【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、本発明は、CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ5’アーム(arm)、PGKneopolyA及びCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ3’アーム(arm)を順次に含むCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクターを提供する。
【0025】
本発明の一具現例において、前記CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ5’アーム(arm)は、序列番号1に記載された塩基序列を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0026】
本発明の他の具現例において、前記PGKneopolyAは、序列番号2に記載された塩基序列を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0027】
本発明のまた他の具現例において、前記CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ3’アーム(arm)は、序列番号3に記載された塩基序列を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0028】
本発明のまた他の具現例において、前記CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクターは、
図4に記載された開列地図を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0029】
本発明は、上記本発明のCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼタゲッティングベクター及びジンク−フィンガーヌクレアーゼベクターを細胞にトランスフェクションさせる段階を含むCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼノックアウト細胞を製造する方法を提供する。
【0030】
本発明の一具現例において、前記ジンク−フィンガーヌクレアーゼベクターは、
図1に記載された開列地図を有することが好ましいが、これに限定されない。
【0031】
また本発明は、上記本発明の方法によって製造されたCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼノックアウト細胞を提供する。
【0032】
上記本発明のノックアウト細胞は、寄託番号KCTC 12439BPで2013年7月2日に大韓民国大田市儒城区魚隱洞所在の韓国生命工学研究院生命資源センターに寄託した。
【0033】
また、本発明は、前記CMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼノックアウト細胞の核移植を通じて、ヒトを除いた動物を製造する方法を提供する。
【0034】
さらに、本発明は、上記方法によって製造されたヒトを除いたクローン動物を飼育した後、その臓器を摘出する段階を含む免疫拒否反応を除去した移植用異種臓器の生産方法を提供する。
【0035】
本発明において、用語「遺伝子タゲッティングベクター(gene targeting vector)」は、ゲノムの特定遺伝子位置に目的の遺伝子を除去または挿入することができるベクターをいい、相同組み換え(homologous recombination)が起こるようにタゲッティングしようとする特定遺伝子に相同塩基序列を含む。
【0036】
本発明において、用語「相同(homologous)」は、第1領域または第2領域と、これにあたる遺伝子の核酸序列との同一性程度を表し、少なくとも90%以上同一であり、好ましくは、95%以上同一である。
【0037】
本発明において、用語「抗原決定基」は、異種臓器の移植時に受容体の免疫システムによって抗原として認識される部位を意味するが、細胞表面糖鎖であるN−グリコリルノイラミン酸(N−glycolylneuraminic acid、以下、「Neu5Gc」と略称する)であり、「抗原決定基合成遺伝子」は、前記抗原決定基を生合成する酵素を暗号化する遺伝子として、Neu5Gcの生合成に関与するCMP−アセチルノイラミン酸ヒドロキシラーゼ(以下、「CMAH」と略称する)をいう。
【0038】
本発明において、用語「選別マーカー(selection marker)」とは、細胞により遺伝子タゲッティングベクターで形質転換された細胞を選別するためのもので、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが使用され、選択剤(selective agent)が処理された環境で当該特定マーカーを発現する細胞のみを生存するようにして、陽性選択を可能にするマーカーを意味し、「選別マーカー遺伝子」は、前記陽性選別マーカーを暗号化する遺伝子を意味するが、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(以下、「neo」と略称する)は、抗生剤ネオマイシンが添加された培地で真核細胞が生存するようにする抗生剤耐性を付与することで、真核細胞において安定した形質感染細胞を選別することに使用される。
【0039】
「形質転換」は、DNAを宿主として導入してDNAが染色体外の因子として、または染色体統合完成により複製可能になることを意味する。形質転換は、核酸分子を有機体、細胞、組織または機関に導入するいずれの方法も含み、当分野で公知されたように、宿主細胞によって適合した標準技術を選択して行うことができる。プラスミドまたは非プラスミド性裸出(naked DNA)による真核細胞の形質転換を細胞の腫瘍化の意味としての形質転換と区分するために、「形質感染(transfection)」と呼ぶこともあるが、本明細書では同一の意味で使用する。
【0040】
本発明において、「Zinc−finger nucleases(ZFNs)」とは、DNA−切断ドメインにジンクフィンガーDNA−結合ドメインを融合して生成された人工的な制限酵素である。ジンクフィンガードメインは、所望のDNA序列をターゲットするために操作し、これは、ジンクフィンガーnucleasesを複合体ゲノム内に独特の序列をターゲットさせる。内生的なDNAリペアー機作を利用して、これらの物質は、高等生命体のゲノムを正確に変更することに使用される。
【0041】
本発明において、「DNA−切断ドメイン」は、例えば、タイプII制限酵素FokIから由来した非特異的な切断ドメインは、ZFNsに切断ドメインとして典型的に使用される。この切断ドメインは、DNAを切断するために二量体化する必要があるので、一対のZFNsが非パリンドロミック(non−palindromic)DNA部位をターゲットするために必要である。標準ZFNsは、その切断ドメインを各ジンクフィンガードメインのC−末端に融合する。その二つの切断ドメインが二量体化し、DNAを切断するために、その二つの個別ZFNsは、それらのC−末端から制限された距離を離れて反対側枝のDNAに結合する必要がある。ジンクフィンガードメインと切断ドメインの間に最も一般に使用されたリンカー序列は、各結合部位の5’エッジから5から7bpに離れることが必要である。
【0042】
幾つか他のタンパク質工学技術は、ZFNsに使用されたnucleaseドメインの活性及び特異性を改善するために採択される。増加した切断活性を有するFokI変異体を生成するために、方向進化(Directed evolution)が採択される。但し、意図されたヘテロダイマー種のみが活性化するために二量体化接触面を変形してFokIの切断特異性を改善するために構造基盤考案が採択される。
【0043】
各ZFNsのDNA−結合ドメインは、典型的に3から6個のジンクフィンガーリピートを有し、それぞれは、9から18basepairs間を認知する。もし、そのジンクフィンガードメインがそれらの意図されたターゲット部位に完璧に特異的であれば、さらには、全体18basepairsを認知できる一対の3−フィンガーZNFsは、哺乳類ゲノムで単一ローカスを理論的にターゲットにすることができる。
【0044】
様々な戦略が所望の序列に結合するためにCys2His2ジンクフィンガーを操作することに開発された。これらは、把持ディスプレイ、または細胞選択システム(cellular selection systems)を採択する「調節アセンブリー(modular assembly)」及び選択戦略の全てを含む。
【0045】
新しいジンクフィンガーアレイを生成する最も簡単な方法は、公知された特異性の小さいジンクフィンガー「モジュール(modules)」を結合することである。最も一般的なmodular assembly過程は、9basepairターゲット部位を認知できる3−フィンガーアレイを製造するために、各3bp DNA序列を認知できる三つの分離したジンクフィンガーを結合することが関与する。他の方法は、6個以上の個別ジンクフィンガーを有するジンクフィンガーアレイを製造するために、1−fingerまたは2−fingerモジュールを利用する。
【0046】
様々な選択方法が所望の序列をタゲッティングできるジンクフィンガーアレイを生成することに使用される。最初の頃の選択試みは、多くの草の部分的にランダム化したジンクフィンガーアレイから与えられたDNAターゲットを結合したタンパク質を選択するために把持ディスプレイを利用した。最近の試みは、酵母one−ハイブリッドシステム、バクテリアone−ハイブリッド及びtwo−ハイブリッドシステム及び哺乳類の細胞を利用する。新しいジンクフィンガーアレイを選択するさらに有望な新しい方法は、バクテリアtwo−ハイブリッドシステムを利用することであり、「OPEN」と命名される。このシステムは、それぞれ与えられたtripletに結合するように予め選択された草の各ジンクフィンガーを結合した後、所望の9−bp序列に結合することができる3−フィンガーアレイを得るために、第二ラウンドの選択を利用する。このシステムは、操作されたジンクフィンガーアレイの商業的なソースに対する代案として、Zinc−Finger Consortiumによって開発された。
【0047】
以下、本発明を説明する。
【0048】
本発明者は、Neu5Gc抗原決定基の合成に関与するCMAH遺伝子を除去しながら、CMAH遺伝子がノックアウトされた体細胞を効率的に選抜するように、G418(Neo)遺伝子が挿入された体細胞株の製造に成功した。
【0049】
本発明により製造されたタケッティングベクター及び形質転換細胞株は、免疫拒否反応に関与する遺伝子の発現を複合的に調節することで、効率的に異種臓器移植用のクローン豚の生産に利用することができる。
【0050】
本発明に使用されたベクターは、体細胞内で決定基遺伝子の序列を認識できるZinc Finger Proteinと、決定基内の遺伝子を除去するNuclease機能を有したFox1タンパク質を生産する新しい技術である。
【0051】
本発明で使用されたベクターは、既存使用したタゲッティングベクターに比べて効率性及び正確性の高いベクターである。
【0052】
また、前記ベクターでタゲッティングされるCMAH遺伝子は、牛、羊、山羊、豚、馬、兎、犬、猿などの哺乳動物由来のCMAH遺伝子であることが好ましく、豚由来のCMAH遺伝子であることがさらに好ましく、ミニチュア豚のCMAH遺伝子であることが最も好ましいが、これに制限されない。
【0053】
また、本発明のベクターは、陽性選別マーカー遺伝子を含む。
【0054】
陽性選別マーカー遺伝子としては、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neomycin phosphotransferase、Neo)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hygromycin phosphotransferase、Hyg)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(histidinoldehydrogenase、hisD)、ピューロマイシン(puromycin、Puro)及びグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(guanine phosphosribosyltransferase、Gpt)などが使用されてもよく、好ましくはNeoであるが、これらに制限されない。
【0055】
本発明の遺伝子タゲッティングベクターが宿主細胞内にタゲッティングされれば、宿主細胞ゲノム上の内生的(endogeneous)抗原決定基合成遺伝子とタゲッティングベクターとの間に相同組み換えが起こりながら、塩基序列が交替される。
【0056】
また、他の様態として、本発明は、前記タゲッティングベクターが導入された形質転換体に関する。
【0057】
前記形質転換は、核酸分子を有機体、細胞、組織または器官に導入するいずれの方法も含まれ、当分野で公知されたように、宿主細胞によって適合した標準技術を選択して行うことができる。このような方法には、電気穿孔法(electroporation)、燐酸カルシウム(CaPO4)の沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)の沈殿、微細注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE−デキストラン法、陽イオン性リポソーム法、及び酢酸リチウム−DMSO法などが含まれるが、これらに制限されない。
【0058】
また、本発明は、前記形質転換体細胞株の核移植を通じて製造される非ヒトクローン動物を提供する。
【0059】
前記非ヒトクローン動物は、羊、山羊、豚、犬など、ヒトと体躯が類似した哺乳動物でもよいが、豚であることがさらに好ましく、そのうちミニアチュア豚であることが最も好ましい。
【0060】
前記クローン動物の製造に利用される核移植方法は、当業界によく知られた方法を使用してもよいが、より好ましくは、US6,781,030B、US6,603,059B、US6,235,969B、US7,355,094B、US7,071,372B、KR862298B、KR500412B,KR807644B、JP4153878B、US6,700,037B、US7,291,764B、US6,258,998B、US6,548,741B、WO03/089632A,US7,371,922Bなどが使用されてもよく、特に豚の場合は、KR500412B、KR807644、JP4153878B、US6,700,037B,公開特許10−2009−0056922 US7,291,764B、US6,258,998B、US6,548,741B、WO03/089632AまたはUS7,371,922Bに記載された方法を使用することがさらに好ましい。前記特許文献は、全て本明細書に参照として組み込まれる。
【0061】
また、本発明は、前記非ヒトクローン動物を飼育した後、移植に必要な臓器を摘出する段階を含む移植用異種臓器の生産方法を提供する。前記臓器は、収容対象の性別、年、体重、身長などを考慮して、飼育時期を調節して供与体クローン動物を飼育した後、通常の外科的手術を通じて摘出することができ、摘出後、収容対象に直ぐ移植されるか、迅速に冷蔵保管される。
【0062】
異種臓器移植の最適の提供元としては、臓器の大きさ及び生理的特徴がヒトと類似し、多産性により臓器の大量供給が可能なミニ豚が考慮される。このためには、先ず免疫拒否反応を制御するミニクローン豚を生産する必要がある。豚臓器の成功的な移植は、一連の免疫拒否反応(超急性、急性血管性、細胞媒介性、及び晩成免疫拒否反応)の克服に依存する。
【0063】
既存の報告によると、GT遺伝子は、異種間移植時に急速な免疫拒否反応を起こす原因遺伝子であり、この遺伝子が除去される場合、生体拒否反応が除去された異種間臓器移植用の疾患モデル動物の開発が可能である。2005年GT遺伝子が除去されたクローン豚由来の臓器は猿に移植され、その結果、急性免疫拒絶反応なしに移植後2−6ヶ月まで生存が遅延されることを報告した(Kenji Kuwaki et al.,Nature Medicine,11(1):29−31,2005)。しかし、GT遺伝子が除去されたにもかかわらず、他の経路を通じた異種抗原により人体補体遺伝子が活性化されることで、臓器移植時に深刻な拒絶反応をもたらし得ることが報告された(Tanemura,M.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,235:359−364,1997;Komoda,H.etal.,Xenotransplantation,11:237−246,2004)。一方、ヒトを除いた大部分の哺乳動物に存在するN−グリコリルノイラミン酸(N−glycolylneuraminic acid、以下、「Neu5Gc」と略称する)抗原決定基も、異種臓器移植時に免疫拒否反応を引き起こすことが報告された(WO20061133356A;Pam Tangvoranuntakul,Proc.Natl.Acad.Soc.USA100:12045−12050,2003;Barbara Bighignoli,BMC genetics,8:27,2007)。Neu5Gcは、CMAHによってN−アセチルノイラミン酸(N−acetylneuraminic acid、以下、「Neu5Ac」と略称する)から転換される。これにより、CMAH遺伝子が除去された豚の場合、急性免疫拒否反応を制御することができ、GalTが除去された豚と共に異種間臓器移植時に臓器移植用の疾患モデル動物の開発だけでなく活用が可能である。既存の報告によると(Basnet NB et al.,Xenotransplantation,17:440−448,2010;Lutz AJ et al,Xenotransplantation,20:27−35、2013)、double knock−outマウス(GalT and CMAH)とdouble knock−out豚(GalT and CMAH)のPBMC(Peripheral Blood Mononuclear Cell)またはthymocyteとヒトの血清内のnatural xenoreactive抗体に対する結合能を調査した結果、control豚とGalT knock−outに比べてdouble knock−outマウスと豚でその結合能が減ることを確認することができた。このような結果からみると、異種抗原による急性免疫拒絶反応が制御されることが予想される。
【0064】
既存の報告によると(Kavaler et al.,FASEB J,25:1887−1893,2011)、肥満のCMAH knock−outマウスでpancreatic beta−cell failureによって膵臓のサイズとインシュリンを分泌する細胞の数が減ったことを確認することができた。
【0065】
従って、本発明の豚の場合、obesityやdiabetesモデルとしても利用可能である。
【0066】
また、既存の報告によると(Chandrasekharan et al.,Sci Transl Med.,28:42−54)、CMAH knock−outマウスの特性上、ヒトのデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy)の実験モデル動物としての可能性について説明した。
【0067】
このような報告により、本発明の豚の場合、muscular dystrophyモデルとしても利用可能である。