特許第6267785号(P6267785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6267785CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクター、そのベクターが導入された異種間移植用形質転換動物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267785
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクター、そのベクターが導入された異種間移植用形質転換動物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180115BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20180115BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   A01K67/027
   C12N5/10
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-511663(P2016-511663)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公表番号】特表2016-518839(P2016-518839A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】KR2013007592
(87)【国際公開番号】WO2014178485
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2015年10月30日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0047938
(32)【優先日】2013年4月30日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCTC  KCTC 12439BP
(73)【特許権者】
【識別番号】514217783
【氏名又は名称】コングク・ユニバーシティ・インダストリアル・コーペレイション・コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】501305844
【氏名又は名称】ザ・キュレーターズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミズーリ
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ドク ナム
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジョン イ
(72)【発明者】
【氏名】イ, キホ
(72)【発明者】
【氏名】プレイサー, ランダル エス.
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン, マン ジョン
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/069986(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/133356(WO,A1)
【文献】 Dev. Biol., 2007, Vol. 306, pp. 584-598
【文献】 Nat. Biotechnol., January 2011, Vol. 29, No. 1, pp. 64-68
【文献】 Mol. Cell. Biol., 2007, Vol. 27, No. 12, pp. 4340-4346
【文献】 Scientific Reports, 2013, Vol. 3, Article No. 1981
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載された塩基序列を有するCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ5’アーム(arm)、配列番号2に記載された塩基序列を有するPGKneopolyA、及び配列番号3に記載された塩基序列を有するCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ3’アーム(arm)を順次に含むCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクター、並びに
ジンク−フィンガーヌクレアーゼベクター
、ヒトを除く動物の細胞にトランスフェクションさせる段階を含むCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼノックアウト細胞を製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって製造されたCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼノックアウト細胞。
【請求項3】
前記ノックアウト細胞は、寄託番号KCTC 12439BPで寄託されたことを特徴とする請求項2に記載のノックアウト細胞。
【請求項4】
卵子を購入して体外で成熟させた後、卵子から核を除去した後、請求項2または請求項3の細胞を移植して融合を実施した後、生存した融合卵子のみを選別してヒトを除く動物である代理母の卵管に移植する段階を含むヒトを除いた動物を製造する方法。
【請求項5】
請求項4の方法によって製造されたヒトを除いたクローン動物を飼育した後、その臓器を摘出する段階を含む免疫拒否反応を除去した移植用異種臓器の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクター、そのベクターが導入された異種間移植用形質転換動物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国立臓器移植センターによると、国内で一年間2万名余に達する患者が臓器移植を待っているが、寄贈件数は需要の10%にも及ばないと報告された。また、米国の場合、臓器を必要とする待機者は16分に一人ずつ増えているが、一日に待機者のうち11名は手術も受けられず死亡にいたる状況である。このような状況と共に生命科学技術の発達は、異種臓器移植の技術開発の背景となる。
【0003】
動物遺伝学の弛まぬ進歩は、特定遺伝子を除去または挿入することで、各遺伝子の役割の糾明と共に商業的に有用な形質転換動物の生産を可能にした。形質転換された動物製造のための方法としては、微細注入法(microinjection)またはウイルス感染法(viral infection)などを利用した無作為な遺伝子操作法と胚性幹細胞(embryonic stem cells)または体細胞(somatic cells)を利用して特定遺伝子をタゲッティングさせられる遺伝子的中法がある。
【0004】
微細注入法は、外来DNAを受精卵の前核に挿入する古典的な方法として形質転換動物を生産するために広く利用されてきた(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。しかし、微細注入法で外来DNAが挿入された受精卵由来の形質転換された産子の生産割合は、2ないし3%で効率が非常に低く(非特許文献5)、外来遺伝子の挿入位置の調節及び特定の内部遺伝子の除去が不可能である。
【0005】
ウイルス感染法も、動物の遺伝子組み換えのために広く使用される(非特許文献6;非特許文献7)。ウイルス感染法は、挿入しようとする遺伝子がウイルスベクターを通じて動物の遺伝子に導入されるので、微細注入法よりさらに効率的であるが、依然として特定位置への外来遺伝子の挿入及び特定の内部遺伝子の除去が不可能である。また、挿入しようとする遺伝子の最大サイズは7kbと制限され、ウイルスにより発現されるタンパク質が問題となる(非特許文献8;非特許文献9)。
【0006】
上記で言及した問題点を克服するために、特定遺伝子を除去または挿入できる遺伝子タゲッティング技術が利用される。遺伝子タゲッティング技術は、マウス胚芽幹細胞を利用した遺伝子機能研究で始めて使用された。相同組み換えを利用して特定遺伝子がタゲッティングされたマウス胚芽幹細胞を胚盤胞段階にある胚芽に挿入することで、結局、特定遺伝子が組み換えられた産者生産が可能となる。このようなマウス胚芽幹細胞に遺伝子タゲッティング法を利用しながら、多数の特定遺伝子タゲッティングされたマウスが生産された(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17)。遺伝子タゲッティング法が家畜に適用される時、大量の治療タンパク質を生産する動物生体反応器(animal bioreactor)または免疫拒否反応に関与する遺伝子を除去または特定位置における過多発現により、異種間臓器移植に使用可能な疾病モデル動物の生産が可能であり、これは、産業的に大きな経済的利益をもたらすことが予想されている。
【0007】
遺伝子タゲッティングされた動物を生産するために、胚芽幹細胞の使用が必須的な要素として考えられていた。しかし、豚と牛を含む家畜で胚芽幹細胞と類似した細胞株らが報告されたにもかかわらず、現在まで家畜で胚芽幹細胞の使用は制限される(非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20;非特許文献21;非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24)。代りに、核供与細胞として一般体細胞が遺伝子タゲッティングに使用される可能性が提示されながら、形質転換されたクローン家畜の生産が可能となった(非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28;非特許文献29;非特許文献30)。
【0008】
一方、異種臓器移植の最適な提供元としては、臓器の大きさ及び生理的特徴がヒトと類似し、多産性により臓器の大量供給が可能なミニ豚が考慮される。
【0009】
豚臓器の成功的な移植は、一連の免疫拒否反応(超急性、急性血管性、細胞媒介性、及び晩成免疫拒否反応)の克服に依存する。移植後に水分内に発生する超急性免疫拒否反応は、アルファ−1,3−ガラクトシル抗原決定基合成に関与する遺伝子を除去し、人体補体調節遺伝子を過多発現させることで克服できることが報告された。
【0010】
具体的に、2002年、イギリスのPPL社から世界最初でアルファ−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(alpha−1,3−galactosyltransferase、以下、「GT」と略称する)遺伝子が異形接合的に(heterozygous)除去された体細胞クローン豚が生産された(非特許文献31)。GT遺伝子は、異種間移植時に急速な免疫拒否反応を起こす原因遺伝子であり、この遺伝子が除去される場合、生体拒否反応が除去された異種間臓器移植用の疾患モデル動物の開発が可能である。
【0011】
2003年に同会社でGT遺伝子が同形接合的に(homozygous)除去された公開特許10−2009−0056922で体細胞のクローンに成功することで、現在の臓器不足現象を解決できる臓器移植用の疾患モデル動物の生産のための画期的な進歩をもたらした(非特許文献32)。2005年、GT遺伝子が除去されたクローン豚由来の臓器は猿に移植され、その結果、急性免疫拒絶反応なく、移植後2〜6ヶ月まで生存が遅延されることを報告した(非特許文献33)。しかし、GT遺伝子が除去されたにもかかわらず、他の経路を通じた異種抗原によって人体補体遺伝子が活性化することで、臓器移植時に深刻な拒絶反応が起こり得ることが報告された(非特許文献34;非特許文献35)。そのような障害を克服するために、GT遺伝子の除去と共に分解促進因子(decay−accerating factor、以下、「DAF」と略称する)、膜補助因子タンパク質(membrane co−factor protein、以下、「MCP」と略称する)、CD59のような人体補体抑制遺伝子を過発現するクローン豚を生産する方法が使用された(非特許文献36;非特許文献37;非特許文献38;非特許文献39)。
【0012】
一方、ヒトを除いた大部分の哺乳動物に存在するN−グリコリルノイラミン酸(N−glycolylneuraminic acid、以下、「Neu5Gc」と略称する)抗原決定基も異種臓器の移植時に免疫拒否反応を引き起こすことが報告された(特許文献1;非特許文献40;非特許文献41)。Neu5Gcは、CMAHによってN−アセチルノイラミン酸(N−acetylneuraminic acid、以下、「Neu5Ac」と略称する)から転換される。
【0013】
補体は、生体内で免疫作用に関係するタンパク質から構成されたタンパク質複合体(C1−C9)であり、抗原−抗体複合体が形成されれば、補体が細菌の細胞膜に結合して孔を作る補体固定と、または抗原−抗体複合体に補体が結合して食細胞作用が促進される食菌作用増進(opsonization)がある。このような補体の活動が調節できる様々な調節タンパク質が発見され、補体の活性化を防ぐか活性化された補体の分解を促進することで、補体の作用を調節する。宿主の細胞膜にあるDAFは、C2とC4bとの結合を妨害することができ、MCPは、C4bの分解を促進して補体が宿主細胞で活性化することを防ぐことで、補体による宿主細胞の破壊を防止することができる。宿主細胞の表面にあるCD59は、C7、C8とC5b6の結合を妨害して、膜攻撃複合体の形成を防ぐことができる。
【0014】
前記補体作用調節遺伝子の他にも、ヒトCD39遺伝子の過多発現により、異種臓器の移植時に発生する血栓症が抑制されることが報告されている(特許文献2,非特許文献42)。
【0015】
既存の報告によると、外来遺伝子の正規場所以外の発現は、腹の発達に障害を引き起こし、胚芽発達後期と出生後の初期に大部分発達する神経システムに致命的であるという問題点がある(非特許文献43)。
【0016】
関連先行特許として、特許文献3は、移植免疫反応を抑制することができるCD70発現神経幹細胞及びその利用に関し、CD70を発現する神経幹細胞を含む、移植された臓器、組織または細胞に対する免疫反応抑制用の組成物及び前記組成物を利用した個体の免疫反応抑制方法が記載されている。
【0017】
また、他の関連先行特許として、特許文献4は、補体−媒介性分解を引き起こさない兔疫グロブリンから誘導された結合分子に関し、(i)標的分子に結合できる結合ドメイン及び(ii)ヒト兔疫グロブリンの中鎖のうち不変ドメインの全部または一部と実質的に同種性のあるアミノ酸序列を有する効果因子ドメイン(effector domain)を含む再組合ポリペプチドである結合分子であって、深刻な補体−依存性分解または標的の細胞−媒介性破壊なく前記結合分子が標的分子に結合できることを特徴とし、さらに好ましくは、効果因子ドメインがFcRn及び/またはFcγRIIbに特異的に結合できる結合分子が開示されている。一般に、前記結合分子は、二つ以上のヒト兔疫グロブリン中鎖CH2ドメインから誘導されたキメラドメインに基づくものである。好ましい実施例において、領域233−236及び領域327−331が修正されており、それ以上の残基は、前記分子を効力のない(null)対立形質(allotypic)に作る。結合ドメインは、前記分子に(一般に臨床的に)適用するに適切な任意の供給源から誘導されることができ、例えば、抗体、酵素、ホルモン、受容体、サイトカインまたは抗原、リガンド、及び粘着分子から誘導される。また、核酸、宿主細胞、生成工程及び材料が開示されており、例えば、B細胞の活性化、乳房細胞の脱顆粒化、食作用を妨害するか、第2の結合分子が標的分子に結合することを妨害するための用途が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第20061133356号
【特許文献2】米国特許出願公開第20080003212号明細書
【特許文献3】韓国公開特許第1020090104328号公報
【特許文献4】韓国公開特許第1020010034847号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Harbers et al.,Nature,293(5833):540−2,1981
【非特許文献2】Hammer et al.,Nature,315(6021):680−683,1985
【非特許文献3】van Berkel et al.,Nat.Biotechnol.,20(5):484−487,2002
【非特許文献4】Damak et al.,Biotechnology(NY),14(2):185−186,1996
【非特許文献5】Clark et al.,Transgenic Res.,9:263−275,2000
【非特許文献6】Soriano et al.,Genes Dev.,1(4):366−375,1987
【非特許文献7】Hirata et al.,Cloning Stem Cells,6(1):31−36,2004
【非特許文献8】Wei et al.,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.,37:119−141,1997
【非特許文献9】Yanez et al.,Gene Ther.,5(2):149−159,1998
【非特許文献10】Brandon et al.,Curr.Biol.,5(6):625−634,1995
【非特許文献11】Capecchi et al.,Science,244(4910):1288−1292,1989
【非特許文献12】Thompson et al.,Cell,56(2):313−321,1989
【非特許文献13】Hamanaka et al.,Hum.Mol.Genet.,9(3):353−361,2000
【非特許文献14】Thomas et al.,Cell,51(3):503−512,1987
【非特許文献15】te Riele et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89(11):5182−5132,1992
【非特許文献16】Mansour et al.,Nature,336(6197):348−352,1988
【非特許文献17】Luo et al.,Oncogene,20(3):320−328,2001
【非特許文献18】Doetschman et al.,Dev.Biol.,127(1):224−227,1988
【非特許文献19】Stice et al.,Biol.Reprod.,54(1):100−110,1996
【非特許文献20】Sukoyan et al.,Mol.Reprod.Dev.,36(2):148−158,1993
【非特許文献21】Iannaccone et al.,Dev.Biol.,163(1):288−292,1994
【非特許文献22】Pain et al.,Development,122(8):2339−2348,1996
【非特許文献23】Thomson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92(17):7844−7848,1995
【非特許文献24】Wheeler et al.,Reprod.Fertil.Dev.,6(5):563−568,1994
【非特許文献25】Brophy et al.,Nat.Biotechnol.,21(2):157−162,2003
【非特許文献26】Cibelli et al.,Science,280(5367):1256−1258,1998
【非特許文献27】Campbell et al.,Nature,380(6569):64−66,1996
【非特許文献28】Akira Onishi et al.,Science, 289;1188−1190,2000
【非特許文献29】Denning et al.,Cloning StemCells,3(4):221−231,2001
【非特許文献30】McCreath et al.,Nature,405(6790):1066−1069,2000
【非特許文献31】Yifan Dai et al.,Nat.Biotechnology,20:251−255,2002
【非特許文献32】Carol J.Phelps,Science,299:411−414,2003
【非特許文献33】Kenji Kuwaki et al.,Nature Medicine, 11(1):29−31,2005
【非特許文献34】Tanemura,M.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,235:359−364,1997
【非特許文献35】Komoda,H.et al.,Xenotransplantation,11:237−246,2004
【非特許文献36】Yoichi Takahagi,Molecular Reproduction and Development71:331−338,2005
【非特許文献37】Cozzi,Eb et al.,Transplant Proc.,26:1402−1403,1994
【非特許文献38】Fodor,W.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:11153−11157,1994
【非特許文献39】Adams,D.H.et al.,Xenotransplantation,8:36−40,2001
【非特許文献40】Pam Tangvoranuntakul,Proc.Natl.Acad.Soc.USA100:12045−12050,2003
【非特許文献41】Barbara Bighignoli,BMC genetics,8:27,2007
【非特許文献42】Karren,M.D.,The Journal of Clinical Investigation,113:1440−1446,2004
【非特許文献43】Gao et al.,Neurochem.Res.,24(9):1181−1188,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記の必要性に応じて案出されたもので、本発明の目的は、異種抗原決定基合成遺伝子(CMAH)のノックアウトされたベクターを提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、既存に使用したタゲッティングベクターに比べて効率性及び正確性の高いベクターを使用して形質転換体細胞株を提供することにある。
【0022】
本発明のまた他の目的は、前記形質転換体細胞株の核移植を通じて製造される非ヒトクローン動物を提供することにある。
【0023】
本発明のさらに他の目的は、前記非ヒトクローン動物を飼育した後、臓器を摘出する段階を含む免疫拒否反応を除去した移植用異種臓器の生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、本発明は、CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ5’アーム(arm)、PGKneopolyA及びCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ3’アーム(arm)を順次に含むCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクターを提供する。
【0025】
本発明の一具現例において、前記CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ5’アーム(arm)は、序列番号1に記載された塩基序列を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0026】
本発明の他の具現例において、前記PGKneopolyAは、序列番号2に記載された塩基序列を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0027】
本発明のまた他の具現例において、前記CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ3’アーム(arm)は、序列番号3に記載された塩基序列を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0028】
本発明のまた他の具現例において、前記CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクターは、図4に記載された開列地図を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0029】
本発明は、上記本発明のCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクター及びジンク−フィンガーヌクレアーゼベクターを細胞にトランスフェクションさせる段階を含むCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼノックアウト細胞を製造する方法を提供する。
【0030】
本発明の一具現例において、前記ジンク−フィンガーヌクレアーゼベクターは、図1に記載された開列地図を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0031】
また本発明は、上記本発明の方法によって製造されたCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼノックアウト細胞を提供する。
【0032】
上記本発明のノックアウト細胞は、寄託番号KCTC 12439BPで2013年7月2日に大韓民国大田市儒城区魚隱洞所在の韓国生命工学研究院生命資源センターに寄託した。
【0033】
また、本発明は、前記CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼノックアウト細胞の核移植を通じて、ヒトを除いた動物を製造する方法を提供する。
【0034】
さらに、本発明は、上記方法によって製造されたヒトを除いたクローン動物を飼育した後、その臓器を摘出する段階を含む免疫拒否反応を除去した移植用異種臓器の生産方法を提供する。
【0035】
本発明において、用語「遺伝子タゲッティングベクター(gene targeting vector)」は、ゲノムの特定遺伝子位置に目的の遺伝子を除去または挿入することができるベクターをいい、相同組み換え(homologous recombination)が起こるようにタゲッティングしようとする特定遺伝子に相同塩基序列を含む。
【0036】
本発明において、用語「相同(homologous)」は、第1領域または第2領域と、これにあたる遺伝子の核酸序列との同一性程度を表し、少なくとも90%以上同一であり、好ましくは、95%以上同一である。
【0037】
本発明において、用語「抗原決定基」は、異種臓器の移植時に受容体の免疫システムによって抗原として認識される部位を意味するが、細胞表面糖鎖であるN−グリコリルノイラミン酸(N−glycolylneuraminic acid、以下、「Neu5Gc」と略称する)であり、「抗原決定基合成遺伝子」は、前記抗原決定基を生合成する酵素を暗号化する遺伝子として、Neu5Gcの生合成に関与するCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(以下、「CMAH」と略称する)をいう。
【0038】
本発明において、用語「選別マーカー(selection marker)」とは、細胞により遺伝子タゲッティングベクターで形質転換された細胞を選別するためのもので、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが使用され、選択剤(selective agent)が処理された環境で当該特定マーカーを発現する細胞のみを生存するようにして、陽性選択を可能にするマーカーを意味し、「選別マーカー遺伝子」は、前記陽性選別マーカーを暗号化する遺伝子を意味するが、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(以下、「neo」と略称する)は、抗生剤ネオマイシンが添加された培地で真核細胞が生存するようにする抗生剤耐性を付与することで、真核細胞において安定した形質感染細胞を選別することに使用される。
【0039】
「形質転換」は、DNAを宿主として導入してDNAが染色体外の因子として、または染色体統合完成により複製可能になることを意味する。形質転換は、核酸分子を有機体、細胞、組織または機関に導入するいずれの方法も含み、当分野で公知されたように、宿主細胞によって適合した標準技術を選択して行うことができる。プラスミドまたは非プラスミド性裸出(naked DNA)による真核細胞の形質転換を細胞の腫瘍化の意味としての形質転換と区分するために、「形質感染(transfection)」と呼ぶこともあるが、本明細書では同一の意味で使用する。
【0040】
本発明において、「Zinc−finger nucleases(ZFNs)」とは、DNA−切断ドメインにジンクフィンガーDNA−結合ドメインを融合して生成された人工的な制限酵素である。ジンクフィンガードメインは、所望のDNA序列をターゲットするために操作し、これは、ジンクフィンガーnucleasesを複合体ゲノム内に独特の序列をターゲットさせる。内生的なDNAリペアー機作を利用して、これらの物質は、高等生命体のゲノムを正確に変更することに使用される。
【0041】
本発明において、「DNA−切断ドメイン」は、例えば、タイプII制限酵素FokIから由来した非特異的な切断ドメインは、ZFNsに切断ドメインとして典型的に使用される。この切断ドメインは、DNAを切断するために二量体化する必要があるので、一対のZFNsが非パリンドロミック(non−palindromic)DNA部位をターゲットするために必要である。標準ZFNsは、その切断ドメインを各ジンクフィンガードメインのC−末端に融合する。その二つの切断ドメインが二量体化し、DNAを切断するために、その二つの個別ZFNsは、それらのC−末端から制限された距離を離れて反対側枝のDNAに結合する必要がある。ジンクフィンガードメインと切断ドメインの間に最も一般に使用されたリンカー序列は、各結合部位の5’エッジから5から7bpに離れることが必要である。
【0042】
幾つか他のタンパク質工学技術は、ZFNsに使用されたnucleaseドメインの活性及び特異性を改善するために採択される。増加した切断活性を有するFokI変異体を生成するために、方向進化(Directed evolution)が採択される。但し、意図されたヘテロダイマー種のみが活性化するために二量体化接触面を変形してFokIの切断特異性を改善するために構造基盤考案が採択される。
【0043】
各ZFNsのDNA−結合ドメインは、典型的に3から6個のジンクフィンガーリピートを有し、それぞれは、9から18basepairs間を認知する。もし、そのジンクフィンガードメインがそれらの意図されたターゲット部位に完璧に特異的であれば、さらには、全体18basepairsを認知できる一対の3−フィンガーZNFsは、哺乳類ゲノムで単一ローカスを理論的にターゲットにすることができる。
【0044】
様々な戦略が所望の序列に結合するためにCys2His2ジンクフィンガーを操作することに開発された。これらは、把持ディスプレイ、または細胞選択システム(cellular selection systems)を採択する「調節アセンブリー(modular assembly)」及び選択戦略の全てを含む。
【0045】
新しいジンクフィンガーアレイを生成する最も簡単な方法は、公知された特異性の小さいジンクフィンガー「モジュール(modules)」を結合することである。最も一般的なmodular assembly過程は、9basepairターゲット部位を認知できる3−フィンガーアレイを製造するために、各3bp DNA序列を認知できる三つの分離したジンクフィンガーを結合することが関与する。他の方法は、6個以上の個別ジンクフィンガーを有するジンクフィンガーアレイを製造するために、1−fingerまたは2−fingerモジュールを利用する。
【0046】
様々な選択方法が所望の序列をタゲッティングできるジンクフィンガーアレイを生成することに使用される。最初の頃の選択試みは、多くの草の部分的にランダム化したジンクフィンガーアレイから与えられたDNAターゲットを結合したタンパク質を選択するために把持ディスプレイを利用した。最近の試みは、酵母one−ハイブリッドシステム、バクテリアone−ハイブリッド及びtwo−ハイブリッドシステム及び哺乳類の細胞を利用する。新しいジンクフィンガーアレイを選択するさらに有望な新しい方法は、バクテリアtwo−ハイブリッドシステムを利用することであり、「OPEN」と命名される。このシステムは、それぞれ与えられたtripletに結合するように予め選択された草の各ジンクフィンガーを結合した後、所望の9−bp序列に結合することができる3−フィンガーアレイを得るために、第二ラウンドの選択を利用する。このシステムは、操作されたジンクフィンガーアレイの商業的なソースに対する代案として、Zinc−Finger Consortiumによって開発された。
【0047】
以下、本発明を説明する。
【0048】
本発明者は、Neu5Gc抗原決定基の合成に関与するCMAH遺伝子を除去しながら、CMAH遺伝子がノックアウトされた体細胞を効率的に選抜するように、G418(Neo)遺伝子が挿入された体細胞株の製造に成功した。
【0049】
本発明により製造されたタケッティングベクター及び形質転換細胞株は、免疫拒否反応に関与する遺伝子の発現を複合的に調節することで、効率的に異種臓器移植用のクローン豚の生産に利用することができる。
【0050】
本発明に使用されたベクターは、体細胞内で決定基遺伝子の序列を認識できるZinc Finger Proteinと、決定基内の遺伝子を除去するNuclease機能を有したFox1タンパク質を生産する新しい技術である。
【0051】
本発明で使用されたベクターは、既存使用したタゲッティングベクターに比べて効率性及び正確性の高いベクターである。
【0052】
また、前記ベクターでタゲッティングされるCMAH遺伝子は、牛、羊、山羊、豚、馬、兎、犬、猿などの哺乳動物由来のCMAH遺伝子であることが好ましく、豚由来のCMAH遺伝子であることがさらに好ましく、ミニチュア豚のCMAH遺伝子であることが最も好ましいが、これに制限されない。
【0053】
また、本発明のベクターは、陽性選別マーカー遺伝子を含む。
【0054】
陽性選別マーカー遺伝子としては、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neomycin phosphotransferase、Neo)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hygromycin phosphotransferase、Hyg)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(histidinoldehydrogenase、hisD)、ピューロマイシン(puromycin、Puro)及びグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(guanine phosphosribosyltransferase、Gpt)などが使用されてもよく、好ましくはNeoであるが、これらに制限されない。
【0055】
本発明の遺伝子タゲッティングベクターが宿主細胞内にタゲッティングされれば、宿主細胞ゲノム上の内生的(endogeneous)抗原決定基合成遺伝子とタゲッティングベクターとの間に相同組み換えが起こりながら、塩基序列が交替される。
【0056】
また、他の様態として、本発明は、前記タゲッティングベクターが導入された形質転換体に関する。
【0057】
前記形質転換は、核酸分子を有機体、細胞、組織または器官に導入するいずれの方法も含まれ、当分野で公知されたように、宿主細胞によって適合した標準技術を選択して行うことができる。このような方法には、電気穿孔法(electroporation)、燐酸カルシウム(CaPO4)の沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)の沈殿、微細注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE−デキストラン法、陽イオン性リポソーム法、及び酢酸リチウム−DMSO法などが含まれるが、これらに制限されない。
【0058】
また、本発明は、前記形質転換体細胞株の核移植を通じて製造される非ヒトクローン動物を提供する。
【0059】
前記非ヒトクローン動物は、羊、山羊、豚、犬など、ヒトと体躯が類似した哺乳動物でもよいが、豚であることがさらに好ましく、そのうちミニアチュア豚であることが最も好ましい。
【0060】
前記クローン動物の製造に利用される核移植方法は、当業界によく知られた方法を使用してもよいが、より好ましくは、US6,781,030B、US6,603,059B、US6,235,969B、US7,355,094B、US7,071,372B、KR862298B、KR500412B,KR807644B、JP4153878B、US6,700,037B、US7,291,764B、US6,258,998B、US6,548,741B、WO03/089632A,US7,371,922Bなどが使用されてもよく、特に豚の場合は、KR500412B、KR807644、JP4153878B、US6,700,037B,公開特許10−2009−0056922 US7,291,764B、US6,258,998B、US6,548,741B、WO03/089632AまたはUS7,371,922Bに記載された方法を使用することがさらに好ましい。前記特許文献は、全て本明細書に参照として組み込まれる。
【0061】
また、本発明は、前記非ヒトクローン動物を飼育した後、移植に必要な臓器を摘出する段階を含む移植用異種臓器の生産方法を提供する。前記臓器は、収容対象の性別、年、体重、身長などを考慮して、飼育時期を調節して供与体クローン動物を飼育した後、通常の外科的手術を通じて摘出することができ、摘出後、収容対象に直ぐ移植されるか、迅速に冷蔵保管される。
【0062】
異種臓器移植の最適の提供元としては、臓器の大きさ及び生理的特徴がヒトと類似し、多産性により臓器の大量供給が可能なミニ豚が考慮される。このためには、先ず免疫拒否反応を制御するミニクローン豚を生産する必要がある。豚臓器の成功的な移植は、一連の免疫拒否反応(超急性、急性血管性、細胞媒介性、及び晩成免疫拒否反応)の克服に依存する。
【0063】
既存の報告によると、GT遺伝子は、異種間移植時に急速な免疫拒否反応を起こす原因遺伝子であり、この遺伝子が除去される場合、生体拒否反応が除去された異種間臓器移植用の疾患モデル動物の開発が可能である。2005年GT遺伝子が除去されたクローン豚由来の臓器は猿に移植され、その結果、急性免疫拒絶反応なしに移植後2−6ヶ月まで生存が遅延されることを報告した(Kenji Kuwaki et al.,Nature Medicine,11(1):29−31,2005)。しかし、GT遺伝子が除去されたにもかかわらず、他の経路を通じた異種抗原により人体補体遺伝子が活性化されることで、臓器移植時に深刻な拒絶反応をもたらし得ることが報告された(Tanemura,M.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,235:359−364,1997;Komoda,H.etal.,Xenotransplantation,11:237−246,2004)。一方、ヒトを除いた大部分の哺乳動物に存在するN−グリコリルノイラミン酸(N−glycolylneuraminic acid、以下、「Neu5Gc」と略称する)抗原決定基も、異種臓器移植時に免疫拒否反応を引き起こすことが報告された(WO20061133356A;Pam Tangvoranuntakul,Proc.Natl.Acad.Soc.USA100:12045−12050,2003;Barbara Bighignoli,BMC genetics,8:27,2007)。Neu5Gcは、CMAHによってN−アセチルノイラミン酸(N−acetylneuraminic acid、以下、「Neu5Ac」と略称する)から転換される。これにより、CMAH遺伝子が除去された豚の場合、急性免疫拒否反応を制御することができ、GalTが除去された豚と共に異種間臓器移植時に臓器移植用の疾患モデル動物の開発だけでなく活用が可能である。既存の報告によると(Basnet NB et al.,Xenotransplantation,17:440−448,2010;Lutz AJ et al,Xenotransplantation,20:27−35、2013)、double knock−outマウス(GalT and CMAH)とdouble knock−out豚(GalT and CMAH)のPBMC(Peripheral Blood Mononuclear Cell)またはthymocyteとヒトの血清内のnatural xenoreactive抗体に対する結合能を調査した結果、control豚とGalT knock−outに比べてdouble knock−outマウスと豚でその結合能が減ることを確認することができた。このような結果からみると、異種抗原による急性免疫拒絶反応が制御されることが予想される。
【0064】
既存の報告によると(Kavaler et al.,FASEB J,25:1887−1893,2011)、肥満のCMAH knock−outマウスでpancreatic beta−cell failureによって膵臓のサイズとインシュリンを分泌する細胞の数が減ったことを確認することができた。
【0065】
従って、本発明の豚の場合、obesityやdiabetesモデルとしても利用可能である。
【0066】
また、既存の報告によると(Chandrasekharan et al.,Sci Transl Med.,28:42−54)、CMAH knock−outマウスの特性上、ヒトのデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy)の実験モデル動物としての可能性について説明した。
【0067】
このような報告により、本発明の豚の場合、muscular dystrophyモデルとしても利用可能である。
【発明の効果】
【0068】
本発明から分かるように、本発明は、Neu5Gc抗原決定基合成に関与するCMAH遺伝子を除去しながら、CMAH遺伝子がノックアウトされた体細胞を効率的に選抜するように、G418(Neo)遺伝子が挿入された体細胞株を製造し、本発明によって製造されたタケッティングベクター及び形質転換細胞株は、免疫拒否反応に関与する遺伝子の発現を複合的に調節することで、効率的に異種臓器移植用のクローン豚の生産に利用することができる。
【0069】
また、本発明のベクターは、豚CMAHタンパク質の発現を除去するために、Zinc finger Nuclease(ZFN)を利用してCMAH的中ベクターとhomologous recombinationによってゲノム上に挿入可能にNEO選抜因子が含まれた供与DNAを同時に製作し、既存のconventional的中ベクターに比べて、ZFNの場合、的中効率が非常に高いことを確認することができ、上記のZFN及びdonor DNAを利用して、多数のCMAH的中体細胞を選抜して、最近、これを受精卵移植してCMAH遺伝子が的中されたミニ豚が生まれることができた。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】ZFNプラスミドの地図である。
図2】ZFN活性を示したグラフである。
図3】ZFNがZFNタゲッティングforward&ReverseプラスミドによってピッグCMAHエクソン8をタゲッティングすることを示す図である。
図4】Donor DNA(CMAH neo targeting vector)地図を示す図である。
図5】CMAH targeting vector序列を示す図であり、黄色;5’、白色;PGK−neo−PolyA、灰色;3arm’を表し、pBSK−sequenceは含まれない(DNAは、pBSK−のXbaI−KpnI siteに挿入されている)。
図6】豚でCMAHノックアウト体細胞のスクリーニング戦略を示す図である。
図7】CMAH neo vector transfection結果を確認した写真である。
図8】CMAHノックアウト豚の形質転換有無を確認するためのプライマー組合せの位置を示す模式図である。
図9】核置換で生産されたCMAHノックアウト豚の形質転換有無を分析したPCR結果である。
図10】核置換で生産されたCMAHノックアウト豚の写真である。
図11】核置換で生産されたCMAHノックアウト豚で構築した体細胞株でCMAHの発現有無を分析した結果である。
図12】CMAH knock−outマウスモデルとヒト血清との免疫認識反応の写真である。
図13】CMAH knock−outマウスモデルでagingによるhearing lossである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、非限定的な実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するために記載したもので、本発明の範囲は、下記の実施例によって制限されると解釈されない。
【0072】
実施例1:ZFNプラスミドの構築
【0073】
本発明の構造物は、CMV駆動され(driven)インビトロ転写反応で使用するためにT7プローモーターを含有した。全てのZFNsは、N−末端でtriple FLAGである。制限酵素Xho I及びXba Iが終止コドン直後で切断し、mRNA生産のための鋳型を直線化することに使用される。
【0074】
実施例2:ZFN活性測定
【0075】
ZFN活性は、酵母MEL−1レポーターアッセイによって測定される(Doyon et al.,N at Biotechnol,2008,26(6):702)。ZFN切断活性は、誘導前(0h、青色バー)及びZFN発現の誘導後(6h、赤色バー)に測定された。MEL1レベルは、所望のターゲット部位で二重枝切断を生成するZFN活性とポジティブに相関関係を有する。誘導後(6時間)陽性対照群ZFNと比べて>50%信号を表すZFNsをゲノムエディティング実験に有用であるとみなす(さらに、非誘導された状態(0h)で活性を表すZFNが優れることもある)。
【0076】
実施例3:Donor DNAの製作
CMAH5’arm−PGKneopolyA−3’arm vectorの構築
【0077】
1)5’のPCR cloning
5’armは、先ず、XbaI制限酵素siteを含んでいるsense primer(TCTAGACTCTCTATTTGGTGGCTCTGTTT)とEcoRI制限酵素siteを含んでいるanti−sense primer(GAATTCAGGAGTTTCTTCCTTTCTGTTTT)とを利用して、シカコミニアチュアミニ豚のゲノムDNAを利用してPCR増幅により確保した後、T−vectorにligationした。cloningされたDNAは、塩基配列決定によってCMAH遺伝子領域であることを確認した。
【0078】
2)3’のPCR cloning
3’armは、シカコミニアチュアミニ豚のゲノムDNAを鋳型として利用し、XhoI制限酵素siteを含むsense primer(CTCGAGCCTACAACCCAGAATTTACTGCC)とKpnI制限酵素siteを含むanti−sense primer(GGTACCAACAGGGACCTGCCAAGAGGCCA)とを利用してPCR増幅してT−vectorにsubcloningした。cloningされたDNAは、塩基配列決定によってCMAH遺伝子領域であることを確認した。
【0079】
3)CMAH 5’arm−PGKneopolyA−3’arm vectorの構築
CMAH 5’arm−PGKneopolyA−3’arm vectorの構築は、先ず、pKJ2 neo plasmidをEcoRIとXhoIで切断してPGKneoPolyA fragment(約2kb)を分離した後、EcoRIとXhoIで切断したpBluscriptII SK−のvectorにligationしてpBSK−PGKneoPoyA plasmidを確保した。5’の連結は、上記で確保された5plasmid(T−easy vector)からXbaIとEcoRIで切断して789bpのfragmentを確保した後、pBSK−PGKneoPoyA plasmidをXbaIとEcoRIで切断したvectorにligationしてpBSK−5’arm−PGKneoPolyA plasmidを構築した。そして、最終的に3’の連結は、上記でPCRによって確保した3plasmid(T−easy vector)をXhoIとKpnIで切断して763bp fragmentを確保した後、pBSK−5’arm−PGKneoPolyA plasmidをXhoIとKpnIで切断したvectorに挿入して、最終pBSK−5’arm−PGKneoPolyA−3’arm plasmidを構築した。
【0080】
実施例4:ZFN Vector及びDonor DNAのtransfection及びselection方法
【0081】
ミニ豚体細胞にgene targetingベクターの導入は、electroporation方法を利用して以下のように実施した。electroporation方法では、培養した細胞をTrypsin処理によって回収した後、細胞数が5×10cell/0.4mlのF10培養液になるように懸濁した後、0.1mlのF10培養液に溶かした4.5μgの直線化Donor DNAベクターと、それぞれ2.6μgのpZFN1とpZFN2 DNAを混合して4mm gap cuvetteに細胞ベクター混合液を入れた。このcuvetteをBTX Electro−cell manipulator(ECM2001)に装着した後、480V、4pulses、1ms条件で電気衝撃を実施した。電気衝撃後、cuvetteを氷上に10分間放置した後、10mlの培養液に移してよく懸濁した後、48wellにwell当たり1250cellになるように接種した。DNA導入24時間後、300μg/mlのG418を利用して11日間選別過程を経た。形成されたneo陽性クローン体細胞は、cloning cylinderを通じて24−well culture plateに継代培養して分析に利用した。このように継代された体細胞は、3−4日後に90%confluentすれば12−well plateに継代した。そして、3−4日間隔で6−well、60mm culture dish、100mm culture dishに継代培養して凍結保存するか実験に利用した。
【0082】
実施例5:targetingされた細胞のPCR選別
【0083】
knock−outされた細胞の選別のためのPCR分析は、下記のように行った。PCRを行うために、鋳型は細胞から分離したゲノムDNA100ngを利用し、primerはNeo3−1 primer(GCCTGCTTGCCGAATATCATGGTGGAAAAT)とCMAH Sc AS3 primer(AAGACTCCCACTTTAAAGGGTGGTGTGTAG)とを利用し、Takara Ex Taqを利用してDNAを増幅した。PCR条件は、98℃で2分間1cycle、95℃で30秒、68℃で30秒、72℃で2分間40cycle、72℃で15分間1cycleで行った。PCRを行った後、0.8%のagarose gelでDNAを電気泳動して、約2kbのDNA band検出有無を持って最終確認した。
【0084】
CMAH neo vector transfectionの結果は、5×10cell transfection(CMAH neo vector、ZFN plasmid)、48wellの528個にcultureして、single colony78個のpassage、Single colony64個のPCR分析、1stPCRで28個のpositive、2ndPCRで最終19個のpositiveである。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例6:体細胞の核置換
【0087】
核置換のためにART(Madison、WI)から卵子を購入して体外で成熟させた後、卵子から核を除去した後、CMAH knockout(KO)ベクターがタゲッティングされた供与細胞(Donor DNA[pBSK−5’arm−PGKneoPolyA−3’arm plasmid]とpZFN1とpZFN2 DNA[CMAH knock−out]ベクター)を移植し、1.2kV/cmで二回のDC pulse電気刺激で融合を実施した。生存した融合卵子のみを選別して代理母の卵管に[表2]のように移植した。
【0088】
【表2】
【0089】
表2は、CMAH KO細胞を利用した核置換結果を示す表であり、#1及び2は、donor DNAなしにZFN transfectionのみをし、#3−9は、donor DNAと共にZFN transfectionをしたものである。
【0090】
実施例7:CMAH knockoutベクターがタゲッティングされた形質転換豚の生産
【0091】
自然分娩で出生した子孫の耳組織を採取した後、GenElute Mammalian Genomic DNA Miniprep kit(Sigma−Aldrich)でgenomic DNAを抽出した。抽出したDNAから正確な分析のために、下記の図のようにレフトアーム領域、ライトアーム領域と、レフトとライトアームを含む領域のプライマー組合せでPCR分析を実施した後、遺伝子導入有無を確認した。
【0092】
ライトアームプライマー組合せ
正方向Neo3−1:TCGTGCTTTACGGTATCGCCGCTCCCGATT、
逆方向ScAS3:AAGACTCCCACTTTAAAGGGTGGTGTGTAG
【0093】
レフトアームプライマー組合せ
正方向ScS5:CCCTTCCATCCCACCCGTCCTCATCCTTAC、
逆方向CMAHR:ACTCTCTGTTTTCAGGCTGCTTGTT
【0094】
レフトとライトアームプライマー組合せ
正方向ScS5:CCCTTCCATCCCACCCGTCCTCATCCTTAC、
逆方向ScAS3:AAGACTCCCACTTTAAAGGGTGGTGTGTAG
【0095】
実施例8:CMAH knockout豚でCMAH発現有無の確認
【0096】
CMAH knockout豚でCMAH発現有無を確認するために、先ずheterozygousとhomozygous CMAH knockout豚から体細胞ラインを構築した。以後、細胞でRIPA protein extract(Thermo Scientific、USA)溶液でタンパク質を抽出し、ウェスタンブロット分析を実施してhomozygous CMAH knockout豚ではCMAHタンパク質が全く発現されず、heterozygousしたCMAH knockout豚では、ワイルドタイプと比較した時に発現が顕著に減ったことを確認することができた。その結果を図11に示した。
【0097】
実施例9:CMAH knock−outマウスモデルとヒト血清との免疫認識反応
【0098】
本発明者がCMAH knock−outマウスモデルのthymocyteとヒトの血清内のnatural xenoreactive抗体に対する結合能を調査した結果、homozygote由来の細胞とIgGとの結合能は、全ての血液型(A、B、OとAB型)でその結合能がWT−とheterozygote由来の細胞と比較した時に減ったことに対し、IgMとの結合能は、A、OとABでは有意的差異を有しなかった(図12)。
【0099】
実施例10:CMAH knock−outマウスモデルでagingによるhearing loss
【0100】
本発明者がCMAH knock−outマウスモデルの蝸牛管を分離した後、組織学的分析をした結果、CMAH−/−oldでcochlear sensory epitheliumの異常を発見した(図13)。
【0101】
このような結果により、1)Agingによるhearing loss モデル、2)wound healingモデルでも利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]