特許第6267637号(P6267637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6267637自己バランシングキャパシタブリッジ用の読み出し回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267637
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】自己バランシングキャパシタブリッジ用の読み出し回路
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/24 20060101AFI20180115BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G01D5/24 D
   G01P15/125 V
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-528529(P2014-528529)
(86)(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公表番号】特表2014-527637(P2014-527637A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】US2012052720
(87)【国際公開番号】WO2013033125
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月20日
(31)【優先権主張番号】13/220,306
(32)【優先日】2011年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】ペトコフ,ウラジーミル
(72)【発明者】
【氏名】バラチャンドラン,ガネーシュ
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−3300(JP,A)
【文献】 特開平3−293565(JP,A)
【文献】 実開昭61−129165(JP,U)
【文献】 特開2006−313084(JP,A)
【文献】 特開平11−326409(JP,A)
【文献】 特開2004−340673(JP,A)
【文献】 特開昭57−120862(JP,A)
【文献】 特開2007−006695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0174417(US,A1)
【文献】 特開平8−240440(JP,A)
【文献】 特表平4−500413(JP,A)
【文献】 特表2010−517471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
G01R 27/00−27/32
G01P 15/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性変換器が、物理量に基づいて変換器信号を生成する容量性センサ素子を含み、前記容量性センサ素子が、第1の可動容量性プレートを有する第1の可変キャパシタと、前記第1の可動容量性プレートに結合された第2の可動容量性プレートを有する第2の可変キャパシタとからなるセンサコアを含み、前記容量性変換器からの前記変換器信号を処理し、回路出力信号を生成するための読み出し回路であって、
前記変換器信号を受信し、増幅された変換器信号を生成する高利得回路素子と、
能動回路によって実装され第1の加算増幅器であって、前記高利得回路素子の後に配置され、前記増幅された変換器信号と正の基準電圧及び第1の外乱Vn1とを加算し、第1の加算信号を生成する、第1の加算増幅器と、
能動回路によって実装され第2の加算増幅器であって、前記高利得回路素子の後に配置され、前記増幅された変換器信号と負の基準電圧及び第2の外乱Vn2とを加算し、第2の加算信号を生成し、前記負の基準電圧は前記正の基準電圧に対して実質的に同じ大きさの振幅及び反対の極性を有する、第2の加算増幅器と、
前記第1の加算信号を前記容量性変換器にフィードバックする第1のフィードバックパスと、
前記第2の加算信号を前記容量性変換器にフィードバックする第2のフィードバックパスと、
前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号に基づいて、前記回路出力信号を生成する出力回路と、
を備える読み出し回路。
【請求項2】
請求項1に記載の読出し回路であって、
前記高利得回路素子は、スイッチトキャパシタ積分器である、
読み出し回路。
【請求項3】
請求項1に記載の読み出し回路であって、
前記第1及び第2の加算増幅器はそれぞれ、演算増幅器を備える、
読み出し回路。
【請求項4】
請求項3に記載の読み出し回路であって、
前記第1の加算増幅器への前記増幅された変換器信号及び前記正の基準電圧は、前記第1の加算増幅器の前記演算増幅器の反転入力に結合される、
読み出し回路。
【請求項5】
請求項1に記載の読み出し回路であって、
さらに、前記増幅された変換器信号を反転する増幅器を備える、
読み出し回路。
【請求項6】
請求項1に記載の読み出し回路であって、
前記出力回路は、前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号の平均としての前記回路出力信号を生成する、
読み出し回路。
【請求項7】
容量性変換器が、物理量に基づいて変換器信号を生成する容量性センサ素子を含み、前記容量性センサ素子が、第1の可動容量性プレートを有する第1の可変キャパシタと、前記第1の可動容量性プレートに結合された第2の可動容量性プレートを有する第2の可変キャパシタとからなるセンサコアを含み、前記容量性変換器からの前記変換器信号を処理し、回路出力信号を生成するための読み出し回路であって、
高利得回路素子、第1の加算増幅器、及び、第2の加算増幅器を備えたフォワードパスであって、前記高利得回路素子は、前記変換器信号を受信し、増幅された変換器信号を生成し、前記第1の加算増幅器は、前記高利得回路素子の後に配置され、前記増幅された変換器信号と正の基準電圧及び第1の外乱Vn1とを加算し、第1の加算信号を生成し、前記第2の加算増幅器は、前記高利得回路素子の後に配置され、前記増幅された変換器信号と負の基準電圧及び第2の外乱Vn2とを加算し、第2の加算信号を生成し、前記負の基準電圧は、前記正の基準電圧に対して実質的に同じ大きさの振幅及び逆の極性を有する、フォワードパスと、
前記容量性変換器に前記第1の加算信号をフィードバックする第1のフィードバックパスと、
前記容量性変換器に前記第2の加算信号をフィードバックする第2のフィードバックパスと、
前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号に基づいて、前記回路出力信号を生成する出力回路と、
を備える読み出し回路。
【請求項8】
請求項7に記載の読み出し回路であって、
前記高利得回路素子は、スイッチトキャパシタ積分器である、
読み出し回路。
【請求項9】
請求項7に記載の読み出し回路であって、
前記第1及び第2の加算増幅器はそれぞれ、演算増幅器を備える、
読み出し回路。
【請求項10】
請求項7に記載の読み出し回路であって、
さらに、前記増幅された変換器信号を反転する反転増幅器を備える、
読み出し回路。
【請求項11】
請求項7に記載の読み出し回路であって、
前記第1及び第2の加算増幅器の少なくとも1つは、能動回路によって実装される、
読み出し回路。
【請求項12】
請求項7に記載の読み出し回路であって、
前記出力回路は、前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号の平均としての前記回路出力信号を生成する、
読み出し回路。
【請求項13】
容量性変換器システムであって、
物理量に基づいて変換器信号を生成する容量性センサ素子であって、第1の可動容量性プレートを有する第1の可変キャパシタと、前記第1の可動容量性プレートに結合された第2の可動容量性プレートを有する第2の可変キャパシタとからなるセンサコアを含む、前記容量性センサ素子と、
前記変換器信号を受信し、増幅された変換器信号を生成する高利得回路素子と、
能動回路によって実装され第1の加算増幅器であって、前記高利得回路素子の後に配置され、前記増幅された変換器信号と正の基準電圧及び第1の外乱Vn1とを加算し、第1の加算信号を生成する、第1の加算増幅器と、
能動回路によって実装され第2の加算増幅器であって、前記高利得回路素子の後に配置され、前記増幅された変換器信号と負の基準電圧及び第2の外乱Vn2とを加算し、第2の加算信号を生成し、前記負の基準電圧は前記正の基準電圧に対して実質的に同じ大きさの振幅及び逆の極性を有する、第2の加算増幅器と、
前記第1の加算信号を前記容量性センサ素子にフィードバックする第1のフィードバックパスと、
前記第2の加算信号を前記容量性センサ素子にフィードバックする第2のフィードバックパスと、
前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号に基づいて、回路出力信号を生成する出力回路と、
を備える、
容量性変換器システム。
【請求項14】
請求項13に記載の容量性変換器システムであって、
前記高利得回路素子は、スイッチトキャパシタ積分器である、
容量性変換器システム。
【請求項15】
請求項13に記載の容量性変換器システムであって、
前記第1及び前記第2の加算増幅器はそれぞれ、演算増幅器を備える、
容量性変換器システム。
【請求項16】
請求項13に記載の容量性変換器システムであって、
さらに、前記増幅された変換器信号を反転する反転増幅器を備える、
容量性変換器システム。
【請求項17】
請求項13に記載の容量性変換器システムであって、
前記出力回路は、前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号の平均としての前記回路
出力信号を生成する、
容量性変換器システム。
【請求項18】
請求項13に記載の容量性変換器システムであって、
前記容量性センサ素子は、第1の可動容量性プレートを有する第1の可変キャパシタを含む第1の容量性コア及び第2の可動容量性プレートを有する第2の可変キャパシタを含む第2の容量性コアを備え、前記変換器信号は、前記第1の容量性コアによって生成された第1の変換器信号、及び、前記第2の容量性コアによって生成された第2の変換器信号を備え、
前記高利得回路素子は、前記第1及び前記第2の変換器信号を受信し、前記第1の変換器信号及び前記第2の変換器信号に基づいて前記増幅された変換器信号を生成し、
前記第1のフィードバックパスは、前記第1の加算信号を前記第1の容量性コア及び前記第2の容量性コアにフィードバックし、
前記第2のフィードバックパスは、前記第2の加算信号を前記第1の容量性コア及び前記第2の容量性コアにフィードバックする、
容量性変換器システム。
【請求項19】
請求項18に記載の容量性変換器システムであって、
前記第1の容量性コアの前記第1の可変キャパシタは、前記第2の容量性コアの前記第2の可変キャパシタと実質的に同じように反応する、
容量性変換器システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本願は、容量性変換器に関し、特に、容量性変換器における、望ましくない外乱を減衰するための技術に関する。
【0002】
[0002]変換器(トランスデューサ)は、一般物理量(例えば、加速度、圧力など)を、電子回路で処理可能な量に変換する。具体的には、容量性変換器は、測定された入力信号の大きさに応じて、静電容量の変化を生成する。容量性変換器の読み出し回路は、変換器によって生成される静電容量変化を電気信号に変換する。当プロセスでは、回路は変換器の電極に電圧波形を印加する。
【0003】
[0003]容量性加速度計(加速度を測定するための容量性変換器)は、機械的な検出素子、及び、読み出し回路を備える。図1は、容量性加速度計の機械的な検出素子100の実施形態の一例を示す。この実施形態では、機械的な検出素子100は、第1のバネ104と第2のバネ106との間に吊り下げられたプルーフマス102、第1の電極110、及び、第2の電極112、を備える。プルーフマス102の近位端は第1のバネ104に結合され、プルーフマス102の遠位端は第2のバネ106に結合される。第1のバネ104は、プルーフマス102の近位端に結合された第1の端部、及び、基板に結合された第2の端部、の2つの端部を備える。第2のバネ106は、プルーフマス102の遠位端に結合された第1の端部、及び、基板に結合された第2の端部、の2つの端部を備える。共通電極108は、プルーフマス102に結合され、基板に相対するプルーフマス102と共に移動する。第1の電極110及び第2の電極112は、基板に相対して静止している。この実施形態では、正の基準電圧Vsが第1の電極110に印加され、負の基準電圧−Vsが第2の電極112に印加される。第1の可変キャパシタCは、第1の電極110と共通電極108との間に形成され、第2の可変キャパシタCは、第2の電極112と共通電極108との間に形成される。
【0004】
[0004]本実施形態では、システムが静止している場合、第1の電極110と共通電極108との間、及び、第2の電極112と共通電極108との間、に実質的に等しいわずかなギャップgがあり、第1の可変キャパシタC及び第2の可変キャパシタCは実質的に等しい静電容量となる。入力加速度は、基板に対してプルーフマス102を移動させ、電極間のギャップを変化させ、そして、第1の可変キャパシタC及び第2の可変キャパシタCの静電容量を変化させる。矢印120の方向の加速度は、プルーフマス102を、入力加速度に比例する距離Δx移動させる。このプルーフマス102の移動は、第1の電極110と共通電極108との間の距離をg+Δxへ増加させ、第2の電極112と共通電極108との間の距離をg−Δxへ減少させる。これにより、キャパシタC1,の静電容量は変化する。可変キャパシタC,Cの静電容量Cは、以下の式によって決定される。
【数1】
ここでεは誘電体の誘電率であり、Aは(紙の中に延在する)容量性プレートの面積であり、gはわずかなギャップ、Δxは加速度による変位である。読み出し回路は、キャパシタC1,の静電容量の変化に基づいてΔxの値を決定する。
【0005】
[0005]図2は、自己バランシング容量性ブリッジ200の実施形態の一例の概略図である。図2に示したスイッチトキャパシタの実装は、高抵抗の経路を必要とすることなく簡単な入力DCバイアスを得られ、また、全てのプロセス及び温度にわたって安定し明確に定義された伝達関数を得られる、という利点を有している。また、アナログ−デジタル変換器(ADC)によって直接的にデジタル化できる離散時間出力信号を提供する。図2は、自己バランシングブリッジのシングルエンドの実施形態を示している。
【0006】
[0006]自己バランシングブリッジ200は、2つの可変キャパシタC及びCを有するセンサコア210、及び、読み出し又はインターフェース回路220、を備える。センサコア210は、例えば、図1で示される検出素子100、又は、当技術分野で公知の種々の他の容量性センサ素子の1つなどの、容量性センサ素子を表す。
【0007】
[0007]読み出し回路220は、センサコア210の出力を、利得(ゲイン)を提供する積分器222を介して、出力Vへ渡すフォワードパスを備える。この実施形態では、積分器222は、積分キャパシタCを有する増幅器224を備える。増幅器224の反転入力は、可変キャパシタCとCとの間の共通ノードMに結合され、増幅器224の非反転入力端子は、グラウンドに結合され、増幅器224の出力は、出力電圧Vを提供する。積分キャパシタCは、増幅器224の反転入力を増幅器224の出力に結合する。
【0008】
[0008]また、自己バランシングブリッジ200は、出力電圧Vをセンサコア210にフィードバックする、第1のフィードバックパス230、及び、第2のフィードバックパス240を備える。第1のフィードバックパス230は、出力電圧Vを第1の反転増幅器232を介して第1の加算ノード234へフィードバックする。第1の加算ノード234は、反転された出力電圧−Vと反転された基準電圧−Vとを加算し、結果の電圧−V−Vを、第1の可変センサキャパシタCへ出力する。第2のフィードバックパス240は、出力電圧Vを第2の反転増幅器242を介して第2の加算ノード244へフィードバックする。第2の加算ノード244は、反転された出力電圧−Vと基準電圧Vとを加算し、結果の電圧V−Vを、第2の可変センサキャパシタCへ出力する。
【0009】
[0009]自己バランシングブリッジ200は、2つのセンサキャパシタC1,の絶対電荷を等しくしようと試みる。これらの条件下で、出力電圧は、測定されたキャパシタの差と和の比に比例する。
【数2】
様々な用途のために上記比率を測定することは有意義であり、加速度センサは、1つの特定の例である。
【0010】
[0010]数式2の結果を生成することに加えて、変換器キャパシタにおける絶対電荷の均等化は、可変キャパシタC及びCの可動プレートに反対方向に作用する静電力の等しい生成に優位性を有する。変換器にかかる正味の力は減少する。従って、インターフェース回路は、キャパシタプレートの疑似偏向を誘導することによって、測定を妨げない。しかし、この条件が満たされるためには、変換器キャパシタの絶対電荷は、どの時点でも等しく維持されなければならない。変換器キャパシタの時間平均電荷を単に等しくするための加算ノードの実装では、作業全時間において、等しい電荷を維持しない。C及びCが異なる場合、センサキャパシタに同じ絶対電圧を印加すると、異なる絶対電荷、及び、異なる静電力が生じる。電荷バランスは、正味ゼロの力にはならず、平均的にのみ達成される。加算増幅器234、244のためのアクティブな加算回路の使用は、C及びCにおける電荷の均等化のための補正電圧の維持に役立つ。
【0011】
[0011]しかし、アンプは、処理する信号に、ノイズ及びオフセットのような外乱(障害)をもたらすことが知られている。相関二重サンプリング(CDS)のようなスイッチトキャパシタ技術は、低周波ノイズ及びオフセットを除去するが、サンプリングプロセスによるDCの近くにエイリアスされる広帯域ノイズは除去できない。さらにCDSは、DCの近くに現れる広帯域ノイズの量を、およそ倍にする。回路の出力測定における影響が少なくなるように、これらの不要な外乱を減衰させることが望ましい。
【発明の概要】
【0012】
[0012]容量性変換器からの変換器信号を処理し、回路出力信号を生成するための読み出し回路が開示される。前記読み出し回路は、高利得回路素子、能動回路によって実装された2つの加算増幅器、2つのフィードバックパス、及び出力回路を備える。前記高利得回路素子は、前記変換器信号を受信し、増幅された変換器信号を生成する。前記第1の加算増幅器は、前記増幅された変換器信号と正の基準電圧とを加算し、第1の加算信号を生成する。前記第2の加算増幅器は、前記増幅された変換器信号と負の基準電圧とを加算し、第2の加算信号を生成する。前記負の基準電圧は前記正の基準電圧に対して実質的に同じ大きさの振幅及び反対の極性を有する。前記第1のフィードバックパスは、前記第1の加算信号を前記容量性変換器にフィードバックする。前記第2のフィードバックパスは、前記第2の加算信号を前記容量性変換器にフィードバックする。前記出力回路は、前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号に基づいて、前記回路出力信号を生成する。前記高利得回路素子は、スイッチトキャパシタ積分器とすることができる。前記第1及び第2の加算増幅器はそれぞれ、演算増幅器を備えることができ、前記加算増幅器への前記入力信号は、前記演算増幅器のそれぞれの反転入力へ結合される。前記読み出し回路は、前記増幅された変換器信号を反転する反転増幅器を備えることができる。前記出力回路は、前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号の平均としての前記回路出力信号を生成することができる。
【0013】
[0013]
容量性変換器からの変換器信号を処理し、回路出力信号を生成する読み出し回路が開示される。前記読み出し回路は、フォワードパス、及び、2つのフィードバックパスを備える。フォワードパスは、高利得回路素子と、2つの加算増幅器と、を備える。前記高利得回路素子は、前記変換器信号を受信し、増幅された変換器信号を生成する。前記加算増幅器は、前記増幅された変換器信号と基準電圧とを加算し、加算信号を生成する。前記第1の加算増幅器は、前記増幅された変換器信号と正の基準電圧とを加算し、第1の加算信号を生成する。前記第2の加算増幅器は、前記増幅された変換器信号と負の基準電圧とを加算し、第2の加算信号を生成する。前記負の基準電圧は、前記正の基準電圧に対して実質的に同じ大きさの振幅及び逆の極性を有する。前記第1のフィードバックパスは、前記容量性変換器に前記第1の加算信号をフィードバックする。前記第2のフィードバックパスは、前記容量性変換器に前記第2の加算信号をフィードバックする。出力回路は、前記加算信号に基づいて、前記回路出力信号を生成する。前記高利得回路は、スイッチトキャパシタ積分器とすることができる。前記加算増幅器は、演算増幅器を備えることができる。前記加算増幅器の少なくとも1つは、能動回路によって実装されていてもよい。前記読み出し回路は、さらに、前記増幅された変換器信号を反転する反転増幅器を備えることができる。前記出力回路は、前記第1及び前記第2の加算信号の平均としての前記回路出力信号を生成することができる。
【0014】
[0014]容量性センサ素子、高利得回路素子、第1及び第2の加算増幅器、第1及び第2のフィードバックパス、及び、出力回路、を備える容量性変換器システムが開示される。
前記容量性センサ素子は、物理量に基づいて変換器信号を生成する。前記高利得回路素子は、前記変換器信号を受信し、増幅された変換器信号を生成する。能動回路によって実装された前記第1の加算増幅器は、前記増幅された変換器信号と基準電圧とを加算し、第1の加算信号を生成する。能動回路によって実装された第2の加算増幅器は、前記増幅された変換器信号と負の基準電圧とを加算し、第2の加算信号を生成する。前記負の基準電圧は前記基準電圧に対して実質的に同じ大きさの振幅及び逆の極性を有する。前記第1のフィードバックパスは、前記第1の加算信号を前記容量性センサ素子にフィードバックする。前記第2のフィードバックパスは、前記第2の加算信号を前記容量性センサ素子にフィードバックする。出力回路は、前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号に基づいて、回路出力信号を生成する。前記高利得回路素子は、スイッチトキャパシタ積分器とすることができる。前記システムは、さらに、前記増幅された変換器信号を反転する反転増幅器を備えることができる。前記出力回路は、前記第1の加算信号及び前記第2の加算信号の平均としての前記回路出力信号を生成することができる。前記容量性センサ素子は、第1の可動容量性プレートを有する第1の可変キャパシタ、及び、第2の可動容量性プレートを有する第2の可変キャパシタを含むセンサコアを備えることができる。前記第1の可動容量性プレートは、前記第2の可動容量性プレートに結合される。
【0015】
[0015]前記容量性変換器システムは、完全差動システムであってもよく、前記容量性センサ素子は、第1の容量性コア及び第2の容量性コアを備え、差動信号が生成される。前記変換器信号は、前記第1の容量コアによって生成された第1の変換器信号、及び、前記第2の容量性コアによって生成された第2変換器信号を備える。前記増幅された変換器信号は、前記第1及び第2の変換器信号に基づいている。前記第1のフィードバックパスは、前記第1の加算信号を第1の容量性コア及び第2の容量性コアにフィードバックする。前記第2のフィードバックパスは、前記第2の加算信号を第1の容量性コア及び第2の容量性コアにフィードバックする。前記第1の容量性コア及び前記第2の容量性コアのキャパシタは、実質的に同じように反応する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
[0016]上述及び他の、本発明の特徴及び目的、及び、それらを達成する方法は、より明らかになり、発明自体が、添付の図面と併せて本発明の実施形態の以下の説明を参照することにより、よりよく理解されるだろう。
図1】[0017]図1は、容量性変換器の機械的なセンサ素子の例示的な実施形態を示す。
図2】[0018]図2は、自己バランシング容量性ブリッジの例示的な実施形態の概略図である。
図3】[0019]図3は、能動回路によって実装された加算増幅器の例示的な実装概略図である。
図4】[0020]図4は、例示的な容量性変換器システムの概略図であり、1つの加算増幅器からの外乱Vn1の導入を示す。
図5】[0021]図5は、図4のシステムに対応する簡略化されたフィードバックシステムを示す図である。
図6】[0022]図6は、フォワードパス利得ブロック”a”によって増幅される第1の入力信号S、及び、利得ブロック”a”の後にフォワードパスに導入される第2の入力信号S、を用いるフィードバックシステムを示す図である。
図7】[0023]図7は、スイッチトキャパシタ積分器の高利得の後のシステムのフォワードパスに加算増幅器が配置された、例示的な容量性変換器システムの概略図である。
図8】[0024]図8は、高利得ブロックの後のシステムのフォワードパスに加算増幅器が配置された、例示的な完全差動容量性フィードバックシステムの概略図である。
【0017】
[0025]対応する参照文字は、各図を通して、対応する部分を示す。本明細書で述べる例示は、本発明の実施形態を示しているが、いくつかの形で、以下に開示された実施形態は、網羅的であることを意図するものではなく、開示された正確な形態に本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0018】
[0026]図2の加算ノードを実装するために能動回路を使用すると、変換器キャパシタC及びCにおける絶対電荷のいっそうの均等化が図られ、センサにおける読み出し又はインターフェース回路の影響を低減する。しかし、加算ノードを実装するための能動増幅器の使用は、処理する信号に、不要な外乱、ノイズ、及び、オフセットをもたらす。能動増幅器によってもたらされる外乱を減衰することは、出力信号におけるこれら外乱の影響を低減する。
【0019】
[0027]図3は、入力信号V及びVを受け入れる能動回路によって実装される、出力信号Vを生成する加算増幅器300の例示的な実装を示す。この場合、Vはシステムの基準電圧であり、Vは、システムの出力電圧である。加算増幅器300は、出力信号Vに含まれる不要な外乱信号Vを導く。オフセットキャンセルは、簡略化のために省略されている。スイッチトキャパシタ増幅器の従来の分析では、入力信号V及びVが利得”α”で出力されたら、外乱Vが(1+2α)/αによって増幅される。
【0020】
[0028]図4は、例示的な容量性変換器システム400を示しており、加算増幅器の1つからの外乱Vn1の導入を示す。システム400は、センサ素子402、フォワードパス410、及び、2つのフィードバックパス420、430を備える。フォワードパス410は、センサ素子402から出力信号を受け取り、スイッチトキャパシタ積分器412を通過させ、出力信号Vを提供する。積分器412は、フォワードパス410を通過する信号に対して、高利得を提供することができる。各フィードバックパスは、出力信号Vを受け取り、センサ素子402にフィードバックする。第1のフィードバックパス420は、出力信号Vを受け取り、反転増幅器422を介して加算増幅器424へ渡す。加算増幅器424は、負の基準電圧−Vに反転出力信号−Vを加算し、不要な外乱信号Vn1を導入し、そして、不要な外乱信号Vn1が含まれる第1の合成信号を出力する。第2フィードバック経路430は、出力信号Vを受け取り、反転増幅器432を介して加算増幅器434へ渡す。加算増幅器434は、基準電圧Vに反転された出力信号−Vを加算し、別の外乱信号−Vn2を導入し、そして、外乱信号Vn2が含まれる第2の合成信号を出力する。基準電圧V及び第1の外乱信号(第2の外乱信号は無視する)のためのシステム400の変換関数は、次のようになる。
【数3】
α=1であり小さな変位(C1≒C2)の場合には、基準電圧Vは消え、外乱Vn1は3/2のゲインで出力に現れる。このように、加算増幅器のこの構成は、不要な外乱Vの所望の減衰を提供しない。
【0021】
[0029]図5は、図4のシステム400に対応した単純化されたフィードバックシステム500を示す。システム500は、フォワードパス利得”a”及びフィードバック係数”f”を備える。フィードバックシステム500は、2つの入力信号S及びS、及び、出力Sを有する。入力信号Sは、フィードバックパスに導入され、両方の入力S及びSは、高利得ブロック”a”によって増幅される。システム500の変換関数は、数4式となる。
【数4】
典型的なフィードバックシステムでは、a>>1及びf<=1である。f=1の場合には、システム500の変換関数は、次のように簡単になる。
【数5】
システム500において、S及びSの両方が同じ重みで出力に現れることが見て取れる。Sが注目する信号であり、かつ、Sが不要な外乱である場合、フィードバックシステム500内の不要な外乱の所望の減衰を達成していない。
【0022】
[0030]図6は、フォワードパス利得”a”及びフィードバック係数”f”を有する、別のフィードバックシステム600を示す。システム600は、2つの入力S及びS、及び、出力Sを有する。しかしながら、システム600は、システム500とは異なり、入力信号Sは、高利得ブロックの”a”の後のフードフォワードパスにおいて導入される。システム600の変換関数は、数6式となる。
【数6】
再び、a>>1及びf=1と仮定すると、システム600の変換関数は、次のように簡単になる。
【数7】
数7式は、高利得ブロックの後に導入された信号Sが大きく減衰され、高利得ブロック”a”の前に導入された信号Sは、出力にそのまま現れることを示す。したがって、システムの測定における外乱の影響を軽減するために、測定回路の加算増幅器によって導入された信号Sのような外乱が出力に現れる前に外乱を減衰させ、その代わりに信号Sのような信号を大きく減衰させずに出力させることが望ましい。
【0023】
[0031]数5式と数7式とを比較すると、システム600では、不要な信号Sはa>>1の場合に減衰され、有用な信号Sは減衰されない一方、システム500では、不要な信号Sは、有用な信号Sと同じ減衰で出力にそのまま現れる事がみてとれる。したがって、システム600のように不要な外乱を減衰させるシステムを実現することが望ましい。
【0024】
[0032]図2及び図4のフィードバックシステムでは、加算増幅器は、フィードバックパスに設けられる。したがって、加算増幅器によって導入された外乱Vは、図5のSと同様に動作し、フォワードパス内の高利得によって増幅される。図4のフィードバックシステムは、図6のSと同様に動作する外乱Vを作るように再設計することができ、したがって、フォワードパス内での高利得によって、外乱を増幅することはない。これは、フィードバックスステムのフォワードパスの高利得ブロックの後に加算増幅器を配置することによって達成することができる。
【0025】
[0033]図7は、スイッチトキャパシタ積分器の高利得後のシステムのフォワードパスに加算増幅器が配置されている例示的なシステム700を示す。システム700は、センサ素子702、フォワードパス710、及び2つのフィードバックパス720及び730を備える。フォワードパス710は、センサ素子702から出力信号を受け取り、スイッチトキャパシタ積分器712及び反転増幅器714へ渡し、中間出力信号V´を生成し、その後、フォワードパス710は、第1分岐740及び第2分岐750に分割される。第1分岐740は、中間出力信号V´を取得し、加算増幅器742に渡す。加算増幅器742は、負の基準電圧−Vに中間出力信号V´を加算し、不要な外乱信号Vn1を導入し、そして、外乱Vn1を含む第1合成信号V´−Vを出力する。第2分岐750は、中間出力信号V´を取得し、加算増幅器752に渡す。加算増幅器752は、正の基準電圧Vに中間出力信号V´を加算し、不要な外乱信号Vn2を導入し、外乱Vn2を含む第2合成信号V´+Vを出力する。第1分岐740及び第2分岐750の出力信号は、出力信号V0を提供するために合成され半分にされる。第1フィードバックパス720は、第1分岐740から出力信号V´−Vを受け取り、センサ素子702にフィードバックする。第2フィードバックパス730は、第2分岐750から出力信号V´+Vを受け取り、センサ素子702にフィードバックする。フォワードパス710の第1分岐740及び第2分岐750は、加算増幅器利得aを示している。
【0026】
[0034]積分器712は、フォワードパス710を通過する信号に高利得を提供することができる。フィードバックシステム600と同様、不要な外乱は、積分器712の後のフォワード経路710において導入される。システム700内の信号及び第1分岐外乱の伝達関数は数8式となる。
【数8】
【0027】
[0035]図4及び図7におけるシステムの出力を同じ信号レベル(数3式及び数8式の第1項)にするための規格化の後、2つのシステムの出力への外乱Vn1(数3式及び数8式の第2項)の相対的な寄与は、次のように計算される。
【数9】
【0028】
[0036]次の数値例は、図4のシステム400に対して、図7のシステム700における外乱の付加的な減衰を示している。平行板トランスデューサ(例えば、加速度計)は、(C−C)/(C+C)=0.2の典型的な最大信号レベルを持つことができる。この関係は、C=(3/2)Cを得るために再配置することができ、数9式にこれを代入すると、V0_n1_new/V0_n1_old=1/6が得られる。したがって、システム700は、システム400に対して6倍、加算増幅器外乱Vn1の寄与を減衰させる。この分析は、当然、両方の加算増幅器により導入された障害にも適用される。この分析は当然、両方の加算増幅器によって導入された外乱に適用される。
【0029】
[0037]容量型フィードバックシステムのフォワードパスの高利得ブロックの後における加算増幅器の配置は、図8に示される例示的なシステム800のような完全差動システムにおいて行うことができる。システム800は、センサ素子802、デュアルフォワードパス810、及び、2つのデュアルフィードバックパス820,830を備える。システム800において、変換器802は、2つの別個のコアとして実装される。第1のコアCは、可変キャパシタC1A及びC1Bを備え、第2のコアCは、可変キャパシタC2A及びC2Bを備える。2つのコアの対応するキャパシタは、入力信号に対して実質的に同一の反応をする(すなわち、C1A=C1B及びC2A=C2B)。しかし、2つのコアによって処理された電気信号は、反対の極性を有する。
【0030】
[0038]フォワードパス810は、センサ素子802のコアから出力信号を受け取り、キャパシタ積分器812に渡し、中間出力信号を生成し、その後、フォワードパス810は第1分岐840及び第2分岐850に分割される。積分器712がシングルエンド増幅器である図7に記載のスイッチトキャパシタ積分器712とは異なり、図8に記載のキャパシタ積分器812は、完全差動増幅器である。したがって、キャパシタ積分器812は、別の反転増幅器を必要としない。第1分岐840は、第1中間出力信号を受け取り、加算増幅器842に渡す。加算増幅器842は正の基準電圧Vと第1中間出力信号とを加算し、不要な外乱Vn1を導入し、そして、外乱Vn1を含む第1合成信号−V+Vが出力される。第2分岐850は、中間出力信号を受け取り加算増幅器852に渡す。加算増幅器852は反転された基準電圧−Vと中間出力信号とを加算し、不要な外乱Vn2を導入し、そして、不要な外乱Vn2を含む第2合成信号−V−Vが出力される。第1分岐管840及び第2分岐850の出力信号は、出力信号Vを提供するために、合成され半分にされる。第1のフィードバックパス820は、第1分岐840から出力信号−V+Vを受け取り、センサ素子802へフィードバックする。第2のフィードバックパス830は、第2分岐850から出力信号−V+Vを受け取り、センサ素子802へフィードバックする。システム800は、単純化のために加算増幅器ゲインをa=1と仮定しているが、しかし、この原理は一般的なケースにも同様に適用される。
【0031】
[0039]システム700と同様、センサ素子802のコアからの出力信号は、高利得を提供する積分器812を介して通過するが、しかし、加算増幅器842及び852からの不要な外乱はフォワードパス810における積分器812を通らない。したがって、加算増幅器からの不要な外乱は、大きく減衰される。
【0032】
[0040]本発明は、例示的なデザインを有するものとして説明してきたが、本発明は、本開示の精神および範囲内で修正することができる。したがって、本出願は、任意の変形、用途、または一般的な原理を用いて本発明の適応をカバーすることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8