(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267727
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】エレベータ用の高度減速推進システム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/22 20060101AFI20180115BHJP
B66B 9/02 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
B66B5/22 Z
B66B9/02 Z
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-553681(P2015-553681)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2016-507443(P2016-507443A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2013021891
(87)【国際公開番号】WO2014113006
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ファーゴ,リチャード エヌ.
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−132262(JP,A)
【文献】
特開平06−001548(JP,A)
【文献】
特開平06−001558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00−1/52
B66B 9/02
B66B 5/02;5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごに直線運動を伝えるための第1の推進システムと、
前記第1の推進システムのための制御信号を生成するコントローラと、
前記エレベータかごを保持するためのブレーキと、
エネルギー貯蔵ユニットと、
第2の推進システムと、
を備えるエレベータシステムであって、
前記コントローラが、(i)前記エレベータかごの上方への移動中の故障時に前記第1の推進システムおよび前記第2の推進システムの内の少なくとも1つに動力を供給するために前記エネルギー貯蔵ユニットにアクセスし、かつ、前記エレベータかごに減速プロファイルを適用して、前記エレベータかご速度が閾値未満になるまで前記ブレーキをかけることを遅延させる、および、(ii)前記エレベータかごの上方への移動中の前記第1の推進システムでの故障時に前記第2の推進システムに動力を供給し、かつ、前記エレベータかごに減速プロファイルを適用して、前記エレベータかご速度が閾値未満になるまで前記ブレーキをかけることを遅延させる、ことの内の少なくとも1つを行うように構成される、
エレベータシステム。
【請求項2】
前記コントローラが、電源の喪失時に前記第1の推進システムに動力を供給するために前記エネルギー貯蔵ユニットにアクセスするように構成される、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記コントローラが、前記第1の推進システムでの故障時に前記第2の推進システムを駆動するように構成される、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
故障時に、前記コントローラが、9.8m/s2未満のエレベータかご減速度を提供するために前記第1の推進システムおよび前記第2の推進システムの内の少なくとも1つを制御する、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵ユニットが、コンデンサ、電池、およびフライホイールの内の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記エネルギー貯蔵ユニットが、20,000ジュール超のエネルギーを蓄えるように構成される、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記第1および第2の推進システムの各々が、リニア同期リラクタンスモータを備え、
前記リニア同期リラクタンスモータは、
複数の一次極および前記一次極の回りの巻線を有する一次回路と、
複数の二次極を有する二次回路と、
を含み、
前記一次回路が前記エレベータかごおよびガイドレールの内の一方に結合され、
前記二次回路が前記エレベータかごおよび前記ガイドレールの内の他方に結合された、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記一次回路が前記エレベータかごに取り付けられる、
請求項7に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記一次極のピッチが、前記二次極のピッチに一致する、
請求項7に記載のエレベータシステム。
【請求項10】
前記二次極が前記ガイドレール内に形成される、
請求項7に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
前記一次極が、前記ガイドレールの第1の側に配置される第1の一次極、および前記ガイドレールの第2の側に配置される第2の一次極を含む、
請求項10に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
前記ガイドレールが、前記エレベータかごを昇降路に沿って誘導するためのガイド面を含む、
請求項10に記載のエレベータシステム。
【請求項13】
前記ブレーキが、一方向ブレーキであって、
エレベータガイドレールの回りに配置された先細状の楔ガイドを有する安全ブロックと、
前記エレベータかごの下方移動時にのみ前記ガイドレールに制動力をかけるように構成された楔と、
伸長位置および後退位置をとるように構成されたバイアス部材であって、前記バイアス部材が前記伸長位置にあるときに前記楔ガイドに前記楔を配置する、前記バイアス部材と、
を備えた、一方向ブレーキであることを特徴とする、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項14】
前記伸長位置と前記後退位置との間で前記バイアス部材を選択的に位置決めするように構成されたアクチュエータをさらに備える、請求項13に記載のエレベータシステム。
【請求項15】
前記アクチュエータが、故障時に前記バイアス部材を前記伸長位置に位置決めする、請求項14に記載のエレベータシステム。
【請求項16】
前記エレベータかごの下方移動時にのみ前記ガイドレールに制動力をかけるように構成された第2の楔をさらに備える、請求項13に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、概して推進システムの分野に関し、より詳細には高度減速(enhanced deceleration)を有するエレベータ推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロープレスエレベータシステムとも呼ばれる自走式エレベータシステムは、ロープで結ばれたシステムのロープの質量が極端に重い、および/または単一の昇降路内に複数のエレベータかごが必要とされる特定の用途(たとえば、高層ビル)で役立つ。低速自走式エレベータシステムでは、エレベータかごを停止することは、エレベータかごの遅い速度を考慮すれば、通常は円滑である。高速自走式エレベータシステムでは、たとえば電源喪失またはシステムの他の故障があるときに、上方向に作動している高速エレベータかごの減速の速度が重力加速度を上回ることがある。推力の喪失は、上方へ移動中のエレベータかごを1重力で減速させ、乗客を自由落下させることがある。摩擦力または短絡したモータ巻線がエレベータかごに対する抗力を生じさせる場合には、減速の速度は重力を超えることがあり、乗客はエレベータかごを基準にして上方へ加速する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の例示的な実施形態によれば、エレベータシステムが、エレベータかごに直線運動を伝えるための第1の推進システムと、第1の推進システムのための制御信号を生成するためのコントローラと、エレベータかごを保持するためのブレーキと、エネルギー貯蔵ユニットと、第2の推進システムとを含み、コントローラは、(i)エレベータかごの上方移動中の故障時に、第1の推進システムおよび第2の推進システムの内の少なくとも1つに動力を供給するためにエネルギー貯蔵ユニットにアクセスし、(ii)エレベータかごの上方移動中の第1の推進システムでの故障時に第2の推進システムに動力を供給し、(iii)エレベータかごの上方移動中の故障時に、エレベータかご速度が閾値未満になるまでブレーキをかけることを遅延させる、ことの内の1つを行うように構成される。
【0004】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、エレベータシステムが、エレベータかごと、ガイドレールと、リニア同期リラクタンスモータであって、複数の一次極およびそれらの一次極の回りの巻線を有する一次回路と、複数の二次極を有する二次回路と、を含んだリニア同期リラクタンスモータと、を含み、一次回路はエレベータかごおよびガイドレールの内の一方に結合され、二次回路はエレベータかごおよびガイドレールの内の他方に結合される。
【0005】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、エレベータ用の一方向ブレーキが、エレベータガイドレールの回りに設置された先細状の楔ガイドを有する安全ブロックと、エレベータかごの下方移動時のみガイドレールに制動力をかけるように構成された楔と、伸長位置と後退位置をとるように構成されたバイアス部材と、を含み、バイアス部材は、バイアス部材が伸長位置にあるときに楔ガイドに楔を配置する。
【0006】
本発明の他の態様、特長、および技法は、図面と併せて解釈される以下の説明からより明らかになるだろう。
【0007】
ここで、類似の要素に同様の符号が付けられた図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】例示的な実施形態のリニア同期磁気抵抗推進システムを有するエレベータシステムを示す図である。
【
図2】例示的な実施形態の一次回路および二次回路を示す図である。
【
図3】例示的な実施形態のエレベータかごの上方減速度を制御するためのフローチャートを示す図である。
【
図4】例示的な実施形態の一方向ブレーキを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、例示的な実施形態の自走式推進システムを有するエレベータシステム10を示す。エレベータシステム10は、昇降路14を移動するエレベータかご12を含む。エレベータシステム10は、エレベータかご12に運動を伝えるためにエレベータかご12に結合された一次回路18を有するリニア同期リラクタンスモータを利用する。1つまたは複数のガイドレール16が、エレベータかご12が昇降路14に沿って移動するにつれ、エレベータかご12を誘導する働きをする。また、ガイドレール16は、ガイドレール16内の開口部19に隣接して形成された複数の二次極17を通るリニア同期リラクタンスモータに二次回路を提供する。また、二次極17は、リニア同期リラクタンスモータの二次回路を画定する。一次回路18およびリニア同期リラクタンスモータの二次回路の二次極17は、
図2に関してさらに詳しく説明される。第2のリニア同期リラクタンスモータは、一次回路18およびガイドレール16と同様に構築された一次回路18’およびガイドレール16’によって提供される。
【0010】
コントローラ20は、エレベータかご12の運動(たとえば、上方へまたは下方へ)を制御するため、およびエレベータかご12を停止するために一次回路18および18’に制御信号を提供する。コントローラ20は、本明細書に説明される動作を実行するために記憶媒体に記憶されるコンピュータプログラムを実行する汎用マイクロプロセッサを使用して実装されてよい。代わりに、コントローラ20は、ハードウェア(たとえば、ASIC、FPGA)内に、またはハードウェア/ソフトウェアの組合せで実装されてよい。また、コントローラ20は、エレベータコントロールシステムの一部であってもよい。コントローラ20は、一次回路18および18’に動力を供給するために電源回路網(たとえば、インバータまたは駆動装置)を含んでよい。
【0011】
動力は電源を通してコントローラ20および他の構成部品に供給される。
図1の実施形態では、電源は、昇降路14の全長に沿って伸長する母線(power rail)30である。センサ32は、ガイドレール16を基準にしてエレベータかご12の位置、およびより詳細にはリニア同期リラクタンスモータの二次回路での二次極17の位置を検出する。二次極17の位置は、レール16内の穴19に、一次回路18に提供された電流ベクトルを向けるためにコントローラ20によって使用される。エレベータかご12の運動を制御するために他のセンサ(たとえば、速度センサ、加速度計)が使用されてよいことが理解される。エネルギー貯蔵ユニット34は、エレベータかご12が上方へ移動し、故障が発生するときに(たとえば、緊急停止)、エレベータかご12の減速度を低減するために使用されるエネルギーを蓄える。エネルギー貯蔵ユニット34は、本明細書にさらに詳しく説明される。ブレーキ36(たとえば、ブレーキまたは保持装置)は、エレベータかご12の移動を停止するためにコントローラ20によって制御される。
【0012】
図2は、例示的な実施形態でのガイドレール16および一次回路18の平面図である。ガイドレール16は、基部42に垂直に伸長するリブ40を含む。基部42は昇降路14の内壁に取り付けられる。ガイドレール16は、低炭素鋼等の強磁性体から作られている。上述されるように、ガイドレール16の開口部19がリニア同期リラクタンスモータの二次回路の二次極17を画定する。リブ40は、エレベータかご12のガイド面を提供する末端部43を有する。ローラ(図示せず)が、リブ40のガイド面に沿ってエレベータかご12を誘導する。
【0013】
一次回路18は、たとえば強磁性体(たとえば、鋼、鉄)の積層によって形成された複数の一次極44を含む。一次極44は、リブ40の両側に配置される。一次極44は、二次極17と位置合わせされている。一次極44は、ボルト締め、溶接等によって一次極44に取り付けられたマウント46を通してエレベータかご12に結合される。巻線50は一次極44を取り囲み、従来の同期リラクタンスモータ固定子として働くが、直線的に配列される。コントローラ20からの制御信号(たとえば、3相正弦波電流)が巻線50に印加されて、エレベータかご12に直線運動を伝える。一次極44からの磁束は等しい大きさの2つのエアギャップ52を通過して、磁気吸引力の平衡を保つ。一次極44および巻線50は、エレベータかご12の全長に沿って配置され、容量および/または効率を高めるためにエレベータかご12の全長を超えてもよい。一次極44のピッチは二次極17のピッチに等しい。一次極44はエレベータかご12に結合されて示され、二次極17はガイドレール16内に形成されているが、一次極44および二次極17の位置は逆にされてよいことが理解される。
【0014】
図1の実施形態は、かごが上方へ移動中であり、故障が発生したときにエレベータかご12の減速度を低減するための構成部品を含む。例示的な実施形態では、自走式エレベータは2m/sを超える速度で上方へ移動する。故障は、電源の喪失、推進システムの故障、緊急停止等のかごの即座停止を開始する事象を指し、多くの他の事象を含むことがある。
図1に示されるように、エレベータシステム10は、故障状態で上方に移動中のエレベータかご12の減速度を制御する上で使用するためのエネルギーを蓄えるエネルギー貯蔵ユニット34を含む。たとえば、万一電源30から電源が損失した場合には、上方へ移動中のエレベータかごは、通常は突然停止するだろう。コントローラ20が電源喪失を検出すると、コントローラ20は、推進システム(たとえば、一次回路18および18’)に動力を供給し、エレベータかご12に円滑な減速を提供するためにエネルギー貯蔵ユニット34にアクセスする。万一主電源が喪失した場合にも、推進システムは依然として正味上方推力を提供して、かごエレベータ12がゼロ速度近くに達し、制動/保持機構を係合できるまで減速速度を制限する。エネルギー貯蔵ユニット34は、コンデンサ、電池、フライホイール、または他のエネルギー貯蔵装置を含んでもよい。例示的な実施形態では、エネルギー貯蔵ユニット34は約20,000ジュール超のエネルギーを貯蔵できる。
【0015】
図1の実施形態は、エレベータ12の各側に1台ずつ、2台のリニア同期リラクタンスモータ18および18’の形の二重推進システムを含む。第1の推進システムおよび第2の推進システムは、ともにエレベータかご12の通常移動中に使用される。第2の推進システムは、第1の推進システムで故障が発生するときに、上方へ移動中のエレベータかご12の円滑な減速を提供する。たとえば、コントローラ20が第1の推進システムの一次回路18で故障を検出する場合、次いでコントローラ20は、第2の推進システムの一次回路18’に制御信号を提供してよい。コントローラ20は、突然に停止するよりも、第2の推進システムに、適切な上方速度に達するまで上方へ移動中のエレベータかご12を円滑に減速するように命令する。第2の推進システムに加えて、実施形態は、冗長な駆動装置(たとえば、インバータ)、冗長なコントローラ、冗長な電源供給ライン、およびエレベータかごに上方への並進を提供するために使用される他の冗長な構成部品を含んでよい。
【0016】
エネルギー貯蔵ユニット34および複数の推進構成部品を使用することに加えて、エレベータシステム10は、エレベータかご12の上方への速度が上限未満になるまで制動装置(たとえば、停止装置、速度制限装置、および/または保持装置)の係合を遅延させてよい。
図1を参照すると、コントローラ20が故障を検出し、かごが上方へ移動中である場合、コントローラ20は、エレベータかご12の上方への速度が閾値未満になるまで制動装置36を作動させるのを遅延させる。たとえば、コントローラ20は速度センサから速度信号を取得し、上方への速度が2m/s未満になるまで制動装置36を係合するのを遅延してよい。
【0017】
図3は、故障検出時に上方へ移動中のエレベータかご12の減速度を低減する際にコントローラ20によって実行される例示的な動作のフローチャートである。プロセスは、コントローラ20が、故障が発生したかどうかを判断するステップ100で開始する。上述したように、故障はエレベータかご12の緊急停止を開始する任意の事象であってよい。故障が存在しない場合、コントローラは通常の動作モードに留まる。故障が検出される場合、フローは、コントローラ20が、エレベータかご12が上方へ移動中であるかどうかを判断するステップ102に進む。移動中ではない場合、フローは、標準的な故障停止プロセスが利用されるステップ104に進む。
【0018】
エレベータかご12が上方へ移動中である場合、フローは、コントローラ20が多様な障害が存在するかどうかを判断するステップ106、110、および114に進む。コントローラ20がステップ106で電源喪失を検出する場合、フローは、コントローラ20がエネルギー貯蔵ユニット34から動力を引き出して、推進システムに動力を供給し、円滑な停止が達成されるまでエレベータかご12に上方への推力を提供するステップ108に進む。コントローラ20が、ステップ110で推進システムの内の一方で故障が発生したと判断する場合、フローは、コントローラ20がアクティブな推進システムを駆動して、円滑な停止が達成されるまでエレベータかご12に上方への推力を提供するステップ112に進む。これは、故障のある推進システムからの推力の喪失に対処するためにアクティブな推進システムの動力を増強することを伴ってよい。たとえば、第2の推進システムに障害がある場合、次いで第1の推進システムはそれに応じて制御され、逆の場合も同じである。コントローラ20がステップ114で、電源喪失と推進システム障害の両方が発生したと判断する場合、フローは、コントローラ20がエネルギー貯蔵ユニット34から動力を引き出し、アクティブな推進システムを制御して、円滑な停止が達成されるまでエレベータかご12に上方への推力を提供するステップ116に進む。
【0019】
ステップ106、110、または114で検出された故障と組み合わせて、フローは、コントローラ20が減速プロファイルを生成し、推進システム(複数の場合がある)に制御信号を提供して、上方へ移動中のエレベータかご12を円滑に減速させるステップ117に進む。例示的な実施形態では、減速プロフィルは1G(つまり、9.81m/s
2の重力加速度)未満のエレベータかご減速度を提供し、例示的な実施形態では、減速プロファイルは5m/s
2未満のエレベータかご減速度を提供する。ステップ118で、コントローラ20は、エレベータかごの上方への速度を監視する。ステップ120で、コントローラ20は、エレベータかご12の上方への速度が閾値未満になるまで制動装置の作動を遅延させる。動作117、118、および120は、ステップ106、110、または114では対処されない故障状況下で実行されてもよい。したがって、動作117、118、および120は、ステップ106、110、および114での故障とは無関係であってもよい。
【0020】
図4は、例示的な実施形態の一方向ブレーキ200を示す。エレベータかごの上方への移動中に故障が発生すると、一方向ブレーキ200は、いったんエレベータかごが下方へ移動し始めると制動力をかける。したがって、上方へ移動中のエレベータかごは故障時に突然の停止を経験するのではなく、むしろ(重力に起因して)減速し、次いでかごが下方へ移動し始めると停止する。一方向ブレーキ200は、
図3の減速特長と併せて使用されてもよい。
【0021】
一方向ブレーキ200は、ガイドレール204に沿って移動する安全ブロック202を含む。安全ブロック202は、技術で既知であるようにエレベータかご12に取り付けられている。安全ブロック202は、ガイドレール204に向かって先細る壁を有する楔ガイド206を含む。バイアス部材208(たとえば、ばね)は、故障発生時に楔ガイド206の中に楔210を選択的に移動させる。動力が供給されるとき、アクチュエータ212(たとえば、ソレノイドおよびプランジャ)はバイアス部材208を後退させ、その結果、楔210は楔ガイド206から後退する。動力が供給されていないとき、アクチュエータ212は、バイアス部材208が楔ガイド206の中に楔210を伸長できるようにする。
【0022】
通常動作中、アクチュエータ212には動力が供給され、バイアス部材208を後退させ、その結果、楔210は重力を介して楔ガイド206から後退する。故障発生時、アクチュエータ212は(たとえば、電源の喪失により、またはコマンド信号から)オフにされる。アクチュエータ212がオフである状態で、バイアス部材208は楔ガイド206の中に楔210を伸長させる。伸長状態で、エレベータかごが上方へ移動している場合、楔210とレール204との間の抵抗力は小さく、それによって故障中の上方へ移動中のエレベータかごの急停止を妨げる。いったんエレベータかごが上方へ移動するのを止め、初期の下方運動を始めると、楔ガイド206はレール204に対して楔210を駆動させて、エレベータかごを停止させ、保持するためにレール204に制動力をかける。故障が解消されると、アクチュエータ212は電源を入れられ、バイアス部材208を後退位置に後退させる。楔210は、エレベータかごが上方へ移動するまでレール204に対して押し付けられたままとなり、その時点で楔は楔ガイド206から落下する。
【0023】
一方向ブレーキ200は、動作の改善のために冗長なアクチュエータ212、バイアス部材208、および楔210を有する。所望される量の制動力を供給するために、複数の一方向ブレーキ200が1台のエレベータかご上で利用されてよい。
【0024】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけであり、本発明を制限することを目的としていない。本発明の説明は、例示および説明のために提示されているが、本発明の説明は網羅的となること、または開示されている形での発明に制限されることを目的としていない。説明されていない本明細書に対する多くの変更形態、変形形態、改変形態、置換、または同等な配置は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者に明らかになるだろう。さらに、本発明の多様な実施形態が説明されてきたが、本発明の態様が説明されている実施形態の内のいくつかしか含まないことがあることが理解されるべきである。したがって、本発明は上記説明によって制限されていると見られるべきではなく、添付特許請求の範囲によってのみ制限される。