【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日:平成28年4月28日〜同月30日 展示会名、開催場所:第40回 2016 日本ホビーショー 東京ビッグサイト 東1・2・3・4ホール(東京都江東区有明3−10−1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記打抜部の外形線が、前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線が切断された破断部と、前記縦糸用金属線または前記横糸用金属線の少なくとも一方が連続している接続部と、を有する請求項2に記載の金属織物。
前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線を構成する金属材料が銅、丹銅、黄銅またはアルミニウム合金であり、メッシュ数が120メッシュ以上160メッシュ以下である請求項1から9のいずれか一項に記載の金属織物。
前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線を構成する金属材料が燐青銅、ステンレス鋼またはチタンであり、メッシュ数が160メッシュ以上250メッシュ以下である請求項1から10のいずれか一項に記載の金属織物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
図1は本発明の第一実施形態にかかる金属織物10を示す平面図である。
図2は、
図1に示す金属織物10における端部90の拡大図である。
【0014】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。金属織物10はシート状をなし、縦糸用金属線30を縦糸とし、横糸用金属線20を横糸とする金属製の織物である。縦糸用金属線30および横糸用金属線20の平均の線径は、それぞれ0.03mm以上かつ0.09mm以下である。
【0015】
本実施形態の金属織物10は縦糸用金属線30と横糸用金属線20をメッシュ状に織った布である。金属織物10は折り紙として用いることが可能な金網である。
図1に示すようにxy軸方向を便宜上設定し、x方向を横糸方向、y方向を縦糸方向と呼称する。横糸方向に延在する金属線を横糸用金属線20と呼称し、縦糸方向に延在する金属線を縦糸用金属線30と呼称する。なお、金属織物10がシート状をなすとは、金属織物10が薄地であることを意味し、金属織物10が完全な平面であることを要するものではない。
【0016】
金属織物10は
図1に示す平面視において正方形状をなしている。金属織物10の平面寸法は特に限定されないが、平面寸法に関しては辺長を100ミリメートル以上200ミリメートル以下とすることができる。これにより、一般的な折り紙と同様の取り扱い性が得られる。金属織物10を折り紙として用いる場合、主として子供向けのホビー用途としてもよく、または主として大人向けの折り紙造形品の作成用途としてもよい。
【0017】
縦糸用金属線30を構成する金属材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、金、銀、白金、鉄、亜鉛、スズもしくは鉛、またはこれらの合金を用いることができる。より具体的には、縦糸用金属線30を構成する金属材料は、銅(純銅)、銅合金、アルミニウム合金、ステンレス鋼およびチタンからなる群より選ばれるいずれかであることが好ましく、横糸用金属線20を構成する金属材料も上記の群より選ばれるいずれかであることが好ましい。銅合金としては、真鍮(黄銅)、丹銅、燐青銅、白銅、赤銅などを用いることができる。丹銅や黄銅は金色を呈し、SUSは銀色を呈するため、これらの金属材料を用いることで特に美観に優れる金属織物10を得ることができる。
金属織物10は、縦糸用金属線30および横糸用金属線20の素地が露出したものでもよく、または金属織物10の全面または一部に印刷を施したものでもよい。印刷には各種の手段を用いることができ、例えばインクジェットプリンターを用いてカラー印刷をしてもよい。
【0018】
金属織物10は、多数本の縦糸用金属線30および横糸用金属線20を備えている。縦糸用金属線30と横糸用金属線20の本数は互いに同数でもよく、異なる本数でもよい。多数本の縦糸用金属線30は、同種の金属材料で形成された金属線のみの群であってもよく、または異なる金属材料で形成された複数種類の金属線を組み合わせた群であってもよい。横糸用金属線20に関しても同様である。
【0019】
縦糸用金属線30および横糸用金属線20は、互いに同種金属で形成されていてもよく、または異種金属で形成されていてもよい。縦糸用金属線30と横糸用金属線20とが異種金属であるとは、縦糸用金属線30に含まれる金属の主成分と、横糸用金属線20に含まれる金属の主成分とが、異種であることをいう。
【0020】
縦糸用金属線30または横糸用金属線20を構成する金属材料のヤング率は、60GPa以上220GPa以下、好ましくは100GPa以上220GPa以下とすることができる。
【0021】
縦糸用金属線30または横糸用金属線20は、金属材料を素地のまま用いてもよく、または表面にコーティングを施してもよい。コーティングは無色透明、白または黒などの無彩色、または有彩色のいずれとしてもよい。有彩色とする場合は、赤色、黄色、青色、緑色など特に限定されない。
【0022】
縦糸用金属線30と横糸用金属線20の線径は共通としてもよく、または一方が他方よりも太径であってもよい。上述したように縦糸用金属線30および横糸用金属線20の平均の線径は0.03mm以上0.09mm以下が好ましく、0.03mm以上0.06mm以下が更に好ましい。縦糸用金属線30や横糸用金属線20として選択する金属材料により特に好ましい線径は僅かに異なるものの、上記に例示した金属材料を選択する限りにおいて、縦糸用金属線30および横糸用金属線20の平均の線径は上記数値範囲とすることが好ましい。縦糸用金属線30および横糸用金属線20の平均の線径を0.03mm以上とすることで金属織物10に所望のコシの強さを得ることができるため、金属織物10を折り上げた際に明瞭な折り目を形成することができる。本発明者の検討によれば、縦糸用金属線30および横糸用金属線20に上記の種々の金属材料を用いた場合、平均の線径を0.1mm以上とすると折り目の弾性復元力が過剰となって明瞭な折り目を形成することが困難となり、平均の線径を0.1mm未満、特に0.09mm以下とすることで金属織物10を折り曲げたときの特性が顕著に変わり紙製の折り紙のごとく明瞭な折り目を形成できることが明らかとなった。また、縦糸用金属線30や横糸用金属線20の平均の線径を0.09mm以下とすることで、紙製の折り紙に比して過大な力を掛けずとも金属織物10を折り紙のごとく折り曲げることができる。なお、縦糸用金属線30や横糸用金属線20の平均の線径とは、後述する両端の塊状部40を除く中間部分の線径を複数点において測定した平均値として求めることができる。
【0023】
縦糸用金属線30または横糸用金属線20の少なくとも一方の表面は、有彩色を呈していてもよい。有彩色とは、白色や黒色などの無彩色と金色や銀色などの金属色を除く色である。有彩色とする場合は、上記のようにコーティングを施したカラー線を用いてもよい。このほか、縦糸用金属線30または横糸用金属線20を構成する金属材料としてチタンを用いるとともに、チタンを光触媒加工したカラーチタン線を用いてもよい。
【0024】
金属織物10のメッシュ数は、100メッシュ以上250メッシュ以下が好ましい。メッシュ数が過少であると、金属線を指で付勢しても容易に復元してしまうため折り癖をつけることが難しく、このため折り紙のように指で折り曲げたときに金属織物10に明瞭な折り目を形成することが困難となる。またメッシュ数が過大であると金属線の線径を細くする必要があり上記の好ましい平均の線径を実現することが困難となる。メッシュ数とは、1インチ(25.4mm)の長さに含まれる網目の数を意味する。また網目とは、縦糸用金属線30および横糸用金属線20によって囲まれた開口である。金属織物10における縦糸方向と横糸方向とのメッシュ数は、互いに等しくてもよくまたは相違してもよい。
【0025】
金属織物10の好ましいメッシュ数は、縦糸用金属線30や横糸用金属線20の金属材料の展延性との関係で決定される。より具体的には、縦糸用金属線30および横糸用金属線20を構成する金属材料が銅、丹銅、黄銅またはアルミニウム合金である場合、メッシュ数は120メッシュ以上160メッシュ以下が好ましい。また、縦糸用金属線30および横糸用金属線20を構成する金属材料が燐青銅、ステンレス鋼またはチタンである場合、メッシュ数は160メッシュ以上250メッシュ以下が好ましい。
本発明者が鋭意検討したところ、上記の金属材料およびメッシュ数の組み合わせを選択することで、折り目の形成不良や折り目の戻りの発生を抑制し、紙製の折り紙の如く、指の押圧によって金属織物10に明瞭な折り目を形成できることが明らかとなった。
【0026】
本実施形態の金属織物10は1枚ずつ個別に提供されてもよいが、複数枚の金属織物10をセットにして提供してもよい。すなわち本発明によれば、金属織物10を複数枚備えるシートセット(図示せず)が実現される。このシートセットは第一のシート状の金属織物と、第二のシート状の金属織物と、が一体に包装されたものである。そして第一のシート状の金属織物は、縦糸用金属線30および横糸用金属線20が銅合金で形成されて金色を呈し、第二のシート状の金属織物は、縦糸用金属線30および横糸用金属線20がアルミニウム合金またはステンレス鋼で形成されて銀色を呈する。シートセットには、このほか赤色や青色など有彩色を呈する金属織物を含めて包装してもよい。このように多色のシートを含めて提供することで、ユーザーは目的と趣向に合う色の金属織物を選択して折り紙として用いることができる。
【0027】
金属織物10の織り方は限定されず、平織、綾織、畳織または綾畳織など、縦糸および横糸を用いる種々の織り方によって織られた織物とすることができる。
このうち本実施形態の金属織物10は、縦糸用金属線30と横糸用金属線20とが平織されていることが好ましい。これは、
図2に示すように、平織とすることで縦糸用金属線30と横糸用金属線20との交点が直交格子上に整列するため、金属織物10を折り紙として指で折り上げる際に、直線的な折り目を容易に付けることができるためである。
【0028】
少なくとも一部本数の縦糸用金属線30または横糸用金属線20の先端は塊状に形成されている。塊状部40が形成されている。より詳細には、
図2に示すように、本実施形態の金属織物10は、縦糸用金属線30および横糸用金属線20の全本数の両端に塊状部40が形成されている。このように縦糸用金属線30や横糸用金属線20の先端を塊状に形成することで、金属織物10を折り紙のごとく指で折り曲げて使用する際に、縦糸用金属線30や横糸用金属線20の先端が指に引っ掛かることが防止できる。また、例えば縦糸用金属線30に塊状部40が存在することで横糸用金属線20が縦糸用金属線30から脱離することが塊状部40によって規制される。このため、金属織物10の辺縁に沿って解れ防止のためのコーティング処理などを施さずとも縦糸用金属線30や横糸用金属線20が金属織物10からばらばらに離脱することが防止される。
【0029】
塊状部40の直径は、縦糸用金属線30および横糸用金属線20の直径以上である。塊状部40の直径の上限は、隣接する他の縦糸用金属線30や横糸用金属線20における塊状部40と干渉しないよう、縦糸用金属線30および横糸用金属線20の線間隔以下である。ここで、線間隔とは、隣接する縦糸用金属線30(または横糸用金属線20)同士の軸心間隔である。特に、本実施形態の金属織物10において、塊状の先端の直径は、縦糸用金属線30または横糸用金属線20の平均の線径よりも大きく、かつ該線径の4倍以下である。これにより、縦糸用金属線30や横糸用金属線20の先端が指に引っ掛かることを防止する上記の効果が十分に発揮され、かつ金属織物10の全体の厚みが過大となることが防止される。
【0030】
本実施形態の金属織物10を製造するにあたっては、縦糸用金属線30および横糸用金属線20を織機で平織して原反を製造したうえで、レーザーカッターにて正方形状に切り出すとよい。レーザーを照射して縦糸用金属線30および横糸用金属線20に熱エネルギーを与えることで、縦糸用金属線30および横糸用金属線20は溶断され、これにより縦糸用金属線30および横糸用金属線20の先端に塊状部40が形成される。このほか、平織された原反を自動裁断機の金属刃で正方形に裁断した後に、裁断された端縁に沿って加熱またはレーザー照射して塊状部40を形成してもよい。
【0031】
本実施形態の金属織物10によれば、これを折り曲げ加工することにより各種の装飾品(図示せず)が提供される。装飾品は、身体や鞄、帽子などに装着して用いられるアクセサリーのほか、室内に載置または壁掛けして用いられてもよい。装飾品の形状は特に限定されず、花や動物などの自然物を模したものでもよく、幾何学的な形状でもよく、その他の形状でもよい。また、装飾品に代えて、ブックカバーや筆入れなどの文房具や、小物入れなどの容器を、金属織物10を折り曲げ加工することにより提供してもよい。
【0032】
図3は第二実施形態の金属織物10の平面図である。
図3に示すように、本実施形態の金属織物10には打ち抜き加工が施されている。ここでいう打ち抜き加工とは、シート状の金属織物10の一部である打抜部50をユーザーが容易に分離できるようにした加工である。すなわち、金属織物10は打抜部50を有し、この打抜部50を破断させまたは取り外して周囲の金属織物10から分離可能に構成されていてもよい。
【0033】
打抜部50の態様は特に限定されないが、たとえば幾何学形状やキャラクター形状を模した打抜部50を、シート状の金属織物10の面内の1カ所または複数箇所に形成するとよい。
図3には1個の星形の打抜部50を形成することを例示するが、打抜部50の形状や寸法、配置、個数は任意である。打抜部50の個数は複数個としてもよく、たとえば数個または数十個とすることができる。複数個の打抜部50を金属織物10に形成する場合、それぞれの打抜部50は互いに同一形状でもよく、または異なる形状でもよい。また複数個の打抜部50は格子状や千鳥状などに整列して配置されていてもよく、または不規則(ランダム)な位置に配置されていてもよい。打抜部50の外形線60を
図3では模式的に破線で示す。打抜部50の外縁は、切断された縦糸用金属線30や横糸用金属線20の先端(切断箇所)の集合によって描かれるが、この打抜部50の外縁を直線や曲線で近似的に示す線を外形線60と呼称する。すなわち外形線60は、打抜部50の外縁を示す仮想線である。
図4は、打抜部50の外形線60の一部を含む部分領域IVの拡大図である。
図4では外形線60を二点鎖線で示す。
【0034】
打抜部50は、周囲の金属織物10との間で外形線60上の全周において縦糸用金属線30および横糸用金属線20が切断されたうえで金属織物10に対して仮留めされていてもよい。または、外形線60上の一部の長さ領域において、打抜部50と周囲の金属織物10との間で縦糸用金属線30や横糸用金属線20が繋がっていてもよい。
【0035】
図4では、打抜部50が周囲の金属織物10に対して接続部52によって部分的に接続されている態様を示している。すなわち打抜部50の外形線60は、縦糸用金属線30および横糸用金属線20が切断された破断部54と、縦糸用金属線30または横糸用金属線20の少なくとも一方が連続している接続部52と、を有している。接続部52は縦糸用金属線30または横糸用金属線20の少なくとも一方が打抜部50の内部と外部とで連続している領域であり、破断部54は縦糸用金属線30および横糸用金属線20が切断されている領域である。この接続部52をユーザーが破断させることで打抜部50を金属織物10から分離することができる。
【0036】
接続部52には脆弱部56が形成されていてもよい。脆弱部56とは、ユーザーが手指の力で縦糸用金属線30や横糸用金属線20を容易に破断させることができる程度に、縦糸用金属線30や横糸用金属線20における他部よりも破断強度を低下させた部位である。脆弱部56は、打抜部50の外形線60に沿って延在して形成されていることが好ましい。
【0037】
脆弱部56は、縦糸用金属線30や横糸用金属線20を金属刃によって中途深さまで切り込むハーフカットを施すことにより形成してもよい。または、縦糸用金属線30や横糸用金属線20にレーザーカッターでレーザーを照射して脆弱部56を形成してもよい。レーザーカッターを用いて縦糸用金属線30や横糸用金属線20に脆弱部56を形成する場合のレーザーの照射強度は、上述したように原反から金属織物10を切り出す場合のレーザーの照射強度よりも低くするとよい。レーザーを弱くまたは短時間だけ照射することで、縦糸用金属線30および横糸用金属線20の線太さの一部を溶融させて溶断の一歩手前の状態とし、または縦糸用金属線30および横糸用金属線20の金属材料を劣化させることにより脆弱部56が形成される。
【0038】
なお、
図4の態様に代えて、破断部54を形成せず、打抜部50の外形線60の全周を接続部52にするとともに外形線60の全長さに亘って脆弱部56を形成してもよい。すなわち、打抜部50の外形線60は周囲の金属織物10と全周に亘って接続されており、かつ外形線60に沿って周回状に脆弱部56が形成されていてもよい。
【0039】
破断部54は、金属刃またはレーザーカッターにより縦糸用金属線30および横糸用金属線20を破断して形成することができる。
図4では、破断部54に位置する縦糸用金属線30または横糸用金属線20の先端が塊状に形成されている態様を示している。破断部54においてレーザーカッターを用いて縦糸用金属線30や横糸用金属線20を溶断することにより先端に塊状部40を形成することができる。破断部54において縦糸用金属線30および横糸用金属線20の先端に塊状部40を形成することで、打抜部50に対する手指の引っ掛かりを抑制することができる。
【0040】
レーザーカッターで打抜部50を形成する場合、レーザーの照射強度を一定としたうえで、破断部54を形成する場合は縦糸用金属線30や横糸用金属線20に対するレーザーの照射時間を長くし、脆弱部56を形成する場合は縦糸用金属線30や横糸用金属線20に対するレーザーの照射時間を上記よりも短くするとよい。言い換えると、レーザーに対する金属織物10の相対的な送り速度を、脆弱部56においては速くし、破断部54においてはこれよりも遅くするとよい。これにより、一連のレーザー照射により、外形線60に破断部54と脆弱部56とを含む打抜部50を作成することができる。
【0041】
金属織物10から分離された打抜部50は、そのままの形状でまたは更に折り曲げ加工が施されて、置物や装飾品などの種々の用途に用いることができる。複数個たとえば数十個の打抜部50を金属織物10に形成しておくことで、当該多数の打抜部50を金属織物10から分離して容易に得ることができる。また、打抜部50が分離された周囲の金属織物10は、折り紙として用いてもよく、または更に折り曲げ加工を施して各種の装飾品、文房具または容器を作成する用途に用いてもよい。打抜部50が分離された金属織物10を折り曲げて装飾品等を作成することで、打抜部50の部分が窓状に刳り抜かれた独特の模様のシート状の金属織物10または装飾品等を得ることができる。
【0042】
図5は第三実施形態にかかる長尺の金属織物11の平面図である。
図6は第三実施形態の長尺の金属織物11を破断線BLで裁断して得られた矩形(具体的には正方形)の金属織物10の平面図である。破断線BLは金属織物11に仮想的に設けられた裁断予定線である。
【0043】
図5および
図6に示すように、本実施形態の金属織物10、11には刺繍70が施されている。金属織物10が刺繍70を有することにより、金属織物10およびこれを折り曲げ加工して得られる物品に高い意匠性を与えることができるほか、後述するように曲げ加工されたコーナー部を刺繍70によって補強することができる。長尺の金属織物11には破断線BLと重ならない位置に多数の刺繍70が施されている。言い換えると、金属織物10は、金属織物11を刺繍70同士の間で切断して作製される。これにより、金属織物11の裁断時に刺繍70に損傷や「ほつれ」が生じることがない。このため裁断された金属織物10には、1個または複数個の刺繍70が、金属織物10のうち周縁部12を除く内側領域に施されることとなる。
【0044】
金属織物11に刺繍70を施すにあたっては、刺繍用の針を用いて刺繍糸を金属織物11に縫い付ける。刺繍用の針としては、縦糸用金属線30や横糸用金属線20を傷つけることがないよう、ボールポイントの針を用いるとよい。
【0045】
刺繍70は、縦糸用金属線30および横糸用金属線20よりも、線径が大きくかつヤング率が低い刺繍糸で構成されている。すなわち、縦糸用金属線30および横糸用金属線20の平均の線径は0.03mm以上かつ0.09mm以下であり、ヤング率は60GPa以上220GPa以下であるところ、刺繍70を構成する刺繍糸の線径は0.1mm以上である。刺繍糸にはモールやモヘアなどの毛糸の手芸糸や、プラスチック素材の糸のほか、縦糸用金属線30および横糸用金属線20よりもヤング率の低い金属線を用いてもよい。より具体的には、絣(かすり)糸などの染色糸や、ラメ糸やスパンコール糸など金属光沢を呈する糸を用いることで、意匠性に優れる刺繍70および金属織物10を得ることができる。このほか絹糸やナイロン糸なども刺繍糸として幅広く用いることができる。
刺繍糸の線径の上限は特に限定されないが、撚り糸や金属撚り線を用いる場合は0.8mm程度以下の太い糸を用いることができる。また、毛糸の刺繍糸の場合は、線径を5mm程度以下とすることができる。上記の刺繍糸を用いることで、折り紙としての金属織物10の折りやすさを損なわない。
【0046】
刺繍70は、金属織物10、11の一方面側のみに施されていてもよく、または両面側に施されていてもよい。
刺繍70は単層に形成して平面構造としてもよく、または多層に形成して立体構造としてもよい。
【0047】
図6に示す金属織物10を折り曲げ加工することにより、刺繍70を有する装飾品、文房具および容器をそれぞれ作成することができる。容器としては、コーナー部を有する箱型とすることができる。かかるコーナー部を有する箱型の容器の製造方法としては、金属織物10を、刺繍70を通過する複数本の折り曲げ線FLでそれぞれ折り曲げることにより刺繍70をコーナー部に配置するとよい。
図6に示す金属織物10を折り曲げ加工して箱型の容器を作成する場合、複数個(
図6では4個)の刺繍70で囲まれる中央部分が容器の底部72となり、この底部72の四隅に刺繍70がそれぞれ配置される。このように、刺繍70を通過し互いに交差する複数本の折り曲げ線FLで金属織物10を折り曲げ加工することで刺繍70がコーナー部に配置されるため、刺繍70によって金属織物10のコーナー部を補強することができる。
【0048】
刺繍70を有する金属織物10は、折り紙や装飾品、文房具、容器のほか各種用途に用いることができる。例示として、カーテン用またはブラインド用の素材として、衣類などの服飾素材として、パッチワークの素材として、玩具として、手芸品などのクラフト用途として、アクセサリーの素材として、およびフィルターなどの濾過用の素材として、用いることができる。フィルターとして用いる場合、金属織物10のうち濾過に用いられる中央部分の全体に刺繍70を施すとよい。これにより、縦糸用金属線30および横糸用金属線20で構成される金属メッシュ層(第一層)と、刺繍70で構成される第二層と、を備える多層構造のフィルターを得ることができる。
【0049】
第三実施形態の変形例として、金属織物10には刺繍70に代えて、または刺繍70に加えて、布材料で作成された布部材が縫着されていてもよい。すなわち、金属織物10を台布として、ワッペンなどの布部材をアップリケ縫製してもよい。布材料を構成する織り糸は、縦糸用金属線30および横糸用金属線20よりもヤング率が低いことが好ましく、布部材の曲げ剛性は金属織物10よりも低いことが好ましい。
布部材は金属織物10よりも面積が小さい小片が好ましい。金属織物10には、複数個の布部材が互いに離間して、かつ金属織物10のうち周縁部12を除く内側領域に縫着されているとよい。これにより、第三実施形態において金属織物10を曲げ加工して形成されたコーナー部を刺繍70によって補強するのと同様に、本変形例の金属織物10を曲げ加工して形成されたコーナー部を布部材によって補強することができる。
すなわち、コーナー部を有する箱型の容器の製造方法としては、一個または複数個の布部材が縫着されている金属織物10を、この布部材を通過する複数本の折り曲げ線でそれぞれ折り曲げることにより、当該布部材をコーナー部に配置するとよい。
【0050】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0051】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)縦糸用金属線を縦糸とし、横糸用金属線を横糸とするシート状の金属織物であって、前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線の平均の線径が、それぞれ0.03mm以上かつ0.09mm以下であることを特徴とする金属織物。
(2)前記縦糸用金属線と前記横糸用金属線とが平織されている上記(1)に記載の金属織物。
(3)少なくとも一部本数の前記縦糸用金属線または前記横糸用金属線の先端が塊状に形成されている上記(1)または(2)に記載の金属織物。
(4)前記塊状の前記先端の直径が、前記縦糸用金属線または前記横糸用金属線の平均の線径よりも大きく、かつ該線径の4倍以下である上記(3)に記載の金属織物。
(5)前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線を構成する金属材料が、それぞれ、銅、銅合金、アルミニウム合金、ステンレス鋼およびチタンからなる群より選ばれるいずれかである上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の金属織物。
(6)前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線を構成する金属材料が銅、丹銅、黄銅またはアルミニウム合金であり、メッシュ数が120メッシュ以上160メッシュ以下である上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の金属織物。
(7)前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線を構成する金属材料が燐青銅、ステンレス鋼またはチタンであり、メッシュ数が160メッシュ以上250メッシュ以下である上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の金属織物。
(8)前記縦糸用金属線または前記横糸用金属線の少なくとも一方の表面が有彩色を呈している上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の金属織物。
(9)辺長が100ミリメートル以上200ミリメートル以下の正方形状をなしている上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の金属織物。
(10)打抜部を有し、前記打抜部を破断させまたは取り外して周囲の前記金属織物から分離可能に構成されている上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の金属織物。
(11)前記打抜部の外形線が、前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線が切断された破断部と、前記縦糸用金属線または前記横糸用金属線の少なくとも一方が連続している接続部と、を有する上記(10)に記載の金属織物。
(12)前記破断部に位置する前記縦糸用金属線または前記横糸用金属線の先端が塊状に形成されている上記(11)に記載の金属織物。
(13)上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の金属織物を複数枚備えるシートセットであって、前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線が銅合金で形成されて金色を呈する第一のシート状の前記金属織物と、前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線がアルミニウム合金またはステンレス鋼で形成されて銀色を呈する第二のシート状の前記金属織物と、が一体に包装されていることを特徴とするシートセット。
(14)上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の金属織物が折り曲げ加工された装飾品。
(15)上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の金属織物が折り曲げ加工された文房具。
(16)上記(1)から(12)のいずれか一項に記載の金属織物が折り曲げ加工された容器。
【0052】
上記実施形態は、更に以下の技術思想を包含するものである。
(17)刺繍が施されていることを特徴とする上記の金属織物。
(18)前記刺繍が、前記縦糸用金属線および前記横糸用金属線よりも、線径が大きくかつヤング率が低い刺繍糸で構成されている上記(17)に記載の金属織物。
(19)1個または複数個の前記刺繍が、前記金属織物のうち周縁部を除く内側領域に施されている上記(17)または(18)に記載の金属織物。
(20)コーナー部を有する箱型の容器の製造方法であって、上記(17)から(19)のいずれか一項に記載の金属織物を、前記刺繍を通過する複数本の折り曲げ線でそれぞれ折り曲げることにより前記刺繍を前記コーナー部に配置することを特徴とする容器の製造方法。
(21)布材料で作成された布部材が縫着されていることを特徴とする上記の金属織物。
(22)複数個の前記布部材が互いに離間して、かつ前記金属織物のうち周縁部を除く内側領域に縫着されている上記(21)に記載の金属織物。
(23)コーナー部を有する箱型の容器の製造方法であって、上記(21)または(22)に記載の金属織物を、前記布部材を通過する複数本の折り曲げ線でそれぞれ折り曲げることにより前記布部材を前記コーナー部に配置することを特徴とする容器の製造方法。