(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オーダーメイドのインソールは、型取りしたり計測したりして得た足の形状に対して、適宜箇所に凹凸が追加された形状に、作製される。足の形状に対して追加する凹凸の位置や寸法が、設計者の経験や勘によって決められると、設計者によって異なるインソールが作製されることになり、好ましくない。
【0005】
一定の品質を得るためには、一定のルールに従って設計パラメータを決定できるようにすることが望まれる。また、インソールの注文者に対して、どのような効果を狙ってインソールが設計され、それが設計パラメータにどのように反映されているのかなど、設計パラメータについて分かりやすく説明できるようにすることが望まれる。さらに、過去に作製したインソールの設計データに基づいて別の靴に用いるインソールを作製する場合や、インソールの使用による足の形状や歩行時の足の動きの変化を観察しながらインソールを作り直していく場合などに、インソールの作製履歴を容易に活用できることが望まれる。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み、一定のルールに従って設計パラメータを決定でき、設計パラメータについて分かりやすく説明でき、インソールの作製履歴を容易に活用できるインソール設計システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したインソール設計システムを提供する。
【0008】
インソール設計システムは、(a)足長、足幅、踵幅を含む足の外形の寸法の入力を受け付ける足寸法入力部と、(b)
足の外形の寸法と当該足の内部の骨格に含まれる骨の位置とを予め対応付けた標準モデルのデータを用いて、前記足寸法入力部が入力を受け付けた前記足の外形の寸法か
ら、前記足の
前記骨の
足長方向及び足幅方向の位置を推定する骨位置推定部と、(c)前記足の前記骨の位置に対応して
基準面上に配置されるインソールの表面の
隆起した特定部分の
うち前記足の前記骨格の内側縦アーチ又は外側縦アーチに対応する前記特定部分の形状について、前記骨位置推定部が推定した前記足の前記骨の位置を基準に決定される前記特定部分の
前記基準面に対して垂直方向の寸法が最大であるピーク位置
の足長方向及び足幅方向の位置を前記足長方向に変更す
る設計パラメータ
、前記骨位置推定部が推定した前記足の前記骨の位置を基準に決定される前記特定部分の足先側端の足長方向及び足幅方向の位置を前記足長方向に変更する設計パラメータ、及び前記特定部分の前記基準面に対して垂直方向の最大寸法であるピーク高さを決定する設計パラメータの入力を受け付ける設計パラメータ入力部と、(d)前記骨位置推定部が推定した前記足の前記骨の位置と、前記設計パラメータ入力部が入力を受け付けた前記設計パラメータとから、
前記インソールの前記表面の形状を、前記設計パラメータによって定義される
前記特定部分を含むよう
に形成するためのデータを算出するデータ算出部とを備える。
【0009】
上記構成において、インソール設計システムは、足の外形の寸法と設計パラメータとが入力されると、インソールの表面形状を形成するためのデータを算出する。
【0010】
上記構成によれば、設計パラメータは足の骨の位置を基準に決定される。そのため、足の骨の位置を考慮した一定のルールに従って、インソールの設計パラメータを決定できる。また、設計パラメータについて分かりやすく説明できる。また、インソールの作製履歴として、足の骨の位置を基準とする設計パラメータを蓄積することによって、インソールの作製履歴を容易に活用できる。
【0011】
好ましくは、前記骨位置推定部は、足長、足幅、踵幅について、前記足寸法入力部が入力を受け付けたデータと前記標準モデルのデータとの比率を求め、前記比率に基づいて前記標準モデルを拡大・縮小し、拡大・縮小した前記標準モデルの前記骨の位置を、前記骨位置推定部が推定する前記骨の位置とする。
【0012】
好ましくは、前記骨位置推定部は、予め準備された複数の標準モデルから、前記足寸法入力部が入力を受け付けた足長、足幅、踵幅の入力データとの差が小さくなる複数の前記標準モデルを選択し、選択した前記標準モデルを用いて補間することにより、前記足の骨の位置を推定する。
【0013】
好ましくは、前記設計パラメータ入力部は、前記内側縦アーチに対応して隆起する前記特定部分である内アーチの足長方向及び足幅方向の前記ピーク位置の基準となる前記骨の位置として、内側楔状骨、舟状骨、踵骨の載距突起のいずれか一つの位置の選択を受け付ける。
【0014】
この場合、足の外形の寸法からその位置を推定した骨を基準として、容易に、かつ効率よく設計することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一定のルールに従って設計パラメータを決定でき、設計パラメータについて分かりやすく説明できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、
図1〜
図20を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、足2の骨格のアーチ構造の説明図であり、右足を図示している。
図2は、インソール10の表面10sの形状を示す略図であり、左足用を図示している。
図1に示すように、足2の骨格は、親指の付け根、小指の付け根、踵の3点を結ぶ線4,6,8が弧を描いて膨らんでおり、それぞれ、内側縦アーチ4、外側縦アーチ6、横アーチ8と呼ばれている。このような足のアーチ構造に対応して、
図2に示すように、インソール10の表面10sに隆起した
特定部分10a,10b,10cや窪んだ部分10dなどを形成することにより、足裏全体で体重を支えたり、足のアーチ構造の形状を整えたりすることができる。
【0019】
図3は、インソール設計システム50の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、インソール設計システム50は、サーバ上に構成され、LANやインターネットなどの通信網80を介して端末70に接続され、端末70と通信する。端末70には、例えば、ディスプレイとキーボードとタッチパッドやマウス等を備えたパーソナルコンピュータや、タッチパネルを備えたタブレット型コンピューターや、スマートフォン(多機能携帯電話・PHS)などを用いることができる。
【0020】
なお、インソール設計システム50の機能の一部をアプリケーションソフトとして、端末70にインストールしても構わない。また、インソール設計システム50と端末70とを直接接続するなどして一体化し、スタンドアロンの専用装置として構成しても構わない。
【0021】
図3に示すように、インソール設計システム50は、足寸法入力部52と、設計パラメータ入力部54と、骨位置推定部56と、データ算出部58と、出力部60とを備えている。
【0022】
足寸法入力部52は、
図15に示す画面を端末70に表示するためのデータを端末70に送出し、端末70が操作されると、足の外形の寸法について入力を受け付ける。足寸法入力部52が入力を受け付ける足の外形の寸法は、
図4の説明図に示すように、足長A、足幅B、踵幅Cの寸法を含む。足長A、足幅B、踵幅Cは、適宜に定義すればよい。例えば、足長Aは、足が接する基準を垂直に見たときに踵と第二趾とを結ぶ線に沿う線上の足外形の長さである。足幅Bは、足が接する基準を垂直に見たときに第一趾と第五趾の付け根を結ぶ線上の足の外形の長さである。踵幅Cは、足が接する基準を垂直に見たときに踵から足長の17%の箇所の足の外形の幅(踵と第二趾とを結ぶ線に垂直な線上の寸法)である。
【0023】
骨位置推定部56は、足寸法入力部52が入力を受け付けた足の外形の寸法データから、
図5に示すように、足2の内部の骨格30に含まれる特定の骨(詳しくは後述する。)の位置を推定する。
【0024】
骨位置推定部56は、例えば、足の外形の寸法と骨の位置とを予め対応付けた標準モデルのデータを用いて、骨の位置を推定する。具体的には、足長、足幅、踵幅について、足寸法入力部52が入力を受け付けたデータと標準モデルのデータとの比率を求め、この比率に基づいて標準モデルを拡大・縮小し、拡大・縮小した標準モデルの骨の位置を、推定位置とする。複数の標準モデルを予め準備しておき、足長、足幅、踵幅の入力データとの差が小さくなるいくつかの標準モデルを選択し、選択した標準モデルを用いて補間することにより、骨の位置を推定しても構わない。標準モデルは、足のタイプ(ギリシャ型、エジプト型、スクエア型等)に応じて、異なるものを用いてもよい。
【0025】
なお、足の骨の位置は、上記以外の方法によって推定しても構わないが、足の骨の位置はインソールを設計する際の基準となるため、一義的に推定される必要がある。
【0026】
設計パラメータ入力部54は、端末70からの操作に応じて、
図16〜
図20に示す画面を表示するためのデータを端末70に送出し、端末70が操作されると、設計パラメータについて入力を受け付ける。設計パラメータ入力部54は、端末70から、次の(a)〜(g)の設計パラメータの入力を受け付ける。
【0027】
(a)インソール長、インソール幅、インソール厚、インソール形状
端末70に
図16に示す画面が表示された状態で、端末70を操作することにより、インソールの基本データを入力できる。すなわち、
図6の平面図に示すインソール長L及びインソール幅Wと、
図7の側面図に示すインソール厚T(一定の厚さを有するベース部12についての底面12tと上面12sとの間の寸法)と、
図7の要部拡大図に示す足先部分についてのインソール形状のタイプとを、入力できる。
図7(a)はラウンド、
図7(b)はオブリーク、
図7(c)はスクエアである。
図6〜
図8において、符号10pは足先側端、符号10qは踵側端である。インソールを敷く靴内部の寸法・形状に応じて、インソールの基本データを入力する。
【0028】
(b)内側アーチのピーク高さ、ピーク位置及びアーチ長さ
端末70に
図17に示す画面が表示された状態で、端末70を操作することにより、インソール10の内側アーチ10a(
図2参照)についての設計パラメータ(ピーク高さ、ピーク位置及びアーチ長さ)を入力できる。
【0029】
図9に示すように、ピーク高さは、内側アーチ14a,14bのピーク14s,14tの高さであり、基準面12s(ベース部12の上面12s)からの垂直方向の寸法である。ピーク位置は、内側アーチ14a,14bのピーク14s,14tの位置であり、内側楔状骨32、舟状骨33、踵骨34の載距突起34xのいずれか一つの位置を選択し、必要に応じて、選択した位置からピーク位置までの足長方向の寸法を入力する。すなわち、内側アーチ14a,14bのピーク14s,14tは、選択した骨の直下、またそこから足長方向にずらした位置に配置される。
【0030】
アーチ長さとしては、内側アーチ14a,14bの足先側端14p,14qの位置を入力する。すなわち、第1中足骨31の骨頭31a又は骨頭手前31bの位置を選択し、必要に応じて、選択した位置から足先側端14p,14qまでの足長方向の寸法を入力する。内側アーチ14a,14bの踵側端14xは、踵骨34の位置を基準に決定され、設計パラメータの入力は不要である。内側アーチ14a,14bの両端14p,14q;14xは、基準面12s(ベース部12の上面12s)上にある。
【0031】
(c)外側アーチのピーク高さ、ピーク位置及びアーチ長さ
端末70に
図17に示す画面が表示された状態で、端末70を操作することにより、インソール10の外側アーチ10b(
図2参照)についての設計パラメータ(ピーク高さ、ピーク位置及びアーチ長さ)を入力できる。
【0032】
図10に示すように、ピーク高さは、外側アーチ15a,15bのピーク15s,15tの高さであり、基準面12s(ベース部12の上面12s)からの垂直方向の寸法である。ピーク位置は、外側アーチ15a,15bのピーク15s,15tの位置であり、立方骨35の所定位置(例えば中心位置)を基準とし、必要に応じて、基準位置からピーク位置までの足長方向の寸法を入力する。すなわち、外側アーチ15a,15bのピーク15s,15tは、立方骨35の所定位置の直下、またそこから足長方向にずらした位置に配置される。
【0033】
アーチ長さとしては、外側アーチ15a,15bの足先側端15p,15qの位置を入力する。すなわち、第五中足骨36の骨頭36a又は中間位36bを選択し、必要に応じて、選択した位置から足先側端15p,15qまでの足長方向の寸法を入力する。外側アーチ15a,15bの踵側端15xは、踵骨34の位置を基準に決定され、設計パラメータの入力は不要である。外側アーチ15a,15bの両端15p,15q;15xは、基準面12s(ベース部12の上面12s)上にある。
【0034】
(d)横アーチのピーク高さ及びピーク位置
端末70に
図18に示す画面が表示された状態で、端末70を操作することにより、インソール10の横アーチ10c(
図2参照)についての設計パラメータ(ピーク高さ及びピーク位置)を入力できる。
【0035】
図11(a)の平面図及び
図11(b)の側面図に示すように、ピーク高さは、横アーチ16のピーク16aの高さであり、基準面12sからの垂直方向の突出寸法である。ピーク位置は、足幅Bの中心点Oを基準とし、必要に応じて、横アーチ16のピーク16aを矢印16xで示す足長方向に、基準位置(中心点O)からずらす寸法を入力する。
【0036】
なお、横アーチのピーク位置は、足幅方向には固定される。ピーク長さは、横アーチの断面形状が予め決められているため、ピーク高さから決まる。もっとも、足幅方向についてピーク位置を入力可能(移動可能)としても構わない。また、ピーク長さを入力可能としても構わない。
【0037】
(e)ウェッジ
端末70に
図19に示す画面が表示された状態で、端末70を操作することにより、
図14の説明図に示す母趾球20、小趾球22、踵全体24、踵内側26、踵外側28について基準面12sからの高さを、設計パラメータを入力する。これらのパラメータによって、足の傾きを調整することができる。
【0038】
(f)踵の形状
端末70に
図20に示す画面が表示された状態で、端末70を操作することにより、踵部の形状について、設計パラメータを入力できる。
【0039】
踵部の形状は、
図12(a)に示すラウンド型と、
図12(b)に示すフラット型とから選択する。
図12(a)及び(b)は、インソール10の踵部10dを、足幅方向(足長方向と交差する方向)に沿って切断した断面を示す。
【0040】
(g)アーチ断面形状
端末70に
図20に示す画面が表示された状態で、端末70を操作することにより、アーチ断面形状について、設計パラメータを入力できる。
【0041】
アーチ断面形状は、
図13(a)に示すV字型と、
図13(b)に示すラウンド型とから選択する。
図13(a)及び(b)は、インソール10の足長方向の中間部分を足幅方向に沿って切断した断面を示す。
【0042】
図3に戻り、データ算出部58は、骨位置推定部56が推定した骨の位置と、設計パラメータ入力部54が入力を受け付けた設計パラメータとから、インソール10の表面10sの立体形状を形成するためのデータを算出する。例えば、設計パラメータによって定義されるアーチ形状や断面形状を有し、かつ滑らかに連続する曲面形状をインソール加工装置で削り出すときに切削工具の位置や回転速度などを制御するための制御データを算出する。あるいは、インソール加工装置の制御データの元になるデータ、例えば、設計パラメータによって定義されるアーチ形状や断面形状を有し、かつ滑らかに連続する曲面形状のデータを算出する。硬さや形状が異なる複数の部材を接合した複合構造のインソールの場合、データ算出部58が算出するデータに、インソール10の表面10sの立体形状を形成するために部分的に追加する部材の材質・寸法などのデータが含まれていても構わない。
【0043】
出力部60は、データ算出部58が算出したデータを、インソール加工装置に直接出力したり、一時記憶装置に出力したり、記録媒体に出力したり、設計用の端末や他の端末に出力したりする。
【0044】
以上に説明したインソール設計システム50を用いると、足の骨の位置を考慮しながらインソールの形状を容易に、かつ効率よく設計することができる。設計パラメータは、骨の位置を基準に決定されるので、設計ルールを決めておけば、だれもが同じように設計することができ、一定の品質のインソールを設計し作製することができる。
【0045】
また、設計パラメータが骨の位置を基準に定義されているので、設計パラメータについて分かりやすく説明できる。
【0046】
さらに、インソールの作製履歴として、足の骨の位置を基準とする設計パラメータを蓄積することによって、過去に作製したインソールの設計データに基づいて別の靴に用いるインソールを作製する場合や、インソールの使用による足の形状や歩行時の足の動きの変化を観察しながらインソールを作り直していく場合などに、インソールの作製履歴を容易に、かつ効率よく活用できる。例えば、足のアーチ構造をインソールによって矯正する場合に、矯正の進展に応じて形状を変更したインソールを設計し作製することが容易である。
【0047】
<まとめ> 以上に説明したインソール設計システムを用いると、一定のルールに従って設計パラメータを決定でき、設計パラメータについて分かりやすく説明できる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0049】
例えば、設計パラメータや、設計パラメータの基準となる骨は、適宜に選択すればよく、実施例に限定されない。例えば、内側アーチや外側アーチの足幅方向の位置についての設計パラメータの入力を受け付けるようにしても構わない。
【0050】
また、本発明のインソール設計システムは、履物に着脱自在に装着されるインソール(履物とは別部材のインソール)に限らず、履物の一部分(足裏が接する部分)を形成するインソール(履物自体のインソール)についても、適用可能である。例えば、本発明のインソール設計システムは、データ算出部がサンダルや下駄などの履物の足裏が接する部分の表面形状を削り出すための加工機制御データを算出するように構成してもよい。