特許第6267828号(P6267828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6267828
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】部分的に吸収可能な組織クリップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/08 20060101AFI20180115BHJP
   A61B 17/122 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61B17/08
   A61B17/122
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-506774(P2017-506774)
(86)(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公表番号】特表2017-526423(P2017-526423A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015067496
(87)【国際公開番号】WO2016020259
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2017年4月6日
(31)【優先権主張番号】102014111038.2
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510285610
【氏名又は名称】オヴェスコ エンドスコピー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】マルク シューアー
(72)【発明者】
【氏名】グンナー アンヘック
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−517858(JP,A)
【文献】 特表2006−512157(JP,A)
【文献】 特表2003−518975(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02449983(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を把持する少なくとも1つの把持歯と、
少なくとも1つの前記把持歯が設けられた少なくとも1つの力放出要素と、
前記力放出要素を介して少なくとも1つの前記把持歯に噛み込み力を加えるために、前記力放出要素または前記力放出要素の1つに接続された少なくとも1つの予荷重要素と、を備え、
少なくとも1つの前記把持歯(7)は、生体吸収性材料で構成され、
少なくとも1つの前記力放出要素の一部の域は、生体吸収性材料で構成され、
少なくとも1つの前記把持歯と、前記一部の領域とが、前記力放出要素に形状結合により保持された連結プレートによって、一体的に互いに接続されている部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項2】
前記組織クリップは、請求項1に記載の生体吸収性材料部分を除いて、非生体吸収性材料から製造されることを特徴とする請求項1に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項3】
前記非生体吸収性材料がニチノールであることを特徴とする請求項2に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項4】
前記組織クリップの非生体吸収性材料から製造された部分が、射出成形、打ち抜きまたはレーザ切断により一体的に製造されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項5】
前記組織クリップの前記非生体吸収性材料から製造された部分が、フレーム構造を形成することを特徴とする請求項4に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項6】
前記生体吸収性材料は、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ヒドロキシアパタイト(HPA)、β-リン酸三カルシウム、リン酸三カルシウム(TCP)またはポリラクチドを含むコポリマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項7】
前記生体吸収性材料の選択または前記生体吸収性材料の組成の変化の結果として、吸収の時間経過およびその結果としての前記組織クリップのクランプ力を決定することができることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項8】
前記生体吸収性材料が、前記生体吸収性材料の吸収または前記生体吸収性材料からの拡散によって経時的に局所的に放出される医療用活性成分を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項9】
前記生体吸収性材料から製造された部分が、形状結合により、摩擦結合により、および/または接着結合により、非生体吸収性材料から製造された部分に接続されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項10】
前記生体吸収性材料から製造された少なくとも1つの前記力放出要素の一部が、実質的に平坦なプレートとして構成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項11】
前記プレートの長手方向軸が、前記把持歯により形成される組織用のクランプスリットと平行に延びる請求項10に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項12】
前記生体吸収性材料から製造された少なくとも1つの前記力放出要素の一部は、互いに隣接して配置され、長手方向軸が前記把持歯によって形成された組織用のクランプスロットと平行に延びる2つの平坦なプレートとして構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項13】
前記生体吸収性材料から製造された少なくとも1つの前記力放出要素の一部は、非生体吸収性材料から製造された少なくとも1つのクリップによって定位置に保持されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項14】
前記生体吸収性材料から製造された少なくとも1つの前記力放出要素の一部は、前記把持歯に面する側では前記把持歯のジグザグ形状に似せ、非生体吸収材料から製造された前記力放出要素の外縁部分に面する側では前記一部に最も近い前記力放出要素の外縁部分の形状に似せていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項15】
前記生体吸収性材料から製造された少なくとも1つの前記力放出要素の一部は、相互に安全に接続され、非生体吸収性材料で製造された部分に2つの外側面から適合する2つのプレートとして構成されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項16】
前記生体吸収性材料から製造された少なくとも1つの前記力放出要素の一部の2つの前記プレートは、医療用接着剤によって、前記生体吸収性材料から製造される少なくとも1つのピンを介して互いに接続されることを特徴とする請求項15に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項17】
前記医療用接着剤は、シアノアクリレートである請求項16に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【請求項18】
少なくとも1つの前記把持歯(7)は、少なくとも1つの前記力放出要素に平面的に固定されたプレート上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の部分的に吸収可能な組織クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人または動物の身体の組織をステープル留めするための部分的に吸収可能な組織クリップに関し、当該組織クリップは、組織クリップの吸収可能な部分の吸収の結果として、組織クリップのクランプ効果が経時的に減少するように設計されており、組織クリップが組織から自動的に取り外されるまで、断片化することなく(例えば、組織クリップが個々の金属片に崩壊することなく)、外科的、胃腸病学的または直腸病学的処置の場合など、さらなる外科的介入なしに身体から排除することができる。
【背景技術】
【0002】
現代の内視鏡または外科手術では、出血を阻止するために、または組織の外科的に分離された部分をステープル留めするために、組織のこれらの部分の外科的除去の前に、組織の切片をクランプするために組織クリップが使用される。 消化器内科または直腸病学的外科手術では、例えば、腸の一部の病変部を締め付けることができ、または介入(インターベンション)中および介入後に組織の出血を減少させることができる。さらに、創傷治癒を促進し、胃および腸の内容物が腹腔内に逃げるのを防ぐために、消化管の壁の一部を除去した後に既存の創縁をステープル留めするために組織クリップを使用することもできる。 例えば、腸の切開部を確実に閉じるためには、組織クリップは、ステープル留めされた2つの組織片に特定の力を及ぼさなければならない。これは、組織クリップの機械的な材料特性の要求を高くする。 チタン、ニッケル - チタン合金および非酸化性ばね鋼のような非吸収性医療材料の優れた機械的特性のために、従来の組織クリップは、通常、この種の非生体吸収性材料(生物学的に吸収可能でない材料)であって組織適合性材料(組織適合材料)で作られる。
【0003】
しかしながら、非生体吸収性材料から組織クリップを製造することは、ステープル留めされた組織が治癒した後、必要に応じて外科的介入によって体内に挿入された組織クリップを除去しなければならないという欠点を伴う。これは、組織クリップを挿入するための介入に加えて、組織クリップを除去するために第2の介入が必要であり得ることを意味する。 組織クリップを除去するための第2の外科的介入の必要性を回避するために、組織クリップは、全体的または部分的に生体吸収性材料(生物学的に吸収可能な材料)から作製することができる。
【0004】
(技術水準)
完全に生体吸収可能な組織クリップは、例えば、独国特許出願公開第29923545号明細書から知られている。 この組織クリップは、特にヘルニア手術の場合、腹腔に挿入されたプラスチックメッシュをプラスチックメッシュが腹壁と不可分に付着するまで腹壁に固定するために使用される。組織クリップは、肩部、ガイド軸及び回転軸を有する吸収可能な材料で作られた本体と、肩部から垂直にそれぞれ突出する1つの把持歯を肩部の各端部に有する。肩を曲げるために、膝レバーが肩の中央に埋め込まれている。 膝レバーが安定した伸長位置に押し込まれると、結果として肩部が曲げられ、2つの把持歯が把持歯の間に形成された組織用のクランプスリット内で閉じる。 把持歯を組織内に固定するクランプ力は、膝レバーのレバレッジ効果によって加えられる。
【0005】
しかしながら、多くの内視鏡的または外科的な用途では、例えば米国特許第6,849,078号明細書に記載されているように、組織内に組織クリップの把持歯を固定する締め付け力が、ばね効果によって自動的に加えられると有利である。これは、例えば、この場合の組織クリップが、ステープル留めのために、予め荷重が加えられたばね要素および開かれたクランプスリットを有する位置で、例えば内視鏡の先端で、組織に導入され得るという利点がある。そして、内視鏡が再び引っ込められ、アプリケーション装置により組織クリップがもはや予荷重ばね要素をもつ開位置に固定されていないとき、予め荷重が加えられた組織クリップは、組織に適用されると、予荷重ばね要素のばね効果により自身を組織内に自動的に固定する。したがって、自動閉鎖機構としてのバネ要素を有するこの組織クリップの場合には、(例えば膝レバーを適所に押し込むために必要な)組織クリップへの圧力の付加的な適用は必要とされない。 これは、敏感な組織タイプの場合であっても、または内視鏡的または外科的にアクセスすることが困難な領域であっても、組織クリップへのクランプ圧力の外部印加が困難である場合でも、ばね要素を有する組織クリップの使用を可能にする。
【0006】
しかしながら、生体吸収性材料の多くの場合の不十分な機械的特性によれば、好ましくは完全に吸収可能なばね要素の形態で、自動閉鎖機構を有する組織クリップを設計することは非常に困難である。なぜなら、少なくともばね要素は、より良好な機械的特性(例えば、ばね鋼または形状記憶合金)を有する、異なる非生体吸収性の組織適合性材料により作られなければならないからである。
【0007】
組織クリップ内の任意のばね要素に必要な機械的特性を提供し且つ依然として吸収可能な組織クリップの利点を達成するために、組織クリップは、本質的に生体吸収性材料で部分的にのみ作製することができる。 これらの部分的に吸収可能な組織クリップでは、組織クリップの一部は生体吸収性材料で作られ、別の部分は組織適合性の非吸収性材料で作られる。
【0008】
そのような部分的に吸収可能な組織クリップの締め付け力は、後者が組織の2つの部分を一緒に保持し且つ組織自体に保持されるが、組織クリップが組織から自動的に取り外される点に達するまで、組織クリップの生体吸収性材料からなる部分の吸収の増加と共に減少する。非生体吸収性材料でできた残りの部分は、例えば消化管での使用時に、さらなる介入なしに除去することができる。
【0009】
しかしながら、部分的に吸収可能な組織クリップの場合、組織クリップの生体吸収性部分の吸収の後、非吸収性材料で作られた組織クリップの部分は、多くの小さな断片に分解される(断片化される)。これらの断片は身体が通常の方法で排除するには小さすぎる可能性があり、それゆえに消化管に留まり、またはその鋭利な性質により腸に損傷を与える可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第29923545号明細書
【特許文献2】米国特許第6,849,078号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記技術水準の記載に基づき、本発明の目的は、腸壁の2つの部分を確実にステープル留めするために必要なクランプ力を自身が提供する部分的に吸収可能な組織クリップを作成することであり、当該組織クリップは、例えば、敏感な組織でも使用することができるが、その生体吸収性部分により、組織クリップを除去するための第2の外科的介入の潜在的必要性が回避され、身体から問題なく除去され得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する組織クリップによって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0013】
したがって、本発明の中心的な概念は、その自動作用閉鎖機構(ばね要素)の外側の領域において、吸収可能な材料から組織クリップを作製することである。これらの領域は、吸収可能な材料が溶解した後に組織クリップが1つのピースで残り続けるように選択され、患者組織に対する把持/保持効果は、好ましくは組織クリップが患者組織から独立して容易に離脱する程度に、少なくとも減少/停止する。
【0014】
本発明による中心的な概念は、組織クリップのうち、即時クランプ/把持操作または患者組織との接触のために提供される領域、および/または、クランプ/把持力を伝達する領域 (好ましくはその接触領域のすぐ近くに配置される領域で、それゆえに接触領域を支持/補強する領域)が、吸収後に組織クリップの把持効果が停止または弱まるように、部分的に吸収性材料で作られるという点で、設計上、実現可能である。組織クリップは、少なくともその基本構造/フレームで保存され、個々の部分/断片に崩壊しない。
【0015】
このような組織をステープル留めするための部分的に吸収可能な組織クリップは、組織を把持し、互いに対向して配置された複数の力放出要素(歯付きラック/顎)に取り付けられた複数の把持歯を備える。このようにして、組織をクランプするためのクランプスリットが把持歯の間に形成される。力放出要素は、本質的に好ましくは細長いものであり、より好ましくは湾曲したプレート/プレートレットであり、力放出要素の長手方向軸は力放出要素の上に形成された把持歯のそれぞれの長手方向軸に対して直角に延び、力放出要素は、把持歯と把持歯との間の組織のクランプによって加えられるクランプ/把持力を吸収し、この力を組織クリップへの推力として伝達する役割を果たす(したがって力伝達要素ともいえる)。組織局部の確実なステープル留めに必要な把持力を加えるために、力放出要素は、相互に対向して配置された力放出要素を相互に予荷重するばね要素(好ましくは単一セクション/単一要素またはマルチセクション/マルチパート要素)と接続される。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、組織クリップの把持歯は、生体吸収性材料で作られている。
【0017】
把持歯の吸収が増加すると、把持歯と把持歯間にクランプされた組織との接触面が減少し、結果として、組織クリップを組織上に保持する把持力も減少する。接触面の大きさまたは締め付け力があるレベル以下に低下すると、組織クリップの残りの部分(すなわち、吸収性材料で作られていない部分、あるいはそれに付属する部分的にまだ吸収されていない吸収性材料で作られた部分)それ自体が組織から除去され、例えば消化管に適用される場合には、通常の方法で身体によって全体的に排除され得る。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも1つの力放出要素の一部は、この力放出要素の選択的な材料弱化のために生体吸収可能な材料で作られる。
【0019】
少なくとも1つの力放出要素の生体吸収性部分の吸収の増加は、力放出要素の選択的な材料弱化を来たす。このようにして、把持歯に作用する把持/把持力は、もはや把持歯から組織クリップの本体の残りの部分およびばね要素に伝導され得なくなる。すなわち、力放出要素は、もはやクランプ/把持力に抵抗することができず、変形する。その結果、ばね要素によって把持歯に導入されるクランプ/把持力が低減される。 このように、組織クリップは、生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力偏向材料の一部の吸収が増加するにつれて、患者組織から容易に取り外され、全体として除去することができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、組織クリップは口の部分(サメの口)の形状に設計されており、これにより、力放出要素は、自動的な閉鎖/把持を可能にするように、ばね要素によって長手方向両側で互いに弾性的に接続された上顎と下顎を形成する。ばね要素は、それらが閉鎖機構(予荷重要素)の機能と同時にピボットヒンジの機能を果たすように構成することができる。 言い換えると、上下の顎は、ばね要素を介して互いに一つに結合されている。これに代わる方法として、ピボットヒンジ(ヒンジピンおよびアイレット)を介して顎同士を連結し、ピボットヒンジに平行な別個のばね要素を介して予荷重力を加えることも可能である。
【0021】
組織クリップは、生体吸収性材料で作られた部分(把持歯および/または力放出要素の一部)に加えて、非生体吸収性の組織適合性材料で作られた部分を含む。 非生体吸収性の組織適合性材料から作られたこの部分は、必要な機械的特性、例えば組織クリップにおける高い弾力性および曲げ強度を保証する役割を果たす。
【0022】
一実施形態において、組織クリップのうち非生体吸収性の組織適合性材料で作られた部分は、好ましくは、射出成形(金属射出成形)により、またはばね鋼板から切り出しにより、特にパンチ/レーザ加工により、単一部品/一体品として製造される。組織クリップの非生体吸収性部分の好ましいワンピース製造は、組織クリップの製造方法を単純化し、その曲げ強度などの組織クリップの機械的特性を改善する。 この点において、そのクリップ(すなわち、その金属体)は、マルチセクション/マルチピース設計、例えば一緒にヒンジ結合された2つの顎(ピン−アイレット設計)で実現することもできることに特に留意すべきであり、それによりばね特性の向上等の他の利点を達成することができる。
【0023】
組織クリップはそれ自体が安定し且つ堅くなければならず、生体吸収性材料で作られた部分は、非生体吸収性の組織適合性材料で作られた部分に恒久的に固定されなければならない。したがって、一実施形態において、生体吸収性材料で作られた部分は、非生体吸収性の組織適合性材料で作られた部分に、インターロック/形態拘束、および/または、摩擦ロック/摩擦接続によって接続される。しかし、それはまた接着または溶接することもできる。 例えば、把持歯は、力放出要素上にスタッド/リベット止めまたはピン止めすることができる。 力放出要素の領域における材料の弱化は、吸収可能な材料で充填されるいくつかの窓開口部のようなものを含む力放出要素によって達成することができる。 材料が溶解すると、力放出要素は窓枠として残っており、いわばスラスト力/せん断力をもはや吸収できなくなる。
【0024】
一実施形態において、非生体吸収性の組織適合性材料は、ニチノールである。生体吸収性材料は、乳酸およびグリコール酸(PLGA)、ヒドロキシアパタイト(HPA)、β-リン酸三カルシウムまたはリン酸三カルシウム(TCP)で作られたコポリマーであり得る。ポリラクチド(ポリ乳酸)、PLGA(これらの派生物の一種)などの材料もまた考えられる。
【0025】
特定の生体吸収性材料を選択することによって、または生体吸収性材料の組成の調整によって、生体吸収性材料の吸収速度を調整することができ、それにより組織クリップが組織から離脱する時間を調整することができる。
【0026】
さらに、生体吸収性材料は、生体吸収性材料の吸収またはこの生体吸収性材料からの拡散を通して経時的に局所的に放出される医薬活性剤または薬物を含むことができる。 このようにして、組織クリップは、投薬の現場投与(in-situ administration)の一部として使用することもできる。
【0027】
生体吸収性材料で作られた組織クリップの部分の形状は、当該用途の要件に適合させることができる。例えば、生体吸収性材料で作られた把持歯は、それらの長さ、幅または湾曲を変更することができる。生体吸収性材料で作られた組織クリップの部分は、把持歯に加えて、自身上に/自身に対して把持歯が取り付けられ/形成され、少なくとも1つの力放出要素と本質的に平行に走る生体吸収性プレートを備えることもできる。生体吸収性材料で作られた歯付きプレートを力放出要素の非生体吸収性部分に固定するために、プレートはさらに、非生体吸収性部分の力放出要素が埋め込まれる凹部を備えることができる。さらに、プレートは、非生体吸収性部分の切り欠き/凹部に係合する少なくとも1つの突出部を備えることができる。
【0028】
力放出要素の一部が生体吸収可能な材料で作られているという事実によって少なくとも1つの力放出要素を選択的に弱化させる場合、生体吸収性部分の形状は、特定の用途のそれぞれのニーズに合わせて調整することもできる。ここで、組織クリップの生体吸収性部分は、異なる形状要素の任意の所望の組み合わせで構成することもできる。
【0029】
一実施形態では、生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力放出要素の一部は、本質的には、その長手方向軸が把持歯によって形成される組織用のクランプスリットと平行に延びる平坦な長方形プレートとして構成される。少なくとも1つの力放出要素の非生体吸収性材料で作られた部分は、少なくとも1つの力放出要素の生体吸収性部分がインターロックまたは摩擦ロックによって、好ましくは埋め込まれ/挿入される適切な切り欠き(窓開口部)を備える。
【0030】
別の実施形態では、生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力放出要素の一部は、その長手方向軸が把持歯によって形成された組織用のクランプスリットと平行に延びる複数の直列に配置された平坦なプレートとして構成される。非生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力放出要素の一部は、複数の関連する切り欠きを備え、少なくとも1つの力放出要素の生体吸収性部分の少なくとも1つの平坦なプレートは、好ましくは、 非生体吸収性部分の切り欠き内にインターロックまたは摩擦ロックにより埋め込まれる。
【0031】
複数の関連する切り欠きの生体吸収性部分の複数のプレートに代えて、またはそれに加えて、非生体吸収性材料で作られた部分は、長穴状の切り欠きまたは直列に配置された複数の長穴状の複数の切り欠きを備え、各長穴の長手方向軸は、把持歯によって形成された組織用のクランプスリットと本質的に平行に延びている。ここでいう長穴とは、その短辺がそれぞれ長穴の幅と等しい直径の半円で閉鎖されている切り欠きのことであり、長穴の長辺は互いに平行に延びている。円形または楕円形も考えられる。ここで生体吸収性部分は、1つ以上の平坦なプレートとして構成され、プレートは、そのプレートの短辺がそれぞれ半円形によって閉じられた吸収可能な部分を指す。したがって、生体吸収性部分の各プレートは、非生体吸収性部分の長穴状の切り欠きに等しい。
【0032】
さらに、一実施形態では、生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力放出要素の一部は、複数のプレートとして構成され、各プレートは、非生体吸収性部分の関連する切り欠きに埋め込まれる。ここで、プレートの数は、把持歯の数に等しく、プレートの長手方向軸は、把持歯によって形成される組織用のクランプスリットに対して本質的に直角に延びる。この場合、複数のプレートは、いずれの場合も、1つのプレートが1つの把持歯と一列に整列するように配置することができる。
【0033】
別の実施形態では、生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力放出要素の一部は、把持歯のジグザグ形状を把持歯に面する側で複製するように、または、クランプスリットに平行であって力放出要素の外縁に面する側では力放出要素の外縁の形状を複製するように構成される。
【0034】
生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力放出要素の一部の非生体吸収性材料で作られた部分への改善された取り付けのために、生体吸収性部分は、非生体吸収性の組織適合性材料で作られた少なくとも1つのクランプによって所定の位置に固定することができる。
【0035】
別の実施形態では、生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力放出要素の一部は、非生体吸収性材料で作られた部分に両外側に取り付けられ、互いに永久的に固定された生体吸収性材料製の2つのプレートとして構成される。ここで、生体吸収性材料で作られた少なくとも1つの力放出要素の一部における2つのプレートは、互いに接続され、生体吸収性材料で作られた少なくとも1つのピンを介して、例えばシアノアクリレートなどの医療用接着剤により非生体吸収性部分に固定される。
【0036】
本発明の他の特徴および利点は、図面に基づく本発明の特に好ましい実施形態の以下の例示的な記載によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1a】生体吸収性材料で作られた把持歯を有する部分的に吸収可能な組織クリップの斜視図である。
図1b図1aの組織クリップの下側から見た図である。
図2】各力放出要素の一部が生体吸収性材料で作られた平坦な立方骨(立方体様)として構成されている、部分的に吸収可能な組織クリップを示す図である。図2は、平坦な材料で作られた、打ち抜きされた部品またはレーザカットされた部品としての図である。 例えば、さらなる処理(U外形へのエンボス加工)は、機能的形状を生成することができる。
図3】各力放出要素の一部が生体吸収性材料で作られ且つ直列に配置された2つの平坦な立方骨として構成されている、部分的に吸収可能な組織クリップの非生体吸収性部分を示す図である。
図4】1つの力放出要素の生体吸収性部分が直列に配置された2つの二重円形立方骨として構成され、別の力放出要素の生体吸収性部分が、組織用のクランプスリットに面する側で組織用のクランプスリットにそれぞれ平行に延び、且つ力放出要素の外縁に面する側で力放出要素の外縁に平行に延びる直列に配置された2つの要素として構成されている、部分的に吸収可能な組織クリップを示す図である。
図5】各力放出要素の生体吸収性部分が複数の二重円形立方骨として構成され、各二重円形立方骨は把持歯と一列に整列しており、二重円形立方骨の数は把持歯の数と等しく、各二重円形立方骨の長手方向軸は、把持歯によって形成された組織用のクランプスリットに対して本質的に直角に延びている、部分的に吸収可能な組織クリップを示す図である。
図6】1つの力放出要素の生体吸収性部分が、把持歯に面する側で把持歯のジグザグ形状を複製し、力放出要素の外縁で力放出要素の外縁の形状を複製するように構成されている、部分的に吸収可能な組織クリップを示す図である。別の力放出要素の生体吸収性部分は、2つの外側において非吸収性材料で作られた部分に取り付けられ、互いに永久的に固定された生体吸収性材料製の2つのプレートとして構成され、この2つのプレートは、 医療用接着剤、好ましくはシアノアクリレートを用いて、生体吸収性材料で作られた3つのピンにより互いに連結され非生体吸収性部分に固定されている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
基本的な設計に関しては、吸収性材料で作られたクリップ領域の一体化を除いて、このタイプの好ましい組織クリップが一般的に知られている。理解を深めるために、このクリップについて、図1aを参照してより詳細に説明する。 図1aは、本発明の実現を可能にする有り得るクリップ設計を示す。
【0039】
その上で、クリップ1のような好ましい変形例は、2つのサイドヒンジ3、5、6または可撓性成形品を介して開閉可能な2つの歯付きの顎部(力放出要素)4を有するマウス型クランプ装置で構成されている。ヒンジ3、5、6または可撓性成形品は、好ましくは、顎部4が開かれたときにばねエネルギーを溜めて、顎部4が放されたときすなわちヒンジ3、5、6または可撓性成形体がトリガーされたときに顎部4を所定のクランプ力でスナップ閉鎖させるばね付勢バンドで作られている。
【0040】
具体的には、各クリップ1は、部分的に異なるリング幅を有するばね鋼板からリングを切り出すことにより、ばね鋼板から単一片で打ち抜きまたはレーザ加工されている。大きなリング幅を有し直径方向に対向する2つのリング部分は、2つの顎部4(力放出要素)を形成し、一方、当該2つのリング部分の中間にある小さなリング幅をもつ2つのリング部分が、ヒンジ3、5、6または可撓性(弾性)成形品(曲げばね)を形成している。特に、この場合の各ヒンジは、C字状のばね部6で構成されており、このばね部6は角度偏向部3を介して接続部5に延びており、接続部5は順に関連する顎部4で終わっている。顎部4は、開いた状態にあるときに円を形成するために、大きなリング幅を有するリング部分が、それらの平坦面で円弧状に追加的に湾曲するように構成されている。レーザ加工されたばね鋼板のこの特別な形状は、互いの方へ移動する2列の歯を有するサメの口の形状を形成し、大きなリング幅を有するリング部分をレーザ加工することによって形成される。
【0041】
上述した医療用の組織クリップ1の動作原理は、以下のように説明することができる。
【0042】
一般に、医療機器の内視鏡的移植は、患者全体にわずかにしか影響を及ぼさない処置である。この場合、医療機器は、中空器官の内側から中空器官に固定されなければならない。この目的のために、複数の(少なくとも1つの)上述の組織クランプ、クリップまたはアンカーが、内視鏡によりまたは別の機器、好ましくは軸状のフィーダツールによって中空器官に導入され、器官内部の所定の位置に配置される。この目的のために、本件のクリップまたはアンカーが器官組織に導入され、予荷重ばねがクリップの閉鎖のためにトリガーされるか、またはアンカーをかける。次いで、後者は、予め定められたクランプ力または広がり力で、その顎の間、そのフックの間または針の間に、組織の折り目を保持またはクランプし、各顎の歯、フック、針または突起が組織内に沈み、好ましくは組織を貫通する。
【0043】
この時点で、本発明が適用される組織クリップは、必ずしも上記の基本的な形態をとる必要はなく、異なる方法、例えば、閉鎖リングを形成するようにグループ化されたばね要素上に形成され、互いに周方向に間隔をおいて配置された径方向内側に突出する複数の歯を有するリング留め金の形状で構成することもできることを指摘しておく。しかし、本発明は、口の形をした組織クリップに基づいて以下に説明される。
【0044】
図1aは、生体吸収性材料で作られた部分2と、非生体吸収性材料で作られた部分3とを備える、本発明に係る部分的に吸収可能な組織クリップ1の斜視図を示す。この実施形態では、非生体吸収性部分3は、好ましくは、ニチノールの単一部品として作製され、生体吸収性部分は、乳酸とグリコール酸(PLGA)からなるコポリマーで作製されている。非生体吸収性部分3は、2つの力放出要素/歯ラック/顎部4と2つのばね要素6とに関連し、2つの力放出要素4は、互いに平行に配置され、 2つの長手方向端部でそれぞれ接続要素5を介して2つのばね要素6の一方の一端に接続されている。他の力放出要素4に面する側では、2つの力放出要素4の各々が複数の把持歯7を有している。この例では、把持歯7は生体吸収性材料で作られている。
【0045】
この場合、組織クリップ1の生体吸収性材料で作られた部分2は、2つの要素で構成され、当該2つの要素は、それぞれ、1列の把持歯7と、各把持歯が形成された生体吸収性材料からなるプレート8とを備えている。生体吸収性部分2の各要素は、好ましくはPLGA製の単一部品として作られる。各プレート8は、いずれの場合も1つの力放出要素4に平行に配置され、力放出要素4が埋め込まれる凹部を有している。互いに平行に配置された2つの力放出要素4の間に、把持歯7が突出する組織用のクランプスリットが形成されるように、プレート8と一体品として形成された把持歯7が各力放出要素4から突出している。プレート8を1つの力放出要素4にそれぞれ永久的に接続するために、プレート8は、把持歯7から離れる側の端部に、力放出要素4が挿入される凹部/材料摩耗部8a(図1b参照)を備えている。プレート8は、力放出要素4を凹部内に取り付けるために、凹部表面上に、各力放出要素4において関連する切り欠き内に係合し、プレート8を力放出要素4にインターロックによって固定する複数のピン/くい9を有している。
【0046】
図1bは、図1aに示される組織クリップ1の下側部/背部を示す。ここで、組織クリップ1は、非吸収性材料からなる単一セクション部分(クリップフレーム)3と、非吸収性のクリップフレーム3に固定される2つの要素で構成される生体吸収性材料からなる部分2と、で構成されている。生体吸収性部分の各要素は、単一セクション/一体品として作製されており、プレート8と、各力放出要素4を越えて突出し且つ組織用のクランプスリット10を形成する複数の把持歯7とを表している。この図では、プレート8が、力放出要素4に隣接するその部分において、力放出要素4が埋め込まれた平らな凹部/材料磨耗部を有することが分かる。把持歯7およびプレート8は全体が生体吸収性材料で作られている。プレート8の凹部は、凹部内に埋め込まれた力放出要素4が、埋め込まれた力放出要素4と各把持歯7との間に連続した滑らかな表面外形を形成するように構成されている。
【0047】
このような組織クリップが実際に使用されるとき、歯7は、2つのばね要素3、5、6のばね力によって患者の組織に突き刺さり、そこに固定される。その際、把持力はプレート8および力放出要素4を越えてスラスト力として及び、力放出要素4はプレート8を同時に安定させる。吸収性材料が溶解すると、溶解プロセスの最後に、非吸収性のクリップ部分のみが全体的に保存され、組織にわずかな締付け力しか及ぼさない。 したがって、当該クリップは、組織から容易に取り外すことができる。
【0048】
把持歯7の把持効果を改善するためには、把持歯7をニチノールのような非生体吸収性材料から作ることが有利であり、その代わりに、少なくとも1つの力放出要素を選択的に弱めるために この力放出要素の少なくとも一部/領域を生体吸収性材料から作製する。
【0049】
非吸収性材料で作られた把持歯7を備えたそのような組織クリップ1が図2に示されている。生体吸収性材料で作られた部分2は、それぞれが平坦な立方骨(矩形プレート)15の形態をとる2つの要素として構成され、それぞれが力放出要素4の1つに埋め込まれ/挿入されている。力放出要素4の各々は、生体吸収性部分2の要素が埋め込まれた、生体吸収性部分2の要素の形状に対応する切り欠き/窓開口部を有する。力放出要素4の切り欠きは、例えば、選択エッチングまたは型彫り放電加工(ダイシンキング/ダイシンカー放電加工)によって形成することができ(これは、好ましくは、ここでは潜在的に全体的に閉じられたままの外形を形成するが、当該外形はクリップの残りの材料の厚さに比べて非常に薄く非常に柔軟に変形可能とし、吸収可能部分がその材料の薄さを補充/補償する)、または単純に力放出要素4から切り出すことができる(これにより、開いた窓状のスルーホールが作られる)。力放出要素4に埋め込まれた生体吸収性部分2の各要素の長手方向軸は、好ましくは、把持歯7によって形成される組織用のクランプスリット10と平行に延びている。生体吸収性部分2の各要素の2つの長辺は、本質的に互いに平行に延びている。ここで、生体吸収性部分2の各要素は、各要素の各短辺と、その要素が埋め込まれている力放出要素の当該要素に最も近い短い縁との間に、非生体吸収性材料で作られた細いバー11のみが存在するように形成される(各力放出要素におけるフレーム構造の形成)。
【0050】
一度、組織クリップ1の生体吸収性部分2が吸収されると、結果として弾性的に変形/湾曲させられた窓開口部間の細いバーに全体のクランプ/把持力が加えられる。その結果、組織クリップ1によって組織に加えられるクランプ力が減少し、組織クリップ1が組織から離脱する。この効果を補強するために、細いバー11は、ニチノールまたは特に高いニチノール含量の材料で作ることができる。細いバー11は、また、組織クリップ1の生体吸収性部分2の吸収後に、組織クリップ1の残りの部分3が単一のピースで残り、身体から一般的で安全な方法で除去できるように、クリップがいくつかの非生体吸収性部分3の小片に分かれることを防止する。
【0051】
図3に示すように、組織クリップ1の安定性を改善するために、生体吸収性部分2の吸収後に改善されたクランプ力を示すことができるように、非生体吸収性材料で作られた組織クリップ1の部分3は、 各力放出要素4の短辺の細いバー11に加えて、各力放出要素4の中央に細いバー11aを備えることができる。ここで、組織クリップ1の生体吸収性部分2の各要素は、力放出要素4の中央に配置された細いバー11aによって分離されて直列に配置された2つの平らな立方骨(矩形プレート)15として構成されている。2つの力放出要素4のそれぞれは、直列に配置された生体吸収性部分2のプレート15を保持するために、生体吸収性のプレート15の形状に対応する直列に配置された2つの切り欠き/窓開口部12を備えている。各切り欠き12の長手方向軸は、クランプスリット10の長手方向軸に本質的に平行に延びている。力放出要素4の切り欠き12の1つに生体吸収性部分2の各プレート15を固定するために、把持歯4に面する各切り欠き12の縁部は、把持歯7によって画定されたジグザグ形状のチャネルに沿って形成され、切り欠き12内に突出した1つ以上の膨らみ13または位置突起を有している。生体吸収性部分のプレート15は、それぞれ、膨らみ13の1つが係合する1つ以上の溝を有し、それによって生体吸収性部分2を非生体吸収性部分3に固定する。
【0052】
図4に示すように、組織クリップ1の生体吸収性部分2の要素の詳細な形状は、特定の用途のニーズに合わせて調整することができる。異なった形状の生体吸収性要素を異なる力放出要素4に挿入することも可能である。図4の力放出要素4において、例えば、生体吸収性部分2の要素を保持するための切り欠きは、各長手方向軸がクランプスリット10の長手方向軸に本質的に平行に延び、直列に配置された2つの細長い穴として構成されている。2つの細長い穴の間には、細いバー11aがある。各生体吸収性要素は、細長い穴に対応し、細長い穴に埋め込まれたプレート16として構成されている。さらに、非生体吸収性部分3は、生体吸収性部分2の要素を非生体吸収性部分3の切り欠き内に固定するクランプ12を有することができる。
【0053】
あるいは、組織クリップ1の非生体吸収性部分3の切り欠きは、把持歯7に面する各切り欠きの側面がクランプスリット10の長手方向軸に本質的に平行になるように構成することができる。各切り欠きの中央の細いバー11aに面する短辺は、クランプスリット10の長手方向軸に対して直角に延びている。力放出要素4の外縁部に面する各切り欠きの長辺部と、外側の細いバー11に面する各切り欠き部の短辺部は、それぞれ、力放出要素4における自身に最も近い外縁に本質的に平行に延びている。
【0054】
図5は、生体吸収性部分2が力放出要素1つ当たりに複数の平坦なプレート16で構成されている組織クリップ1を示し、各プレート16は力放出要素4のそれぞれの細長い穴に埋め込まれている。ここで、各プレート16の長手方向軸は、クランプスリット10の長手方向軸に対して本質的に直角に延びている。各プレート16は、把持歯7と一列に整列するように配置されている。細いバー11aは、それぞれの場合で、プレート16を次のプレート16から分離する。
【0055】
図6は、1つの力放出要素4に生体吸収性部分2の要素が埋め込まれた組織クリップ1を示しており、この要素は、把持歯7のジグザグ形状を把持歯に面する側に複製するように構成されており、力放出要素4の外縁に面する側では、力放出要素の外縁の形状を複製している。力放出要素4への生体吸収性要素の固定を改善するために、力放出要素の切り欠きは、力放出要素の内側の端部に、切り欠きに埋め込まれた生体吸収性部分2の要素の対応する穴に係合するくい(ピン)13を示す。組織クリップ1の他方の力放出要素4に埋め込まれた生体吸収性部分2の要素は、非吸収性材料からなる部分3の両外側に取り付けられ、且つ互いに永久的に固定された生体吸収性材料からなる2つのプレート14として構成されている。この2つのプレート14は、力放出要素4(破線)の切り欠きの周囲/周辺を越えて延び、医療用接着剤好ましくはシアノアクリレートを用いて生体吸収性材料からなる3つのピン15を介して互いに接続され、非生体吸収性部分3に固定されている。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6