生微生物と結合しないこと;(iii)少なくとも1つの生物膜形成病原微生物との特異的結合能;(iv)黄色ブドウ球菌又は緑膿菌による生物膜形成阻害能;(v)pH3〜8における特異的結合の存在の少なくとも1つを有することが好ましい。このような好ましい誘導株は、例えば遺伝学的技術によって生産することができる。本発明の意味において、「遺伝学的技術によって生産される」という用語はとりわけ、組換えDNA技術によって遺伝子修飾を引き起こして遺伝子を修飾し得るように、遺伝学的技術分野におけるin vitro及びin vivoでの核酸の修飾について当業者が精通しているあらゆる方法を含む。
【0087】
したがって、本発明はとりわけ、本発明による乳酸菌の特性を依然として有する、本発明による乳酸菌のフラグメントも含む。本発明の意味において、「フラグメント」はとりわけ、本発明による微生物の細胞成分、及び好ましくは細胞膜の一部である。当業者は、従来技術から細胞膜画分を得る方法に適切に精通していると考えられる。
【0088】
本発明による微生物は好ましくは単離形態又は精製形態であり、ここで、「単離」という用語はとりわけ、乳酸菌がその培地(例えばその天然培地を含む)に由来することを意味する。「精製」という用語は絶対純度に制限されるものではない。
【0089】
生存可能な形態の本発明による微生物に加えて、本発明による微生物の不活性形態も本発明の範囲内に含まれることが好ましい。本明細書中において「不活性形態」という用語は、とりわけ培養皿上にもはやコロニーを形成することができない、不活化しているか又は死んでいる細胞を指す。当業者は、好適な不活化方法(例えば、生物学的、化学的又は物理的な不活化方法)に精通している。しかしながら、本事例では、凍結乾燥形態の微生物を使用してもよい。凍結乾燥細胞は、液体培地又は固体培地における好適な培養後に再度、成長を誘起させることができる。
【0090】
また、「不活化形態」又は「不活性形態」及び「誘導株」又は「アナログ」又は「変異株」という用語は、本事例において、本発明による微生物の細胞上清及び/又は発酵上清、溶解産物、画分又は抽出物を含み、これらの溶解産物、画分又は抽出物は好ましくは、乳酸菌の特性を有し、「溶解産物」(及び「抽出物」という用語)はとりわけ、本発明による微生物の細胞の水性媒体中における溶液又は懸濁液を指し、例えば、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物等及び細胞破片(cell detritus)等の巨大分を含む。また好ましくは溶解産物が細胞壁又は細胞壁構成要素を含む。溶解産物を生産する方法は、当業者に十分に既知であり、例えば、「フレンチプレス」又は酵素溶解、ガラスビーズ若しくは鉄ビーズを用いたボールミルの使用を含む。細胞は、酵素による方法、物理的又は化学的な方法によって開裂することができる。酵素による細胞溶解の例としては、個々の酵素並びに酵素カクテル、例えば、プロテアーゼ、プロテイナーゼK、リパーゼ、グリコシダーゼを挙げることができ;化学的溶解は、イオノフォア、SDS等の洗浄剤、酸又は塩基によって誘起することができ;また物理的方法は、フレンチプレス等の高圧、浸透圧、温度、すなわち高温と低温とを交互に切り替えることによって実施することができる。さらに、化学的方法、物理的方法及び酵素による方法は当然のことながら併用してもよい。
【0091】
本発明による微生物の「不活化形態」又は「不活性形態」及び「誘導株」又は「アナログ」又は「変異株」は好ましくは、上述の株と同様の特性を有する。「不活化形態」又は「不活性形態」及び「誘導株」又は「アナログ」は好ましくはもはや全く代謝活性を有しない。
【0092】
本発明による微生物のアナログは、溶解産物又はフラグメントの形態である。本発明による微生物のフラグメントは、細胞膜、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物等の巨大分子、及び細胞破片等の細胞の一部である。当業者は、「アナログ」、「フラグメント」、「誘導株」又は「変異株」のような用語に対応する内容を供給することができ、また本発明の意味においては、多大な技術努力を伴わずにこれらの用語を解釈することができる。好ましい微生物の変異株、誘導株、フラグメント又はアナログを提供するためには、当業者は、変異株、誘導株、フラグメント又はアナログを生産するのに使用することができる技法を記載している、当業者に利用可能な一般的な文献に頼ることができる。
【0093】
変異株及び/又は遺伝子組換え変異株、又は誘導株は、例えば、組換えDNA技術(クローニング、シーケンシング、組換え核酸の形質転換)、並びに例えば紫外線放射による物理的な変異誘発によって遺伝子組換えが行われるが、エチルメタンスルホネート(EMS)等の化学薬品によっても遺伝子組換えが行われる。陽性特性の変更は、標的を絞って、又は形成される複数の変異株の評価によって、選択することができる。遺伝子が組換えられた変異株は、本発明による微生物の細胞を含有し、その細菌染色体及び/又はプラスミド中に組換え核酸を含む。また、点突然変異に起因する修飾は、発現/転写/翻訳、並びに直接的な遺伝子操作を何ら行わない自然突然変異に作用を及ぼすことができる。
【0094】
アナログ又はフラグメントは、本発明による微生物の、熱不活化(死んだ)状態又は凍結乾燥形態であってもよく、これらは、それらの発明特性を保持するか又は例えば表面積を増大させることによって改善させる。凍結乾燥(フリーズドライ)後であっても、細胞は環境によっては依然生存可能であり得る。これらの細胞は、種々の温度における特別な貯蔵プロセスにより不活化された状態であってもよい。不活化細胞は、例えば、無傷の又は破壊された細胞膜を有していてもよいが、不活化細胞は、如何なる代謝活性も有することができない。不活化細胞を得る方法は、それらをガラスビーズで処理すること、例えば、細胞とガラスビーズとの間の剪断力の作用によって細胞が破壊されることを含み得る。フレンチプレス、高圧均質化、ボールミル又は凍結融解プロセス及び加圧滅菌等の付加的な物理的方法も、不活化及び本発明による微生物のフラグメント、並びにUV照射、自己溶解プロセス、又は種々の温度における特別な貯蔵プロセスをもたらす。
【0095】
本発明の意味において、「ラクトバチルス細胞」という用語は、乳酸菌又はラクトバチルスを指すように使用してもよく、また、乳酸の発酵に、炭水化物、とりわけグルコース及びラクトースを必要とするとともに、通常エムデンマイヤーホフ生合成経路を利用する微生物を含む。ラクトバチルス細胞は、乳酸菌科に分類学的に分類される。それらは、グラム陽性で非胞子形成性かつ一般的に静止性のものである。ラクトバチルス細胞は嫌気的に生存しており、ヘミン(シトクロム、カタラーゼ)を含有しないものの酸素耐性である(Schleifer et al., System. Appl. Microb. 18, 461-467 (1995)、又はLudwiq et al., System. Appl. Microb. 15, 487-501 (1992))。ラクトバチルス細胞及び/又はその細胞種は、炭水化物の利用パターンに基づき、とりわけAPI試験(Biomerieux Co.)を用いて、及び16sRNAシーケンシングを介して求めることができる。本発明によれば、これはとりわけ、同種発酵性の乳酸発酵又は異種発酵性の乳酸発酵に好適な細胞種を含む。また、好ましいものは、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・イエンセニイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・クルバトス及びラクトバチルス・プランタルム(全て同種発酵性)、またラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ブフネリ、ラクトバチルス・フルクチボランス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ビリデセンス、及びビフィドバクテリウム・ビフィダム(全て異種発酵性)を含む群から選択されるラクトバチルス細胞である。
【0096】
好ましい実施の形態において、本発明による微生物は、各々ドイツ微生物細胞培養物コレクション(DSMZ)(Braunschweig)により寄託番号DSM25906、DSM25907、DSM25908、DSMZ25909、DSM25910、DSM25911、DSM2591、DSM25913、DSM25914及びDSMZ25915として寄託される、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・ガゼリ、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・クリスパータス、及びラクトバチルス・イングルビエイから選択される。上述のDSMZの寄託は、特許手続上の寄託を目的として、微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約に従ってなされたものである。
【0097】
上記で更に説明したように、本発明はまた、好ましくは生存可能な微生物又はそれらのアナログ、変異株、誘導株若しくはフラグメントと、好ましくは、美容上許容可能な賦形剤若しくは補形薬、薬学上許容可能な賦形剤若しくは補形薬、又は皮膚科学上許容可能な賦形剤若しくは補形薬の少なくとも1つから選択される、少なくとも1つの賦形剤又は補形薬とを含有する組成物に関する。
【0098】
本発明の意味において、「組成物」という用語はとりわけ、本発明による少なくとも1つの微生物、又はそれらのフラグメント、誘導株、アナログ若しくは変異株と、任意に、賦形剤若しくは補形薬等の他の成分、又は任意に他の有効成分及び塩とを有する任意の組成物を含むと理解される。美容上、薬学上又は皮膚科学上許容可能な補形薬、賦形剤又は添加剤は、有効成分又は組成物、すなわち、本事例では少なくとも1つの微生物、又はそれらのアナログ若しくは誘導株若しくは変異株若しくはフラグメントを美容上又は薬学上投与するか、使用するか又は活性化させるために、美容分野、薬学分野又は歯科分野で従来使用されてきた任意の物質を含むと理解される。
【0099】
組成物は、本発明による微生物、又はそれらのアナログ、変異株、誘導株若しくはフラグメントの1つだけでなく、本発明による微生物の混合物、又はアナログ、誘導株、変異株若しくはフラグメントの混合物、又は本発明による微生物と、それらのフラグメント、誘導株、変異株若しくはアナログとの混合物も含有することが好ましい。
【0100】
組成物は、好ましくは固体又は液体又は粘性体又はエアロゾルとすることができ、例えば、粉末、錠剤、溶液、顆粒、懸濁液、エマルション、カプセル、ペースト、ゲル、スプレー等の形態、すなわち、投与に適する任意の形態で使用することができる。また、組成物が付加的なプロバイオティクス、防腐剤又は他の抗菌物質を含む場合、好ましくは任意ではあるものの、サッカリド及び保存料、風味料、甘味料、ビタミン、ミネラル等を含むことも好ましい。欧州特許出願公開第2133414号には、好ましい組成物に使用される多くの成分が挙げられており、これらは本公報にはっきりと言及されるものである。さらに、フィラー、流量制御剤、レオロジー改質剤、軟化剤、安定化剤、開始剤又は反応性架橋モノマー、例えばメタクリレートが、好ましい組成物中に存在し得る。
【0101】
本発明による組成物は、とりわけ身体衛生、理学療法及び予防に使用され、本発明による少なくとも1つの微生物、又はそれらの誘導株、変異株、フラグメント若しくはアナログを含有する。
【0102】
組成物及び/又は微生物は、消毒剤として、例えば、とりわけコンタクトレンズ用の清浄溶液等の表面消毒剤として使用されるものであってもよい。
【0103】
本発明による組成物の使用に関する投与量及び投与は、各用途及び各患者(とりわけ、年齢、体重、総合的な健康状態等)に応じて決定され、組成物を使用する当業者の能力及び診断内で行われるものである。
【0104】
本発明による組成物は、化粧品、医療品(medicinal product)又は医薬品であってもよい。組成物は好ましくは、乳酸菌を0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.005重量%〜5重量%、特に好ましくは0.01重量%〜3重量%の重量で含有する。0.001重量%〜10重量%の量の使用がとりわけ、より長期間の有効な分解をもたらした、すなわち、安定なままであったことは、全く驚くべきことであった。乳酸菌を0.005重量%〜5重量%の量で使用する場合、これは驚くべきことに、組成物のレオロジー特性にプラスの影響をもたらし、より低粘度であるため皮膚上により良好に分布するか、又は口腔への投入をより容易とする組成物をもたらす。0.01重量%〜3重量%の重量での乳酸菌の使用によって驚くべきことに、組成物の構成成分が互いにより良好に結合し、より短い運転時間で均質組成物を供給することができ、これにより更に、製造コストの低下がもたらされる。しかしながら、本明細書中に規定したもの以外の量も、規定の用途に使用することができることは自明である。
【0105】
上記で説明したように、好ましい実施の形態によれば、組成物及び/又は微生物を身体衛生分野で使用して、上述の病原微生物と凝集、すなわち結合させることができる。その後これらの共凝集体は、とりわけ懸濁液の場合、例えば洗い流すことによって容易に除去することができるため、病原微生物数の低減が有利に達成される。したがって、乳酸菌及び/又は乳酸菌を含有する組成物は、この目的のために様々な様式で使用することができる。例えば、それらは、シャワージェル、シャワーローション、ボディローション、液体セッケン、セッケン、シャワーオイル又は消毒用溶液、呼吸装置におけるフィルターシステム、鼻用スプレー、コンタクトレンズ用の清浄溶液、タオル又は清浄用タオルに使用することができる。したがって、本発明はまた、身体衛生及び医療品及び予防の分野で使用され、かつ本発明による乳酸菌を含有するあらゆる製品に関する。これに応じて、上記に記載される実施の形態は、哺乳動物における治療、治療法及び予防の分野にも適用される。微生物及び/又は微生物を含有する組成物はしたがって、様々な様式で使用することができる。
【0106】
糖尿病、皮膚疾患、皮膚外傷、毒素性ショック症候群、ブドウ球菌熱傷様(scalded)皮膚症候群、並びにエンテロトキシンにより引き起こされる毒性感染症、フルンケル、癰、副鼻腔炎、敗血症等の骨髄炎、その後生じる髄膜炎及び/又は心筋炎、並びに黄色ブドウ球菌により引き起こされる心膜炎、並びに嚢胞性線維症を伴う肺炎、尿路感染症、小腸結腸炎、髄膜炎、外耳炎、緑膿菌に起因する火傷上の感染症の治療又は予防のための調合薬を製造するのに本発明による組成物及び/又は本発明による微生物を使用することがとりわけ好ましい。
【0107】
これらの疾患を有利に治療及び/又は予防することができる、本発明による微生物及び本発明による微生物を含有する組成物を介して作用物質を有効なものとする。微生物及び/又は微生物を含有する組成物は、上記に示されるように、とりわけ人間医学及び獣医学において、イヌ、サル、ネコ、ウマ及び齧歯類(野ウサギ、ウサギ、ハムスター、モルモット)、並びにニワトリ、ブタ及びウシ、ヒツジ、ヤギ及び他の家畜及び商用動物等の商用動物において、使用することができる。
【0108】
本発明による組成物、及び/又は微生物(又は、それらのフラグメント、誘導株若しくは変異株)は、とりわけ食品添加剤として、衛生製品として、微生物を含有する衛生製品として、又は医薬製剤として使用することができる。かかる衛生製品はまた、身体衛生機器又は装置、リンス、ペースト等に加えて、例えば、本発明による微生物又は本発明による微生物を含有する組成物を含み得るキット形態であってもよい。
【0109】
また、本発明は、本発明による特性を有するラクトバチルス種属の微生物を特定及び/又は選択する方法に関し、該方法は、a)生物膜を発生させるような黄色ブドウ球菌及び/又は緑膿菌から選択される病原微生物を回分培養する工程と、b)調査対象のラクトバチルス属の微生物を添加するとともに、回分培養する工程であって、病原微生物と調査対象のラクトバチルス属の微生物との特異的結合を形成する工程と、c)上清を除去することにより、ラクトバチルス属の結合していない微生物を分離する工程と、d)ラクトバチルス属の結合及び凝集した微生物に関して、生物膜を測定する工程とを少なくとも含む。
【0110】
好ましい実施の形態において、本発明による方法はまた、病原微生物による生物膜の形成の阻害を調査する工程を含む。調査対象のラクトバチルス属の微生物はこの際、生物膜形成病原微生物の培養中に添加した。結合していない細胞を除去した後、生物膜の形成は、試験対象の微生物を添加していない対照と比較してとりわけクリスタルバイオレット染色後に光学密度を測定することにより好ましく定量化されるのが好ましい。
【0111】
上述の特色及び以下にこれから記載する特色は、特定の組合せで使用することができるのみならず、本発明の範囲を超えない範囲内では単独でも使用することができる。
【0112】
本特許出願による教示は、以下の特色を特徴とする:
従来技術において一般的なものからの脱却、
新たな目的の記述、
長期間解決されてこなかったが本発明により解決される問題の解決策に関する差し迫った必要性の存在、
技術の世界の一部に対するこれまでにうまくいかなかった取組み、
解決策の簡略化がとりわけより複雑な教示の代わりとなることから、進歩性が示唆される、
異なる方向に向かう科学技術の発展、
更なる発展をもたらす業績、
対応する問題の解決策に関する、技術の世界における概念の欠陥(技術的進歩に対する先入観、例えば:改良、性能の増大、コストの低下、時間の節約、材料、作業工程、コスト、又は原材料の取得困難性、信頼性の増大、欠陥の排除、品質の向上、メンテナンスの非存在、効能の増大、収率の上昇、技術的可能性の増大、別の手段の提供、第2の経路の開拓、新たな分野の開拓、問題の第1の解決策、貯蔵手段、代替形態、経済化の可能性、自動化若しくは小型化、又は薬品資金の潤沢)、
1つの特別な可能性が様々な可能性から選択されることによる幸運な出来事、この結果は予見することができなかったため、これは、特許を取得し得るという幸運な出来事となる、
技術文献における誤り及び/又は発明の主題の極めて矛盾のある提示、
新たな技術分野、
組合せ発明、すなわち、複数の既知の要素を組み合わせて、驚くべき効果を有する組合せをもたらす、
ライセンスの発行、
技術の世界の称賛、及び、
経済的成功。
【0113】
とりわけ、本発明の有益な実施の形態は、上述の利点の少なくとも1つ又は複数を有する。
【0114】
図面及び実施例に基づき、以下で例示的に本発明を説明するが、それらに限定されるものではない。