特許第6267800号(P6267800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6267800新規なシクロジシラザン誘導体およびその製造方法、並びにそれを用いたシリコン含有薄膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267800
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】新規なシクロジシラザン誘導体およびその製造方法、並びにそれを用いたシリコン含有薄膜
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/21 20060101AFI20180115BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C07F7/21CSP
   C23C16/42
   H01L21/316 X
   H01L21/318 B
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-545305(P2016-545305)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-507908(P2017-507908A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】KR2015000189
(87)【国際公開番号】WO2015105350
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0002202
(32)【優先日】2014年1月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514145604
【氏名又は名称】ディーエヌエフ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DNF Co. Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【弁理士】
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジャン セ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ビョン−イル
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ド ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ サン−ド
(72)【発明者】
【氏名】ソク ジャン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ サン イック
(72)【発明者】
【氏名】キム ミョン ウン
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/026464(WO,A1)
【文献】 特開2012−067383(JP,A)
【文献】 特開平11−092520(JP,A)
【文献】 国際公開第1992/017527(WO,A1)
【文献】 Journal of Molecular Structure (Theochem),1999年,Vol. 487,pp. 241-250
【文献】 Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions,1998年,pp. 2953-2954
【文献】 Journal of Organometallic Chemistry,2013年,Vol. 732,pp. 58-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/21
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるシクロジシラザン誘導体。
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1中、
〜Rは、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり、
は、C3アルキルまたはC3アルケニルである。)
【請求項2】
下記化合物から選択されるものである、請求項1に記載のシクロジシラザン誘導体。
【化2】
【請求項3】
下記化学式2で表されるシラン誘導体と下記化学式3で表されるアミン誘導体とを反応させることで、下記化学式4で表されるジアミノシラン誘導体を製造するステップと、
(C1‐C7)アルキルリチウムの存在下で、下記化学式4で表されるジアミノシラン誘導体と化学式5で表されるシラン誘導体とを環化反応させることで、下記化学式1で表されるシクロジシラザン誘導体を製造するステップと、を含む、下記化学式1で表されるシクロジシラザン誘導体の製造方法。
[化学式1]
【化3】
[化学式2]
【化4】
[化学式3]
【化5】
[化学式4]
【化6】
[化学式5]
【化7】
(前記化学式1〜5中、
〜Rは、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり、
は、C3アルキルまたはC3アルケニルであり、Xはハロゲンである。)
【請求項4】
前記化学式4で表されるジアミノシラン誘導体を製造するステップは、下記化学式10で表される塩基または(C1‐C7)アルキルリチウムの存在下で行われることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
[化学式10]
N(R)(R)(R
(前記化学式10中、R〜Rは、互いに独立して、(C1‐C7)アルキルである。)
【請求項5】
請求項1または2に記載のシクロジシラザン誘導体を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載のシクロジシラザン誘導体を用いてシリコン含有薄膜を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシクロジシラザン誘導体およびその製造方法、並びにシクロジシラザン誘導体を用いたシリコン含有薄膜に関し、より詳細には、熱的安定性および高い揮発性を有し、常温および取り扱いが容易な圧力下で液体形態である新規なシクロジシラザン誘導体およびその製造方法、並びにそれを用いたシリコン含有薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野において、シリコン含有薄膜は、様々な蒸着工程によりシリコン(silicon)膜、シリコン酸化(silicon oxide)膜、シリコン窒化(silicon nitride)膜、シリコン炭窒化(Silicon carbonitride)膜、およびシリコンオキシ窒化(Silicon oxynitride)膜等の種々の形態の薄膜に製造されており、その応用分野が広い。
【0003】
特に、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜は、非常に優れた遮断特性および耐酸化性を有するため、装置の製作において絶縁膜、拡散防止膜、ハードマスク、エッチング停止層、シード層、スペーサー、トレンチアイソレーション、金属間誘電物質および保護膜層として機能する。
【0004】
近年、多結晶シリコン薄膜を薄膜トランジスタ(thin film transistor、TFT)、太陽電池等に利用しており、その応用分野が益々多様になっている。
【0005】
シリコンが含有された薄膜を製造するための代表的な公知技術としては、混合されたガス形態のシリコン前駆体と反応ガスとが反応して基板の表面に膜を形成したり、表面上に直接的に反応して膜を形成したりする有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、ガス形態のシリコン前駆体が基板の表面に物理的または化学的に吸着された後、反応ガスを順に投入することで膜を形成する原子層蒸着法(ALD)が挙げられる。また、これを応用した低圧化学気相蒸着法(LPCVD)、および低温で蒸着可能なプラズマを用いたプラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)とプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)等、様々な薄膜製造技術が次世代の半導体およびディスプレイ素子の製造工程に適用され、超微細パターンの形成、およびナノ単位の厚さを有し、均一で且つ優れた特性を有する極薄膜の蒸着に用いられている。
【0006】
韓国公開特許第2007‐0055898号に開示されているように、シリコン含有薄膜を形成するために用いられる前駆体は、シラン、シラン塩化物、アミノシラン、およびアルコキシシラン形態の化合物が代表的であり、具体的な例としては、ジクロロシラン(dichlrorosilane:SiHCl)およびヘキサクロロジシラン(hexachlorodisilane:ClSiSiCl)等のシラン塩化物形態の化合物、トリシリルアミン(trisilylamine:N(SiH)、ビスジエチルアミノシラン(bis‐diethylaminosilane:HSi(N(CHCH)、およびジイソプロピルアミノシラン(di‐isopropylaminosilane:HSiN(i‐C)等が挙げられ、半導体やディスプレイの量産に用いられている。
【0007】
しかし、素子の超高集積化に起因する素子の微細化、アスペクト比の増加、および素子材料の多様化により、均一で且つ薄い厚さを有し、電気的特性に優れた超微細薄膜を所望の低温で形成する技術が要求されており、従来のシリコン前駆体を用いた600℃以上の高温工程、ステップカバレッジ、エッチング特性、薄膜の物理的および電気的特性が問題となっている。したがって、さらに優れた新規なシリコン前駆体の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2007‐0055898号公報
【特許文献2】米国公開特許US2004‐0096582A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規なシクロジシラザン誘導体を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、薄膜蒸着用前駆体化合物である新規なシクロジシラザン誘導体を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の別の目的は、シクロジシラザン誘導体の製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の別の目的は、本発明のシクロジシラザン誘導体を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物、本発明のシクロジシラザン誘導体を用いてシリコン含有薄膜を製造する方法、および本発明のシクロジシラザン誘導体を含んで製造されるシリコン含有薄膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、低温でも優れた凝集力、高い蒸着率、優れた物理的および電気的特性を有するシリコン薄膜を形成することができる新規なシクロジシラザン誘導体を提供する。
【0014】
本発明の新規なシクロジシラザン誘導体は、下記化学式1で表される。
【0015】
[化学式1]
【化1】
【0016】
前記化学式1中、
〜Rは、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり、
は、水素、(C1‐C3)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルである。
【0017】
本発明のシクロジシラザン誘導体は、常温および常圧下で液体状態の化合物であって、優れた揮発性を有するため、薄膜の形成が容易である。また、Si‐N結合を有する安定した四角環状の化合物であり、置換基による化合物の対称性と非対称性を調節することで反応性を調節することができる利点を有する。また、四角環状の分子構造により、本発明のシクロジシラザン誘導体は、高い熱的安定性および低い活性化エネルギーを有するため、優れた反応性を有し、非揮発性の副生成物を生成しないため、高い純度のシリコン含有薄膜を容易に形成することができる。
【0018】
本発明の一実施形態による前記化学式1で表されるシクロジシラザン誘導体は、高い熱的安定性および反応性、高い純度の薄膜を形成するという点で、前記化学式1中の前記R〜Rが、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C3)アルキルまたは(C2‐C3)アルケニルであり、Rが(C1‐C3)アルキルまたは(C2‐C3)アルケニルであることが好ましく、前記R〜Rが、互いに独立して、水素、ハロゲン、メチルまたはエテニルであり、Rがイソプロピルまたはイソプロペニルであることがより好ましい。
【0019】
本発明の一実施形態による前記化学式1のシクロジシラザン誘導体は、下記化合物から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
【化2】
【0021】
本発明に記載の「アルキル」は、直鎖または分枝鎖の両方の形態を含む。
【0022】
また、本発明の前記化学式1で表されるシクロジシラザン誘導体は、好ましくは、シリコン含有薄膜蒸着用前駆体化合物であることができる。
【0023】
また、本発明は、化学式1で表されるシクロジシラザン誘導体の製造方法を提供する。
【0024】
本発明のシクロジシラザン誘導体の製造方法は、下記化学式2で表されるシラン誘導体と下記化学式3で表されるアミン誘導体とを反応させることで、下記化学式4で表されるジアミノシラン誘導体を製造するステップと、(C1‐C7)アルキルリチウムの存在下で、下記化学式4で表されるジアミノシラン誘導体と化学式5で表されるシラン誘導体とを分子内環化反応させることで、下記化学式1で表されるシクロジシラザン誘導体を製造するステップと、を含む。
【0025】
[化学式1]
【化3】
【0026】
[化学式2]
【化4】
【0027】
[化学式3]
【化5】
【0028】
[化学式4]
【化6】
【0029】
[化学式5]
【化7】
【0030】
前記化学式1〜5中、
〜Rは、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり、
は、水素、(C1‐C3)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり、Xはハロゲンである。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記化学式4で表されるジアミノシラン誘導体を製造するステップは、下記化学式10で表される塩基または(C1‐C7)アルキルリチウムの存在下で行われることができる。
【0032】
[化学式10]
N(R)(R)(R
【0033】
前記化学式10中、R〜Rは、互いに独立して、(C1‐C7)アルキルである。
【0034】
本発明のシクロジシラザン誘導体の他の製造方法は、下記化学式1‐1で表されるハロシクロジシラザン誘導体と金属水素化物または下記化学式8で表されるアルカリ金属誘導体とを反応させることで、下記化学式1‐2で表されるシクロジシラザン誘導体を製造するステップを含む。
【0035】
[化学式1‐2]
【化8】
【0036】
[化学式1‐1]
【化9】
【0037】
[化学式8]
【化10】
【0038】
前記化学式1‐1、1‐2、および8中、
Mはアルカリ金属であり;
10は、互いに独立して、水素または(C1‐C5)アルキルであり;
〜Rの少なくとも1つはハロゲンであり、残りは、水素、ハロゲン、(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり;
は、水素、(C1‐C3)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり;
1a〜R3aの少なくとも1つは水素であり、残りは、水素、(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであって、RがハロゲンであるとR1aは水素であり、RがハロゲンであるとR2aは水素であり、RがハロゲンであるとR3aは水素である。
【0039】
本発明のシクロジシラザン誘導体のまた他の製造方法は、下記化学式2で表されるシラン誘導体と下記化学式3で表されるアミン誘導体とを反応させることで、下記化学式6で表されるアミノシラン誘導体を製造するステップと、(C1‐C7)アルキルリチウムの存在下で、下記化学式6で表されるアミノシラン誘導体を分子内環化反応させることで、下記化学式7で表されるハロシクロジシラザン誘導体を製造するステップと、下記化学式7で表されるハロシクロジシラザン誘導体と金属水素化物または下記化学式8で表されるアルカリ金属誘導体とを反応させることで、下記化学式9で表されるシクロジシラザン誘導体を製造するステップと、を含む。
【0040】
[化学式2]
【化11】
【0041】
[化学式3]
【化12】
【0042】
[化学式6]
【化13】
【0043】
[化学式7]
【化14】
【0044】
[化学式8]
【化15】
【0045】
[化学式9]
【化16】
【0046】
前記化学式2、3、および6〜9中、
はハロゲンであり;
は、水素、ハロゲン、(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり;
は、水素、(C1‐C3)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであり;
Xはハロゲンであり;
Mはアルカリ金属であり;
10は、水素または(C1‐C5)アルキルであり;
1aは水素であり、
が水素またはハロゲンであると、R2aは水素であり、
が(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルであると、R2aは(C1‐C5)アルキルまたは(C2‐C5)アルケニルである。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記化学式6のアミノシラン誘導体を製造するステップは、下記化学式10で表される塩基または(C1‐C7)アルキルリチウムの存在下で行われることができる。
【0048】
[化学式10]
N(R)(R)(R
【0049】
前記化学式10中、R〜Rは、互いに独立して、(C1‐C7)アルキルである。
【0050】
本発明の一実施形態による(C1‐C7)アルキルリチウムは、炭素数1〜7のアルキルにリチウムが結合された化合物であり、例えば、メチルリチウム、n‐ブチルリチウム等が挙げられ、好ましくはn‐ブチルリチウムであることができる。
【0051】
本発明の一実施形態による金属水素化物は、LiH、NaH、KHおよびLiAlHからなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物であることができる。
【0052】
本発明の製造方法で用いられる溶媒は、通常の有機溶媒のうち出発物質と反応しない溶媒であれば限定されず、例えば、ノルマルヘキサン(n‐Hexane)、シクロヘキサン(Cyclohexane)、ノルマルペンタン(n‐Pentane)、ジエチルエーテル(diethyl ether)、トルエン(Toluene)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、卜リクロロメタン(クロロホルム)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0053】
本発明の製造方法における反応温度は、通常の有機合成で用いられる温度であれば限定されないが、反応時間、反応物質、および出発物質の量によって変わり得て、NMRおよびGC等により出発物質が完全に消耗されたことを確認してから反応を完了させる必要がある。反応が完了すると、濾過後、減圧下の単蒸留により溶媒を除去させた後、分別蒸留または減圧蒸留等の通常の方法により目的物を分離精製してもよい。
【0054】
また、本発明は、本発明のシクロジシラザン誘導体を含むシリコン含有薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0055】
本発明のシリコン含有薄膜蒸着用組成物は、本発明のシクロジシラザン誘導体を薄膜蒸着用前駆体として含有し、組成物中の本発明のシクロジシラザン誘導体の含量は、薄膜の成膜条件または薄膜の厚さ、特性等を考慮して、当業者が認識できる範囲内とすることができる。
【0056】
また、本発明は、本発明のシクロジシラザン誘導体を用いてシリコン含有薄膜を製造する方法を提供する。
【0057】
また、本発明は、本発明のシクロジシラザン誘導体を含んで製造されたシリコン含有薄膜を提供する。
【0058】
本発明のシリコン含有薄膜は通常の方法により製造されることができ、例えば、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)、原子層蒸着法(ALD)、低圧化学気相蒸着法(LPCVD)、プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)、またはプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)等が挙げられる。
【0059】
本発明のシクロジシラザン誘導体が低い活性化エネルギおよび高い反応性を有し、非揮発性の副生成物の生成が殆どないため、本発明のシクロジシラザン誘導体を前駆体として用いて製造されたシリコン含有薄膜は、高い純度および優れた物理的、電気的特性を有する。
【発明の効果】
【0060】
本発明のシクロジシラザン誘導体は、優れた熱的安定性および高い反応性を有するため、前記シクロジシラザン誘導体を前駆体として用いて製造されたシリコン含有薄膜は、高い純度および非常に優れた物理的、電気的特性を有する。
【0061】
また、本発明のシクロジシラザン誘導体は、シリコン含量が高く、常温および常圧で液体状態で存在するため保管および取り扱いが容易であり、高い揮発性および高い反応性を有して蒸着が速く且つ容易であり、優れた凝集力と優れたステップカバレッジを有する薄膜の蒸着が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】実施例1で製造した1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザンの熱重量分析の結果である。
図2】実施例1で製造した1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザンの蒸気圧測定の結果である。
図3】実施例6で製造した1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザンの熱重量分析の結果である。
図4】実施例6で製造した1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザンの蒸気圧測定の結果である。
図5】実施例7および比較例1で実施したシリコン含有薄膜の蒸着方法を示した図面である。
図6】実施例7で実施したシリコン含有薄膜のステップカバレッジを透過型電子顕微鏡を用いて分析した結果である。
図7】実施例7および比較例1で実施したシリコン含有薄膜の赤外分光分析の結果である。
図8】実施例7で実施したシリコン含有薄膜のオージェ電子分光分析の結果である。
図9】実施例7および比較例1で実施したシリコン含有薄膜のエッチング速度をエリプソメータを用いて分析した結果である。
図10】実施例8で実施したシリコン含有薄膜の蒸着方法を示した図面である。
図11】実施例8で実施したシリコン含有薄膜の赤外分光分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下の全ての化合物に係る実施例は、グローブボックスまたはシュレンクフラスコを用いて、無水および不活性雰囲気下で行った。また、その生成物は、プロトン核磁気共鳴分光法(H Nuclear Magnetic Resonance;NMR、400MHz Ultrashield、Buruker)、熱重量分析法(thermogravimetric analysis;TGA、L81‐II、LINSEIS)、及びガスクロマトグラフィー(gas chromatography;GC、7890A、Agilent Technologies)により分析し、蒸着した薄膜の厚さは、エリプソメータ(Ellipsometer、M2000D、Woollam)で測定し、赤外分光法(infrared spectroscopy、IFS66V/S&Hyperion 3000、Bruker Optiks)およびオージェ電子分光器(Microlab 350、Thermo Electron)を用いて膜の成分を分析した。
【0064】
[実施例1]1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザンの合成
1)1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジクロロジメチルシクロジシラザンの合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコに、卜リクロロ(メチル)シラン(CHSiCl)127g(0.86mol)および有機溶媒n‐ヘキサン1200mlを入れて撹拌しながら、イソプロピルアミン(HNCH(CH)101.7g(1.72mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で3時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、回収されたジクロロ(メチル)(イソプロピルアミノ)シラン(ClCHSiNHCH(CH)に有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、1.7M濃度のt‐ブチルリチウム(t‐CLi)ヘキサン(C14)溶液367.0g(0.90mol)を40℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に65℃に昇温し、12時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジクロロジメチルシクロジシラザン((ClCHSiNCH(CH)81.4g(0.30mol)を収率70%で得た。
【0065】
H NMR (in C) δ 0.50, 0.53(s, 6H, csi−NSi(CH)Cl, trans−NSi(CH)Cl), 1.07(d, 12H, Si(NCH(CH), 3.27(m, 2H, Si(NCH(CH;沸点197℃.
【0066】
2)1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザンの合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥された1000mLのシュレンクフラスコに、前記1)で合成された1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジクロロジメチルシクロジシラザン((ClCHSiNCH(CH)100g(0.37mol)および有機溶媒THF200mlを入れて撹拌しながら、水素化リチウム(LiH)7.33g(0.92mol)を−15℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に65℃に昇温し、12時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザン((HCHSiNCH(CH)60g(0.3mol)を収率80%で得た。
【0067】
H NMR (in C) δ 0.33(m, 6H, NSiH(CH)), 1.05(m, 12H, Si(NCH(CH), 3.20(m, 2H, Si(NCH(CH), 5.52(m, 2H, NSiH(CH));沸点173〜175℃。
【0068】
[実施例2]1,3‐ジイソプロピルシクロジシラザンの合成
1)1,3‐ジイソプロピル‐2,2,4,4‐テトラクロロシクロジシラザンの合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコに、テトラクロロシラン(SiCl)150g(0.89mol)および有機溶媒n‐ヘキサン500mlを入れて撹拌しながら、イソプロピルアミン(HNCH(CH)104.76g(1.77mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で3時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、回収された卜リクロロ(イソプロピルアミノ)シラン(ClSiNHCH(CH)に有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、1.7M濃度のt‐ブチルリチウム(t‐CLi)ヘキサン(C14)溶液368.38g(0.90mol)を40℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に65℃に昇温し、12時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により1,3‐ジイソプロピル‐2,2,4,4‐テトラクロロシクロジシラザン((ClSiNCH(CH)121.7g(0.35mol)を収率88%で得た。
【0069】
H NMR (in C) δ 1.10(d, 12H, Si(NCH(CH), 3.34(m, 2H, Si(NCH(CH);沸点216〜217℃。
【0070】
2)1,3‐ジイソプロピルシクロジシラザンの合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコに、前記1)で合成された1,3‐ジイソプロピル‐2,2,4,4‐テトラクロロシクロジシラザン((ClSiNCH(CH)80g(0.26mol)および有機溶媒ジエチルエーテル400mlを入れて撹拌しながら、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)12.35g(1.55mol)を−15℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に60℃に昇温し、12時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により1,3‐ジイソプロピルシクロジシラザン((HSiNCH(CH)26.8g(0.16mol)を収率60%で得た。
【0071】
H NMR (in C) δ 1.11(d, 12H, Si(NCH(CH), 3.23(m, 2H, Si(NCH(CH), 4.48(s, 2H, NSiH);沸点155〜160℃。
【0072】
[実施例3]1,3‐ジイソプロピル‐2‐クロロ‐4,4‐ジメチルシクロジシラザンの合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコに、ジクロロジメチルシラン(Si(CHCl)214g(1.66mol)および有機溶媒n‐ヘキサン1000mlを入れて撹拌しながら、イソプロピルアミン(HNCH(CH)392.1g(6.63mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で3時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、回収されたジ(イソプロピルアミノ)ジメチルシラン((CHSi(NHCH(CH)に有機溶媒n‐ヘキサン300mlを入れて撹拌しながら、2.5M濃度のn‐ブチルリチウム(n‐CLi)ヘキサン(C14)溶液1005.3g(3.32mol)を−15℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に25℃に昇温し、12時間撹拌した後、卜リクロロシラン(SiHCl)224.6g(1.66mol)をゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に65℃に昇温し、12時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により1,3‐ジイソプロピル‐2‐クロロ‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(((CHSiNCH(CH)(ClSiHNCH(CH))255.3g(1.08mol)を収率65%で得た。
【0073】
H NMR (in C) δ 0.19 and 0.21 (s, 6H, NSi(CH), 1.03(d, 12H, Si(NCH(CH), 3.17(m, 2H, Si(NCH(CH), 5.99(s, 1H, NSiHCl); 沸点190℃。
【0074】
[実施例4]1,3‐ジイソプロピル‐2‐クロロ‐4,4‐ジメチルシクロジシラザンの合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥された1000mLのシュレンクフラスコに、ジクロロジメチルシラン((CHSiCl)107g(0.83mol)および有機溶媒n‐ヘキサン400mlを入れて撹拌しながら、トリエチルアミン(CN)167.7g(1.66mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した後、イソプロピルアミン(HNCH(CH)98.0g(1.65mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で3時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、回収されたジ(イソプロピルアミノ)ジメチルシラン((CHSi(NHCH(CH)に有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、2.5M濃度のn‐ブチルリチウム(n‐CLi)ヘキサン(C14)溶液351.8g(1.16mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、12時間撹拌した後、卜リクロロシラン(SiHCl)224.6g(1.66mol)をゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に65℃に昇温し、12時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により1,3‐ジイソプロピル‐2‐クロロ‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(((CHSiNCH(CH)(ClSiHNCH(CH))255.3g(1.08mol)を収率65%で得た。
【0075】
H NMR (in C) δ 0.19 and 0.21 (s, 6H, NSi(CH), 1.03(d, 12H, Si(NCH(CH), 3.17(m, 2H, Si(NCH(CH), 5.99(s, 1H, NSiHCl);沸点190℃。
【0076】
[実施例5]1,3‐ジイソプロピル‐2‐クロロ‐4,4‐ジメチルシクロジシラザンの合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥された1000mLのシュレンクフラスコに、イソプロピルアミン(HNCH(CH)98.0g(1.65mol)および有機溶媒n‐ヘキサン400mlを入れて撹拌しながら、2.5M濃度のn‐ブチルリチウム(n‐CLi)ヘキサン(C14)溶液500.4g(1.65mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で3時間撹拌した後、ジクロロジメチルシラン((CHSiCl)107g(0.83mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、常温で3時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、回収されたジ(イソプロピルアミノ)ジメチルシラン((CHSi(NHCH(CH)に有機溶媒n‐ヘキサン200mlを入れて撹拌しながら、2.5M濃度のn‐ブチルリチウム(n‐CLi)ヘキサン(C14)溶液351.8g(1.16mol)を−10℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に常温に昇温し、12時間撹拌した後、卜リクロロシラン(SiHCl)224.6g(1.66mol)をゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に65℃に昇温し、12時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により1,3‐ジイソプロピル‐2‐クロロ‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(((CHSiNCH(CH)(ClSiHNCH(CH))196.4g(0.83mol)を収率50%で得た。
【0077】
H NMR (in C) δ 0.19 and 0.21 (s, 6H, NSi(CH), 1.03(d, 12H, Si(NCH(CH), 3.17(m, 2H, Si(NCH(CH), 5.99(s, 1H, NSiHCl);沸点190℃。
【0078】
[実施例6]1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザンの合成
無水および不活性雰囲気下で火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコに、前記実施例3で合成された1,3‐ジイソプロピル‐2‐クロロ‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(((CHSiNCH(CH)(ClSiHNCH(CH))200g(0.84mol)および有機溶媒THF600mlを入れて撹拌しながら、水素化リチウム(LiH)7.4g(0.93mol)を−15℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、反応溶液を徐々に65℃に昇温し、12時間撹拌した。撹拌が完了した後、反応溶液を濾過し、濾過により得られた白色の固体を除去して濾過液を得た。この濾過液から減圧下で溶媒を除去し、減圧蒸留により1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(((CHSiNCH(CH)(SiHNCH(CH))85.46g(0.42mol)を収率50%で得た。
【0079】
H NMR (in C) δ 0.26(s, 6H, NSi(CH), 1.06(d, 12H, Si(NCH(CH), 3.18(m, 2H, Si(NCH(CH), 5.51(s, 1H, NSiH);沸点175℃。
【0080】
[実施例7]シクロジシラザン誘導体を用いた、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によるシリコン酸化膜の蒸着
公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置でシリコン酸化膜を形成するための組成物として、本発明の実施例1の1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザンと実施例6の1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザンを用いて、成膜評価を行った。反応ガスとしてはプラズマとともに酸素を使用し、不活性気体のアルゴンをパージのために使用した。以下、図5と表1に具体的なシリコン酸化薄膜の蒸着方法を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
蒸着した薄膜の厚さをエリプソメータ(Ellipsometer)で測定し、赤外分光光度計およびオージェ電子分光器を用いてSiO薄膜の形成および前記薄膜の成分を分析した。Siウエハで50サイクル進行時に、1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザン(実施例1)の薄膜の厚は76.98Åであり、1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(実施例6)の薄膜の厚は78.84Åであった。そして、Siパターンウエハで273サイクル進行時に、1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザン(実施例1)を含んで製造された薄膜の厚は317Åであり、Siパターンウエハで406サイクル進行時に、1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(実施例6)を含んで製造された薄膜の厚は436Åであった。さらに、ステップカバレッジは98.17〜101.89%であって、高い蒸着率および優れたステップカバレッジが求められるシリコン酸化薄膜応用全分野にわたって有用に用いられることができると判断される(図6)。
【0083】
また、図7および図8に示すように、蒸着された全ての薄膜はシリコン酸化膜として形成されており、C‐H、Si‐OH等の不純物ピークは観察されなかった(図7)。1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザン(実施例1)を用いて形成された薄膜中の酸素とシリコンとの割合は2.07:1であり、1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(実施例6)を用いて形成された薄膜中の酸素とシリコンとの割合は2.03:1であり、炭素および窒素の含量は0%であって、高純度のシリコン酸化薄膜が形成されたことを確認することができた(図8)。
【0084】
また、蒸着された薄膜のエッチング速度(etch rate)を緩衝酸化エッチング(Buffered oxide etch、BOE)溶液(300:1)を用いて確認した。1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザン(実施例1)を用いて蒸着されたシリコン酸化薄膜は0.58Å/secの速度でエッチングされ、1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザン(実施例6)を用いて蒸着されたシリコン酸化薄膜は0.59Å/secの速度でエッチングされた。それぞれのサンプルを750℃で30分間熱処理した後、エッチング速度を確認した結果、1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザンの酸化薄膜のエッチング速度は0.47Å/sec、1,3‐ジイソプロピル‐4,4‐ジメチルシクロジシラザンの酸化薄膜のエッチング速度は0.54Å/secであって、エッチング速度が減少したことを確認した。比較サンプルとして使用した、1000℃で蒸着した熱酸化(thermal oxide)薄膜のエッチング速度は0.30Å/secと確認された(図9)。
【0085】
すなわち、本発明により製造された新規なシクロジシラザン誘導体は、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)により高い蒸着率、優れたステップカバレッジおよびエッチング耐性を有する高純度のシリコン酸化薄膜を形成するにおいて、その活用価値が高いことが確認された。
【0086】
[比較例1]公知のアミノシリルアミン化合物を用いた、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によるシリコン酸化膜の蒸着
下記表2に記載のように、公知のアミノシリルアミン化合物を使用したことを除き、実施例7で実施されたことと同一の蒸着条件下で、公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いて比較例の成膜評価を行った。蒸着した薄膜は、実施例7で実施したことと同一の分析方法および条件により分析して分析結果を得た。以下、図5と表2に具体的なシリコン酸化薄膜の蒸着方法を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
蒸着した薄膜の厚さをエリプソメータ(Ellipsometer)で測定し、赤外分光光度計を用いてSiO薄膜の形成を分析した。Siウエハで50サイクル進行時に、薄膜の厚はそれぞれ72.5Å(前駆体A)と68.5Å(前駆体B)であって、実施例7で実施したシクロジシラザン誘導体に比べて低い蒸着率を示し、全ての薄膜はシリコン酸化膜として形成された(図7)。
【0089】
また、蒸着された薄膜のエッチング速度(etch rate)を緩衝酸化エッチング(Buffered oxide etch、BOE)溶液(300:1)を用いて確認した。前駆体Aを用いて蒸着されたシリコン酸化薄膜は0.86Å/secの速度でエッチングされ、前駆体Bを用いて蒸着されたシリコン酸化薄膜は0.94Å/secの速度でエッチングされた。それぞれのサンプルを750℃で30分間熱処理した後、エッチング速度を確認した結果、前駆体Aの酸化薄膜のエッチング速度は0.66Å/secであり、前駆体Bの酸化薄膜のエッチング速度は0.69Å/secであって、エッチング速度が減少したことを確認した。比較サンプルとして使用した、1000℃で蒸着した熱酸化(thermal oxide)薄膜のエッチング速度は0.30Å/secと確認された(図9)。
【0090】
[実施例8]シクロジシラザン誘導体を用いた、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)によるシリコン窒化膜の蒸着
公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置でシリコン窒化膜を形成するための組成物として、本発明の実施例1の1,3‐ジイソプロピル‐2,4‐ジメチルシクロジシラザンを用いて、成膜評価を行った。反応ガスとしてはプラズマとともに窒素を使用し、同一の窒素ガスをパージのために使用した。以下、図10と表3に具体的なシリコン窒化薄膜の蒸着方法を示す。
【0091】
【表3】
【0092】
蒸着した薄膜の厚さをエリプソメータ(Ellipsometer)で測定し、赤外分光光度計およびオージェ電子分光器を用いてSiN薄膜の形成および前記薄膜の成分を分析した。薄膜の厚はSiウエハで500サイクル進行時に150.70Åであった。
【0093】
また、図11に示すように、全ての蒸着された薄膜はシリコン窒化膜として形成されており、少量のN‐HおよびSi‐Hなどの結合が含まれていることが観察された。
【0094】
また、蒸着された薄膜のエッチング速度(etch rate)を緩衝酸化エッチング(Buffered oxide etch、BOE)溶液(300:1)を用いて確認した。前記蒸着されたシリコン窒化薄膜は0.05Å/secの速度でエッチングされ、比較サンプルとして使用した、1000℃で蒸着した熱酸化(thermal oxide)薄膜は0.34Å/secの速度でエッチングされ、ジクロロシランを用いて770℃で低圧化学気相蒸着法(LPCVD)により蒸着したシリコン窒化薄膜は0.02Å/secの速度でエッチングされた。
【0095】
すなわち、本発明により製造された新規なシクロジシラザン誘導体は、プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)により高い蒸着率および優れたエッチング耐性を有する高純度のシリコン窒化薄膜を形成するにおいて、その活用価値が高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のシクロジシラザン誘導体は、優れた熱的安定性および高い反応性を有するため、前記シクロジシラザン誘導体を前駆体として用いて製造されたシリコン含有薄膜は、高い純度および非常に優れた物理的、電気的特性を有する。
【0097】
また、本発明のシクロジシラザン誘導体は、シリコン含量が高く、常温および常圧で液体状態で存在するため保管および取り扱いが容易であり、高い揮発性および高い反応性を有して、蒸着が速く且つ容易であり、優れた凝集力と優れたステップカバレッジを有する薄膜の蒸着が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11